JP3688922B2 - 硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫化カルボニル(COS)を加水分解反応により硫化水素(H2S)に転化する硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の硫化カルボニル(COS)触媒による加水分解反応において、必要な水蒸気が過剰に供給されると、COS触媒の活性点となる細孔内に水分が凝縮して触媒としての性能が低下し、加水分解反応が低下すると云う問題があり、このような水分の凝縮防止が課題となっていた。
【0003】
例えば、石炭ガス化複合発電システムのガス精製装置においては、従来は図5に示すように、燃焼ガスに対し水洗浄塔2がCOS転化器35の水蒸気供給手段となり、COS転化器35へ供給される水蒸気濃度は、水洗浄塔2の出口温度における飽和水蒸気濃度となる。
【0004】
しかし、COS転化触媒1は、触媒反応を140℃以下で行う時、水蒸気濃度が15%以上と高くなると、水分による被毒により触媒性能が低下する傾向があった。
【0005】
そこでCOS転化触媒1の水蒸気の凝縮を防止するため、COS転化器35の入口上流に加熱手段(15,16)を配置し、COS転化器35内の反応温度を水洗浄塔2の出口の温度よりも20〜30℃高くして、COS転化触媒1への水蒸気の凝縮を防止する方法がとられていた。
【0006】
しかし、上記方法においても、COS転化触媒1の水蒸気の凝縮を十分に防止することができず、それに基づく触媒性能の低下を十分に抑制できなかった。
【0007】
また、石炭ガス化複合発電システムのガス精製装置の精製ガスを、溶融塩燃料電池に使用する場合、湿式脱硫装置の後流に精密脱硫装置を設置する。この精密脱硫装置内にはCOS加水分解触媒とH2S吸着剤が設置してある。ここでの反応温度は、この上流に設置された湿式脱硫装置の出口ガス温度が40℃であるため、40℃に設定することが望ましい。
【0008】
しかし、現状での精密脱硫用のCOS加水分解触媒は、〔1〕式に示す相対湿分が15%以上になると、水分の吸着による細孔の閉塞に伴うCOSの細孔内拡散阻害によって、COS加水分解活性が低下する。
【0009】
【数1】
相対湿分(%)=(水蒸気分圧/飽和水蒸気分圧)×100 …〔1〕
例えば、精密脱硫装置を40℃で運転すると、〔1〕式による相対湿分は約83%と高くなり、触媒性能は著しく低下する。
【0010】
そのために、反応温度を100℃程度まで上昇し飽和水蒸気分圧を増大することで、相対湿分を14%程度まで低下させて触媒性能を維持していた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、COS転化触媒を用いたガス精製装置において、COS転化触媒の触媒性能の長寿命化を図ったガス精製装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、水分が凝縮しにくいCOS転化触媒を用いたガス精製装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の要旨は次の通りである。
【0014】
〔1〕 ガス化炉16,排熱回収ボイラ17の後段に、ガス/ガス熱交換器10、冷却器9、水洗浄塔2、硫化カルボニル(以下、COSと称す)転化器35、冷却器25、その後流に湿式脱硫装置の吸収塔11、再生塔12を有するガス精製装置であって、
前記COS転化器35内にはCOS転化触媒1が充填され、該COS転化器35の入口側には空気または不活性ガス供給弁28、COS転化器35の出口側にはパージ配管入口弁29が設置され、
前記COS転化器35には、入口弁27,出口弁30、および、バイパスとそれを開閉するバイパス弁36が設けられており、
前記COS転化触媒1の触媒性能低下時には、前記バイパス弁36を開けて生成ガスをバイパスに流すと共に、前記入口弁27,出口弁30を閉じ、前記空気または不活性ガス供給弁28、パージ配管入口弁29を開けて、COS転化器35に空気または不活性ガスを供給することで前記COS転化触媒1の触媒性能を向上できるよう構成したことを特徴とする硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置。
【0015】
〔2〕 前記COS転化器35を少なくとも2基設け、各COS転化器毎に前記空気または不活性ガスが供給可能に構成されている前記の硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置。
【0016】
