JPH11169690A - 血液浄化膜 - Google Patents

血液浄化膜

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JPH11169690A
JPH11169690A JP9363136A JP36313697A JPH11169690A JP H11169690 A JPH11169690 A JP H11169690A JP 9363136 A JP9363136 A JP 9363136A JP 36313697 A JP36313697 A JP 36313697A JP H11169690 A JPH11169690 A JP H11169690A
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禎憲 堀
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 親水性高分子の漏出阻止性と良好な血液適合
性とを両立させ得る血液浄化膜を提供する。 【解決手段】 ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂
とを主たる膜素材とした疎水性高分子膜の表面に、ポリ
ビニルピロリドンの水溶液を疎水性高分子膜に接触さ
せ、疎水性高分子膜1平方メートルあたり3ミリグラム
以上50ミリグラム以下のポリビニルピロリドンを付着
保持せしめた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、血液浄化療法に用
いる血液浄化膜に関する。
【0002】
【従来の技術】血液浄化療法は、血液中の不要物質(尿
毒症物質等)を除去する治療方法である。この血液浄化
療法では、半透膜や限外濾過膜を血液浄化膜として用い
ている。例えば、5000本〜10000本程度の中空
糸膜(血液浄化膜を中空糸状に紡糸したもの)を束ねた
中空糸束を、ケーシング内に装填して構成した血液浄化
器を用いている。
【0003】この血液浄化療法には、血液透析療法、血
液濾過療法、あるいは血液濾過透析療法等がある。血液
透析療法では、血液浄化器における中空糸膜の内表面側
に血液を流すとともに外表面側に透析液を流し、中空糸
膜を介して血液と透析液とを接触させ、拡散により尿毒
症物質及び体内の過剰な水分を除去する。血液濾過療法
では、血液浄化器における中空糸膜の内表面側に血液を
流すことにより、尿毒症物質を濾別除去する。また、血
液濾過透析療法では、血液濾過療法と血液透析療法の両
方の特性、即ち、濾過と拡散によって尿毒症物質と体内
の過剰な水分を除去する。
【0004】この血液浄化療法で用いる血液浄化膜とし
ては、セルロースに代表される親水性高分子や、ポリス
ルホン、ポリエステルに代表される疎水性高分子が好適
に用いられている。機械的強度に優れ、生体への影響が
少ないからである。しかしながら、一般的に、疎水性材
料(高分子)を血液浄化膜として使用するためには、こ
の疎水性材料に親水性を付与している場合が多い。これ
は、疎水性材料のみから製造された膜の表面には、タン
パク質や血小板等の血液成分の付着が起こりやすく、使
用中における膜透過性能の低下等が問題になるからであ
る。即ち、疎水性材料のみから製造された膜では、良好
な血液適合性が得難いからである。
【0005】そして、疎水性材料から、親水性の付与さ
れた膜を製造する方法としては、製膜原液中に親水性高
分子を添加して製膜する方法が一般的になされている。
この方法は、元来、疎水性材料から血液成分が分離可能
な膜構造を形成するために、親水性高分子を開孔剤とし
て使用していたものが、結果的に疎水性材料に親水性を
付加して製膜することが出来たものである。この方法に
おいて、製膜原液中に添加する親水性高分子としては、
例えば、ポリビニルピロリドンが好適に用いられてい
る。即ち、このポリビニルピロリドンを製膜原液に添加
して紡糸することにより、血液成分が適正に分離可能な
膜構造を形成すると共に、疎水性材料に親水性を付与す
ることができる。
【0006】この方法では、血液成分を適正に分離でき
