JP3688926B2 - 配線基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子や容量素子、抵抗器等の電子部品が搭載される配線基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子や容量素子、抵抗器等の電子部品が搭載される配線基板は、酸化アルミニウム質焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面にタングステン、モリブデン等の高融点金属材料から成る配線導体層、スルーホール導体層、電源導体層および接地導体層を形成した構造を有しており、絶縁基体表面に半導体素子や容量素子、抵抗器等の電子部品が搭載されるとともに各電子部品の電極が配線導体層等に電気的に接続させるようになっている。
【0003】
かかる配線基板は、一般に、セラミックスの積層技術及びスクリーン印刷等の厚膜形成技術を採用することによって製作されており、具体的には以下の方法によって製作される。
【0004】
即ち、
(1)まず、酸化アルミニウム(Al2 O3 )、酸化珪素(SiO2 )、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)等から成るセラミックス原料粉末に有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿物を作り、次にこれを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等によりシート状に形成して複数枚のセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得る。そして各セラミックグリーンシートの上面側から下面側にかけて金属製の打ち抜きピンを押圧し、各セラミックグリーンシートの所定位置に厚み方向に貫通するスルーホールを形成する。
【0005】
(2)次に、前記セラミックグリーンシートの少なくとも1つの表面及びスルーホール内に、タングステンやモリブデン粉末に有機溶剤、溶媒を添加混合して得た導電ペーストをスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布する。
【0006】
(3)次に、前記セラミックグリーンシートの少なくとも1つの表面のほぼ全面に、電源導体層または接地導体層となる導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷塗布する。
【0007】
なお、前記電源導体層または接地導体層となる導電ペーストはセラミックグリーンシートの外周端にまで印刷塗布すると、後の工程で複数枚のセラミックグリーンシートを上下に積層した際、上下のセラミックグリーンシートの密着性が弱いものとなってしまうため、セラミックグリーンシートの外周端から通常、少なくとも0.1mmの領域を除いて印刷塗布されている。
【0008】
(4)そして最後に前記導電ペーストを印刷塗布した各セラミックグリーンシートを、電源導体層または接地導体層となる導電ペーストが印刷された面を間に挟んで上下に積層するとともに還元雰囲気中、約1600℃の温度で焼成し、有機溶剤、溶媒を気化除去するとともに、セラミックグリーンシートと導電ペーストとを焼結一体化することによって絶縁基体の内部及び表面に所定パターンの配線導体層、スルーホール導体層、電源導体層および接地導体層を有する配線基板が完成する。
【0009】
しかしながら、この従来の配線基板においては、スルーホール導体層を形成するためのスルーホールがセラミックグリーンシートの上面側から下面側にかけて金属製の打ち抜きピンを押圧することによって形成されており、該打ち抜きピンは機械的強度の関係から直径を80μm未満とすることができず、その結果、打ち抜きピンを用いて形成されるスルーホール及び該スルーホール内に形成されるスルーホール導体層は直径が80μm以上となり、スルーホール導体層を高密度に形成することができないという欠点を有していた。
【0010】
そこで上記欠点を解消するためにセラミックグリーンシートを感光性とし、所定領域に光を照射して光硬化させるとともに非硬化領域を現像により除去する、いわゆるフォトリソグラフィー技術を採用することによって直径が約60μm程度の微細なスルーホールを形成することが提案されている(特開平6―305814号公報参照)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、感光性のセラミックグリーンシートを用いて配線基板を製造した場合、光硬化後のセラミックシートは内部および表面に網目状の構造を有する有機樹脂が存在し、該網目状の有機樹脂は有機物の移動を妨げるため配線導体層、スルーホール導体層、電源導体層および接地導体層となる導電ペーストが印刷塗布されている光硬化後のセラミックシートを上下に積層し、焼成した時、導電ペーストから気化排出された有機溶剤、溶媒等のガス状の有機物は外部に効率よく移動放出させることができず、上下の光硬化したセラミックシート間に滞留し、その結果、上下の光硬化したセラミックシート間に剥離が発生し、これが焼成後に得られる絶縁基体にフクレ等を生じさせて外観不良や絶縁基体の機械的強度の低下を招来し、同時に絶縁基体内部の配線導体層やスルーホール導体層に断線等を発生させるという欠点が誘発される。
