JP3689400B2 - 蛍光を利用した検出アッセイとそのためのキット - Google Patents

蛍光を利用した検出アッセイとそのためのキット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通常、液体生物試料における、リアルタイムに蛍光を利用したアッセイを行うキットと方法に関する。このキットと方法は特に核酸(即ち、分子)を利用した診断アッセイに適する。
【0002】
【従来の技術】
核酸を利用したアッセイのプロセスは良く知られており、種々の態様で実施されている。このような核酸を利用したアッセイの多くのプロセスの一態様は核酸増幅プロセスである。一般的に、この態様においては、まず核酸増幅反応を完了するまで行い、続いて核酸プローブを用いて増幅した目的の核酸配列の存否を判断する。このタイプのアッセイは終末点アッセイと称されている。
【0003】
終末点アッセイの一つの問題点は、増幅反応で増幅された核酸(アンプリコン)を引き続きプローブアッセイへ物理的に移さなければならないことである。実験室環境からの雑物が移し替えることによりアンプリコンへの混入する可能性が存在する。更に、サンプルの物理的移送があるたびにサンプルの誤認識または各々のサンプルの取り違えといった一般的な危険性も増加する。
【0004】
試験ユニット内にサンプルを閉じこめ、そこに液体生物試料に統合された核酸増幅反応と核酸アッセイが実施できるように完備した試験ユニットの提案は以前になされている。例えば、Paul N. Schnipelskyらに与えられた米国特許第5,229,297号において、サンプルと、増幅試薬と検出試薬を含むための多数の融通性のある室、ならびに、サンプルと試薬室を検出室と廃物室に連結する通路からなるDNA増幅と検出のためのキュベットが記載されている。ローラーはサンプルと試薬室を所望の順序通りに圧搾または圧迫するのに使用されており、それによりサンプルと検出試薬が通路を通して検出室と廃物室へ押し出される。十分な圧力がローラーにより発生されるまで、サンプルと試薬室を通路から隔離するために一時的なシールが使用されている。この配置は増幅および検出の間、キュベット内にサンプルがとどまることにおいて都合がよいが、一時的シールを破壊して種々の液体の室間への流れを引き起こすためのローラーが必須であることより望ましくない複雑化になったために、増幅反応とアッセイ法の自動化を困難にしている。
【0005】
更に、米国特許第5,639,428号において、統合された核酸増幅反応と核酸アッセイを実施するための改良試験ユニットが開示されている。改良試験ユニットにおいて、サンプルと試薬の流れは比較的簡単な回転装置から加えられる遠心力により制御され、それによりローラーや他の複雑な機構が要求されない。また、米国特許第5,229,297号に開示されている配置により改良されているが、今に至っても、試験ユニット内の制御された液体流動を提供する必要性がいまだに存在し、望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上に議論した終末点アッセイに加え、核酸アッセイの均質法も存在する。均質法では増幅した物質を別のアッセイ部位への物理的移送することは必要とされず、むしろ増幅反応と同時に作用させる。既知の均質アッセイ法の例には蛍光偏光と、蛍光エネルギー転移と、光吸収が含まれる。
終末点アッセイと同様に、均質アッセイ法のための、試料を閉じ込めた試験ユニットの提案が既になされている。例えば、米国特許第5,236,827号とそれに対応する欧州特許第0347771号に、微生物の同定するために、酵素の反応率を決定するアッセイを行うための蛍光発生的な基質を伴った機器が記載されている。
【0007】
欧州特許出願第0640828号には、多数の核酸増幅反応と同時にモニタリングするための器具が開示されている。この器具は熱サイクルと同時に多数の増幅反応から放射された光を検出するセンサを含んでいる。
米国特許第5,219,762号には、標的分析物に酵素が作用して検出かつ測定可能な酵素の副産物を生成して、酵素反応の産物を測定するための機器と方法が記載されている。
欧州特許第0298669号には、核酸反応を行う方法と乾燥状態の試薬を有する反応容器の操作が記載されている。
【0008】
更に、現在係属中の1997年6月18日出願の米国特許出願第08/878,096号には、均質蛍光偏向アッセイのための機器と方法が記載されている。この機器が核酸増幅反応と核酸プローブを利用したアッセイの両方に必要とする全ての試薬を乾燥形態で含有し、これらの試薬は実質上同時に液体生物試料によって再水和される。機器の各サンプルセル内のサンプル量を最小にする目的で、この機器は平坦なカード形状に作られている。それによって、その機器の予熱と、予熱された機器(即ち、"ホットスタート"(hot start)という方法で)の温度とそこに加えられた液体サンプルの温度との平衡状態を迅速に達成することが可能となった。しかしながら、実質上同時に乾燥した全ての核酸増幅試薬と乾燥したすべての核酸プローブアッセイ試薬の再水和が変動することが、蛍光検出シグナルに再現性のない原因であることがつきとめられている。この再現性のないシグナルは、蛍光性に標識された核酸プローブの不安定な再水和が原因であると考えられ、また、干渉シグナルの再現性のない性質により、所望の蛍光シグナルへの影響から除外できない干渉の存在が原因となる。少量しか扱えないので、この機器でいくかのサンプルからのアンプリコンを検出することには更に困難である。また、これでは臨床診断に簡単に使用できる機器を提供できない。
【0009】
上記した技術背景から、この分野では均質核酸増幅とリアルタイムで核酸プローブ検出用に、より簡単な、一貫性があって、信頼のできる蛍光検出シグナルが得られるアッセイのためのキットと方法に対する需要は存在する。
【0010】
【課題を解決する手段】
上記したキットと方法の欠点と限界に取り込むために、本発明は、(1)核酸プライマーと、標的分析物の量の変化に応じた蛍光シグナルの検出可能な変化を生み出すことができる、当該標的分析物に結合する結合パートナーを含む一または複数の第1の容器(vessel)と、(2)サンプルに当該標的分析物が存在するとき、該標的分析物量を変化させる反応の開始を誘発するような試薬を含むか、又は、そのような条件を可能にする、上記の一又は複数の第1の容器に対応する、一又は複数の第2の容器を含む、サンプル中の標的分析物の存否、またはその含有量を決定するための蛍光検出アッセイを行うのに有用なキットを提供する。
【0011】