るような膜構造を形成するために、比較的多量の親水性
高分子を添加する必要がある。このため、作製した血液
浄化膜には比較的多量の親水性高分子が残存しており、
この残存した親水性高分子の漏出を阻止する処理が行わ
れている。例えば、親水性高分子を熱、放射線、薬品等
で架橋させたりして漏出を防いでいる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
たように、過剰な親水性高分子が残存しているため、親
水性高分子の漏出を阻止する処理を施したとしても、親
水性高分子の漏出を確実に阻止することが困難であっ
た。従って、漏出した親水性高分子が体内に混入する虞
があった。そして、体内に混入した親水性高分子が生体
へ何らかの影響を与える可能性があるため、親水性高分
子の体内への混入をできる限り除去することが望まし
い。
【0008】本発明は、この様な事情に鑑みてなされた
ものであり、良好な血液適合性が得られ、尚且つ、親水
性高分子の漏出をも阻止し得る血液浄化膜を提供するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ため、本発明における請求項1記載のものは、親水性高
分子を疎水性高分子膜に保持させた血液浄化膜であっ
て、疎水性高分子膜1平方メートルあたりの親水性高分
子の保持量を、3ミリグラム以上50ミリグラム以下と
したことを特徴とする。
【0010】また、請求項2記載のものは、請求項1記
載の構成に加えて、前記親水性高分子がポリビニルピロ
リドンであることを特徴とする血液浄化膜である。
【0011】また、請求項3記載のものは、請求項1又
は請求項2記載の構成に加えて、親水性高分子の溶液を
疎水性高分子膜に接触させることにより、親水性高分子
を疎水性高分子膜に物理的に付着保持せしめたことを特
徴とする血液浄化膜である。
【0012】また、請求項4記載のものは、請求項1か
ら3のいずれかに記載の構成に加えて、前記疎水性高分
子膜は、ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂とを主
たる膜素材としていることを特徴とする血液浄化膜であ
る。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面を参照して説明する。まず、本発明の血液浄化膜を用
いた血液浄化器について説明する。ここで、図1は、血
液浄化器1を断面にして示した図であり、図2は、ケー
シング2の端部における中空糸束の切断面を示した図で
ある。
【0014】図1に示すように、血液浄化器1は、ケー
シング2と、このケーシング2に対して着脱自在に螺合
する注入側血液ポート3及び排出側血液ポート4とから
構成してある。ケーシング2は、ポリカーボネイトによ
り形成された円筒状部材である。そして、このケーシン
グ2の側面であって排出側血液ポート4側の端部には透
析液の流入口5を形成してあり、注入側血液ポート3側
の端部には透析液の排出口6を形成してある。
【0015】注入側血液ポート3及び排出側血液ポート
4は、ケーシング2の両端部にて開口を塞ぐように螺合
するもので、ケーシング2と同じくポリカーボネイトに
より形成してある。そして、注入側血液ポート3には、
血液を注入するための注入口7が突設してあり、排出側
血液ポート4には、血液を排出するための排出口8を突
設してある。また、注入側血液ポート3とケーシング2
との接触部及び排出側血液ポート4とケーシング2との
接触部には、それぞれ水密性を保つためのOリング9,
9を配設してある。
【0016】ケーシング2の内部空間には中空糸束10
を装填してある。即ち、図2(a)に示すように、50
00本〜10000本程度の中空糸膜11…(本実施形
態における血液浄化膜に相当)を束ねたものを装填して
ある。なお、図2(a)では、構成を判り易くするた
め、各中空糸膜11…を実際のものよりも太く描いてあ
る。
【0017】ケーシング2における両端の開口部には、
ウレタン系樹脂等のシーリング材12,12を充填して
