JP3688739B2 - 交信攪乱方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は害虫を防除するための新規な交信攪乱方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
性フェロモンを用いた害虫の防除方法は、従来からの殺虫剤の散布に比べて天敵となる有益動物や人間などの他の動物に対する影響がほとんどなく、しかも作物への残留毒性もない。また、殺虫剤の場合には繰り返し使用によって、抵抗力を有する害虫が出現して殺虫能が低下することがあるが、性フェロモンを用いた場合にはこのような抵抗力を有する害虫を出現させることはなく、極めて安全で有用な方法である。
【0003】
このような実情のもとで、種々の害虫の性フェロモンについて盛んに研究されており、近年数多くの性フェロモンが天然物から分離、同定されている。
【0004】
また、防除のための形状としては、マイクロカプセル中に性フェロモンを充填したり、アラビアゴムやデキストリンなどの保持担体に性フェロモンを含浸、包接するなどの形状のものが提案されており、性フェロモンを大気中に徐々に揮散させて雌雄の交信を攪乱させる設計となっている。このような性フェロモンを利用した交信攪乱方法は茶害虫の防除などにおいて一部実用化されている。
【0005】
上記のような交信攪乱方法は、雌成虫が放出する性フェロモンと同じ物質を予め防除したい区域の大気中に揮散させておくことによって、雌成虫の存在場所を雄成虫に察知されないようにしたり、また、性フェロモンを構成する1成分を多量に揮散、放出することによって雌成虫が放出するフェロモンの成分比を見かけ上変えてしまったりするものであって、雌と雄との交尾の機会を減少させようとするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の交信攪乱方法では広範囲の防除を行う場合、多くのフェロモン製剤(交信攪乱材)を設置して防除対象害虫の活動領域全域に高濃度の性フェロモンを漂わせる必要があるので、多量の性フェロモンが必要となる。特に、比較的高い所の害虫を防除する場合や、街路樹のように1列に並んだ対象植物に対する害虫防除では、性フェロモンを高濃度雰囲気に維持することは難しく、コスト高を免れることはできないものである。
【0007】
以上のように従来から用いられている交信攪乱方法では使用区域が限定されてしまい、コスト高になると共に手間もかかることから、このような問題点を解決した新規な方法の開発が要望されている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記実情に鑑みて本発明者らは新規な交信攪乱方法について検討を重ねた結果、従来の交信攪乱方法のように交信攪乱材から性フェロモンを揮散放出させて防除区域内に性フェロモン雰囲気を作る方法ではなく、交信攪乱材に誘引接触する雄成虫に性フェロモンを付着させて雌性を装わせ、雌性装虫とすることによって、この害虫自体の交尾機会を奪い、しかも、この雌性装虫となった成虫を捕獲するのではなく積極的に飛翔させることによって、周りの雄成虫との間で交信攪乱が生じ、二次的な交信攪乱作用も起こることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の交信攪乱方法は、誘引性を有する性フェロモンを0.1〜10μmの厚みで表面に滲出させてなるシート状包被材料からなる徐放製剤を用いて交信攪乱する方法であって、該徐放製剤から滲出する性フェロモンによって雄成虫を誘引、接触させて雄成虫の体に性フェロモンを付着させたのち、捕獲せずに離すことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の交信攪乱方法に用いる性フェロモンは、特に限定されるものではなく、如何なる害虫の性フェロモンでもよい。例えば、ニカメイガ、ハスモンヨトウ、シロイチモンジヨトウ、コナガ、ネギコガ、カブラヤガ、チャノコカクモンハマキ、チャハマキ、チャノホソガ、モモシンクイガ、ナシヒメシンクイガ、リンゴコカクモンハマキ、リンゴモンハマキ、コスカシバ、モモハモグリガ、キンモンホソガ、シバツトガ、スジキリヨトウ、ヒメコガネ、マメコガネ、アリモドキゾウムシ、ドウガネブイブイ、アオドウガネ、ヒラタアオコガネ、アメリカシロヒトリ、マイマイガなどが挙げられる。
