JP3688890B2 - ローラーテーブルの設備診断方法及び設備診断装置 - Google Patents

ローラーテーブルの設備診断方法及び設備診断装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鉄鋼業における鋼材等を円筒形のロールを電動機で駆動して搬送するローラーテーブル群の駆動電動機及び機械駆動系の設備診断方法及び設備診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の産業機械の設備異常を診断する方法としては、各種の検出器を診断対象個所に多数設置し、該検出器より得られた信号を処理することで異常を検出し診断する方法があった。例えば、軸受けの異常(ベアリングの破損、焼き付き、負荷回転体の偏芯等)を診断するために軸受け部に振動検出器を設置し、振動周波数及び振幅の挙動によって異常の診断をする方法があった。また、多数の設備診断用検出器に取って代わって駆動電動機の電流を取り出し、該電流値の最大値、最小値、平均値等を求め予め設定した値と比較して異常の判定を行なう方法や、電流の変化率を検出し予め設定した値と比較し異常を判定する方法があった。
【0003】
このような方法には、無負荷時の電流値を電動機の回転数によって補正することで異常を検出する特開昭52−143856号公報や、電動機の交流電流波形を周波数解析又は位相差を検出して異常を判定する、特開昭61−151477、特開昭61−151478、特開昭61−151479号公報、あるいは電流波形の位相及び振幅の不平衡率を求め異常を診断する特開昭61−186870、特開昭61−186871号公報があり、更には機械系を駆動する電動機の電流を検出し、得られた電流値に対し固定の上限及び下限設定値とで比較する絶対値比較診断による異常判定する方法と、電流信号の直近の移動平均値と偏差値に基づく経時変化実績を基準として比較する相対値比較診断により異常判定する、特公平6−95059号公報などが開示されている。又、駆動条件が同一である少なくとも2台の電動機の各々の電流信号を取り出し、その検出電流間の差と基準値及び基準時間とを比較し異常を判定する特開平7−194186号公報が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし従来の方法では、各種の検出器を設置した従来の設備診断では、検出器を診断対象個所に直接設置するため、診断精度が高い反面、多数の高価な検出器を現場に設置することから、該検出器の保守整備に膨大な労力を必要とし、検出精度を一定に維持することが困難であった。
【0005】
又、機械を駆動する電動機の負荷電流によって診断する方法として特開昭52−143856号公報では、設備異常を診断するために高価な回転検出器が必要であり、検出器の維持管理も必要となる等の問題がある。又、特開昭61−151477、特開昭61−151478、特開昭61−151479、特開昭61−186870、特開昭61−186871号公報では、電動機単体を単体で運転した時の診断では有効な手段では有るが、電動機に減速機や軸受け等の負荷を接続した状態では負荷電流の交流波形を高速のサンプリング機構を用いて診断するため、正常な状態での電流変化や位相変化までも異常として検出してしまうことや、高速のサンプリング機構を有するため非常に高価な装置となってしまう問題がある。
【0006】
更に、特公平6−95059号公報では、機械系を駆動する電動機の電流値と該電動機の定格電流の約80%の上限値と約20%の下限値とで比較する絶対値比較診断では、正常と判断される電流変化の幅は定格電流の20%〜80%と広いため、減速機や軸受け等の潤滑油不足による僅かな電流増加が負荷電流に埋もれてしまい検出することが出来ない上に、上限値と下限値を狭めれば正常な負荷状態での電流変化を誤って異常として検出することになる問題点がある。また、相対値比較診断においても、直近の電流値を移動平均するためにある程度のデータ数(上記従来発明ではデータ数L=0〜30個、サンプリング時間ΔT=6秒以下)が必要となり、これは異常を検出する時間がL×ΔT÷2だけ遅れることを意味し、検出遅れを防止するためにはデータ数L又はサンプリング時間ΔTを小さくする必要があるが、これを小さくすれば移動平均値と偏差値は限りなく得られた電流値に近づくため、異常を検出することが出来ない問題がある上に、設備の異常現象として長時間にわたって徐々に電流が増加又は減少するような場合(例えば、減速機や軸受け等の潤滑油やグリス等の減少による負荷増加)には、偏差値に基づく経時変化実績を基準とした比較では検出できない問題があるため、上記従来発明が提示する効果を発揮できない以上、利用価値の高い診断方法とは言えない問題点があった。