ある。そして、中空糸束10の端部は、開口した中空糸
膜11…が多数密集していると共に、図2(b)にも示
すように、各中空糸膜11…同士の隙間を水密性を確保
した状態でシーリング材12が塞いでいる。このシーリ
ング材12,12は透析液の流入口5及び排出口6を塞
いでいない。このため、流入口5,排出口6は、それぞ
れ、ケーシング2内における中空糸膜11の外表面側の
空間と連通している。従って、中空糸束10を装填した
ケーシング2では、血液の流路である中空糸膜11の内
表面11a側と透析液の流路である中空糸膜11の外表
面側とが中空糸膜11により分離された状態となる。
【0018】次に、中空糸膜11について説明する。本
実施形態における中空糸膜11、即ち、血液浄化膜は、
ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂とを主たる膜素
材とした疎水性高分子膜を中空糸状に紡糸し、尚且つ、
その疎水性高分子膜に親水性高分子の一種であるポリビ
ニルピロリドンを付着保持させたものである。
【0019】そして、このポリビニルピロリドンは、疎
水性高分子膜の単位面積当たりの保持量を所定量に調整
してある。具体的には、疎水性高分子膜1平方メートル
あたりのポリビニルピロリドンの保持量を、3ミリグラ
ム以上50ミリグラム以下の範囲内としてある。
【0020】その理由は、ポリビニルピロリドンの保持
量を70ミリグラム以上とした場合には、血液浄化器1
からのポリビニルピロリドンの漏出が確認され、また、
ポリビニルピロリドンの保持量を1ミリグラム以下とし
た場合には、凝固した血液成分が中空糸膜11の内表面
11aに付着し、この付着した血液成分により比較的短
時間で中空糸膜11の透過能が発揮できなくなってしま
うことが確認され、ポリビニルピロリドンの保持量を3
ミリグラム以上50ミリグラム以下の範囲内とすると、
ポリビニルピロリドンの漏出や血液成分の付着がなくな
ることが確認されたからである。
【0021】また、上記したポリエステル系樹脂は、
【0022】式
【化1】
【0023】で表される繰り返し単位を有するポリアリ
レート樹脂であり、ポリスルホン系樹脂は、
【0024】式
【化2】
【0025】で表される繰り返し単位及び
【0026】式
【化3】
【0027】で表される繰り返し単位の少なくとも何れ
かを有するポリスルホン樹脂である。
【0028】次に、血液浄化膜の作成手順について説明
する。なお、本実施形態では、血液浄化器1を製造する
過程の中で血液浄化膜が作成されるため、血液浄化器1
の製造工程を説明することにする。ここで、図3は、血
液浄化器1の製造工程の概略を示すフローチャートであ
る。
【0029】最初に、疎水性高分子を中空糸膜状に紡糸
する(紡糸工程、ステップS1)。この紡糸工程では、
まず製膜原液の調製を行う。具体的には、ポリエステル
系樹脂(A)とポリスルホン系樹脂(B)との混合重量
比(A/B)を0.1〜10の範囲で定めると共に、両
樹脂の合計量(A+B)が10重量%〜25重量%の割
合となるように有機溶媒に溶解する。なお、有機溶媒
は、ポリエステル系樹脂とポリスルホン系樹脂に対して
良溶媒であれば特に制限はないが、N−メチルピロリド
ンが最も好適に使用できる。
【0030】この製膜原液を二重管紡糸口金を用いて芯
液とともに凝固液中に吐出し、中空糸状に紡糸する。な
お、便宜上、以下の説明では、ポリビニルピロリドン
(親水性高分子の一種)が付着保持されていない状態の
中空糸膜を、疎水性中空糸膜11´ということにする。
ここで、芯液及び凝固液は、製膜原液を中空糸状に成形
するためのものであるが、樹脂溶解に使用した有機溶媒
を水に混合した混合溶媒の方が、水単独よりも好まし
い。これは、混合溶媒を使用した方が均一なフイブリル
構造を形成しやすいためである。なお、混合する有機溶
媒としては、樹脂に対する良溶媒であれば特に制限はな
いが、N−メチルピロリドンが最も好適に使用できる。
【0031】このようにして紡糸した疎水性中空糸膜1
1´は、その内表面11aに緻密層が形成されると共
に、この緻密層の外側を覆うように多孔質層が形成され
