JP3686084B2 - 生物学上活性なeph族リガンド - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、リセプタ様蛋白質チロシンキナーゼ、たとえばEhk(Ehk−1、Ehk−2およびEhk−3を含む)、EckおよびElkのEphサブ族に属する蛋白質を結合する新規なリガンド、並びに生物学上活性である可溶性型のこれらリガンドを作成する方法を提供する。
発明の背景
細胞を結合することによりたとえば細胞成長、生存もしくは分化のような表現型反応を誘発するポリペプチドリガンドの能力は、しばしば経膜チロシンキナーゼを介して媒介される。各リセプタ チロシンキナーゼ(RTK)の細胞外部分は一般に、蛋白質にリガンド認識特性を付与するので、分子の最も特有な部分である。細胞外ドメインに対するリガンドの結合は細胞内チロシンキナーゼ触媒ドメインを介しシグナル導入をもたらし、生物学的シグナルを細胞内の標的蛋白質に伝達する。この細胞質触媒ドメインにおける配列モチーフの特定列は、潜在的キナーゼ基質へのアクセスを決定する[モハマジ等(1990)、モレキュラ・セルラ・バイオロジー、第11巻、第5068〜5078頁;ファントル等(1992)、セル、第69巻、第413頁]。
RTKは、リガンド結合の後に二量化または他の関連するコンホメーション変化を受けると思われ[J.シュレッシンガー(1988)、トレンド・バイオケミカル・サイエンス、第13巻、第443〜447頁;ウルリッチおよびシュレッシンガー(1990)、セル、第61巻、第203〜212頁;シュレッシンガーおよびウルリッチ(1992)、ニューロン、第9巻、第383〜391頁];各二量化性細胞質ドメイン間の分子相互作用はキナーゼ機能の活性化をもたらす。たとえば成長因子血小板由来の成長因子(PDGF)のような場合はリガンドが2種のリセプタ分子を結合するダイマーである[ハルト等(1988)、サイエンス、第240巻、第1529〜1531頁;ヘルジン(1989)、ジャーナル・バイオロジカル・ケミストリー、第264巻、第8905〜8912頁]のに対し、たとえばEGFの場合はリガンドがモノマーである[ウェーバー等(1984)、ジャーナル・バイオロジカル・ケミストリー、第259巻、第14631〜14636頁]。
高等生物における特定チロシンキナーゼ リセプタの組織分布はリセプタの生物学的機能に関する適切なデータを与える。たとえば繊維芽細胞成長因子(FGF)のような或る種の成長因子および分化因子に関するチロシンキナーゼ リセプタは広く発現され、したがって組織の成長および維持において或る種の一般的な役割を演ずると思われる。リセプタのTrk RTK族の各構成員[グラスおよびヤンコプーロス(1993)、トレンズ・イン・セルラ・バイオロジー、第3巻、第262〜268頁]はより一般的に神経系の細胞に限定され、さらにNGF、BDNF、NT−3およびNT−4/5よりなる神経成長因子族(ノイロトロフィンとして知られる)はこれらリセプタを結合して脳および周辺部における多様なニューロン群の分化を促進する[R.M.リンドセー(1993)、ニューロトロフィン因子、S.E.ラフリンおよびJ.H.ファロン編、第257〜284頁(サンジエゴ、CA;アカデミックプレス社)]。組織におけるこの種の1種のTrk族リセプタの局在は、このリセプタの潜在的な生物学的役割およびこのリセプタを結合するリガンド(ここではコグネートと称する)に対する洞察を可能にする。たとえば成体マウスにおいてtrkBは脳組織で優先的に発現することも判明したが、著量のtrkBmRNAが肺、筋肉および卵巣にも観察された。さらにtrkB転写物は、妊娠中期および後期の胎児にも検出された。14日令および18日令のマウス胎児の現場(in situ)ハイブリッド化分析は、trkB転写物が中枢および末梢神経系、たとえば脳、脊髄、脊髄神経節、脳神経節、交感神経系の脊椎傍トランクおよび各種の神経支配経路に局在することを示し、これはtrkB遺伝子産生物が神経発生および早期神経発育に関与するリセプタであると共に成体神経系にて役割を演ずることを示唆する。
RTKが発現される細胞環境は、リセプタに対するリガンドの結合に際し示される生物学的反応に影響を及ぼし得る。たとえばTrkリセプタを発現するニューロン細胞がそのリセプタを結合するニューロトロフィンに暴露されると、ニューロンの生存および分化が生ずる。同じリセプタが繊維芽細胞により発現されると、ニューロトロフィンに対する暴露は繊維芽細胞の増殖をもたらす[グラス等(1991)、セル、第66巻、第405〜413頁]。すなわち、細胞外ドメインはリガンド特異性に関する決定因子を与えると思われ、シグナル導入が開始されると細胞環境はこのシグナル導入の表現型成果を決定する。
多くのRTK族が、その細胞内ドメインにおける配列相同性に基づいて同定されている。NGFにより利用されるリセプタおよびシグナル導入経路はtrkプロトオンコジーンの産生物を含む[カプラン等(1991)、ネイチャー、第350巻、第156〜160頁;クライン等(1991)、セル、第65巻、第189〜197頁]。クライン等[(1989)、EMBOジャーナル、第8巻、第3701〜3709頁]は、ヒトtrkプロトオンコジーンに高度に関連すると判明したチロシン蛋白質キナーゼ族のリセプタの第2構成員をコードするtrkBの分離を報告している。TrkBはBDNF、NT−4および小程度ではあるがNT−3に結合して機能的反応を媒介する[スキント等(1991)、セル、第65巻、第885〜903頁;イプ等(1992)、プロシーディング・ナショナル・アカデミー・サイエンス、USA、第89巻、第3060〜3064頁;クライン等(1992)、ニューロン、第8巻、第947〜956頁]。アミノ酸レベルにて、trkおよびtrkBの産生物はtrkに存在する11個のシステインのうち9個を含め細胞外領域に57%の相同性を共有することが判明した。この相同性はその各チロシンキナーゼ触媒ドメイン内では88%まで増大することが判明した。現在、Trk遺伝子族はtrkCローカスを含むよう拡大されており、NT−3がtrkCのための好適リガンドであると同定されている[ランバレ等(1991)、セル、第66巻、第967〜979頁;バレンズエラ等(1993)、ニューロン、第10巻、第963〜974頁]。
Eph関連の経膜チロシンキナーゼは既知の最大リセプタ様チロシンキナーゼ族を含み、多くの構成員が発育中および成体の神経系における特異的発現を示す。Ehk(eph相同性キナーゼ)−1および−2と称するEph RTK族の2種の新規な構成員が、脳にて発現された遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づくスクリーニングにより同定された[メイソンピエール等(1993)、オンコジーン、第8巻、第3277〜3388頁]。これら遺伝子は専ら神経系にて発現されると思われ、Ehk−1発現が神経発育の早期に開始する。最近、この群の関連リセプタにおける新たなもの(Ehk−3)がクローン化された[バレンズエラ等、出版中]。
elk遺伝子はephサブ族にも属するリセプタ様蛋白質−チロシンキナーゼをコードすると共に、殆ど専ら脳にて発現される(精巣では低レベル)[レトウィン等(1988);オンコジーン、第3巻、第621〜678頁;ロータック等(1991)、モレキュラ・セルラ・バイオロジー、第11巻、第2496〜2502頁]。発現プロフィルに基づき、Elkリセプタおよびその同族(cognate)リガンドは神経系における細胞と細胞との相互作用にて役割を演ずると予想される。
EhkおよびElkリセプタとは異なり、近縁のEckリセプタはより多面発現的に機能すると思われ、神経組織、表皮組織および骨格組織にて同定されており、さらにマウス胎児におけるパターン形成の原腸形成部位、頭蓋顔面部位および肢芽部位に含まれると思われる[ガンユ等(1994)、オンコジーン、第9巻、第1613〜1624頁]。
多数のリセプタ チロシンキナーゼの同定はその同族リガンドの同定をずっと上回る。最良でも、この種のリセプタが発現される組織の決定は標的組織における細胞の成長、増殖および再生の調整に関する洞察を可能にする。RTKは発育に際し多くの重要な機能を媒介すると思われるので、その同族リガンドは必ず発育に重要な役割を演ずる。
