JP3689784B2 - 複写防止模様の作成方法及びその印刷物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小文字の集合模様に通常は肉眼で識別できない潜像を施し、偽造、変造防止を必要とする印刷物において、複写機により複写した場合に潜像が発現する複写防止模様の作製方法及びその印刷物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等の印刷物において偽造、変造防止策は重要な要素である。従って、前記印刷物の印刷面は極めて細密な画線によって図柄を構成している。これら印刷物の偽造、変造防止策の中で古くから用いられてきた方法として、微小文字と称する文字角が1mm以下の文字の集合模様を印刷物に施したりする方法と、印刷物に対し何等かの手段と作用を加えると目視では認識できなかった潜像を現出するような方法、即ち潜像凹版、複写機で色が正常に再現されないような機能性インキ、コピー防止画線等がある。しかし最近のカラー複写機の著しい普及に伴い、偽造、変造による犯罪が増加する危険性を有しており、より一層効果の高い偽造、変造防止策として技術の開発が望まれていた。
【0003】
前記の微小文字における偽造、変造防止策は、模様を細密且つ複雑にすることによって偽造物における同一の模様を作製しようとするのを困難とし、写真製版装置による抽出または複写機では再現されにくい色彩を用いたりすることで偽造防止策としての役割を高めている。更に、印刷面上を数多くの微小文字で構成することによって、偽造、変造防止に有効な地紋模様を形成することができると同時に、印刷物製品に必須とする文章情報を大量に施すことができる。また、一般の人が市場流通過程において拡大鏡等による観察によって、微小文字の文言及び形状が真正なものであるか否かを簡単に識別できる方法であ るため、微小文字は証券印刷物等のデザインにおいて世界的に広く用いられていると同時に、銀行券、株券、債券等の金銭的価値を有する印刷物の模様として古くから用いられ、現在でも一般的に高級感を印象づけるデザインとして重要な模様となっており、銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等の印刷物において、微小文字はデザイン上欠かすことのできない模様となっている。しかし、最近では高機能化した写真製版装置または複写機の出現によって十分な偽造、変造防止効果をもたらしていないという欠点がある。
【0004】
また、前記の印刷物に対し何等かの手段と作用を加えると、目視では認識できなかった潜像を現出するような方法の代表的な技術として、一般的にコピー防止画線と称する一連の技術がある。即ち複写機によって複写することにより、印刷物中に施してあった潜像が現出するものである。このような複写機による偽造防止に適する印刷物においては、例えば、特開昭57−20395号公報によると、基紙表面に例えば85線30%の網点である微細構成素子よりなる文字を表示した潜像を銀インキを用いて印刷し、次にこの潜像以外の余白部に前記潜像より粗または密(例えば150線30%)の網点で印刷を施すと共に、前記潜像の上面に彩紋や地紋等の印刷模様を施す、複写による偽造防止に適する潜像入り印刷物があり、また、特開昭60−79991号公報によると、用紙の表面に網点で潜像を印刷し、万線で潜像と同濃度の背景を同時印刷し、背景を含む潜像の上面に装飾模様をコピーで再現されない程度の薄色の透明性インキで重ね刷りすることにより、印刷物表面を体裁よく仕上げ、コピーにかけると模様は見えなくなり、背景は再現されると共に潜像は再現されず、背景と潜像の濃度差が歴然となって複写物であることが一見して分かる、複写防止に適する印刷物があり、更に、特開昭60−87380号公報によると、150線10%の網点よりなる潜像を備え、且つ潜像周囲の白地面に50〜60線10%程度の万線よりなる背景を備えた潜像版を用いて、用紙の表面に濃色の印刷を施し、背景の万線と干渉した時にモアレ模様を形成する平行線よりなる波形パターンを備えたオーバープリント版を用いて、用紙表面に複写機で再生されない淡色の重ね刷りを施すことにより、印刷物の表面には肉眼を幻惑するモアレ模様が形成されるので、潜像の存在は識別困難となり、複写機にかけると潜像と波形パターンは再生されずに背景のみが再生されるので、潜像が背景と区別して認められる、印刷物における複写防止用潜像カムフラージ法等が開示されている。
【0005】