更なる実施態様として、本発明のキットは、第1のセクションと少なくとも一つ別のセクションを有する容器を含む。この第1のセクションには、核酸プライマーと、標的分析物に結合するパートナーであって、標的分析物量の変化に応じた蛍光シグナルの検出可能な変化を生み出すことがきでる、当該標的分析物に結合する結合パートナーを包含する。この容器の他のセクションは、標的分析物がサンプルに存在するとき、標的分析物量の変化させる反応の開始を誘導するような試薬を含むか、そのような条件を可能にするものである。
本発明はまた、標的分析物量の変化に応じた蛍光シグナルの検出可能な変化を生み出すことができる標的結合パートナーを包含する第1の試薬製剤をサンプルに晒すステップを含んでなる、サンプル中の標的分析物の存否と、その含量を検出する方法を提供している。このようにして晒すことは、標的分析物がサンプルに存在するとき、標的分析物が変化し得る第2の試薬製剤あるいは条件に晒すために第1の混合物を作り出すためである。
【0012】
本発明は、リアルタイムで蛍光シグナルの検出を行う(即ち、増幅反応が起きるのと同時に行う)アッセイに関する。このようなアッセイでは、蛍光シグナルの変化を検出する。
このようなリアルタイムで蛍光検出アッセイを有用にするためには、全過程を通して蛍光シグナルの変化を検出可能な、かつモニターすることができるものにしなければならない。従って、蛍光バックグランドの干渉(即ち、標的分析物の存在と異なる条件による蛍光シグナル)は、コンスタントあるいは再現性を有するものでなければ、リアルタイム蛍光検出アッセイにとっては有害なものである。即ち、蛍光バックグランドの変化が(1)特定のシグナルにおける変化に比べて小さい、あるいは(2)数値的なアルゴリズムに従って補正することができる場合に限り、干渉バックグランドは特定のシグナルに比べて有意な大きさを持ちうる。
【0013】
しかしながら、リアルタイム蛍光検出アッセイが、乾燥した形態の試薬を再水和することにより構成される場合、蛍光標識した試薬の再水和は一定性を有せず、変化にも再現性がない干渉する蛍光バックグランドを生じさせる。従って、この干渉性のバックグランドは特定の蛍光変化を隠し、そして、数値的なアルゴリズムに従って補正することができない。よって、本発明のキットと方法は、蛍光標識した試薬の再水和後まで所望の蛍光シグナル検出可能な変化を生み出すことができる反応の開始を順延することにより、干渉性の蛍光バックグランドを起こす原因を排除するように設計されている。
【0014】
本発明の方法では、標的分析物を含んでいるかもしれないサンプルに、核酸プライマーと蛍光標識した標的分析物の結合パートナーとを含有する第1の試薬製剤を晒すステップを含む。このステップにより、第1の混合物が作り出される。そして、この第1の混合物は、標的分析物が存在するとき、蛍光シグナルの検出可能な変化を引き起こす条件あるいは第2の試薬製剤に晒される。
【0015】
この方法には、蛍光標識した試薬(即ち、蛍光標識した標的分析物に結合するパートナー)は、検出反応の開始前に既に再水和されている。つまり、蛍光標識した結合パートナーが再水和されるまで検出反応を遅らせる。
第1の試薬製剤に含まれる蛍光標識した標的分析物に結合するパートナーは、標的分析物に特異的に結合する能力を有し、他の関連分析物から標的分析物を十分に区別できる化合物である。標的分析物が核酸分子であるとき、典型的な結合パートナーは核酸分子であるのが好ましく、特に、結合パートナー核酸分子は標的分析核酸分子と水素結合し得る、十分に相補性を有する核酸分子であるのが好ましい。
【0016】
核酸分子に蛍光標識する使う方法(即ち、抱合(conjugation))は、当該分野の当業者にとっては周知である。本発明に用いられる好ましい蛍光標識の試料には、フルオロサイン(fluorosceins)、ローダミン(rhodamine)、ローサミン(rosamines)のようなキサンテン(xanthene)染料と、1−ジメチルアミノナフチル−5−スルホン酸塩(1-dimethylaminonaphthyl-5-sulfonate)、スルホン酸1−アニリノ−8−ナフタレン(1-anilino-8-naphthalene sulfonate)、スルホン酸2−p−トルイジン−6−ナフタレン(2-p-toluidinyl-6-naphthalene sulfonate)のようなナフチルアミン類が含まれる。
【0017】
蛍光標識された核酸分子結合パートナーは、目的とする標的核酸に特異的に結合する核酸プライマーと共に第1の試薬製剤に存在する。しかしながら、第1の試薬製剤の中に他の試薬が存在してもよいが、検出反応を開始し得る特定の第2試薬製剤、あるいは、検出反応を開始し得る条件を、第1の試薬製剤と第1の試薬製剤をサンプルに晒すことにより作成される第1の混合物にふれないようにしなければならない。例えば、ポリメラーゼを利用した核酸増幅反応が検出反応の一部のときは、この第2の試薬製剤がポリメラーゼを包含してもよい。それは、サンプルをポリメラーゼを含まない第1の試薬製剤に晒しても検出アッセイを開始させる引きがねとはならない一方、乾燥した蛍光標識された核酸分子の結合パートナーの再水和を可能にすることからである。同様に、この方法が特定の温度になるまで開始しないような検出アッセイに適用される場合には、サンプルの添加による蛍光標識された核酸分子の結合パートナーを含む第1の試薬製剤の再水和をより低い温度で行い、そして、アッセイを開始する条件としてこの混合物を熱に晒す。
【0018】
検出アッセイの開始は標的分析物の量の変化の始まりである。標的分析物が核酸分子の場合に、標的分析物の量の変化は、核酸増幅反応によりアンプリコン(即ち、標的核酸分子分析物のコピー)の生成量の増加によって引き起こされる。この核酸増幅反応はこの分野で当業者に周知であり、このような反応に適した例として、鎖置換増幅法(Strand Displacement Amplification(SDA))、ポリメラーゼ連鎖反応法(Polymerase Chain Reaction(PCR))、リガーゼ連鎖反応法(Ligase Chain Reaction(LCR))、転写媒介増幅法(Transcription Mediated Amplification(TMA))、核酸配列ベース増幅法(Nucleic Acid Sequence Based Amplification(NASBA))がある。このような反応では、アンプリコン(即ち、標的分析物の量の増加)の生成は、時間と共に増加する標的分析物の量に対応しする光シグナルの検出可能な変化を引き起こす(即ち、リアルタイム検出)。
【0019】
