JP3695510B2 - 複写防止模様を有する印刷物及びその作成方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、偽造、変造防止を可能とする貴重印刷物に関し、特に、デジタルカラー複写機及びデジタルモノクロ複写機(以下、複写機と称する)による複写やプロセス印刷によって複製すると、印刷物に付した潜像を認識可能な状態に発現させることで、複写による偽造防止を図ることのできる複写防止模様を有する印刷物及びその作成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の複写機の著しい普及に伴い、銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等の貴重印刷物について、複写機による偽造、変造に対する防止策は重要な要素である。そうした複写機による複写物に対して、真正物であるか否かを判定する場合の有効な偽造防止策の一つにモアレによる模様がある。モアレによる模様は、一定の画線幅を有する直線や曲線が一定間隔で連続配列している印刷物上の模様と、複写時において複写機の走査入出力の走査線とが干渉し、干渉縞として発生するものである。
【0003】
しかし最近のカラー複写機の著しい普及に伴い、偽造、変造による犯罪が増加する危険性を有しており、より一層効果の高い偽造、変造防止策として技術の開発が望まれていた。
【0004】
前記偽造防止策としてのモアレによる模様を発生させる画線構成として、まず万線パターンによるものがある。例えば、実公平2−43747号公報によると、電子写真方式のカラー複写機コピーマシンによる複写偽造を防止するために、シート基材上に1つの色で万線パターンによる印刷層を形成し、更に該印刷層上に他の色で上記パターンと角度を変えて、万線パターン又は網点パターンによる印刷層を形成して、これをカラーコピーマシンによりコピーすると、カラーコピーマシンに用いられているレンズのレンズ収差により周辺部に歪みが生じるとともに、パターンを各々異なる色で構成しているので、色収差のために各色間でずれが生じ、本物の印刷物のモアレとは異なったモアレが発生するので、目視のみでカラーコピーマシンによる複写偽造のチェックができる複写偽造防止用印刷物が開示されている。
【0005】
又、実開平1−36866号公報によると、隣り合う放射状線相互の間隔が略一定になるようにして、被画線形成物上の基準点から放射する多数本の放射状線を具備し、被画線形成物を複写した際にCCDセンサーの走査方向と平行になる部分に確実にモアレを発生させて複写物であることを特定できる画像形成体が開示されている。
【0006】
しかし、前記いずれの考案も、万線パターンを利用しているので画線を構成する万線の角度に依存せざるを得ず、従って万線パターンの角度をかえた画線を多く組み合わせることが必要とされる。
【0007】
そこで前述した角度に依存せずにモアレを発生させるものとして、同心円パターンを用いたものがある。例えば、実開平5−12173号公報には、被複写紙上に一定間隔を隔てた多数の同心円、あるいは多数の放射線よりなる背景部を印刷形成し、デジタルコピー機による複写時に上記背景部中のいずれかの部分がデジタルコピー機の読取り方向に対してモアレを発生させる傾斜角度の網点あるいは線群とさせ、複写紙上にこの部分を被複写紙の背景部にはないモアレ発生部として現出させることによって、どのような読取り方向から複写した場合でも被複写紙と同一の複写を行わせず、複写紙上に差異部を現出させて被複写紙との違いを明確とさせることが可能な複写偽造防止用の被複写紙が開示されている。
【0008】
又、特開平6−262893号公報には、基紙の表面に施された潜像又は背景のいずれか一方が150線10%程度の網点で形成され、他方が同心円パターンで形成され、同心円パターンの円形を構成する細線が1/10mmの太さを有し、且つ細線相互の間隔Sが1/2mm程度であり、潜像と背景は同色であり、同心円パターンを構成する細線は網点同様無数に存在して成る複写機適応型コピー偽造防止用紙が開示されている。この偽造防止用紙によると、同心円パターンを構成する細線は目立たないため、通常は網点との識別がつかず、肉眼で潜像と背景は一様平面に観察されるが、コピーをすると複写機の形式を問わず、また光の走査方向や用紙の置き方にも関係なく潜像が明瞭に現出するとともにモアレが発生することによって、潜像及びモアレが視認され、偽造防止となるものが開示されている。