【0011】
本発明の交信攪乱方法では、まず上記性フェロモンに雄成虫を誘引、接触させる。
【0012】
また、本発明の方法において用いる徐放性製剤の形状としては、例えば包被材料と内包される性フェロモンからなり、内包する性フェロモンが包被材料の表面に滲出するように設計された製剤形状が挙げられる。
【0013】
このような製剤形状における包被材料としては、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエステル、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレートなどのプラスチック樹脂が挙げられる。これらのうちフェロモン成分が表面に移行する速度を制御しやすい材料としてポリエステル樹脂を包被材料として用いることが好ましい。
【0014】
また、包被材料の形状としては、特に限定されないが、包被材料の表面積の大きい方が滲出する性フェロモンの害虫への移行転着効率が高いので、上記形状のうちシート状のものが特に好ましく、また、取り扱い性の点でも優れたものである。
【0015】
さらに、シート状の包被材料の場合、機械的強度や耐候性、フェロモン成分の移行速度の制御性(放出速度と移行速度の一定化)などの点からポリエステル樹脂からなるものが好ましい。また、包被材料中の性フェロモンは濃度勾配や包被材料の種類などに影響されながら徐々に表面に拡散移動、滲出するので、その拡散移動速度を制御することによって、長期間にわたる持続的効果を発揮することができる。従って、プラスチック材料からなる包被材料の場合、ガラス転移温度(Tg)を調整することによって拡散移動速度が変わるので、ガラス転移温度が異なる2種類以上のポリエステル樹脂を用いることによって、簡単にガラス転移温度を調整することができ、性フェロモンの拡散移動速度を調整することができる。
【0016】
前記性フェロモンを包被材料中に内包する方法としては、包被材料と性フェロモンとを有機溶剤の存在下で任意の比率で混合し、これを所望の形状に成形する方法や、予め所望の形状に包被材料を成形したのち、性フェロモンを含浸や注入などにて内包させる方法などの方法が採用できる。
【0017】
上記性フェロモンを包被した徐放性製剤のうちシート状の交信攪乱材を作製する方法の一例を以下に示す。
【0018】
ポリエステル樹脂100重量部に対して、対象害虫の性フェロモン1〜100重量部を加え、必要に応じて酸化防止剤や光安定剤などの任意成分を添加して、有機溶剤の存在下で均一に溶解する。得られた溶液を担持体としてのプラスチックシートの片面もしくは両面に塗布、乾燥して交信攪乱材を得ることができる。このときに用いられる担持体として、所謂セパレータと呼ばれる剥離処理を施したプラスチックシートを用いた場合には、塗布乾燥後にシート状の交信攪乱材を担持体から剥離し、シート全面(両面)から性フェロモンが滲出する交信攪乱材を得ることができる。
【0019】
また、担持体として剥離処理を施さないプラスチックシートを用いた場合、ポリエステル製シートのような包被材料との親和性(接着性)が良好で、しかも性フェロモンを透過させない材料を選択すると、得られるシート状の交信攪乱材の片面は担持体にて被覆されるので、片面からのみ性フェロモンが滲出する交信攪乱材となる。このような形態の交信攪乱材は徐放性に優れると共に、非滲出表面を有するので、滲出した性フェロモンが取り扱い時に手などに付着することがなく、また、街路樹などへの設置に際し、両面テープで直接固定したり、ボードや市販の捕獲具などへ固定したりする場合の取り扱い性に優れるものである。
【0020】
なお、上記のようにして担持体の片面に包被材料シートを形成するが、シートは性フェロモンを滲出するために連続気泡系の多孔質体とする必要はなく、性フェロモンが溶解し濃度勾配などによって表面に拡散移動して、所謂ブルーミングする材質であれば無孔シートでもよい。
【0021】
以上のようにして得られる徐放性を有するシート状の交信攪乱材は、内包する性フェロモンが包被材料の表面に滲出し、0.1〜10μm厚程度の極薄層を形成するものである。
【0022】
