JP3688942B2 - 薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法 - Google Patents

薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁界センサとして利用できる薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法に係り、特に、製造過程において、前記薄膜磁気インピーダンス効果素子の感磁部に、素子幅方向を磁化容易軸とする一軸異方性を確実に与えることによって、高感度、高分解能の薄膜磁界センサーを提供することのできる薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報機器、計測機器、制御機器などの急速な発展に伴って、従来の磁束検出型のものより更に小型、高感度且つ高速応答性(高周波動作)の磁界センサが求められ、磁気インピーダンス効果(Magneto−Impedance−Effect)を有する素子(磁気インピーダンス効果素子)が注目されるようになってきている。
【0003】
ワイヤ状に形成された軟磁性材料からなる感磁部に微少高周波電流を通電すると、前記感磁部の両端にインピーダンスによる出力電圧が発生する。微少高周波電流を通電した軟磁性材料からなる感磁部に、外部磁界を印加すると感磁部のインピーダンスが敏感に変化して、出力電圧が変化することを、磁気インピーダンス効果という。
【0004】
磁気インピーダンス効果素子とは、磁気インピーダンス効果を利用して外部磁界の大きさを検出することができる素子のことである。
【0005】
外部磁界の印加による軟磁性材料からなる感磁部のインピーダンスの変化は、磁性材料に交流電流を通電したときに、交流電流がその表面近くを流れようとする「表皮効果」が、外部磁界によって変化するためであることが知られている。
【0006】
具体的には、磁気インピーダンス効果とは、図11に示す閉回路において、ワイヤ状の感磁部Miに電源EacからMHz帯域の交流電流Iacを印加している状態で、感磁部Miの素子長手方向に外部磁界Hexが印加されると、感磁部Mi両端に素材固有のインピーダンスによる出力電圧Emiが発生し、出力電圧Emiの振幅が外部磁界Hexの強度に対応して数10%の範囲で変化する、すなわちインピーダンス変化を起こす現象をいう。
【0007】
磁気インピーダンス効果を有する軟磁性材料からなる感磁部Miは、素子の外周方向に励磁されるので反磁場がなく、磁化ベクトルが感磁部Miの素子長手方向、すなわち交流電流Iacが流れる方向へわずかに回転するだけで透磁率が急激に変化するので、素子長手方向の反磁場も小さく、感磁部Miの長さを1mm程度にしても磁界検知感度がほとんど劣化しない。
【0008】
また、磁気インピーダンス効果素子は、10-5Oe程度の高分解能を有する微弱磁界センサが得られるという特性や、数MHz以上の励磁が可能であるために数百MHzの高周波励磁を振幅変調のキャリアとして自由に使用でき、磁界センサとして使用するときに、遮断周波数を10MHz以上に設定することが容易であるという特性や、消費電力を10mW以下にすることができるという特性を持つ。
【0009】
磁気インピーダンス効果素子の感磁部には、当初アモルファスワイヤーが用いられていた。しかし、アモルファスワイヤーは材料としての生産性には優れているが、磁界センサへの応用には、不適当な特性を多く有する。
【0010】
たとえば、記録波長が数μm以下の記録媒体に対して数十μm以下の円形の先端では、先端部における形状的損失により磁束を素子に吸収できないこと、また、交流電流を流すための配線材を接続するための電極部の形成が困難であること、数十μmの径のワイヤーは、曲がりやすく、素子の位置合わせが困難であること、または、壊れやすいことといった問題点があった。
【0011】
そこで、磁気インピーダンス効果素子の感磁部を、軟磁性薄膜で構成することにより、基板上に任意の厚さや幅、長さで形成することを可能にし、上記の問題点を解決することが提案されている。
【0012】
図12は、薄膜磁気インピーダンス効果素子の斜視図である。図12の薄膜磁気インピーダンス効果素子は、アルミナチタンカーバイドなどの非磁性材料からなる基板1上に、軟磁性材料をスパッタ法などの真空成膜法によって薄膜形成することにより形成された感磁部2、および感磁部2の両端部にCuなどの導電性材料により形成された電極層3,3によって構成されている。
【0013】
薄膜磁気インピーダンス効果素子に電極層3,3から素子長手方向(Y方向)に駆動交流電流を与え、感磁部2を素子幅方向(X方向)に励磁する。この状態で、外部磁界Hexが素子長手方向に印加されると、感磁部2のインピーダンスが変化する。感磁部2のインピーダンス変化を、電極層3,3間の電圧の変化として取り出す。
【0014】
なお、磁気インピーダンス効果素子の感磁部を軟磁性薄膜で構成することができると、一枚の基板上に同時に多数の磁気インピーダンス効果素子を薄膜形成することができるので、素子の生産性が飛躍的に向上するという効果も得られる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
磁気インピーダンス効果素子の感磁部をワイヤーで構成するときには、負磁歪の軟磁性アモルファス材料を延伸加工することにより、ワイヤーの円周方向に磁区内の磁気モーメントが配向した磁区構造を生じさせている。
【0016】
このような円周磁区構造を持つワイヤー型感磁部の長手方向に駆動交流電流を流し、磁気インピーダンス効果素子を円周方向に励磁する。このとき、ワイヤー型感磁部の長手方向に外部磁界が印加されると、円周磁区内の磁気モーメントが、交流電流が流れる方向に回転し、磁気インピーダンス効果素子の円周方向の透磁率が変化して、ワイヤー型感磁部を流れる駆動交流電流の表皮厚さが変化し、インピーダンスが変化する。
【0017】
一方、磁気インピーダンス効果素子の感磁部を薄膜によって構成するときには、非磁性基板上に略長方形に形成し、さらに、感磁部の素子幅方向に一軸異方性を誘導させることが好ましい。
【0018】
図13は、素子幅方向(X方向)に一軸異方性が誘導された磁気インピーダンス効果素子の感磁部2Aの磁区構造を説明するための概念平面図である。
【0019】