例えば、蛍光エネルギー移転(fluoresence energy transfer(FET))を利用したアッセイでは、蛍光シグナルの強度の変化を検出する。このようなアッセイでは、蛍光エネルギー供与部分と蛍光エネルギー受容部分のいずれとも標的分析物の結合パートナーに存在する。この供与部分と受容部分がきわめて接近すると、供与部分の蛍光シグナルの強度は受容部分により消される。従って、FETアッセイは以下のように設計されうる。(1)蛍光シグナルの強度の増加を標的分析物の存在を示唆するものとし(即ち、当初では供与部分と受容部分はきわめて接近していて、標的分析物の存在がその接近を減らす結果を示す)、あるいは(2)蛍光シグナルの強度の減少を標的分析物の存在を示唆するものとする(即ち、当初では供与部分と受容部分は離れていて、標的分析物の存在がそれらを近づける結果を示す)。
【0020】
蛍光エネルギー供与部分と受容部分の接近度を増加あるいは減少できるようににするために、この結合パートナーはその二次構造を変化させることができる。蛍光供与部分と蛍光受容部分が接近していて蛍光シグナルを消すような核酸分子の二次構造の例として、G-四量体(G-quartets)と、ステムループ、あるいはヘアピンループ等が挙げられる。このような二次構造の核酸分子は、Varani, G., Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 1995, 24: 379 - 404と、Williamson, J., Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 1994, 23: 703 - 30 のような資料から、当分野において当業者間では周知なものである。また、これらの二次構造は、直鎖状の二次構造に変形することによって、蛍光エネルギー供与部分と蛍光エネルギー受容部分の接近度を減少し、蛍光シグナルの消光をより少なくする。1997年5月30日出願にした米国特許出願第08/865,675号と、1997年5月13日に出願した米国特許出願第08/855,085号によると、フルオレッセイン−ROXあるいはDABCYL−フルオレッセインのような蛍光供与体−受容体対を使用して、アンプリコンの存在下にヘアピン構造の再構築により、5〜10倍の蛍光シグナルの強度が観察されうる。ここでは、上記出願の内容の全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0021】
特に、サンプルと第1の試薬製剤の混合物をある条件ではなく、第2の試薬製剤に晒すとき、第1の試薬製剤から第2の試薬製剤の物理的な分離は多くの手段により達成されうる。具体的な態様として、対応するウエルのように第1と第2の容器にそれぞれ第1の試薬製剤と第2の試薬製剤を含める。このような構成において、この対応する第1と第2のウエルは対応する印でマークされる。例えば、この対応する第1と第2のウエルは、この対応関連性指標となるバーコードやその他のコード、あるいはカラーコードでマークし得る。この関連性指標の表示は、対応するマルチウエルプレートあるいはその他の機器に使用されている場合、反応混合物を第1のウエルから間違った第2のウエルに移動する可能性を減少するのに有用である。
【0022】
更に、ウエルのような単一の容器を、2以上のセクションに分けることができる。このような態様では、第1の試薬製剤をウエルの第一のセクションに、第2の試薬製剤をウエルの第2セクションに含むことができる。上記したようにウエルのセクションもマークされるが、この態様ではそれは重要ではない。これは、サンプルに第1の試薬製剤を溶かして作り出した混合物は、第2ウエルではなく、同一ウエルの別のセクションに移動するだけからである。従って、間違った移動のリスクをより少なくし、リスクを減少するために、対応するセクションをマークする必要はそれほどない。
【0023】
上にあるいずれの態様においても、第1の試薬製剤と第2の試薬製剤は、一般に、容器の内壁上にスポット状の乾燥された形態を採っている。乾燥された第1の試薬製剤スポットと乾燥された第2の試薬製剤スポットには、トレハロースあるいはその他の炭水化物のような、可溶性が高いマトリックスを含有する。これらの試薬は、ウエルの中に添加される水溶性の液体に素早く再水和する役割を担う。しかしながら、何れの態様も第2試薬製剤は乾燥されない形態の場合にも有用である。
【0024】
本発明の方法の好ましい実施態様のとして、本発明方法は核酸増幅反応を含み、蛍光供与部分と蛍光受容部分とを有する核酸分子の結合パートナーを利用する。第1のウエルにはこのような結合パートナーを乾燥形状、そして、核酸増幅酵素以外の全ての試薬も乾燥状態(即ち、第1の試薬製剤)で含む。このような酵素(即ち、第2の試薬製剤)は対応する第2のウエルに乾燥状態で含まれる。標的分析物(即ち、核酸分子)を含むかもしれない液体サンプルを第1のウエルに添加して、第1の試薬製剤を再水和させ、そして、サンプルと第1の試薬製剤との混合物を形成する。この混合物は次いで第2ウエルに移動され、第2の試薬製剤を再水和させ、均質核酸増幅とリアルタイム蛍光検出アッセイが始まる。この第2のウエルを蛍光検出装置に置き、蛍光シグナルを読み取る。標的分析物が存在する場合には、アンプリコンが生成され、蛍光供与部分と蛍光受容部分との間の距離が増大するに連れて、蛍光のクエンチが減って、蛍光シグナルの増強が検出される。標的分析物の開始量は、これにより、時間が経つに連れ増加した蛍光シグナルの数値的な分析を用いて推測され得る。蛍光率(fluorescence rate)のデータから第1の標的数を推測するための数的な方法は、全般の勾配、最初のポジティブに要する時間の計算と最大変化率を含むものである。
【0025】
例えば、数量分析一態様として、複数の校正用サンプル(即ち、スタンダード)における核酸配列の既知量と、あるテストサンプルにおける核酸配列の未知の量は、それぞれ、ある時間インターバルの間にパラレルに増幅される。そして、この時間インターバルのいくつかの測定ポイントにおいて、校正用サンプルとテストサンプルにおいて増幅される核酸配列の量の指標は、従来の技術を用いて測定される。サンプルがその中に蛍光指標物質を含んでいるとき(即ち、蛍光色素、標識、インターカレーション等)、この増幅される核酸配列の量の指標は、蛍光シグナルから得ることができる(即ち、蛍光の強度あるいは検出可能な蛍光エネルギーの変移)。また、リアルタイム測定(即ち、放射性シグナル)にふさわしい他の指標も使用されうる。
【0026】
