次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態の液体分注シール装置の透過斜視図、図2は本発明の一実施の形態において使用される結晶化プレートの斜視図、図3は本発明の一実施の形態において使用される結晶化プレートの部分断面図、図4は本発明の一実施の形態の液体分注シール装置による分注操作の説明図、図5は本発明の一実施の形態の液体分注シール装置のプレートシール機構の斜視図、図6,図7は本発明の一実施の形態の液体分注シール装置のプレートシール機構の平面図、図8、図9は本発明の一実施の形態の液体分注シール装置のプレートシール機構の側断面図、図10は本発明の一実施の形態の液体分注シール装置のシート貼付ヘッドの構成説明図、図11は本発明の一実施の形態の液体分注シール装置のプレートシール機構の部分断面図、図12は本発明の一実施の形態の液体分注シール装置の制御系の構成を示すブロック図、図13は本発明の一実施の形態の液体分注シール方法のフロー図、図14,図15は本発明の一実施の形態の液体分注シール方法の動作説明図、図16は本発明の一実施の形態の液体分注シール方法におけるシート貼付け形態の説明図である。
まず図1を参照して、液体分注シール装置の全体構造を説明する。液体分注シール装置1は、液体を収納するためのウェル(凹部)を行列配置で複数備えたプレートを対象として、ウェルへの分注操作と分注後のウェルのシール処理とを同一作業工程で行う機能を備えている。ここでは、蛋白質の結晶化条件をスクリーニングするための結晶化プレートを作製する用途に、液体分注シール装置1を使用する例を示している。この結晶化プレート作製処理においては、結晶化プレートのウェルに蛋白質溶液と結晶化溶液とを所定条件で分注した直後に、結晶化プレートの上面にシートを貼り付けてウェルを密封する。
液体分注シール装置1の内部に設けられた基台2の上面は、結晶化プレートを対象として各種の処理や操作が実行される作業エリア4となっている。基台2の手前側の側面には、消耗品を収容するストック部5が設けられている。ストック部5はプレートストック部6および2つのラックストック部7,8を備えている。
プレートストック部6は昇降プレート6aを備えており、昇降プレート6a上には結晶化プレート9が多段積みの積層状態で収納される。昇降プレート6aが上昇することにより、積層された結晶化プレート9が上昇し、最上層の結晶化プレート9が後述するロボットハンド機構20によって取り出される。結晶化プレート9は、蛋白質溶液中の蛋白質を結晶化させるために用いられる結晶化容器である。
ここで、図2,図3を参照して、結晶化プレート9について説明する。図2に示すように、結晶化プレート9には複数のウェル9aが格子状に形成されている。ウェル9aは、円形の凹部の中心に円柱状の液保持部9bが設けられたいわゆるカルデラ状の液体収納用の凹部であり、ウェル9a内には、結晶化の対象となる試料、すなわち結晶化対象の蛋白質を含んだ蛋白質溶液14aと、結晶化に用いられる結晶化溶液13aとが分注される。
図3はこれらの試料を収容した1つのウェル9aの断面を示している。ウェル9a内では、液保持部9bの頂部に設けられたポケット内に液滴状の蛋白質溶液14aが載置状態で保持されており、液保持部9bを囲むリング状の貯液部9cには、結晶化溶液13aが貯溜されている。ウェル9aは、結晶化の対象となる蛋白質溶液を載置状態で下方から保持する液保持部9bと結晶化溶液13aを貯溜する貯液部9cとを有する溶液収容部となっている。後述するように結晶化の開始に際しては、液保持部9bに保持された蛋白質溶液14aに所定量の結晶化溶液13aを貯液部9cから取り出して分注して混合した後、各ウェル9a上面に密封用のシート38aが貼着される。
この状態の結晶化プレート9を所定の温度雰囲気下で保管することにより、蛋白質溶液14a中の溶媒成分を蒸発させ、これにより蛋白質溶液14aの蛋白質濃度を過飽和状態にまで高めて蛋白質結晶を生成する。このとき、蛋白質溶液14aから蒸発する溶媒と結晶化溶液13aに吸収される蒸気とが平衡状態を保ちながら蛋白質溶液14aからの溶媒の蒸発が緩やかに進行することにより、安定した結晶生成が行われる。
ラックストック部7,8は、昇降プレート7a、8aを備えており、昇降プレート7a、8aには、ティップラック10,11が、結晶化プレート9と同様に積層状態で収納され、ロボットハンド機構20によって取り出される。ティップラック10,11には、分注操作において結晶化溶液13aの分注に使用される使い捨て型の分注ティップが格子状配列で複数保持されている。結晶化溶液13aの分注には、後述するように大小2種類の分注ティップが用いられ、ティップラック10、11は、それぞれ小型サイズ、大型サイズの結晶化溶液分注用ティップを収納している。