【0012】
特に、電源導体層および接地導体層となる導電ペーストはセラミックグリーンシートのほぼ全面の広い面積に印刷塗布されており、この電源導体層および接地導体層となる導電ペーストより気化排出されるガス状の有機物の量が多いことから、絶縁基体のうち電源導体層および接地導体層となる導電ペーストが印刷塗布されているセラミックグリーンシートの上下に位置する部位におけるフクレ等の発生が顕著となる欠点を有していた。
【0013】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的はスルーホール導体層を高密度に形成することができるとともに、絶縁基体の機械的強度が強く、配線導体層等の導通を確実とした配線基板の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板の製造方法は、
(1) 感光性樹脂組成物にセラミック粉末を分散させた複数枚の感光性セラミックグリーンシートと、金属粉末に有機溶剤を添加した導電ペーストを作製する工程と、
(2)前記感光性セラミックグリーンシートの所定領域に光を照射し所定領域の感光性樹脂組成物を光硬化させるとともに現像して厚み方向に貫通するスルーホールを有する複数枚の光硬化セラミックシートを形成する工程と、
(3)前記導電ペーストを用いて、前記光硬化セラミックシートの少なくとも1つの表面及びスルーホール内に所定パターンの配線用導体層及びスルーホール用導体層を形成する工程と、
(4)前記導電ペーストを用いて、前記光硬化セラミックシートの少なくとも1つの表面で外周端から5mmの幅を除く全表面に電源用導体層もしくは接地用導体層を形成するとともに、外周端から5mmの幅の領域に外周端に向かって放射状に広がる複数個の補助用導体層を形成する工程と、
(5)前記配線用導体層、スルーホール用導体層、電源用導体層もしくは接地用導体層及び補助用導体層を有する複数枚の光硬化セラミックシートを、電源用導体層もしくは接地用導体層及び補助用導体層を間に挟んで上下に積層するとともに焼成し、セラミックから成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体層、スルーホール導体層、及び電源導体層もしくは接地導体層を形成する工程
とから成ることを特徴とするものである。
【0015】
また本発明の配線基板の製造方法は、前記補助用導体層の線幅が0.1mm乃至1mm、隣接間隔が0.1mm乃至1mmであることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の配線基板の製造方法によれば、絶縁基体を形成するためのセラミックグリーンシートを、感光性樹脂組成物にセラミック粉末を添加分散させて感光性となしたことから、セラミックグリーンシートの所定位置に光を照射し所定領域の感光性樹脂組成物を光硬化させるとともに未硬化の領域の感光性樹脂組成物現像により除去することによってスルーホールを極めて簡単に、かつ直径が60μm以下の小さな径に形成することができ、これによってスルーホール内に形成されるスルーホール導体層もその直径を60μm以下の小さいものとしてスルーホール導体層を高密度に形成することが可能となる。
【0017】
また、本発明の配線基板の製造方法によれば、少なくとも電源導体層および接地導体層となる導電ペーストが印刷塗布されている光硬化セラミックシートの外周端から5mmの幅の領域に外周端に向かって放射状に広がる複数個の補助用導体層を形成したことから、配線導体層、スルーホール導体層、電源導体層および接地導体層となる導電ペーストが印刷塗布されている光硬化後のセラミックシートを上下に積層し、焼成した際、光硬化セラミックシートの内部および表面に有機物の移動を妨げる網目状の構造を有する有機樹脂が存在し、かつ電源導体層および接地導体層となる導電ペーストから多量のガス状の有機物が排出されたとしてもかかる多量のガス状の有機物は前記補助用導体層を介して外部に良好に放出されて上下の光硬化したセラミックシート間に滞留することはなく、その結果、上下の光硬化したセラミックシート間の密着を良好とし、焼成後に得られる絶縁基体にフクレ等が発生するのを有効に防止して、外観不良を生じることなく、絶縁基体の機械的強度を強くし、絶縁基体内部の配線導体層やスルーホール導体層の導通を確実とした配線基板を提供することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に本発明の配線基板の製造方法を図1(a)乃至(f)、及び図2に示す実施例に基づいて説明する。
