JP3688682B2 - 溶接チップおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接トーチなどに取り付けられる溶接チップに関し、特に、電極ワイヤが繰り出される挿通孔の先端部が摩耗せず、またスパッタが先端部に付着しにくいようにした溶接チップに関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム、銅および銅合金、耐熱鋼、チタニウム合金などの金属を溶接する方法として、炭酸ガスアーク溶接が広く実施されている。炭酸ガスアーク溶接では、円筒状のガスノズル内に溶接チップが配置され、この溶接チップから電極ワイヤを繰り出すようにした溶接装置が使用されている。そして、ガスノズルから溶接部に向けて炭酸ガスを噴出し、溶接部の酸化を防止しながら、溶接チップの先端から電極ワイヤを繰り出し、溶接部と電極ワイヤとの間にアークを発生させ、アーク熱で溶接部と電極ワイヤを融解させて溶接する。
【0003】
溶接チップには、電極ワイヤを挿通する挿通孔が形成され、電極ワイヤが挿通孔内で溶接チップに接触することによって通電される。そして、溶接チップは、挿通孔が電極ワイヤに擦られても、摩耗しないようにするため、一般的に硬質のクロム銅合金系、ベリリウム系あるいはアルミナ分散質系の材料によって形成されている。
【0004】
しかし、溶接チップが硬質であっても、電極ワイヤはリールに巻かれた状態から繰り出されるため、いわゆる巻きぐせが付いており、溶接チップの挿通孔の端部が楕円形に偏摩耗することから、電極ワイヤが偏向して繰り出され、所定の位置に溶接できないことがある。特に、溶接位置に高い精度が要求されるロボットアーク溶接にあっては、わずかでも偏摩耗すると、溶接チップは交換しなければならず、クロム銅合金系などの溶接チップは、寿命が短いという問題がある。
【0005】
また、溶接チップが銅合金系などの金属から成形されていることから、溶接の際に飛散するスパッタが、溶接チップの外面に付着し、溶接チップを囲んでいるガスノズルとショートすることがある。すると、ガスノズルと溶接部との間でもアークが発生し、ガスノズルの先端部分が溶解するだけでなく、付着したスパッタが炭酸ガスの噴出の邪魔となり、炭酸ガスの噴出量が不足することから、溶接部が酸化して溶接不良が生じることもある。
【0006】
このような不具合を解消するため、チップ本体の先端部がセラミックキャップによって被着されたコンタクトチップが実開平1−127678号公報に開示されている。
【0007】
【特許文献1】
実開平1−127678号公報(第1図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
実開平1−127678号に開示されたコンタクトチップは、具体的には、電極ワイヤの挿通孔を形成したクロム銅合金系のチップ本体が、先端部を基端部よりも細くした段差付きの円筒形に形成され、この先端部が円筒状のセラミックキャップによって被着されている。セラミックキャップの先端部はチップ本体の先端部の端面をも被着し、電極ワイヤを挿通する中心孔が形成されている。そして、チップ本体の先端部の基端部側には雄ネジが形成され、セラミックキャップの基端部側には、雌ネジが形成され、この雄ネジと雌ネジとが螺合することによって、チップ本体とセラミックキャップとが一体化されている。
【0009】
チップ本体の先端部を被着するセラミックキャップは、硬質であることから偏摩耗することがなく、電極ワイヤが永続的に所定の方向に繰り出される。さらに、セラミックキャップはスパッタが付着しにくく、また付着したとしても、エアーや刷毛などで容易に除去することができる。しかも、セラミックキャップは絶縁材料であるため、セラミックキャップに付着したスパッタがガスノズルに到達したとしても、ショートすることがない。このようにセラミックキャップがチップ本体の先端部を被着したコンタクトチップを備えた溶接装置は、良好な状態に溶接することができる。
【0010】
しかし、銅の熱膨張係数は約17×10-6/Kであり、Si3N4のようなセラミックの熱膨張係数は約2.5×10-6/Kであり、両者の熱膨張係数が大きく異なるため、溶接の際に溶接チップが約1,000℃に加熱されると、銅合金系のチップ本体はセラミックキャップよりも大きく膨張しようとするものの、両者は雄ネジと雌ネジとによって一体化されていることから、両者の螺合部分に熱応力が生じ、破損することもある。