1993年10月28日付け出願の米国特許同時係属出願第08/144,992号(参考のため、その全体をここに引用する)には多数のオーファン チロシンキナーゼ リセプタ様分子、たとえばtrkリセプタおよびインシュリン リセプタ族に相同性である5種のこれら分子、並びにそれぞれCSF1R/PDGFR/kit;ret;eck−α(現在ではEhk−2として知られる);およびeck−β(Ehk−1)に対し相同性である他の4種の分子が記載されている。この米国特許出願には、Ehk−1およびEhk−2を発現する細胞系統を用いてその同族リガンドを同定すべく分析する方法が記載されている。ehkは主上昇中央コリン発生核の幾つかを含め異なるニューロン集団にて発現されると思われるので、これらリセプタを結合するリガンドはこれらニューロン細胞の成長もしくは生存の促進に役割を演ずると予想された。Ehk−1の発現は発育の早期に開始するので、この同族リガンドは胚胎発育に役割を演ずる。
既に同定されている多くのオーファン リセプタにつき同族リガンドを同定するため多くの方式も考案されているが、この種のリガンドの極めて僅かしか同定されておらず、現在まで同定されているリガンドはその同族リセプタを結合する能力以外には活性を持たないと思われる。たとえば1994年5月26日付け公開の国際特許公開WO/94/11020号はEckリセプタに結合するリガンドを記載している。特にリガンドEBP(B61としても知られる)が記載されている。しかしながらEckリセプタに対するB61の結合は開示されているが、その生物学的活性については記載されていない。同様に、Elkリセプタを結合するリガンドに関するPCT特許公開WO 94/11384号(1994年5月26日付け公開)での説明にも拘らず生物学的活性は観察されなかった。これはリガンドが膜結合として或いは可溶性リガンドのFcダイマーの形態のいずれで存在するかには無関係である。しかしながらElkリセプタに関し、キメラEGFR−Elkリセプタ(Elk細胞質ドメインに融合したEGFRの細胞外ドメインを有する)がこのリセプタの酵素ドメインの機能的一体性(EGF−刺激の自己燐酸化により測定)を示すべく使用されている[ロータックおよびポーソン(1993)、モレキュラ・セルラ・バイオロジー、第13巻、第7071〜7079頁]。
発明の要点
本発明は、細胞におけるEhk−1、Ehk−2、Ehk−3、EckおよびElkの各リセプタに結合する新規なポリペプチド リガンドを提供する。より重要なことに、本発明は分化機能を促進すると共にリセプタ含有細胞の表現型(たとえば成長および/または増殖)に影響を及ぼすのに有用である生物学上活性な可溶性型のこれらリガンドを作成する手段を提供する。さらに本発明は、この種のポリペプチド リガンドをコードする核酸、並びにこの種の蛋白質を産生するための原核性および真核性の両発現系をも提供する。さらに本発明はこれらリガンドに対する抗体をも提供する。
本発明によれば、ここで説明する可溶性型のリガンドを用いてEhk−1、Ehk−2、Ehk−3、EckおよびElkリセプタ発現性細胞における生物学的反応を促進することができる。特にeph関連リセプタに関するリガンドの「クラスター化」を生ぜしめる一般的方法につき開示し、これは不活性な可溶性リガンドを生物学上活性にするよう機能し、或いはこの種のクラスター化が存在しなければ極く低レベルの生物学上活性しか持たないようなリガンドの生物学上活性を増大させる。
さらに、ここに開示するリガンドは診断用途をも有する。本発明の特定具体例においては、その機能もしくは発現における異常性の検出方法を神経障害または他の障害の診断に用いることができる。他の具体例においては、各リガンドとその同族リセプタとの間の相互作用を操作して神経障害または他の障害を処置することができる。
図面の説明
第1図:ベクターpJFE14。
第2図:Ehk−1およびElkリセプタに関するリガンドの配列比較。B61(配列番号1)、Ehk−1リガンド(EHK−1L)(配列番号2)およびElkリガンド(ELK−L)(配列番号3)の整列配列を示す。これら3種全ての配列により共有される部分を枠で囲い、少なくとも2種により共有される部分をコンセンサス レーンで示し、太点線は保存システインを示し、星印は主たる保持領域を境界する各部分を区切る。下側文字は推定アミノ末端シグナル配列を示すと共に、ELK−Lの経膜ドメイン並びにB61およびEHK1−Lのカルボキシ末端疎水性GPI−認識テールをも示す。
第3図:EHK−1Lレコード領域のヌクレオチド配列(配列番号4)。
第4図:成体ラット組織(A)および発育中の脳(B)におけるEfl−1(B61)、Efl−2(EHK−1L)およびEfl−3(ELK−L)発現のノーザンブロット分析。全RNA(1レーン当り20μg)を指定組織から分離し、1%ホルムアルデヒド−アガロースゲルにて分画し、ナイロン膜に移した。各ブロットを32P−標識プローブ(このプローブは各cDNAのコード領域に対し内部の制限断片から得られる)にハイブリダイズさせた。
第5図:膜結合もしくはクラスター化したリガンドによるEph族リセプタの活性化(Elkリセプタチロシン燐酸化により測定)。第5A図:ベクター単独でトランスフェクトした比較COS細胞(COS−Mock)またはEfl−3(ELK−L)をコードする発現構成物でトランスフェクトしたCOS細胞を用いる刺激。第5B図:非クラスター化リガンド(第2ウェルおよび第3ウェル)または抗体(第4ウェルおよび第5ウェル)によりクラスター化させたリガンドとして使用した可溶性myc−標識Efl−3(ELK−L)での刺激。(「+Ab」は抗体でクラスター化した可溶性リガンドを示す)。比較(0ng/mL)を第1ウェルで示す。第5C図:非クラスター化リガンド(第2ウェル)または抗体によりクラスター化したリガンド(第3ウェル)として使用した可溶性myc−標識Efl−1(B61)での刺激。比較(0ng/mL)を第1ウェルで示す。第A、BおよびC図における上側パネルはホスホチロシンに対する抗体で免疫ブロットした免疫沈殿物を示す。第A、BおよびC図における下側パネルは、その後にストリップすると共にリセプタを認識する抗体により再プロービングして全リセプタ蛋白質を可視化させた免疫沈殿物を示す。
第6図:Eckリセプタキメラにより媒介されるBAF細胞における成長反応の誘発。A.刺激をCOS細胞で産生された可溶性Efl−2(EHK−1L)により、その後のクラスター化と共に或いはクラスター化なしに行った。B.刺激をCOS細胞で産生された可溶性Efl−1(B61)により、その後のクラスター化と共に或いはクラスター化なしに行った。
第7図:クラスター化されたがダイマーでないリガンドによるELKリセプタ チロシン燐酸化の誘発。レーンA:抗−ヒト抗体なしのmock COS上澄。レーンB:抗−ヒト抗体。レーンC:架橋性抗体なしのELK−L−Fc。レーンD:架橋性抗体。可溶性Fc−標識FLKリガンド(ELK−L−Fc)をCOS細胞上澄として産生させると共に、非クラスター化ダイマー リガンドまたは抗体によりクラスター化されたリガンドとして使用した。リガンド濃度は、elisa分析を用いてFcエピトープの量を定量化することにより推定した。リガンドのクラスター化は、抗−ヒト抗体を添加すると共に室温にて細胞刺激前に1時間インキュベートすることにより行った。レポータ細胞は、ELKでトランスフェクトされたNIH3T3繊維芽細胞とした。細胞を血清フリーの培地にて4〜6時間にわたり飢餓させ、次いで40分間にわたり次のように刺激した:刺激に続き細胞を可溶化させると共に、リセプタを認識する抗体で免疫沈澱させた。免疫沈殿物をホスホチロシンに対する抗体で免疫ブロットした。
第8図:ECKリセプタ キメラにより媒介されるBAF細胞における成長反応の誘発。各刺激を可溶性のトリプルmyc−標識EHK1リガンド(EHK1L−m3)およびCOC細胞で産生されたトリプルmyc−標識B61(B61−m3)により、その後の抗−mycおよび抗−マウス抗体でのクラスター化と共に或いはそれなしに行った。ECKリセプタの触媒ドメインはBAF細胞における成長反応を媒介しないので、リセプタ キメラ(ここでECKリセプタのエクトドメインをFGFリセプタの細胞質ドメインに融合される)をBAF細胞に導入してレポータ細胞系統を作成した。
第9図:ECKリセプタ キメラにより媒介されるBAF細胞における成長反応の誘発。各刺激は、COS細胞で産生された可溶性のEHK1−L−FcおよびB61−Fcにより、その後の抗−ヒト抗体でのクラスター化と共に或いはそれなしに行った。
発明の詳細な説明
Ehk−1、Ehk−2、Ehk−3、EckおよびElkを用いる分析システムの利用は、ここに説明するようにこれらレポータに対する同族リガンドの発見をもたらした。この種のリガンドはインビトロにおけるニューロン、表皮または他のリセプタ含有細胞の各集団の成長および生存を促進するのに有用である。
一層詳細に以下説明するように、本出願人は発現クローン化によりEhk−1およびElkリセプタを結合する1種もしくはそれ以上の新規なリガンドを見出した。さらに本出願人は従来同定されているリガンドB61[ホルツマン等(1990)、モレキュラ・セルラ・バイオロジー、第10巻、第5830〜5838頁]もEhk−1に結合すること並びにB61とEhk−1との両リガンドもEhk−2を結合することを突き止め、さらにEhk−3リセプタおよびEckリセプタを新たに見出した。