【0019】
まず図1(a)に示す如く、感光性セラミックグリーンシート1を複数枚形成する。
【0020】
前記感光性セラミックグリーンシート1はセラミック粉末に、光反応性化合物、光重合開始剤、光重合促進剤から成る感光性樹脂組成物および必要に応じて有機バインダー、紫外線吸収剤、熱重合禁止剤、非感光性ポリマー等を混合して感光性泥漿物を作り、前記感光性泥漿物をドクターブレード法やカレンダーロール法等によりシート状に成形することによって形成される。
【0021】
前記感光性セラミックグリーンシート1を形成する際に用いられるセラミック粉末としてはガラスセラミックス粉末、アルミナ粉末、ムライト粉末、窒化アルミニウム粉末、結晶化ガラス粉末等が使用され、例えば、ガラスセラミックス粉末が使用される場合には、酸化マグネシウム(MgO)10.8重量%、酸化アルミニウム(Al2 O3 )28.0重量%、酸化珪素(SiO2 )43.8重量%、酸化亜鉛(ZnO)7.1重量%、残部がホウ素(B2 O3 )から成るガラス成分80重量%に対し、酸化珪素(SiO2 )粉末を20重量%としたものが好適に使用される。
【0022】
また前記感光性セラミックグリーンシート1を形成する際に用いられる光反応性化合物は光反応性の炭素−炭素不飽和結合を有するアクリル系またはメタクリル系のモノマーもしくはオリゴマーであり、光硬化して感光性セラミックグリーンシート1を後述する現像液に不溶となすことにより、フォトリソグラフィー法によるスルーホール形成を可能とする作用をなし、例えば、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドラフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化ノニルフェニールアクリレート、ジンクジアクリレート、1,3ブタンジオールジアクリレート、1.4ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロピシ化ネオペンチルグリコールアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化グリセリルトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリストールヒドロキシペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラアクリレート、ペンタアクリレートエステル及び上記のアクリレートをメタクリレートに置き換えたものがあり、これらの1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0023】
また前記感光性セラミックグリーンシート1を形成する際に用いられる光重合開始剤は紫外線等の光エネルギーによりラジカルを生じ、このラジカルにより光反応性化合物に光硬化の反応を開始させる作用をなし、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタノール、ベンジル−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンゾアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソビチロニトリル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−4ジエチルチオキサントン、2,2ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ジフェニルジスルフィド、ベンゾチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、及び、エオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組み合わせなどが挙げられ、上記化合物中の1種または2種以上を用いることができる。
【0024】
また前記感光性セラミックグリーンシート1を形成する際に用いられる光重合促進剤は光反応性化合物の光硬化の反応を促進する作用をなし、例えば4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエート、4−ジメチルアミノエチルベンゾエートなどがあり、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0025】
また前記感光性セラミックグリーンシート1を形成する際に用いられる有機バインダーは、セラミック粉末と結合してこれを有機溶剤中に分散させる作用をなし、イソブチルメタクリレート(i−BMA)とアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体を用いることができる。