これらの結晶化プレート9やティップラック10,11は、後述するロボットハンド機構20によって作業エリア4に搬送され、ここでティップラック10,11から取り出された分注ティップが分注操作に使用される。使用された分注ティップは、ティップラック10,11に戻し入れされる。ストック部5には、使用後の消耗部品を回収するための廃棄ボックス12が設けられており、使用後の分注ティップを収容したティップラック10,11は、ロボットハンド機構20によってこの廃棄ボックス12内に投棄される。
ロボットハンド機構20について説明する。基台2の上方には、2条のX軸機構24がX方向に配設されており、X軸機構24に架設されたY軸機構23には、Zθ軸機構22が装着されている。Zθ軸機構22から下方に延出した軸部22aには、搬送ヘッド21が結合されている。X軸機構24、Y軸機構23、Zθ軸機構22を駆動することにより、搬送ヘッド21は作業エリア4内でX方向、Y方向およびZθ方向に移動し、結晶化プレート9やティップラック10、11をクランプして搬送する。
次に作業エリア4について説明する。作業エリア4のストック部5側は分注材料などの
載置エリアとなっており、ティップラック10,11や、後述する蛋白質溶液の分注ノズルを収容するノズルラック15、さらに結晶化の対象となる蛋白質溶液14aを貯溜した蛋白質溶液供給リザーバ14および結晶化に使用される結晶化溶液13aを貯溜した結晶化溶液供給リザーバ13が載置されている。
スクリーニングにおいて試験の対象となる結晶化プレートを準備する結晶化プレート作製処理は、空の結晶化プレート9に対して、蛋白質溶液供給リザーバ14から取り出した蛋白質溶液14aおよび結晶化溶液供給リザーバ13から取り出した結晶化溶液13aを、以下に説明する分注部25によって分注することにより行われる。
作業エリア4の上方には、X軸機構26がX方向に配設されており、X軸機構26に結合されたY軸機構27には、液体分注機構28が装着されている。液体分注機構28は、3種類の分注ヘッド(図示省略)を備えており、各分注ヘッドには、図4に示す分注ティップ29a、29c、分注ノズル29bがそれぞれ装着される。
X軸機構25およびY軸機構26を駆動することにより、液体分注機構28は作業エリア4上で移動し、後述するプレート載置ステージ35に載置された結晶化プレート9の複数のウェル9aに対し、前述の3種類の分注ヘッドを使い分けて順次所定の分注操作を行う。したがって液体分注機構28は、プレート載置ステージ35(後述)に載置された結晶化プレート9の複数のウェル9aに対し、順次所定の分注操作を行う液体分注手段となっている。
分注ティップ29a、29cが装着された分注ヘッドはいずれも結晶化溶液13aを対象として用いられ、大容量の結晶化溶液13aを短時間で分注する用途に、また小容量の結晶化溶液13aを高精度で分注する用途にそれぞれ用いられる。分注ノズル29bが装着された分注ヘッドは、蛋白質溶液14aを対象として用いられる。
分注動作を行う際には、上述の3つの分注ティップ29a、29c、分注ノズル29bを装着した分注ヘッドのうちのいずれかを、当該分注動作における対象・目的に応じて選択する。図4は、この液体分注機構28を用いて行われる結晶化プレート作製動作における分注操作を示している。まず最初に分注ティップ29aが装着された分注ヘッドを選択して、結晶化溶液リザーバ13から結晶化溶液13aを取り出し、次いで図4(a)に示すように、分注ティップ29aによってウェル9aの貯液部9c内に結晶化溶液13aを分注する。
そしてこの後、分注ノズル29bが装着された分注ヘッドを選択し、蛋白質溶液リザーバ14から蛋白質溶液14aを取り出し、図4(b)に示すように、貯液部9c内に結晶化溶液13aが分注されたウェル9aを対象として、液保持部9bの頂部のポケット内に蛋白質溶液14aを分注する。次いで分注ティップ29cが装着された分注ヘッドが選択され、図4(c)に示すように、分注ティップ29cによって貯液部9c内の結晶化溶液13aの一部を吸引し、液保持部9bに既に分注されている蛋白質溶液14aに所定量の結晶化溶液13aを加え合わせる。
図1において作業エリア4にはプレートシール機構30が配設されている。プレートシール機構30は結晶化プレート9が載置されるプレート載置ステージ35を備えている。ロボットハンド機構20によってストック部5から取り出された結晶化プレート9が載置されたプレート載置ステージ35は、プレート載置ステージ移動機構33によって分注操作位置まで移動し、結晶化プレート9がプレート載置ステージ35に載置された状態で液体分注機構28による分注操作が行われる。そして分注操作が完了したウェルには、リール状のシート供給部31から供給された粘着性のシートがプレートシール機構30によっ
て貼付けられ、これにより当該ウェル9aが密封される。