次いで、第1のポテンシャルカットオフレベルを得るために、各校正用サンプルにおいて増幅される核酸配列の量の測定された指標が第1のカットオフレベルと同じになる、上記時間インタバール中の第1セットの時間ポイントを決定するステップを行う。このステップは、異なるいくつかのポテンシャルカットオフレベルのそれぞれのために繰り返され、よって、時間インターバル中の時間ポイントのセットがそれぞれのポテンシャルカットオフレベルについて得られる。この定量分析の好ましい態様としては、次いで、校正用サンプルにおける核酸配列の既知量に対して、時間インターバル中の統計上より満足できるポイントのセットを統計上の基準に照らして決定するステップを実施する。そして、テストサンプル中の核酸配列の量が、統計上の基準をよりよくあるいはもっともよく満たすポイントのセットをベースにして決定される。
【0027】
例えば、統計上の基準をよりよく満足するポイントのセットを決定するステップには、校正用サンプルにおける核酸配列の既知の開始量の対数に対してフィットするよりよい直線を提供する、時間インターバル中のポイントのセットを求めるステップを包含し得る。特に、このステップは、校正用サンプルにおける核酸配列の既知の開始量の対数に対する、時間インターバル中のポイントの各セットのそれぞれの「グラフ」を回帰ラインにフィットさせるステップを包含することが好ましい。時間ポイントの各セットと各回帰ライン間におけるフィットの標準偏差が求められる。標準偏差が最も小さいフィットに対応する時間ポイントのセットを用いて、ポテンシャルカットオフレベルから好ましいカットオフレベルを選択し、そして、好ましいカットオフレベルをベースにテストサンプル中の核酸の開始量を求める。この有利な結果は、好ましくは、テストサンプル中の核酸の量の測定結果が好ましいカットオフレベルに等しくなる時間を求めることと、好ましい時間ポイントのセットに対応する「好ましい」回帰ラインにこの時間をフィットすることにより成し遂げられる。そして、テストサンプル中の核酸配列の開始濃度の対数は、好ましい回帰ラインから求めることができる。
【0028】
別の定量分析として、カーブフィッティング操作を、好ましいカットオフレベルの指標(即ち、好ましい蛍光シグナルカットオフ)をより正確に推測するために行う。特に、それぞれの「データ」カーブを、個々の校正用及びテストサンプルの測定された蛍光シグナルとそれに対する対応した蛍光シグナルが測定された時間インタベール中の時間ポイントの離散点の「グラフ」とフィットすることが好ましい。ここに、非パラメトリックカーブ(non-parametric urve)の平滑化操作は、共通のベースラインに対して離散した点を正規化した後に実行され得る。各「平滑化された」データカーブについてより低い信頼限界カーブを求めることにより、好ましい指標カットオフレベルの精度をさらに改良することもできる。このより低い信頼限界カーブは非パラメトリックカーブの平滑化操作を用いることにより平滑化することができる。上述した時間インターバル中の時間ポイントの各セットは、各平滑化したより低い信頼限界とそれぞれのポテンシャルカットオフレベルの間の交差点を求めることにより決定することができる。
【0029】
上述のように、もっとも低い標準偏差のフィットに対応する時間ポイントのセットは、好ましいカットオフレベルを正確に求めること、そして、好ましいカットオフレベルをベースにしたテストサンプル中の核酸の開始量を求めることに用いられる。しかしながら、別タイプの定量分析によれば、既知の核酸配列の開始量を含有しているコントロールサンプルを用いて、好ましいカットオフレベルの検出を容易にすることもできる。特に、それぞれの回帰ラインを、校正用サンプルに一致する時間インターバル内の時間ポイントの各セットにフィットさせた後に、平均予想誤差(average predictive error(APE))を、各回帰ラインとコントロールサンプルに対応する時間ポイントのセットとの間から求められ得る。そして、平均予想誤差が最小である関連する回帰ラインに対応するポテンシャルカットオフレベルを、テストサンプル内の核酸の開始濃度を求めるに用いる。
【0030】
上の方法の記載から明らかであるように、特に容器が標準の96ウエルのマイクロウエルプレートの場合などには、試薬製剤と容器は一のキットに組み合わせるのに適している。このようなキットは対応する第1と第2の容器を含む。その第1の容器には乾燥された第1の試薬製剤を含む。また、第2の試薬は乾燥された形態で第2の容器に含まれるか、キットに追加された別の入れ物に液体製剤として含まれるかのいずれかの態様で包含される。
【0031】
乾燥した第1の試薬製剤は個々の第1の容器の内壁に一または別々のスポットとしてくっ付けられる。乾燥した第2の試薬製剤は第1の容器に対応した第2の容器の内壁に一または別々のスポットとしてくっ付けられる。液体サンプルを各第1の容器の中に(ピペットを用いて)添加することができる。同様に、サンプルの添加により第1の試薬製剤の再水和した後に、これらの二つの物質の混合物を対応する第2の容器に添加することができる。下文で詳細に記載するように、第1のサンプル容器に添加された液体生物試料は、サンプル容器内の乾燥した第1の試薬製剤スポットに接触してそれを溶解する。
【0032】
第2の容器に第1の試薬製剤とサンプルの混合物を添加した後に第2容器を密封するために、切片(ストリップ)といった密封手段が提供される。特に、密封手段の下面には感圧接着剤を付着させておくことができる。その一態様として、接着テープと同様にして柔軟なシーリングストリップ(sealing strip)を貼り付けて、第2の容器を永久に密封することができる。
【0033】
シーリングストリップを用いた第2容器の密封法はいくつかの利点がある。第一の利点は、第2容器から核酸のアンプリコンのリリースを防ぎ、またそれによって実験室環境の汚染をも防げることにある。第2に、均質核酸増幅反応とリアルタイム蛍光検出アッセイにおいて、第2容器から液体混合物の蒸発を防げることにある。しかしながら、一般的なマイクロウエルプレートのウエル内の混合物の量は、カード(例えば、おおよそ300μM容量のウエルに対して20μM容量のカードサンプルセル)のようなほかに知られた装置に比較するとかなり大きく、マイクロウエルからの蒸発による損失はカード装置に比べてそれほど重要な関心点ではない。
【0034】
一般に、本願発明のキットと方法に使用される多様な液体生物試料は、異なる患者からの尿サンプルや血液サンプル、あるいはその他の体液サンプルから構成される。また、これらの試料には、均質核酸増幅反応とリアルタイム蛍光検出アッセイにより、同じの病原体に関する試験が行われる。しかしながら、一又は複数の第1の容器に異なる第1の試薬製剤を入れて、同一患者から得られる1以上の液体生物サンプルに対してテストを行う実施態様も考えられる。
【0035】