【0009】
しかし、前記いずれの技術を用いても、モアレの発生は複写機の走査方向に応じて印刷物中の図柄の一部分で発現するので、単純なモアレによる模様とならざるを得ず、モアレによる模様そのものを知らない一般の人が、このモアレの模様を観察して、真正な印刷物か複写機による複写物であるか判別することはできない。
【0010】
このような問題点を解決するために、本願出願人は、特開平9−20061号公報記載の発明を提案している。この発明は、一定の画線幅の画線を有する複数の多角形に、前記多角形の辺をなす線分の外向には、多角形の線分と同一の画線幅の定量連続拡張した画線を施し、前記多角形の辺をなす線分の内向には、多角形の線分と同一の画線幅の収縮配列した画線を施し、前記多角形の辺をなす線分と、定量連続拡張した線画と、収縮配列した線画とが等間隔で配列されて成る線画の集合体で構成した複写防止模様の作成方法とその印刷物である。
【0011】
ところで、印刷物を複写機で複写すると目視では認識できなかった潜像を現出したり、あるいは潜像と背景の濃度差を視認可能とする、コピー防止画線と称する一連の技術がある。
【0012】
例えば、特開昭57−20395号公報には、基紙表面に例えば85線30%の網点である微細構成素子よりなる文字を表示した潜像を銀インキを用いて印刷し、次にこの潜像以外の余白部に前記潜像より粗または密(例えば150線30%)の網点で印刷を施すと共に、前記潜像の上面に彩紋や地紋等の印刷模様を施す構成とすることで、複写すると潜像が現出し、複写による偽造防止に適する潜像入り印刷物が開示されている。
【0013】
又、特開昭60−79991号公報には、用紙の表面に網点で潜像を印刷し、万線で潜像と同濃度の背景を同時印刷し、背景を含む潜像の上面に装飾模様をコピーで再現されない程度の薄色の透明性インキで重ね刷りすることにより、印刷物表面を体裁よく仕上げ、コピーにかけると模様は見えなくなり、背景は再現されると共に潜像は再現されず、背景と潜像の濃度差が歴然となって複写物であることが一見して分かる、複写防止に適する印刷物が開示されている。
【0014】
さらに、特開昭60−87380号公報には、150線10%の網点よりなる潜像をそなえ、且つ潜像周囲の白地面に50〜60線10%程度の万線よりなる背景を備えた潜像版を用いて、用紙の表面に濃色の印刷を施し、背景の万線と干渉した時にモアレ模様を形成する平行線よりなる波形パターンを備えたオーバープリント版を用いて、用紙表面に複写機で再生されない淡色の重ね刷りを施すことにより、印刷物の表面は肉眼を幻惑するモアレ模様が形成されるので潜像の存在は識別困難となり、複写機にかけると潜像と波形パターンは再生されずに背景のみが再生されるので、潜像が背景と区別して認められる、印刷物における複写防止用潜像カムフラージ法等が開示されている。
【0015】
前記公報等による印刷物は、いずれも網点もしくは万線等の点及び線が一定周期で連続配置する画線群(以下、スクリーンパターンと称する)の粗密によって潜像が施され、印刷面全体の模様が均一濃度を持ったスクリーンパターンとなっている。前記潜像が施された印刷物を複写機によって複写した際、再生されない密構成のスクリーンパターンと、再生される粗構成のスクリーンパターンに濃度差が生じて、再生される粗構成のスクリーンパターンに対して、再生されない密構成のスクリーンパターンの潜像部分が現出するようにして、複写物であることが一目瞭然となるようにしたものであるが、印刷面全体が均一濃度を持ったスクリーンパターンという特徴から、肉眼視においても同一印刷面上の異なるスクリーンパターンによって、スクリーン形状の違いによる異別感及びスクリーンパターンゆえに生ずる潜像の境界線との干渉部により、潜像の存在を識別できてしまう欠点がある。