シート供給部31(シート供給手段)は粘着面を有するシートとこの粘着面を覆うカバーフィルムとを積層したテープ状の積層シートを供給する。そしてプレートシール機構30によって積層テープから剥離されたシートが結晶化プレート9に貼り付けられ、積層シートからシートが剥離された後のカバーフィルムはリール状のカバーフィルム回収部32に回収される。
次に図5を参照してプレートシール機構30の構成を説明する。プレートシール機構30はX方向に配設されたテーブル34を備えており、プレート載置ステージ35はテーブル34上をプレート載置ステージ移動機構33によってX方向に移動する。テーブル34の上方には、昇降部36がY方向に配設されている。昇降部36の内部にはシート貼付ヘッド37(シート貼付機構)がY方向にスライド自在に設けられている。
シート貼付ヘッド37は牽引機構39に結合されており、牽引機構39はシート貼付ヘッド移動機構44によってY方向に往復動する。シート貼付ヘッド移動機構44を駆動することにより、シート貼付ヘッド37は牽引機構39を介してY方向に移動し、シート供給部31から供給される積層シート38、すなわち粘着面を有するシート38aを粘着面を覆うカバーフィルム38bと積層した積層シート38から剥離された粘着性のシート38aを結晶化プレート9の上面に貼り付ける。シート供給部31はテープ状の積層シート38を供給するシート供給手段となっている。積層シート38から剥離されたカバーフィルム38bは、カバーフィルム回収部32に巻き取られ回収される。
昇降部36は昇降シャフト43A、43Bに結合されており、昇降シャフト43A、43Bはそれぞれ逆L字状の支持部40A、40Bによって昇降自在に支持され、下端部は連結プレート41に結合されている。昇降用アクチュエータ42によって連結プレート41を昇降させることにより、昇降部36は昇降する。昇降部36の中心線は結晶化プレート9への分注操作位置(図6に鎖線にて示す分注操作位置P参照)となっており、受渡位置(テーブル34上の左端位置)で結晶化プレート9を受け取ったプレート載置ステージ35が昇降部36の直下に移動した状態で、当該結晶化プレート9を対象とした液体分注機構28よる分注操作が行われる。
そして分注操作完了後のウェル9aに対して、シート貼付ヘッド37によるシート貼付が行われる。この貼付動作は、結晶化プレート9上の貼付け対象のウェル9aの位置までシート貼付ヘッド37が移動した状態で、昇降用アクチュエータ42によって昇降部36を下降させ、シート貼付ヘッド37を結晶化プレート9の上面に対して押し付けることによって行われる。以下、プレートシール機構30の各部詳細を説明する。
まずプレート載置ステージ移動機構33について、図6、図7、図8を参照して説明する。図8において、テーブル34は支柱45によって支持されており、テーブル34の上面には2条のX軸ガイド55がX方向に配設されている。X軸ガイド55にスライド自在に篏合したスライダ56は、プレート載置ステージ35の下面に固着されている。
図6、図7に示すように、テーブル34の上面には2つのブラケット53によって送りねじ52がX方向に軸支されており、送りねじ52は伝動機構51に内蔵されたベルト、プーリを介してX軸モータ50によって回転駆動される。送りねじ52はプレート載置ステージ35の下面に固着されたナット54に螺合しており、X軸モータ50を駆動することによりプレート載置ステージ35はX方向に移動する。そしてプレート載置ステージ35上に載置された結晶化プレート9のウェル列(ウェル9aのY方向の列)を昇降部36に設定された分注操作位置Pに位置合わせした状態で、当該ウェル9aに対する分注操作
が実行される。
次に図6、図7、図8を参照して、昇降部36について説明する。昇降部36は細長形状の2条の昇降ビーム60をカバー部材61とともにY方向に配設して構成されており、後述する昇降機構によって昇降する。図6においてはカバー部材61の図示を省略している。昇降ビーム60の上面にはY軸ガイド62が配設されており、Y軸ガイド62にはシート貼付ヘッド37および索引機構39がそれぞれスライダ62a、62bを介してスライド自在に装着されている(図11も参照)。
昇降部36は左端部を昇降プレート47Aによって、略中間位置を昇降プレート47Bによってそれぞれ支持されており、昇降プレート47A、昇降プレート47Bには垂直な昇降シャフト43A、昇降シャフト43Bがそれぞれ結合されている。ここで、昇降プレート47Bは2枚の部材であり、2条の昇降ビーム60はそれぞれの昇降プレート47Bに結合されている。これによりシート貼付ヘッド37および索引機構39がY方向に移動する際に、昇降プレート47Bが移動の妨げとならないようになっている。
昇降部36の昇降機構について説明する。昇降シャフト43A、昇降シャフト43Bは、逆L字形状の支持部40A、支持部40Bの上面に固着されたスライドガイド46によって上下方向にガイドされ、下端部は水平な連結プレート41に結合されている。連結プレート41は作業エリア4上に垂直姿勢で配設された昇降用アクチュエータ42によって昇降する。昇降用アクチュエータ42を駆動することにより、昇降部36全体が昇降する。
