JP3683910B2 - 金属インプラントおよび金属インプラントを処理する方法 - Google Patents

金属インプラントおよび金属インプラントを処理する方法 Download PDF

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Description

発明の技術分野
本出願は望ましくはチタンまたはその合金から製造される生体適合性の金属の骨インプラントに関しまた生体適合性を助長するために金属インプラントを処理する方法に関する。
発明の背景
骨組織に金属インプラントをインプラントするのに普通用いられる方法は、第1回の手術においてインプラントを骨組織に外科的に入れ、次いでインプラントが骨組織に十分に合着するために骨組織がインプラントの表面上に生長するように三ケ月またはそれ以上の癒着期間にわたってインプラントが骨組織内で無負荷でそして動かないように保たれインプラントの個所を覆う柔軟な組織の切り口がインプラント上で癒着することからなる段階と、第2回の手術においてインプラントを覆う柔軟な組織を切開しそしてインプラントに機能部品を取り付けることからなる段階との2段階の手続きである。この2段階手続きは歯科インプラントに関してしばしば用いられているが、その理由の一つはこの手続きが口腔からのインプラント個所への感染の危険を最小にするからである。いくつかの整形外科的応用においては、ほとんどの整形外科用インプラントが柔軟組織に貫通しないであろうから上記の2段階外科手術は不必要であろう。しかしながら、外科手術後の数週間および数ケ月の間にインプラントが動くと骨組織にインプラントが最終的に合着するのを危うくするので、より長い癒着期間がやはり必要であると考えられる。
上記の手続きは例えば、スウェーデンのストックホルムのAlmquist & Wiksell International刊の
Figure 0003683910
らの「Osseointegrated Implants in the Treatment of the Edentulous Jaw,Experience from a 10-year period」中に述べられている。
しかしながらインプラントに負荷がかからないということは、インプラントの機能部品をインプラントに合着することができずそして(または)三ケ月またはそれ以上の癒着期間にわたって使用できないことを意味する。このことによる不便からみると、上述した第1段階に必要な時間を最少にしそしてある場合には、例えばある種の整形外科上の応用においては、上記の第1段階を無くしそして全部のインプラント手続きを1回の手術で実施するのが好ましい。
本発明の目的は、上述した外科手術後の癒着期間が減少するように、骨組織への合着の速さが改善されているインプラントを提供することである。
骨インプラントに使用する金属または合金のいくつかは、骨組織との強力な結合、つまり骨組織そのものと同様に強い、時にはそれ以上に強くさえあるであろう結合を生むことができる。この種の金属インプラント材料の最も注目すべき例は、チタンおよびチタン合金であり、これらのインプラントに関する特性は大体1950年から知られている。金属と骨組織との間のこの結合は
Figure 0003683910
らによって「骨一体化」と称されてきた。
チタンと骨組織とのこの結合は比較的強力であるが、いくつかの応用においては金属と骨組織との間の結合を増強するのが好ましい。
インプラントの取り付けを一層良くするためにチタンからつくられるインプラントを処理する方法は今日までにいくつかある。これらのいくつかは、例えば、機械的な把持を一層良くしそして合着面積を増加するために、例えばプラズマ溶射、ブラスト処理または食刻によってインプラント表面の凹凸を比較的大きくすることにより、インプラントの表面状態を変えることからなる。把持は改善されるであろうが、骨組織が表面の凹凸内に生長せねばならないであろうから、骨一体化過程に必要な時間は一層長いであろう。
他の方法は、インプラント表面の化学的特性の変更を伴う。例えばこのような方法の一つは、骨組織の再生を刺激するために特にインプラントの表面にハイドロオキシアパタイトのようなセラミックの層を付着することからなる。しかしながらセラミックコーティングは脆くまたインプラント表面から薄く剥がれあるいは割れて剥がれ、一方そのためにインプラントが最終的に機能を失うであろう。