【0016】
前記欠点を解決する方法として、前記公報等はいずれも潜像をカムフラージするために別の模様や薄色の透明インキ、淡色の重ね刷りを施しているが、前記方法は潜像を識別しにくくする点では有効であるが、工程数が増え経済的でないという欠点を有している。
【0017】
そこで、本願出願人は上記問題点を解決するため、特開平8−300800号公報に開示されているとおり、曲線状の集合模様を、潜像を施さない部分の線画を連続線、潜像を施した部分の線画を基本曲線方向に一定の間隔で配列された所定の形状の画線からなる定周期断絶線で構成し、潜像を施した部分の定周期断絶線のうち、基本曲線方向に連続した一つの画線部と非画線部からなる一周期に相当する部分の画線面積が、潜像を施さない部分の連続線のうち、基本曲線方向における前記一周期と同一の長さに相当する部分の画線面積と等しくなる模様により、複写すると潜像が表出する印刷物を出願している。
【0018】
又、本願出願人は、特開平9−20061号公報に開示されているとおり、潜像を施さない部分の線画と潜像を施した部分の線画の線画上の境界線が、基本曲線と潜像の輪郭線との交点において前記基本曲線に接する直線に対し、略直角に交わる直線となり、併せて、定周期断絶線上の画線部と非画線部の境界線が、基本曲線と定周期断絶線上の画線部と非画線部の境界線との交点において前記基本曲線に接する直線に対し、略直角に交わる直線となることを特徴とする複写防止模様の作成方法と印刷物を出願している。
【0019】
しかし、本願出願人が出願した特開平8−300800号公報及び特開平9−20061号公報の複写防止模様は、前者が複写時における潜像の現出であり、後者が複写時におけるモアレの現出であり、各々の複写防止模様が固有の効果を有するに過ぎない。
【0020】
そこで、本願出願人らは両者の特徴を一つの印刷物に集約できるものとして、実用新案登録第3030938号を既に登録している。しかし、前記登録出願においても基本となる複数の多角形の配置によって、前記多角形の辺をなす線分の外向に、多角形の線分と同一の画線幅の定量連続拡張した画線において、割り切れない不都合な配列部分が生ずる場合がある。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決することを目的とし、銀行券、株券、債券等の有価証券類、各種証明書、重要書類等、複写による偽造防止を必要とする貴重印刷物について、通常は認識できないが複写機により複写すると明瞭に発現する潜像を付与することで、その真正な印刷物の複写による偽造防止を図ることを課題とする。
【0022】
特に、本発明は、偽造防止模様の構成部分を、部分的に網点としたり、微細な切れ目のある断続線や小さな画線幅としたりする工夫をすることなく、一定の画線幅を有する集合模様を印刷することで、真偽判別の困難な単なるモアレ模様を現出させるのではなく、一定の情報を有するパターン潜像を発現させ、複写による偽造物であることを、一般の人でも簡単確実に判別できるようにすることを課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、基本多角形線画要素と変形多角形線画要素とが複数組み合わされ集合して成る複写防止模様を有する印刷物であって、
基本多角形線画要素は、任意の基本多角形を辺が共有するように配置した一対の基本多角形A、A ' を基本線とし、該基本線から第1の間隔r1'だけ内側に配設した上記基本多角形と相似の第1基本閉図形と、第1〜第n−1基本閉図形から第1の間隔r1 ' の2倍である第2の間隔r2 ' だけ内側に配設した上記基本多角形と相似の第2〜第n基本閉図形(ここに、nは整数とする。)とから成り、