【0026】
また前記感光性セラミックグリーンシート1を形成する際に用いられる紫外線吸収剤は、光硬化の反応を起こすために照射された紫外線が感光性セラミックグリーンシート1の内部でセラミック粉末により散乱されて不要な部分まで光硬化をさせてしまい、例えばスルーホールの形成精度を劣化させてしまうということを防ぐ作用をなし、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ビンダードアミン系の化合物の1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
また前記感光性セラミックグリーンシート1を形成する際に用いられる熱重合禁止剤はフリーラジカルを吸収する性質があり、感光性セラミックグリーンシート1に環境中から加わる弱い熱エネルギーにより感光性樹脂組成物の一部から小量のフリーラジカルを生じ、このフリーラジカルにより光反応性化合物が部分的に重合して現像液に溶解し難くなってフォトリソグラフィー法によるスルーホールの形成が困難となるのを防止する作用をなし、例えば、キノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ニトロソアルミニウム塩、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−t−ブチル−p−クレゾール、2.3−ジメチル−6−t−ブチルフェノールが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0028】
また前記感光性セラミックグリーンシート1を形成する際に用いられる非感光性ポリマーは、光反応性化合物の作用を補完してセラミック粉末をシート状に成形することを補助する作用をなし、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等の樹脂にカルボン酸を置換した樹脂を置換した樹脂が挙げられ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボニル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,6ヘキサンジオール、ジメタクリル酸ポリプロピレングリコール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、コハク酸2−メタクリロイルオキシエチル、マレイン酸2−メタクリロイルオキシエチル、フタル酸2−メタクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオデシル及びこれらの有機酸をアクリル酸で置き換えたものの共重合体が挙げられ、置換するカルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酸およびこれらの酸無水物が使用される。
【0029】
次に前記感光性セラミックグリーンシート1の上面に図2(b)に示す如く、フォトマスクパターン2を被着形成する。
【0030】
前記フォトマスクパターン2は微細加工が可能なフォトリソグラフィー技術を採用することによって感光性セラミックグリーンシート1の上面に形成され、その形状は形成しようとするスルーホールの形状に対応したものとなっている。
【0031】
次に前記上面にフォトマスクパターン2が被着されている感光性セラミックグリーンシート1に対し、フォトマスクパターン2側から、例えば、約300mj/cm2 の強度の紫外線を照射し、フォトマスクパターン2の存在しない部分に紫外線を照射させ、紫外線が照射された領域の感光性樹脂組成物に光重合を起こさせて光硬化させるとともにフォトマスクパターン2で覆われた紫外線の照射されていない領域、即ち、未硬化の領域を現像により除去することによって図1(c)に示す如く、所定位置にスルーホール3が形成された光硬化セラミックシート1aを得る。
【0032】
前記感光性セラミックグリーンシート1に紫外線等の光を照射してスルーホール3を有する光硬化セラミックシート1aを形成した場合、フォトマスクパターン2が微細加工の可能なフォトリソグラフィー技術を採用することによって形成されているためスルーホール3の径は60μm以下の小さな径とすることができ、同時にスルーホール3の形成がフォトマスクパターンを介して紫外線等の光を照射し、未硬化の領域を現像で除去するという極めて簡単な作業で行うことができる。
【0033】
なお、前記スルーホール3を形成するための未硬化の感光性樹脂組成物を除去する現像液としては、例えば、トリエタノールアミン等の有機アルカリの溶液が使用され、該トリエタノールアミン等の有機アルカリから成る溶液は未硬化の感光性セラミックグリーンシート1中の有機バインダーの有するカルボキシル基から水素イオンを奪い、このカルボキシル基をイオン化することによって水溶性となし、現像液または洗浄水中に溶解させる。