U.S. 4,330,891は、直径がある範囲内にあるマイクロ点食された表面をもつ要素を用意することにより、この担持要素の受容に関する特性が改善され、またこの要素の生理学的性質のためこの要素への健康的な内方生長の持続性が本質的に改善されるという点からみて、上記した事柄のそれぞれを組み合わせたものであると恐らくいえよう。
本発明の別な目的は骨組織との一層強力な結合を達成するインプラントを提供することである。
発明の概要
外科手術用の金属インプラントを弗化水素酸水溶液で処理することにより所望の金属インプラントを得るこどかできるのが判った。
【図面の簡単な説明】
図1は0.2%のHFで処理されたインプラント表面の押出し力および弗素酸素含有率を処理時間の関数として例示する図である。
図2は0.2%のHFで30秒間処理したインプラント表面の倍率10,000の走査電子顕微鏡写真である。
図3は図2のインプラント表面を倍率52,000で示す。
図4は0.2%のHFで90秒間処理したインプラント表面の倍率10,000の走査電子顕微鏡写真である。
図5は図4のインプラント表面を倍率52,000で示す。
図6は未処理のインプラント表面の倍率52,000の走査電子顕微鏡写真である。
図7〜図9は、カルシウム沈澱試験による種々の処理区の効果を示す図である。
発明の詳述
以上のことから本発明は第1の局面において、pHが1.6〜3である弗化水素酸の水溶液で金属インプラントを処理することからなる金属インプラントの処理方法を提供する。
濃度の点から別な形で述べると、本発明は3.0%までの弗化水素酸の水溶液で金属インプラントを処理することからなる金属インプラントの処理方法を提供する。
金属インプラントは商業的に純粋なチタンまたはチタン合金からつくられるのが好ましい。インプラントは標準的なもの、ブラストされたものまたは別なものであってよい。
弗化水素酸の濃度は0.01〜3.0%、例えば0.1〜2.0%であるのが好ましい。弗化水素酸の濃度は約0.2〜約2.0%、特に0.2〜0.5%そして最も望ましくは約0.2%であるのが最も好ましい。
本発明の処理は好適な任意の長さの時間にわたって実施できる。処理は10秒間から6時間のように少なくとも10秒、例えば10〜50秒間、または30秒間、60秒間または2分間のように10秒間〜2分間実施するのが好ましい。
この処理は好適な任意の方法で、例えばインプラントを処理溶液中にある時間にわたって撹拌しつつまたは撹拌せずに浸漬することにより実施できる。様々な温度が用いられてよく、温度および時間のようなパラメータは、処理溶液の濃度および他のプロセスパラメータに応じて選択できる。処理は標準圧力で実施されるのが好都合であるが、所望ならば高い圧力が用いられてよい。処理はほぼ標準の温度および圧力で実施するのが好ましい。
好ましい態様において本発明は、弗化水素酸の0.1〜2.0%水溶液で金属インプラントを室温で3分間まで処理することからなる金属インプラントを処理する方法を提供する。
本発明の処理溶液は濃HFを蒸溜水で稀釈することにより簡便に製造できる。
処理に先立ってインプラント材料は技術上周知の標準的な技術により清浄化できる。
処理の後、インプラント材料は蒸溜水中で洗浄されそして無菌状態におかれるのがよい。
本発明に従って処理されるインプラントは、後記する「押出し」試験で例証されるように骨との強力な接触を示し、また海綿状体の網状の領域での骨との強力な接触を示す。海綿状領域においてはインプラント表面上に新たな骨が形成されそしてこの骨がこの領域にあるインプラントを多少覆うであろう。このような反応は未処理の対照群では認められない。骨の接触の程度によって、海綿状の領域での骨の生長が示される。
従ってここに規定する方法はインプラントの生体適合性(特に骨組織の合着の速度、および強度または結合)を改善するためにインプラント表面に好都合に作用する。本発明者は、本明細書において理論上の表現の仕方によって束縛されるのを好まないが、生体適合性の改善はインプラントの表面上に弗化物が保持されることに少なくとも部分的によるものと考えられる。弗化水素酸以外による処理であって弗化物イオンを供与する処理は、それなりに金属インプラントの生体適合性にある程度の影響を及ぼすことが期待できよう。弗化ナトリウムでの処理は、本発明者の先行する出願WO 94/13334から知られている。従って本発明の第2の局面においては、ナトリウムおよびナトリウムイオンを含まず、3%までの濃度で弗化物イオンを含有する水溶でインプラントを処理することからなる金属インプラントの処理方法が提供される。処理上の好ましいパラメータは、本明細書に記載する弗化水素酸処理で選好されるパラメータに相当する。