この昇降動作により、昇降部36内に装着されたシート貼付ヘッド37はプレート載置ステージ35上に載置された結晶化プレート9に対して押圧され、このとき昇降用アクチュエータ42へ供給されるエア圧を電空レギュレータによって制御することにより、シート貼付ヘッド37の押圧荷重を調整することが可能となっている。これにより、シート貼付動作における貼付圧力を適正値に設定できる。
次にシート貼付機構であるシート貼付ヘッド37の構造を、図9、図10、図11を参照して説明する。図11(a),(b)は、図9におけるA−A矢視、B−B矢視をそれぞれ示している。シート貼付ヘッド37は板状の本体部80を昇降部36の幅方向に2枚対向して配置し、シート案内部86,87、および前方カバー85、上方カバー84によって2枚の本体部80を結合した構成となっている。それぞれの本体部80はY軸ガイド62に沿って摺動するスライダ62aに固着されており、これによりシート貼付ヘッド37は昇降部36内でY方向にスライドする。
昇降部36の後部側(図10において左側)からシート貼付ヘッド37内に引き込まれた積層シート38は、シート案内部86,87の上面に沿って導かれる。本体部80の内側にはシートクランプレバー81が支持軸81aによって軸支されており、シートクランプレバー81は円柱形状のクランプ部材82を水平姿勢で保持している。シート案内部86、87上を導かれた積層シート38はクランプ部材82の下方に到達して、片面(導入状態において上面)に粘着面を有するシート38aとこの粘着面を覆っていたカバーフィルム38bとが剥離され、2枚に分離される。
シート38aはシート案内部87の前方に斜め下方に配列された2つの折り返しガイド89によってガイドされ、先端部が前方カバー85の内側を下向きに導かれる。この状態においては粘着面側(矢印a側)が前面に向いた姿勢となる。そして後述するようにこの先端部の粘着面側が、結晶化プレート9の側面に押し当てられ貼付けられる。
カバーフィルム38bはクランプ部材82の外周に沿って上方に折り返されることによりシート38aから剥離される。そして上方をカバーする上方カバー84の上面側に沿って後方に送られ、カバーフィルム回収部32(図2参照)に巻き取られる。カバーフィルム回収部32はカバーフィルム38bに対して所定の張力を付与するようになっており、剥離されたカバーフィルム38bを常に弛みのない状態に保つようになっている。クランプ部材82は、カバーフィルム38bを剥離するカバーフィルム剥離手段となっている。このカバーフィルム剥離手段は、シート貼付ヘッド37内に設けられており、シート38aの貼付位置の直前でカバーフィルム38bの剥離を行う構成となっている。これにより、粘着性を有するシート38aの取り扱いを容易に行うことができる。
シートクランプレバー81にはバネ部材83が結合されており、バネ部材83はシートクランプレバー81に対して、支持軸81aを支点とする時計廻りの付勢力を付与している。この付勢力により、シート貼付ヘッド37内に導かれた積層シート38は、シートクランプレバー81に固定支持されたクランプ部材82によってシート案内部87に対して押圧され、クランプされる。このクランプにより、積層シート38に付与される張力に抗して積層シート38を保持することができる。
すなわち、シートクランプレバー81、クランプ部材82,バネ部材83は、カバーフィルム38aが剥離される前の積層シート38をクランプするシートクランプ手段となっている。そしてこのシートクランプ手段は、カバーフィルム38b側から積層シート38を押さえるクランプ部材82を備えた構成となっており、前述のようにクランプ部材82は、カバーフィルム剥離手段を構成している。
図10(a)に示すように、シートクランプレバー81の前面にはクランプ解除ロッド77が延出しており、クランプ解除ロッド77によってシートクランプレバー81を左側に押圧することにより、クランプ部材82はバネ部材83の付勢力に抗してシート案内部87から離れる。これにより、クランプ部材82による積層シート38のクランプが解除され、シート貼付ヘッド37のY方向への移動が可能になる。
本体部80の下端部には、押圧ローラ88が2本X方向に配設されている。押圧ローラ88は、金属のローラ状部材の外周面をエラストマなどの弾性体で被覆した構成となっており、シート貼着面の多少の凹凸を吸収してシート38aを貼り付けることができるようになっている。
図10(b)は、折り返しガイド89によって下方に導かれたシート38aを押圧ローラ88によって結晶化プレート9の上面に押し付け、分注操作が完了したウェル9aを順次密封している状態を示している。シート38aは折り返しガイド89によってガイドされる過程において、粘着面をシート貼付ヘッド37の前進方向(一方向)に向けた後、下向きになるように折り返される(図14(b)も参照)。したがって、折り返しガイド89は、カバーフィルム38bが剥離されたシート38aの粘着面を、前述の前進方向に向けた後下向きになるように折り返すシート折り返し部となっている。
