JP3686985B2 - 新規タンパク質及び該タンパク質をコードする遺伝子並びに該タンパク質の製造法 - Google Patents

新規タンパク質及び該タンパク質をコードする遺伝子並びに該タンパク質の製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規タンパク質及び該タンパク質をコードする遺伝子並びに該タンパク質の製造方法に関する。更に詳細には、本発明は、新規な上皮細胞増殖因子(Epidermal Growth Factor:EGF)様生理活性を有するタンパク質及び該タンパク質をコードする遺伝子並びに該遺伝子を組み込んだバチルス属細菌を培養することにより、該タンパク質を培養物中に生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする該タンパク質の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
EGFは、ヒトや馬の尿中やウサギ、ラットおよびマウスの顎下腺から単離されており、哺乳動物の体内に存在していることが知られている(Adv. Metab. Dis., 8, 265(1975))。ヒト上皮細胞増殖因子(human Epidermal Growth Factor : h-EGF)は、53個のアミノ酸からなる分子量約6,000のペプチドで、分子内に3ヶ所のジスルフィド結合をもち配列番号17に示されるアミノ酸配列であることが知られている(H. Gregory, Nature, 257, 325(1975))。
EGFの生理活性として現在までに報告されているものは、細胞増殖作用、胃酸分泌抑制作用、抗潰瘍作用、消化管粘膜保護作用、DNA合成促進作用、角膜修復作用、カルシウム遊離促進作用、創傷治癒促進作用、抗炎症作用、鎮痛作用、肝細胞障害抑制作用及び毛胞退縮作用などがある(日本組織培養学会編、細胞成長因子、20頁、朝倉書店 1984年)。EGFはこのような作用を有することから創傷治癒薬、抗潰瘍剤、抗癌剤補助剤などとしての様々な応用が試みられている(BIO INDUSTRY, 8, 275(1991))。
【0003】
このようにEGFについての種々の応用研究が進められている一方、同時にEGFの効率的生産方法についても種々検討がなされており、遺伝子組換えによるEGFの製造法も種々報告されている。特に恵比須らはバチルス・ブレビスHPD31(Bacillus brevis HPD31:なおこの菌株はバチルス・ブレビスH102(FERM BP−1087))と同一菌株である)を宿主菌としたh−EGFの分泌生産系において、h−EGFを培地中に約3g/l生産させることに成功している(特開平6−133782)。しかしその後、この菌株で継代培養を行うと、h−EGFの生産性が低下する場合のあることが観察されている。継代培養で生産性が減少すると、種培養から数回の植え継ぎを行って徐々にスケールアップを重ね、大量培養を行う商業スケールでの培養において特に問題で、菌株が保有している能力を十分に発揮できず、最終的には低い生産量になることが想定される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来技術では、h−EGFの生産量が非常に少ない場合も認められ、産業上適用するためにはもう一段の技術開発が必要とされている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような技術の現状に鑑み、本発明者らは、発想の大転換を行い、h−EGFを直接生産するのではなく、h−EGF様生理活性を有する新規タンパク質を見出しこれを生産すること、しかもこれを遺伝子工学による手法で安定的に工業生産すること、という全く新規な技術課題を設定し、この技術課題を解決することにより上記目的を達成することとした。
【0006】