第2の容器内の蛍光シグナルの変化を検出するために、マイクロプレート蛍光光度計あるいはマイクロプレートリーダーのような、測定に適したいずれの市販の蛍光測定装置も用いることができる。また、特殊な装置を設計することもできる。均質核酸増幅反応とリアルタイム蛍光検出アッセイの温度要求に依存するので、通常ヒートブロックのような加熱手段を、第1のサンプル容器及び/又は第2の容器に用いることができる。
【0036】
蛍光偏光(fluorescence polarization(FP))をベースとするアッセイにおいては、FP値の変化を検出する。蛍光偏光アッセイにおいて、与えられた光の波長の偏光された励起ビームは蛍光標識されたオリゴヌクレオチドの結合パートナーを励起するために使用される。与えられた波長で励起したこれらの結合パートナーからの蛍光発光の強度は励起偏光に平行な偏光面および励起偏光に垂直な偏光面でも測定される。蛍光標識されたオリゴヌクレオチドの結合パートナーが核酸アンプリコンへハイブリダイズした場合、励起面と平行な面の蛍光発光の強度が増加する。一般的には、平行および垂直の両方の強度が測定される。全強度の変化は、次式:
P=(IPARA−IPER)/(IPARA+IPER)
式中:
IPARA=励起偏光の面に対して平行に偏光した面での蛍光強度
IPER=励起偏光の面に対して垂直に偏光した面での蛍光強度
を応用することにより補償される。
この式から偏光比(P)と称される次元のない量が得られる。
【0037】
励起偏光と平行な面の偏光強度がハイブリダイゼーションの増加で増加する偏光強度であるので、励起偏光に対して平行な面での偏光の強度を時間に関して測定すると時間に関するハイブリダイゼーションの増加が示されるであろう。これは蛍光偏光の測定に対する動力学的または動的アプローチであり、蛍光エネルギー転移と光吸収アッセイでの使用にも適している。そのような動力学的または動的アプローチを用いることにより、各々のサンプルはそれ自体に対して測定され、従って相対的な測定であるので絶対強度についての補償は幾分重要でなくなる。よって蛍光偏光アッセイの場合、励起偏光の面に平行な偏光面でのみ蛍光強度を測定することが必要になる。
【0038】
下記する実施例と実施形態は、例の形で本願発明の説明を提供する目的であり、如何なる方法であれ本発明を制約することは考えていない。当業者が上記のものに施した種々の改変あるいは変更も、本願発明によるものと考えられ、本出願の特許請求の範囲に係る発明の技術思想の範囲内に含まれるものである。
【0039】
【実施例】
以下の例は、ここに記載した本願発明の代表的な実施態様に過ぎない。当分野の当業者にとって、本発明に記載した発明をもとに多くの変更と改良が可能であることは明白なものであるが、それは本発明に係る発明の範囲内から逸脱するものではないであろう。
【0040】
[例1]
本発明のキットの第1の容器のみを使用して、本発明の第1のステップに従って、乾燥した蛍光検出プローブの再水和と標的分析物の増幅を行う比較のための例
これは、蛍光検出アッセイを実施するにあたり用いられた既存のキットと方法に関連して問題となる一実例として列挙したものである。この例に使用するキットは、現在同時係属している1997年6月17日に出願の米国特許出願第08/878,096号(「DNAカード」)に記載されたような、均質蛍光偏光アッセイ用の器具を含んでいるキットである。この例の方法は当該特許出願を参照して実行した。要するに、上記従来の技術のセクションにおいて記載した通り、このDNAカードは、核酸増幅反応と核酸プローブを利用したアッセイの両方に必要とする全ての試薬を乾燥した状態で包含し、そのような全ての試薬を実質的に同時に液状生物製剤サンプルによる再水和する装置である。
【0041】
[材料と方法]
この例では、HIVが標的分析物であり、均質リアルタイム蛍光検出アッセイにおいて、ストランド置換増幅法(Strand Displacement Amplification("SDA"))を使用した。HIVのギャグ(gag)遺伝子の配列の番号付けは、Gurgo C.、Guo H.G.、Franchini G.、Aldovini A.、Collalti E.、Farrell K.、 Wong-Staal G.、Gallo R.C.とReitz M.S. Jr.(1988) Virology 164, 53l-536の記載の忠実にしたがったものである。そのHIVのGAG-1遺伝子の一部はこの例の標的として使用するために、pGEM11Zf(+)ベクターを用いてクローニングをした。このクローニングされたGAG配列は、Gurgoらの記載通りで、HIV MNと等しく、1222-1839番の位置と一致した。
【0042】
バンパープライマーであるB1、5'dTACATCAGGCCATATCACC(配列番号1)が、gagの1223-1241番位と対応する。バンパープライマーであるB2、5'dGCAGCTTCCTCATTGAT(配列番号2)が、1424-1408番位と対応する。増幅プライマーS1、5'dACCGCATCGAATGCATGTCTCGGGTGGTAAAAGTAGTAGAAG(配列番号3)と S2、5'dCGATTCCGCTCCAGACTTCTCGGGGTGTTTAGCATGGTGTT(配列番号4)が、gagの1260-1276番位と、1368-1348番位とそれぞれ対応する。
【0043】
最終のHIVのSDA反応の条件は以下の通りである。最終の反応液50uL毎に、35mMのKP04(pH7.6)、0.1mg/mLのアセチル化したウシ属の血清アルブミン、1μMのプライマーS1、0.75μMのプライマーS2、何れとも0.05μMのプライマーB1とB2、400nMのFAM-ROX検出プローブ (5'-FAM-dGTCACTCGAGAT(ROX)TCAGCATTATCAGAAGGAGCCACCCCAC-3'(配列番号5))、1.4mMのdCTPαS、0.5mMのdUTP、何れとも0.2mMのdATPとdGTP、7.5mMの酢酸マグネシウム、5%のDMSO、8%のグリセロール,500ngのヒト胎盤のDNA、320ユニットのBsoB1、そして20ユニットのBSTを含む。ドライダウン(Dry-Down)実施例では、十分なトレハロースが加えられ、乾燥後に硬いガラス状のフィルムを作り出した。使用したトレハロースの量は最終的なSDA液の1%(w/v)であった。
【0044】
[装置と計測]
DNAカードはセルロースブチレートアセテートシートから打抜き型でカットされ、背面の接着剤で組み立てられる。そして、二枚のシートは乾燥した試薬を包含する窪みをもつように成形した。そこに、第三枚目のシートを加えて64個のサンプル仕切りを有するDNAカードを完成した。各サンプルの仕切りは20μMの容量を有し、サンプルの添加ポートを通して仕切りにアクセスすることができる。第2のポートは排出口として提供されている。サンプルを加えた後に、粘着性を背面に有するシーリングストリップ(sealer strip)を、両方の開口に貼って混合物の蒸発とSDA反応への汚染物の混入を防止した。蛍光測定はDNAカードの透明なシートを通して行われる。