ここに説明する新規なリガンドをEfl(Eph経膜チロシンキナーゼ族リガンド)と命名する。1994年4月12日付け出願の同時係属米国特許出願第08/229,402号および1994年4月4日付け出願の米国特許出願第08/225,075号に最初に記載された新規なEhk−1結合性リガンドEfl−1およびEfl−2は同一であって、ここではEfl−2と再命名する。Ehk−1、Ehk−2およびEhk−3、並びにEckリセプタを結合する他のリガンドはEfl−4と同定されており、B61はEfl−1と今回命名された。B61(Efl−1)およびEHK−1L(Efl−2)のアミノ酸配列、並びにElk結合性リガンドEfl−3の配列[これは同時係属出願第08/229,402号に記載され、PCT/US 93/10879号(1994年5月26日付けでWO 94/11020号として公開)で公開]を第2図に示す。この新規なリガンドEfl−4をコードするプラスミドpJFE14をブダペスト条約の規定に基づき1994年10月21日付けで第75921号として寄託した。
ここで用いる場合Efl−1、Efl−2、Efl−3およびEfl−4は、アミノ酸残基が暗黙変化(silent change)をもたらす配列内の残基につき置換された機能上均等な分子を包含する。たとえば配列内の1個もしくはそれ以上のアミノ酸残基を機能的均等物として作用する同様な極性を持った他のアミノ酸で置換して、暗黙変化をもたらすことができる。配列内のアミノ酸の置換は、このアミノ酸が属するクラスの他の構成員から選択することができる。たとえば非極性(疎水性)アミノ酸はアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンを包含する。極性の中性アミノ酸はグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを包含する。陽帯電(塩基性)アミノ酸はアルギニン、リジンおよびヒスチジンを包含する。陰帯電(酸性)アミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を包含する。さらに本発明の範囲には、同一もしくは同様な生物学的活性を示す蛋白質またはその断片もしくは誘導体および翻訳時または翻訳後にたとえばグリコシル化、蛋白質分解、抗体分子もしくは他の細胞リガンドに対する結合などにより様々に改変される誘導体も包含される。
Eflを発現する細胞は自然にそうすることもでき、或いは遺伝子操作して上記のようにこれらリガンドを産生させることもでき、これにはトランスジェニック動物などを介しここに説明したEflをコードする核酸の適する発現ベクターへのトランスフェクション、トランスダクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションを行う。EFl−2(EHK−1L)をコードするcDNAを含有したベクターをブダペスト条約の規定に基づき1994年4月4日付けでアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションにEhk−1L2B4およびEhk−1L3B1を含むpJFE14として寄託し、それぞれATCC番号第75728号および75729号が付与された(これらベクターによりコードされたリガンドは同一である)。Efl−3(ELK−L)をコードするcDNAを含有したpJFE14ベクターをブダペスト条約の規定に基づき1994年4月12日付けでアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションにef1−3を含むpJFE14として寄託し、ATCC番号第75734号が付与された。Efl−4をコードするcDNAを含むpJFE14ベクターをブダペスト条約の規定に基づき1994年10月21日付けでアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションにEfl−4をコードするpJFE14として寄託し、ATCC番号第75921号が付与された。
本発明は、上記の寄託プラスミドに含まれるDNA配列、並びにたとえばサムブルック等、モレキュラ・クローニング:ラボラトリー・マニュアル、第2版、第1巻、第101〜104頁、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(1989)に規定されたような適度な厳密性(stringency)の条件下でEf1配列にハイブリダイズするDNA配列およびRNA配列を包含する。したがって、本発明により考えられる核酸は前記寄託物に含まれる配列、この種の配列にハイブリダイズすると共にEhk−1、Ehk−2、Ehk−3、EckもしくはElkリセプタを結合する核酸の配列、並びに遺伝子コードの結果として上記配列の変質種であるがEhk−1、Ehk−2、Ehk−3、EckもしくはElkリセプタを結合するリガンドをコードするような核酸配列を包含する。
さらに本発明は可溶性型、切断型および標識型における、ここに説明したリガンドの使用をも包含する。
ベクター中へのDNA断片の挿入につき当業者に知られた任意の方法を用いてEflをコードする発現ベクターを作成することができ、これには適する転写/翻訳制御シグナルおよび蛋白質コード配列を使用する。これら方法はインビトロ組換DNAおよび合成技術、並びにインビボ組換(遺伝子組換)を包含する。Eflをコードする核酸配列またはそのペプチド断片の発現は、蛋白質もしくはペプチドが組換DNA分子で形質転換された宿主にて発現されるよう、第2の核酸配列により調整することができる。たとえば、ここに説明したEflの発現は当業界で知られた任意のプロモータ/エンハンサー要素により制御することができる。リガンドの発現を制御すべく使用しうるプロモータは限定はしないがスキント等により記載された長末端リピート[(1991)セル、第65巻、第1〜20頁];SV40早期プロモータ領域[ベル、イストおよびチャンボン(1981)、ネイチャー、第290巻、第304〜310頁]、CMVプロモータ、M−MuLV5′末端リピート、ラウス肉腫ウィルスの3′長末端リピートに含まれるプロモータ[ヤマモト等(1980)、セル、第22巻、第787〜797頁]、ヘルペス チミジンキナーゼ プロモータ[ワグナー等(1981)、プロシーディング・ナショナル・アカデミー・サイエンス、USA、第78巻、第144〜1445頁]、メタロチオエイン遺伝子の制御配列[ブリンスター等(1982)、ネイチャー、第296巻、第39〜42頁];原核性発現ベクター、たとえばβ−ラクタマーゼ プロモータ[ビラ−カマロフ等(1978)、プロシーディング・ナショナル・アカデミー・サイエンス、USA、第75巻、第3727〜3731頁]もしくはtacプロモータ[デボアー等(1983)、プロシーディング・ナショナル・アカデミー・サイエンス、USA、第80巻、第21〜25頁、さらに「組換細菌からの有用な蛋白質質」、サイエンチフィック・アメリカン(1980)、第242巻、第74〜94頁参照];酵母もしくは他の真菌類からのプロモータ要素、たとえばGal 4プロモータ、ADH(アルコール デヒドロゲナーゼ)プロモータ、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモータ、アルカリ性ホスファターゼ プロモータ、並びに組織特異性を示すと共にトランスジェニック動物で用いられている以下の動物転写制御領域:膵臓腺房細胞にて活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域[スイフト等(1984)、セル、第38巻、第639〜646頁;オルニッツ等(1986)、コールド・スプリング・ハーバー・シンポジウム・クオンタチブ・バイオロジー、第50巻、第399〜409頁;マクドナルド(1987)、ヘパトロジー、第7、第425〜515頁];膵臓β細胞にて活性であるインシュリン遺伝子制御領域[ハナハン(1985)、ネイチャー、第315巻、第115〜122頁]、リンパ様細胞にて活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域[グロスシェドル等(1984)、セル、第38巻、第647〜658頁;アダムス等(1985)、ネイチャー、第318巻、第533〜538頁;アレキサンダー等(1987)、モレキュラ・セルラ・バイオロジー、第7巻、第1436〜1444頁]、睾丸細胞、胸細胞、リンパ様細胞およびマスト細胞にて活性であるマウス哺乳類腫瘍ウィルス制御領域[レダー等(1986)、セル、第45巻、第485〜495頁]、肝臓にて活性であるアルブミン遺伝子制御領域[ピンカート等(1987)、ジーン・アンド・ディベロップメント、第1巻、第268〜276頁];肝臓にて活性であるα−フェト蛋白質遺伝子制御領域[クルムラウフ等(1985)、モレキュラ・セルラ・バイオロジー、第5巻、第1639〜1648頁;ハンマー等(1987)、サイエンス、第235巻、第53〜58頁];肝臓にて活性であるα1−アンチトリプシン遺伝子制御領域[ケルセイ等(1987)、ジーン・アンド・ディベロップメント、第1巻、第161〜171頁];骨髄性細胞にて活性であるβ−グロビン遺伝子制御領域[モグラム等(1985)、ネイチャー、第315巻、第338〜340頁;コリアス等(1986)、セル、第46巻、第89〜94頁];脳における乏突起膠細胞にて活性であるミエリン塩基性蛋白質遺伝子制御領域[リードヘッド等(1987)、セル、第48巻、第703〜712頁];骨格筋にて活性であるミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域[シャニ(1985)、ネイチャー、第314巻、第283〜286頁]、並びに視床下部にて活性であるゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域[メーソン等(1986)、サイエンス、第234巻、第1372〜1378頁]を包含する。
したがって本発明によれば、ここに説明したEfl−コード性核酸を含む細菌もしくは真核性宿主にて複製しうる発現ベクターを用いて宿主をトランスフェクトすることによりこの種の核酸の発現を指令してEfl蛋白質を産生させ、次いでこれを微生物学上活性な形態で回収することができる。ここで使用する生物学上活性な形態は、適切なリセプタ(たとえばEhk−1もしくはElk)に結合すると共に異なった機能を生ぜしめ或いはリセプタを発現する細胞の表現型に影響を及ぼしうる形態を包含する。この種の生物学上活性な形態は、たとえばEhk−1もしくはElkリセプタのチロシンキナーゼ ドメインのホスホリル化または細胞DNA合成の刺激を包含する。
遺伝子挿入物を含有する発現ベクターは3種の一般的手法により同定することができる:(a)DNA−DNAハイブリッド化、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在もしくは不存在、および(c)挿入された配列の発現。第1の手法において、発現ベクターに挿入された外来遺伝子の存在は、挿入されたefl遺伝子に対し相同性である配列を含んだプローブを用いるDNA−DNAハイブリッド化によって検出することができる。第2の手法において、組換ベクター/宿主系は、ベクターにおける外来遺伝子の挿入により生じた或る種の「マーカー」遺伝子機能(たとえばチミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウィルスにおける咬合体形成など)の存在もしくは不存在に基づいて同定および選択することができる。たとえばefl遺伝子がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入されれば、挿入物を含有する組換体はマーカー遺伝子機能の不存在により同定することができる。第3の手法において、組換発現ベクターは組換体により発現された外来遺伝子産生物を分析して同定することができる。この種の分析はたとえばefl遺伝子産生物の物理的もしくは機能的性質に基づくことができ、たとえば検出可能な抗体もしくはその1部で標識しうるEhk−1もしくはElkリセプタまたはその部分に対するリガンドの結合またはEfl蛋白質もしくはその1部に対し産生された抗体への結合によって行うことができる。
Efl−2(EHK−1L)リガンドは、従来同定されたリガンドB61(ここではEfl−1と称する)に対し或る程度の相同性を有すると思われる[ホルツマン等(1990)、モレキュラ・セルラ・バイオロジー、第10巻、第5830〜5838頁]。B61と同様に、Efl−2は認識配列をコードしてGP1結合することにより細胞内ドメインを欠如しうると思われるC−末端疎水性配列で終端する。事実、ホスホリパーゼCでのEfl−2発現性細胞の予備処理はEhk−1リセプタ体結合を減少させると思われ、したがってこれら蛋白質がPI結合されることを確認する。Efl−3はホスホリパーゼCにより細胞表面から切断されず、細胞質ドメインを有する通常の経膜蛋白質を含むと思われる。
ここに説明したリガンドは動物細胞発現系で膜結合型として産生させることができ、或いは可溶性型で発現させることができる。可溶性型のリガンドは、当業界で知られた方法を用いて発現させることができる。一般的に使用される手法は、一方が蛋白質のN−末端にまたがり、他方が蛋白質の疎水性セグメントに対し直ぐ上流の領域にまたがるオリゴヌクレオチド プライマーの使用を含み、これはGPI−結合認識ドメインまたは蛋白質の経膜ドメインのいずれかを示す。C−末端領域にまたがるオリゴヌクレオチドは、疎水性ドメインの前に停止コドンを含むよう改変される。2種のオリゴヌクレオチドを用いて、膜結合でなく分泌される蛋白質をコードする遺伝子の改変型を増幅させる。或いはベクターにおける便利な制限部位を用いてGPI−結合認識ドメインもしくは経膜ドメインを除去する改変配列を挿入することができ、かくして分泌型の蛋白質を発現しうるベクターをもたらすことができる。このように産生された可溶性蛋白質はN−末端から疎水性GPI認識ドメインもしくは経膜ドメインに先立つ領域までの蛋白質の領域を含む。
本出願人は、本発明により産生された可溶性リガンドがephサブ族におけるリセプタに結合するが、この種の可溶性リガンドはしばしば殆どもしくは全く生物学上活性を示さないことを突き止めた。この種の可溶性リガンドは本発明によればリガンド「クラスター化」によって活性化される。ここで用いる「クラスター化」は、ここに説明したリガンドにおける可溶性部分のマルチマーを形成するため当業者に知られた任意の方法を意味する。
1具体例において、「クラスター化」されたeflはたとえばIgGのFcドメインを用いて本発明により作成されたダイマーであり[アルホ等(1991)、セル、第67巻、第35〜44頁]、ジスルフィド結合ホモダイマーとしての可溶性リガンドの発現をもたらす。他の具体例において、分泌型のリガンドはそのC−末端にエピトープ標識を持って構成され、次いで抗−標識抗体を用いてリガンドを凝集させる。
さらに本発明は、マルチマーとして存在し或いはマルチーを形成する他の「処理(engineered)」リガンド分子をも包含する。たとえば細胞外ドメインのダイマーを、ロイシン ジッパーを用いて処理することができる。ヒト転写因子c−junおよびc−fosのロイシン ジッパー ドメインは1:1の化学量論量で安定なヘテロダイマーを形成することが示されている[ブッシュおよびサソーネ−コルシ、トレンズ・ジェネチックス、第6巻、第36〜40頁(1990);ゲンツ等、サイエンス、第243巻、第1695〜1699頁(1989)]。jun−junホモダイマーが生成することも示されているが、これらはjun−fosヘテロダイマーよりも約1000倍低い安定性である。fos−fosホモダイマーは検出されていない。c−junもしくはc−fosのロシン ジッパー ドメインは、上記リガンドの可溶性もしくは細胞外ドメインのC−末端にてキメラ遺伝子の遺伝子処理により枠内融合される。これら融合は直接とすることができ、或いはたとえばヒトIgGのヒンジ領域のような柔軟性リンカードメインまたは小アミノ酸(たとえばグリシン、セリン、スレオニンもしくはアラニン)よりなるポリプチド リンカーを種々の長さおよび組合せで用いることもできる。さらに、キメラ蛋白質をHis−His−His−His−His−His(His6)により標識して金属キレートクロマトグラフィーにより急速精製したり或いは抗体を入手しうるエピトープにより標識してウエスタンブロット、免疫沈澱またはバイオアッセイにおける活性欠失/阻止での検出を可能にすることもできる。
或いはマルチマーは、リガンドの可溶性もしくは細胞外部分に続きhlgGのFcドメイン、次いで上記したc−junもしくはc−fos ロイシン ジッパーよりなる分子を遺伝子処理すると共に発現させて作成することもできる[コステルニー等、ジャーナル・イミュノロジー、第148巻、第1547〜1553頁(1992)]。これらロイシン ジッパーは主としてヘテロダイマーを形成するので、これらを用いて所望に応じヘテロダイマーの形成を促すことができる。ロイシン ジッパーを用いて説明したキメラ蛋白質に関し、これらは金属キレートもしくはエピトープで標識することもできる。この標識されたドメインを金属−キレート クロマトグラフィーにより及び/或いは抗体により急速精製してウエスタンブロット、免疫沈澱またはバイオアッセイにおける活性欠失/阻止で検出しうるよう使用することができる。
