JP3685011B2 - 自動車の側突用エアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の側面衝突の際に、シートに設けたエアバッグを膨張させることにより、車体側壁から受ける衝撃荷重を緩和して乗員を保護することができる自動車の側突用エアバッグ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の側突用エアバッグ装置としては、車両の側突時に、シートバックからエアバッグを前方へ展開させ、該エアバッグにより乗員を保護するようになっている(類似技術として特開平10−16698号公報参照)。
【0003】
この種のエアバッグ装置は、シートバックの車外側端部に、折りたたんだ状態のエアバッグが設けられ、自動車の側突時に、このエアバッグを膨張させる。エアバッグの前方には、表皮の縫製部が位置しており、エアバッグの膨張力により、その縫製部から表皮が複雑に開裂してエアバッグを前方へ展開させるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、エアバッグ膨張時に表皮を縫製部から勢い良く開裂させるために、縫製部だけでなく表皮自体も複雑に裂けてしまう。そのため、一度エアバッグを作動させると、シートバックの表皮全体を交換しなければならず、修理コストの増大を招いている。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、表皮を開裂させずに、乗員を確実を保護することができる自動車の側突用エアバッグ装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決する為の手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、表皮により覆われたシートの端部内に、エアバッグを折りたたんだ状態で収納し、衝突時に該エアバッグを膨張可能とした自動車の側突用エアバッグ装置であって、前記シートの表皮の表面側に、スリット開口を有する袋状にしてシートの内部側へ延長させ且つエアバッグの膨張に応じてシートの外側に送り出される延長部を設け、表皮のエアバッグに対応する部分を非開裂状態でエアバッグと共に車室内側部に沿って膨張可能としたことを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、エアバッグの膨張に応じて表皮の延長部がシートの外側に移動し、表皮のエアバッグに対応する部分が、非開裂状態でエアバッグと共に車室内側部に沿って膨張して乗員を保護するため、表皮が複雑に裂けることはなく、一度エアバッグを作動させても、簡単な補修で表皮を再利用することができ、修理コストを低減することができる。
【0009】
また、延長部がシートの内部側へ延長した袋状のため、通常は延長部が外部から見えず、見映えの点で優れる。
【0010】
請求項2記載の発明は、延長部がシートのメイン部とメインサイド部とを覆う各表皮の縫製部の途中に設けられている。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、延長部が表皮の縫製部の途中に設けられているため、更に延長部が目立たず、見映えの点で優れる。
【0012】
請求項3記載の発明は、延長部の互いに対向する面同士の一部を、エアバッグの膨張力で破断可能な強度の縫合部により縫合した。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、延長部に縫合部を設けたため、その縫合強度を調整することで、エアバッグの前方への膨張スピードを調節することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、縫合部が延長部のスリット開口から底部にかけて複数設定されている。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、縫合部が延長部の開口から底部にかけて複数設定されているため、エアバッグの内圧が急激に減少せず、段階的に低下するため、乗員を保護する上において更に好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な一実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。図1中、符号1は、左側フロントシートのシートバックを示すものであり、このシートバック1は、主に、シートフレーム2と、パッド3と、表皮4から形成されている。シートバック1の車外側(左側)の端部は、表皮4のうちの、メインサイド部4aとメイン部4bにより覆われており、その境界には上下に延びる縫製部H1が設けられている。