【0034】
また前記スルーホール3を有する光硬化セラミックシート1aを形成する場合、感光性セラミックグリーンシート1に含有されているセラミック粉末の平均粒径を約2μm(マイクロトラック法でD50)としておくと、紫外線の透過が良好で光硬化を均一に行わせることができる。従って、前記感光性セラミックグリーンシート1のセラミック粉末はその平均粒径を約2μmとしておくことが好ましい。
【0035】
また前記感光性セラミックグリーンシート1に含有されている光反応性化合物は、その添加量をセラミック粉末100重量部に対して5〜12重量部としておくとスルーホール3を感光性セラミックグリーンシート1の厚み方向に均一に形成することが容易となる。従って、前記感光性セラミックグリーンシート1に含有されている光反応性化合物はその添加量をセラミック粉末100重量部に対して5〜12重量部としておくことが好ましい。
【0036】
また前記感光性セラミックグリーンシート1に含有されている光重合開始剤は、その添加量をセラミック粉末100重量部に対して0.5〜5重量部としておくと光硬化の反応を感光性セラミックグリーンシート1中で均一に開始させることができる。従って、前記感光性セラミックグリーンシート1に含有されている光重合開始剤はその添加量をセラミック粉末100重量部に対して0.5〜5重量部としておくことが好ましい。
【0037】
また前記感光性セラミックグリーンシート1に含有されている光重合促進剤は、その添加量をセラミック粉末100重量部に対して2〜5重量部としておくと感光性セラミックグリーンシート1中で均一に光硬化の反応を促進させることができる。従って、前記感光性セラミックグリーンシート1に含有されている光重合促進剤はその添加量をセラミック粉末100重量部に対して2〜5重量部としておくことが好ましい。
【0038】
また前記感光性セラミックグリーンシート1に含有される有機バインダーは、その添加量をセラミック粉末100重量部に対して10〜25重量部としておくと、セラミック粉末を有機溶剤中に均一に分散させることが容易であり、また後の焼成の際に容易に分解してセラミックから成る絶縁基体中に残留することがない。従って、前記感光性セラミックグリーンシート1に含有される有機バインダーはその添加量をセラミック粉末100重量部に対して10〜25重量部としておくことが好ましい。
【0039】
また前記感光性セラミックグリーンシート1に含有される紫外線吸収剤は、その添加量をセラミック粉末100重量部に対して0.01〜2重量部としておくと紫外線を過度に吸収することなく効果的に吸収し、不要な部分の光硬化を抑えることができる。従って、前記感光性セラミックグリーンシート1に含有される紫外線吸収剤はその添加量をセラミック粉末100重量部に対して0.01〜2重量部としておくことが好ましい。
【0040】
また前記感光性セラミックグリーンシート1に含有される熱重合禁止剤はセラミック粉末100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲としておくと熱エネルギーにより生じた小量のフリーラジカルを効果的に吸収することができるとともに、光硬化の反応を妨げることがなく、スルーホール3を任意の箇所に精度良く形成することができる。従って、前記感光性セラミックグリーンシート1に含有される熱重合禁止剤はその添加量をセラミック粉末100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲としておくことが好ましい。
【0041】
また前記感光性セラミックグリーンシート1は、その厚みが10μm未満の場合、機械的強度が弱く、容易に破断して、取扱いが困難となり、また60μmを超えると、光硬化のために照射される紫外線等の光が感光性セラミックグリーンシート1の下面側に到達し難くなってスルーホール3の形成の解像度が低下する恐れがある。従って、前記感光性セラミックグリーンシート1は、その厚みを10〜60μmの範囲としておくことが好ましい。
【0042】
そして次に図1(d)に示す如く、前記スルーホール3を有する光硬化セラミックシート1aの少なくとも1つの表面およびスルーホール3内に導電ペーストをスクリーン印刷法やスピンコート法等によって所定厚みに被着充填し、配線用導体層4及びスルーホール用導体層5を形成する。
【0043】
前記導電ペーストは、金、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケル、モリブデン、タングステンまたはこれらの合金、あるいはこれらを主成分とする合金等から成る金属粉末に、フタル酸ジブチル(DBP)等のエステル系、αテルピネオール等のアルコール系、トルエン等の芳香族系等の有機溶剤、溶媒を添加し混練することによって形成される。
