JP3685299B2 - 慣性ロックコネクタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方のコネクタハウジングの慣性ロック部に対する他方のコネクタハウジングの係り代を増大させて、コネクタ嵌合時の慣性力を高めた慣性ロックコネクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図10〜図12は従来の慣性ロックコネクタを示すものである。
図10の如く、この慣性ロックコネクタ31(図12)は、慣性ロック爪6を有する雌コネクタ3と、慣性ロック爪6に当接して高い慣性力で雌コネクタ3に嵌合する雄コネクタ32とで構成される。各コネクタ3,32は合成樹脂製のコネクタハウジング5,33と、コネクタハウジング5,33内に収容される端子34,35(図12)とで構成される。
【0003】
慣性ロック爪6は可撓性のロックアーム7の先端に形成され、ロックアーム7は合成樹脂製の雌コネクタハウジング5の壁部36に切欠形成され、慣性ロック爪6はコネクタ嵌合室14内に突出している。雌コネクタハウジング5は図示しないジョイントボックスに突設されている。
【0004】
雄コネクタハウジング33には、雌コネクタハウジング5の係合孔(図示せず)に係合するロック突起37を有するロックアーム38が設けられている。雄コネクタハウジング33の先端外周部と雌コネクタハウジング5の先端内周部にはそれぞれテーパガイド面39,40が形成されている。図11においては雄コネクタハウジング33の先端のテーパガイド面39と端子収容室の前部開口41を示している。両テーパガイド面39,40によって両コネクタ3,32の初期嵌合がスムーズに行われる。
【0005】
図12の如く、作業者が手で雄コネクタ32を雌コネクタ3に嵌合する際に、雄コネクタハウジング33の先端が雌コネクタハウジング5側の慣性ロック爪6に当接する。この位置で雌コネクタ3の雄端子34が雄コネクタ32の雌端子35に嵌合し始める。作業者が力を込めて雄コネクタ32を嵌合方向に押圧することで、ロックアーム7が撓み、慣性ロック爪6が雄コネクタハウジング33の前端から離脱する。これにより、雄コネクタ32が大きな慣性力で雌コネクタ3に嵌合し、両コネクタ3,32の両端子34,35が接続される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の慣性ロックコネクタ31にあっては、図12の如く雄コネクタハウジング33の先端にテーパガイド面39が形成されているために、慣性ロック爪6との実質的な係り代L4 が小さくなり、コネクタ嵌合時の慣性力が小さくなってしまうという問題があった。慣性力が小さいと、コネクタ嵌合が不完全になりやすくなってしまう。また、テーパガイド面39を設けないと、コネクタ相互の初期嵌合をスムーズに行えないという問題を生じてしまう。また、慣性ロック爪6の突出長さL5 を長くした場合には、図11における端子収容室の前部開口41に慣性ロック爪6がかかって(重なって)しまい、前部開口41へ挿入される雌コネクタ3の雄端子34と干渉してしまう。従って、係り代L4 はテーパガイド面39から前部開口41までの距離L6 よりも小さくなければならず、どうしても慣性ロック爪6を長くしたい場合には雄コネクタハウジング33自体を大型化しなければならなかった。
【0007】
本発明は、上記した点に鑑み、コネクタ相互の初期嵌合性を損なわず、且つコネクタハウジングを肥大化させることなく、コネクタ嵌合時に大きな慣性力を発揮させることのできる慣性ロックコネクタを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、一方のコネクタハジングの内側に可撓性の慣性ロックアームの慣性ロック爪が突出して設けられ、該一方のコネクタハウジングのロック壁に対する係止突起を有する可撓性のロックアームが他方のコネクタハウジングに設けられ、該慣性ロック爪に該他方のコネクタハウジングの前端面が当接してコネクタ嵌合方向の慣性力を得る慣性ロックコネクタにおいて、前記慣性ロック爪に対向して前記他方のコネクタハウジングの前端部の一辺に小さなテーパガイド面が設けられ、該一辺において該小さなテーパガイド面の両端に大きなテーパガイド面が続いて該前端部の外周に沿って位置し、該小さなテーパガイド面は前記ロックアームとは反対側に位置し、該ロックアームの前記係止突起が前記ロック壁に当接すると同時に、該小さなテーパガイド面側の前記前端面が該慣性ロック爪に当接することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1〜図2は、本発明に係る慣性ロックコネクタの概要を示すものである。従来と同様の部分には同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0010】