〔3〕 前記COS転化器の一方に前記空気または不活性ガスが供給され、他のCOS転化器にはガス化炉からの生成ガスが供給できるよう構成した前記の硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置。
【0017】
〔4〕 前記COS転化器35に空気または不活性ガスを供給するガス供給手段が該空気または不活性ガスを所定温度に加熱できる加熱手段を備えている前記の硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置。
【0018】
〔5〕 前記COS転化触媒1が、撥水性触媒である前記の硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置。
【0019】
本発明では、COS転化触媒を撥水処理して耐水性を向上した触媒を用いることで、該COS転化触媒を水洗浄塔2の内部に設置し、COS転化触媒と水洗浄塔を一体化でき、コンパクトなガス精製装置を提供することが可能である。これによれば、反応温度を高くするために付設していた加熱器を特に設けなくともよいので、コンパクトなガス精製装置を提供することもできる。
【0020】
特に、水分吸着により触媒性能が劣化した場合、空気または不活性ガス、例えば窒素ガスを流通して加熱することで性能を回復させることができ、長寿命のガス精製装置を提供することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0022】
〔実施例 1〕
図5は、従来のガス精製装置の構成の一例を示す系統図である。図5における主要な機器は、ガス化炉16,排熱回収ボイラ17の後流に、ガス/ガス熱交換器10、冷却器9、水洗浄塔2、COS転化器35、冷却器25、その後流に湿式脱硫装置の吸収塔11、再生塔12が設置されている。COS転化器35には、COS転化触媒1が充填されている。
【0023】
吸収塔11の入口温度は約40℃であり、この温度での入口ガスの相対湿分は約89%と高い。従来、この条件では触媒細孔内に水分が凝縮し性能が低下するため、反応温度を85℃程度に上げて、相対湿分を下げることで触媒性能の維持を図っていた。
【0024】
これに対し、図1は、本発明のガス精製装置の構成の一実施例の系統図である。本実施例では、COS転化触媒1が水分を吸着して劣化した場合、その触媒性能を回復させるようにしたガス精製装置にある。
【0025】
ここではガス化炉16、冷却器9、水洗浄塔2、COS転化触媒1、ガス/ガス熱交換器15、冷却器25、湿式脱硫装置の吸収塔11、再生塔12、COS転化器35が設置されている。
【0026】
また、COS転化器35の入口側には窒素ガス供給弁28、COS転化器35の出口側にはパージ配管入口弁29が設置されている。
【0027】
水洗浄塔2の補機としては、ガス冷却並びに脱塵のためのベンチュリー7、循環ポンプ8、水洗浄塔用補給水ポンプ3、充填層6、棚段5を有する。
【0028】
湿式脱硫装置は吸収塔11、再生塔12、吸収液循環ポンプ13、液/液熱交換器14で構成され、吸収塔11ではガス中のH2Sを吸収液中に化学吸収する。ここで精製されたガスは熱交換器10を通り、ガスタービン燃焼器19で燃焼される。
【0029】
再生塔12では吸収液中のH2Sを脱離させ、燃焼炉38で燃焼してSO2とし、石膏回収装置(図示省略)で回収する。
【0030】
上記本実施例の特徴は、COS転化器35と、これに並行してバイパス弁36が設置され、COS転化器35内のCOS転化触媒1が、水分吸着によりその触媒性能が低下した場合、バイパス弁36を開けて生成ガスをバイパスに流し、その間に、入口弁27,出口弁30を閉じ、窒素ガス供給弁28を開け、COS転化触媒1に窒素ガスを供給するようにした点にある。
【0031】
供給窒素ガスは図示していないが、例えば、蒸気等により加熱し、所定の温度にしたものを用いる。
【0032】
図2は、本実施例のガス精製装置の効果を示すグラフである。横軸に排気処理温度、縦軸に転化率を示す。試験に用いた触媒は水分を過剰に吸着し、転化率が低下した触媒である。
【0033】
排気処理温度が180℃以上になると、反応温度200℃の転化率(○,●)は目標値以上となる。
【0034】
一方、反応温度180℃の転化率(□)は、排気処理温度が200℃よりも下がると目標性能以下となり、排気処理条件としては不十分となる。
【0035】
上記の排気処理温度と転化率との関係から判断し、排気処理温度は200℃以上であれば十分、触媒の性能を回復することができる。
【0036】
〔実施例 2〕