図13の磁気インピーダンス効果素子の感磁部2Aでは、素子幅方向(X方向)に磁気モーメントが配向した磁区構造aが生じている。静磁エネルギーを低下させるため、隣りあう磁区の素子幅方向の磁気モーメントは互いに反対方向を向き、また、感磁部2Aの表面付近には、素子長手方向に磁気モーメントが配向している三角磁区bが形成されている。
【0020】
略長方形に形成された感磁部2Aの素子長手方向(Y方向)に、駆動交流電流を流し、素子幅方向に励磁する。
【0021】
この時、図13のように感磁部2Aの素子幅方向が磁化容易軸とされていると、前記素子長手方向に外部磁界を印加したときの、感磁部2Aの透磁率の変化率が大きくなり、インピーダンスの変化率も大きくなる。つまり、薄膜磁気インピーダンス効果素子に印加される外部磁界の変化に対する、薄膜磁気インピーダンス効果素子のインピーダンスの変化率が大きくなるので、磁気センサーとして優れた特性を有することになる。
【0022】
図12のような薄膜磁気インピーダンス効果素子を製造する従来の方法では、スパッタ法等の真空成膜法によって、基板1上に成膜された軟磁性薄膜を略長方形にパターン形成して感磁部2を形成した後に、感磁部2を素子幅方向の磁場H中で熱処理することによって、感磁部2に一軸異方性を誘導し、感磁部2の素子幅方向を磁化容易軸方向にさせることが試みられてきた。
【0023】
しかし、感磁部2形成後の磁場中熱処理によって、感磁部2に一軸異方性を誘導しようとする製造方法では、誘導される異方性が弱すぎて、図13のような磁区構造を持つ感磁部2Aを得ることができないという問題が生じていた。
【0024】
すなわち、成膜後の磁場中アニールのみによって誘導された異方性では、感磁部2の素子長手方向に磁区内の磁気モーメントが配向した磁区構造cを生じさせて反磁場の影響を最小にしようとする形状磁気異方性に打ち勝つことができずに、図14のような磁区構造cを持つ感磁部2Bになってしまっていた。
【0025】
図14のような磁区構造cを持つ感磁部2Bの素子長手方向に外部磁界を印加したときの透磁率の変化率は、図13の感磁部2Aの素子長手方向に外部磁界を印加したときの透磁率の変化率より著しく小さくなり、インピーダンスの変化率も小さくなる。
【0026】
すなわち、従来の製造方法では、磁気センサーとして優れた特性を有する薄膜磁気インピーダンス素子を提供することが困難であった。
【0027】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、感磁部の素子幅方向に磁区内の磁気モーメントが配向した磁区構造が生じており、外部磁界の変化に対するインピーダンスの変化率が大きく、磁気センサーとして優れた感度と分解能を有する薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法は、
(a)非磁性材料からなる基板上に、軟磁性薄膜を一定方向の静磁場中でスパッタ法を用いて成膜する工程、
(b)前記軟磁性薄膜を、前記(a)の工程において静磁場がかけられた方向が素子幅方向(X方向)となるように略長方形にパターン形成して感磁部を形成する工程と、
(c)前記(b)の工程で略長方形にパターン形成された感磁部を、この感磁部の素子幅方向の静磁場中、回転磁場中または無磁場中で熱処理にかける工程を有することを特徴とするものである
あるいは、前記(a)の工程の後、前記(b)、(c)工程の代わりに、
(d)前記(a)の工程で形成された軟磁性薄膜を、前記軟磁性薄膜に対する方向が、前記(a)の工程においてかけられた静磁場の方向と同じである静磁場中、回転磁場中または無磁場中で熱処理にかける工程と、
(e)前記軟磁性薄膜を、前記(a)および/または(d)の工程においてかけられた静磁場の方向が、素子幅方向となるように略長方形にパターン形成して感磁部を形成する工程とを有するものである。
【0029】
本発明では、軟磁性薄膜を静磁場中で成膜することにより、感磁部となる前記軟磁性薄膜に、一軸異方性を強く付与することができる。
【0030】
したがって、後の工程で、前記軟磁性薄膜を略長方形にパターン形成して感磁部を形成した場合に発生する形状磁気異方性によって、磁化容易軸方向が、素子幅方向から、素子長手方向に変化してしまうことを防ぐことができる。
【0031】
すなわち、本発明では薄膜磁気インピーダンス効果素子の感磁部の磁化容易軸方向を、確実にその素子幅方向に向かせることができる。
【0032】
従って、前記感磁部の素子長手方向に外部磁界を印加したときの、前記感磁部の透磁率の変化率が大きくなり、インピーダンスの変化率も大きくすることができる。
【0033】
つまり、本発明の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子は、印加される外部磁界の変化に対する、薄膜磁気インピーダンス効果素子のインピーダンスの変化率が大きくすることができ、磁気センサーとして優れた特性を有する。
【0034】
また、前記(a)の工程の後に、
(b)前記軟磁性薄膜を、前記(a)の工程において静磁場がかけられた方向が素子幅方向(X方向)となるように略長方形にパターン形成して感磁部を形成する工程と、
(c)前記(b)の工程で、略長方形にパターン形成された感磁部を、この感磁部の素子幅方向の静磁場中、回転磁場中、または無磁場中で熱処理にかける工程を有すると、前記感磁部により強い一軸異方性を誘導することができ、磁化容易軸方向をより確実にその素子幅方向に向かせることができるので好ましい。
【0035】
または、前記(a)の工程の後に、
(d)前記(a)の工程で形成された軟磁性薄膜を、前記軟磁性薄膜に対する方向が、前記(a)の工程においてかけられた静磁場の方向と同じである静磁場中、回転磁場中、または無磁場中で熱処理にかけることにより、前記軟磁性薄膜により強い一軸異方性を誘導し、その後、
(e)前記軟磁性薄膜を、前記(a)および/または(d)の工程において静磁場がかけられた方向が素子幅方向となるように略長方形にパターン形成して感磁部を形成しても、前記感磁部の磁化容易軸方向を、より確実にその素子幅方向に向かせることができる。
【0036】
前記(c)または前記(d)の工程において、熱処理を静磁場中で行っても、回転磁場中または無磁場中で行っても、前記(a)の工程によって、軟磁性薄膜に与えられた一軸異方性をより強くする効果が得られる。
【0037】
なお、前記(a)の工程において、前記静磁場の強度を10(Oe)以上、好ましくは60(Oe)以上に設定すると、前記軟磁性薄膜に一軸異方性を強く付与することができ、後の工程で、前記軟磁性薄膜を略長方形にパターン形成して感磁部を形成した場合に発生する形状磁気異方性によって、磁化容易軸方向が、素子幅方向から、素子長手方向に変化してしまうことを効果的に防ぐことができるので好ましい。