【0007】
又、特開平7−194186号公報による方法では、同一の仕様及び運転条件でなければ診断出来ない上に、少なくとも2台の駆動電動機の各々の電流差にて異常を判定するために電流差が発生してもどちらが異常なのかを判定することが出来ない問題点がある。
【0008】
更に、前述の何れの方法であっても異常を判定する基準値の決定には多大な労力を必要とする。例えば、ローラーを駆動する電動機の負荷電流によって診断する方法においては、様々なローラー長さやローラー径を有し、多種多様な装置で構成するローラーテーブルの異常による挙動を単なる負荷電流値の最大値、最小値及び平均値で診断することが困難である上に、診断精度を高めるためには設備状況に合った異常判定の基準値を定めることが重要であり、この基準値の決定方法は、当初は電動機の仕様や試験成績表を基に比較的に高めあるいは低めに設定し数日間運転して状況を確認し、徐々に基準値を下げるかあるいは上げるかの変更をし、更に状況をみるといった試行錯誤を繰り返すため膨大な時間と労力が必要であるといった問題点がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)円筒形のロールを電動機で駆動して鋼材等を搬送するローラーテーブル群において、ロールを駆動する電動機の電流信号を逐一捕らえ、運転直後の起動電流と起動時間を検出する起動状態検出部と、安定期における電流値の検出と電流の振動周期・振幅を演算するロール偏芯検出部によって構成される電流変化の検出機構を有し、電動機の運転信号によって各検出部を順次に切り替えることで、電動機の電流変化の挙動を運転開始から停止に至るまでの運転状態に応じて連続的にローラーテーブルを診断する事を特徴とするローラーテーブルの設備診断装置。
(2)円筒形のロールを電動機で駆動して鋼材等を搬送するローラーテーブル群において、ロールを駆動する電動機の電流信号を逐一捕らえ、起動状態検出部と、ロール偏芯検出部で得られた過去の検出結果を蓄積し、過去の測定値から標準偏差を求め、ローラーテーブル設備の異常を判定する基準値を自動的に決定する異常判定生成部を有することを特徴とするローラーテーブルの設備診断装置。
(3)(1)の起動状態検出部でローラーテーブルを駆動した直後の電動機の電流信号を運転信号によって捕らえ、その時の最大値である起動電流と駆動電動機の仕様で決まる定格電流に達するまでの時間である起動時間を計測し、これら計測値を異常判定生成部で決定した異常判定基準値と比較することで、電動機単体からカップリング、減速機及びロールの軸受けの設備異常を診断することを特徴とするローラーテーブルの設備診断方法。
(4)ロール偏芯検出部でロールを駆動する電動機が起動完了後のローラーテーブルに搬送物が載っていない無負荷状態の安定期に、電動機の電流信号を予め定めた期間の最大電流値、最小電流値及び平均電流値を計測し、これら計測値を異常判定生成部で決定した異常判定基準値と比較することで、電動機のカップリング、減速機及びベルト駆動プーリーの軸受けの設備異常を診断することを特徴とするベルトコンベアの設備診断方法。
(5)ロール偏芯検出部でロールが偏芯した時の駆動電動機の負荷電流の脈動電流をフィルタ部でノイズを除去した後での電流変化をピークtoピーク検出部で電流変化率が0になる2点間の電流差と時間を検出し演算部で電流の脈動周期及び振幅を演算し、ローラーテーブルの仕様(ロール回転数、ロール径等)で決定した異常判定基準値と比較することで、ロール偏芯の有無と大きさを診断する事を特徴とするローラーテーブルの設備診断方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
前述の問題を解決するために本発明は、図1及び図2に示すように鋼材搬送用のローラー1、該ローラー1を支える軸受け2と、ローラー1を減速機3と駆動電動機4で駆動している構成をとるローラーテーブル群5の駆動電動機4の電流信号6を逐一捕らえ、電流変化の挙動で、電動機4から減速機3及びローラー1の軸受け2の設備異常に加え、電流の振動周期及び振幅でロール偏芯の有無及び偏芯量を診断することを特徴とするローラーテーブルの設備診断方法とローラーテーブル診断装置7である。