そこで本発明者らは、各方面から検討した結果、マウスEGF(配列番号16:m−EGF)とヒトEGF(配列番号17:h−EGF)は、ともに53アミノ酸残基からなり、その高次構造は類似するがアミノ酸配列において16アミノ酸が異なることにはじめて注目し、これら2種類のEGFがキメラになった新規タンパク質を構築した。そしてこれらのタンパク質をコードする遺伝子を組み込んだバチルス・ブレビスHPD31を培養し、該タンパク質を分泌生産させたところ、該タンパク質のアミノ酸配列が配列番号1のアミノ酸配列であれば継代培養を行っても安定に分泌生産されることが分かり、しかもこれらのタンパク質も天然のEGFと同様の種々の生理活性を有することが明らかとなり、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、新規タンパク質及び該タンパク質をコードする遺伝子並びに該遺伝子を組み込んだバチルス属細菌を培養することにより、該タンパク質を培養物中に生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする新規タンパク質の製造法に関するものである。
以下、本発明について詳しく説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の新規タンパク質は、配列番号1に示すように53アミノ酸から成り、N末端から数えて10番目までのアミノ酸配列(A領域とする)は配列番号16のm−EGFのN末端から10番目のアミノ酸配列と同一の配列である。
【0009】
また、本発明のタンパク質のN末端から数えて11番目から33番目のアミノ酸配列(B領域とする)、34番目から47番目のアミノ酸配列(C領域とする)及び48番目から53番目のアミノ酸配列(D領域とする)は、配列番号16に示すm−EGFと配列番号17に示すh−EGFのアミノ酸配列各々の本発明タンパク質のB,C,D領域に相当する部分のアミノ酸配列を組み合わせた新規タンパク質である。
具体的にはB領域のアミノ酸配列は配列番号2または3に示した何れかであり、C領域のアミノ酸配列は配列番号4または5であり、D領域のアミノ酸配列は配列番号6または7のアミノ酸配列である。さらに具体的には、本発明のタンパク質は配列番号8〜11のアミノ酸配列で示されるタンパク質である。
但し、A、B、C、D全ての領域が、配列番号16のm−EGFと同じ配列のものはm−EGFそのものであって、本発明から除外されることはもちろんである。同様に、A、B、C、D全ての領域が、配列番号17のh−EGFと同じ配列のものはh−EGFそのものであって、本発明から除外される。
【0010】
また、本タンパク質をコードする遺伝子は化学的に合成した遺伝子を用いることができ、合成遺伝子を用いる場合は発現系の細胞において最も容認されたコドンを採用した遺伝子が好適に使用出来る。
具体的には、配列番号12〜15に示す塩基配列を有する遺伝子などを用いることが出来る。
【0011】
このようにして得た遺伝子を宿主菌内に導入、保持させるベクターは、宿主菌内で複製可能なプラスミドを利用することができる。例えば宿主菌が枯草菌(バチルス・ズブチリス:(Bacillus subtilis)やバチルス・ブレビスの系ではpUB110やpNU200(鵜高重三、日本農芸化学会誌、61、669(1987))、pHY700(S. Ebisu et al, Biosci. Biotech. Biochem, 56, 812-813(1992))、pHT110(特開平6−133782)やこれらの派生体などのプラスミドを使用できる。
【0012】
これらのプラスミドを構築する方法としては、公知の方法が適宜用いられ、例えばモレキュラー・クローニング、ア・ラボラトリーマニュアル第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Molecular Cloning 2nd ed., A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)に記載の方法などが例示される。
【0013】
本発明において宿主菌として用いる細菌は、バチルス属に属する細菌であればよいが、枯草菌やバチルス・ブレビス、バチルス・チョーシネンシス(Bacillus choshinensis)などが好適に使用できる。
【0014】
宿主菌を形質転換する方法は公知の方法で良く、例えば、枯草菌ではChang and Cohenの方法(S. Chang and S. N. Cohen, Molec. gen. Genet, 168, 111-115(1979))、バチルス・ブレビスではTakahashiらの方法(Takahashi et al, J. Bacteriol., 156, 1130(1983))またはTakagiらの方法(H. Takagi et al, Agric, Biol. Chem., 53, 3099-3100(1989))などが例示される。