前記公報等による印刷物では、いずれも網点もしくは万線等が一定周期で連続配置する画線群(以下、スクリーンパターンと称する)の粗密によって潜像が施され、図1の印刷物(1)に示すように、印刷面全体の模様(2)が均一濃度を持ったスクリーンパターンとなっている。前記潜像が施された印刷物(1)を複写機によって複写した際、再生されない密構成のスクリーンパターン(3)と、再生される粗構成のスクリーンパターン(4)とでは、図2の複写物(1’)の模様(2’)に示すように濃度差が生じて、再生される粗構成のスクリーンパターン(4’)に対して、再生されない密構成のスクリーンパターン(3’)の潜像部分が現出するようにして、複写物であることが一目瞭然となるようにしたものであるが、印刷面全体が均一濃度を持ったスクリーンパターンとなっているから、肉眼視においても同一印刷面上の異なるスクリーンパターンによって、スクリーン形状の違いによる異別感及びスクリーンパターンゆえに生ずる潜像の境界線との干渉部(5)により、潜像の存在を識別できてしまう欠点がある。前記欠点を解決する方法として、前記公報等はいずれも潜像をカムフラージするために別の模様や薄色の透明インキ、淡色の重ね刷りを施しているが、前記方法は潜像を識別しにくくする点では有効であるが、工程数が増え経済的でないという欠点を有している。
【0006】
また、本願出願人らは、特開平4−170569号公報で、用紙表面に網点もしくは万線等のパターンからなる潜像と、該潜像周囲に前記潜像とは粗密が異なるパターンからなる背景を1色で同時印刷した印刷物において、該潜像を施した潜像模様が肉眼では識別されないことを特徴とする複写防止に適する印刷物として、潜像をカムフラージするための別の模様や薄色の透明インキ、さらには、淡色の重ね刷りを施さず、白抜きの円形模様や、全面的なスクリーンパターンに対する部分的なスクリーンパターンの網点パーセントを増加した同心円模様等で、カムフラージする方法を既に出願しているが、前述のとおり、前記従来技術は何れも網点もしくは万線等の粗密からなるスクリーンパターンでなければならないため、微小文字のような印刷物製品に必須とする文章情報を大量に施すことができない。また微小文字は、一般の人が市場流通過程において拡大鏡等による観察によって、微小文字の文言及び形状が真正なものであるか否かを簡単に識別できる方法であるのに対し、コピー防止画線は単純且つ極一般的なスクリーンパターンから成っているため、有価証券の十分な真偽判別要素に成り得ないだけでなく、デザイン的にも銀行券、株券、債券などの有価証券等の既存製品に用いるには適さないという欠点があった。
【0007】
また、本願出願人らは、曲線状の集合模様を、潜像を施さない部分の線画を連続線、潜像を施した部分の線画を基本曲線方向に一定の間隔で配列された所定の形状の画線からなる定周期断絶線で構成し、潜像を施した部分の定周期断絶線のうち、基本曲線方向に連続した一つの画線部と非画線部からなる一周期に相当する部分の画線面積が、潜像を施さない部分の連続線のうち、基本曲線方向における前記一周期と同一の長さに相当する部分の画線面積と等しくなることを特徴とする複写防止模様の作成方法及び印刷物(特願平7−138879号公報)を発明し出願した。更に、潜像を施さない部分の線画と、潜像を施した部分の線画の双方を異なる定周期断絶線で構成した複写防止模様の作成方法及び印刷物(特願平7−138880号公報、特願平7−138881号公報)を出願した。この発明の模様を有する印刷物は、複写機によって複製すると、定周期断絶線が複写機の解像度の影響を受け、印刷面上に濃淡差が生じることにより真偽判別が可能となるものである。しかし前記公報等はあくまでも曲線状の集合模様をなすものであり、微小文字を形成するものではない。
【0008】
また、本願出願人らは、微小文字を形成する画線のうち、潜像を施さない部分の画線は文字の輪郭線内を塗りつぶしで構成し、潜像を施した部分の画線は文字の輪郭線が所望の幅の線画のみによって構成され、潜像を施さない部分の文字又は文字列と、潜像を施した部分の文字又は文字列の同一文言において、潜像を施さない部分の文字又は文字列の画線面積又は画線面積率と、潜像を施した部分の文字又は文字列の画線面積又は画線面積率とが等しい微小文字を有する印刷物(実用新案登録願第002558号)を既に出願している。