る。緻密層は、この膜において、物質の選択透過性並び
に透過速度を規定する部分で、500オングストローム
未満の平均孔径を有する孔、具体的には、孔半径30〜
100オングストロームの孔が形成されている。また、
多孔質層は緻密層を支持し膜の強度を保つ支持層として
機能しており、緻密層よりもかなり粗い孔が形成されて
いる。なお、この疎水性中空糸膜11´の厚さは、5〜
70マイクロメートル程度である。そして、この膜で
は、分子量100000以上の物質は、ほぼ全量(10
0%)が透過できない。
【0032】次に、このように紡糸した疎水性中空糸膜
11´の束ね処理を行う(束ね処理工程、ステップS
2)。この束ね処理工程では、5000本〜10000
本程度の疎水性中空糸膜11´を1つの束にするバンド
ル化がなされる。この疎水性中空糸膜11´の束(中空
糸束10)は、円筒状のケーシング2の内径に応じた外
径に調整してある。
【0033】次に、中空糸束10をケーシング2内に装
填する(装填工程、ステップS3)。この装填工程で
は、注入側血液ポート3及び排出側血液ポート4が外れ
た状態のケーシング2内に、中空糸束10を装填する。
このとき、中空糸束10の外周を予めシートで覆ってお
き、このシートごとケーシング2内に装填し、装填後に
シートを抜き取る。
【0034】次に、ポッティングを行う(ポッティング
工程、ステップS4)。このポッティング工程では、ケ
ーシング2の開口部をシーリング材12により封止(シ
ーリング)するとともに、中空糸束10におけるケーシ
ング2の外部にはみ出した部分を、ケーシング2の開口
部と同一平面2´となるように切断する。この切断によ
り、図2(a)で説明した断面が得られる。
【0035】次に、親水化処理を行う(親水化処理工
程、ステップS5)。この親水化処理工程では、ケーシ
ング2の両端部に注入側血液ポート3及び排出側血液ポ
ート4を装着(螺着)した後に、注入側血液ポート3の
注入口7から所定濃度に調製したポリビニルピロリドン
の水溶液(親水性高分子の溶液の一種)を所定流量で注
入し、血液浄化器1を通過したポリビニルピロリドンの
水溶液を排出側血液ポート4の排出口8から排出する。
そして、この処理を数十秒から数十分行い、ポリビニル
ピロリドンを付着保持させる。
【0036】即ち、この親水化処理工程では、ポリビニ
ルピロリドンの水溶液を血液浄化器1に接触させること
により、ポリビニルピロリドンを付着保持させている。
なお、この親水化処理工程で用いる親水性高分子の溶液
を作製するにあたり、本実施形態では溶媒として精製水
を用いたが、精製水以外の液体を溶媒として使用しても
構わない。そして、この親水化処理工程を経ることによ
り、疎水性中空糸膜11´にはポリビニルピロリドンが
付着保持され、本実施形態における血液浄化膜(即ち、
中空糸膜11)が得られる。
【0037】なお、この親水化処理工程では、親水性高
分子溶液の濃度を適宜変えることにより、付着保持させ
る親水性高分子の量を制御できる。即ち、高濃度の親水
性高分子溶液を使用することにより親水性高分子を多く
付着保持させることができ、低濃度の親水性高分子溶液
を使用することにより少ない量の親水性高分子を付着保
持させることができる。
【0038】例えば、ポリビニルピロリドンの1重量%
の水溶液を用いて親水化処理を行うと、ポリアリレート
樹脂とポリスルホン樹脂から製造した疎水性高分子膜に
おいては、疎水性高分子膜1平方メートルあたり70ミ
リグラムのポリビニルピロリドンが付着保持された血液
浄化膜が作製でき、ポリビニルピロリドンの0.03重
量%の水溶液を用いて親水化処理を行うことにより、疎
水性高分子膜1平方メートルあたり3ミリグラムのポリ
ビニルピロリドンが付着保持された血液浄化膜が作製で
きる。また、付着保持されたポリビニルピロリドンの量
は、処理前のポリビニルピロリドン水溶液濃度と処理後
のポリビニルピロリドン水溶液濃度及び後述する洗浄工
程で除去されたポリビニルピロリドンの量(即ち、洗浄
液のポリビニルピロリドン濃度)とを比較することで算
出できる。
【0039】また、この親水化処理工程では、親水性高