【0015】
得られた形質転換体の培養に用いる培地は、形質転換体が生育して本タンパク質を生産しうるものであれば如何なるものでもよい。
該培地に含有される炭素源としては、例えば、グルコース、シュークロース、グリセロール、澱粉、デキストリン、糖蜜、有機酸などが用いられる。また、窒素源としては、カゼイン、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カザミノ酸、尿素、グリシンなどの有機窒素源、硫酸アンモニウムなどの無機窒素源などが用いられる。その他、塩化カリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムなどの無機塩が必要に応じて培地に加えられる。栄養要求性を示す菌はその生育に必要な栄養物質を培地に添加すればよい。該栄養物質としては、アミノ酸類、ビタミン類、核酸などが挙げられる。
【0016】
また、培養に際して必要があれば、培地に抗生物質例えばペニシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、バシトラシン、D−サイクロセリン、アンピシリン、ネオマイシンなどを加える。更に必要により、消泡剤例えば大豆油、ラード油、各種界面活性剤などを加えてもよい。
【0017】
培地の初発pHは5.0〜9.0、さらに好ましくは6.5〜7.5である。培養温度は通常15℃〜42℃、さらに好ましくは24℃〜37℃であり、培養時間は通常16〜166時間、さらに好ましくは24〜96時間である。
【0018】
本発明で、形質転換体を前記の条件で培養することによって、培養物中に本タンパク質が生成、蓄積され、継代培養によっても安定に分泌生産される。
このようにして得られたタンパク質は公知の方法により、例えば膜処理、硫安分画法、クロマトグラフィーなど(蛋白質・核酸の基礎実験法、南江堂(1985))で精製することができる。
また、pH調整による等電点沈殿とNaClの添加による塩析を組み合わせることにより、非常に簡便かつ効率的に本タンパク質を精製することができる。
【0019】
このようにして得られた本タンパク質の生理活性については既存の方法で測定することができる。例えば細胞増殖活性は、ラットの初代培養肝実質細胞を用いた細胞増殖試験で確認することができる(J. Antibiotics, 38, 1767-1773(1985))。また、DNA合成刺激作用は3H−チミジンのヒト繊維芽細胞などを用いた取り込み試験で確認することができる(細胞成長因子、朝倉書店(1984))。
【0020】
本発明では、新規なタンパク質を創製することによって、EGF様生理活性を有するタンパク質を安定に分泌生産できるようになった。
また本タンパク質は天然のEGFと同様な生理活性を有するので、天然EGFと同じ分野への適用が考えられる。
【0021】
以下本発明を実施例により更に詳しく説明するが、これは例示的なものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
【実施例1】
(1)プラスミドpHT−hEGFの構築
h−EGFのアミノ酸配列をコードする合成遺伝子(BIO INDUSTRY,,100−107(1991))を鋳型にし、配列番号18のprimer5及び配列番号19のprimer3を使って、常法によりPCRを行い、約210bpのDNA断片を増幅した。
得られたDNA断片を制限酵素ApaLIとPstIで切断し、5%アグリルアミドゲル電気泳動を行い205bp断片を切り出し、電気溶出法(Molecular Cloning 2nd ed.,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor−Laboratory,1989)により回収した。
バチルス・ブレビスHP926(FERM BP−5382)が保有するプラスミドpHT926より調製したプラスミドpHT110−EGF(特開平6−133782)をPstIで部分分解さらにApaLIで完全分解し、0.8%アガロース電気泳動を行い、3.3kbのDNA断片を切り出し、GENE CLEAN(Bio 101,USA)にて回収し、先に得た205bpのDNA断片とT4リガーゼでライゲーションし、配列番号17のh−EGFのアミノ酸配列をコードする遺伝子を保有するプラスミドpHT−hEGFを得た。