本発明の交信攪乱方法では、上記のようにして性フェロモンに誘引された雄成虫は、性フェロモンに接触して、その体に性フェロモンが移行、転着(付着)する。本発明ではこのように誘引された雄成虫を捕獲せずに離すことに特徴を有するものである。つまり、離された雄成虫は再び飛翔するが、体に性フェロモンが付着しているので、この雄成虫は本来の雌成虫が出す性フェロモンを感知できなくなり、交尾の機会を失うので雌は産卵できず、次世代の害虫の発生を抑制することができる。さらに、性フェロモンと接触した雄成虫は捕獲されずに離されるので、性フェロモンを大気中に揮散させながら生息領域を飛び回り、雌性を装った二次的なフェロモン発生源となり、その周りの雄成虫を誘引するようになる。その結果、この雌性装虫に誘引された雄成虫も交尾の機会を失うことになり、広範囲にわたって効果的な交信攪乱効果を得ることができるのである。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明の交信攪乱方法は、従来の交信攪乱方法のように性フェロモンを揮散させ雄害虫(成虫)を誘引し、誘引された雄害虫のみの交信を攪乱する方法ではなく、誘引害虫もフェロモン発生源として積極的に利用しているので、広範囲にわたる交信攪乱効果を発揮できるのである。従って、従来では難しかった街路樹での交信攪乱や背の高い植物における交信攪乱をも可能とするものである。
【0024】
特に本発明の交信攪乱方法は、交尾時間や交尾時期が比較的短く、また、生息域が狭い害虫に対して極めて有効的である。例えば、アメリカシロヒトリの場合には交尾時間が10〜15分/日、交尾時期は1世代で1週間程度であり、生息域もプラタナスや桜の街路樹や並木であり、ある程度限られた場所であり、本発明を効果的に作用させることができる害虫の内の一つである。
【0025】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、さらに本発明の交信攪乱方法について具体的に説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の応用が可能であり、何ら以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
実施例1
18mgのポリエステル樹脂をメチルエチルケトン30mgに溶解した溶液に、約6mgのアメリカシロヒトリフェロモンを添加して均一に溶解混合した。得られた溶液を75μm厚のポリエステルフィルムに、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布乾燥して、片面に担持体(ポリエステルフィルム)を有するシート状の交信攪乱材を作製した。
【0027】
実施例2
24mgのポリエステル樹脂(ガラス転移温度47℃)と、12mgのポリエステル樹脂(ガラス転移温度60℃)をメチルエチルケトン30mgに溶解した溶液に、6mgのアメリカシロヒトリフェロモンを添加して均一に溶解混合した。
【0028】
得られた溶液を75μm厚のポリエステルフィルムに、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布乾燥して、片面に担持体を有する交信攪乱材を作製した。
【0029】
実施例3
30mgのポリエステル樹脂(融点170〜180℃)をジクロロメタン150mgに溶解した溶液に、10mgのマイマイガフェロモンを添加して均一に溶解混合した。
【0030】
得られた溶液を75μm厚のポリエステルフィルムに、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布乾燥して1cm×1cmの大きさに裁断し、次いで、ポリエステルフィルムを剥離して、両面からフェロモン成分が滲出するタイプの交信攪乱材を作製した。
【0031】
実験例1
実施例1にて作製した交信攪乱材を、塗布部分の大きさが2cm×2cmとなるように裁断し、これを高さ1.5mのプラタナスの枝に取付け、誘引されるアメリカシロヒトリの様子を観察した。誘引された雄成虫は交信攪乱材に誘引され、接触すると急速に離れて、その日の活動時間中には再び誘引されることはなかった。また、交信攪乱材に接触したアメリカシロヒトリに対して、誘引されて接近していく雄成虫が観察された。
【0032】
実験例2