この慣性ロックコネクタ1(図2)は雄コネクタ2と雌コネクタ3(図2)とで構成され、雌コネクタ3の合成樹脂製の雌コネクタハウジング(一方のコネクタハウジング)5には従来同様の慣性ロック爪(慣性ロック部)6を有する可撓性の慣性ロックアーム7が設けられ、雄コネクタ2の合成樹脂製の雄コネクタハウジング(他方のコネクタハウジング)4には、慣性ロック爪6に対する小さなテーパガイド面8を有する当接部9が形成され、当接部9の両側に大きなテーパガイド面10,10、すなわち従来同様の大きさのテーパガイド面が連続して形成されている。
【0011】
大きなテーパガイド面10は当接部9を除く雄コネクタハウジング4の前端外周部に形成されている。当接部9は慣性ロック爪6(図2)の位置に対応して、雄コネクタハウジング4の可撓性のロックアーム11(図1)とは180°反対側の壁部12の先端の中央部に形成されている。当接部9は両側の大きなテーパガイド面10よりも斜め前方すなわち角部先端方向に突出し、幅S1 (図1)の範囲で雄コネクタハウジング4の前端面13と同一面の当接面9aを有している。
【0012】
図2の如く、慣性ロック爪6は面取りのない矩形状の凸部であり、ロックアーム7から直角に突出して、雄コネクタハウジング4の前端面13の一部である当接面9aに対する突き当て面6aを有し、雌コネクタハウジング5のコネクタ嵌合室14内に従来同様の一定の長さL1 で突出している。慣性ロック爪6は雌コネクタハウジング5のコネクタ嵌合方向の中間部に位置している。
【0013】
小さなテーパガイド面8を有する当接部9は慣性ロック爪6の横幅(従来例の図10のS2 )と同一かやや大きな幅S1 (図1)で形成されている。大きなテーパガイド面10は慣性ロック爪6よりも両側に離れて位置しており、大きなテーパガイド面10が慣性ロック爪6に接することはない。
【0014】
図2において、雄コネクタ2は慣性ロック爪6に当接するまで小さな力で雌コネクタ3内に容易に挿入(初期嵌合)される。雌コネクタハウジング5はジョイントボックス(図示せず)に直付けされたものであっても、あるいは雄コネクタ2の如くワイヤハーネス15に接続されたものであってもよい。
【0015】
雄コネクタハウジング4の小さなテーパガイド面8によって当接部9における慣性ロック爪6との係り代L2 が実質的に大きくなっている。L3 は、大きなテーパガイド面10と慣性ロック爪6とのなす距離であり、従来の係り代と同一である。係り代L2 が大きくなったことで、コネクタ嵌合時の慣性力が増大し、コネクタ嵌合すなわち両コネクタ2,3の端子相互の接続が確実に行われる。
【0016】
また、雄コネクタハウジング4の前端の中央部に小さなテーパガイド面8を設けたことで、小さなテーパガイド面8の両側の大きなテーパガイド面10が雌コネクタハウジング5との初期嵌合時にスムーズに雄コネクタハウジング4を案内させ、初期嵌合を従来同様にスムーズに行わせる。また、小さなテーパガイド面8によって慣性ロック爪6の突出長さL1 は従来のまま一定でよいから、雌コネクタハウジング5に何ら手を加える(設計変更する)必要がなく、経済的であると共に、雄コネクタハウジング4を大型化する必要がなく、両コネクタハウジング4,5が従来同様の大きさに保たれる。
【0017】
図3〜図6は上記慣性ロックコネクタのより具体的な実施例として雄コネクタハウジングの詳細図を示すものである。上記同様の構成部分には符号にダッシュを付けて説明する。
【0018】
図3は雄コネクタハウジング4′の正面図、図4は同じく平面図を示すものであり、小さなテーパガイド面8′は壁部12′の前端に形成され、小さなテーパガイド面8′の両側に大きなテーパガイド面10′が続いて形成されている。小さなテーパガイド面8′と大きなテーパガイド面10′との境には段部16が形成され、各段部16の間において当接部9′が構成され、雄コネクタハウジング4′の前端面13′に、慣性ロック爪6(図2)に対する当接面9a′が位置している。