【0038】
薄膜磁気インピーダンス素子の感磁部は、軟磁気特性を備えた強磁性体の薄膜であることが必要である。また、1MHz〜数百MHzの高周波領域において透磁率μが高くなくてはならない。さらに、外部磁界(放送電波の磁界成分)によって磁気インピーダンス効果素子に応力がかかって磁気特性が劣化しないように、磁歪定数λが小さいことが好ましい。
【0039】
前記感磁部を、このような性質を備えた薄膜磁性体として形成するために、前記(a)の工程において、前記軟磁性薄膜を以下に示すような微結晶軟磁性合金薄膜として形成することが好ましい。
【0040】
1.組成式が、Fehijで表され、アモルファス構造を主体とした微結晶軟磁性合金薄膜。ただし、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Wと希土類元素から選ばれる1種あるいは2種以上の元素であり、h、i、jはat%で、45≦h≦70、5≦i≦30、10≦j≦40、h+i+j=100の関係を満足するもの。
【0041】
Feは大きい飽和磁束密度Bsを得るためのものであり、MはOと化合して酸化物を形成することにより、比抵抗ρを大きくして、高周波領域におけるμを大きくするためのものである。
【0042】
h、i、jが上記範囲であると、飽和磁束密度Bs、比抵抗ρ、透磁率μが大きい軟磁性合金を得ることができ、h、i、jが上記範囲を外れると、軟磁気特性が劣化する。
【0043】
なお、上記組成において元素Mが希土類元素から選ばれる1種あるいは2種以上の元素である場合には、h、jはat%で50≦h≦70、10≦j≦30であることがより好ましい。
【0044】
2.組成式が、(Co1-ccxyzwで表される微結晶軟磁性合金薄膜。ただし、元素Tは、Fe、Niのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、元素Mは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Si,P,C,W,B,Al,Ga,Geと希土類元素から選ばれる1種または2種以上の元素であり、Xは、Au,Ag,Cu,Ru,Rh,Os,Ir,Pt,Pdから選ばれる1種あるいは2種以上の元素であり、組成比は、cが、0≦c≦0.7、x,y,z,wは原子%で、3≦y≦30、0≦z≦20、7≦w≦40、20≦y+z+w≦60の関係を満足し、残部がxであるもの。
【0045】
なお、軟磁性合金は、元素Mの酸化物を多量に含むアモルファス相に、Coと元素Tを主体とする微結晶相が混在し、さらに微結晶相は、元素Mの酸化物を含んだ構造を有するものであるとより好ましい。
【0046】
3.組成式が、T100-d-e-f-gdefgで表され、bcc−Fe、bcc−FeCo、bcc−Coの1種または2種以上の結晶粒を主体とした微結晶軟磁性合金薄膜。
【0047】
ただし、元素Tは、Fe、Coのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、元素Xは、Si、Alのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、元素Mは、Ti、Zr、Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれる1種または2種以上の元素であり、元素Zは、C、Nのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、Qは、Cr,Re,Ru,Rh,Ni,Pd,Pt,Auから選ばれる1種または2種以上の元素であり、d、e、f、gはat%で、0≦d≦25、1≦e≦10、0.5≦f≦15、0≦g≦10の関係を満足するもの。
【0048】
d、e、f、gが上記範囲内にあれば、透磁率μが大きく、保磁力Hcも低く、磁歪定数λも小さい軟磁性合金薄膜を得ることができる。
【0049】
4.組成式が、T100-p-q-e-f-gSipAlqefgで表され、bcc−Fe、bcc−FeCo、bcc−Coの1種または2種以上の結晶粒を主体とした微結晶軟磁性合金薄膜。
【0050】
ただし、元素Tは、Fe、Coのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、元素Mは、Ti、Zr、Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれる1種または2種以上の元素であり、元素Zは、C、Nのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、Qは、Cr,Re,Ru,Rh,Ni,Pd,Pt,Auから選ばれる1種または2種以上の元素であり、p、q、e、f、gはat%で、8≦p≦15、0≦q≦10、1≦e≦10、0.5≦f≦15、0≦g≦10の関係を満足するもの。
【0051】
p、q、e、f、gが上記範囲内にあれば、透磁率μが大きく、保磁力Hcも低く、磁歪定数λも小さい軟磁性合金を得ることができる。
【0052】
あるいは、前記(a)の工程において、前記軟磁性薄膜を以下に示すような非晶質軟磁性合金薄膜として形成してもよい。
【0053】
5.組成式が、(Fe1-aCoa100-x-y(Si1-bbxyで示される非晶質軟磁性合金薄膜。ただし、MはCr、Ruのうちいずれか一方、あるいは両方を含む元素であり、組成比を表すa、bは0.05≦a≦0.1、0.2≦b≦0.8であり、x、yはat%で10≦x≦35、0≦y≦7の関係を満足するもの。
【0054】
前記(Fe1-aCoa100-x-y(Si1-bbxy系の軟磁性合金薄膜では、aが0.05≦a≦0.1の範囲を越えると、磁歪が大きくなるので好ましくない。また、bが0.2≦b≦0.8の範囲を越えると、非晶質化が困難になり好ましくない。さらに、xが10≦x≦35の範囲を越えると非晶質化が困難になり好ましくない。また、x>35であると磁気特性が劣化するので好ましくない。
【0055】
6.組成式が、ColTamHfnで表され、アモルファス構造を主体にした非晶質軟磁性合金薄膜。ただし、l、m、nはat%で、70≦l≦90、5≦m≦21、6.6≦n≦15、1≦m/n≦2.5の関係を満足するもの。
【0056】