【0011】
そこで、本発明は、熱応力が生じることなくチップ本体の先端部にセラミックのカバーを固定することができるようにした溶接チップを提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る溶接チップは、電極ワイヤが挿通される挿通孔を長さ方向に形成した銅合金系のチップ本体と、該チップ本体の少なくとも先端部を隙間をもって外嵌し、前記挿通孔と連続する中心孔が形成されたセラミック質のカバーとを備え、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤が前記隙間に充填されることにより、前記チップ本体の先端部の外面と前記カバーの内面とが接着されていることを特徴としている。
【0013】
この溶接チップによれば、チップ本体とカバーとを接着する耐熱性無機接着剤が、両者の熱膨張係数の差を吸収し、溶接チップが加熱されても、接着されているチップ本体とカバーとに熱応力が生じないようにすることができる。そして、カバーはセラミック質であり、硬質であるから中心孔が楕円形に偏摩耗することがなく、また絶縁性であることからカバーにスパッタが付着しにくく、付着したとしても、カバーを囲んでいるガスノズルとショートすることがなく、さらに付着したスパッタはエアーや刷毛などで容易に除去することができる。
【0014】
また、前記溶接チップにおいて、前記チップ本体は、先端部が基端部よりも縮径された段差付きの円筒形に形成され、前記カバーは、基端縁が前記チップ本体の基端部の先端側と同一の外径の筒状部と、該筒状部の先端部に設けられ、チップ本体の先端部に隙間をもって覆うとともに、前記中心孔を形成したヘッド部とから構成されていることが好ましい。
【0015】
この溶接チップによれば、チップ本体の縮径された先端部にカバーが外嵌され、チップ本体の基端部の先端側とカバーの基端縁とが同一の外径とされることにより、チップ本体は段差のない円筒状となる。また、カバーは、基端縁側の外径よりもヘッド部側の外径を縮径したテーパ状とすることにより、溶接チップを囲むガスノズル内から、炭酸ガスなどのシールガスが溶接部に向けてスムーズに噴出されるようにすることができる。
【0016】
また、前記溶接チップにおいて、前記チップ本体の先端部の外面は、凹凸目が形成されていることが好ましい。
【0017】
この溶接チップによれば、耐熱性無機接着剤がチップ本体の凹凸目とセラミック質のカバー内とに入り込むため、接着力が強化される。したがって、この溶接チップが溶接の際に高温となって、耐熱性無機接着剤が軟化することがあるとしても、カバーがチップ本体から外れないようにすることができる。なお、凹凸目は、例えばローレットのような細かいギザギザや魚子目(ななこめ)などとすることが好ましい。
【0018】
本発明に係る溶接チップの製造方法は、銅合金系の金属棒を、所定長に切断するとともに、切削加工または冷間鍛造によって、先端部を基端部よりも細い外径の段差付きの円柱状に形成する工程と、該段差付き円柱状の金属棒の長さ方向に挿通孔を形成し、チップ本体を形成する工程と、該チップ本体の先端部の外面に、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤を介してセラミック質のカバーを外嵌した状態で、加熱することにより、該先端部とカバーとを接着する工程と、常温に戻り、前記金属棒が硬化した状態で、金属棒の基端部の端部をネジ切りする工程とを含んでいることを特徴としている。
【0019】
弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤は、銅合金の融点よりも高温に加熱されることにより、銅合金系の金属棒とセラミック質のカバーとを接着することができる。したがって、耐熱性無機接着剤によって接着するため、金属棒を加熱したときに、金属棒が軟化するとともに、表面が酸化される。本発明によれば、先端部を基端部よりも縮径した段差付き円柱状の金属棒に挿通孔を形成したチップ本体およびカバーが一旦、高温下に置かれ、耐熱性無機接着剤によってチップ本体の先端部とカバーとが接着された後に、常温に戻されて金属棒が硬化した状態で、基端部の端部をネジ切りすることにより、変形していない所定の形状のネジを形成することができる。そして、挿通孔を仕上げ削りすることにより、挿通孔が真っ直ぐになるとともに、挿通孔の内面に形成された酸化物を除去することができる。