【0023】
(2)プラスミドpHT−A, pHT−AB, pHT−AC,pHT−ABC, pHT−B, pHT−C, pHT−BCの構築
▲1▼プラスミドpHT−Aの構築
(1)で得たプラスミドpHT−hEGFを鋳型にし、primerA(配列番号20)及びprimer3を使って、常法によりPCRを行い、約180bpのDNA断片を増幅した。
増幅したDNA断片を制限酵素EcoRIとSphIで切断し、10%アクリルアミドゲル電気泳動後、電気溶出法によって回収しDNA断片Aを得た。
(1)で得たプラスミドpHT−hEGFを制限酵素EcoRIとSphIで切断し、アガロース電気泳動後回収し、これに先に得たDNA断片Aを挿入しプラスミドpHT−Aを得た。
【0024】
▲2▼プラスミドpHT−Bの構築
▲1▼と同じ方法でprimer5及びprimerB(配列番号21)を使って、約100bpのDNA断片を増幅し、制限酵素EcoRIとSphIで切断し、DNA断片Bを得た。
pHT−hEGFを制限酵素EcoRIとSphIで切断し、先に得たDNA断片Bを挿入しプラスミドpHT−Bを得た。
【0025】
▲3▼プラスミドpHT−Cの構築
▲1▼と同じ方法でprimerA及びprimerC(配列番号22)を使って約140bpのDNA断片を増幅し、制限酵素SphIとBglIIで切断し、DNA断片Cを得た。
pHT−hEGFを制限酵素SphIとBglIIで切断し、先に得たDNA断片Cを挿入しプラスミドpHT−Cを得た。
【0026】
▲4▼プラスミドpHT−ABの構築
▲1▼と同じ方法でprimer A及び同 Bを使って約100bpのDNA断片を増幅し、制限酵素EcoRIとSphIで切断し、DNA断片ABを得た。
pHT−hEGFを制限酵素EcoRIとSphIで切断し、先に得たDNA断片ABを挿入しプラスミドpHT−ABを得た。
【0027】
▲5▼プラスミドpHT−ACの構築
▲3▼で得た約140bpのDNA断片を制限酵素EcoRIとBg1IIで切断し、DNA断片ACを得た。
pHT−hEGFを制限酵素EcoRIとBg1IIで切断し、先に得たDNA断片ACを挿入しプラスミドpHT−ACを得た。
【0028】
▲6▼プラスミドpHT−BCの構築
▲3▼で得たプラスミドpHT−Cを制限酵素EcoRIとSphIで切断し、これに▲2▼で得たDNA断片Bを挿入しプラスミドpHT−BCを得た。
【0029】
▲7▼プラスミドpHT−ABCの構築
▲3▼で得たプラスミドpHT−Cを制限酵素EcoRIとSphIで切断し、これに▲4▼で得たDNA断片ABを挿入しプラスミドpHT−ABCを得た。
【0030】
ここで得られた7種類のプラスミド中のタンパク質をコードする塩基配列をダイデオキシ法(Sanger, F., Nickelen, S. & Colusion ; A. R., Proc. Natl. Acad. Sci., 74, 5493(1977))によって決定し、目的通りの塩基配列であることを確認した。
【0031】
ここで得たプラスミドpHT−Aが保持する遺伝子A(配列番号12)がコードするタンパク質をA(配列番号8)、プラスミドpHT−Bが保持する遺伝子Bがコードするタンパク質をB、プラスミドpHT−ABが保持する遺伝子AB(配列番号13)がコードするタンパク質をAB(配列番号9)、プラスミドpHT−Cが保持する遺伝子Cがコードするタンパク質をC、プラスミドpHT−ACが保持する遺伝子AC(配列番号14)がコードするタンパク質をAC(配列番号10)、プラスミドpHT−BCが保持する遺伝子BCがコードするタンパク質をBCそしてプラスミドpHT−ABCが保持する遺伝子ABC(配列番号15)がコードするタンパク質をABC(配列番号11)とした。
【0032】
【実施例2】
(1)本発明タンパク質(以下本タンパク質とする)のバチルス・ブレビスHPD31による分泌生産
