JP3688109B2 - 血液浄化膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液浄化療法に用いる血液浄化膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
血液浄化療法は、血液中の不要物質(尿毒症物質等)を除去する治療方法である。この血液浄化療法では、半透膜や限外濾過膜を血液浄化膜として用いている。例えば、5000本〜10000本程度の中空糸膜(血液浄化膜を中空糸状に紡糸したもの)を束ねた中空糸束を、ケーシング内に装填して構成した血液浄化器を用いている。
【0003】
この血液浄化療法には、血液透析療法、血液濾過療法、あるいは血液濾過透析療法等がある。
血液透析療法では、血液浄化器における中空糸膜の内表面側に血液を流すとともに外表面側に透析液を流し、中空糸膜を介して血液と透析液とを接触させ、拡散により尿毒症物質及び体内の過剰な水分を除去する。血液濾過療法では、血液浄化器における中空糸膜の内表面側に血液を流すことにより、尿毒症物質を濾別除去する。また、血液濾過透析療法では、血液濾過療法と血液透析療法の両方の特性、即ち、濾過と拡散によって尿毒症物質と体内の過剰な水分を除去する。
【0004】
この血液浄化療法で用いる血液浄化膜としては、セルロースに代表される親水性高分子や、ポリスルホン、ポリエステルに代表される疎水性高分子が好適に用いられている。機械的強度に優れ、生体への影響が少ないからである。
しかしながら、一般的に、疎水性材料(高分子)を血液浄化膜として使用するためには、この疎水性材料に親水性を付与している場合が多い。
これは、疎水性材料のみから製造された膜の表面には、タンパク質や血小板等の血液成分の付着が起こりやすく、使用中における膜透過性能の低下等が問題になるからである。即ち、疎水性材料のみから製造された膜では、良好な血液適合性が得難いからである。
【0005】
そして、疎水性材料から、親水性の付与された膜を製造する方法としては、製膜原液中に親水性高分子を添加して製膜する方法が一般的になされている。この方法は、元来、疎水性材料から血液成分が分離可能な膜構造を形成するために、親水性高分子を開孔剤として使用していたものが、結果的に疎水性材料に親水性を付加して製膜することが出来たものである。
この方法において、製膜原液中に添加する親水性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドンが好適に用いられている。即ち、このポリビニルピロリドンを製膜原液に添加して紡糸することにより、血液成分が適正に分離可能な膜構造を形成すると共に、疎水性材料に親水性を付与することができる。
【0006】
この方法では、血液成分を適正に分離できるような膜構造を形成するために、比較的多量の親水性高分子を添加する必要がある。
このため、作製した血液浄化膜には比較的多量の親水性高分子が残存しており、この残存した親水性高分子の漏出を阻止する処理が行われている。例えば、親水性高分子を熱、放射線、薬品等で架橋させたりして漏出を防いでいる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したように、過剰な親水性高分子が残存しているため、親水性高分子の漏出を阻止する処理を施したとしても、親水性高分子の漏出を確実に阻止することが困難であった。従って、漏出した親水性高分子が体内に混入する虞があった。そして、体内に混入した親水性高分子が生体へ何らかの影響を与える可能性があるため、親水性高分子の体内への混入をできる限り除去することが望ましい。
【0008】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであり、良好な血液適合性が得られ、尚且つ、親水性高分子の漏出をも阻止し得る血液浄化膜を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するため、本発明における請求項1記載のものは、ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂とを主たる膜素材とした疎水性高分子膜に親水性高分子を保持させた血液浄化膜であって、
親水性高分子の溶液を疎水性高分子膜に接触させることにより、親水性高分子を疎水性高分子膜に物理的に付着保持せしめ、
疎水性高分子膜1平方メートルあたりの親水性高分子の保持量を、3ミリグラム以上50ミリグラム以下としたことを特徴とする。
