JP3688910B2

JP3688910B2 - 抗酒剤

Info

Publication number: JP3688910B2
Application number: JP29701798A
Authority: JP
Inventors: 條二山原; 敏章大久保
Original assignee: 株式会社活亜興
Priority date: 1998-10-19
Filing date: 1998-10-19
Publication date: 2005-08-31
Anticipated expiration: 2018-10-19
Also published as: JP2000128794A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然植物を基源とする抗酒剤に関するものである。
更に詳しくは、本発明は、酒類の消化管からの吸収を抑制する能力に優れる紅景天属（Ｒｈｏｄｏｌｉａ，ベンケイソウ科）を有効成分とした抗酒剤に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
抗酒剤としては従来よりジスルフィラム（ｄｉｓｕｌｆｉｒａｍ，Ｃ₁₀Ｈ₂₀Ｎ₂Ｓ₄）などの薬物が主流を占めている。例えば、アンタブース（東京田辺製薬社製）などが知られている。この種の抗酒剤は、アルコール（酒類）が分解されて生成したアセトアルデヒドを肝臓中で解毒されるのを阻害し、悪心感を起こさせることにより酒を飲用したくなくさせるものである。
【０００３】
現代はストレス過剰社会といわれ、ストレス開放のためにアルコールが飲用されるが、アルコール飲用による害は社会問題ともなっている。
このため、高性能の抗酒剤が待たれているが、前記したアンタブースの様に肝臓中にアセトアルデヒドを蓄積させ、ムカムカさせることにより飲酒の気を阻害させようとする薬物のほかは、よい薬物がみられないのが現状である。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来の抗酒剤の限界に鑑み創案されたものである。
本発明者は、従来の抗酒剤とは全く異なる観点から抗酒剤について開発を進めた。即ち、本発明者は、気持ちよく通常の様に飲酒しても血中にアルコール分が吸収されないような作用を有する天然物について検討を加えた。
【０００５】
本発明者は、生体安全性や経済性を考慮してアルコール（酒類）が消化管から吸収されるのを抑制する天然物の探索はもとより、他の薬効のもとに使用実績のある生薬群に素材を求めて検討した。
その結果、本発明者は、紅景天が、消化管からのアルコールの吸収阻害作用に優れていることを初めて見い出した。
【０００６】
本発明は前記した知見をベースにして創案されたものである。
本発明により、いわゆる“一気飲”やアルコールに対して非常に弱い体質の人、どうしてもアルコールを飲まなければならない場合にある人、更には多飲によるアルコール傷害を軽減させようとしている人、などに有用な天然植物を基源とした抗酒剤が提供される。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明は、紅景天属（Ｒｈｏｄｉｏｌａ、ベンケイソウ科）植物の粉末及び／又は抽出物を有効成分とする抗酒剤において、前記紅景天属植物が、大花紅景天、茎地紅景天、全弁紅景天、及び、四烈紅景天からなる群から選ばれた少なくとも１種であることを特徴とする抗酒剤に関するものである。
【０００８】
以下、本発明の技術的構成および実施態様について詳しく説明する。
【０００９】
まず、本発明は前記したように天然植物を基源とする抗酒剤に関するため、従来の化学物質（合成物質）に代わって本発明が天然植物を重視する理由から説明する。