【0045】
フルオロスカンマイクロウエル蛍光光度計(Fluoroskan microwell fluorometer (Labsystems, Rochester, NY))は、DNAカードにおけるリアルタイムのSDA反応にあわせて改造された。それは、ステージの高さの調整と、50から60℃の間の任意のセットポイントにおいて+/-0.3℃で温度コントロールできるヒートステージの導入を含む改造である。ファイバ・オプティクッスの束は、垂直方向から15度オフセットしてDNAカードからの反射によるバックグランドを減らすようにした。バンドパス干渉フィルタ(Bandpass interference filter)を用いて、励振(excitaion)(485nm)と放射光(emission light)(535nm)を区別した。リアルタイムに64個サンプルの仕切りに対する蛍光強度の測定を容易にするめたに、GenesisTMのソフト(Labsystems, Rochester,NY)を改良した。1000nM以上の濃度まで線形性を維持しつつ、2倍のバックグランド蛍光における場合に、フルオレセインイソチオシアン酸塩の検出限度はおおよそ20nMであった。一般的には、一回の測定時間は一秒で、あるいはDNAカードの全64個のサンプルを一分間で読み取る。
【0046】
[手順]
上記したSDA用試薬は、KPi、DMSOとグリセロールを除いた5x混合物に添加された。ドライダウン混合物におけるKPiバッファーの濃度は37.5mMであった。一定の分量(4μM)の混合物を個々のDNAカードサンプル仕切りに添加して、ガラス状のフィルムとなるように単一のスポットへと乾燥した。31mM、KPi、5.8%グリセロールと5% DMSOに標的のHIVを調製した。標的のアリコート(aliquots)は個々のサンプル仕切りに加え、その仕切りを密封して、30分間の蛍光モニター(485(励起)/535(放射))を行った。
【0047】
[実験結果と結論]
図1のように、最初の5分間の増幅反応において、そのシグナル変動は不安定かつネガティブである結果を示した。そのような不安定なシグナルの変動は数値的なアルゴリズムによって補正することができない。更に、このような不安定なシグナル変動は、このようなアッセイで得られた診断上の結果が信頼できないことを示す。
【0048】
[例2]
バックグランドの増幅反応が実質に除去された更なる比較のための例
この例は、更に蛍光検出アッセイを実施するために用いられた既存のキットと方法に関連した問題となる一実例として列挙したものである。その例に使用するキットは例1のものと同様である。よって、その方法、材料、装置と計測も例1に使用されたものと同様である。
例1において、不安定なシグナル変動とそれによって生じた信頼できない測定結果の原因を探るために、DNAカードの同じ仕切りおいて、一つのスポットではなく、SDA試薬を二つのスポットに分けて乾燥することにより、バックグランドの増幅反応は実質上に排除されたこの例は行われた。
【0049】
具体的には、dUtpを除いた増幅に必要な全ての試薬を含んだ第1の乾燥スポット(3μL)に加え、除かれたdUtpを含む第2の乾燥スポットを追加する以外は、全て例1と同様な手順で行った。トレハロースの最終に濃度はそのまま維持されたが、個々のスポットの量と比例したものとした。再水和バッファーも例1と一致するように調整された。
【0050】
[結果と結論]
図2のように、最初の10分間の増幅反応において、その蛍光シグナルはポジティブ又はネガティブのいずれもが大きく変動する結果を示した。例1と同様に、このような不安定なシグナルの変動は数値的なアルゴリズムに従って補正することができない。更に、このような不安定なシグナル変動は、このようなアッセイで得られた診断上の結果が信頼できないことを示す。この結果から、このような不安定な蛍光シグナルの作り出したのは、増幅反応過程における蛍光プローブの再水和が原因であろうということを示唆している。
【0051】
[例3]
標的分析物( HIV )の均質リアルタイム蛍光検出と増幅のための方法において蛍光シグナルの安定化の例
例1と2に見られるように不安定なシグナル変化を生じた原因が、標的分析物の増幅反応における蛍光プローブの再水和である仮説を立証する目的で、SDA酵素(即ち、BsoB1とBst)を、5%(w/v)のトレハロースと共に、37.5mMのMg(OAc)2、0.25mg/mLのBSA、7.5mMのKPiの存在下に、DNAカードの各サンプル仕切りに4μMずつの混合物に分配して乾燥した以外は、上記例1にようにして実施を行った。SDA試薬の残りは標的分析物とサンプルと共に溶液状態でサンプル仕切りに加えられた。
【0052】
[結果と結論]
図3のように、最初の10分間の増幅反応における蛍光シグナルはより安定である結果を示した。このように、蛍光プローブの再水和と標的の増幅は同時に行われないときに、より信頼できる診断アッセイ結果が得ることができる。
【0053】
[例4]
標的分析物( Chlamydia )の均質リアルタイム蛍光検出と増幅のための方法において蛍光シグナルの安定化の例
例3を確認するために、クラミジア(Chlamydia)核酸配列の増幅と均質リアルタイム蛍光検出につき同様にして実験を行った。
[材料と方法]
この例において、クラミジアの原株(E serovar)はノースカロライナ大学から入手して、標的ストックとして使用する以前に95℃で5分間で溶解した。この標的配列は保存されたクラミジアの潜在プラスミドから得られる。
【0054】
SDA反応において、それぞれ、750nMと188nMの増幅用プライマーS1.1、5'-dACCGCATCGAATCGATGTCTCGGGTAGAAAATCGCATGCAAGATA(配列番号6)とS2.1、5'-dCGATTCCGCTCCAGACTTCTCGGGAGCTGCCTCAGAATATACTCAG(配列番号7)は使用された。バンパープライマーB1c 5'-dTAAACATGAAAACTCGTTCCG(配列番号8)とB2c 5'-dTTTTATGATGAGAACACTTAAACTCA(配列番号9)は、同じく75nMが使用された。最終的なSDAの条件は、40mMのKPi(pH 7.5)、6.5mMのMg(OAc)2、1.4mM のdCTPαS、それぞれ0.2mMのdATPと、dTTPとdGTP、3%(v/v)のDMSO、8.2%(v/v) グリセロール、50ng/μLのヒトの胎盤DNA、0.5U/μLのBST、4.5U/μLのAval、l%(w/v)のトレハロース、50μg/mLのBSAからなる。