【0011】
そのローラーテーブル診断装置7の構成を図3に示す。ローラー1を駆動する電動機4の電流を電流検出器10でとらえ、電流検出器10からの電流信号6をローラーテーブル診断装置7に入力する。また、該駆動電動機4の運転信号11もローラーテーブル診断装置7に入力し、設備診断の開始指令として使用する。入力された電流信号6は、運転信号11が診断条件処理部17に入力されここで設備診断の開始指令を出力し、まず起動状態検出部18で起動電流値と駆動電動機4の定格電流に達するまでの起動時間を算出し、一方を異常判定処理部15へ送り、他方を異常判定値生成部19へ送りデータを蓄積し、蓄積されている過去のデータを基に異常判定値生成部19にて標準偏差値を求めて判定基準値を作成し、その結果を異常判定処理部15へ送り起動状態検出部18からの信号と比較し、正常であるか異常であるかを判定する。判定が終わると診断条件処理部17は、次の診断を行なうべくロール偏芯検出部20に診断開始指令を出力する。
【0012】
ロール偏芯検出部20では、フィルタ処理部12と、ピークtoピーク検出部13及び周期・振幅演算部14を具備し、駆動電動機4の無負荷状態で安定している期間で安定期における電流信号6の平均電流、最大値及び最小値を算出し、電流波形の周期及び振幅を後述する方法で算出し、異常判定処理部15で予め設定監視装置9にて設定した異常判定値と比較して異常判定を行なう。
【0013】
異常判定処理部15の結果は、伝送処理部16から外部の機器である設定監視装置9に対し伝送線8を経由して出力する。ここで設定監視装置9としては、判定基準値を入力したり、診断条件処理部15に対し診断条件(診断周期、診断範囲、診断方法及び異常判定値等)を各電流信号に対して設定したり、又診断結果を表示及び蓄積する機能を有するものであれば、汎用の計算機や制御装置であっても良く、伝送線8に汎用のシリアル伝送やパラレル伝送あるいは高機能のネットワークであっても良く、これらは本発明の自由な設計範囲に属する。
【0014】
次に、駆動電動機4を運転すると電流信号6と運転信号11がローラーテーブル診断装置7に入力され、この時の起動電流波形は図4(a)のようになって起動状態検出部18に入力され、該起動状態検出部18で起動電流Is 及び起動時間Ts を計測する。起動電流Is は、起動直後の最大電流値であって駆動電動機4に接続される負荷(減速機3、軸受け2、ローラー1等)の影響を受けず、該駆動電動機4が持つ固有の電気的特性によって一義的に決まるため、この起動電流Is の値を診断することで、電動機単体の診断(一次捲線や二次捲線の断線や短絡等の異常診断)が可能となる。
【0015】
又、起動電流Is が流れた後は、駆動電動機4の特性に加え負荷状態に従って電流が低下し、該駆動電動機4の定格電流It に達するまでの起動時間Ts を計測する。この起動時間Ts は、負荷の状態によって変化するため、起動時間Ts を診断することによって起動時における負荷側の異常を捕らえることが出来る。例えば、ローラー1の軸が折れた場合などでは駆動電動機4の負荷が減少するため、起動時間はTs ′のように短くなり、減速機3や軸受け2の潤滑油やグリスが不足している時などは、駆動電動機4の負荷が増加するために、起動時間はTs ″のように長くなる。起動状態検出部18で計測した値(起動電流Is 、起動時間Ts )を異常判定処理部15にて正常であるか異常であるかを後述する異常判定値生成部19で決定した判定基準値と比較して判定を行なう。
【0016】
運転信号11を入力して起動状態検出部18での計測信号を異常判定処理部15で判定が完了すると、診断条件処理部17より予め定めた遅延時間Td (これは、該検出部18では運転信号11の導通状態から電流信号6が駆動電動機4の定格電流It に達するまでで処理を完了するが、駆動電動機4の無負荷状態での電流は定格電流It より遥かに小さいために設けるものであり、通常は1〜10秒が望ましい)後に、診断開始指令が該ロール偏芯検出部20に送られてくる。この信号を持ってロール偏芯検出部20では、電流信号6が安定した電流波形は図4(a)のようになって、フィルタ処理部12に入力される。この時の該電流信号6には外部からのノイズ等が乗っているため、予め設定した周波数f[Hz]でフィルタ処理部12にてフィルタ処理を行なうと共に、電流信号6に対し予め定めた一定周期(通常は2〜4秒)の最大値Imax 、最小値Imin 、平均値Iave を算出する。フィルタ処理する周波数f[Hz]は、該ローラー1の回転数N[rpm ]によって次式によって容易に求めることが出来る。