【0044】
前記金属粉末は、その粒径が5μmを超えると、焼成されて配線導体層やスルーホール導体層を形成したときに金属粉末間に間隙部が生じやすく、配線導体層等の導通抵抗が高くなる傾向があり、配線基板としての電気特性が劣化するおそれがある。従って、前記金属粉末は、その粒径を5μ以下としておくことが好ましい。
【0045】
そして次に、図1(e)に示す如く、前記スルーホール3を有する光硬化セラミックシート1aの少なくとも1つの表面でスルーホール3周辺および外周端から5mmの幅の領域を除く全面とスルーホール3内に導電ペーストをスクリーン印刷法やスピンコート法等によって所定厚みに被着充填し、電源用導体層もしくは接地用導体層6及びスルーホール用導体層5を形成する。
【0046】
この時、同時に前記電源用導体層もしくは接地用導体層6及びスルーホール用導体層5が形成されている光硬化セラミックシート1aの外周端から5mmの幅の領域に導電ペーストを外周端に向かって放射状にスクリーン印刷法やスピンコート法等によって所定厚みに被着させ、図2に示す如く、外周端に向かって放射状に広がる複数個の補助用導体層7を形成する。
【0047】
前記補助用導体層7は、後述する焼成時に電源用導体層もしくは接地用導体層6から排出されるガス状の有機物の外部への放出通路として作用する。
【0048】
前記電源用導体層もしくは接地用導体層6、スルーホール用導体層5及び補助用導体層7は前述の配線用導体層4を形成した際に用いた導電ペーストと同じものが使用される。
【0049】
そして最後に、前記配線用導体層4、スルーホール用導体層5、電源用導体層もしくは接地用導体層6及び補助用導体層7を有する複数枚の光硬化セラミックシート1aを、電源用導体層もしくは接地用導体層6及び補助用導体層7を間に挟んで上下に積層するとともに焼成し、光硬化セラミックシート1a中の光硬化した感光性樹脂組成物及び導電ペースト中の有機溶剤、溶媒を外部に放出させるとともに、セラミック粉末および金属粉末を一体焼結させることにより、図1(f)に示す如く、セラミックから成る絶縁基体1bの内部及び表面に配線導体層4a、スルーホール導体層5a、及び電源導体層もしくは接地導体層6a及び補助導体層7aを有する製品としての配線基板が完成する。
【0050】
なお、この場合、光硬化セラミックシート1aの内部および表面に有機物の移動を妨げる網目状の構造を有する有機樹脂が存在しており、かつ焼成時に電源用導体層もしくは接地用導体層6から多量のガス状の有機物が排出されるが.この電源用導体層もしくは接地用導体層6から排出された多量のガス状の有機物は前記補助用導体層7を介して外部に良好に放出され、上下の光硬化セラミックシート1a間に滞留することはなく、その結果、上下の光硬化セラミックシート1a間の密着を良好とし、焼成後に得られる絶縁基体1bにフクレ等が発生するのを有効に防止して、外観不良を生じることなく、絶縁基体1bの機械的強度を強くし、絶縁基体1b内部の配線導体層4aやスルーホール導体層5a等の導通を確実となすことができる。
【0051】
特に前記補助用導体層7はその線幅が0.1mm未満となると、焼成時に電源用導体層もしくは接地用導体層6から排出されるガス状の有機物を効率よく外部に放出させることが困難となり、また1mmを超えると各々の補助用導体層7を介して放出されるガス状有機物の量が多くなりすぎ、放出時のガス圧によって上下の光硬化セラミックシート1a間に剥離が発生してしまう危険性がある。従って、補助用導体層7はその線幅を0.1mm乃至1mmとしておくことが好ましい。
【0052】
また、前記補助用導体層7は、その隣接間隔が0.1μm未満の狭いものになると、補助用導体層7を介して放出されるガス状有機物のガス圧が隣接する補助用導体層7間で合わさって大きな圧力となり、上下の光硬化セラミックシート1a間に剥離が発生してしまい、また1mmを超えると電源用導体層もしくは接地用導体層6から排出されるガス状の有機物を効率よく外部に放出させることが困難となり、ガス状有機物が上下の光硬化セラミックシート1a間に滞留して光硬化セラミックシート1a間に剥離が発生してしまう危険性がある。従って、前記補助用導体層7は、その隣接間隔を0.1mm乃至1mmとしておくことが好ましい。
【0053】
更に前記補助用導体層7はその長さが5mmを超える長いものとなると電源用導体層もしくは接地用導体層6から排出されるガス状の有機物を効率よく外部に放出させることが困難となることから、その長さは5mm以下にしておく必要があり、これに伴って、電源用導体層もしくは接地用導体層6もその外周の位置は光硬化セラミックシート1aの外周端より5mm以内の位置に特定される。
【0054】
なお、この電源用導体層もしくは接地用導体層6の外周位置と光硬化セラミックシート1aの外周端との距離が1mm未満となると、上下の光硬化セラミックシート1a間の密着性が悪くなって、上下の光硬化セラミックシート1a間に剥離が発生してしまう危険性がある。従って、電源用導体層もしくは接地用導体層6の外周位置と光硬化セラミックシート1aの外周端との距離は1mm以上としておくことが好ましい。