前記ColTamHfn系の軟磁性合金薄膜においては、飽和磁束密度BsはCoの含有量に依存しており、高い飽和磁束密度Bsを得るには、70≦lであることが必要である。しかし、l>90であると、比抵抗ρが低くなるので好ましくない。
【0057】
TaおよびHfは軟磁気特性を得るための元素であり、5≦m≦21、6.6≦n≦15とすることにより、飽和磁束密度Bsが大きく、比抵抗ρも大きい軟磁性材料を得ることができる。また、Hfは、Co−Ta系において発生する負の磁歪定数λを解消するための元素でもある。磁歪定数λは、Taの含有量とHfの含有量の比に依存し、1≦m/n≦2.5の範囲内であると、磁歪定数λを良好に解消することができる。
【0058】
7.組成式が、CoaZrbNbcで表されるアモルファス構造を主体とした非晶質軟磁性合金薄膜。ただし、a、b、cはat%で、78≦a≦91、0.5≦b/c≦0.8の関係を満足するもの。
【0059】
飽和磁束密度BsはCoの濃度に依存し、Bsを大きくするためには、78≦a≦91にする必要がある。a>91であると、耐食性が低下すると共にアモルファス構造になりにくくなり、結晶化し始めるので好ましくない。また、a<78であると、Coどうしが隣接する割合が減り、軟磁気特性を示しにくくなるので好ましくない。透磁率μも、Coの濃度に依存し、78≦a≦91の範囲で高い値を示す。
【0060】
【発明の実施の形態】
図1は、アルミナチタンカーバイドなどの非磁性材料からなる基板11上に、軟磁性材料からなる軟磁性薄膜12をスパッタ法、蒸着法或いはメッキ法などによって成膜した状態を示す斜視図である。
【0061】
軟磁性薄膜12を成膜するときに、図1の矢印方向の静磁場H1をかけ、軟磁性薄膜12に一軸異方性を誘導する。
【0062】
軟磁性薄膜12は、例えば、組成式がFe71.4Al5.8Si13.1Hf3.34.5Ru1.9で表される、bcc−Feの結晶粒を主体とし、bcc−Feの周囲にHfCの結晶粒が存在する結晶粒径5〜30nmの微結晶軟磁性合金薄膜である。
【0063】
この組成以外のT―X―M―Z―Q系(元素Tは、Fe、Coのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、元素Xは、Si、Alの内どちらか一方あるいは両方を含む元素であり、元素Mは、Ti、Zr、Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれる1種または2種以上の元素であり、元素Zは、C、Nのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、Qは、Cr,Re,Ru,Rh,Ni,Pd,Pt,Auから選ばれる1種または2種以上の元素)の組成を有し、bcc−Fe、bcc−FeCo、bcc−Co等からなる結晶粒径10〜30nmの結晶相とMの酸化物を含む非晶質相からなり、非晶質相が組織全体の50%以上を占めている微結晶軟磁性合金薄膜や、Co−T−M−X―O系(元素Tは、Fe、Niのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、元素Mは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Si,P,C,W,B,Al,Ga,Geと希土類元素から選ばれる1種または2種以上の元素であり、Xは、Au,Ag,Cu,Ru,Rh,Os,Ir,Pt,Pdから選ばれる1種あるいは2種以上の元素)の組成を有し、bcc−Feを主体とする結晶粒径10〜30nmの結晶相とMの酸化物を含む非晶質相からなり、非晶質相が組織全体の50%以上を占めている微結晶軟磁性合金薄膜や、Fe―M―O系(Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Wと希土類元素から選ばれる1種あるいは2種以上の元素)の微結晶軟磁性合金薄膜として軟磁性薄膜12を形成してもよい。
【0064】
あるいは、Fe−Co−Si−B−M系(MはCr、Ruのうちいずれか一方、あるいは両方を含む元素)の非晶質軟磁性合金薄膜や、Co―Ta―Hf系の非晶質軟磁性合金薄膜や、Co−Zr−Nb系の非晶質軟磁性合金薄膜として、軟磁性薄膜12を形成してもよい。
【0065】
なお、本実施の形態では、軟磁性薄膜12の成膜をRFマグネトロンスパッタ装置を用いて行った。成膜時の条件は以下の範囲である。
【0066】
高周波電力:200〜400(W)
Arガス圧:50(sccm)
成膜時圧力:3〜7(mTorr)
成膜時静磁場強度:10以上(Oe)
成膜速度:10〜33.5(nm/分)
なお、標準条件は、高周波電力が400(W)、Arガス圧が50(sccm)、成膜時圧力が7(mTorr)、成膜時静磁場強度が60(Oe)、成膜速度が33.5(nm/分)である。また、基板の冷却は間接冷却によって行った。
【0067】
次に、軟磁性薄膜12をフォトリソグラフィーおよびエッチングによって、図2に示されるように略長方形にパターン形成して感磁部13を形成する。このとき、図1の静磁場H1によって誘導された一軸異方性の磁化容易軸方向が、感磁部13の素子幅方向(X方向)となるようにする。
【0068】
なお、感磁部13は、基板11上一面に形成されるが、図2ではそのうち一部のみを示している。
【0069】
このように、感磁部13を薄膜形成プロセスによって形成することができると、一枚の基板上に同時に多数の感磁部13を形成することができるので、磁気インピーダンス効果素子の生産性が飛躍的に向上するという効果も得られる。
【0070】
本発明では、軟磁性薄膜12の成膜を、静磁場H1中で行い、軟磁性薄膜12に、矢印方向を磁化容易軸とする強い一軸異方性を付与しているので、図2のように、感磁部13を略長方形に形成しても形状磁気異方性によって磁化容易軸方向が素子幅方向から素子長手方向(Y方向)に変化してしまうことを防ぐことができる。
【0071】
本実施の形態では、感磁部13をパターン形成した後、さらに、感磁部13の素子幅方向に静磁場H2をかけ、熱処理にかける。このように、軟磁性薄膜12の磁場中成膜後、さらに、磁場中熱処理を施すことによって、感磁部13に、より強く、素子幅方向を磁化容易軸とする一軸異方性を与えることができる。
【0072】
本実施の形態における磁場中熱処理の条件は、以下の範囲である。
静磁場強度:1(kOe)
熱処理温度:540〜675(℃)
熱処理時間:20〜30(分)
昇温レート:10〜14(℃/分)
なお、標準条件は、静磁場強度が1(kOe)、熱処理温度が575(℃)、熱処理時間が30(分)、昇温レートが13.6(℃/分)である。