なお、「親水性高分子を疎水性高分子膜に物理的に付着保持」とは、架橋処理するまでもなく親水性高分子の血液中への漏出を阻止できる状態にあることを意味する。したがって、余剰な親水性高分子は水洗されて除去されている。
【0010】
また、請求項2記載のものは、請求項1記載の構成に加えて、前記親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする血液浄化膜である。
【0011】
また、請求項3記載のものは、請求項1又は請求項2記載の構成に加えて、ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂との混合重量比が0.1〜10の範囲であることを特徴とする血液浄化膜である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
まず、本発明の血液浄化膜を用いた血液浄化器について説明する。ここで、図1は、血液浄化器1を断面にして示した図であり、図2は、ケーシング2の端部における中空糸束の切断面を示した図である。
【0013】
図1に示すように、血液浄化器1は、ケーシング2と、このケーシング2に対して着脱自在に螺合する注入側血液ポート3及び排出側血液ポート4とから構成してある。ケーシング2は、ポリカーボネイトにより形成された円筒状部材である。そして、このケーシング2の側面であって排出側血液ポート4側の端部には透析液の流入口5を形成してあり、注入側血液ポート3側の端部には透析液の排出口6を形成してある。
【0014】
注入側血液ポート3及び排出側血液ポート4は、ケーシング2の両端部にて開口を塞ぐように螺合するもので、ケーシング2と同じくポリカーボネイトにより形成してある。そして、注入側血液ポート3には、血液を注入するための注入口7が突設してあり、排出側血液ポート4には、血液を排出するための排出口8を突設してある。また、注入側血液ポート3とケーシング2との接触部及び排出側血液ポート4とケーシング2との接触部には、それぞれ水密性を保つためのOリング9,9を配設してある。
【0015】
ケーシング2の内部空間には中空糸束10を装填してある。即ち、図2(a)に示すように、5000本〜10000本程度の中空糸膜11…(本実施形態における血液浄化膜に相当)を束ねたものを装填してある。なお、図2(a)では、構成を判り易くするため、各中空糸膜11…を実際のものよりも太く描いてある。
【0016】
ケーシング2における両端の開口部には、ウレタン系樹脂等のシーリング材12,12を充填してある。そして、中空糸束10の端部は、開口した中空糸膜11…が多数密集していると共に、図2(b)にも示すように、各中空糸膜11…同士の隙間を水密性を確保した状態でシーリング材12が塞いでいる。
このシーリング材12,12は透析液の流入口5及び排出口6を塞いでいない。このため、流入口5,排出口6は、それぞれ、ケーシング2内における中空糸膜11の外表面側の空間と連通している。従って、中空糸束10を装填したケーシング2では、血液の流路である中空糸膜11の内表面11a側と透析液の流路である中空糸膜11の外表面側とが中空糸膜11により分離された状態となる。
【0017】
次に、中空糸膜11について説明する。
本実施形態における中空糸膜11、即ち、血液浄化膜は、ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂とを主たる膜素材とした疎水性高分子膜を中空糸状に紡糸し、尚且つ、その疎水性高分子膜に親水性高分子の一種であるポリビニルピロリドンを付着保持させたものである。
【0018】
そして、このポリビニルピロリドンは、疎水性高分子膜の単位面積当たりの保持量を所定量に調整してある。具体的には、疎水性高分子膜1平方メートルあたりのポリビニルピロリドンの保持量を、3ミリグラム以上50ミリグラム以下の範囲内としてある。
【0019】
その理由は、ポリビニルピロリドンの保持量を70ミリグラム以上とした場合には、血液浄化器1からのポリビニルピロリドンの漏出が確認され、また、ポリビニルピロリドンの保持量を1ミリグラム以下とした場合には、凝固した血液成分が中空糸膜11の内表面11aに付着し、この付着した血液成分により比較的短時間で中空糸膜11の透過能が発揮できなくなってしまうことが確認され、ポリビニルピロリドンの保持量を3ミリグラム以上50ミリグラム以下の範囲内とすると、ポリビニルピロリドンの漏出や血液成分の付着がなくなることが確認されたからである。
【0020】