【0020】
前記と異なる本発明に係る溶接チップの製造方法は、銅合金系の金属棒を、所定長に切断するとともに、切削加工または冷間鍛造によって、先端部を基端部よりも細い外径の段差付きの円柱状に形成する工程と、該段差付き円柱状の金属棒の中心に挿通孔を形成するとともに、基端部の端部をネジ切りし、チップ本体を形成する工程と、該チップ本体の先端部の外面に、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤を介してセラミック質のカバーを外嵌した状態で、該先端部とカバーの部分とを局部的に加熱することにより、該先端部とカバーとを接着する工程とを含んでいることを特徴としている。
【0021】
この溶接チップの製造方法によれば、チップ本体の先端部とカバーの部分とを局部的に加熱することにより、基端部の端部は軟化することがなく、加熱する前にネジ切りすることができる。また、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤が、銅合金の融点よりも高温に加熱されることにより、銅合金系の金属棒とセラミック質のカバーとを接着することができる。そして、局部的に加熱されたチップ本体の先端部の挿通孔の内面に酸化膜が形成されるときは、挿通孔を仕上げ削りすることにより、該酸化物を除去することができる。
【0022】
また、前記溶接チップの製造方法において、前記挿通孔に芯棒材が挿入された後、チップ本体の先端部の外面に、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤を介してセラミック質のカバーを外嵌した状態で、加熱することが好ましい。
【0023】
この溶接チップの加熱方法によれば、挿通孔に心棒材が挿入されることにより、挿通孔が変形することがなく、しかも、挿通孔の内面に酸化膜が形成されないようにすることができる。
【0024】
【発明の実施の形態1】
本発明に係る溶接チップの第1の実施形態について、図1および図2を参照しながら説明する。第1の実施形態における溶接チップは図1に示すように、銅合金系のチップ本体10の先端部11にセラミック質のカバー20を隙間をもって外嵌し、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤30を前記隙間に充填し、前記先端部11の外面とカバー20の内面とが該耐熱性無機接着剤30によって接着されていることを特徴としている。
【0025】
チップ本体10には、電極ワイヤ31が挿通される挿通孔12が長さ方向に形成され、そして先端部11が基端部13よりも縮径された段差付きの円筒形に形成され、さらに基端部13の端部にはトーチ本体(図示せず)に螺合するための雄ネジ14が形成されている。また、チップ本体10の基端部13には前記雄ネジ14をトーチ本体(図示せず)に着脱するときに、スパナ(図示せず)が確実に把持できるようにする六角柱あるいは四角柱のような少なくとも一対の平端部(図示せず)が形成されている。
【0026】
そして、チップ本体10の先端部11の外面には、カバー20が外れにくいようにするための凹凸面(図示せず)が形成されている。この凹凸面は、ローレットのようなギザギザ、魚子目(ななこめ)、先の尖った多数の突起、あるいは多数の窪みなどとすることが好ましい。
【0027】
そして、電極ワイヤ31は挿通孔12の内面に当接することによって通電されるため、チップ本体10は、硬質でしかも導電率が約90%以上の銅合金系が使用され、具体的にはクロム銅合金、あるいは銅を96.0%以上の主成分とし、それに合金元素を添加した銅合金を使用することが好ましい。導電率の高い銅合金を使用することにより、消費電力を小さくすることができる。
【0028】
他方、前記チップ本体10の先端部11を外嵌するカバー20は、硬質で非導電性のセラミック質からなり、筒状部21と該筒状部21の先端部に設けられるヘッド部22とから構成されている。筒状部21の内径は、チップ本体10の先端部11の外径よりもわずかに大きく、カバー20の内面とチップ本体10の先端部11の外面との間に隙間が生じるようにされている。この隙間は例えばチップ本体10の外径の約10分の1以上とすることが好ましい。
【0029】
そして、筒状部21の外径は、基端縁23がチップ本体10の基端部13の先端側13bの外径と同一とされ、ヘッド部22側が縮径し、ヘッド部22側が細いテーパ状に形成されている。さらに、ヘッド部22は、チップ本体10の先端部11の端面を隙間をもって覆い、前記挿通孔12と連続する中心孔24が形成され、電極ワイヤ31を導出することができるようにされている。
【0030】
このようなチップ本体10の先端部11の外面とカバー20の内面とは、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤30によって接着される。この耐熱性無機接着剤30は、銅の溶融温度である約400℃に加熱された後、常温に冷却されることにより、銅合金とセラミックとを弾力性をもって接着し、一旦、接着された後は約1,000℃に加熱されても、弾力性を有するように接着された状態を維持する特性を有するもので、例えばニッセラコート(日本特殊セラミックス株式会社の商品名)を使用することが好ましい。
【0031】
ここで、このような溶接チップの製造方法について、図2を参照しながら説明する。まず図2(a)に示すように、銅合金系の金属棒を切削加工または冷間鍛造により、先端部11が基端部13よりも細い外径となるような段差付きの形状とするとともに、長さ方向に挿通孔12を粗削りによって形成したチップ本体10を製造する。また同時に、チップ本体10の先端部11には、凹凸目(図示せず)を形成する。
【0032】
次に図2(b)に示すように、チップ本体10の先端部11の外面に、前記耐熱性無機接着剤30を介して前記セラミック質のカバー20を外嵌した状態とする。耐熱性無機接着剤30は、チップ本体10の先端部11の外面および/またはカバー20の内面に塗布する。チップ本体10の先端部11の外面とカバー20の内面との間には隙間が生じる大きさに形成され、耐熱性無機接着剤30が両者11,20間に充填された状態となる。
【0033】
そして、この耐熱性無機接着剤30が介在したチップ本体10とカバー20とを例えば約400℃に加熱する。すると、チップ本体10は挿通孔12と先端部11が形成された形状をほぼ維持しつつ軟化する。その後、常温まで冷却されることによって耐熱性無機接着剤30がチップ本体10の先端部11とカバー20とを接着する。ただし、チップ本体10が約400℃に加熱されることにより、挿通孔12がわずかに変形するとともに、挿通孔12の内面に酸化膜が形成される。
【0034】
挿通孔12が変形していると、電極ワイヤ31が中心孔24から偏向して導出され、所定の位置に溶接することができなくなる。また、挿通孔12の内面に酸化膜が形成されていると、電極ワイヤ31に通電することができなくなる。そこで、チップ本体10が常温下に置かれ、硬化した状態で、挿通孔12を仕上げ削りすることにより、真っ直ぐにするとともに、酸化膜を除去する。
【0035】
そして図2(c)に示すように、基端部13の端部をネジ切りし、雄ネジ14を形成すると、溶接チップが完成する。チップ本体10が約400℃に加熱された後に、ネジ切りすることにより、この雄ネジ14は変形していない所定の形状に形成することができる。なお、雄ネジ14を形成した後に、挿通孔12を仕上げ削りしてもよい。
【0036】
このようにして製造された溶接チップは、チップ本体10の基端部13の平端面(図示せず)がスパナに保持され、雄ネジ14がトーチ本体(図示せず)の先端に形成された雌ネジ(図示せず)に螺合される。そして、溶接チップとトーチ本体との螺合部分にオリフィス(図示せず)が介在し、溶接チップとトーチ本体とがガスノズル(図示せず)に囲まれる。そして、電極ワイヤ31がトーチ内および溶接チップの挿通孔12内に挿通され、カバー20の中心孔24から繰り出される。挿通孔12の内面には酸化膜が形成されていないため、電極ワイヤ31は挿通孔12から確実に通電される。
【0037】
この繰り出された電極ワイヤ31の先端部が溶接部の方へ向けられ、ガスノズルから炭酸ガスなどのシールガスが噴出されながら溶接される。カバー20は、基端縁23の外径がチップ本体10の基端部13の外径と同一であり、ヘッド部22側が縮径され、テーパ状に形成されていることにより、シールガスはガスノズルから溶接部に向けてスムーズに噴出される。
【0038】