f[Hz]=(N[rpm ]/60)±α (1)
【0017】
ここで、αは求めた周波数fに対しある程度の幅を持たせてフィルタ処理をするためのもので、これは該ローラー1を支える軸受け2や減速機3のグリスや潤滑油等が不足することによって、駆動電動機4の負荷が増加すると駆動電動機4の回転数が変動するために設けるものであって、通常は求めた周波数fの約20%とするのが良い。これによって電流信号6に含まれるノイズを取り除いた結果が図4(b)のようになって、ピークtoピーク検出部13へ送られる。
【0018】
一方、電流信号6に対し一定周期で求めた平均値Iave は、搬送する鋼材等による負荷変動の影響を受けない安定した電流であるから、平均値Iave を診断することで、運転状態における駆動電動機4を含む負荷(減速機3、軸受け2、ローラー1等)の異常を捕らえることが出来る。例えば、ローラー1の軸が折れた場合では、駆動電動機4の負荷が軽くなるために平均値Iave の値は小さくなり、減速機3や軸受け2の潤滑油やグリスが不足することによる負荷増加によって、平均値Iave の値は大きくなる。フィルタ処理部12にて計測した値(最大値Imax 、最小値Imin 、平均値Iave)を異常判定処理部15にて正常であるか異常であるかを、後述する異常判定値生成部19で決定した判定基準値と比較して判定を行なう。
【0019】
電流波形の振動周期を計測する方法としては、例えば電流信号が該フィルタ処理部12にて求めた平均値Iave と交わった点と点の時間を計測するのが一般的であるが、この方法では周期だけを求めるものであって振幅は別の方法で求める必要があった。そこで本発明では、図4(b)のように該ピークtoピーク検出部13にて電流変化ΔI/Δtがマイナスからプラスに変化する点とプラスからマイナスへ変化する点を検出し、該周期・振幅演算部14にてその2点間の電流差Ip-p と時間差Tp を同時に計測し、振動周期を時間差Tp ×2として求め、振幅は電流差Ip-p として求める。この演算結果(平均値Iave 、周期Tp ×2、振幅Ip-p )を異常判定処理部15へ送り、予め下記に記載した方法で決定した判定基準値Tb と比較し異常判定を行なう。
判定基準値Tb [s]=(60/N[rpm ])±β (2)
【0020】
ここで、βは求めた基準値Tb に対しある程度の幅を持たせて比較するものであって、これは駆動電動機4の電流信号6を取り込む周期によって生じる誤差を回避するためのものであって、通常は求めた基準値Tb の5%〜10%の範囲で、電流信号6を取り込む周期の3倍以上が望ましい。尚、前述の演算式(1)及び式(2)は、設定監視装置9にて駆動電動機4の主仕様(定格回転数等)、減速機3の減速比、ローラー1のロール外径寸法等を入力しておけば、予め設定監視装置9にて演算し、その結果を伝送処理部16、診断条件処理部17を経由しフィルタ処理部12へ送るようにすれば、ローラーテーブル診断装置7での処理が軽減されることになる。
【0021】
ローラー1が偏芯することとは、ロールの中心軸に対し重心が移動することであって、この状態でロールが回転するとロールの回転周期で電流が脈動し、電流の脈動振幅はロールの偏芯量による負荷トルクの変動を現していることになる。従って、異常判定処理部15で予めロールの偏芯量と減速機3の減速比を考慮した駆動電動機4の負荷電流特性を図6のように作成しておき、周期・振幅演算部14より得られた結果と比較することで、該ローラー1の偏芯の有無及び偏芯量を診断することが出来る。又、診断結果は、伝送処理部16を経由し設定監視装置9へ送り監視し、特に偏芯量の変化量の傾向を監視することでロールの取替時期の判定等に威力を発揮することになる。
【0022】
ところで、この様な設備診断装置において、起動状態検出部18及びフィルタ処理部12にて計測及び算出した値に対し、異常を判定する基準値を定め比較する方法では、判定基準値の設定によって診断精度に大きく影響を及ぼすことになり、基準値の決定には前述したように困難を極めるうえに、ローラーテーブル診断装置7の診断周期(通常10ms〜40ms)によって、電流信号6の計測値にバラツキが生じることになる。
【0023】