そして、押圧ローラ88は、シート折り返し部で折り返され粘着面が下向きになったシート38aを、上方から結晶化プレート9の上面に押し付けるシート押圧部となっており、シート貼付ヘッド37は、このシート押圧部を備えた構成となっている。図10(b)に示すように、分注操作後のウェル9aを順次シート38aによって密封する過程においては、シート貼付けによって密封されたウェル9aの前方の隣接するウェル9a、すなわち折り返しガイド89の前方のウェル9aに対して、液体分注機構28の分注ティップ29a、29c、分注ノズル29bによる分注操作が行われる。
次に図8、図11(b)を参照して牽引機構39およびシート貼付ヘッド移動機構44(シート貼付機構駆動手段)の構成を説明する。牽引機構39はシート貼付けヘッド37をY方向に牽引する機能を有し、シート貼付ヘッド移動機構44は牽引機構39に駆動力を与える機能を有する。
まずシート貼付ヘッド移動機構44について説明する。図8において、シート貼付ヘッド移動機構44は、Y軸モータ63、伝動機構64,Y軸送りねじ65およびナット66より構成される。支持部40CにはY軸モータ63が水平姿勢で配設されており、Y軸モータ63は、支持部40Cと支持部40Bによって両端を軸支されたY軸送りねじ65を、伝動機構64に内蔵されたベルト、プーリを介して回転駆動する。Y軸送りねじ65に螺合したナット66は垂直姿勢で配設された第1部材67に結合されている。
牽引機構39は、ナット66が結合された第1部材67、この第1部材67にガイドレール68a、スライダ68bを介して上下方向にスライド自在に結合された第2部材69、および第2部材69に結合された水平な細長形状の連結部材70より構成される。連結部材70の先端部はシート貼付ヘッド37に連結されている(図11(a)参照)。
上記構成においてY軸モータ63を駆動することにより、ナット66に結合された第1部材67がY方向に移動する。これにより、牽引機構39はY軸ガイド62に沿って往復動し、シート貼付ヘッド37は牽引機構39に牽引されてY方向に往復動する。このとき、第1部材67に対して第2部材69は上下方向にスライド自在となっていることから、昇降部36の昇降高さ位置にかかわらず、シート貼付ヘッド37を移動させることができるようになっている。
そしてこのY方向の移動により、シート貼付ヘッド37はプレート載置ステージ35に対してY方向に移動する。したがって、シート貼付ヘッド移動機構44は、シート貼付ヘッド37(シート貼付機構)をプレート載置ステージ35に対してY方向に移動させるシート貼付機構駆動手段となっている。昇降部36が下降してシート貼付ヘッド37の押圧ローラ88が結晶化プレート9に押し付けられた状態で、シート貼付ヘッド37がY方向の前進方向へ移動することにより、シート貼付ヘッド37によるシート貼付動作が行われる。
第2部材69は上端に水平部を有する逆L字形状であり、第2部材69の水平部の下端側にはクランプ解除用アクチュエータ75が装着されている。クランプ解除用アクチュエータ75のロッドにはプレート76が結合されており、プレート76には2本の細長形状のクランプ解除ロッド77が連結されている。
クランプ解除ロッド77は左側に延出し、連結部材70に沿って配設されたスライド軸受70aにガイドされて、シート貼付ヘッド37のシートクランプレバー81まで到達している。クランプ解除用アクチュエータ75を駆動してクランプ解除ロッド77をシートクランプレバー81に対して押圧することにより、前述のようにクランプ部材82による積層シート38のクランプが解除される。
次に図8を参照して、シート先端部貼付機構71(シート先端部貼付手段)について説明する。シート先端部貼付機構71は、新たな結晶化プレート9を分注シールの対象とする際に、シート38aの先端部を結晶化プレート9の側面に貼り付ける機能を有する。昇降プレート47Aの下面には、貼付用アクチュエータ72がロッドを右側に向けて水平に配設されており、貼付用アクチュエータ72のロッドに結合されたブラケット73の先端部には貼付用ローラ74が装着されている。シート先端部貼付け動作においては、シート貼付ヘッド37の前端部からシート38aが結晶化プレート9の側端部に下垂した状態で
、貼付用アクチュエータ72を駆動して貼付用ローラ74によってシート38aを結晶化プレート9に押し付ける。