【0055】
かくして得られた配線基板は、絶縁基体1bの表面に半導体素子や容量素子、抵抗器等の電子部品が搭載されるとともに各電子部品の電極が配線導体層4a等に電気的に接続され、これによって各電子部品はその各々が配線導体層4a等を介して互いに電気的に接続されるとともに外部電気回路に接続されることとなる。
【0056】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0057】
【発明の効果】
本発明の配線基板の製造方法によれば、絶縁基体を形成するためのセラミックグリーンシートを、感光性樹脂組成物にセラミック粉末を添加分散させて感光性となしたことから、セラミックグリーンシートの所定位置に光を照射し所定領域の感光性樹脂組成物を光硬化させるとともに未硬化の領域の感光性樹脂組成物現像により除去することによってスルーホールを極めて簡単に、かつ直径が60μm以下の小さな径に形成することができ、これによってスルーホール内に形成されるスルーホール導体層もその直径を60μm以下の小さいものとしてスルーホール導体層を高密度に形成することが可能となる。
【0058】
また、本発明の配線基板の製造方法によれば、少なくとも電源導体層および接地導体層となる導電ペーストが印刷塗布されている光硬化セラミックシートの外周端から5mmの幅の領域に外周端に向かって放射状に広がる複数個の補助用導体層を形成したことから、配線導体層、スルーホール導体層、電源導体層および接地導体層となる導電ペーストが印刷塗布されている光硬化後のセラミックシートを上下に積層し、焼成した際、光硬化セラミックシートの内部および表面に有機物の移動を妨げる網目状の構造を有する有機樹脂が存在し、かつ電源導体層および接地導体層となる導電ペーストから多量のガス状の有機物が排出されたとしてもかかる多量のガス状の有機物は前記補助用導体層を介して外部に良好に放出されて上下の光硬化したセラミックシート間に滞留することはなく、その結果、上下の光硬化したセラミックシート間の密着を良好とし、焼成後に得られる絶縁基体にフクレ等が発生するのを有効に防止して、外観不良を生じることなく、絶縁基体の機械的強度を強くし、絶縁基体内部の配線導体層やスルーホール導体層の導通を確実とした配線基板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)乃至(f)は本発明の配線基板の製造方法を説明するための各工程毎の断面図である。
【図2】図1(e)の平面図である。
【符号の説明】
1・・・・感光性セラミックグリーンシート
1a・・・光硬化セラミックシート
1b・・・絶縁基体
3・・・・スルーホール
4・・・・配線用導体層
4a・・・配線導体層
5・・・・スルーホール用導体層
5a・・・スルーホール導体
6・・・・電源用導体層もしくは接地用導体層
6a・・・電源導体層もしくは接地導体層
7・・・・補助用導体層
7a・・・補助導体層
Claims (2)
- (1)感光性樹脂組成物にセラミック粉末を分散させた複数枚の感光性セラミックグリーンシートと、金属粉末に有機溶剤を添加した導電ペーストを作製する工程と、
(2)前記感光性セラミックグリーンシートの所定領域に光を照射し所定領域の感光性樹脂組成物を光硬化させるとともに現像して厚み方向に貫通するスルーホールを有する複数枚の光硬化セラミックシートを形成する工程と、
(3)前記導電ペーストを用いて、前記光硬化セラミックシートの少なくとも1つの表面及びスルーホール内に所定パターンの配線用導体層及びスルーホール用導体層を形成する工程と、
(4)前記導電ペーストを用いて、前記光硬化セラミックシートの少なくとも1つの表面で外周端から5mmの幅を除く全表面に電源用導体層もしくは接地用導体層を形成するとともに、外周端から5mmの幅の領域に外周端に向かって放射状に広がる複数個の補助用導体層を形成する工程と、
(5)前記配線用導体層、スルーホール用導体層、電源用導体層もしくは接地用導体層及び補助用導体層を有する複数枚の光硬化セラミックシートを、電源用導体層もしくは接地用導体層及び補助用導体層を間に挟んで上下に積層するとともに焼成し、セラミックから成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体層、スルーホール導体層、及び電源導体層もしくは接地導体層を形成する工程とから成る配線基板の製造方法。 - 前記補助用導体層の線幅が0.1mm乃至1mm、隣接間隔が0.1mm乃至1mmであることを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
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