即ち微小文字の集合模様に通常は肉眼で識別できない潜像を施した印刷物を提供し、銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等に、複写機による偽造及び変造を防止する機能を付与することを目的としているが、今日の高画質、高機能化したカラー複写機においては十分な複写防止効果を奏さなくなった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、複写防止を必要とする各種証明書及び重要書類等をはじめ、銀行券、株券、債券などの有価証券等に適用が可能な微小文字に、通常は肉眼で識別できない潜像を施すことによって、カムフラージのための重ね刷りも必要とせず、複写機による偽造、変造防止効果を有する複写防止模様の作成方法及びその印刷物の提供を目的としたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、微小文字の集合模様が、潜像を施さない微小文字と、潜像を施す微小文字から成る複写防止模様の作成方法であって、潜像を施す微小文字は、長方形の微細図形によって、文字の形を成す直線部分を微細図形の長辺を用い、且つ文字の形を成す曲線部分を微細図形の短辺を用いて構成し、微細図形同士の間隔を、複写機の走査解像度で得た隣接画素間距離以上の隔たりをもって配置し、潜像を施さない微小文字は、潜像を施す微小文字を構成する微細図形とは異なる微細図形で且つ潜像を施す微小文字と同一の画線面積率で構成する複写防止模様の作成方法である。
【0011】
また本発明は、微小文字の集合模様が、潜像を施さない微小文字と、潜像を施す微小文字から成る複写防止模様を有する印刷物であって、潜像を施す微小文字は、長方形の微細図形によって、文字の形を成す直線部分を微細図形の長辺を用い、且つ文字の形を成す曲線部分を微細図形の短辺を用いて構成され、微細図形同士の間隔を、複写機の走査解像度で得た隣接画素間距離以上の隔たりをもって配置され、潜像を施さない微小文字は、潜像 を施す微小文字を構成する微細図形とは異なる微細図形で且つ潜像を施す微小文字と同一の画線面積率で構成された複写防止模様を有する印刷物である。
【0012】
【発明の実施の形態】
従来からの複写機による偽造防止に適する印刷物では、網点または万線等のスクリーンパターンの粗密によって潜像が施され、印刷面全体が均一濃度を持ったスクリーンパターンとなっているのに対し、本発明の画線構成では、微小文字を形成する画線のうち、潜像を施さない部分の画線は文字が複写機に解像される微細図形で構成され、潜像を施した部分の画線は文字が複写機に解像されにくい微細図形で構成され、いずれの微細図形も長方形を成しており、潜像を施さない部分の文字と、潜像を施した部分の文字において、潜像を施さない部分の文字の画線面積率と、潜像を施した部分の文字列の画線面積率とが等しくなるように複写防止模様が構成される。すなわち、潜像を施さない部分の「A」という文字と潜像を施した部分の「A」という文字を同一の画線面積とし、かつ、膨張値等を加味した画線を印刷した印刷物の全体を観察した場合、観察者には、潜像を施した部分の文字と潜像を施さない部分の文字が異なった微細図形群であるにもかかわらず、違和感なく認識され、肉眼では潜像を全く識別できなくすることを可能にしている。さらに潜像を施した文字は、長方形の微細図形の長辺によって文字の直線部分を、短辺によって文字の曲線部分を構成し、文字として認識可能なようにしている。また、本発明の画線構成を有した印刷物を複写機により複写すると、複写機の解像力から、潜像を施さない部分の文字に対し、潜像を施した部分の文字は再生されないか、又は再生不良となるため、複写物を肉眼で観察した場合、潜像を施した部分と潜像を施した部分と潜像を施さない部分に濃度差が生じ、潜像が現出する。
【0013】
(実施例)
本発明の効果を奏する微小文字は、潜像を施さない部分の文字と、潜像を施した部分の文字において、潜像を施さない部分の文字の画線面積と、潜像を施した部分の文字の画線面積とが等しくなることが条件である。従って前記条件を満たすものであれば微小文字を用いて表わす語句は、文字に限らず、記号、絵記号又は図像のように自由である。但し、本発明の微小文字を製版する際、印刷時における画線の膨張を加味して画線設計しなければならない。
【0014】
本発明は長方形の微細図形で構成された微小文字である。本発明の効果を奏する微小文字は印刷物上において、潜像を施さない部分の微小文字と、潜像を施した部分の微小文字が、潜像を施さない部分の文字の画線面積と、潜像を施した部分の微小文字の画線面積とが等しくなることが条件であるから、前記条件を満たすものであれば微小文字を用いて表わす語句は自由なので、潜像を施さない部分の微小文字と、潜像を施した部分の微小文字の違いは、単位微小文字の夫々に異なる配置を有する微細図形の図形寸法にある。微細図形の図形寸法の設定規準はカラー複写機の読み取り解像度にある。
【0015】