次に図7、図8を参照してシート切断機構90(シート切断手段)について説明する。支持部40Bの上面の左端部(プレート載置ステージ35の側端部に近接する位置)には、切断用アクチュエータ91が水平方向に配設されている。切断用アクチュエータ91には切断刃92が装着されており、切断用アクチュエータ91を駆動することにより、切断刃92はX方向に水平往復動する。シート貼付ヘッド37がシート切断機構90の上方に位置した状態で、切断用アクチュエータ91を駆動することにより、シート貼付ヘッド37の下面側を周回するシールシート38aは、2つの押圧ローラ88の間で切断刃92によって切断される(図15(b)参照)。
次に図9、図11(b)を参照してシート終端部貼付機構95(シート終端部貼付手段)について説明する。第2部材69の下面には、クランプ解除用アクチュエータ75と隣接して、貼付用アクチュエータ96が水平方向に配設されている。貼付用アクチュエータ96のロッドには、ブラケット97が結合されており、ブラケット97から下方に延出した延出部97aの下端部には押圧ローラ98が装着されている。ブラケット97には、クランプ解除ロッド77を挿通させるための挿通孔97bが設けられている。
シート切断機構90によって切断されたシート38aの端部(シート終端部)が、結晶化プレート9の側面に位置した状態で、貼付用アクチュエータ96を駆動することにより、押圧ローラ98はシート38aを結晶化プレート9の側面に対して押し付ける。これにより、結晶化プレート9に貼り付けられたシート38aの終端部が結晶化プレート9の側面に貼り付けられて固着される。
プレートシール機構30の上記構成において、シート貼付ヘッド37,牽引機構39,シート貼付ヘッド移動機構44,シート先端部貼付け機構71,シート切断機構90,シート終端部貼付け機構95および昇降用アクチュエータ42は、プレートステージ35に載置された結晶化プレート9の上面にシート38aを貼り付けることにより、液体分注機構28による分注操作が完了したウェル9aを順次密封するシール手段を構成し、このシール手段は、積層シート38から剥離されたテープ状のシート38aを結晶化プレート9の上面に貼り付ける。
そしてシート貼付ヘッド37,牽引機構39,シート貼付ヘッド移動機構44は、テープ状のシート38aを結晶化プレート9の上面に押し付けながらこの結晶化プレート9の上面に沿ってY方向の進行方向(一方向)に相対的に移動するシート貼付手段を構成し、昇降用アクチュエータ42は、このシート貼付手段を結晶化プレート9の上面に押し付けるための荷重発生手段となっている。さらに換言すれば上述のシート貼付け手段は、プレート載置ステージ35に載置された結晶化プレート9の上面に沿って進行方向に相対的に前進しながら、カバーフィルム38bが剥離されたシート38aを結晶化プレート9の上面に貼り付けて、分注操作が完了したウェル9aを密封する。
シート切断機構90は、このシート貼付手段によってウェル列(一列に並んだウェル9a)の最後尾のウェル9aを密封する位置までシート38aの貼付けが完了した後、シート38aをまだ結晶化プレート9に貼り付けられていない箇所で切断するシート切断手段に該当し、シート終端部貼付け機構95は、切断されたシート38aの終端部を結晶化プレート9に貼り付けるシート終端部貼付け手段に該当し、さらにシート先端部貼付け機構71は、シート38aの先端部を結晶化プレート9に貼り付けるシート先端部貼付手段に該当する。
そして分注操作とシート貼付けとを同一作業工程で行う分注シール動作においては、液体分注機構28は、上述のシール手段によって結晶化プレート9の上面に貼り付けられたシート38aによって密封されたウェル9aと隣接するウェル9aであって、シート38aが貼り付けられていないウェル9aに対して分注操作を行うようになっている(図10(b)参照)。
次に、図12を参照して液体分注シール装置の制御系の構成を説明する。図12において、処理部100は、データ記憶部101に記憶された各種データに基づいて、プログラム記憶部102に記憶された各種処理プログラムを実行することにより、後述する各種動作および処理機能を実現する。ここでは、プログラム記憶部102には、液体分注シール動作プログラム102aおよび、分注操作プログラム102bが記憶されており、これらのプログラムを実行することにより、後述する液体分注シール動作が行われる。
データ記憶部101は、消耗品情報記憶部101a、分注操作情報記憶部101b、供給リザーバ情報記憶部101cおよび結晶化プレート情報記憶部101dを含んでいる。消耗品情報記憶部101aには、蛋白質結晶化プレート作製動作において使用される消耗品についての情報、すなわちストック部5における結晶化プレート9やティップラック10,11およびプレートシール機構30における積層シート38のストック情報を記憶する。
このストック情報には、これらがストックされている位置や装置稼動中の各タイミングにおけるストック残量などが含まれる。ロボットハンド機構20は、このストック情報に基づき、各消耗品をストック部5から取り出す。ストック残量は、予めティーチング入力された初期値から分注動作毎に消費量を減算することによりリアルタイムで更新される。このストック残量を常に監視することにより、消耗品切れによる装置停止を防止または事前に報知できるようになっている。