また、上記したポリエステル系樹脂は、
【0021】
式
【化1】
【0022】
で表される繰り返し単位を有するポリアリレート樹脂であり、ポリスルホン系樹脂は、
【0023】
式
【化2】
【0024】
で表される繰り返し単位及び
【0025】
式
【化3】
【0026】
で表される繰り返し単位の少なくとも何れかを有するポリスルホン樹脂である。
【0027】
次に、血液浄化膜の作成手順について説明する。なお、本実施形態では、血液浄化器1を製造する過程の中で血液浄化膜が作成されるため、血液浄化器1の製造工程を説明することにする。
ここで、図3は、血液浄化器1の製造工程の概略を示すフローチャートである。
【0028】
最初に、疎水性高分子を中空糸膜状に紡糸する(紡糸工程、ステップS1)。
この紡糸工程では、まず製膜原液の調製を行う。具体的には、ポリエステル系樹脂(A)とポリスルホン系樹脂(B)との混合重量比(A/B)を0.1〜10の範囲で定めると共に、両樹脂の合計量(A+B)が10重量%〜25重量%の割合となるように有機溶媒に溶解する。
なお、有機溶媒は、ポリエステル系樹脂とポリスルホン系樹脂に対して良溶媒であれば特に制限はないが、N−メチルピロリドンが最も好適に使用できる。
【0029】
この製膜原液を二重管紡糸口金を用いて芯液とともに凝固液中に吐出し、中空糸状に紡糸する。なお、便宜上、以下の説明では、ポリビニルピロリドン(親水性高分子の一種)が付着保持されていない状態の中空糸膜を、疎水性中空糸膜11´ということにする。
ここで、芯液及び凝固液は、製膜原液を中空糸状に成形するためのものであるが、樹脂溶解に使用した有機溶媒を水に混合した混合溶媒の方が、水単独よりも好ましい。これは、混合溶媒を使用した方が均一なフイブリル構造を形成しやすいためである。
なお、混合する有機溶媒としては、樹脂に対する良溶媒であれば特に制限はないが、N−メチルピロリドンが最も好適に使用できる。
【0030】
このようにして紡糸した疎水性中空糸膜11´は、その内表面11aに緻密層が形成されると共に、この緻密層の外側を覆うように多孔質層が形成される。緻密層は、この膜において、物質の選択透過性並びに透過速度を規定する部分で、500オングストローム未満の平均孔径を有する孔、具体的には、孔半径30〜100オングストロームの孔が形成されている。また、多孔質層は緻密層を支持し膜の強度を保つ支持層として機能しており、緻密層よりもかなり粗い孔が形成されている。なお、この疎水性中空糸膜11´の厚さは、5〜70マイクロメートル程度である。
そして、この膜では、分子量100000以上の物質は、ほぼ全量(100%)が透過できない。
【0031】
次に、このように紡糸した疎水性中空糸膜11´の束ね処理を行う(束ね処理工程、ステップS2)。
この束ね処理工程では、5000本〜10000本程度の疎水性中空糸膜11´を1つの束にするバンドル化がなされる。この疎水性中空糸膜11´の束(中空糸束10)は、円筒状のケーシング2の内径に応じた外径に調整してある。
【0032】
次に、中空糸束10をケーシング2内に装填する(装填工程、ステップS3)。
この装填工程では、注入側血液ポート3及び排出側血液ポート4が外れた状態のケーシング2内に、中空糸束10を装填する。このとき、中空糸束10の外周を予めシートで覆っておき、このシートごとケーシング2内に装填し、装填後にシートを抜き取る。
【0033】
次に、ポッティングを行う(ポッティング工程、ステップS4)。
このポッティング工程では、ケーシング2の開口部をシーリング材12により封止(シーリング)するとともに、中空糸束10におけるケーシング2の外部にはみ出した部分を、ケーシング2の開口部と同一平面2´となるように切断する。この切断により、図2(a)で説明した断面が得られる。
【0034】
次に、親水化処理を行う(親水化処理工程、ステップS5)。
この親水化処理工程では、ケーシング2の両端部に注入側血液ポート3及び排出側血液ポート4を装着(螺着)した後に、注入側血液ポート3の注入口7から所定濃度に調製したポリビニルピロリドンの水溶液(親水性高分子の溶液の一種)を所定流量で注入し、血液浄化器1を通過したポリビニルピロリドンの水溶液を排出側血液ポート4の排出口8から排出する。そして、この処理を数十秒から数十分行い、ポリビニルピロリドンを付着保持させる。
【0035】
即ち、この親水化処理工程では、ポリビニルピロリドンの水溶液を血液浄化器1に接触させることにより、ポリビニルピロリドンを付着保持させている。なお、この親水化処理工程で用いる親水性高分子の溶液を作製するにあたり、本実施形態では溶媒として精製水を用いたが、精製水以外の液体を溶媒として使用しても構わない。