分子の分子量を変えることで膜の厚さ方向の親水化の度
合いを変えることができる。即ち、低い分子量の親水性
高分子を使用することにより中空糸膜11の内表面11
a側から膜の厚さ方向の全体に亘って親水性高分子を付
着保持せしめることができ、高い分子量の親水性高分子
を使用することにより中空糸膜11の内表面11aにの
み親水性高分子を付着保持せしめることができる。例え
ば、ポリビニルピロリドンK−30(平均分子量約40
000)の水溶液を使用して親水化処理を行った場合に
は、中空糸膜11の厚さ方向の全体に亘ってポリビニル
ピロリドンを付着保持せしめることができ、ポリビニル
ピロリドンK−90(平均分子量約1200000)の
水溶液を使用して親水化処理行った場合には、中空糸膜
11の内表面11aにのみポリビニルピロリドンを付着
保持せしめることができる。
【0040】次に、水洗を行う(洗浄工程、ステップS
6)。この洗浄工程では、ポリビニルピロリドン(親水
性高分子)を付着保持させた血液浄化器1について、余
剰な親水性高分子を洗浄液により除去する。具体的に
は、洗浄液、例えば精製水を血液浄化器1内に流す。こ
の洗浄工程により、血液浄化器1に付着保持している親
水性高分子の内、所定の吸着力よりも低い吸着力で吸着
している余剰な親水性高分子が洗浄除去される。なお、
この洗浄工程後においても血液浄化器1に付着保持され
ている親水性高分子は、血液浄化器1内を流れる血液に
よっても離脱しない。また、この洗浄工程で使用する洗
浄液は精製水に限定されるものではなく、余剰な親水性
高分子を除去できる液体であればよい。
【0041】そして、洗浄が終了した血液浄化器1に精
製水を充填し(ステップS7)、この精製水が充填され
た状態の血液浄化器1に滅菌処理を行う(ステップS
8)。この滅菌処理工程では、γ線滅菌、蒸気滅菌等を
施す。
【0042】ところで、以上説明した製造工程では、血
液浄化器1を製造する過程の中で血液浄化膜(中空糸膜
11)をも製造するようにした例を示したが、紡糸した
疎水性高分子膜に対して直接的に親水性高分子の溶液を
接触させ、親水性高分子を疎水性高分子膜に付着保持さ
せるようにしてもよい。
【0043】また、中空糸膜11から除去可能な開孔剤
をポリビニルピロリドン(親水性高分子の一種)と共に
製膜原液に添加し、紡糸後に開孔剤を除去することによ
り、ポリビニルピロリドンの保持量を低く調整すること
もできる。この方法で製造した血液浄化膜では、膜の厚
さ方向の全域に亘って親水性が付与されているが、ポリ
ビニルピロリドンの保持量が低く調整されているので、
ポリビニルピロリドンが漏出するのを防止することがで
きる。但し、本実施形態の如く、予め製膜した疎水性高
分子膜に親水性高分子の溶液を接触させるようにする
と、処理が容易であると共に、親水性高分子の付着量の
制御が容易であるという利点を有する。さらに、血液浄
化膜を透過できない高い分子量の親水性高分子(例え
ば、ポリビニルピロリドンK−90)を使用することに
より、血液浄化膜における血液接触側の表面にのみ、選
択的に親水性高分子を付着保持させることもできる。
【0044】また、上記した実施形態では中空糸膜11
を例示したが、シート状の膜でもよい。
【0045】また、上記した実施形態では、血液浄化膜
において使用可能な親水性高分子の内、代表的な親水性
高分子であるポリビニルピロリドンを例示したが、この
ポリビニルピロリドンと同様な性質を有する親水性高分
子であれば、これに限定されない。但し、本実施形態の
ようにポリビニルピロリドンを用いた場合には、極く少
量で高い血液適合性を発揮し得る血液浄化膜を作製する
ことができる。
【0046】また、疎水性高分子膜に関し、本実施形態
では、ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂とを主た
る膜素材とした疎水性高分子膜を例示したが、他の疎水
性材料による膜でもよい。但し、本実施形態の如く、ポ
リアリレート樹脂とポリスルホン樹脂とを主たる膜素材
とした疎水性高分子膜を用いた場合には、親水性高分子