今日、殆どのカラー複写機の読み取り解像度は400ppiであるから、1画素の大きさすなわち隣接画素間距離が64μmとなるため、例えば長方形の図形のうち向かい合う2辺の長さが64μmよりも短くなるほどカラー複写機が解像できない。従って、潜像を施さない部分の微小文字と潜像を施した部分に用いる微細図形の寸法は図3に示すように、印刷物上に適当な有色にて印刷した微細図形(6)の一方の向かい合う2辺の長さ(6a)を60μm、他方の向かい合う2辺の長さ(6b)を200μmとし、微細図形(7)の一方の向かい合う2辺の長さ(7a)を30μm、他方の向かい合う2辺の長さ(7b)を200μmとしたとき、前記微細図形(6)と前記微細図形(7)ではカラー複写機にて複写した際、前記微細図形(7)の方が解像されにくい性質がある。
【0016】
(実施例1)
次に、本発明者は、前記微細図形(6)と前記微細図形(7)ではカラー複写機にて複写した際、前記微細図形(7)の方が解像されにくい性質に鑑み、カラー複写機で解像されにくい微細図形で構成した微小文字を作成した。まず、図4に示すような、例えば文字の大きさが1mm以下の「A」という印刷物上の文字において、文字の構成要素が、前記微細図形(7)の図形寸法を基に微細図形(8a〜8q)は、向かい合う2辺の短辺の長さを30μmとし、長辺の長さは180〜260μmの中で文字として識字できる形態になるように適当に調整した。微細図形(8a〜8q)の配置における規準は文字の識読ができることであるため、微細図形の配置はできる限り文字の基本形体に沿うように長辺を文字の直線部分に、短辺を文字の曲線部分として配置した。本発明では以下に説明する規準を設けた。
【0017】
例えば、微細図形(8a)と微細図形(8b)のように微細図形と微細図形が長辺を向かい合わせて平行に配置したとき、両者が位置する間隔(L1)は120μmとした。例えば、微細図形(8c)と微細図形(8h)のように微細図形と微細図形が短辺を向かい合わせて平行に配置したとき、両者が位置する間隔(L
2)は80μmとした。例えば、微細図形(8b)と微細図形(8d)のように微細図形と微細図形が長辺と短辺が対面(T字型に)して配置したとき、両者が位置する間隔(L3)は80μmとした。例えば、微細図形(8m〜8q)のように微細図形群で文字の丸形状を構成したとき、夫々の微細図形の長辺で挟む中心線が交わる点(P1)において、微細図形群を配置する角度(θ)を30度とした。前記に説明していないその他の微細図形と微細図形の間隔はすべて80μmとした。また、前述したように微細図形の配置における規準は文字の識読ができることであるため、微細図形の配置はできる限り文字の基本形体に沿うように長辺を文字の直線部分に、短辺を文字の曲線部分として配置する。従って、微細図形(8h、8j)は微細図形(8m〜8q)で表現している文字の丸形状に対し、視覚的に文字の基本形体「A」として違和感のないように、並列に配置した微細図形(8g、8i)よりも上部へ突き出す形で長辺の長さを長くした。即ち、長辺の長さは180〜260μmの中で文字として識字できる形態になるように適当に調整したことにちなんでいる。以上の規準により微細図形(8a〜8q)の配置した「A」の大きさは横全長(H1)800μm、縦全長(V1)1000μmとなった。
従って横全長(H1)800μm、縦全長(V1)1000μm内における画線面積は、微細図形(8k、8l)及び微細図形(8m〜8q)は、短辺の長さを30μmとし、長辺の長さは200μmであるため、30μm×200μm×7個で42000平方μmである。
微細図形(8a、8b)は、短辺の長さを30μmとし、長辺の長さは260μmであるため、30μm×260μm×2個で15600平方μmである。
微細図形(8c、8d、8e、8f)は、短辺の長さを30μmとし、長辺の長さは190μmであるため、30μm×190μm×4個で22800平方μmである。
微細図形(8g、8i)は、短辺の長さを30μmとし、長辺の長さは210μmであるため、30μm×210μm×2個で12600平方μmである。
微細図形(8h、8j)は、短辺の長さを30μmとし、長辺の長さは230μmであるため、30μm×210μm×2個で13800平方μmである。
よって、総合計画線面積は106800平方μmとなった。
【0018】
更に、文字「A」以外の英数字においても前述したように微細図形の配置の規準に基ずいて設計を行った。また、文字「A」以外の英数字においても文字の識読ができることであるため、微細図形の配置はできる限り文字の基本形体に沿うようにする。図5は前述の微細図形の配置の規準に基づいて設計を行った。英数字を示したものである。従って図5に示した英数字が、本発明の効果を奏する潜像を施した部分に用いる微小文字である。図6は本発明の効果を奏する潜像を施した部分に用いる微小文字における英数字すべての画線面積を表したものである。
【0019】