【0073】
なお、本実施の形態では、図1のように軟磁性薄膜12を磁場中成膜した後に、図2のように、感磁部13をパターン形成した後で、磁場中熱処理を施しているが、軟磁性薄膜12の磁場中成膜後、感磁部13をパターン形成する前、すなわち、図1の状態で、軟磁性薄膜12を成膜するときにかけた静磁場H1の方向と同じ方向に、静磁場をかけて熱処理を施し、その後、感磁部13をパターン形成しても同じように、感磁部13に、より強く、素子幅方向を磁化容易軸とする一軸異方性を与えることができる。
【0074】
感磁部13をパターン形成し、磁場中熱処理を施した後に、図3のように、感磁部13の両端部に、Cu、Ti、CrやNiなどの導電性材料からなる電極層14をスパッタ法、フォトリソグラフィー、およびエッチングによって形成する。
【0075】
電極層14を形成後、基板11を切断し、図4のような個々の薄膜磁気インピーダンス効果素子Mとする。
【0076】
本発明の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法によって形成された感磁部13は、図13の感磁部2Aと同じ磁区構造をもつ。
【0077】
図13をみると、感磁部2Aでは、素子幅方向(X方向)に磁区内の磁気モーメントが配向した磁区構造aが生じている。静磁エネルギーを低下させるため、隣りあう磁区の素子幅方向の磁気モーメントは互いに反対方向を向き、また、感磁部2Aの表面付近には、素子長手方向に磁気モーメントが配向している三角磁区bが形成されている。
つまり、感磁部13では、素子幅方向が磁化容易軸とされている。
【0078】
このように、感磁部13の素子幅方向が磁化容易軸とされていると、前記素子長手方向に外部磁界を印加したときの、感磁部13の素子幅方向の透磁率の変化率が大きくなり、インピーダンスの変化率も大きくなる。つまり、薄膜磁気インピーダンス効果素子に印加される外部磁界の変化に対する、薄膜磁気インピーダンス効果素子のインピーダンスの変化率が大きくなるので、磁気センサーとして優れた検出感度を有することになる。
【0079】
また、感磁部13の素子幅を短くすると、素子長手方向に磁化方向を揃えようとする形状磁気異方性が発生する。しかし、本発明の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子Mでは、感磁部13の素子幅方向を磁化容易軸とする一軸異方性が、この形状磁気異方性に打ち勝って、磁化方向を前記素子幅方向に維持しつづける。したがって、従来の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子よりも感磁部の素子幅を短くすることができるので、外部磁界の位置検出分解能を向上させることができる。
【0080】
本発明の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法の特徴は、基板11上に、軟磁性薄膜12を成膜するときに磁場中で成膜することである。
【0081】
図5は、本実施の形態において用いられたRFマグネトロンスパッタ装置の内部構造を示す構成図である。
【0082】
図5に示されるように、マグネトロンスパッタ装置21のチャンバー22内には、ターゲット23を取り付けるための電極部24と、ターゲット23と対向する位置に、基板保持部28とが設けられている。なお基板保持部28上には、基板11が置かれている。また、基板保持部28の外側に、成膜中の軟磁性薄膜に静磁場H1をかけるための磁石30が設置されている。磁石30は、例えば、Sm−Coなどの硬磁性材料または電磁石などによって形成されている。
【0083】
図5に示すように電極部24内には、放電用磁石25が設けられており、この放電用磁石25から発生する磁場によって、ターゲット23の表面には、エロージョン領域(図示しない)が形成される。
【0084】
また、チャンバー22には、ガス導入口26と、ガス排気口27とが設けられており、ガス導入口26からAr(アルゴン)ガスが導入される。
【0085】
電極部24に、高周波電源(RF電源)29から高周波が印加されることによって、電場と磁場の相互作用により、マグネトロン放電が発生し、ターゲット23がスパッタされ、ターゲット23と対向する位置に配置された基板11上に、軟磁性薄膜12が形成される。
【0086】
図5のRFマグネトロンスパッタ装置では、2個の磁石30、30が、基板保持部28を挟んで対向する位置に設けられ、成膜中の軟磁性薄膜12に矢印方向の静磁場H1がかけられている。従って、成膜された軟磁性薄膜12は、図1に示された矢印方向を磁化容易軸とする、強い一軸異方性が付与される。
【0087】
なお、スパッタ装置としては、磁場中成膜を行うことができるものであれば、図5に示すようなRFマグネトロンスパッタ装置21以外に、RF2極スパッタ装置、RF3極スパッタ装置、イオンビームスパッタ装置、または対向ターゲット式スパッタ装置など既存のものを任意に使用してよい。
【0088】
また、本発明における軟磁性薄膜12の成膜方法には、スパッタ法の他に蒸着法、MBE(モレキュラー−ビーム−エピタキシー)法、ICB(イオン−クラスター−ビーム)法またはメッキ法などを使用してもよい。
【0089】
【実施例】
図6は、薄膜磁気インピーダンス効果素子の磁気インピーダンス効果特性を測定するための回路の回路図である。
【0090】
図6の回路は、駆動回路部41、薄膜磁気インピーダンス効果素子Mを含む外部磁界感知部42、基準電圧供給部43、および増幅部44によって構成されている。
【0091】
駆動回路部41は、薄膜磁気インピーダンス効果素子Mに駆動交流電流を供給するためのものであり、本実施の形態では、安定化コルビッツ発振回路を用いている。駆動回路部41が、自己発振方式の回路によって構成されていると、駆動回路部41と外部磁界感知部42とを一体化することができるので、回路の浮遊インピーダンスなどによる感度の不安定化を防ぐことができる。
【0092】
外部磁界感知部42を構成する薄膜磁気インピーダンス効果素子Mについて説明する。
【0093】
磁気インピーダンス効果素子Mは、図4に示されるように、基板11上に、軟磁性薄膜が略長方形にパターン形成された感磁部13および、感磁部13の素子長手方向の両端に、薄膜形成された導電性材料からなる電極層14、14から構成されている。電極層14、14のうち片方は駆動回路部41に接続され、片方はアースに接続されている。
【0094】