実施例1で得た8種類のプラスミドpHT−hEGF(本試験における対照プラスミド)、pHT−A,pHT−AB,pHT−AC,pHT−ABC,pHT−B,pHT−C,pHT−BCでバチルス・ブレビスHPD31(FERMBP−1087)をエレクトロポレーション法(H. Takagi at al. Agric. Biol, Chem., 53, 3099-3100(1989))によって形質転換した。これらのプラスミドを保持するバチルス・ブレビスHPD31を2SL培地(ペプトン4%、酵母エキス0.5%、グルコース2%、MgSO4 0.01%、FeSO4 0.001%、MnSO4 0.001%、ZnSO4 0.0001%、エリスロマイシン10μg/ml、pH7.2)を3ml分注した試験管に植菌し、30℃で3日間振とう培養を行った。培養上清中の本タンパク質量をHPLC(カラム:C18−100A、径4mm×長さ250mm、バッファー:0.1% TFA/H2O,0.1%、TFA/50%アセトニトリル、リニアグラジエント、検出:UV276nm)で分析し、市販EGF(フナコシ(株)社製)を標準品として同条件でHPLCを行った時のピーク面積と比較して生産量を求め、これを第1代の生産量とした。
次に、3日間培養した第1代培養液を2SL培地に1%植菌し同じように培養し、第2代培養液とし同様に本タンパク質の生産量を求めた。その結果を図1に示す。図中、白ヌキは第1代培養液1の生産量、及び斜線は第2代培養液2の生産量をそれぞれ示す。
【0033】
この結果から明らかなように、A、AB、AC、ABCの4種類のタンパク質は第2代培養でもその生産性はあまり低下せず、B、BCおよび対照のh−EGFでは第2代培養では殆どタンパク質の生産は認められなかった。この結果は、A領域すなわちN末端から10番目までのアミノ酸配列がm−EGFのN末端から10番目までのアミノ酸配列と同一であれば、本タンパク質はバチルス・ブレビスによって安定に生産されるものと思われた。また、B領域(11番目から33番目までのアミノ酸配列領域)、C領域(34番目から47番目までのアミノ酸配列領域)は安定生産性には影響を与えないものと推測された。
【0034】
(2)本タンパク質遺伝子を保有する各プラスミドの安定性
第1代、第2代培養した菌株をエリスロマイシン含有寒天培地に塗抹し、出現したコロニーをニトロセルロース膜にレプリカ後、h−EGF抗体でコロニーイムノアッセイを行った。その結果、表23に示すように、プラスミドpHT−A,pHT−AB,pHT−AC,pHT−ABCを保持するバチルス・ブレビスHPD31では第2代まで出現するコロニーのすべてが本タンパク質を生産するのに対して、pHT−hEGF(対照)、pHT−B、pHT−C、pHT−BCを保持する菌株では本タンパク質生産株の出現頻度は極端に悪くなった。後者の4種類の菌株のプラスミドを解析したところ、コピー数の低下や、遺伝子の一部欠損がみられた。
【0035】
【表23】
Figure 0003686985
【0036】
(3)本タンパク質遺伝子を保有する各プラスミドの継代培養でのタンパク質生産の安定性
実施例1で得た8種類それぞれのプラスミドを保持する形質転換体のうち、第2世代まで安定に本タンパク質を生産する菌株を選択し、再度培養試験を行い、その結果を図2に示す。図中、白ヌキは第1代培養液1の生産量、及び斜線は第2代培養液2の生産量をそれぞれ示す。
【0037】
この結果から明らかなように、いずれの菌株でも安定化が進み、プラスミドpHT−A,pHT−AB,pHT−AC,pHT−ABCを保持するバチルス・ブレビスHPD31株では第2世代では生産性は下がらないが、pHT−hEGF(対照)、pHT−B、pHT−C、pHT−BCを保持する菌株ではいずれも60%程度の生産性しか示さなかった。
【0038】
以上の結果より、本タンパク質のA領域のアミノ酸配列がm−EGFのN末端から10番目までのアミノ酸配列と同一であれば、本タンパク質はバチルス・ブレビスによって安定に生産され、B領域およびC領域は安定性生産性には影響を与えないことが明らかとなった。
【0039】
【実施例3】
本タンパク質の精製
pHT−hEGF(対照)、pHT−A,pHT−AB,pHT−AC,pHT−ABCそれぞれのプラスミドを保持するバチルス・ブレビスHPD31株を、寒天培地にて30℃で1日培養し、2SL培地に一晩30℃で振とう培養を行ったものを前培養液とした。
2Lジャーファーメンターに2SL培地を1L分注した後120℃で15分滅菌し、前培養液20ml接種し、30℃、攪拌200rpm、通気量1vvmの条件で3日間培養を行った。