次に、本発明の効果を奏する微小文字は前述したように、潜像を施さない部分の文字と、潜像を施した部分の文字によって構成する。従って、潜像を施さない部分の文字の画線面積と、潜像を施した部分の文字の画線面積とが等しくなることが条件である。既に設計した潜像を施した文字に対し、潜像を施さない文字は以下に説明する方法にて画線設計したものである。
【0020】
まず、図3で示したように前記微細図形(6)と前記微細図形(7)ではカラー複写機にて複写した際、前記微細図形(6)の方が解像し易い性質に鑑み、カラー複写機で解像し易い微細図形で構成した微小文字を作成するため、図7に示す微少文字「A」を形成する文字の構成要素が、前記微細図形(6)の図形寸法を基に、短辺が60μmで、且つ任意の直線及び曲線からなる図形において、少なくとも横全長(H2)600μm、縦全長(V2)800μmとし、点(P2)を中心で半径(R)300μmの外形を形成する弧によって構成している図形(9)を作成した。しかし、前記図5で示した微細図形(8a〜8q)からなる微小文字「A」が総合計画線面積は106800平方μmであったのに対し、図7の微少文字「A」を形成する図形(9)の総合計画線面積は139668平方μmであるため、本発明の効果を奏するために必要な潜像を施さない部分の文字の画線面積と、潜像を施した部分の文字の画線面積とが等しくなるという条件を満たしていない。従って、図形(9)の画線中において部分的に画線除去を施さなければならない。そこで、図8に示すように画線中における部分的な画線除去、即ち複数の微細図形に分割して配置した。微細図形(10a〜10q)は、短辺の長さを30μmとし、任意の直線及び曲線からなり、文字として識字できる形態になるように適当に調整した。微細図形(10a〜10q)の配置に伴う規準は文字の識読ができることであるため、微細図形の削除はできる限り文字の基本形体に沿うようにした。本発明では以下に説明する規準を設けた。
【0021】
例えば、微細図形(10d)と微細図形(10f)のように微細図形と微細図形が短辺を向かい合わせて平行に配置したとき、両者が位置する間隔(L4)は60μmとした。例えば、微細図形(10a)と微細図形(10b)と微細図形(10d)のように微細図形と微細図形が短辺を向かい合わせて平行に配置し、且つ微細図形と微細図形が長辺または弧と短辺が対面(T字型に)して配置したとき、夫々の微細図形が位置する間隔のうち間隔(L5)は60μmとし、微細図形(10a)の長辺で挟む中心線から均等に隔たる微細図形(10b)と微細図形(10d)の間隔(L6)は60μm〜120μmとした。弧を形成している微細図形(10f)と微細図形(10g)の間隔(L7)は、微細図形(10d)と微細図形(10f)と同様に60μmとした。前記に説明していないその他の微細図形と微細図形の間隔はすべて60μmとした。従って横全長600μm、縦全長800μm内における画線面積は、微細図形(10a)は、短辺の長さを60μmとし、長辺の長さは360μmであるため、60μm×360μm×1個で21600平方μmである。微細図形(10b、10c)は、短辺の長さを60μmとし、長辺の長さは200μmであるため、60μm×200μm×2個で24000平方μmである。 微細図形(10d、10e)は、短辺の長さを60μmとし、長辺の長さは120μmであるため、60μm×120μm×2個で14400平方μmである。微細図形(10f、10e)は、{(600^2−400^2)×π÷4−1800}×2個で47268平方μmである。よって、総合計画線面積は107268平方μmとなった。
【0022】
従って、前記図5で示した微細図形(8a〜8q)からなる微小文字「A」が総合計画線面積は106800平方μmであったのに対し、図8の微小文字「A」を形成する図形(9)の総合計画線面積は107268平方μmであるため、本発明の効果を奏するために必要な潜像を施さない部分の文字の画線面積と、潜像を施した部分の文字の画線面積と近似している。よって、両者の画線面積の差468平方μmは許容誤差であり、本発明の効果を奏する微小文字は印刷物上において、潜像を施さない部分の微小文字と、潜像を施した部分の微小文字が、潜像を施さない部分の文字の画線面積と、潜像を施した部分の微小文字の画線面積とが等しくなるという条件を十分満たしている。
【0023】
更に、文字「A」以外の英数字においても前述したように微細図形の配置の規準に基づいて設計を行った。また、文字「A」以外の英数字においても文字の識読ができることであるため、微細図形の配置はできる限り文字の基本形体に沿うようにする。図9は前述の微細図形の配置の規準に基づいて設計を行った。英数字を示したものである。従って図9に示した英数字が、本発明の効果を奏する潜像を施した部分に用いる微小文字である。図10は本発明の効果を奏する潜像を施した部分に用いる微小文字における英数字すべての画線面積を表したものである。