駆動回路部41から、電極層14を通じて感磁部13に駆動交流電流が供給される。このとき、感磁部13は、素子幅方向に励磁される。この状態で、感磁部13の素子長手方向に外部磁界Hexが印加されると、素子幅方向の透磁率が変化する。素子幅方向の透磁率が変化すると、感磁部13内を流れている駆動交流電流の表皮厚さが変化し、感磁部13のインピーダンスが変化する。感磁部13のインピーダンスが変化すると、外部磁界感知部42の両端部の電圧が変化する。
【0095】
外部磁界感知部42を流れる駆動交流電流は、整流用ダイオード42aによって整流され、さらにローパスフィルタ42bによって、駆動交流電流の高周波成分が除去される。したがって、外部磁界感知部42からの出力電圧の大きさは、磁気インピーダンス効果素子Mに印加された外部磁界の大きさの変化に対応して変化したものとなる。
【0096】
一方、基準電圧供給部43からの出力電圧は、外部磁界の影響を受けることなく、常に一定である。したがって、整流用ダイオード43aおよびローパスフィルタ43bを経た基準電圧供給部43からの出力は、一定電圧の直流電流となる。
【0097】
外部磁界感知部42からの出力電圧および基準電圧供給部43からの出力電圧の電圧差は、増幅部44によって増幅される。最終出力は、Eから取り出される。
【0098】
このように、本実施例では、薄膜磁気インピーダンス効果素子Mの磁気インピーダンス効果特性を、薄膜磁気インピーダンス効果素子Mの素子長手方向に、外部磁界Hexを印加したときの、外部磁界感知部42からの出力電圧および基準電圧供給部43からの出力電圧の電圧差(差動電圧)として測定した。
【0099】
図7および図8は、感磁部となる軟磁性薄膜を磁場中で成膜する本発明の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の磁気インピーダンス効果特性と、前記軟磁性薄膜を無磁場中で成膜する従来の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の磁気インピーダンス効果特性を、図6の回路を用いて測定した結果である。
【0100】
本実施例では、感磁部となる軟磁性薄膜の成膜を、RFマグネトロンスパッタ装置を用いて、高周波電力400(W)、Arガス圧50(sccm)、成膜時圧力7(mTorr)、成膜速度33.5(nm/分)の条件下で行った。また、基板の冷却を間接冷却によって行った。なお、前記軟磁性薄膜を本発明の製造方法を用いて成膜するときには、強度60(Oe)の静磁場中で成膜を行った。
【0101】
また、本発明の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子と、従来の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の両方とも、感磁部が略長方形にパターン形成された後、感磁部の素子幅方向の磁場中熱処理を施されている。
【0102】
本実施例では、この磁場中熱処理を、静磁場強度1(kOe)、熱処理温度575(℃)、熱処理時間30(分)、昇温レート13.6(℃/分)の条件下で行った。
【0103】
なお、駆動回路部41から供給される駆動交流電流の周波数は3MHzである。外部磁界Hexは、0Oeからスタートし、10Oe、0Oe、−10Oe、0Oeと連続的に往復変化させた。
【0104】
図7は、薄膜磁気インピーダンス効果素子Mの感磁部を、素子長さ2mm、素子幅0.5mm、厚さ2μmの軟磁性薄膜として形成したときの結果である。感磁部は、組成式がFe71.4Al5.8Si13.1Hf3.34.5Ru1.9で表される、bcc−Feの結晶粒を主体とした微結晶軟磁性合金薄膜として形成した。
【0105】
従来の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の磁気インピーダンス効果特性(○)は、全体的になだらかである。
【0106】
一方、本発明の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の磁気インピーダンス効果特性(□)は、外部磁界が3Oeの点の前後と、−3Oeの点の前後において、外部磁界Hexの変化に伴って出力電圧が急激に変化する領域を有している。外部磁界Hexを、0Oeを中心に±3Oeの範囲で変化させると、出力電圧は、20〜30mV変化する。
【0107】
すなわち、本発明の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子は、外部磁界の微少変化の検出感度が、従来の製法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子よりも著しく向上していることがわかる。
【0108】
これは、本発明の製造方法によって薄膜磁気インピーダンス効果素子を製造すると、薄膜磁気インピーダンス効果素子の感磁部の磁化容易軸方向が、感磁部の素子幅方向に揃うために、素子長手方向に外部磁界が印加されたときの、感磁部の素子幅方向の透磁率の変化率が大きくなるためである。感磁部の素子幅方向の透磁率の変化率が大きくなると、感磁部内を流れる高周波電流の表皮厚さの変化も大きくなる。従って、感磁部のインピーダンス変化が大きくなる。つまり、図6の回路において、出力電圧の変化が大きくなる。
【0109】
図8は、薄膜磁気インピーダンス効果素子Mの感磁部を、素子長さ4mm、素子幅0.5mm、厚さ2μmの軟磁性薄膜として形成したときの結果である。
【0110】
図8の測定と図7の測定では、測定に用いた薄膜磁気インピーダンス効果素子の長さだけが異なっている。薄膜磁気インピーダンス効果素子の材料、製造方法、感磁部となる軟磁性薄膜の磁場中成膜および、成膜後の磁場中アニールの条件は、図7と同じである。
【0111】
また、磁気インピーダンス効果特性を測定するための回路、測定条件も、図7の測定時と同じである。
【0112】
図8において、本発明の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の磁気インピーダンス効果特性(□)は、外部磁界Hexが3Oeの点の前後と、−3Oeの点の前後において、外部磁界Hexの変化に伴って、出力電圧が急激に変化する領域を有している。
【0113】
一方、従来の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の磁気インピーダンス効果特性(○)は、外部磁界Hexが0の点を中心として、外部磁界Hexの絶対値の増加に伴って出力電圧が減少する形状を示している。