本発明の他の具体例において、マルチマー可溶性 リガンドは柔軟性リンカーループを用いキメラ分子としての発現により作成される。キメラ蛋白質をコードするDNA構成物は、柔軟性ループにより互いに直列(「ヘッド対ヘッド」)で融合した2個もしくはそれ以上の可溶性もしくは細胞外ドメインを発現するよう設計される。このループは全体として人工的(たとえば所定間隔にてセリンもしくはスレオニンにより中断されるポリグリシンリピート)とすることができ、或いは天然蛋白質(たとえばhlgGのヒンジ領域)から「借用」することもできる。ループの長さおよび組成を変化させるよう分子を処理して、所望の特性を有する分子の選択を可能にすることもできる。特定の理論に拘束されるものでないが、本出願人はリガンドの膜付着がリガンドのクラスター化を容易化させてリセプタのマルチマー化および活性化を促進するものと信ずる。すなわち本発明によれば、可溶性リガンドの生物学的活性は溶液にて膜関連リガンド クラスター化を模倣して得られる。すなわち、生物学的に活性なクラスター化された可溶性eph族リガンドは(可溶性Efl)nを含み、ここで可溶性eflはeph族リセプタを結合するリガンドの細胞外ドメインであり、nは2もしくはそれ以上である。ここに説明したEfl−1、Efl−2およびEfl−3は全て本発明の方法により生物学上活性にされる。それぞれの場合、当業者はクラスター化の成功がたとえばここに説明したような生検を用いる生物学的活性の分析を必要とすることを了解するであろう。たとえば第5図に示したように、レポータ細胞を発現するリセプタを膜型のリガンドB61、Efl−2およびEfl−3を過剰発現するCOS細胞で刺激することによりリセプタ燐酸化が顕著に誘発されるという事実にも拘らず(第5A図、レーン1および2)、可溶性型のこれらリガンドを用いて観察しうる燐酸化は得られない(第5B図、レーン2および3、並びに第5C図、レーン2)。しかしながら、分泌型のリガンドをmyc標識すると共に抗体を使用して各リガンドをクラスター化させれば、従来不活性の可溶性リガンドはElkおよびEhk−1リセプタを発現するレポータ細胞におけるリセプタ チロシン燐酸化を強く誘発する(第5B図、レーン4および5、第5C図、レーン3)と共にEckリセプタキメラを発現するレポータ細胞における増殖をも誘発する(第6A図)。
幾つかの場合は生物学的活性を誘発させるのにリガンドの二量化にて充分であるが、第7図に示したデータは或る場合ここで説明した方法をどのように用いて特定クラスター化技術の能力を判定するかを示す。Elkリガンドにつき第7図に示したように、Fcを用いる可溶性リガンドの二量化は生物学的反応を達成するのに不充分であると思われる(第7図、レーンC)。しかしながら、抗−Fc抗体を用いて本発明によりリガンドをさらにクラスター化させれば、生物学的活性の相当な増加が生じた(レーンD)。
リガンドB61の場合、クラスター化なしに得られた可溶性リガンドにつき低レベルの生物学的活性が得られると思われる。この種の低レベルの生物学的活性は低レベルの「自己クラスター化」によって生じ得る。しかしながら本出願人は或る程度の生物学的活性を有するたとえばB61のようなeflの場合にも活性を本発明にしたがうクラスター化により増大させうることを示した。
本発明の細胞は、Eflを天然型で或いはここに説明したように標識Eflもしくはクラスター化Eflとしての可溶性型で一時的または好ましくは構成的かつ永久的に発現することができる。
組換因子は、その後に安定かつ生物学上活性な蛋白質を形成させうる任意の技術により精製することができる。たとえば限定はしないが、これら因子は可溶性蛋白質として或いは封入体として細胞から回収することができ、そこから8Mグアニジウム塩酸塩および透析によって定量的に抽出することができる。因子をさらに精製するには慣用のイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーもしくはゲル濾過を用いることができる。
本発明の他の具体例においては組換eflを用いて相同組換により内生遺伝子を失活または「ノックアウト」することができ、これによりefl蛋白質欠失細胞、組織または動物を形成することができる。たとえば限定はしないが、組換eflを処理して挿入突然変異体(たとえばneo遺伝子)を含ませることができ、これは天然efl遺伝子を失活させる。この種の構成物は、適するプロモータの制御下で、たとえば胚幹細胞のような細胞中へ、たとえばトランスフェクション、トランスダクション、インジェクションなどの技術により導入することができる。この構成物を含有する細胞を次いでG418耐性により選択することができる。次いで、無傷(intact)eflを欠如した細胞をたとえばサウザンブロッチングもしくはノーザンブロッチングまたは発現の検定により同定することができる。無傷eflを欠如した細胞を次いで早期胚細胞に融合させて、この種のリガンドを欠失したトランスジェニック動物を発生させることができる。この種の動物と内生eflを発現する動物との比較は、発育および維持におけるリガンドの役割を説明するのに役立つ。この種の動物を用いて、特定ニューロン集団などをインビボ過程で一般にリガンドに依存して規定することができる。
さらに本発明は、たとえば診断用途にてリガンドを検出するのに有用である上記Eflに対する抗体をも提供する。ここに説明したリガンドに対する抗体は、本発明によるクラスター化を達成するにも有用である。内生リガンドが存在する場合、抗体自身は存在するリガンドを活性化させることにより治療剤として作用しうる。
これらEflに指向させるモノクローナル抗体を作成するには、細胞系統の連続培養により抗体分子を産生させる任意の技術を用いることができる。たとえば最初にコーラーおよびミルスタインにより開発されたハイブリドーマ技術[(1975)、ネイチャー、第256巻、第495〜497頁]、並びにトリオーマ技術、ヒトB−細胞ハイブリドーマ技術[コツボール等(1983)、イミュノロジー・ツデイ、第4巻、第72頁]およびヒト モノクローナル抗体を産生させるためのEBV−ハイブリドーマ技術[コール等(1985)、「モノクローナル抗体および癌療法」、アランR.リス・インコーポレーション、第77〜96頁]などが本発明の範囲内である。
診断用途もしくは治療用途のためのモノクローナル抗体はヒト モノクローナル抗体もしくはキメラ ヒト−マウス(もしくは他の動物)モノクローナル抗体とすることができる。ヒト モノクローナル抗体は当業界で知られた任意多くの技術により作成することができる[たとえばテング等(1983)、プロシーディング・ナショナル・アカデミー・サイエンス、USA、第80巻、第7308〜7312頁;コツボール等(1983)、イミュノロジー・ツデイ、第4巻、第72〜79頁;オルソン等(1982)、メソッズ・エンチモロジー、第92巻、第3〜16頁]。キメラ抗体分子は、マウス抗原結合性ドメインをヒトコンスタント領域と共に含有して作成することができる[モリソン等(1984)、プロシーディング・ナショナル・アカデミー・サイエンス、USA、第81巻、第6851頁;タケダ等(1985)、ネイチャー、第314巻、第452頁]。
当業界で知られた各種の方法を、ここに説明したEflのエピトープに対するポリクローナル抗体を産生させるべく使用することができる。抗体の産生には、各種の宿主動物をEflまたはその断片もしくは誘導体の注射により免疫化することができ、宿主動物は限定はしないがウサギ、マウス、ラットなどを包含する。各種のアジュバントを用いて宿主動物に応じ免疫学的反応を増大させることができ、限定はしないがフロインド(完全もしくは不完全)、ミネラルゲル(たとえば水酸化アルミニウム)、表面活性物質、たとえばリソレシチン、プルロニック・ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホール インペット ヘモシアニン、ジニトロフェノール、並びに潜在的に有用なヒト アジュバント、たとえばBCG(バシル・カルメッテ−ゲラン)およびコリネバクテリウム・パルブムを包含する。
選択されたEflエピトープに対する抗体の分子クローンは公知技術により作成することができる。組換DNA法[たとえばマニアチス等(1982)、モレキュラ・クローニング、ラボラトリー・マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク参照]を用いて、モノクローナル抗体分子もしくはその抗原結合領域をコードする核酸配列を作成することができる。
抗体分子は公知技術、たとえば免疫吸収もしくは免疫親和性クロマトグラフィー、たとえばHPLC(高性能液体クロマトグラフィー)のようなクロマトグラフ法またはその組合せなどにより精製することができる。