そして、溶接においては、溶接チップが約1,000℃に加熱されるため、熱膨張係数がセラミックよりも大きな銅合金系のチップ本体10がカバー20よりも大きく膨張する。しかし、溶接チップの先端部はセラミック質のカバー20がチップ本体10を外嵌しているため、溶接の際に発生する熱はチップ本体10の基端部13の方へ伝わりにくくなっており、カバー20に外嵌されたチップ本体10は、カバー20に外嵌されていないチップ本体10よりも膨張の割合が小さい。
【0039】
また、熱膨張係数がセラミックよりも大きな銅合金系のチップ本体10がカバー20よりも大きく膨張しても、弾力性を有している耐熱性無機接着剤30によってチップ本体10とカバー20とが接着されているため、チップ本体10とカバー20の熱膨張係数の差が吸収されることにより、両者10,20間に熱応力が発生せず、両者10,20は破損することがない。
【0040】
また、電極ワイヤ31に巻きぐせがついていても、溶接チップの先端部は、硬質のセラミック質のカバー20が外嵌されているため、楕円形に偏摩耗せず、電極ワイヤ31は所定の溶接部の方向に繰り出される。そして、セラミック質のカバー20にはスパッタが付着しにくく、仮に付着したとしてもエアーや刷毛などによって容易に除去することができる。したがって、スパッタが邪魔になってシールガスが十分に噴出されないといった不具合は生じない。また、スパッタがカバー20からガスノズルまで付着したとしても、カバー20が絶縁性であることからショートすることがない。したがって、ガスノズルと溶接部との間でアークが発生することがなく、ガスノズルの先端部分が溶解するといった不具合も生じない。このように本実施形態の溶接チップを備えた溶接装置が使用されることにより、良好に溶接することができる。
【0041】
【発明の実施の形態2】
次に、本発明に係る溶接チップの第2の実施形態について、図3および図4を参照しながら説明する。第2の実施形態における溶接チップも、第1の実施形態の溶接チップと同様、電極ワイヤ31が挿通される挿通孔42を長さ方向に形成した銅合金系のチップ本体40の先端部41に、セラミック質のカバー50を隙間をもって外嵌し、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤30を前記隙間に充填し、前記先端部41の外面とカバー50の内面とが該耐熱性無機接着剤30によって接着されていることを特徴としている。
【0042】
したがって、チップ本体40は第1の実施形態と同じく、硬質でしかも導電率が約90%以上の銅合金系が使用され、具体的にはクロム銅合金、あるいは銅を96.0%以上の主成分とし、それに合金元素を添加した銅合金を使用することが好ましい。また、耐熱性無機接着剤30は、銅の溶融温度である約400℃に加熱された後、常温に冷却されることにより、銅合金とセラミックとを弾力性をもって接着し、一旦、接着された後は約1,000℃に加熱されても、弾力性を有するように接着された状態を維持する特性を有するものが使用される。
【0043】
しかし、第2の実施形態は第1の実施形態と異なり、チップ本体40は、基端部43がその中間部43aよりも先端側43bが縮径し、さらに先端部41が段差を有するように基端部43の先端側43bよりも縮径している。基端部43の中間部43aと先端側43bとの境界部分は、溶接チップを囲むガスノズル(図示せず)から噴射されるシールガスがスムーズに噴射されるようにするため、カーブによって連続している。
【0044】
また、チップ本体40の基端部43の端部には、トーチ本体(図示せず)に螺合するための、雄ネジ44が形成され、基端部43の中間部43aにはスパナ(図示せず)が確実に把持できるようにするための六角柱あるいは四角柱のような少なくとも一対の平坦部(図示せず)が形成されている。第2の実施形態のチップ本体40も基端部43の中間部43aが第1の実施形態の基端部13と同じ外径とされることにより、従来から普及しているスパナを使用して、雄ネジ44をトーチ本体に着脱することができる。
【0045】
そして、チップ本体40の先端部11の外面には、カバー20が外れにくいようにするための凹凸面(図示せず)が形成されている。この凹凸面は、ローレットのようなギザギザ、魚子目(ななこめ)、先の尖った多数の突起、あるいは多数の窪みなどとすることが好ましい。
【0046】