【0055】
[装置と測定]
20mMのKPi(pH 7.5)、10ng/μLのヒトの胎盤DNA、2.5U/μLのBST、22.5U/μLのAval、2mMのMg(OAc)2、5%(w/v)のトレハロース、0.02mg/mLのBSAを含んでなる、ドライダウン混合物のアリコート(4μL)は37℃コントロールされた低湿度の条件下で、DNAカードのサンプル仕切りにガラス状フィルムに乾燥された以外は、例1に使用された装置と測定とまったく同様なものを使用した。
【0056】
[手順]
クラミジア標的、36mMのKPi、1.4mMのdCTPαS、それぞれ0.2mMのdATPと、dTTPとdGTP、3%(v/v)のDMSO、8.2%(v/v)のグリセロール、400mMのFAM-Rox検出用プローブ(5'(FAM)dTAGCACCCGAGTGCT(ROX)AGAGTCTTCAAATATCAGAGCTTTA CCTAACAA(配列番号10))、上記の濃度でのプライマー(S1.1、S1.2)とバンパー(B1c、B2c)、48ng/μLのヒトの胎盤DNA、6.1mMのMg(OAc)2、46ug/mLのBSAを含んでなる再水和混合物は、97℃2分間で加熱し変性され、55℃に予熱されたDNAカードに加えられた。シーリングストリップ(sealer strip)が利用され、蛍光測定装置により485(励起)/535(放射)nmにおいて蛍光モニターされた。
【0057】
[結果と結論]
図4のように、蛍光シグナルの結果からの考察は、増幅反応による特異な蛍光変化が小さいなものであることが明らかであることを示した。このケースでは、蛍光変化量は標的の添加に比例した。このように、このような変化ならば、数値的なアルゴリズムに従って補正することができる。
【0058】
[例5]
ナイセリアゴノルホアーゼの( Neisseria gonorrhoease )標的核酸配列の均質リアルタイム蛍光検出と増幅のための方法の現実的なキットの応用の例
上記例3と4の結果は、蛍光プローブの再水和を増幅反応と分離して、増幅反応を優先に行う、標的核酸配列の均質リアルタイム蛍光検出と増幅のための方法の有用性を示した。しかし、この方法は、技術者によって最適と考えられるものではなかった。
【0059】
従って、第1の容器に、このような反応のための、たとえば、乾燥した形態の蛍光プローブのような増幅プライマーのような特定な試薬を封じ込めるが、増幅反応の開始を引き起こすような試薬や条件を除外したキットが開発された。よって、この蛍光プローブはサンプルの添加より再水和されるが、増幅反応は反応を引き起こすような試薬や条件と再水和したプローブの混合物を添加するまでには起きない。
【0060】
即ち、二つ対応するマイクロタイタープレートを含むキットが開発された。第1のマイクロタイタープレートのウエルにはプライマーと蛍光プローブを含有し、第2のマイクロタイタープレートのウエルには増幅反応のための酵素を含有している。更なる特徴として、ナイセリアゴノルホアーゼ核酸の均質リアルタイム蛍光検出と増幅のためのキットと方法が以下のように開発された。
【0061】
[材料と方法]
第1のマイクロタイタープレートのいずれのウエルには、以下の構成物質を含む乾燥した単一なスポットを含有している。
・pH 7.6の37.5 mM リン酸カリウム
・3.5% トレハロース
・O.19mg/ml アセチル化BSA
・0.675 mM DTT
・3.75 mM アセテートマグネシウム
・1.9 マイクロモル 第1の増幅プライマー GCIR-AL5.3
(5'CGATTCCGCTCCAGACTTCTCGGGAACAGCTTGAAGTTTT3') (配列番号11)
・1.9 マイクロモル 第2の増幅プライマー GCIR-AR5.l
(5'ACCGCATCGAATGCATGTCTCGGGTCCTTGCAGTTAGGC3') (配列番号12)
・O.19 マイクロモル 第1のバンパープライマー GCIR-BL5.1
(5'CGCAAATCATCAAAG3') (配列番号13)
・O.19 マイクロモル 第2のバンパープライマー GCIR-BR5.1
(5'TCAAGACGCTTCACG3') (配列番号14)
・0.75 マイクロモル FamRox 検出プローブ GCIR5-FD 10
(5'TAGCACCCGAGTGCTTTCTCCGTCTGCTCTTTTATCTTCTC3') (配列番号15)
・0.94 mM dUTP
・3600ng 未加工の透析したヒトの胎盤のDNA
【0062】
第2のマイクロタイタープレートのいずれのウエルには、以下の構成物質を含む乾燥した単一なスポットを含有している。
・pH 7.6の25 mM リン酸カリウム
・2.3% トレハロース
・O.125 mg/ml アセチル化BSA
・0.45 mM DTT
・10 mM アセテートマグネシウム
・320ユニットのBsoB1、 20ユニットのBstポリメラーゼ
・1.75 mM dCsTP
・0.25 mM dATP
・0.25 mM dGTP
【0063】
そして、以下の手順に従って、実行された。
プラスミドGC10を含んだサンプルのアリコート(〜150μM)を、第1のマイクロタイタープレートの各ウエルに分け与えた。PUC18に挿入されたのはナイセリアゴノルホアーゼの遺伝子の一部800塩基対を含むGC10である。
第1のマイクロタイタープレートのウエルは密封され、プレートは室温で約20分間放置された。そして、第1のマイクロタイタープレートは開封され、75℃で10分間保温され、それと同時に第2のマイクロタイタープレートは前もって52℃で10分間保温した。
【0064】
10分間のインキュベーション後、第1のマイクロタイタープレートの各ウエルから100μMアリコートは第2のマイクロタイタープレートの対応するウエルに移し替えられた(ピペットにより)。この第2のマイクロタイタープレートは接着性のカバーで密封され、現在係属中の1997年9月15日米国特許出願(Becton Dickinson Docket No.P-4067)に記載されているように蛍光読取り機器に入れられた。ここではその特許出願の全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。(その他の標準マイクロタイタープレート蛍光読取り機器も同様に用いられ得る。)
第2のマイクロタイタープレートのウエルからの蛍光シグナルは60分間モニターされた。密封された第2のマイクロタイタープレートは密封されたバッグに処分され、それは実験室環境の潜在的アンプリコン汚染に対する保険である。
【0065】
[結果と結論]
ウエルから得た蛍光シグナルは時間と共に安定した増加を示し、さらに、そのシグナルが補正のできない、例1と2のような不安定なしシグナル変動を示さなかった。