本発明は、抗体分子およびこの種の抗体分子の断片を提供する。分子のイジオタイプを含有する抗体断片は公知技術により発生させることができる。たとえば、この種の断片は限定はしないが次のものを包含する:抗体分子のペプシン切断により産生させうるF(ab′)2断片;F(ab′)2断片のジスルフィド架橋を還元して発生させうるFab′断片;および抗体分子をパパインと還元剤とで処理して発生させうるFab断片。
さらに本発明は神経障害に羅患した患者の処置方法をも提供し、この方法は患者を有効量の1種もしくはそれ以上のEfl、そのペプチド断片またはEhk−1もしくはElkリセプタに結合しうる誘導体で処置することからなっている。
Ehk−1に対する同族リガンドの有力な治療用途が米国特許出願第08/144,992号に示唆されている。成体脳において、ehk−1の細胞局在は遺伝子が主としてニューロンで発現されると共に明確なニューロン集団にてその最高発現レベルに達することを示し、これら神経集団は主上昇中央コリン発生性核(脚間領域、嗅結節および側部扁桃)、並びにモノアミン作用性核(銹斑、背部縫線および黒質)を包含する。Ehk−1プローブは前脳の腹側外側領域における梨状皮質、対角バンドの水平脚、吻側角膜および灰白鞘と脳縦条とに関連するニューロン、海馬体、CA3およびCA2における錐体ニューロン(CA1にて若干弱い)、上側丘体、並びに脳縦条のレトロスプレニアル皮質およびニューロンを著しく強調した。
成体ラット脳にて、Ehk−1は脚間核および黒質、底部および側部扁桃および背部縫線に関連したニューロンリッチ密度を著しく強調することが見られる。Ehk−1プローブは小脳の顆粒層、小脳のパーキニエ細胞および嗅覚バルブにおける僧帽細胞に顕著にハイブリダイズすることができた。
E13胚において、ehk−1転写物は身体におけるよりも頭にてずっと豊富である。生後1日(P1)まで各バンドは脳にてその最高レベルに達し、成体脳にて若干低下する。Ehk−1バンドはP1から成体への移行期に際し小脳試料にて低下し、これは成体の全脳における主たる発現部位が主として小脳の外側に位置することを示唆する。
より長い暴露は、ehk−1神経特異性バンドが海馬体星状細胞の一次培養物からのRNAでも検出しうることを示す。これは、ehk遺伝子がグリアでなく主としてニューロンで発現することを現場でのRNAハイブリッド試験が示すため予想外である。種々の確認された細胞系統における検査が示したところでは、ehk−1は種々の神経上皮腫および神経芽細胞腫系統を包含するニューロン由来細胞にて主として発現される。
さらにElkリセプタも主として脳で発現される。したがって、ここに説明したElk結合性リガンドは異なる機能の誘発を支援し及び/或いはたとえば神経細胞の成長および/または生存のような表現型に影響を与えて、このリセプタを発現するものと思われる。
ノーザンブロット分析(第4図)は、Efl−3(ELK−L)の幅広い分布と異なり、Efl−2(EHK−1L)およびEfl−1(B61)につき制限かつ逆(reciprocal)パターンの発現を示した。Ehk−1と同様にEfl−2も殆ど専ら中枢神経系で発現され、ただしEhk−1発現が殆ど検出しえない皮膚にて高度に発現することが顕著な例外である。これに対し、Efl−1(B61)は主として非ニューロン組織で発現される(第4A図;より長い暴露は大抵の神経構造体にて低レベルのB61を示す)。脳および精巣においてのみ発現されるElkリセプタとは異なり、Efl−3(ELK−L)はニューロン組織および非ニューロン組織の両者にて広く発現される。脳においてEfl−1およびEfl−3の両者(Efl−2は含まず)の発現は発育早期にて実質的に高く、次いで低下する(第4B図)。Efl−1およびEfl−3の場合と同様に、他の神経系特異性リセプタチロシンキナーゼのリガンド(たとえばTrkリセプタのニューロトロフィン リガンド)も非ニューロン組織にて発現され[メソンピエール等(1990)、サイエンス、第247巻、第1446〜1451頁;メソンピエール等(1990)、ニューロン、第5巻、第501〜509頁]、これは明かにリガンドがこれら組織を神経刺激する軸索過程のための標的由来因子として作用するからである[H.ソエネン(1991)、トレンズ・ニューロサイエンス、第14巻、第165〜170頁]。Efl−1およびEf1−3の非ニューロン的発現も、これらが非神経細胞により発現されるEphリセプタ族の構成員(たとえばEck)のリガンドとして作用する可能性を高める。
さらに本発明は、ここに説明したEfl、そのペプチド断片または誘導体を適する薬理キャリヤ中に含む医薬組成物をも提供する。
Efl蛋白質、ペプチド断片もしくは誘導体は全身的または局部的に投与することができる。当業界で知られた任意適する投与方式、たとえば限定はしないが静脈内、胸部内、動脈内、鼻腔内、経口的、皮下、腹腔内の投与または局部注射もしくは外科移植を用いることができる。遅延放出処方も可能である。
神経変質病/神経外傷に関する理解が一層明瞭になるので、内生Eflの作用を減少させるのが有利であることも明かとなる。したがって神経系外傷の分野において、限定はしないがEhk−1もしくはElkリセプタと相互作用するための細胞結合リガンドと競合しうるような可溶性型のEflを包含するEfl拮抗剤を与えることが望ましい。或いは可溶性型のEhk、EckもしくはElkリセプタ(たとえば後記実施例1に記載するように産生される「リセプタ体」として発現)は、リガンドを結合して失活させることにより拮抗剤として作用しうる。この種の拮抗剤を全身的でなく外傷部位に局部的に投与することが望ましい。Efl拮抗剤を与える移植体の使用も望ましい。
代案として、或る種の症状はEfl反応性の増大から利点を受ける。したがって、この種の症状を有する患者においてはEflの個数もしくは結合親和性を増大させることが有利である。これはEfl、Efl発現性細胞またはEhk−1もしくはElkリセプタのいずれかを用いる遺伝子療法によって達成することができる。適する細胞におけるこの種の組換蛋白質の選択的発現は、組織特異性もしくは誘発性プロモータにより或いは組換遺伝子を有する複製欠失ウィルスでの局部注射により制御されるコード遺伝子を用いて達成することができる。
実施例1:EHK−1結合性リガンドの発現クローン化
COS−7細胞を、10%の胎児牛血清(FBS)とそれぞれ1%のペニシリンおよびストレプトマイシン(P/S)と2mMのグルタミンとを含有するデュルベッコ改変イーグル培地(DMEM)にて5%CO2の雰囲気下に培養した。ヒト神経芽細胞腫の細胞系統、すなわちSH−SY5Y(ジュン・ビードラー、ソロラン−ケッタリングから入手)を、10%FBSと(P/S)と2mMのグルタミンとを含むイーグル最小必須培地(EMEM)にて培養した。
COS細胞で発現されたpJFE14ベクターにてSHSY5Y cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、全長ヒトEfl cDNAクローンを得た。COS細胞で発現されたpJFE14ベクターにてヒト骨髄肉腫143B細胞系統cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、全長ヒトEfl−4 cDNAクローンを得た。第1図に示したようにpJFE14ベクターはベクターpSRαの改変型である[タケベ等(1988)、モレキュラ・セルラ・バイオロジー、第8巻、第466〜472頁]。pJFE14ベクターにおける2つのBSTX1制限部位を用いてライブラリーを作成した。
COS−7細胞に、DEAE−デキストラン トランスフェクション法によりpJFE14ライブラリーまたは比較ベクターのいずれかを一時的にトランスフェクトさせた。要約すれば、COS−M5細胞をトランスフェクションの24時間前に100mmプレート1枚当り1.0×106細胞の密度で塗沫した。トランスフェクションのため、細胞を400μg/mLのDEAE−デキストランと1μMのクロロキンと2mMのグルタミンと1μgの適するDNAとを含有する血清フリーのDMEMにて37℃で3〜4時間にわたり5%CO2の雰囲気下に培養した。トランスフェクション培地を吸引すると共に、10%DMSOを含む燐酸塩緩衝塩水で2〜3分間かけて置換した。このDMSO「ショック」の後、COS−7細胞を10%のFBSとそれぞれ1%のペニシリンおよびストレプトマイシンと2mMのグルタミンとを含むDMEMに48時間入れた。