【0040】
培養終了後、培養液から0.45μmの濾過膜を用いて菌体を除去し、濾過画分に本タンパク質を含む培養上清を回収した。この培養上清画分のpHを塩酸を用いて3.8に調整し夾雑タンパク質を沈殿させた。次いで0.45μmの濾過膜を用いて濾過及び、20mM CH3COONa(pH3.8)の緩衝液500mlによる洗浄濾過を行い、本タンパク質を含む濾過画分を回収した。さらにこの濾過画分にNaClを2M濃度になるように加えることにより、本タンパク質を特異的に沈殿させた。これを0.45μmの濾過膜を用いて濾過及び、2MNaClを含む20mM CH3COONa(pH3.8)の緩衝液500mlによる洗浄濾過をし、濃縮液を200mlまで濃縮することにより、本タンパク質を沈殿濃縮液中に回収した。遠心分離により沈殿画分を回収し、0.1MTris−HCl(pH8.0)の緩衝液に溶解し、同緩衝液で透析後、凍結乾燥してh−EGFを0.52g、タンパク質Aを0.56g、タンパク質Bを0.59g、タンパク質Cを0.52g、タンパク質ABを0.77g、タンパク質ACを0.70g、タンパク質BCを0.47g、タンパク質ABCを0.84g得た。この操作で得られたそれぞれのタンパク質の純度は94〜95%、回収率は85〜95%であった。
【0041】
【実施例4】
本タンパク質の生理活性の確認
コラゲナーゼ灌流法により単離した肝実質細胞を8×105cells/60mm tissue culture dish(type I collagen-coated, Corning 25010 COL-1)の割合で播種し、ウイリアムス培地E(WE培地)を用いて培養を行った(J. Antibiotics, 38,1767-1773(1985))。
播種後10%ウシ胎児血清、0.1μMインスリンを含むWE培地で4時間培養し、37℃に保温したリン酸緩衝液(PBS)で洗浄した後、0.1μMインスリンと12.5ng/ml及び25ng/ml濃度の実施例3で得たh−EGF及び7種類の本タンパク質を含有するWE培地で培養した。また、陰性対照として0.1μMインスリンのみを含む培地にて培養した区を設けた。
培養開始24時間後に新鮮培地に交換し、さらに24時間、すなわちh−EGF及び本タンパク質添加48時間培養後の細胞より常法により単離核を調製しカウントした。
【0042】
結果は、陰性対照の細胞数を100としたときの相対値として図3に示した。この結果から明らかなように、本タンパク質全てにおいて、h−EGF添加区と同程度のラット肝細胞増殖効果が確認できた。
【0043】
【発明の効果】
本発明によって従来未知の新規タンパク質の製造がはじめて可能となった。しかも本タンパク質は、新規であるばかりでなく、h−EGF様生理活性を有しており、各種の用途に応範に使用することができる。
したがって本発明は、h−EGF製造の有効な代替法としての著効も有するものである。
【0044】
【配列表】
本発明に係る新規タンパク質のアミノ酸配列を配列番号1に示し、そのB領域のアミノ酸配列を配列番号2又は3に示し、そのC領域のアミノ酸配列を配列番号4又は5に示し、そのD領域のアミノ酸配列を配列番号6又は7に示す。
【0045】
本発明に係る新規タンパク質の具体例について、それらのアミノ酸配列を配列番号8〜11に示し、これらのアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号12〜15に示す。
配列番号16、17は、マウス及びヒトEGF(m−EGF、h−EGF)のアミノ酸配列をそれぞれ示す。
【0046】
配列番号18〜22は、PCR用プライマーを示し、それぞれプライマー5、プライマー3、プライマーA、プライマーB、プライマーCを示す。
下記表1〜22に、配列番号1〜22で示される各配列を示す。
【0047】
【表1】
Figure 0003686985
【0048】
【表2】
Figure 0003686985
【0049】
【表3】
Figure 0003686985
【0050】
【表4】
Figure 0003686985
【0051】
【表5】
Figure 0003686985
【0052】
【表6】
Figure 0003686985
【0053】
【表7】
Figure 0003686985
【0054】
【表8】
配列番号 :8
配列の長さ:53