【0114】
図8においても、外部磁界の変化の幅が同じとき、本発明の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の出力電圧の変化の大きさのほうが、従来の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の出力電圧の変化の大きさより著しく大きいことがわかる。
【0115】
図8では、外部磁界Hexを、0Oeを中心に±3Oeの範囲で変化させたときの、出力電圧の変化の幅は、約90mVであり、図7の磁気インピーダンス効果特性における出力電圧の変化の幅よりも大きい。すなわち、薄膜磁気インピーダンス効果素子の感磁部の素子長さが長くなると、外部磁界Hexの変化に対する薄膜磁気インピーダンス効果素子のインピーダンスの変化率が大きくなることがわかる。
【0116】
従って、実際に薄膜磁気インピーダンス効果素子を製造するときには、用途に合わせて、感磁部の素子長さなどを変えることによって、薄膜磁気インピーダンス効果素子の外部磁界の検出感度を調節することができる。
【0117】
図9および図10は、それぞれ本発明および従来の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の感磁部をカー効果偏光顕微鏡によって観察し、写真撮影したものの様式図である。
【0118】
図9に示されるように、本発明の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の感磁部では、感磁部に出来る磁壁Wの向きが素子幅方向に揃っている。すなわち、素子幅方向(X方向)に磁区内の磁気モーメントが配向した磁区構造が生じていることがわかる。
【0119】
一方、従来の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子では、感磁部に出来る磁壁Wの向きが素子長手方向(Y方向)に向いている。すなわち、素子長手方向に磁区内の磁気モーメントが配向した磁区構造が生じていることがわかる。
【0120】
図9および図10の矢印は、それぞれの磁区の磁気モーメントの配向方向を示している。隣り合う磁区では、磁気モーメントの方向が互いに反対方向を向き、静磁エネルギーを低下させている。
【0121】
図9および図10から、本発明の製造方法によって、はじめて、薄膜磁気インピーダンス効果素子の感磁部に素子幅方向の一軸異方性を誘導することができ、素子幅方向に磁区内の磁気モーメントが配向した磁区構造を生じさせることができることがわかる。
【0122】
【発明の効果】
以上詳述した本発明の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法によれば、感磁部の素子幅方向が磁化容易軸である一軸異方性が確実に誘導される。したがって、感磁部の素子長手方向に外部磁界を印加したときの、感磁部の素子幅方向の透磁率の変化率が大きくなり、インピーダンスの変化率も大きくなる。つまり、薄膜磁気インピーダンス効果素子に印加される外部磁界の変化に対する、薄膜磁気インピーダンス効果素子のインピーダンスの変化率を大きくできるので、磁気センサーとして優れた検出感度を有する薄膜磁気インピーダンス効果素子を製造することができる。
【0123】
また、感磁部の素子幅を短くすると、素子長手方向に磁化方向を揃えようとする形状磁気異方性が発生する。しかし、本発明の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子では、感磁部の前記素子幅方向を磁化容易軸とする一軸異方性が、この形状磁気異方性に打ち勝って、磁化方向を前記素子幅方向に維持しつづける。
【0124】
したがって、従来の製造方法によって製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子よりも感磁部の素子幅を短くすることができるので、外部磁界の位置検出分解能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法の実施の形態における、基板上に軟磁性薄膜を静磁場中で成膜した状態を示す斜視図。
【図2】図1の軟磁性薄膜をパターン形成して、略長方形上の感磁部を形成した状態を示す斜視図。
【図3】図2の感磁部の両端に電極層を形成した状態を示す斜視図。
【図4】図3の基板から切り出された薄膜磁気インピーダンス効果素子の斜視図。
【図5】本発明における軟磁性薄膜の磁場中成膜に用いることのできるマグネトロンスパッタ装置の断面図。
【図6】薄膜磁気インピーダンス効果素子の磁気インピーダンス効果特性を測定するための回路の回路図。
【図7】本発明および従来の製造方法を用いて製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の磁気インピーダンス効果特性を示すグラフ。
【図8】本発明および従来の製造方法を用いて製造された他の薄膜磁気インピーダンス効果素子の磁気インピーダンス効果特性を示すグラフ。
【図9】本発明を用いて製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の感磁部をカー効果偏光顕微鏡によって観察し、写真撮影したものの様式図。
【図10】従来の製造方法を用いて製造された薄膜磁気インピーダンス効果素子の感磁部をカー効果偏光顕微鏡によって観察し、写真撮影したものの様式図。
【図11】磁気インピーダンス効果素子に駆動交流電流を与え、外部磁界を印加する方法を示す概念図。
【図12】薄膜磁気インピーダンス効果素子の斜視図。
【図13】磁気インピーダンス効果素子の感磁部に素子幅方向の一軸異方性が誘導されたときの、前記感磁部の磁区構造を示す平面概念図。
【図14】磁気インピーダンス効果素子の感磁部の形状磁気異方性によって、前記感磁部が素子長手方向に磁気モーメントが配向した磁区構造を有している状態を示す平面概念図。
【符号の説明】
11 基板
12 軟磁性薄膜
13 感磁部
14 電極層

Claims (10)

  1. (a)非磁性材料からなる基板上に、軟磁性薄膜を一定方向の静磁場中でスパッタ法を用いて成膜する工程、
    (b)前記軟磁性薄膜を、前記(a)の工程において静磁場がかけられた方向が素子幅方向(X方向)となるように略長方形にパターン形成して感磁部を形成する工程と、