そして、この親水化処理工程を経ることにより、疎水性中空糸膜11´にはポリビニルピロリドンが付着保持され、本実施形態における血液浄化膜(即ち、中空糸膜11)が得られる。
【0036】
なお、この親水化処理工程では、親水性高分子溶液の濃度を適宜変えることにより、付着保持させる親水性高分子の量を制御できる。
即ち、高濃度の親水性高分子溶液を使用することにより親水性高分子を多く付着保持させることができ、低濃度の親水性高分子溶液を使用することにより少ない量の親水性高分子を付着保持させることができる。
【0037】
例えば、ポリビニルピロリドンの1重量%の水溶液を用いて親水化処理を行うと、ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂から製造した疎水性高分子膜においては、疎水性高分子膜1平方メートルあたり70ミリグラムのポリビニルピロリドンが付着保持された血液浄化膜が作製でき、ポリビニルピロリドンの0.03重量%の水溶液を用いて親水化処理を行うことにより、疎水性高分子膜1平方メートルあたり3ミリグラムのポリビニルピロリドンが付着保持された血液浄化膜が作製できる。
また、付着保持されたポリビニルピロリドンの量は、処理前のポリビニルピロリドン水溶液濃度と処理後のポリビニルピロリドン水溶液濃度及び後述する洗浄工程で除去されたポリビニルピロリドンの量(即ち、洗浄液のポリビニルピロリドン濃度)とを比較することで算出できる。
【0038】
また、この親水化処理工程では、親水性高分子の分子量を変えることで膜の厚さ方向の親水化の度合いを変えることができる。即ち、低い分子量の親水性高分子を使用することにより中空糸膜11の内表面11a側から膜の厚さ方向の全体に亘って親水性高分子を付着保持せしめることができ、高い分子量の親水性高分子を使用することにより中空糸膜11の内表面11aにのみ親水性高分子を付着保持せしめることができる。
例えば、ポリビニルピロリドンK−30(平均分子量約40000)の水溶液を使用して親水化処理を行った場合には、中空糸膜11の厚さ方向の全体に亘ってポリビニルピロリドンを付着保持せしめることができ、ポリビニルピロリドンK−90(平均分子量約1200000)の水溶液を使用して親水化処理行った場合には、中空糸膜11の内表面11aにのみポリビニルピロリドンを付着保持せしめることができる。
【0039】
次に、水洗を行う(洗浄工程、ステップS6)。
この洗浄工程では、ポリビニルピロリドン(親水性高分子)を付着保持させた血液浄化器1について、余剰な親水性高分子を洗浄液により除去する。具体的には、洗浄液、例えば精製水を血液浄化器1内に流す。この洗浄工程により、血液浄化器1に付着保持している親水性高分子の内、所定の吸着力よりも低い吸着力で吸着している余剰な親水性高分子が洗浄除去される。
なお、この洗浄工程後においても血液浄化器1に付着保持されている親水性高分子は、血液浄化器1内を流れる血液によっても離脱しない。
また、この洗浄工程で使用する洗浄液は精製水に限定されるものではなく、余剰な親水性高分子を除去できる液体であればよい。
【0040】
そして、洗浄が終了した血液浄化器1に精製水を充填し(ステップS7)、この精製水が充填された状態の血液浄化器1に滅菌処理を行う(ステップS8)。この滅菌処理工程では、γ線滅菌、蒸気滅菌等を施す。
【0041】
ところで、以上説明した製造工程では、血液浄化器1を製造する過程の中で血液浄化膜(中空糸膜11)をも製造するようにした例を示したが、紡糸した疎水性高分子膜に対して直接的に親水性高分子の溶液を接触させ、親水性高分子を疎水性高分子膜に付着保持させるようにしてもよい。
【0042】
また、中空糸膜11から除去可能な開孔剤をポリビニルピロリドン(親水性高分子の一種)と共に製膜原液に添加し、紡糸後に開孔剤を除去することにより、ポリビニルピロリドンの保持量を低く調整することもできる。この方法で製造した血液浄化膜では、膜の厚さ方向の全域に亘って親水性が付与されているが、ポリビニルピロリドンの保持量が低く調整されているので、ポリビニルピロリドンが漏出するのを防止することができる。
但し、本実施形態の如く、予め製膜した疎水性高分子膜に親水性高分子の溶液を接触させるようにすると、処理が容易であると共に、親水性高分子の付着量の制御が容易であるという利点を有する。