従って、本発明では、起動状態検出部18及びフィルタ処理部12から得られた値(起動電流Is 、起動時間Ts 、平均値Iave )の過去n個分のデータを採取して異常判定値生成部19に蓄積し、蓄積データを基に標準偏差をもとめ判定基準を作成する。例えば、起動電流Is の判定基準を決定する方法では、過去n回(ローラーテーブル群5の機器構成にもよるが、基準値の演算精度の確保と該ローラーテーブル診断装置7の記憶容量からn=200〜300回分が良い)計測した起動電流Is(0)、Is(1)、Is(2)、・・・・、Is(n-1)、Is(n)を蓄積し、異常判定値生成部19において平均値Is(ave)及び標準偏差σを求め、これより判定基準値を、例えばIs(ave)+3σとIs(ave)−3σで異常注意警報(軽故障)とし、Is(ave) +4σとIs(ave)−4σで設備異常警報(重故障)と決定し、異常判定処理部15へ送り起動状態検出部18の計測値Is と比較する。ここで、平均値Is(ave)の3σ及び4σを基準としているが、駆動電動機4の特性によって調整すれば良く、本発明の自由な設計範囲である。
【0024】
これと同様にして、起動状態検出部18の起動時間Ts 及びフィルタ処理部12の平均値Iave についても、過去n個分のデータを基に標準偏差値を求めることで、異常判定基準値を自動的に作成することが出来る。ここで、異常判定値生成部19に蓄積するデータ数を過去の連続したn個のデータとして説明していたが、必ずしも連続したデータ数である必要はない。これは、例えば無負荷状態における安定電流の平均値Iave に対する異常判定基準値の決定時には、該電流信号6をローラーテーブル診断装置7に取り込む周期を10msとしデータ数n=300とすると、異常判定基準値を決定するために参照する過去の実績時間が3sと短く、必ずしも過去の運転履歴を参照したことにならず、有効な判定基準が作成できないため、基準値として有効性を失うことになる。
【0025】
しかし、本発明の意図するところは、起動状態検出部18及びフィルタ処理部12で得られた過去のデータのバラツキである標準偏差を求める統計的手法であるから、得られた過去の連続したデータを母集団として考えると、その母集団から無作為にn個のデータをサンプリングして偏差値を求めれば良いことになり、必ずしも連続したデータを必要としない。この具体的な方法としては、起動状態検出部18及びフィルタ処理部12で得られたデータに対し、例えば0〜1の数字をランダムに生成する乱数発生器を用いて、乱数発生器の数値が0.9以上の時だけ異常判定値生成部19に蓄積する方法や、長時間タイマー(例えば10〜90分)にて定期的に異常判定値生成部19に蓄積する方法があり、これによって異常判定値生成部19に蓄積されたデータ数nで判定基準値を求めれば、過去の長期間の運転履歴を参照した有効性の高い基準値を求めることが出来る。これによって、起動状態検出部18及びフィルタ処理部12で得られた過去の長期間の履歴データを母集団とし、その中からn個のデータを採取し、そのバラツキである偏差値を求める事で判定基準値を自動的に作成することが出来るために、従来のような試行錯誤による基準値を決定する必要がなく、簡単で確実に判定基準値を求めることが出来る。
【0026】
本発明によるローラーテーブルの診断の一例として、ロール直径350[mm]、ロール長さ2150[mm]、ロール回転数136[rpm ]のローラー1を駆動電動機4で駆動する複数のローラーテーブルで構成されるローラーテーブル群5の駆動電動機4から電流検出器10で電流信号6を取り出し、該電流信号6と運転信号11を図2及び図3のように、ローラーテーブル診断装置7に入力する。例えば、ロールの偏芯量が18[mm]の時の電流信号6は図5のようになり、フィルタ処理部12で前述した演算結果から1.81〜2.72[Hz]のフィルタ処理でノイズを除去し、ピークtoピーク検出部13及び周期・振幅演算部14で電流信号6の振動周期0.42[sec ]及び振幅3.2[A]を得る。
【0027】
異常判定処理部15では、ロール偏芯量と負荷電流との関係を予め定めた図6のような特性図から、電流振幅が3.2[A]の時のロール偏芯量20[mm]を得ることが出来る。この値は、ロール偏芯の実測値18[mm]とほぼ同等といえ、実用上も問題が無い結果を得ることが出来た。又、振動周期は136[rpm ]で回転するロールが偏芯した場合に計算上は0.441[sec ]で振動することになり、本発明による方法で十分な精度を確保し、ローラーテーブルの設備診断が可能である。
【0028】
【発明の効果】