    (c)前記(b)の工程で略長方形にパターン形成された感磁部を、この感磁部の素子幅方向の静磁場中、回転磁場中または無磁場中で熱処理にかける工程を有することを特徴とする薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法。
  2. 前記(a)の工程の後、前記(b)、(c)工程の代わりに、
    (d)前記(a)の工程で形成された軟磁性薄膜を、前記軟磁性薄膜に対する方向が、前記(a)の工程においてかけられた静磁場の方向と同じである静磁場中、回転磁場中または無磁場中で熱処理にかける工程と、
    (e)前記軟磁性薄膜を、前記(a)および/または(d)の工程においてかけられた静磁場の方向が、素子幅方向となるように略長方形にパターン形成して感磁部を形成する工程と、
    を有する請求項1記載の磁気インピーダンス効果素子の製造方法。
  3. 前記(a)の工程において、前記静磁場の強度を10(Oe)以上に設定する請求項1または2に記載の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法。
  4. 前記(a)の工程において、前記軟磁性薄膜を、組成式がFeで表され、アモルファス構造を主体とした微結晶軟磁性合金薄膜として形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法。
    ただし、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Wと希土類元素から選ばれる1種あるいは2種以上の元素であり、h、i、jはat%で、45≦h≦70、5≦i≦30、10≦j≦40、h+i+j=100の関係を満足するものである。
  5. 前記(a)の工程において、前記軟磁性薄膜を、組成式が(Co1−cで表される微結晶軟磁性合金薄膜として形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法。
    ただし、元素Tは、Fe、Niのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、元素Mは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Si,P,C,W,B,Al,Ga,Geと希土類元素から選ばれる1種または2種以上の元素であり、Xは、Au,Ag,Cu,Ru,Rh,Os,Ir,Pt,Pdから選ばれる1種あるいは2種以上の元素であり、組成比は、cが、0≦c≦0.7、x,y,z,wは原子%で、3≦y≦30、0≦z≦20、7≦w≦40、20≦y+z+w≦60の関係を満足し、残部がxである。
  6. 前記(a)の工程において、前記軟磁性薄膜を、組成式がT100−d−e−f−gで表され、bcc−Fe、bcc−FeCo、bcc−Coの1種または2種以上の結晶粒を主体とした微結晶軟磁性合金薄膜として形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法。
    ただし、元素Tは、Fe、Coのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、元素Xは、Si、Alのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、元素Mは、Ti、Zr、Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれる1種または2種以上の元素であり、元素Zは、C、Nのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、Qは、Cr,Re,Ru,Rh,Ni,Pd,Pt,Auから選ばれる1種または2種以上の元素であり、d、e、f、gはat%で、0≦d≦25、1≦e≦10、0.5≦f≦15、0≦g≦10の関係を満足するものである。
  7. 前記(a)の工程において、前記軟磁性薄膜を、組成式がT100−p−q−e−f−gSiAlで表され、bcc−Fe、bcc−FeCo、bcc−Coの1種または2種以上の結晶粒を主体とした微結晶軟磁性合金薄膜として形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法。
    ただし、元素Tは、Fe、Coのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、元素Mは、Ti、Zr、Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれる1種または2種以上の元素であり、元素Zは、C、Nのうちどちらか一方あるいは両方を含む元素であり、Qは、Cr,Re,Ru,Rh,Ni,Pd,Pt,Auから選ばれる1種または2種以上の元素であり、p、q、e、f、gはat%で、8≦p≦15、0≦q≦10、1≦e≦10、0.5≦f≦15、0≦g≦10の関係を満足するものである。
  8. 前記(a)の工程において、前記軟磁性薄膜を、組成式が(Fe1−aCo100−x−y(Si1−bで示される非晶質軟磁性合金薄膜として形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法。
    ただし、MはCr、Ruのうちいずれか一方、あるいは両方を含む元素であり、組成比を表すa、bは0.05≦a≦0.1、0.2≦b≦0.8であり、x、yはat%で10≦x≦35、0≦y≦7の関係を満足するものである。
  9. 前記(a)の工程において、前記軟磁性薄膜を、組成式がCoTaHfで表され、アモルファス構造を主体にした非晶質軟磁性合金薄膜として形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法。
    ただし、l、m、nはat%で、70≦l≦90、5≦m≦21、6.6≦n≦15、1≦m/n≦2.5の関係を満足するものである。
  10. 前記(a)の工程において、前記軟磁性薄膜を、組成式がCoZrNbで表されるアモルファス構造を主体とした非晶質軟磁性合金薄膜として形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜磁気インピーダンス効果素子の製造方法。
    ただし、a、b、cはat%で、78≦a≦91、0.5≦b/c≦0.8の関係を満足するものである。
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