さらに、血液浄化膜を透過できない高い分子量の親水性高分子(例えば、ポリビニルピロリドンK−90)を使用することにより、血液浄化膜における血液接触側の表面にのみ、選択的に親水性高分子を付着保持させることもできる。
【0043】
また、上記した実施形態では中空糸膜11を例示したが、シート状の膜でもよい。
【0044】
また、上記した実施形態では、血液浄化膜において使用可能な親水性高分子の内、代表的な親水性高分子であるポリビニルピロリドンを例示したが、このポリビニルピロリドンと同様な性質を有する親水性高分子であれば、これに限定されない。
但し、本実施形態のようにポリビニルピロリドンを用いた場合には、極く少量で高い血液適合性を発揮し得る血液浄化膜を作製することができる。
【0045】
また、疎水性高分子膜に関し、本実施形態では、ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂とを主たる膜素材とした疎水性高分子膜を例示したが、他の疎水性材料による膜でもよい。
但し、本実施形態の如く、ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂とを主たる膜素材とした疎水性高分子膜を用いた場合には、親水性高分子の溶液を接触させた際に、他の疎水性材料による膜よりも好適に(確実に)親水性高分子を付着保持させられる。
【0046】
【実施例】
次に、本発明の実施例を示して、本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の説明では、親水性高分子として血液浄化膜に好適に用いられているポリビニルピロリドンK−90(平均分子量約1200000)を用いた場合について説明する。
【0047】
まず、前記式(1)にて示されるポリアリレート樹脂〔(株)ユニチカ製、商品名;Uポリマー〕と、前記式(3)にて示されるポリエーテルスルホン樹脂〔住友化学工業(株)製、商品名;スミカエクセルPES〕と、N−メチルピロリドンとから製膜原液を調製した。なお、ポリアリレート樹脂とポリエーテルスルホン樹脂との重量混合比は、1:1とした。また、N−メチルピロリドン水溶液を凝固液並びに芯液とした。
そして、二重管紡糸口金を用いて製膜原液と芯液とを凝固液中へ吐出して疎水性中空糸膜11´を作製し、この疎水性中空糸膜11´を1万本程度束ねて中空糸束10を得た。
さらに、この中空糸束10を円筒状のポリカーボネイト製のケーシング2内に装填した後に、ポリウレタン樹脂をシーリング材12として用いて端部を接着し、ケーシング2の両端部に血液ポート3,4を接続して、膜面積1.5平方メートルの血液浄化器1を試作した。
【0048】
(実施例1)
血液浄化器1にポリビニルピロリドン(BASF製、商品名;コリドンK−90)の0.1重量%の水溶液を、常温下で、200mL/minの流量で約1分間流して親水化処理を行い、疎水性高分子膜1平方メートルあたり10ミリグラムのポリビニルピロリドンが付着保持された血液浄化膜(中空糸膜11)を作製した。
なお、ポリビニルピロリドンの付着保持量は、親水化処理前におけるポリビニルピロリドン水溶液の濃度と、親水化処理終了時におけるポリビニルピロリドン水溶液の濃度及び洗浄液のポリビニルピロリドン濃度とに基づいて算出した。
また、ポリビニルピロリドン水溶液の濃度測定は、Mullerの方法(K.Muller,Pham.Acta,Helv.43(1968)107−122)を用いて行った。
【0049】
そして、この血液浄化膜におけるポリビニルピロリドンの漏出量(溶出量)を調べる試験を行った。具体的には、血液浄化器1を精製水1Lで洗浄した後、精製水を血液浄化器1内に充填し、70℃で3時間加温した後に、充填した液(血液接触部側の液)を抜き取り、ポリビニルピロリドンの濃度を測定した。なお、この試験における血液ポート3,4は、血液浄化膜からの漏出を測定するためポリビニルピロリドンが付着されていないものを用いた。
また、この血液浄化膜における限外濾過量(UFR、mL/hr・mmHg)の経時変化を調べる試験を行った。具体的には、血液浄化器1を精製水1Lで洗浄した後、牛血液(ヘマトクリット30%、総蛋白6.5g/dL)を200mL/minの流量で循環させるとともに濾過流量を90mL/minに調整し、限外濾過量の経時変化を測定した。
さらに、血液浄化膜の表面(即ち、中空糸膜11の内表面11a)における血小板の付着状態を観察した。具体的には、限外濾過量の経時変化を調べる試験を行った後の血液浄化膜を、血液浄化器1から切り出すと共に平面状に切り開き、この切り開いた血液浄化膜を乾燥したものを測定サンプルとして、その血液接触面側の表面を電子顕微鏡(SEM)で観察した。