上記変形多角形線画要素は、前記一対の基本多角形A、A ' の互いに共有する辺を屈曲するように形成されてなる一対の変形多角形B、B ' を基本線とし、該基本線から第1の間隔r1'だけ内側に配設した上記変形多角形と相似の第1変形閉図形と、第1〜第n−1変形閉図形から第1の間隔r1 ' の2倍の第2の間隔r2 ' だけ内側に配設した上記変形多角形と相似の第2〜第n変形閉図形(ここに、nは整数とする。)とから成り、上記第1〜第n基本閉図形及び上記第1〜第n変形閉図形の夫々の画線幅は一定であることを特徴とする複写防止模様を有する印刷物を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、上記課題を解決するために、 基本多角形線画要素と変形多角形線画要素とが複数組み合わされ集合して成る複写防止模様を有する印刷物の複写防止模様の作製方法であって、 上記基本多角形線画要素は、任意の基本多角形を辺が共有するように配置した一対の基本多角形A、A’を基本線とし、該基本線から第1の間隔r1'だけ内側に配設した上記基本多角形と相似の第1基本閉図形と、第1〜第n−1基本閉図形から第1の間隔r1 ' の2倍である第2の間隔r2 ' だけ内側に配設した上記基本多角形と相似の第2〜第n基本閉図形(ここに、nは整数とする。)とで形成し、上記変形多角形線画要素は、前記一対の基本多角形A、A ' の互いに共有する辺を屈曲するように形成されてなる一対の変形多角形B、B ' を基本線とし、該基本線から第1の間隔r1'だけ内側に配設した上記変形多角形と相似の第1変形閉図形と、第1〜第n−1変形閉図形から第1の間隔r1 ' の2倍の第2の間隔r2 ' だけ内側に配設した上記変形多角形と相似の第2〜第n変形閉図形(ここに、nは整数とする。)とで形成し、上記第1〜第n基本閉図形及び上記第1〜第n変形閉図形の夫々の画線幅は一定に描画することを特徴とする複写防止模様を有する印刷物の複写防止模様の作成方法を提供する。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明に係る複写防止模様を有する印刷物の実施の形態を実施例に基づいて図面を参照して説明する。本発明に係る印刷物の複写防止模様は、多角形線画要素が複数集合した集合模様である。複数の多角形線画要素は、夫々多角形(三角形、六角形、菱形等)から内側に任意の間隔をあけて配設した第1閉図形と、第1閉図形の内側に上記間隔の2倍の等間隔で順次形成されている大きさの異なる第2〜第n閉図形であって、これらの閉図形が一定の画線幅の線画を有する直線による線群で構成される。即ち、第1閉図形は、その内方が第2〜第n閉図形により等間隔に仕切られている。
【0026】
(実施例)図1〜5は、本発明に係る複写防止模様を有する印刷物の実施例における、多角形線画要素を説明する図である。そして、図6〜8は、本発明に係る複写防止模様を有する印刷物の実施例1を説明する図である。
【0027】
多角形線画要素の基本となる多角形(多角形線画要素を描画するために基本線となる多角形)は、基本多角形と変形多角形とから構成される。図1に示すような60度の角度aで配置している基本線bの集合図形1において、基本線bの交点p間を結ぶ辺で基本多角形(実施例では三角形)が構成される。
【0028】
そして、これらの複数の基本多角形の中に変形した多角形(本明細書では「変形多角形」という。)が組み合わされている。図2において、図1同様に基本線bにより形成される集合図形1において、基本多角形(図2中の実施例では三角形)A、A'と、実施例1に適用される変形多角形B、B'とが組み合わされている。
【0029】
基本多角形A、A'が互いに共有する辺pp2は直線であるが、変形多角形B、B'では、共有する辺p1p2が点p'において屈曲するように形成され、これにより、変形多角形B、B'は夫々略三角形に近い四角形となる。この点p'は、変形多角形B、B'の共通の二つの頂点p1、p2間の適宜の距離(図2中では、p1から横方向にL1、縦方向にL2の距離)に設けられる。
【0030】
本発明に係る印刷物の複写防止模様の基本要素となる多角形線画要素は、基本多角形線画要素(実施例では基本三角形線画要素)と変形多角形線画要素(実施例1では略三角形をした四角形線画要素である。)とから構成される。
【0031】