他方、チップ本体40の先端部41を外嵌するカバー50は、第1の実施形態と同様、硬質で非導電性のセラミック質からなり、筒状部51と該筒状部51の先端部に設けられるヘッド部52とからなる。筒状部51は、全長にわたってチップ本体40の基端部43の先端側43bと同じ外径とされている。チップ本体40の基端部43の先端側43bが中間部43aよりも縮径していることにより、筒状部51の外径は、第1の実施形態と異なり、全長にわたって同じ外径とし、容易に成形することができる。
【0047】
そして、カバー50のヘッド部52は、チップ本体40の先端部41の端面を隙間をもって覆い、挿通孔42と連続する中心孔54が形成され、この中心孔54から電極ワイヤ31が導出されるようにされている。
【0048】
ここで、このような溶接チップの製造方法について、図4を参照しながら説明する。まず図4(a)に示すように、銅合金系の金属棒を切削加工または冷間鍛造により、先端部41が基端部43の先端側43bよりも細い外径、該基端部43の先端側43bが中間部43aよりも細い外径となるような段差付きの形状とするとともに、長さ方向に挿通孔42を形成したチップ本体40を製造する。
【0049】
次に図4(b)に示すように、チップ本体40の基端部43の端部をネジ切りし、雄ネジ44を形成するとともに、先端部41の外面に凹凸目(図示せず)を形成する。そして、チップ本体40の先端部41の外面に前記耐熱性無機接着時30を介してセラミック質のカバー50を外嵌した状態とする。耐熱性無機接着剤30は、チップ本体40の先端部41の外面および/またはカバー50の内面に塗布する。チップ本体40の先端部41の外面とカバー50の内面との間には隙間が生じる大きさに形成されており、耐熱性無機接着剤30が両者間に充填された状態となる。
【0050】
そして図4(c)に示すように、チップ本体40の挿通孔42内に、400℃に加熱されても軟化しない例えば鋼質系の芯棒材Bを挿入する。芯棒材Bは、挿入孔42に挿入されるぎりぎりの外径のものを使用する。その後、耐熱性無機接着剤30を介在したチップ本体40の先端部41とカバー50の部分のみ、例えば、高周波炉で約400℃に加熱する。局部的に加熱することにより、チップ本体40の雄ネジ44は変形することがない。また、挿通孔42内に芯棒材Bが挿入されて過熱されることにより、挿通孔42は変形することがないだけでなく、酸化膜も形成されない。したがって、挿通孔42内に芯棒材Bが挿入する製造方法においては、加熱した後に仕上げ削りする必要がない。
【0051】
このようにして製造された溶接チップは、チップ本体40の基端部43の平端面(図示せず)がスパナに保持され、雄ネジ44がトーチ本体(図示せず)の先端に形成された雌ネジに螺合される。そして、溶接チップとトーチ本体との螺合部分にオリフィス(図示せず)が介在し、溶接チップとトーチ本体とがガスノズル(図示せず)に囲まれる。溶接チップのカバー50は、全長にわたってチップ本体40の基端部43の先端側43bと同じ細い外径とされているため、ガスノズルの内壁との間に大きなスペースが設けられる。
【0052】
そして、電極ワイヤ31がトーチ内および溶接チップの挿通孔42内に挿通され、カバー50の中心孔54から繰り出され、ガスノズルからシールガスが噴射される。カバー50は全長にわたって細く形成されているため、溶接部には確実にシールガスが噴射され、溶接部は酸化することなく、良好に溶接される。その他、溶接チップが溶接の際に約1,000℃に加熱されても、耐熱性無機接着剤30によってチップ本体40とカバー50とは熱応力が発生することなく接着された状態が維持され、カバー50にスパッタが付着しにくいなどの使用状態は、第1の実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0053】
なお、本発明は前記第1と第2の実施形態に限定することなく、特許請求の範囲に記載した技術的事項の範囲内において、種々変更することができる。例えば、第1の実施形態において、チップ本体10の基端部13は鍔状とし、チップ本体10のほぼ全長をカバー20が外嵌するようにしてもよい。熱伝導率は銅合金よりもセラミックの方が低いため、セラミック質のカバー20が長くなることにより、溶接の際にチップ本体10が膨張しにくいようにすることができる。
【0054】