実施例1にて作製した交信攪乱材を、塗布部分の大きさが2cm×2cmとなるように裁断し、これを東京都墨田区の街路樹(プラタナス)25本に1本おきに設置した。設置は成虫発生前である5月12日と、7月8日と、8月20日の計3回行い、それぞれ成虫発生後である6月15日と、8月19日と、10月15日に次世代幼虫の平均巣網数を調べた。なお、比較として無処理区を設けて比較した。
【0033】
その結果、無処理区では平均巣網数が1.24(1回目)、1.54(2回目)、0.25(3回目)であったが、交信攪乱材を設置した処理区ではそれぞれ、1.09(1回目)、0.60(2回目)、0(3回目)であり、繰り返し設置によって、交信攪乱効果が顕著に現れることが判明した。
【0034】
比較例1
24mgのエチレン/酢酸ビニル共重合体をトルエン30mgに溶解し、6mgのアメリカシロヒトリフェロモンを添加して均一に溶解した。
【0035】
得られた溶液を75μm厚のポリエステルフィルムに乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布乾燥し、さらに、25μm厚のポリエステルフィルムをフェロモン含有層の表面に貼り合わせて、サンドイッチタイプの交信攪乱材を作製した。
【0036】
この交信攪乱材を2cm×2cmの大きさに裁断し、これを大阪府茨木市内の街路樹(プラタナス)20本に10個設置した。設置は7月16日に行い、成虫発生後の8月13日に次世代幼虫の平均巣網数を調べた。なお、比較として無処理区を設けて比較した。
【0037】
その結果、無処理区では平均巣網数が1.53であり、処理区では1.03であった。
【0038】
以上の結果から、本発明の交信攪乱方法は従来の非滲出タイプを用いた交信攪乱方法(比較例1)と比べて交信攪乱効果に優れていることが明らかである。
【産業上の利用分野】
本発明は害虫を防除するための新規な交信攪乱方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
性フェロモンを用いた害虫の防除方法は、従来からの殺虫剤の散布に比べて天敵となる有益動物や人間などの他の動物に対する影響がほとんどなく、しかも作物への残留毒性もない。また、殺虫剤の場合には繰り返し使用によって、抵抗力を有する害虫が出現して殺虫能が低下することがあるが、性フェロモンを用いた場合にはこのような抵抗力を有する害虫を出現させることはなく、極めて安全で有用な方法である。
【0003】
このような実情のもとで、種々の害虫の性フェロモンについて盛んに研究されており、近年数多くの性フェロモンが天然物から分離、同定されている。
【0004】
また、防除のための形状としては、マイクロカプセル中に性フェロモンを充填したり、アラビアゴムやデキストリンなどの保持担体に性フェロモンを含浸、包接するなどの形状のものが提案されており、性フェロモンを大気中に徐々に揮散させて雌雄の交信を攪乱させる設計となっている。このような性フェロモンを利用した交信攪乱方法は茶害虫の防除などにおいて一部実用化されている。
【0005】
上記のような交信攪乱方法は、雌成虫が放出する性フェロモンと同じ物質を予め防除したい区域の大気中に揮散させておくことによって、雌成虫の存在場所を雄成虫に察知されないようにしたり、また、性フェロモンを構成する1成分を多量に揮散、放出することによって雌成虫が放出するフェロモンの成分比を見かけ上変えてしまったりするものであって、雌と雄との交尾の機会を減少させようとするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の交信攪乱方法では広範囲の防除を行う場合、多くのフェロモン製剤(交信攪乱材)を設置して防除対象害虫の活動領域全域に高濃度の性フェロモンを漂わせる必要があるので、多量の性フェロモンが必要となる。特に、比較的高い所の害虫を防除する場合や、街路樹のように1列に並んだ対象植物に対する害虫防除では、性フェロモンを高濃度雰囲気に維持することは難しく、コスト高を免れることはできないものである。
【0007】