図3において、基本多角形線画要素は、基本多角形(実施例では基本三角形)の内方に任意の間隔をもって形成され基本多角形に相似した第1基本閉図形と、第2〜第n基本閉図形とから成る。この第2〜第n基本閉図形は、第1基本閉図形に相似し、第1基本閉図形から前記任意の間隔の2倍の等間隔をもって内方に順次小さくなる異なる大きさの複数の基本閉図形であり、且つ第1基本閉図形及び第2〜第n基本閉図形は、夫々一定の画線幅の線画を有する直線の群から構成されるものである。
【0032】
これを図3(イ)においてさらに詳しく説明すると、第1基本閉図形は、基本線bで形成された基本多角形(以下、実施例に即して基本三角形)Aの内方に位置する線分α1から構成される三角形の線画であり、基本三角形を構成する基本線bに内接する半径r1の円R1を基本三角形Aの内側を周回させる時に、円R1の中心が描く軌跡に等しい。従って、基本三角形の基本線bと第1基本閉図形を構成する線分α1との間隔r1'は、半径r1に等しい。要するに、第1基本閉図形は、基本三角形Aから間隔r1'だけ内側に形成された基本三角形に相似した三角形である。
【0033】
第2基本閉図形は、線分α1から構成される第1基本閉図形の内方に位置する線分α2から構成される三角形の線画であり、線分α1に内接し、円R1の半径r1の2倍の長さを持つ半径r2の円R2を周回させる時に、円R2の中心が描く軌跡に等しい。従って、線分α1と線分α2の間隔r2'は、半径r2に等しい。
【0034】
図3(ロ)に示すように、第2基本閉図形のさらに内方に、第2基本閉図形と同様に半径r2の円R2の周回する軌跡に相当する線分を線分αnまで次々と描画することにより、夫々間隔r2'(r2'=2r1')の内側に次々と大きさの異なる第3〜第n基本閉図形が形成できる。要するに、第2〜第n基本閉図形は、夫々第1〜第(n−1)基本閉図形から間隔r2'の内側に形成された大きさの異なる相似した閉図形である。即ち、基本線画要素は、第1基本閉図形内に第1基本閉図形と相似した第2〜第n基本閉図形が等間隔で形成されており、第1基本閉図形は、その内方が第2〜第n基本閉図形により等間隔r2'で仕切られている。
【0035】
そして、図4(イ)に示すように、線分α1〜線分αnの夫々の線分を任意の画線幅とすることで、基本三角形Aより間隔r1'の内方に等間隔r2'で次々と位置し、夫々基本三角形と相似する大きさの異なる複数の基本閉図形線画群から成る基本三角形線画要素2が形成される。基本三角形Aに辺ppで対称の基本三角形A'の内方にも同様の構成の基本三角形線画要素3が形成される。
【0036】
次に、実施例1に適用される変形多角形線画要素4、5を説明する。変形多角形B、B'は、すでに、図2で説明したとおり、互いに共有する辺が点p'において屈曲するように形成され、略三角形に近い四角形である。そして、変形多角形B、B'が互いに組み合わされている状態に従って、変形多角形線画要素4、5も、図4(ロ)に示されるとおり組み合わされて構成される。
【0037】
具体的には、図4(ロ)に示されるように、変形多角形線画要素4、5は、基本三角形形線画要素2、3同様に、変形多角形B、B'から間隔r1'だけ内側に形成され変形多角形と相似でしかも任意の画線幅を有する第1変形閉図形と、第1変形閉図形から間隔r2'(r2'=2r1')だけ順次内側に位置し、基本多角形B、B'と相似で大きさの異なる複数のしかも任意の画線幅を有する第2〜第n変形閉図形の線画群から構成される。
【0038】
要するに、第2〜第n変形閉図形は、夫々第1〜第(n−1)変形閉図形から間隔r2'の内側に形成された大きさの異なる相似した閉図形である。即ち、変形線画要素は、第1変形閉図形内に第1変形閉図形に相似した第2〜第n変形閉図形が等間隔で形成されており、第1変形閉図形は、その内方が第2〜第n変形閉図形により等間隔r2'で仕切られている。
【0039】
本発明に係る印刷物の複写防止模様は、以上のような基本多角形線画要素2、3と、変形多角形線画要素4、5が複数組み合わされて集合した集合模様として構成され、これにより後述するような潜像を付与される。
【0040】