本発明は、駆動電動機の電流信号と運転信号を入力し、運転直後の起動電流によって該電動機の診断を行ない、該電動機の起動後の無負荷状態で電流が安定している時に、該電流信号の振動周期及び振幅を演算すること、ロール仕様で定まる判定基準値と比較することで、複数のローラーテーブルを診断することが可能である上に、異常判定の基準値を過去の運転履歴データより自動的に作成することから、鉄鋼業等の鋼材を運搬するローラーテーブル群の設備診断に広く応用することが出来る。また、本発明では電流信号と運転信号のみで設備診断が可能であるため、高価な検出器を必要とせず、更に診断対象を少なくする、例えば診断点数を16点に限定することで該診断装置の処理能力を低く設計できることから、低価格の小型診断装置として製作が可能であり、可搬型にすることで機動性の高い診断装置を作ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ローラーテーブルの機器構成の一例を示した構成図である。
【図2】本発明によるローラーテーブルの設備診断を行なう一例を示した構成図である。
【図3】本発明によるローラーテーブル診断装置の構成の一例を示した構成図である。
【図4】本発明によるローラーテーブルの診断方法を説明すための電流波形の一例を示した図である。
【図5】本発明による実施例でロール偏芯を診断した一例を示した電流波形図である。
【図6】本発明による実施例でロール偏芯量を求めるために作成した電流振幅−偏芯量グラフの一例を示したグラフである。
【符号の説明】
1 ローラー 2 軸受け
3 減速機 4 駆動電動機
5 ローラーテーブル群 6 電流信号
7 ローラーテーブル診断装置 8 伝送線
9 設定監視装置 10 電流検出器
11 運転信号 12 フィルタ処理部
13 ピークtoピーク検出部
14 周期・振幅演算部 15 異常判定処理部
16 伝送処理部 17 診断条件処理部
18 起動状態検出部 19 異常判定値生成部
20 ロール偏芯検出部

Claims (5)

  1. 円筒形のロールを電動機で駆動して鋼材等を搬送するローラーテーブル群において、ロールを駆動する電動機の電流信号を逐一捕らえ、運転直後の起動電流と起動時間を検出する起動状態検出部と、安定期における電流値の検出と電流の振動周期・振幅を演算するロール偏芯検出部によって構成される電流変化の検出機構を有し、電動機の運転信号によって各検出部を順次に切り替えることで、電動機の電流変化の挙動を運転開始から停止に至るまでの運転状態に応じて連続的にローラーテーブルを診断する事を特徴とするローラーテーブルの設備診断装置。
  2. 円筒形のロールを電動機で駆動して鋼材等を搬送するローラーテーブル群において、ロールを駆動する電動機の電流信号を逐一捕らえ、起動状態検出部と、ロール偏芯検出部で得られた過去の検出結果を蓄積し、過去の測定値から標準偏差を求め、ローラーテーブル設備の異常を判定する基準値を自動的に決定する異常判定生成部を有することを特徴とするローラーテーブルの設備診断装置。
  3. 起動状態検出部でローラーテーブルを駆動した直後の電動機の電流信号を運転信号によって捕らえ、その時の最大値である起動電流と駆動電動機の仕様で決まる定格電流に達するまでの時間である起動時間を計測し、これら計測値を異常判定生成部で決定した異常判定基準値と比較することで、電動機単体からカップリング、減速機及びロールの軸受けの設備異常を診断することを特徴とするローラーテーブルの設備診断方法。
  4. ロール偏芯検出部でロールを駆動する電動機が起動完了後のローラーテーブルに搬送物が載っていない無負荷状態の安定期に、電動機の電流信号を予め定めた期間の最大電流値、最小電流値及び平均電流値を計測し、これら計測値を異常判定生成部で決定した異常判定基準値と比較することで、電動機のカップリング、減速機及びベルト駆動プーリーの軸受けの設備異常を診断することを特徴とするベルトコンベアの設備診断方法。
  5. ロール偏芯検出部でロールが偏芯した時の駆動電動機の負荷電流の脈動電流をフィルタ部でノイズを除去した後での電流変化をピークtoピーク検出部で電流変化率が0になる2点間の電流差と時間を検出し演算部で電流の脈動周期及び振幅を演算し、これをローラーテーブルの仕様(ロール回転数、ロール径等)で決定した異常判定基準値と比較することで、ロール偏芯の有無と大きさを診断する事を特徴とするローラーテーブルの設備診断方法。
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