の溶液を接触させた際に、他の疎水性材料による膜より
も好適に(確実に)親水性高分子を付着保持させられ
る。
【0047】
【実施例】次に、本発明の実施例を示して、本発明を更
に具体的に説明する。なお、以下の説明では、親水性高
分子として血液浄化膜に好適に用いられているポリビニ
ルピロリドンK−90(平均分子量約1200000)
を用いた場合について説明する。
【0048】まず、前記式(1)にて示されるポリアリ
レート樹脂〔(株)ユニチカ製、商品名;Uポリマー〕
と、前記式(3)にて示されるポリエーテルスルホン樹
脂〔住友化学工業(株)製、商品名;スミカエクセルP
ES〕と、N−メチルピロリドンとから製膜原液を調製
した。なお、ポリアリレート樹脂とポリエーテルスルホ
ン樹脂との重量混合比は、1:1とした。また、N−メ
チルピロリドン水溶液を凝固液並びに芯液とした。そし
て、二重管紡糸口金を用いて製膜原液と芯液とを凝固液
中へ吐出して疎水性中空糸膜11´を作製し、この疎水
性中空糸膜11´を1万本程度束ねて中空糸束10を得
た。さらに、この中空糸束10を円筒状のポリカーボネ
イト製のケーシング2内に装填した後に、ポリウレタン
樹脂をシーリング材12として用いて端部を接着し、ケ
ーシング2の両端部に血液ポート3,4を接続して、膜
面積1.5平方メートルの血液浄化器1を試作した。
【0049】(実施例1)血液浄化器1にポリビニルピ
ロリドン(BASF製、商品名;コリドンK−90)の
0.1重量%の水溶液を、常温下で、200mL/mi
nの流量で約1分間流して親水化処理を行い、疎水性高
分子膜1平方メートルあたり10ミリグラムのポリビニ
ルピロリドンが付着保持された血液浄化膜(中空糸膜1
1)を作製した。なお、ポリビニルピロリドンの付着保
持量は、親水化処理前におけるポリビニルピロリドン水
溶液の濃度と、親水化処理終了時におけるポリビニルピ
ロリドン水溶液の濃度及び洗浄液のポリビニルピロリド
ン濃度とに基づいて算出した。また、ポリビニルピロリ
ドン水溶液の濃度測定は、Mullerの方法(K.M
uller,Pham.Acta,Helv.43(1
968)107−122)を用いて行った。
【0050】そして、この血液浄化膜におけるポリビニ
ルピロリドンの漏出量(溶出量)を調べる試験を行っ
た。具体的には、血液浄化器1を精製水1Lで洗浄した
後、精製水を血液浄化器1内に充填し、70℃で3時間
加温した後に、充填した液(血液接触部側の液)を抜き
取り、ポリビニルピロリドンの濃度を測定した。なお、
この試験における血液ポート3,4は、血液浄化膜から
の漏出を測定するためポリビニルピロリドンが付着され
ていないものを用いた。また、この血液浄化膜における
限外濾過量(UFR、mL/hr・mmHg)の経時変
化を調べる試験を行った。具体的には、血液浄化器1を
精製水1Lで洗浄した後、牛血液(ヘマトクリット30
%、総蛋白6.5g/dL)を200mL/minの流
量で循環させるとともに濾過流量を90mL/minに
調整し、限外濾過量の経時変化を測定した。さらに、血
液浄化膜の表面(即ち、中空糸膜11の内表面11a)
における血小板の付着状態を観察した。具体的には、限
外濾過量の経時変化を調べる試験を行った後の血液浄化
膜を、血液浄化器1から切り出すと共に平面状に切り開
き、この切り開いた血液浄化膜を乾燥したものを測定サ
ンプルとして、その血液接触面側の表面を電子顕微鏡
(SEM)で観察した。試験結果及び観察結果を表1並
びに図4(限外濾過量の経時変化)に示した。
【0051】(実施例2)ポリビニルピロリドンの0.
5重量%の水溶液を用いて親水化処理(濃度以外の条件
は実施例1と同じ、以下同様)を行い、疎水性高分子膜
1平方メートルあたり50ミリグラムのポリビニルピロ
リドンが付着保持された血液浄化膜を作製した。
【0052】そして、この血液浄化膜に対しても、ポリ
ビニルピロリドンの漏出量を調べる試験並びに限外濾過
量の経時変化を調べる試験を行った(試験内容は、実施
例1と同じ)。各試験における試験結果を表1並びに図
4に示した。
【0053】(実施例3)ポリビニルピロリドンの0.