図5〜8は、本発明に係る複写防止模様を有する印刷物の実施例1を示す図である。図5において、実施例1の複写防止模様7は、集合図形1を基本にして夫々描画された、基本多角形線画要素2、3と、変形多角形線画要素4、5とが複数組み合わされた集合模様として構成されているものである。
【0041】
図6において、複写防止模様7は、基本多角形線画要素2、3が複数集合して成る背景部分に、変形多角形線画要素4、5が、一定のパターン(図6では文字P)となるように複数集合して配置されて構成されている。
【0042】
図7は、図6に示される複写防止模様7が印刷されて成る本発明に係る印刷物8を示すとともに、基本多角形線画要素2、3と変形多角形線画要素4、5が互いに組み合わされる境界部分の拡大図を示している。
【0043】
図7に示される印刷物8をデジタル複写機により複写すると、図8に示されるような複写物9が得られる。基本多角形線画要素2、3が複数集合する背景部分は、モアレが生じ、これが微細な連続模様Mとして濃く複写されて濃く見える。他方、変形多角形線画要素4、5が複数集合する領域は、モアレが生じることなく複写紙の地の色(白紙の場合は白)に見え、これにより、この領域が形成する画成するPという文字が浮き出て認識可能となる。
【0044】
なお、基本多角形線画要素2、3が複数集合する背景部分はモアレが生じ、他方、変形多角形線画要素4、5が複数集合する領域部分は、上記モアレは生じない理由は十分に解明できないが、デジタル複写機の走査線の方向と多角形線画要素の画線の干渉の状態が、前者及び後者の画線模様とでは夫々異なる結果と考えられる。
【0045】
このように、印刷物8の複写防止模様7は、基本多角形線画要素2、3で形成される背景地に対して、変形多角形線画要素4、5が集合する領域が任意の情報(実施例1では文字P)を現出するように潜像を付与している。印刷物8の複写防止模様7を肉眼で観察しても連続した地紋模様としか認識できず、この潜像は認識不可能である。しかし、印刷物8を複写すると、複写物9では潜像が現出して視認可能になり、これにより、真正の印刷物か複写機で複写した偽造複製物であるか真偽判別が可能となる。
【0046】
なお、上記とは逆に、変形多角形線画要素4、5の複数の集合模様を背景地として、この背景地に対して基本多角形線画要素2、3により、情報(例えば、文字P)を付与してもよい。この印刷物を複写すると、変形多角形線画要素4、5の複数の集合模様である背景地はモアレが生じないので複写紙の地の色(白等)に見え、基本多角形線画要素2、3の複数の集合模様である部分にモアレが生じこれが微細な連続模様として複写されて濃く見え、この結果、図8とは逆にモアレによる連続模様により形成された情報Pが濃く浮き出て認識可能となる。
【0047】
以上実施例で、本発明に係る複写防止模様を有する印刷物及びその作成方法について説明したが、本発明は上記実施例の構成に限るものではなく、特許請求の範囲に記載されている技術的事項の範囲でいろいろな実施の形態があることは言うまでもない。例えば、上記実施例では、複写防止模様の基本多角形は三角形として説明したが、他の多角形でも実施可能である。
【0048】
【発明の効果】
以上の構成による本発明によれば、銀行券、株券、債券等の有価証券類、各種証明書、重要書類等、複写による偽造防止を必要とする貴重印刷物について、肉眼で視認しても単なる一様な地紋状模様として認識され、潜像は認識できないが、複写機により複写すると、モアレ模様が生じる部分とモアレ模様が生じない部分により濃度差が生じて、図形化されたパターン潜像が顕著に現出する。従って、本発明に係る印刷物は、真正なものであるか、あるいは複写機等により複写された偽造、変造物であるか、モアレ模様そのものを知らない一般の人でも、複写することにより現出したパターン化された潜像を認識することによって、何等の器具、装置を用いずに簡単に判別でき、複写機による偽造、変造を防止できる。
【0049】