【0024】
(実施例2)
図11は、前述の実施例における画線設計を基に、「PRINTING BUREAU MINISTRY OF FINANCE」という文字列を連続配置した微小文字地紋の印刷物(11)を作製したものを拡大表示したものである。この印刷物(11)は、潜像を施さない部分の文字群(12)と、潜像を施した部分の文字群(13)を同一印刷面上に施したもので、印刷物上における潜像を施さない部分の文字群(12)の合計画線面積の画線面積率と、潜像を施した部分の文字群(13)の合計画線面積の画線面積率が等しくなっている。従って、本実施例における微小文字地紋の印刷物(11)は、肉眼視において略同一書体の文字列として認識される。
【0025】
図12は、本発明の微小文字地紋模様を有する印刷物図5を、カラー複写機(キャノン・カラーレーザーコピア700)によって複製した複製物(14)を示したものである。図11に示す潜像を施した部分(13)に対置する図12の潜像を施した部分の微小文字群(14)は、複写機で再生不能となり、潜像を施さない部分の微小文字群(13)のみが認識できる画線となることから、潜像として施してあった「P」を表す画像が顕像の状態となり、複写機を用いた複製物であることは一目瞭然であった。これによって真偽判別が可能となる
【0026】
記号(数学記号、単位記号、矢印等)、図像(絵柄、シンボルマーク、ロゴマーク等)も前述した微細図形の図形寸法及び配置が上述の設定規準に基づいて設計することによって微小文字と同様の効果を得ることができる。
【0027】
【発明の効果】
本来微小文字そのものが有する偽造防止効果に加え、本発明では前述のとおり、肉眼では潜像をまったく識別できず、且つ、複写機により複写した場合は潜像を施した部分が再生不能となり、潜像が顕像化されるので、複写機による偽造、変造を防止できる。また、本発明の微小文字では、単色印刷においても容易に肉眼では潜像を識別できないことから、あえてカムフラージ模様を重ね刷りする必要がなく、前記微小文字を単色の地紋模様として用いることもできる。更に、微小文字地紋模様にレインボー印刷等の他種の偽造防止策を同一画線上に併用した印刷物も可能である。これにより、本発明は、複写機による偽造、変造を防止しなければならない銀行券、株券、債券等の有価証券や、各種証明書及び重要書類等の複写機による偽造、変造を防止する技術として有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の複写防止用印刷物の模様及び前記模様の一部拡大図
【図2】 従来の複写防止用印刷物の複写物の模様及び前記模様の一部拡大図
【図3】 潜像を施した部分と潜像を施さない部分の微細図形の拡大図
【図4】 潜像を施した部分の微細図形群の配置図
【図5】 潜像を施した部分の微小文字の一覧図
【図6】 潜像を施した微小文字の画線面積表を示す図
【図7】 潜像を施さない微小文字の基本形
【図8】 潜像を施さない微小文字の最終形
【図9】 潜像を施さない微小文字の一覧図
【図10】 潜像を施さない微小文字の画線面積表を示す図
【図11】 潜像を施した印刷物を拡大示す図
【図12】 図11の印刷物の複写物を示す図
【符号の説明】
1 潜像を施した印刷物
1’ 潜像を施した印刷物の複写物
2 印刷面に施した模様
2’ 複写物の模様
3 複写されない密構成のスクリーンパターン
3’ 複写物の再生されない密構成のスクリーンパターン
4 複写される粗構成のスクリーンパターン
4’ 複写物の再生される粗構成のスクリーンパターン
5 潜像の境界線との干渉部
6 潜像を施さない部分の微小文字を構成する微細図形
6a 潜像を施さない部分の微小文字を構成する微細図形の短辺
6b 潜像を施さない部分の微小文字を構成する微細図形の長辺
7 潜像を施した部分の微小文字を構成する微細図形
7a 潜像を施した部分の微小文字を構成する微細図形の短辺
7b 潜像を施した部分の微小文字を構成する微細図形の長辺