【0019】
大きなテーパガイド面10′は雄コネクタハウジング4′の角部17,17を経て、直交する側壁部18のテーパガイド面19に続いている。テーパガイド面19の大きさは大きなテーパガイド面10′と同一である。大きなテーパガイド面10′の各長さS3 は小さなテーパガイド面8′の長さS1 ′の1/3程度である。この程度の長さがあれば両側の大きなテーパガイド面10′で相手側の雌コネクタハウジング5(図2)にスムーズに初期嵌合できる。壁部12′の後端側には操作用の鍔部20が突設され、ロックアーム11′側の壁部21にはガイドリブ22が突設されている。壁部12′には肉盗みとしての空洞23が設けられている。
【0020】
図3において雄コネクタハウジング4′の前端面13′には縦横に複数の前部開口24が設けられている。前部開口24は図5(図3のA−A断面図)の端子収容室25に続いている。端子収容室25内には端子係止ランス26が設けられている。図6は図3のB−B断面図であり、大きなテーパガイド面10′が示されている。一例として図6の大きなテーパガイド面10′の大きさは0.5C程度であり、図5の小さなテーパガイド面8′の大きさは例えば0.3C程度ないしはそれ以下である。
【0021】
図7〜図9は雌コネクタハウジングの具体例を示すものであり、図7は雌コネクタハウジングの正面図、図8は図7のC−C断面図、図9は図7のD−D断面図である。
【0022】
この雌コネクタハウジング44は、周壁46の一方に、雄コネクタハウジング4′(図3)の前端面13′を当接させる慣性ロック爪(慣性ロック部)57を有するロックアーム58を備え、周壁46の他方に、雄コネクタハウジング4′(図3)のロックアーム11′の係止突起11a′を摺接させるロック壁45を備えたものである。
【0023】
雌コネクタハウジング44のロックアーム58は、一方の壁部462 の一部をスリット59(図8)で略凹字状に切欠して構成したものであり、コネクタ嵌合室47の底壁54に向けて延び、壁部462 の板厚方向に撓み可能である。慣性ロック爪57は、ロックアーム58の下端部において直角にコネクタ嵌合室47内に長さL8 (図7)で突出形成され、縦断面矩形状を呈してコネクタ嵌合室47の底壁54寄りに位置している。
【0024】
壁部462 はコネクタ嵌合室47の開口側の端壁60を経て折り返し壁61(図9)に続いており、二重壁をなす壁部462 と折り返し壁61との間にロックアーム58に対する撓み空間62(図9)が形成されている。コネクタ嵌合時にロックアーム58は図9の鎖線の如く外向きに撓んで撓み空間62内に進入し、慣性ロック爪57の先端は壁部462 と同一面位置まで引っ込む。
【0025】
一方、ロック壁45は雌コネクタハウジング44の他方の壁部461 の上端においてコネクタ嵌合室47に向けて長さL7 で直角に突設されている。ロック壁45の下側には、コネクタ嵌合室47に続く空部48が形成され、この空部48に雄コネクタハウジング4′(図3)のロックアーム11′の係止突起11a′が係合する。
【0026】
前記慣性ロック爪57は、雄コネクタハウジング4′(図3)の前端面13′(小さなテーパガイド面8′のある部位)に対応して雌コネクタハウジング44の底部寄りに位置し、ロック壁45は、雄コネクタハウジング4′(図5)のロックアーム11′の長さ方向中間部に位置する係止突起11a′に対応して、雌コネクタハウジング44の上部寄りに位置している。
【0027】
ロック壁45は雌コネクタハウジング44の前端面49よりも一段低く位置し、ロック壁45の上側には凹部50が切欠形成されている。凹部50に面してロック壁45の上端面45aが位置している。ロック壁45の両側には、ロックアーム11′(図3)に対するガイドリブ51がコネクタ嵌合室47に向けて突出形成されている。図7で、52は、雄コネクタハウジング4′(図3)に対するテーパガイド面、53は底壁54の開口(図9)を示す。底壁54には、雄端子(図示せず)をコネクタ嵌合室47内に突出させるための挿通孔55が形成されている。雌コネクタハウジング44の周壁46の下部はジョイントボックスの上壁56と一体化している。
【0028】
雄コネクタハウジング4′(図3)を雌コネクタハウジング44に嵌合させる初期嵌合状態において、雄コネクタハウジング4′の前端面13′(小さなテーパガイド面8′のある部分)が雌コネクタハウジング44のロックアーム58の慣性ロック爪57に当接する。それと同時に、雄コネクタハウジング4′のロックアーム11′の係止突起11a′の傾斜面(図5)がロック壁45に当接する。