スクリーニングをEhk−1リセプタ体を用いる表面染色の直接的検出によって行い、このリセプタ体はIgG1コンスタント領域に融合したEhk−1の細胞外ドメインで構成された。このリセプタ体は次のように作成した:ヒンジ領域から開始すると共に分子のカルボキシ末端まで延びるヒトIgG1のFc部分を、ヒトIgG1の公開配列に対応するオリゴヌクレオチドでのPCRにより胎盤cDNAからクローン化させた。便利な制限部位をもオリゴヌクレオチドに一体化させて、PCR断片を発現ベクター中にクローン化させることができた。全長リセプタを有する発現ベクターを制限酵素切断により或いはPCR手法により改変させて、経膜および細胞内ドメインを制限部位(これら部位はヒトIgG1断片のこれらの部位へのクローン化を可能にする)で置換した。これは、リセプタ エクトドメインをそのアミノ末端として有すると共にヒトIgG1のFc部分をそのカルボキシ末端として有する融合蛋白質を発生させるよう行った。リセプタ体を作成する代案方法についてはグッドウィン等(1993)、セル、第73巻、第447〜456頁に記載されている。
要約すれば、COS細胞の100mm皿に1μgのSHSY5YライブラリープラスミドDNAをトランスフェクトさせた。トランスフェクションの2日後、細胞をEhk−1 IgGと共に30分間インキュベートして検定した(COS細胞上澄の形態で)。次いで各細胞をPBSで2回洗浄し、メタノールで固定し、次いでPBS/10%子牛血清/抗−ヒトIgG−アルカリホスファターゼ結合体と共にさらに10分間にわたりインキュベートした。PBSで3回洗浄した後、細胞をalk−phos基質にて30〜60分間にわたりインキュベートした。次いで皿を表面染色細胞の存在につき顕微鏡検査した。各染色細胞につき、これを包囲する小区域をプラスチック ピペット先端により皿から掻取り、次いでプラスミドDNAを再生させて細菌細胞をエレクトロポレートすべく使用した。これらエレクトロポレーションから得られた培養物より作成されたプラスミドDNAを用いて第2回の集積につきCOS細胞をトランストした。第2回目は標準的なパンニング技術を用いて行った。第2回目の集積(enricment)の後、単一の細菌集落を釣り上げ、これら集落から作成されたプラスミドDNAをこれらによりトランスフェクトされたCOS細胞におけるEhk−1染色を誘発する能力につき試験した。
SY5Yライブラリーからの3種のクローンを同定し、これらはEhk−1リセプタ体への結合を示した。第1のものはB61と同定された。同一であって、ここではEfl−2と命名した第2および第3のクローンは相違すると思われるが、部分ヌクレオチド配列決定により判定してB61に関連すると思われ、これらがB61族の構成員であることを示唆する。これら3種全てのリガンドは膜結合していると思われる。さらにB61と同様に、Efl−2はGPI−結合している。
ヒト骨髄肉腫細胞系統由来のライブラリーは、Efl−4をコードするクローンをもたらした。このリガンドはEhk−1、Ehk−2およびEhk−3、並びにEckの各リセプタを結合するがElkリセプタを結合しない。
実施例2:新規なEFLのクローン化
B61とEfl−2との間の相同性の領域を用いて、米国特許出願第08/144,992号に記載されたように他のEflを同定することができる。たとえば第2図は、これら2種の配列相同性の領域を示し、これらはそれぞれ単一文字のアミノ酸配列、すなわちV(F/Y)WNSSN(配列番号5)およびNDY(V/L)DI(I/Y)CPHY(配列番号6)を有し、ここで括弧内の文字は推定Efl−2蛋白質と比較してヒトおよびラットのB61で相違する残基を示す。次いで、これら保存蛋白質領域に対応する変質オリゴデオキシヌクレオチドを、胚芽および成体脳を含め各種の組織から作成されたcDNAを用いてPCR反応を開始させるべく設計し使用することができる。次いで、得られた増幅DNA断片をプラスミド中への挿入によりクローン化させ、DNA配列決定にかけることができ、次いでこれら配列を公知Eflの配列と比較することができる。
実施例3:ELK結合性リガンドの発現クローン化
COS−7細胞を、10%の胎児牛血清(FBS)とそれぞれ1%のペニシリンおよびストレプトマイシン(P/S)と2mMのグルタミンとを含有するデュルベッコ改変イーグル培地(DMEM)にて5%CO2の雰囲気下に培養した。ヒト神経上皮腫系統CHP100(入手)を10%FBSと(P/S)と2mMのグルタミンとを含むイーグル最小必須培地(EMEM)にて培養した。
COS細胞で発現されたpJFE14ベクターにてCHP100 cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、全長ヒトEfl cDNAクローンを得た。このベクターは第1図に示したようにベクターpSRα[タケベ等(1988)、モレキュラ・セルラ・バイオロジー、第8巻、第466〜472頁]の改変型である。このライブラリーは、pJFE14ベクターにおける2つのBSTX1制限部位を用いて作成した。
COS−7細胞にpJFE14ライブラリーまたは比較ベクターのいずれかをDEAE−デキストラン トランスフェクション法により一時的にトランスフェクトさせた。要約すれば、COS−M5細胞をトランスフェクションの24時間前に100mmプレート1枚当り1.0×106細胞の密度で塗沫した。トランスフェクションのため、細胞を400μg/mLのDEAE−デキストランと1μMのクロロキンと2mMのグルタミンと1μgの適するDNAとを含有する血清フリーのDMEMにて37℃で3〜4時間にわたり5%CO2の雰囲気下に培養した。トランスフェクション培地を吸引し、10%DMSOを含む燐酸塩緩衝塩水で2〜3分間かけて置換した。このDMSO[ショック]の後、COS−7細胞を10%のFBSと1%のそれぞれペニシリンおよびストレプトマイシンと2mMグルタミンとを含むDMEMに48時間入れた。
Ehk−1リセプタ体を用いる表面染色の直接的検出によりスクリーニングを行い、前記リセプタ体はIgG1コンスタント領域に融合したElkの細胞外ドメインで構成した。このリセプタ体を次のように作成した:ヒンジ領域から開始すると共に分子のカルボキシ末端まで延びるヒトIgG1のFc部分を、ヒトIgG1の公開配列に対応するオリゴヌクレオチドでのPCRを用いて胎盤cDNAからクローン化させた。さらに、便利な制限部位をオリゴヌクレオチドに一体化させてPCR断片を発現ベクター中にクローン化させることもできる。全長リセプタを有する発現ベクターを制限酵素切断により或いはPCR手法により改変させて経膜ドメインおよび細胞内ドメインを、ヒトIgG1断片をこれら部位にクローン化させうる制限部位で置換した。これは、リセプタ エクトドメインをそのアミノ末端として有すると共にヒトIgG1のFc部分をそのカルボキシ末端として有する融合蛋白質を発生させるよう行った。リセプタ体を作成する代案方法についてはグッドウィン等(1993)、セル、第73巻、第447〜456頁に記載されている。
要約すれば、COS細胞の100mm皿に1μgのCHP100ライブラリープラスミドDNAをトランスフェクトさせた。トランスフェクションの2日後、細胞をElk−IgGと共に30分間インキュベートして検定した(COS細胞上澄の形態で)。次いで細胞をPBSで2回洗浄し、メタノールで固定し、次いでPBS/10%子牛血清/抗−ヒトIgG−アルカリホスファターゼ結合体と共にさらに30分間にわたりインキュベートした。PBSで3回洗浄した後、細胞をalk−phos基質にて30〜60分間にわたりインキュベートした。次いで皿を表面染色細胞の存在につき顕微鏡検査した。各染色細胞につき、これを包囲する小区域をプラスチック ピペット先端により皿から掻取り、次いでプラスミドDNAを再生すると共に細菌細胞をエレクトロポレートすべく使用した。これらエレクトロポレーションから得られた培養物より作成したプラスミドDNAを用いて第2回目の集積につきCOS細胞をトランスフェクトした。第2回目は標準的なパンニング技術を用いて行った。第2回目の集積の後、単一の細菌集落を釣り上げ、これら集落から作成されたプラスミドDNAをこれらによりトランスフェクトされたCOS細胞におけるElk染色を誘発させる能力につき試験した。
Elkリセプタ体に対する結合を示すと同定されたクローンを1994年4月12日付けでATCCに寄託し、第75734号と指定された。
実施例4:可溶性EFLの活性化
ベクター単独(COS−Mock)でトランスフェクトされたCOS細胞またはEfl−3発現ベクターでトランスフェクトされたCOS細胞のいずれかを増殖させ、これら細胞を皿からPBS+1mM EDTAにより脱着させ、ペレット化させ、次いでPBSに再懸濁させることにより、膜結合したEflの分析を行った。細胞をレポータ細胞系統の頂部に積層した。