図3は、本発明のガス精製装置の他の実施例の構成を示す系統図である。本実施例は、COS転化触媒が水分吸着により劣化した場合に、その性能回復処理をガス精製装置の運転と並行して行う方法である。
【0037】
水洗浄塔2、熱交換器15、加熱器16、並列に2基のCOS転化器35、37が設置してある。COS転化器35の入口側には入口弁27と窒素ガス供給弁28が、COS転化器37の入口側には入口弁26と窒素ガス供給弁31がそれぞれ設けられている。
【0038】
COS転化器35の出口側にはパージ配管入口弁29、COS転化器出口弁30が、また、COS転化器37の出口側にはパージ配管入口弁32、COS転化器出口弁33がそれぞれ設けられている。
【0039】
上記において、運転中は、入口弁27,出口弁30は開、他の弁(28、29、31、32、26、33)は閉にして、COS転化器35に生成ガスを流通させCOS転化を行う。
【0040】
COS転化触媒が、水分吸着により性能が低下した時は、弁26、33を開き、COS転化器37に生成ガスを流通させ、次いで、弁27、30を閉じてCOS転化器35への生成ガスの流通を停止する。
【0041】
次に劣化したCOS転化触媒を排気処理するために、窒素ガス供給弁28を開け、COS転化器35に所定の温度の窒素ガスを供給して処理する。図示していないが、供給する窒素ガス温度は蒸気により加熱され供給される。これによって、COS転化器35のCOS転化触媒の性能を回復させる。
【0042】
次に、COS転化器37のCOS転化触媒が、水分吸着により性能が低下した時は、上記と同様に弁27、30を開き、触媒性能が回復したCOS転化器35に生成ガスを流通させ、弁26、33を閉じてCOS転化器37への生成ガスの流通を停止する。
【0043】
このように、一対のCOS転化器を交互に使用することで、ガス精製装置の運転を停止することなく、COS転化器の触媒性能を回復させることができ、効率の良い運転を行うことができる。
【0044】
〔実施例 3〕
本発明では、COS転化触媒1として撥水処理されたものを用いることができる。撥水処理触媒を用いることでその耐水性を一段と向上することができ、水洗浄塔2内の上部に設置することも可能である。水洗浄塔2内の上部温度は、水洗浄塔出口ガス温度計4による測定では135℃であり、COS転化反応が進行可能な反応温度である。
【0045】
従来、COS転化触媒1は水洗浄塔2の後流に、別容器として設置され、COS転化器の入口に加熱器を設置していた。
【0046】
上記COS触媒の撥水処理法について説明する。本実施例においては、COS触媒の撥水剤としてフッ素樹脂を使用した。フッ素樹脂としては、側鎖炭化水素の水素原子がフッ素原子で置換、または、水素原子が3フッ化メチル基(CF3)で置換されていてもよい。例えば、4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂を用いることができる。
【0047】
上記フッ素樹脂としては、57重量%のフッ素樹脂溶液を用い、次の様にして撥水処理触媒を調製した。
【0048】
上記フッ素樹脂(FEP)溶液を精製水で5〜10倍希釈し、該希釈溶液をCOS触媒1g当たり1mlの割合で含浸する。10倍希釈溶液を用いた場合は、触媒上にFEPを5.7重量%、5倍希釈溶液を用いた場合は、触媒上にFEPを10.2重量%坦持させたことになる。含浸後、加熱(100℃)し、触媒の水分を全て蒸発させる。
【0049】
なお、上記撥水処理には、界面活性剤を併用するのがよいが、触媒の撥水性を高める上では、界面活性剤だけを分解できる焼成条件で後処理するのがよい。本実施例では、調製触媒を所定の温度で焼成し、その触媒性能を評価して、最適な処理条件を検討した。その結果を図4に示す。
【0050】
横軸に撥水処理後の焼成温度、縦軸に反応管出口のCOS濃度を示す。加水分解反応条件は反応温度45℃、相対湿分89.4%、S.V.:1013h~1、入口COS濃度5ppmである。
【0051】
焼成しない場合は2ppm以上のCOSがリークするが、焼成温度が250℃まで上昇するに従い触媒性能は向上する。撥水処理剤中の界面活性剤が分解することで触媒の撥水性が高まり、触媒表面が水分による被毒を受けにくくなったためである。
【0052】
しかし、焼成温度が温度250℃を超えると触媒性能は低下する。これは撥水剤自体の熱分解によるものと考える。従って、焼成温度は撥水剤が熱分解しない温度で処理することが重要である。
【0053】
撥水処理したCOS転化触媒1を用いることで、より一段と長寿命のガス精製装置を提供することができる。
【0054】