さらに、第1の実施形態であっても、第2の実施形態で説明したような芯棒材Bを挿通孔12に挿入して加熱し、あるいは局部的に加熱してもよい。また、第2の実施形態であっても、芯棒材Bを使用せず、加熱後に挿通孔42を仕上げ削りするようにし、また全体を加熱した後に雄ネジ44を形成してもよい。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤によってチップ本体とカバーとが接着されているため、チップ本体とカバーとの間に熱応力が発生することがない。したがって本溶接チップは、溶接の際の熱によって破損することがなく、長寿命化を図ることができる。そして、溶接チップの先端部がセラミック質のカバーによって外嵌されるため、偏摩耗することがなく、電極ワイヤが所定の方向に繰り出されることにより、また溶接チップの先端部にスパッタが付着しにくいことにより、良好な溶接を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶接チップの第1の実施形態の一部断面正面図である。
【図2】本発明に係る溶接チップの第1の実施形態の製造方法を示し、(a)は最初の段階の正面図、(b)は中間の段階の正面図、(c)は最終の段階の正面図である。
【図3】本発明に係る溶接チップの第2の実施形態の一部断面正面図である。
【図4】本発明に係る溶接チップの第2の実施形態の製造方法を示し、(a)は最初の段階の正面図、(b)は中間の段階の正面図、(c)は最終の段階の正面図である。
【符号の説明】
10,40…チップ本体
11,41…先端部
12,42…挿通孔
13,43…基端部
13b,43b…先端側
14,44…雄ネジ
20,50…カバー
21,51…基端部
22,52…ヘッド部
23,53…基端縁
24,54…中心孔
30…耐熱性無機接着剤
31…電極ワイヤ
Claims (6)
- 電極ワイヤが挿通される挿通孔を長さ方向に形成した銅合金系のチップ本体と、該チップ本体の少なくとも先端部を隙間をもって外嵌し、前記挿通孔と連続する中心孔が形成されたセラミック質のカバーとを備え、
弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤が前記隙間に充填されることにより、前記チップ本体の先端部の外面と前記カバーの内面とが接着されていることを特徴とする溶接チップ。 - 前記チップ本体は、先端部が基端部よりも縮径された段差付きの円筒形に形成され、
前記カバーは、基端縁が前記チップ本体の基端部の先端側と同一の外径の筒状部と、該筒状部の先端部に設けられ、チップ本体の先端部に隙間をもって覆うとともに、前記中心孔を形成したヘッド部とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接チップ。 - 前記チップ本体の先端部の外面は、凹凸目が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接チップ。
- 銅合金系の金属棒を、所定長に切断するとともに、切削加工または冷間鍛造によって、先端部を基端部よりも細い外径の段差付きの円柱状に形成する工程と、
該段差付き円柱状の金属棒の長さ方向に挿通孔を形成し、チップ本体を形成する工程と、
該チップ本体の先端部の外面に、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤を介してセラミック質のカバーを外嵌した状態で、加熱することにより、該先端部とカバーとを接着する工程と、
常温に戻り、前記金属棒が硬化した状態で、金属棒の基端部の端部をネジ切りする工程とを含んでいることを特徴とする溶接チップの製造方法。 - 銅合金系の金属棒を、所定長に切断するとともに、切削加工または冷間鍛造によって、先端部を基端部よりも細い外径の段差付きの円柱状に形成する工程と、
該段差付き円柱状の金属棒の中心に挿通孔を形成するとともに、基端部の端部をネジ切りし、チップ本体を形成する工程と、
該チップ本体の先端部の外面に、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤を介してセラミック質のカバーを外嵌した状態で、該先端部とカバーの部分とを局部的に加熱することにより、該先端部とカバーとを接着する工程とを含んでいることを特徴とする溶接チップの製造方法。 - 前記挿通孔に芯棒材が挿入された後、チップ本体の先端部の外面に、弾力性を有するように接着する耐熱性無機接着剤を介してセラミック質のカバーを外嵌した状態で、加熱することを特徴とする請求項4または5に記載の溶接チップの製造方法。
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