それぞれC−末端にmycエピトープを用いて標識した可溶性Efl−3およびB61[スタール等、サイエンス、第263巻、第92〜95頁(1994)]をCOS細胞上澄として産生させると共に、非クラスター化リガンドとして或いは抗体によりクラスター化させたリガンドとして使用した。スロットブロットにおけるmycエピトープの量を定量することによりリガンド濃度を推定した。リガンドクラスター化は、抗−myc モノクローナル抗体と抗−マウス ポリクローナル抗体とを添加すると共に細胞を刺激する前に37℃にて1時間にわたりインキュベートすることにより行った。レポータ細胞系統はElkでトランスフェクトされた3T3繊維芽細胞(第5A図および第5B図)またはEhk−1でトランスフェクトされたC2C12細胞(第5C図)とした。10cm皿におけるレポータ細胞を血清フリー培地にて4〜6時間にわたり飢餓させ、次いで上記したように15分間にわたり刺激し、次いで可溶化させると共にリセプタを認識する抗体で免疫沈殿させた。免疫沈澱物をホスホチロシンに対する抗体で免疫ブロットし(第5図、上側パネル)、次いで剥離させると共にリセプタを認識する抗体で再プローブして全リセプタ蛋白質を可視化させた(第5図、下側パネル)。
Eckリセプタ キメラにより媒介されたBAF細胞における成長反応の誘発を測定するため、各刺激をCOS細胞で産生された可溶性Efl−1およびB61により、その後のクラスター化と共に或いはクラスター化なしに行った。2日間の刺激の後、生体染料MTT(3−{4,5−ジメチルチアゾール−2−イル}−2,5−ジフェニルテトラゾリウム ブロマイド)を4時間かけて添加し、次いで従来記載されているように可溶化させると共に光学密度(O.D.)を測定することにより生存細胞の個数を評価した[イプ等(1993)、ニューロン、第10巻、第137〜149頁](第8図)。第9図に示したデータは、COS細胞で産生されてその後に抗Fc抗体でクラスター化させた或いはクラスター化させなかった可溶性Ehk−1L−FcおよびB61−Fcを用いて行ったMTT分析からの結果である。Eckリセプタの触媒ドメインはBAF細胞における成長反応を媒介しないので、リセプタ キメラ(ここでは、EckリセプタのエクトドメインをFGFリセプタの細胞質ドメインに融合させた)をBAF細胞に導入してレポータ細胞系統を作成した。
第5B図、レーン2および3、並びに第5C図、レーン2に示したように、リセプタ燐酸化により判定してリガンド誘発のリセプタ活性化は可溶性型のEfl−3もしくはB61を用いて観察されなかった。しかしながらリセプタ燐酸化は、リセプタ発現レポータ細胞を膜結合型の前記リガンドを過剰発現するCOS細胞で刺激することにより顕著に誘発された(たとえば第5A図、レーン1および2)。この相違点を説明するため、膜付着がリガンドのクラスター化を促進し、次いでリセプタのマルチマー化および活性化を促進すると推定した。溶液におけるリガンドのクラスター化を模倣するため、分泌型のリガンドをC−末端に添加されたエピトープ標識を用いて作成した:次いで標識に対する抗体を用いてリガンドを凝集させた。この種のクラスター化は、従来不活性の可溶性リガンドによりElkおよびEhk−1レポータを発現するレポータ細胞にてリセプタ チロシン燐酸化を強度に誘発することができる(第5B図、レーン1〜5および第5C図、レーン1〜3)。同様に、第7図に示すようにEfl−3(ELK−L)に関しリガンドの二量化では生物学的活性を誘発するのに不充分であるのに対し、マルチマーは顕著な活性を有した。これらの結果は、ここに説明したように特定の各リガンドに関する限りクラスター化の特定メカニズムの効果を評価する必要性を示す。
この種のクラスター化の効果は、リセプタの燐酸化を測定して判定することができる。或いは、適するリセプタもしくはリセプタ キメラ(たとえばEckリセプタキメラ)を発現するレポータ細胞での増殖を実験で用い、その結果を第6図に示す。
投与量−反応の各試験は、クラスター化が少なくとも100倍大の能力をもたらすと共に低濃度のリガンド(他のリセプタ族に関するリガンドで見られる反応[イプ等、ニューロン、第10巻、第137〜149頁]と比較)で飽和反応をもたらすことを燐酸化分析(Elkリガンドにつき試験、データ示さず)および増殖分析(Efl−1およびB61につき試験、第6図)の両者にて示す。非クラスター化B61の小さい効果(第6B図)は、高濃度の可溶性B61がEckチロシン燐酸化を誘発させうるという最近の知見[バートレー等、ネイチャー、第368巻、第558〜560頁(1994)]を思い出させる。この試験では、1〜2mg/mL濃度のB61においても飽和は達成されなかった。これらの効果は、可溶性リガンド自身が自然に或いは精製の結果として二量化もしくは凝集する弱い能力に起因するのであろう。可溶性リガンドは、二価もしくは多価であるためリセプタを活性化させると思われる[J.シュレシンガーおよびA.ウルリッチ、ニューロン、第9巻、第383〜391頁(1992)]。或る種のリガンドは2個の異なるリセプタ結合性部位を有するモノマーであるのに対し、他のリガンドは共有結合もしくは非共有結合したダイマーとして二価性を達成する。本発明の結果は、恐らく一価であるため可溶性リガンドとして無効であると思われるがクラスター化により溶液で人工的に活性化しうる新規な種類のリガンドを規定する。これらリガンドは、リセプタを凝集すると共に活性化する膜付着に依存すると思われる。拡散を二次元に制限することにより、膜付着は簡単にリガンド−リガンド衝突の傾向を増大させることによりリガンド二量化或いは一層激しいリガンドのクラスター化、特に溶液にて極く弱くしか相互作用しないリガンドのクラスター化を促進する。あるいは、細胞表面リガンドのクラスターを形成させるには特異的メカニズムが存在する。さらに、リガンド−リセプタ対はリガンド支持細胞とリセプタ支持細胞との接触区域に蓄積すると思われる。
これら側方凝集作用は全てリセプタのマルチマー化および活性化に寄与しうる。EPH関連のニューロン発現されたNUKリセプタが細胞と細胞との接触区域に一時的に集中するという観察[ヘンケマイヤー等、オンコジーン、第9巻、第1001〜1014頁(1994)]は、1つの膜に結合したリガンドと他の膜に結合したリセプタとの間の相互作用が側方凝集を促進するという可能性を裏付ける。
微生物の寄託
以下の微生物を、ブダペスト条約の規定に基づきアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、12301パークローン・ドライブ、ロックビル、メリーランド州20852に寄託した。
受託番号
efl−2を有するpJFE14 75728
efl−3を有するpJFE14 75734
efl−4を有するpJFE14 75921
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本発明の範囲はこれら特定実施例のみに限定されず、多くの改変をなしうることが当業者には了解されよう。本明細書には各種の引例を引用したが、その開示を参考のためここに引用する。
Claims (8)
- Efl−1(B61)、Efl−2(EHK−1L)およびEfl−3(ELK−L)から選択され図2に示すアミノ酸配列を有するeph族リガンド(Efl)の細胞外ドメインの生物学的活性を増大させる方法であって、
(a)該リガンドの可溶性ドメインをエピトープ標識と共に発現させ;
(b)前記標識された可溶性ドメインを抗−標識抗体に暴露させて、クラスター化されたeph族リガンドを形成させる
ことを特徴とする前記方法。 - 前記標識化がリガンドのC−末端に位置する請求の範囲第1項に記載の方法。
- 前記エピトープ標識がc−myc又は免疫グロブリンのFcドメインである請求の範囲第2項に記載の方法。
- 図2に示すアミノ酸配列を有するEfl−1(B61)およびEfl−2(EHK−1L)から選択されるeph族リガンドの可溶性ドメインの生物学的活性を増大させる方法であって、
(a)該リガンドの可溶性ドメインをIgGのFcドメインと共に発現させ;
(b)Fcダイマーを形成させる
ことを特徴とする前記方法。 - 請求の範囲第1、2又は3項の方法によって得られるエピトープ標識された可溶性eph族リガンドの抗−エピトープ抗体処理された調製物。
- 前記エピトープ標識がリガンドのC−末端に位置する請求の範囲第5項に記載の調製物。
- 前記エピトープがmyc又は免疫グロブリンのFcドメインである請求の範囲第6項に記載の調製物。
- (可溶性Efl)nを含み、該可溶性EflがEfl−1(B61)またはEfl−2(EHK−1L)の細胞外ドメインであり、nが2もしくはそれ以上であり、Efl−1(B61)およびEfl−2(EHK−1L)が図2に示すアミノ酸配列を有することを特徴とする生物学的に活性なクラスター化された可溶性eph族リガンド。
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