【0029】
作業者が力を込めて雄コネクタハウジング4′をコネクタ嵌合方向に押圧することで、雌コネクタハウジング44のロックアーム58が外側に撓み、且つ雄コネクタハウジング4′のロックアーム11′(図5)が内側に撓んで、慣性力で雄コネクタハウジング4′(正確には雌端子を有する雄コネクタ)が雌コネクタハウジング44(正確には雄端子を有する雌コネクタ)に確実に嵌合する。ロックアーム11′の係止突起11a′はロック壁45を乗り越えて空部48内に進入し、ロック壁45の内側面45b(図9)に係合する。
【0030】
本例においては、ロック壁45が係止突起11a′と当接することで補助的に慣性力を生じさせ、慣性ロック爪57とロック壁45とによってコネクタ嵌合時の強い慣性力が発揮される。慣性ロック爪57はロック壁45の180°反対側に配置されているから、コネクタ押圧時の安定性が良く、慣性力がバランス良く発揮される。勿論、慣性ロック爪57に雄コネクタハウジング4′(図3)の前端面13′(小さなテーパガイド面8にある部位)を先に当接させ、慣性ロック爪57による雄コネクタハウジング4′の慣性力でロックアーム11′の係止突起11a′と空部48との係合を楽に行わせつつ、両コネクタを確実に嵌合させることも可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上の如くに、本発明によれば、一方のコネクタハウジングの慣性ロック部に対して他方のコネクタハウジングのテーパガイド面が小さく形成され、慣性ロック部に対する係り代が実質的に大きくなっているから、慣性ロック部の形状を変更したり、他方のコネクタハウジングを大型化させることなく、コネクタ嵌合時の慣性力を確実に高めることができる。それによりコネクタ嵌合の信頼性が向上する。また、小さなテーパガイド面の両側の大きなテーパガイド面によって両コネクタハウジングの初期嵌合がスムーズに行われ、コネクタの初期嵌合性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の慣性ロックコネクタにおける雄コネクタを示す斜視図である。
【図2】雄コネクタを雌コネクタに初期嵌合させた状態を示す縦断面図である。
【図3】雄コネクタハウジングの詳細例を示す正面図である。
【図4】同じく雄コネクタハウジングを示す平面図である。
【図5】図3のA−A断面図である。
【図6】図3のB−B断面図(要部のみ示す図)である。
【図7】雌コネクタハウジングの詳細例を示す正面図である。
【図8】図7のC−C断面図である。
【図9】図7のD−D断面図である。
【図10】従来の慣性ロックコネクタを示す分解斜視図である。
【図11】同じく雄コネクタハウジングを示す正面図である。
【図12】雄コネクタを雌コネクタに初期嵌合させた状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 慣性ロックコネクタ
5,44 雌コネクタハウジング(一方のコネクタハウジング)
4,4′ 雄コネクタハウジング(他方のコネクタハウジング)
6,45 慣性ロック爪(慣性ロック部)
8,8′ 小さなテーパガイド面
10,10′ 大きなテーパガイド面
13,13′ 前端面
2 係り代

Claims (1)

  1. 一方のコネクタハジングの内側に可撓性の慣性ロックアームの慣性ロック爪が突出して設けられ、該一方のコネクタハウジングのロック壁に対する係止突起を有する可撓性のロックアームが他方のコネクタハウジングに設けられ、該慣性ロック爪に該他方のコネクタハウジングの前端面が当接してコネクタ嵌合方向の慣性力を得る慣性ロックコネクタにおいて、
    前記慣性ロック爪に対向して前記他方のコネクタハウジングの前端部の一辺に小さなテーパガイド面が設けられ、該一辺において該小さなテーパガイド面の両端に大きなテーパガイド面が続いて該前端部の外周に沿って位置し、該小さなテーパガイド面は前記ロックアームとは反対側に位置し、該ロックアームの前記係止突起が前記ロック壁に当接すると同時に、該小さなテーパガイド面側の前記前端面が該慣性ロック爪に当接することを特徴とする慣性ロックコネクタ。
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