以上のように従来から用いられている交信攪乱方法では使用区域が限定されてしまい、コスト高になると共に手間もかかることから、このような問題点を解決した新規な方法の開発が要望されている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記実情に鑑みて本発明者らは新規な交信攪乱方法について検討を重ねた結果、従来の交信攪乱方法のように交信攪乱材から性フェロモンを揮散放出させて防除区域内に性フェロモン雰囲気を作る方法ではなく、交信攪乱材に誘引接触する雄成虫に性フェロモンを付着させて雌性を装わせ、雌性装虫とすることによって、この害虫自体の交尾機会を奪い、しかも、この雌性装虫となった成虫を捕獲するのではなく積極的に飛翔させることによって、周りの雄成虫との間で交信攪乱が生じ、二次的な交信攪乱作用も起こることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の交信攪乱方法は、誘引性を有する性フェロモンを0.1〜10μmの厚みで表面に滲出させてなるシート状包被材料からなる徐放製剤を用いて交信攪乱する方法であって、該徐放製剤から滲出する性フェロモンによって雄成虫を誘引、接触させて雄成虫の体に性フェロモンを付着させたのち、捕獲せずに離すことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の交信攪乱方法に用いる性フェロモンは、特に限定されるものではなく、如何なる害虫の性フェロモンでもよい。例えば、ニカメイガ、ハスモンヨトウ、シロイチモンジヨトウ、コナガ、ネギコガ、カブラヤガ、チャノコカクモンハマキ、チャハマキ、チャノホソガ、モモシンクイガ、ナシヒメシンクイガ、リンゴコカクモンハマキ、リンゴモンハマキ、コスカシバ、モモハモグリガ、キンモンホソガ、シバツトガ、スジキリヨトウ、ヒメコガネ、マメコガネ、アリモドキゾウムシ、ドウガネブイブイ、アオドウガネ、ヒラタアオコガネ、アメリカシロヒトリ、マイマイガなどが挙げられる。
【0011】
本発明の交信攪乱方法では、まず上記性フェロモンに雄成虫を誘引、接触させる。
【0012】
また、本発明の方法において用いる徐放性製剤の形状としては、例えば包被材料と内包される性フェロモンからなり、内包する性フェロモンが包被材料の表面に滲出するように設計された製剤形状が挙げられる。
【0013】
このような製剤形状における包被材料としては、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエステル、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレートなどのプラスチック樹脂が挙げられる。これらのうちフェロモン成分が表面に移行する速度を制御しやすい材料としてポリエステル樹脂を包被材料として用いることが好ましい。
【0014】
また、包被材料の形状としては、特に限定されないが、包被材料の表面積の大きい方が滲出する性フェロモンの害虫への移行転着効率が高いので、上記形状のうちシート状のものが特に好ましく、また、取り扱い性の点でも優れたものである。
【0015】
さらに、シート状の包被材料の場合、機械的強度や耐候性、フェロモン成分の移行速度の制御性(放出速度と移行速度の一定化)などの点からポリエステル樹脂からなるものが好ましい。また、包被材料中の性フェロモンは濃度勾配や包被材料の種類などに影響されながら徐々に表面に拡散移動、滲出するので、その拡散移動速度を制御することによって、長期間にわたる持続的効果を発揮することができる。従って、プラスチック材料からなる包被材料の場合、ガラス転移温度(Tg)を調整することによって拡散移動速度が変わるので、ガラス転移温度が異なる2種類以上のポリエステル樹脂を用いることによって、簡単にガラス転移温度を調整することができ、性フェロモンの拡散移動速度を調整することができる。
【0016】
前記性フェロモンを包被材料中に内包する方法としては、包被材料と性フェロモンとを有機溶剤の存在下で任意の比率で混合し、これを所望の形状に成形する方法や、予め所望の形状に包被材料を成形したのち、性フェロモンを含浸や注入などにて内包させる方法などの方法が採用できる。
【0017】
上記性フェロモンを包被した徐放性製剤のうちシート状の交信攪乱材を作製する方法の一例を以下に示す。
【0018】