03重量%の水溶液を用いて親水化処理を行い、疎水性
高分子膜1平方メートルあたり3ミリグラムのポリビニ
ルピロリドンが付着保持された血液浄化膜を作製した。
【0054】そして、この血液浄化膜に対しても、ポリ
ビニルピロリドンの漏出量を調べる試験並びに限外濾過
量の経時変化を調べる試験を行った(試験内容は、実施
例1と同じ)。各試験における試験結果を表1並びに図
4に示した。
【0055】(比較例1)ポリビニルピロリドンの1重
量%の水溶液を用いて親水化処理を行い、疎水性高分子
膜1平方メートルあたり70ミリグラムのポリビニルピ
ロリドンが付着保持された血液浄化膜を作製した。
【0056】そして、この血液浄化膜に対しても、ポリ
ビニルピロリドンの漏出量を調べる試験並びに限外濾過
量の経時変化を調べる試験を行った(試験内容は、実施
例1と同じ)。各試験における試験結果を表1並びに図
4に示した。
【0057】(比較例2)ポリビニルピロリドンの0.
01重量%の水溶液を用いて親水化処理を行い、疎水性
高分子膜1平方メートルあたり1ミリグラムのポリビニ
ルピロリドンが付着保持された血液浄化膜を作製した。
【0058】そして、この血液浄化膜に対しても、ポリ
ビニルピロリドンの漏出量を調べる試験、限外濾過量の
経時変化を調べる試験並びに血小板の付着状態の観察を
行った(試験内容は、実施例1と同じ)。各試験におけ
る試験結果を表1並びに図4に示した。
【0059】
【表1】
【0060】まず、血液浄化膜における親水性高分子の
漏出について検討する。表1に示すように、ポリビニル
ピロリドンの付着保持量を、疎水性高分子膜1平方メー
トルあたり70ミリグラム(付着量70ミリグラムとい
う、以下同様)とした血液浄化膜(比較例1)では、1
リットルあたり5ミリグラムのポリビニルピロリドンの
漏出が認められた。一方、付着量50ミリグラムの血液
浄化膜(実施例2)では、ポリビニルピロリドンの漏出
は認められなかった(即ち、検出限界以下であった)。
同様に、付着量10,3ミリグラムの血液浄化膜(実施
例1,3)でも、ポリビニルピロリドンの漏出は認めら
れなかった。
【0061】次に、血液浄化膜の透過量の安定性と血液
適合性について検討する。図4に示すように、付着量を
1ミリグラムとした血液浄化膜(比較例2)では、試験
開始直後に約90mL/hr・mmHgであった限外濾
過量は、時間の経過に伴って急激に低くなり、50時間
経過後には約60mL/hr・mmHgであった。さら
に、100時間経過後には約22mL/hr・mmHg
となり、それ以後、限外濾過量は徐々に低くなる。そし
て、240時間経過後には、約17mL/hr・mmH
gとなった。また、血小板の付着状態の観察結果におい
ても、血液浄化膜における血液接触側の表面には、多量
の血小板の付着が認められている(表1参照)。従っ
て、親水性高分子の付着量が少なすぎる血液浄化膜で
は、血液を通じた直後から血液成分が凝固して血液接触
側の表面に付着し、膜の劣化が生じる。そして、この劣
化は急速に進行し、比較的短期間で使用が困難な状態に
なることが判る。
【0062】一方、付着量を3ミリグラムとした血液浄
化膜(実施例3)では、試験開始直後に約105mL/
hr・mmHgであった限外濾過量は、時間の経過に伴
って徐々に低くなり、50時間経過後には約93mL/
hr・mmHgであった。それ以後、限外濾過量は緩や
かに低くなるが、240時間経過後でも、約85mL/
hr・mmHgの限外濾過量を維持していた。なお、付
着量10,50ミリグラムの血液浄化膜(実施例1,
2)では、試験開始直後から終了までの期間に亘って約
100mL/hr・mmHg前後の限外濾過量を維持し
ていた。そして、付着量10ミリグラムの血液浄化膜
(実施例1)では、血液浄化膜における血液接触側の表
面には、僅かの血小板の付着しか認められなかった。即
ち、良好な血液適合性を発揮していた。
【0063】以上から、付着量を3ミリグラム以上にす
ることにより、血液成分の付着が極めて少なく安定した
透過量が得られ、良好な血液適合性を長期間に亘って発
揮できることが判る。さらに、付着量を10ミリグラム