【0017】
この縫製部H1の途中には、延長部5がシートバック1の内部側に向けて設けられている。すなわち、縫製部H1の途中に形成されたスリット開口6に、内部側から長方形状の袋体7の入口を縫合して延長部5を形成している。パッド3には、この袋体7を収納するための縦溝8(図3参照)が開口形成されている。この袋体7は、図2に示すように、表皮4と同じ材質の布を2つ折りにして、その上下を縫製部H2により閉じるよう縫製したものである。
【0018】
そして、その袋体7の入口を別の縫製部H3により、スリット開口6の周縁に縫製したものである。袋体7には、その入口から底部にかけて第1縫合部h1、第2縫合部h2、第3縫合部h3が順に形成されている。第1〜第3縫合部h1、h2、h3は、袋体7の互いに対向する面同士を上下方向に縫合したものである。この第1〜第3縫合部h1、h2、h3は、袋体7の他の縫製部H1、H2、H3と異なり、強度の低い糸で縫合されたもので、後述するエアバッグ9の膨張力により破断可能な強度で縫合されている。この延長部5は、表皮4のスリット開口6から内側に延在されてなる構造のため、通常は外部から見えず、見映えの点で優れる。しかも、スリット開口6が縫製部H1の途中に設けられているため、更に延長部5が目立たず、見映えの点で優れる。
【0019】
シートバック1のメインサイド部におけるパッド3には、内部に空間が形成され、シートフレーム2はその空間内に位置している。シートフレーム2には、上下に3つのボルト孔10が形成されていると共に、このボルト孔10の上下には、それぞれ四角径の切欠11が形成されている。3つのボルト孔10には、インフレータ12に設けられた3本のボルト13が外側から挿入される。
【0020】
エアバッグ9は、このインフレータ12及びシートフレーム2を横から包み込むように取付けられる。エアバッグ9も、図5に示すように、2つ折りした強度の高い布の上下を縫製部H4により閉じて袋状にしている。このエアバッグ9の開口における端部14、15は、長手方向で位置がずれており、それぞれ3つの取付孔16が形成されている。更に、長い方の端部14側には、上下にベルト部17が形成され、その先端にも取付孔16が形成されている。そして、このエアバッグ9は、先端側から巻き取るように折りたたんだ状態にして、長い方の端部14をインフレータ12側から巻き付け、シートフレーム2の内側に回し込み、その取付孔16をそれぞれ対応するボルト13に通す。
【0021】
また、短い方の端部15は、シートフレーム2の内側から前記長い方の端部14に重ねて、その取付孔16をボルト13に通す。次に、長い方向の端部14の上下に形成されているベルト部17は、インフレータ12の上部及び下部を越えてシートフレーム2の切欠11内に挿入され、内側に折り曲げられて、その取付孔16を一番上と下のボルト13にそれぞれ通す。そして、最後にボルト13にナット18を取付け、両方の端部14、15と、ベルト部17を重ねた状態で固定する。このようにベルト部17を切欠11から折り返して、両方の端部14、15に重ね合わせているため、エアバッグ9の取付部の気密性が高く、また取付強度も高い。また、エアバッグ9を、シートフレーム2及びインフレータ12に直接取付けることができるため、構造が簡略で、組立が容易である。そして、部品点数も少なく、コストの削減をすることもできる。
【0022】
次に、図6〜図9を用いて、エアバッグ9が展開する状態を説明する。車両が側面衝突を起こすと、その状態をセンサーが感知し、インフレータ12からエアバッグ9内に高圧のガスが噴出される。このガスによりエアバッグ9が膨張をはじめる。そして、膨張するエアバッグ9が表皮4の内側を強く押す(図6参照)。
【0023】
エアバッグ9が膨張すると、表皮4全体が伸びようとしてテンションが加わるため、そのテンションにより、延長部5の最も表面側に位置する第1縫合部h1が破断する(図7参照)。第1縫合部h1が破断すると、延長部5の一部が表皮4側に送り出され、表皮4に弛み(余裕)が生じる。従って、その分、エアバッグ9により押されている部分の表皮4がエアバッグ9ごと、前側、つまり車室内側部に沿って前側へ膨張する。次に、第2縫合部h2が破断し(図8参照)、その後、第3縫合部h3が順次破断するため、表皮4に弛み(余裕)が次々と生じ、表皮4のエアバッグ9に対応する部分が、エアバッグ9と共に、非開裂状態で、前側へ膨張して、乗員を側面衝突から保護することができる。
【0024】