世界中の民族医学で用いられている生薬は、それぞれに長い年月の使用例から、安全性は合成の新薬（化学物質）に比較してかなり保証されていると考えてよい。このため、それらの生薬の中でアルコール（酒類）が消化管から吸収される段階を制御してくれるものがあれば、気持ちよく飲酒しても血中にアルコールが入り難く高アルコール血中濃度となることに由来する種々の傷害は生体安全的に除去される。
【００１０】
アルコールを飲用すると胃壁や小腸からかなり早いスピードで吸収され、血中のアルコール濃度の上昇が認められる。
肝臓にはアルコールデヒドロゲナーゼというアルコール分解酵素が存在し、これは人種によって、その酵素活性の強度が異なることはよく知られている。このため、本発明者は、抗酒剤の開発にあたり、血中にアルコールが入る前に消化管の段階で何らかの作用によりアルコール吸収阻害が出来ないかと考えた。
【００１１】
本発明の抗酒剤の開発に際し、実験動物にアルコールを飲用させる前に、紅景天属植物の粉末、水エキス、さらには有機溶媒抽出エキスなどを経口投与し、何も投与しない場合との血中アルコール濃度の比較から検討を加える、という簡単で再現性のよい評価法を用いて検討した。
【００１２】
次に、本発明の抗酒剤の有効成分である紅景天属（Ｒｈｏｄｉｏｌａ、ベンケイソウ科）について説明する。
日本国内において、ベンケイソウ科に属する紅景天は、より具体的には前記紅景天と同じ仲間であるベンケイソウなどは薬用となることが知られていない。
一方、主として中国高山岩石地帯のチベットや雲南、貴州などにおいては基源植物の違いにより、それぞれの生薬名が付けられている。その用途は、中国の代表的な薬用植物辞典である「中薬大辞典」（上海科学技術出版）によると、止血、鎮咳などの目的に内服したり、打撲傷や、火傷に外用することが示されている。またチベットや旧ソ連においては、前記した目的で用いる他に強壮薬として用いることも知られている。
【００１３】
前記したようにベンケイソウ科に属する紅景天は、中国などにおいて伝承薬物として位置づけられているが、現代医学的な薬効の評価がなされていない。
【００１４】
本発明の抗酒剤の有効成分である紅景天属（Ｒｈｏｄｉｏｌａ）植物を例示すると、次の通りである。なお、以下、植物名（学名／産地）の順に例示する。
喜冷紅景天（Ｒ．ａｌｇｉｄａ／青海、海北、海西）、唐古紅景天（Ｒ．ａｌｇｉｄａｖａｒ．Ｔａｎｇｕｔｉｃａ／青海、四川）、西川紅景天（Ｒ．ａｌｓｉａ／四川）、小座紅景天（Ｒ．ｄｕｍｕｌｏｓａ／四川、甘粛）、大花紅景天（Ｒ．ｅｕｒｙｐｈｙｌｌａ／雲南西北、チベット）、長鞭紅景天（Ｒ．ｆａｓｔｉｇｉａｔａ／雲南西北、チベット）、長鱗紅景天（Ｒ．ｇｅｌｉｄａ／宇天山）、豌豆七紅景天（Ｒ．ｈｅｎｒｙｉ／甘粛、河南、湖北、四川、貴州）、昇歯紅景天（Ｒ．ｈｅｔｅｒｏｄｏｎｔａ／新彊、チベット）、狭葉紅景天（Ｒ．ｋｉｒｉｌｏｗｉｉ／河北、山西、雲南、四川、チベット）、四烈紅景天（Ｒ．ｑｕａｄｒｉｆｉｄａ／甘粛、青海、新彊、四川、チベット）、庫頁紅景天（Ｒ．ｓａｃｈａｌｉｎｅｎｓｉｓ／黒龍江、吉林）、茎地紅景天（全弁）（Ｒ．ｓａｃｒａ／雲南西北部、チベット東南）、▲造▼紅景天（Ｒ．ｓｃａｂｒｉｄａ／四川西部、雲南西北部）、粗茎紅景天（Ｒ．ｗａｌｌｉｃｈｉａｎａ／雲南西北部、チベット東南）、大株粗茎紅景天（Ｒ．ｗａｌｌｉｃｈｉａｎａｖａｒ．ｃｈｏｌａｅｎｓｉｓ／青海、雲南西北部）、雲南紅景天（Ｒ．ｙｕｎｎａｎｅｎｓｉｓ／湖北西部）、
などを例示することができる。
前記紅景天属植物の産地としては、中華人民共和国のチベット、四川省、雲南省などが有名である。
【００１５】
本発明の抗酒剤において、その有効成分である紅景天などの紅景天属植物は、粉末状のもの、あるいは水やアルコールなどの所望の溶媒により抽出して得た抽出物、更にはこれらの混合物の形態であってよいものである。