【0066】
[例6]
クラミジアトラコーマ症の( Chalamydia trachomatis )標的核酸配列の均質リアルタイム蛍光検出と増幅のための方法の現実的なキットの応用の例
例5のように、二つ対応するマイクロタイタープレートを含むキットが開発された。第1のマイクロタイタープレートのウエルにはプライマーと蛍光プローブを含有し、第2のマイクロタイタープレートのウエルには増幅反応のための酵素を含有している。更なる特徴として、クラミジアトラコーマ症の核酸の均質リアルタイム蛍光検出と増幅のためのキットと方法が以下のように開発された。
【0067】
[材料と方法]
第1のマイクロタイタープレートのいずれのウエルには、以下の構成物質を含む乾燥した単一なスポットを含有している。
・pH 7.6の37.5 mM リン酸カリウム
・3.5% トレハロース
・O.19mg/mL アセチル化BSA
・0.675 mM DTT
・3.75 mM アセテートマグネシウム
・1.9 マイクロモル 第1の増幅プライマー GtpF8.AL1
(5'CGATTCCGCTCCAGACTTCTCGGGACAAAATCAACACCTG3') (配列番号16)
・1.9 マイクロモル 第2の増幅プライマー GtpF8.AR1
(5'ACCGCATCGAATGCATGTCTCGGGGAGACTGTTAAAGATA3') (配列番号17)
・O.19 マイクロモル 第1のバンパープライマー GtpF8.BL
(5'CAGCAAATAATCCTTGG3') (配列番号18)
・O.19 マイクロモル 第2のバンパープライマー GtpF8.BR
(5'CATTGGTTGATGAATTATT3') (配列番号19)
・0.75 マイクロモル FamRox 検出プローブ GtpF8.FD1
(5'TAGCACCCGAGTGCTCGCAGCCAAAATGACAGCTTCTGATGGAA3') (配列番号20)
・0.94 mM dUTP
・3600ng 未加工の透析したヒトの胎盤のDNA
【0068】
第2のマイクロタイタープレートのいずれのウエルには、以下の構成物質を含む乾燥した単一なスポットを含有している。
・pH 7.6の25 mM リン酸カリウム
・2.3% トレハロース
・O.125 mg/ml アセチル化BSA
・0.45 mM DTT
・10 mM アセテートマグネシウム
・320ユニットのBsoB1、 20ユニットのBstポリメラーゼ
・1.75 mM dCsTP
・0.25 mM dATP
・0.25 mM dGTP
【0069】
そして、以下の手順に従って、実行された。
プラスミドpC16を含んだサンプルのアリコート(〜150μM)を、第1のマイクロタイタープレートの各ウエルに分け与えた。PUC18に挿入されたのはクラミジアトラコーマ症の遺伝子のBとF部位を含むpC16である。
第1のマイクロタイタープレートのウエルは密封され、プレートは室温で約20分間放置された。そして、第1のマイクロタイタープレートは開封され、75℃で10分間保温され、それと同時に第2のマイクロタイタープレートは前もって52℃で10分間保温した。
【0070】
10分間のインキュベーション後、第1のマイクロタイタープレートの各ウエルから100μMアリコートは第2のマイクロタイタープレートの対応するウエルに移し替えられた(ピペットにより)。この第二のマイクロタイタープレートは接着性のカバーで密封され、現在係属中の1997年9月15日米国特許出願(Becton Dickinson Docket No.P-4067)に記載されているように蛍光読取り機器に入れられた。ここではその特許出願の全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする(その他の標準マイクロタイタープレート蛍光読取り機器も同様に用いられ得る)。
第二のマイクロタイタープレートのウエルからの蛍光シグナルは60分間モニターされた。密封された第二のマイクロタイタープレートは密封されたバッグに処分されたが、それは実験室環境の潜在的アンプリコン汚染に対する保険である。
【0071】
[結果と結論]
例5と同様に、ウエルから得た蛍光シグナルは時間と共に安定した増加を示し、さらに、そのシグナルが補正のできない、例1と2のような不安定なシグナル変動を示さなかった。
【0072】
【配列表】
Figure 0003689400
Figure 0003689400
Figure 0003689400
Figure 0003689400
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【図面の簡単な説明】
【図1】全てのアッセイ用試薬を単一のスポットに乾燥した周知の装置で行われた、増幅と均質な蛍光リアルタイム検出アッセイの比較例の結果を表す。
【図2】アッセイ用試薬を単一のスポットに乾燥した周知の装置で行われた、増幅と均質な蛍光リアルタイム検出アッセイにおける第2の比較例の結果を表す。
【図3】再水和した蛍光プローブと共にHIV核酸配列が増幅された実施例において行われた増幅と均質な蛍光リアルタイム検出アッセイの例の結果を表す。
【図4】再水和した蛍光プローブと共にクラミジア核酸配列が増幅された実施例において、行われた増幅と均質な蛍光リアルタイム検出アッセイの例の結果を表す。

Claims (5)

  1. (a) 核酸プライマーと、標的核酸分子の変化量に応じた蛍光シグナルの検出可能な変化を生み出すことができる、当該標的核酸分子に結合する乾燥核酸分子とを含む一又は複数の第1の容器(vessel)と、
    (b) サンプルに当該標的核酸分子が存在するとき、該標的核酸分子の量を変化させる反応を開始する核酸増幅反応のために必要な酵素を含むか、当該反応を開始する条件を可能にする、上記の一または複数の第1の容器に対応する、一または複数の第2の容器と、
    を含んで成る、サンプル中の標的核酸分子の存否、またはその含有量を決定するための蛍光検出アッセイ用キット。
  2. 第1の容器と第2の容器との対応関係が、関連性を示す指標で表されていることを特徴とする、請求項1に記載のキット。
  3. 第1の容器と第2の容器が共にウエルであることを特徴とする、請求項1に記載のキット。
  4. 上記条件が温度の変化であることを特徴とする、請求項1に記載のキット。
  5. 一または複数の第2の容器に接着できる、あるいは、第2の容器を密封できる密封膜をさらに含んで成るキットであることを特徴とする、請求項1に記載のキット。
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