このように、表皮4のエアバッグ9に対応する部分が、非開裂状態でエアバッグ9と共に前方に膨張するため、表皮4が複雑に裂けることはなく、一度エアバッグ9を作動させても、簡単な補修で表皮を再利用することができ、修理コストを低減することができる。
【0025】
また、延長部に設けた第1〜第3縫合部h1、h2、h3を破断することにより、エアバッグ9の膨張を許容しているため、この第1〜第3縫合部h1、h2、h3の縫合強度を調整することで、エアバッグ9の前方への膨張スピードを調節することができる。
【0026】
そして、この実施形態のエアバッグ9を膨張させた場合における内圧の変化を図10に示した。図10の範囲Aは、第1縫合部h1が破断するまでを示し、範囲Bは第1縫合部h1が破断した後を示し、範囲Cは第2縫合部h2が破断した後を示し、範囲Dは第3縫合部h3が破断した後を示している。第1〜第3縫合部h1、h2、h3を次々に破断させることにより、エアバッグ9が膨張する構造にしたため、従来のように一気に表皮4を開裂させてエアバッグ9を膨張させてしまう場合に比べて、エアバッグ9の内圧が急激に減少せずに段階的に低下するため、乗員を保護する上において更に好ましい。
【0027】
尚、以上の実施形態では、延長部5をメイン部とメインサイド部の境界の縫製部H1に設ける例を示したが、これに限定されず、表皮4に弛み(余裕)を生じさせて、表皮4のエアバッグ9に対応する部分を、エアバッグ9と共に膨張させ得る部位であれば、どこでも良い。延長部5の上下方向サイズ及び奥行サイズも同様で、表皮4のエアバッグ9に対応する部分をエアバッグ9と共に膨張させ得るサイズであれば良い。
【0028】
また、エアバッグ9をシートバック1の側端部に設置された例を示したが、これに限らず、シートクッションの側端部にも適用できる。
【0029】
また、乗員と車室内側部との間に、エアバッグ9を膨張させる例を示したが、これに限らず、エアバッグ9をシートの車室中央側端部に設置して左右乗員の間に膨張させるようにしても良い。
【0030】
また、延長部5としては、側面視で長方形状をしたものを例にしたが、これに限定されず、台形状でも、半円状でも、山形状でも良く、表皮4への入力荷重を分散し、応力集中を抑制することが可能で、表皮4に必要な弛み(余裕)を生じさせ得るものであればどのような形状でも良い。
【0031】
更に、延長部5は折りたたんだ布を縫製して袋状にしたが、接着による接合により袋状にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態を示すフロントシートの斜視図。
【図2】 袋体を示す斜視図。
【図3】 フロントシートの左側端部を示す断面図。
【図4】 エアバッグの取付構造を示すシートフレーム周辺の分解斜視図。
【図5】 エアバッグの折り畳み過程を示す側面図。
【図6】 エアバッグが表皮の内側いっぱいに膨張した状態を示す断面図。
【図7】 第1縫合部が破断した状態を示す断面図。
【図8】 第2縫合部が破断した状態を示す断面図。
【図9】 第3縫合部が破断した状態を示す断面図。
【図10】 エアバッグ内圧の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
1 シートバック(シート)
2 シートフレーム
4 表皮
4a メインサイド部
4b メイン部
5 延長部
6 スリット開口
7 袋体
8 縦溝
9 エアバッグ
H1〜H4 縫製部
h1〜h3 縫合部
Claims (4)
- 表皮により覆われたシートの端部内に、エアバッグを折りたたんだ状態で収納し、衝突時に該エアバッグを膨張可能とした自動車の側突用エアバッグ装置であって、
前記シートの表皮の表面側に、スリット開口を有する袋状にしてシートの内部側へ延長させ且つエアバッグの膨張に応じてシートの外側に送り出される延長部を設け、表皮のエアバッグに対応する部分を非開裂状態でエアバッグと共に車室内側部に沿って膨張可能としたことを特徴とする自動車の側突用エアバッグ装置。 - 請求項1記載の自動車の側突用エアバッグ装置であって、
延長部が、シートのメイン部とメインサイド部とを覆う各表皮の縫製部の途中に設けられていることを特徴とする自動車の側突用エアバッグ装置。 - 請求項1又は請求項2記載の側突用エアバッグ装置であって、
延長部の互いに対向する面同士の一部を、エアバッグの膨張力で破断可能な強度の縫合部により縫合したことを特徴とする自動車の側突用エアバッグ装置。 - 請求項3記載の自動車の側突用エアバッグ装置であって、
縫合部が、延長部のスリット開口から底部にかけて複数設定されていることを特徴とする自動車の側突用エアバッグ装置。
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