試験結果及び観察結果を表1並びに図4(限外濾過量の経時変化)に示した。
【0050】
(実施例2)
ポリビニルピロリドンの0.5重量%の水溶液を用いて親水化処理(濃度以外の条件は実施例1と同じ、以下同様)を行い、疎水性高分子膜1平方メートルあたり50ミリグラムのポリビニルピロリドンが付着保持された血液浄化膜を作製した。
【0051】
そして、この血液浄化膜に対しても、ポリビニルピロリドンの漏出量を調べる試験並びに限外濾過量の経時変化を調べる試験を行った(試験内容は、実施例1と同じ)。
各試験における試験結果を表1並びに図4に示した。
【0052】
(実施例3)
ポリビニルピロリドンの0.03重量%の水溶液を用いて親水化処理を行い、疎水性高分子膜1平方メートルあたり3ミリグラムのポリビニルピロリドンが付着保持された血液浄化膜を作製した。
【0053】
そして、この血液浄化膜に対しても、ポリビニルピロリドンの漏出量を調べる試験並びに限外濾過量の経時変化を調べる試験を行った(試験内容は、実施例1と同じ)。
各試験における試験結果を表1並びに図4に示した。
【0054】
(比較例1)
ポリビニルピロリドンの1重量%の水溶液を用いて親水化処理を行い、疎水性高分子膜1平方メートルあたり70ミリグラムのポリビニルピロリドンが付着保持された血液浄化膜を作製した。
【0055】
そして、この血液浄化膜に対しても、ポリビニルピロリドンの漏出量を調べる試験並びに限外濾過量の経時変化を調べる試験を行った(試験内容は、実施例1と同じ)。
各試験における試験結果を表1並びに図4に示した。
【0056】
(比較例2)
ポリビニルピロリドンの0.01重量%の水溶液を用いて親水化処理を行い、疎水性高分子膜1平方メートルあたり1ミリグラムのポリビニルピロリドンが付着保持された血液浄化膜を作製した。
【0057】
そして、この血液浄化膜に対しても、ポリビニルピロリドンの漏出量を調べる試験、限外濾過量の経時変化を調べる試験並びに血小板の付着状態の観察を行った(試験内容は、実施例1と同じ)。
各試験における試験結果を表1並びに図4に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
まず、血液浄化膜における親水性高分子の漏出について検討する。
表1に示すように、ポリビニルピロリドンの付着保持量を、疎水性高分子膜1平方メートルあたり70ミリグラム(付着量70ミリグラムという、以下同様)とした血液浄化膜(比較例1)では、1リットルあたり5ミリグラムのポリビニルピロリドンの漏出が認められた。
一方、付着量50ミリグラムの血液浄化膜(実施例2)では、ポリビニルピロリドンの漏出は認められなかった(即ち、検出限界以下であった)。同様に、付着量10,3ミリグラムの血液浄化膜(実施例1,3)でも、ポリビニルピロリドンの漏出は認められなかった。
【0060】
次に、血液浄化膜の透過量の安定性と血液適合性について検討する。
図4に示すように、付着量を1ミリグラムとした血液浄化膜(比較例2)では、試験開始直後に約90mL/hr・mmHgであった限外濾過量は、時間の経過に伴って急激に低くなり、50時間経過後には約60mL/hr・mmHgであった。さらに、100時間経過後には約22mL/hr・mmHgとなり、それ以後、限外濾過量は徐々に低くなる。そして、240時間経過後には、約17mL/hr・mmHgとなった。
また、血小板の付着状態の観察結果においても、血液浄化膜における血液接触側の表面には、多量の血小板の付着が認められている(表1参照)。
従って、親水性高分子の付着量が少なすぎる血液浄化膜では、血液を通じた直後から血液成分が凝固して血液接触側の表面に付着し、膜の劣化が生じる。そして、この劣化は急速に進行し、比較的短期間で使用が困難な状態になることが判る。
【0061】
一方、付着量を3ミリグラムとした血液浄化膜(実施例3)では、試験開始直後に約105mL/hr・mmHgであった限外濾過量は、時間の経過に伴って徐々に低くなり、50時間経過後には約93mL/hr・mmHgであった。それ以後、限外濾過量は緩やかに低くなるが、240時間経過後でも、約85mL/hr・mmHgの限外濾過量を維持していた。
なお、付着量10,50ミリグラムの血液浄化膜(実施例1,2)では、試験開始直後から終了までの期間に亘って約100mL/hr・mmHg前後の限外濾過量を維持していた。そして、付着量10ミリグラムの血液浄化膜(実施例1)では、血液浄化膜における血液接触側の表面には、僅かの血小板の付着しか認められなかった。即ち、良好な血液適合性を発揮していた。