8a 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8b 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8c 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8d 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8e 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8f 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8g 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8h 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8i 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8j 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8k 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8l 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8m 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8n 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8o 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8p 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
8q 潜像を施した部分の「A」を構成する微細図形
L1 微細図形の長辺と長辺が平行に向かい合った時の距離
L2 微細図形の短辺と短辺が平行に向かい合った時の距離
L3 微細図形の長辺と短辺が平行に向かい合った時の距離
H1 微小文字の横幅
V1 微小文字の字高
P1 微細図形群で丸形状を構成し、各々の微細図形の長辺で挟む中心線が交わる点
θ P1における丸形状を構成する微細図形群の角度
9 潜像を施さない部分の微小文字の基本書体
H2 潜像を施さない部分の微小文字の基本書体の字高
V2 潜像を施さない部分の微小文字の基本書体の横幅
P2 潜像を施さない部分の微小文字の基本書体の円弧部分の中心線
R 潜像を施さない部分の微小文字の基本書体の円弧部分の半径
10a潜像を施さない部分の微小文字の微細図形
10b潜像を施さない部分の微小文字の微細図形
10c潜像を施さない部分の微小文字の微細図形
10d潜像を施さない部分の微小文字の微細図形
10e潜像を施さない部分の微小文字の微細図形
10f潜像を施さない部分の微小文字の微細図形
11 潜像を施した印刷物
12 潜像を施さない部分
13 潜像を施した部分
14 複写物の潜像部分
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、 微小文字「A」を構成する微細図形間の距離
Claims (2)
- 微小文字の集合模様が、潜像を施さない微小文字と、潜像を施す微小文字から成る複写防止模様の作成方法であって、前記潜像を施す微小文字は、長方形の微細図形によって、文字の形を成す直線部分を前記微細図形の長辺を用い、且つ文字の形を成す曲線部分を前記微細図形の短辺を用いて構成し、前記微細図形同士の間隔を、複写機の走査解像度で得た隣接画素間距離以上の隔たりをもって配置し、前記潜像を施さない微小文字は、前記潜像を施す微小文字を構成する微細図形とは異なる微細図形で且つ前記潜像を施す微小文字と同一の画線面積率で構成する複写防止模様の作成方法。
- 微小文字の集合模様が、潜像を施さない微小文字と、潜像を施す微小文字から成る複写防止模様を有する印刷物であって、前記潜像を施す微小文字は、長方形の微細図形によって、文字の形を成す直線部分を前記微細図形の長辺を用い、且つ文字の形を成す曲線部分を前記微細図形の短辺を用いて構成され、前記微細図形同士の間隔を、複写機の走査解像度で得た隣接画素間距離以上の隔たりをもって配置され、前記潜像を施さない微小文字は、前記潜像を施す微小文字を構成する微細図形とは異なる微細図形で且つ前記潜像を施す微小文字と同一の画線面積率で構成された複写防止模様を有する印刷物。
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KR101802808B1 (ko) * | 2016-05-16 | 2017-12-28 | 한국조폐공사 | 위조 방지용 인쇄물 및 그에 대한 위조 여부 확인 방법 |
-
1997
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