分注操作情報記憶部101bは、ホストコンピュータ(図示省略)からダウンロードされる分注操作情報、すなわち液体分注機構28によって結晶化プレート9の所定のウェル9aに所定の液体を所定量だけ分注するために必要な情報を記憶する。この分注操作情報は、結晶化プレート9におけるウェル9aの配列位置を示すウェル情報と、蛋白質溶液14aと結晶化溶液13aとの組み合わせ(どの種類の蛋白質溶液14aと結晶化溶液13aとを同一ウェル内に分注するか)を示す情報が含まれる。
供給リザーバ情報記憶部101cは、供給リザーバ情報、すなわち蛋白質溶液供給リザーバ14,結晶化溶液供給リザーバ13の作業エリア4における位置や、これらのリザーバの各ウェルに貯溜されている溶液の種類を示す情報を記憶する。前述の分注操作情報およびこの供給リザーバ情報に基づいて分注部25が動作することにより、所定の溶液を液体分注機構28によって正しく取り出すことができる。
結晶化プレート情報記憶部101dは、分注操作後の各結晶化プレート9について、結晶化プレートと分注操作情報を関連づけた結晶化プレート情報、すなわちIDコードによって識別・特定される個別の結晶化プレート9の各ウェル9aについて、同一ウェル内に分注された蛋白質溶液14aと結晶化溶液13aとの組み合わせを特定可能な情報を記憶する。これにより、分注操作後の蛋白質結晶化観察において、蛋白質結晶検出結果と結晶化条件(蛋白質溶液14aと結晶化溶液13aとの組み合わせ)とを正しく符合させることができる。
また処理部100は、分注操作プログラム102a、液体分注シール動作プログラム102bに従って、液体分注機構28、プレートシール機構30、ロボットハンド機構20
,ストック部5の動作を制御する。操作・入力部103は、タッチキーなどの入力手段によって処理部100に対して操作指令やデータ入力を行う。表示部104はディスプレイ装置であり、操作・入力部103による操作入力時の案内画面の表示や各種の報知を行う。
次に図13のフローに沿って図14、図15を参照しながら液体分注シール動作について説明する。この分注動作は、結晶化プレート9を対象としてウェル9aへの分注操作と分注操作後のウェル9aのシール処理とを同一作業工程でおこなうものである。
図13において、まず結晶化プレート9をプレート載置ステージ35へ移送し(ST1)、プレート載置ステージ35に載置する。次いで分注操作の対象となるウェル列9c(図16参照)を分注操作位置P(図6参照)に位置決めする(ST2)。そしてシート先端部を結晶化プレート9の後側の側面に貼り付ける(ST3)。
すなわち図14(a)に示すように、押圧ローラ88の下面を結晶化プレート9の高さレベルに合わせた状態のシート貼付ヘッド37を結晶化プレート9の後側まで移動させ、折り返しガイド89から下方に垂下したシート38aを結晶化プレート9の側面近傍に位置させる。そして図14(b)に示すように貼付用アクチュエータ72を駆動して貼付用ローラ74によってシート38aを結晶化プレート9に押し付けて貼り付ける。これにより、シート38aの先端部が固定され、シートクランプの解除が可能な状態となる。
次いでクランプ解除ロッド77によってシートクランプレバー81を押圧することにより、クランプ部材82をシート案内部87から持ち上げシートクランプを解除する(ST4)。これにより、シート38aを結晶化プレート9の上面に貼り付けることが可能な状態となる。そしてこの後、ウェル列の先頭のウェル9aに対して液体分注機構28により分注操作を実行し(ST5)、この後、同一ウェル列の各ウェルに対する分注操作とシート38aの貼付とを交互に反復して実行する。
すなわちウェル9aへの分注操作が完了する度に、最後尾のウェル9aに対する分注操作は完了しているか否かを判断し(ST6)、未完了であれば図14(c)に示すように、シート貼付ヘッド37を前進させて、押圧ローラ88によってシート38aを結晶化プレート9の上面に押し付けて、分注済みのウェル9aを密封する。
次いで図14(d)に示すようにシート貼付ヘッド37を、隣接するウェル9aに対する分注操作を妨げない位置まで後退させて待機し(ST8)、密封されたウェル9aに隣接するウェル9aに対して分注操作を実行する(ST9)。そして(ST6)に戻って分注操作とシート貼付を反復し、全てのウェル9aに対する分注操作が完了したならば、図15(a)に示すように、シート貼付ヘッド37をシート切断位置まで前進させる(ST10)。
次いで図15(b)に示すようにクランプ解除ロッド77を後退させてクランプ部材82によって積層シート38を押さえつけてシートクランプし(ST11)、切断用アクチュエータ91によって切断刃92を駆動してシート38aを切断する(ST12)。このときの切断位置は、図15(c)に示すように、シート38aが結晶化プレート9の上縁部から先端側の側面へ貼り付け代分だけ垂下するような位置に設定されている。