【0062】
以上から、付着量を3ミリグラム以上にすることにより、血液成分の付着が極めて少なく安定した透過量が得られ、良好な血液適合性を長期間に亘って発揮できることが判る。さらに、付着量を10ミリグラム以上にすることにより、血液適合性をより一層高める(良好にする)ことができることが判る。
【0063】
そして、上記した親水性高分子の漏出、及び血液適合性を総合すると、付着量10ミリグラムから50ミリグラムの血液浄化膜であれば、親水性高分子の漏出阻止と血液適合性をさらに高いレベルで両立させ得ることが判る。
【0064】
なお、親水性高分子の漏出という観点からすれば、親水性高分子の使用量が少ないほど漏出の可能性が少ないので好ましい。従って、付着量10ミリグラムの血液浄化膜であれば、親水性高分子の漏出阻止と血液適合性とを高いレベルで両立させることができ、尚且つ、漏出阻止を一層確実に行えることが判る。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次の効果を奏する。
即ち、本発明によれば、ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂とを主たる膜素材とした疎水性高分子膜に親水性高分子を保持させた血液浄化膜であって、親水性高分子の溶液を疎水性高分子膜に接触させることにより、親水性高分子を疎水性高分子膜に物理的に付着保持せしめ、疎水性高分子膜1平方メートルあたりの親水性高分子の保持量を、3ミリグラム以上50ミリグラム以下としたので、親水性高分子の漏出阻止と良好な血液適合性とを両立させることができる。
しかも、ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂とを主たる膜素材とした疎水性高分子膜に親水性高分子を保持させるので、親水性高分子の溶液を接触させた際に、他の疎水性材料による膜よりも確実に親水性高分子を付着保持させることができる。
さらには、親水性高分子の溶液を疎水性高分子膜に接触させることにより、親水性高分子を疎水性高分子膜に物理的に付着保持せしめたので、付着保持させるための処理が容易であると共に、親水性高分子の付着量の制御を容易に行うことができる。
【0066】
また、前記親水性高分子がポリビニルピロリドンであると、極く少量で、良好な血液適合性を発揮し得る血液浄化膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 血液浄化器を断面にした説明図である。
【図2】 ケーシングの端部における中空糸束の切断面を示した図で、(a)が切断面全体を示した図、(b)が一部を拡大して示した図である。
【図3】 血液浄化器の製造工程の概略を示すフローチャートである。
【図4】 ポリビニルピロリドンの付着量が異なる血液浄化膜による限外濾過量の経時変化を示した図である。
【符号の説明】
1 血液浄化器
2 ケーシング
3 注入側血液ポート
4 排出側血液ポート
5 透析液の流入口
6 透析液の排出口
7 注入側血液ポートにおける注入口
8 排出側血液ポートにおける排出口
9 Oリング
10 中空糸束
11 中空糸膜(血液浄化膜)
11´ 疎水性中空糸膜
11a 中空糸膜の内表面
12 シーリング材
Claims (3)
- ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂とを主たる膜素材とした疎水性高分子膜に親水性高分子を保持させた血液浄化膜であって、
親水性高分子の溶液を疎水性高分子膜に接触させることにより、親水性高分子を疎水性高分子膜に物理的に付着保持せしめ、
疎水性高分子膜1平方メートルあたりの親水性高分子の保持量を、3ミリグラム以上50ミリグラム以下としたことを特徴とする血液浄化膜。 - 前記親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1記載の血液浄化膜。
- ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂との混合重量比が0.1〜10の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化膜。
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