配列の型 :アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
配列
Figure 0003686985
【0055】
【表9】
Figure 0003686985
【0056】
【表10】
Figure 0003686985
【0057】
【表11】
Figure 0003686985
【0058】
【表12】
Figure 0003686985
【0059】
【表13】
Figure 0003686985
【0060】
【表14】
Figure 0003686985
【0061】
【表15】
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【0062】
【表16】
Figure 0003686985
【0063】
【表17】
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【0064】
【表18】
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【0065】
【表19】
Figure 0003686985
【0066】
【表20】
Figure 0003686985
【0067】
【表21】
Figure 0003686985
【0068】
【表22】
Figure 0003686985

【図面の簡単な説明】
【図1】初代形質転換体の第1、第2代培養における本タンパク質の生産性を示す。
【図2】安定形質転換体の第1、2代培養における本タンパク質の生産性を示す。
【図3】肝実質細胞増殖試験の結果であって、4dishの平均±標準偏差を示す。

Claims (12)

  1. 配列表の配列番号1のアミノ酸配列で示される新規タンパク質(但し、該配列において、Xa1−Xa11に該当するアミノ酸が、それぞれ同時に、Xa1=Asn,Xa2=Gly,Xa3=His,Xa4=Ser,Xa5=Ser,Xa6=Thr,Xa7=Ile,Xa8=Ser,Xa9=Asp,Xa10=Thr,およびXa11=Argである場合を除く。)。
  2. N末端から数えて11番目から33番目までのアミノ酸配列が配列番号2または3のアミノ酸配列であり、34番目から47番目までのアミノ酸配列が配列番号4または5のアミノ酸配列であり、48番目から53番目までのアミノ酸配列が配列番号6または7のアミノ酸配列である請求項1に記載の新規タンパク質(但し、該11番目から33番目までのアミノ酸配列、34番目から47番目までのアミノ酸配列および48番目から53番目までのアミノ酸配列が、それぞれ同時に、配列番号2、配列番号3、および配列番号4のアミノ酸配列である場合を除く。)
  3. 配列番号8のアミノ酸配列で示される請求項1又は2に記載の新規タンパク質。
  4. 配列番号9のアミノ酸配列で示される請求項1又は2に記載の新規タンパク質。
  5. 配列番号10のアミノ酸配列で示される請求項1又は2に記載の新規タンパク質。
  6. 配列番号11のアミノ酸配列で示される請求項1又は2に記載の新規タンパク質。
  7. 配列番号12の塩基配列で示され、請求項3に記載のアミノ酸配列をコードする新規タンパク質遺伝子のDNA。
  8. 配列番号13の塩基配列で示され、請求項4に記載のアミノ酸配列をコードする新規タンパク質遺伝子のDNA。
  9. 配列番号14の塩基配列で示され、請求項5に記載のアミノ酸配列をコードする新規タンパク質遺伝子のDNA。
  10. 配列番号15の塩基配列で示され、請求項6に記載のアミノ酸配列をコードする新規タンパク質遺伝子のDNA。
  11. 請求項1〜6に記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子のDNAを組み込んだ発現プラスミドを保有するバチルス属細菌を培養することにより、新規タンパク質を培養物中に生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする新規タンパク質の製造法。
  12. バチルス属細菌がバチルス・ブレビスであることを特徴とする請求項11に記載の新規タンパク質の製造法。
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