ポリエステル樹脂100重量部に対して、対象害虫の性フェロモン1〜100重量部を加え、必要に応じて酸化防止剤や光安定剤などの任意成分を添加して、有機溶剤の存在下で均一に溶解する。得られた溶液を担持体としてのプラスチックシートの片面もしくは両面に塗布、乾燥して交信攪乱材を得ることができる。このときに用いられる担持体として、所謂セパレータと呼ばれる剥離処理を施したプラスチックシートを用いた場合には、塗布乾燥後にシート状の交信攪乱材を担持体から剥離し、シート全面(両面)から性フェロモンが滲出する交信攪乱材を得ることができる。
【0019】
また、担持体として剥離処理を施さないプラスチックシートを用いた場合、ポリエステル製シートのような包被材料との親和性(接着性)が良好で、しかも性フェロモンを透過させない材料を選択すると、得られるシート状の交信攪乱材の片面は担持体にて被覆されるので、片面からのみ性フェロモンが滲出する交信攪乱材となる。このような形態の交信攪乱材は徐放性に優れると共に、非滲出表面を有するので、滲出した性フェロモンが取り扱い時に手などに付着することがなく、また、街路樹などへの設置に際し、両面テープで直接固定したり、ボードや市販の捕獲具などへ固定したりする場合の取り扱い性に優れるものである。
【0020】
なお、上記のようにして担持体の片面に包被材料シートを形成するが、シートは性フェロモンを滲出するために連続気泡系の多孔質体とする必要はなく、性フェロモンが溶解し濃度勾配などによって表面に拡散移動して、所謂ブルーミングする材質であれば無孔シートでもよい。
【0021】
以上のようにして得られる徐放性を有するシート状の交信攪乱材は、内包する性フェロモンが包被材料の表面に滲出し、0.1〜10μm厚程度の極薄層を形成するものである。
【0022】
本発明の交信攪乱方法では、上記のようにして性フェロモンに誘引された雄成虫は、性フェロモンに接触して、その体に性フェロモンが移行、転着(付着)する。本発明ではこのように誘引された雄成虫を捕獲せずに離すことに特徴を有するものである。つまり、離された雄成虫は再び飛翔するが、体に性フェロモンが付着しているので、この雄成虫は本来の雌成虫が出す性フェロモンを感知できなくなり、交尾の機会を失うので雌は産卵できず、次世代の害虫の発生を抑制することができる。さらに、性フェロモンと接触した雄成虫は捕獲されずに離されるので、性フェロモンを大気中に揮散させながら生息領域を飛び回り、雌性を装った二次的なフェロモン発生源となり、その周りの雄成虫を誘引するようになる。その結果、この雌性装虫に誘引された雄成虫も交尾の機会を失うことになり、広範囲にわたって効果的な交信攪乱効果を得ることができるのである。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明の交信攪乱方法は、従来の交信攪乱方法のように性フェロモンを揮散させ雄害虫(成虫)を誘引し、誘引された雄害虫のみの交信を攪乱する方法ではなく、誘引害虫もフェロモン発生源として積極的に利用しているので、広範囲にわたる交信攪乱効果を発揮できるのである。従って、従来では難しかった街路樹での交信攪乱や背の高い植物における交信攪乱をも可能とするものである。
【0024】
特に本発明の交信攪乱方法は、交尾時間や交尾時期が比較的短く、また、生息域が狭い害虫に対して極めて有効的である。例えば、アメリカシロヒトリの場合には交尾時間が10〜15分/日、交尾時期は1世代で1週間程度であり、生息域もプラタナスや桜の街路樹や並木であり、ある程度限られた場所であり、本発明を効果的に作用させることができる害虫の内の一つである。
【0025】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、さらに本発明の交信攪乱方法について具体的に説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の応用が可能であり、何ら以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
実施例1
18mgのポリエステル樹脂をメチルエチルケトン30mgに溶解した溶液に、約6mgのアメリカシロヒトリフェロモンを添加して均一に溶解混合した。得られた溶液を75μm厚のポリエステルフィルムに、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布乾燥して、片面に担持体(ポリエステルフィルム)を有するシート状の交信攪乱材を作製した。