また、撥水処理したCOS転化触媒1を用いることで、相対湿分が高くても性能を維持できるので、精密脱硫用のH2S吸着剤34を吸収塔11の内部に配置することができ、精密脱硫と湿式脱硫とを一体化した装置とすることができる。
【0055】
また従来、精密脱硫装置入口には、ガス温度を40℃から85℃へ上昇するために加熱器を設置していたが、これを省略することもできる。
【0056】
【発明の効果】
本発明では、特に、COS転化触媒の水分吸着による触媒性能の劣化を空気または不活性ガス雰囲気下で加熱処理することにより回復させることができるので、ガス精製装置の長寿命化を図ることができる。
【0057】
また、上記空気または不活性ガス雰囲気下の加熱処理装置を一対以上配置することで、ガス精製装置の運転を中断せずに、上記COS転化触媒の触媒性能を回復することができるので、当該装置の連続運転が可能となる。
【0058】
また、COS転化触媒を撥水処理した撥水性触媒を用いることで、耐水性を一段と向上できる。さらに、COS転化触媒と水洗浄塔を一体化して、ガス精製装置をコンパクト化できる。
【0059】
特に、COS転化触媒に撥水性触媒を用いることで、従来、COS転化器内の触媒の水蒸気凝縮を防止するために設置していた加熱器を省くことができ、ガス精製装置のコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるガス精製装置の一実施例の構成を示す系統図である。
【図2】本発明によるガス精製装置の制御方法の効果を示すグラフである。
【図3】本発明によるガス精製装置の一実施例の構成を示す系統図である。
【図4】本発明のガス精製装置の撥水性触媒の焼成処理温度と触媒活性効果との関係を示すグラフである。
【図5】従来のガス精製装置の構成の一例を示す系統図である。
【符号の説明】
1…COS転化触媒、2…水洗浄塔、3…水洗浄塔用補給水ポンプ、4…水洗浄塔出口ガス温度計、5…棚段、6…充填層、7…ベンチュリー、8…水循環用ポンプ、9,25…冷却器、10,15…ガス/ガス熱交換器、11…吸収塔、12…再生塔、13…吸収液循環ポンプ、14…液/液熱交換器、16…ガス化炉、17,21…排熱回収ボイラ、18…ガスタービン、19…ガスタービン用燃焼器、20,23…発電器、22…蒸気タービン、24…煙突、26,27…入口弁、28,31…窒素ガス供給弁、29,32…パージ配管入口弁、30,33…出口弁、34…H2S吸着剤、35,37…COS転化器、36…バイパス弁、38…燃焼炉。
Claims (5)
- ガス化炉,排熱回収ボイラの後段に、ガス/ガス熱交換器、冷却器、水洗浄塔、硫化カルボニル(以下、COSと称す)転化器、冷却器、その後流に湿式脱硫装置の吸収塔、再生塔を有するガス精製装置であって、
前記COS転化器内にはCOS転化触媒が充填され、該COS転化器の入口側には空気または不活性ガス供給弁、COS転化器の出口側にはパージ配管入口弁が設置され、
前記COS転化器には、入口弁,出口弁、および、バイパスとそれを開閉するバイパス弁が設けられており、
前記COS転化触媒の触媒性能低下時には、前記バイパス弁を開けて生成ガスをバイパスに流すと共に、前記入口弁,出口弁を閉じ、前記空気または不活性ガス供給弁、パージ配管入口弁を開けて、COS転化器に空気または不活性ガスを供給することで前記COS転化触媒の触媒性能を向上できるよう構成したことを特徴とする硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置。 - 前記COS転化器を少なくとも2基設け、各COS転化器毎に前記空気または不活性ガスが供給可能に構成されている請求項1に記載の硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置。
- 前記COS転化器の一方に前記空気または不活性ガスが供給され、他のCOS転化器にはガス化炉からの生成ガスが供給できるよう構成した請求項2に記載の硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置。
- 前記COS転化器に空気または不活性ガスを供給するガス供給手段が該空気または不活性ガスを所定温度に加熱できる加熱手段を備えている請求項1,2または3に記載の硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置。
- 前記COS転化触媒が、撥水性触媒である請求項1または2に記載の硫化カルボニル加水分解触媒を用いたガス精製装置。
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