以上にすることにより、血液適合性をより一層高める
(良好にする)ことができることが判る。
【0064】そして、上記した親水性高分子の漏出、及
び血液適合性を総合すると、付着量10ミリグラムから
50ミリグラムの血液浄化膜であれば、親水性高分子の
漏出阻止と血液適合性をさらに高いレベルで両立させ得
ることが判る。
【0065】なお、親水性高分子の漏出という観点から
すれば、親水性高分子の使用量が少ないほど漏出の可能
性が少ないので好ましい。従って、付着量10ミリグラ
ムの血液浄化膜であれば、親水性高分子の漏出阻止と血
液適合性とを高いレベルで両立させることができ、尚且
つ、漏出阻止を一層確実に行えることが判る。
【0066】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
次の効果を奏する。即ち、請求項1記載の発明によれ
ば、親水性高分子を疎水性高分子膜に保持させた血液浄
化膜であって、疎水性高分子膜1平方メートルあたりの
親水性高分子の保持量を、3ミリグラム以上50ミリグ
ラム以下としたので、親水性高分子の漏出阻止と良好な
血液適合性とを両立させることができる。
【0067】請求項2記載の発明によれば、前記親水性
高分子がポリビニルピロリドンであるので、極く少量
で、良好な血液適合性を発揮し得る血液浄化膜が得られ
る。
【0068】請求項3記載の発明によれば、親水性高分
子の溶液を疎水性高分子膜に接触させることにより、親
水性高分子を疎水性高分子膜に物理的に付着保持せしめ
たので、付着保持させるための処理が容易であると共
に、親水性高分子の付着量の制御を容易に行うことがで
きる。
【0069】請求項4記載の発明によれば、前記疎水性
高分子膜は、ポリアリレート樹脂とポリスルホン樹脂と
を主たる膜素材としているので、親水性高分子の溶液を
接触させるだけで、親水性高分子を確実に付着保持させ
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】血液浄化器を断面にした説明図である。
【図2】ケーシングの端部における中空糸束の切断面を
示した図で、(a)が切断面全体を示した図、(b)が
一部を拡大して示した図である。
【図3】血液浄化器の製造工程の概略を示すフローチャ
ートである。
【図4】ポリビニルピロリドンの付着量が異なる血液浄
化膜による限外濾過量の経時変化を示した図である。
【符号の説明】
1 血液浄化器 2 ケーシング 3 注入側血液ポート 4 排出側血液ポート 5 透析液の流入口 6 透析液の排出口 7 注入側血液ポートにおける注入口 8 排出側血液ポートにおける排出口 9 Oリング 10 中空糸束 11 中空糸膜(血液浄化膜) 11´ 疎水性中空糸膜 11a 中空糸膜の内表面 12 シーリング材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 千葉 敏昭 石川県金沢市北陽台3−1 日機装株式会 社金沢製作所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 親水性高分子を疎水性高分子膜に保持さ
    せた血液浄化膜であって、 疎水性高分子膜1平方メートルあたりの親水性高分子の
    保持量を、3ミリグラム以上50ミリグラム以下とした
    ことを特徴とする血液浄化膜。
  2. 【請求項2】 前記親水性高分子がポリビニルピロリド
    ンであることを特徴とする請求項1記載の血液浄化膜。
  3. 【請求項3】 親水性高分子の溶液を疎水性高分子膜に
    接触させることにより、親水性高分子を疎水性高分子膜
    に物理的に付着保持せしめたことを特徴とする請求項1
    又は請求項2記載の血液浄化膜。
  4. 【請求項4】 前記疎水性高分子膜は、ポリアリレート
    樹脂とポリスルホン樹脂とを主たる膜素材としているこ
    とを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の血液
    浄化膜。
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