また、前記紅景天属植物、例えば紅景天において、全ての部位を利用することができるが、特に全草部を用いるのが経済的でありかつ効率的である。
【００１６】
前記した紅景天などの紅景天植物から粉末体または抽出物を調製するには、所望の態様で行なえばよいが、以下にその一例を示す。
例えば、紅景天の粉末体は、通常の粉砕機によって１００〜１５０メッシュ程度の粉末状にすればよい。
また、紅景天の溶媒抽出物は、紅景天の粉末１ｋｇに対して３〜５１の溶媒（水あるいはメタノールやエタノールなどのアルコールなど）を加え、加温または冷温下で抽出する。加温の場合は８０〜９０℃で３時間、冷温の場合は室温で３日間放置後いずれも濾過し、その濾液を４５℃以下で減圧濃縮し、完全に溶媒を留去して、乾燥エキスとすればよい。
本発明において、前記粉末体や抽出エキスに、適当な賦形剤あるいは乳糖や澱粉などを加え、顆粒や錠剤の形態の抗糖尿病剤を得てもよい。
更にまた、本発明において、粗切りした紅景天を、そのまま煎じて茶剤として用いてもよい。
本発明において、前記溶媒抽出法に用いる溶媒は、水、含水アルコール、アルコールなどであるが、アルコールとしては、低級アルコール、特に安全性の面からエチルアルコールが好ましい。また、前記含水アルコールの濃度は特に限定しないが、３０〜９０％、通常４０〜７０％濃度のものを使用すればよい。
【００１７】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
なお、本発明は実施例のものに限定されないことはいうまでもないことである。
【００１８】
(1).抗酒剤の調整
紅景天（全草）の乾燥物を粉砕機によって１００〜１５０メッシュの粉末を得た。
また、紅景天（全草）の乾燥物を抽出法によりエキスを調製した。
前記抽出法は粗切、あるいは粉砕した紅景天１ｋｇに水、アルコールなどの溶媒５ｌを加え、９０℃前後で加温、３時間後濾過、濾液を４５℃以下で減圧濃縮し、それぞれ水エキス、アルコールエキスなどを得た。エキスの収率は極めて高く、いずれも４５％〜５０％前後であった。
【００１９】
(2).ラットによるアルコール吸収抑制効果の試験
ラットによるアルコール吸収抑制効果の試験を以下の態様で行なった。
すなわち、２０時間前後絶食させたＷｉｓｔａｒ系雄性ラット（体重２１０〜２４０ｇ）に被検物質（紅景天粉末や紅景天エキス粉末）を経口投与し、その３０分後にエタノール（２０％ｖ／ｖ、５ｍｌ／ｋｇ）を経口投与した。その３０分後、１時間後、２時間後にそれぞれ眼窩静脈から０．５ｍｌ採血し、血中のエタノール量を酵素法（血中アルコールＵＶテストＢＭＹ、ベーリンガーアンハイム社）により測定した。
【００２０】
結果を下記の表１に示す。
表１から明らかのように、紅景天投与群は、３０分後までは対照群と比較して極めて強い血中アルコール濃度の上昇抑制効果を示した。
また、紅景天のうち、特に大花紅景天に強いアルコール吸収阻害作用のあることが判る。
【００２１】
【表１】

【００２２】
【発明の効果】
本発明は、紅景天などの紅景天属（Ｒｈｏｄｉｏｌａ、ベンケイソウ科）植物を有効成分とする抗酒剤を提供するものである。
本発明の抗酒剤は、アルコール（酒類）の消化管からの吸収を抑制する薬効（アルコール吸収阻害作用）を有する天然植物である紅景天属植物を有効成分とするものであり、従来の化学薬品であるジスルフィラム系抗酒剤の作用とは全く異質のものであり、かつ、生体安全性と経済性に優れている。

Claims

紅景天属（Ｒｈｏｄｉｏｌａ、ベンケイソウ科）植物の粉末及び／又は抽出物を有効成分とする抗酒剤において、前記紅景天属植物が、大花紅景天、茎地紅景天、全弁紅景天、及び、四烈紅景天からなる群から選ばれた少なくとも１種であることを特徴とする抗酒剤。