そして、本発明の構成によれば、偽造防止模様の構成部分を、部分的に網点としたり、微細な切れ目のある断続線や小さな画線幅としたりする工夫をすることなく、一定の画線幅を有する集合模様を印刷することで、真偽判別の困難な単なるモアレ模様を現出させるのではなく、一定の有意味な情報を有するパターン潜像を現出させ、複写による偽造物であることがより明確に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る印刷物の実施例の偽造防止模様の基本多角形を構成する基本線を示す図である。
【図2】本発明に係る印刷物の実施例の偽造防止模様の基本多角形及び変形多角形を示す図である。
【図3】本発明に係る印刷物の実施例の偽造防止模様の基本多角形線画要素の構成及びその作成方法を説明する図である。
【図4】本発明に係る印刷物の実施例の偽造防止模様を構成する基本多角形線画要素及び変形多角形線画要素を説明する図である。
【図5】本発明に係る印刷物の実施例の偽造防止模様を説明する図である。
【図6】本発明に係る印刷物の実施例の偽造防止模様における基本多角形線画要素から成る背景地中の変形多角形線画要素を集合した領域を示す図である。
【図7】本発明に係る印刷物の実施例の偽造防止模様における基本多角形線画要素と変形多角形線画要素の組み合わせを説明する図である。
【図8】本発明に係る印刷物の実施例の偽造防止模様を複写すると生じる潜像を説明する図である。
【符号の説明】
1 集合図形
2、3 基本多角形線画要素
4、5 変形多角形線画要素
7 複写防止模様
8 印刷物
9 複写物
a 角度
b 基本線
p 交点
r1、r2 円の半径
R1、R2 円
r1'、r2' 間隔
α1 線分
α2 線分
αn 線分
A、A' 基本多角形(基本三角形)
B、B' 変形多角形
M (複写によりモアレで生じる)連続模様
Claims (2)
- 基本多角形線画要素と変形多角形線画要素とが複数組み合わされ集合して成る複写防止模様を有する印刷物であって、
基本多角形線画要素は、任意の基本多角形を辺が共有するように配置した一対の基本多角形A、A ' を基本線とし、該基本線から第1の間隔r1'だけ内側に配設した上記基本多角形と相似の第1基本閉図形と、第1〜第n−1基本閉図形から第1の間隔r1 ' の2倍である第2の間隔r2 ' だけ内側に配設した上記基本多角形と相似の第2〜第n基本閉図形(ここに、nは整数とする。)とから成り、
上記変形多角形線画要素は、前記一対の基本多角形A、A ' の互いに共有する辺を屈曲するように形成されてなる一対の変形多角形B、B ' を基本線とし、該基本線から第1の間隔r1'だけ内側に配設した上記変形多角形と相似の第1変形閉図形と、第1〜第n−1変形閉図形から第1の間隔r1 ' の2倍の第2の間隔r2 ' だけ内側に配設した上記変形多角形と相似の第2〜第n変形閉図形(ここに、nは整数とする。)とから成り、
上記第1〜第n基本閉図形及び上記第1〜第n変形閉図形の夫々の画線幅は一定であることを特徴とする複写防止模様を有する印刷物。 - 基本多角形線画要素と変形多角形線画要素とが複数組み合わされ集合して成る複写防止模様を有する印刷物の複写防止模様の作製方法であって、
上記基本多角形線画要素は、任意の基本多角形を辺が共有するように配置した一対の基本多角形A、A’を基本線とし、該基本線から第1の間隔r1'だけ内側に配設した上記基本多角形と相似の第1基本閉図形と、第1〜第n−1基本閉図形から第1の間隔r1'の2倍である第2の間隔r2'だけ内側に配設した上記基本多角形と相似の第2〜第n基本閉図形(ここに、nは整数とする。)とで形成し、
上記変形多角形線画要素は、前記一対の基本多角形A、A'の互いに共有する辺を屈曲するように形成されてなる一対の変形多角形B、B'を基本線とし、該基本線から第1の間隔r1'だけ内側に配設した上記変形多角形と相似の第1変形閉図形と、第1〜第n−1変形閉図形から第1の間隔r1'の2倍の第2の間隔r2'だけ内側に配設した上記変形多角形と相似の第2〜第n変形閉図形(ここに、nは整数とする。)とで形成し、
上記第1〜第n基本閉図形及び上記第1〜第n変形閉図形の夫々の画線幅は一定に描画することを特徴とする複写防止模様を有する印刷物の作成方法。
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