そして図15(d)に示すように、押圧ローラ98を結晶化プレート9の側面に押圧した状態で昇降部36を昇降させることにより、押圧ローラ98を結晶化プレート9の側面に沿って上下動させ、シート38aのシート終端部部を結晶化プレート9の側面に貼り付ける(ST13)。これにより、プレート載置ステージ35に載置された結晶化プレート
9において分注対象となるウェル列9cを対象とした液体分注シール動作、すなわち分注操作とシール貼付けが完了する。
この後、分注操作の対象となるウェル列が残っているか否かを判断し(ST14)、残りがある場合には(ST2)に戻って当該ウェル列を対象として同様の処理を反復実行する。そして残りが無い場合には、プレート載置ステージ35を受渡位置へ移動させ(ST15)、結晶化プレート9をロボットハンド機構20によって搬出する(ST16)。これにより、1つの結晶化プレート9を対象とした液体分注シール動作を終了する。
すなわち上述の液体分注シール方法は、結晶化プレート9をプレート載置ステージ35に載置するプレート載置工程と、プレート載置ステージ35に載置された結晶化プレート9の複数のウェル9aに対して液体分注機構28により所定の分注操作を行う分注工程と、プレート載置ステージ35に載置された結晶化プレート9の上面にシート38aを貼り付けて分注操作が完了したウェル9aを密封するシール工程とを含む形態となっている。そしてこの分注工程においては、シール工程で密封されたウェル9aに隣接するウェル9aであって、密封されていないウェル9aに対して分注操作を行うようにしている。
すなわち、このシール工程は、シート貼付ヘッド37でシート38aを結晶化プレート9の上面に押し付けながらこのシート貼付ヘッド37を一列に並んだ複数のウェル9aの先頭から最後尾に向かって相対的に移動させて行い、さらに最後尾のウェル9aに対するシール工程が完了した後にシート38aをまだ結晶化プレート9に貼付けられていない箇所で切断するシート切断工程と、切断されたシート38aの終端部を結晶化プレート9に貼り付けるシート終端部貼付工程とを含む形態となっており、さらに先頭のウェル9aを対象とするシール工程を行う前に、シート38aの先端部を結晶化プレート9に貼り付けるシート先端部貼付工程を行うようにしている。
また上述の液体分注シール方法を換言すれば、結晶化プレート9に行列配置で複数形成されたウェル9aに対して分注操作を行い、シート貼付手段の折り返し部を結晶化プレート9の上面に沿って相対的に前進させて、テープ状のシート38aの粘着面をシート折り返し部によって下向きにして結晶化プレート9の上面に押し付けて貼り付け、分注操作が完了したウェル9aをシート38aで密封していく液体分注シール方法であって、分注操作が完了したウェル9aを密封する位置まで折り返しガイド89(シート折り返し部)を結晶化プレート9に対して相対的に前進させるステップと、密封されたウェル9aに隣接するウェル9aの上方から折り返しガイド89を退避させるためにこの折り返しガイド89を相対的に後退させるステップと、隣接するウェル9aに対して分注操作を行うステップとを含む形態となっている。
上記説明したように、本実施の形態に示す液体分注シール方法においては、プレート載置ステージ35に載置された結晶化プレート9の複数のウェル9aに対して順次所定の分注操作を行う分注操作において、分注操作が完了したウェル9aをシール手段によって順次密封するようにしている。これにより、液体分注後のウェル9aをタイムラグなく密封して、液体分注後のウェル9aが開放状態のまま放置される事態を排除し、ウェル9a内の環境変動を防止することができる。
なお上記実施の形態のシール工程においては、1つのウェル9aの分注が完了する度に、分注済みのウェル9aに対してシート38aを貼り付ける例を示しているが、必ずしもこのパターンに従ってシート貼付けを行う必要はなく、適宜設定される複数のウェルを対象とした分注操作を終える度に、これら複数のウェルのすべてまたはいくつかのウェルを対象としてシート貼付けを行うようにしてもよい。すなわち、一つの結晶化プレート9のすべてのウェル9aに対する分注工程が完了する前に、分注工程が完了した少なくとも一
つのウェル9aに対して、テープ状のシート38aを結晶化プレート9の上面に貼付けてウェル9aを密封する。
また上記実施の形態においては、図16(a)に示すように結晶化プレート9のウェル列9cごとにシート38aを貼り付ける動作例を示しているが、図16(b)に示すように複数(ここでは2列)のウェル列9cを対象としてシート38aを貼り付けるようにしてもよく、また図16(c)に示すように結晶化プレート9の全てのウェル列9cを対象としてシート38a貼り付けるようにしてもよい。