【0027】
実施例2
24mgのポリエステル樹脂(ガラス転移温度47℃)と、12mgのポリエステル樹脂(ガラス転移温度60℃)をメチルエチルケトン30mgに溶解した溶液に、6mgのアメリカシロヒトリフェロモンを添加して均一に溶解混合した。
【0028】
得られた溶液を75μm厚のポリエステルフィルムに、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布乾燥して、片面に担持体を有する交信攪乱材を作製した。
【0029】
実施例3
30mgのポリエステル樹脂(融点170〜180℃)をジクロロメタン150mgに溶解した溶液に、10mgのマイマイガフェロモンを添加して均一に溶解混合した。
【0030】
得られた溶液を75μm厚のポリエステルフィルムに、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布乾燥して1cm×1cmの大きさに裁断し、次いで、ポリエステルフィルムを剥離して、両面からフェロモン成分が滲出するタイプの交信攪乱材を作製した。
【0031】
実験例1
実施例1にて作製した交信攪乱材を、塗布部分の大きさが2cm×2cmとなるように裁断し、これを高さ1.5mのプラタナスの枝に取付け、誘引されるアメリカシロヒトリの様子を観察した。誘引された雄成虫は交信攪乱材に誘引され、接触すると急速に離れて、その日の活動時間中には再び誘引されることはなかった。また、交信攪乱材に接触したアメリカシロヒトリに対して、誘引されて接近していく雄成虫が観察された。
【0032】
実験例2
実施例1にて作製した交信攪乱材を、塗布部分の大きさが2cm×2cmとなるように裁断し、これを東京都墨田区の街路樹(プラタナス)25本に1本おきに設置した。設置は成虫発生前である5月12日と、7月8日と、8月20日の計3回行い、それぞれ成虫発生後である6月15日と、8月19日と、10月15日に次世代幼虫の平均巣網数を調べた。なお、比較として無処理区を設けて比較した。
【0033】
その結果、無処理区では平均巣網数が1.24(1回目)、1.54(2回目)、0.25(3回目)であったが、交信攪乱材を設置した処理区ではそれぞれ、1.09(1回目)、0.60(2回目)、0(3回目)であり、繰り返し設置によって、交信攪乱効果が顕著に現れることが判明した。
【0034】
比較例1
24mgのエチレン/酢酸ビニル共重合体をトルエン30mgに溶解し、6mgのアメリカシロヒトリフェロモンを添加して均一に溶解した。
【0035】
得られた溶液を75μm厚のポリエステルフィルムに乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布乾燥し、さらに、25μm厚のポリエステルフィルムをフェロモン含有層の表面に貼り合わせて、サンドイッチタイプの交信攪乱材を作製した。
【0036】
この交信攪乱材を2cm×2cmの大きさに裁断し、これを大阪府茨木市内の街路樹(プラタナス)20本に10個設置した。設置は7月16日に行い、成虫発生後の8月13日に次世代幼虫の平均巣網数を調べた。なお、比較として無処理区を設けて比較した。
【0037】
その結果、無処理区では平均巣網数が1.53であり、処理区では1.03であった。
【0038】
以上の結果から、本発明の交信攪乱方法は従来の非滲出タイプを用いた交信攪乱方法(比較例1)と比べて交信攪乱効果に優れていることが明らかである。
Claims (2)
- 誘引性を有する性フェロモンを0.1〜10μmの厚みで表面に滲出させてなるシート状包被材料からなる徐放製剤を用いて交信攪乱する方法であって、該徐放製剤から滲出する性フェロモンによって雄成虫を誘引、接触させて雄成虫の体に性フェロモンを付着させたのち、捕獲せずに離すことを特徴とする交信攪乱方法。
- 包被材料が、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエステル、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレートなどのプラスチック樹脂である請求項1記載の交信攪乱方法。
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