本発明の処理においてはインプラント表面が著しく食刻されないのが好ましい。インプラント表面が実質的に食刻されないのが最も好ましい。
本発明の方法により処理されるインプラントもまた本発明において提供される。従って第3の局面において本発明は本明細書に記載する方法に従って弗化水素酸の水溶液で処理されている金属インプラントを提供する。
上述したように本発明の有利な作用は、処理されたインプラントの表面上に弗化物が保持されることに関係すると考えられる。ここに述べる処理はインプラントの表面特性に影響を及ぼす表面処理であるが、現段階においては、本発明により所望の特性が与えられるということ以外には、処理されるインプラントの表面の特徴を規定することができない。
従って第4の局面において本発明は、本明細書に記載する方法によって弗化水素酸の水溶液で処理されているインプラントの表面と同等である表面を有する金属インプラントを提供する。
本発明の処理の効果につき記述する別な方法は、燐酸カルシウム沈澱の誘導による方法である。この方法はJournal of Dental Research 1991年10月所收のDamen,Ten Cate,Ellingsenの「Induction of Calcium Precipitation by Titanium Dioxide」中に記載のインビトロテストである。この方法においては燐酸カルシウムの飽和溶液にインプラントが浸漬される。表面によるが、インプラントへのカルシウムの沈澱が起きる。Ca++の濃度がモニターされそして沈澱が起きるまでの時間遅れ(誘導時間)が測定される。この試験の背後にある理論的根拠は、インプラント表面のカルシウムイオンとの親和性とインプラント表面の骨組織内での生体適合性との間に相関があるという仮定である。本発明に従って処理されるインプラントはこの試験においてカルシウムイオンへの親和性を示す。従って第4の局面において本発明は、燐酸カルシウムの飽和溶液からカルシウムイオンを沈澱する、本発明に従って弗化水素酸で処理されたインプラントを提供する。
以下の実施例は本発明を実施する。
実施例
実施例 1
長さが5mmで、一端の直径が3mmそして他端の直径が2mmである円錐状の概形をとる商業的に純粋な(c.p,)チタンの手術用インプラントを「Maximat super 11」(商標)旋盤を使用して機械加工することにより7本用意した。インプラントの円錐の側面つまりインプラントの骨内におかれるべき部分の面積は以上から39mm2である。
各インプラントを以下の段階からから周知の清浄化方法に従って清浄にした。
1.超音波処理を併用しつつトリクロロエチレンで15分間処理する。
2.純エタノール中で10秒間すすぎ洗いする。
3.超音波処理を併用しつつトリクロロエチレンで各10分間連続的に3回処理する。
清浄にした各インプラントをMediplast(商標)無菌袋内に包装し、そしてCitomat 162(商標)(LIC Company)内で120℃で30分間オートクレーブ処理した。
濃厚HFを蒸溜水で単に稀釈して0.2%の溶液をつくることによりHF溶液を調製した。浴のpHは2.1であった。
上記したのと同様に用意され、清浄にされ、無菌包装されそしてオートクレーブ処理された7本のインプラントを無菌包装から取り出し、HF処理浴内に入れそして浴内で2分間放置した。その後、各インプラントを蒸溜水浴中で3回洗浄した。各洗浄の時間は30秒であった。室温で放置して乾燥した後、各インプラントをMediplast(商標)無菌袋内に移し外科的インプラント処置に備えた。
インプラントの研究
試験動物としてチンチラウサギを使用した。このウサギの雌雄分布は無作為であるが、研究の開始時にはすべて2.5kgの体重を有した。1.0mg/kgのフルアノゾニウムと0.02mg/kgのフェンタニリウム(Hypnorm,Jansen Pharmaceuticals,ベルキー)との組み合わせを用いて注射することによって各々の動物を鎮静し、そしてキシロカイン/アドレナリン(AB Astra)で局部麻酔した。円錐状のインプラントがきっちりとはまる凹みを設けるように意図された標準化されたさん孔具を使用して各々のウサギの右の尺骨に二つの凹みをさん孔した。他の金属の影響を避けるためにチタンのピンセットを使用して、処理したインプラントと非処理のインプラントとを各々のウサギの凹みに入れ、そして60日間放置した。
60日後、ペントバルビトールナトリウムを注射してウサギを犠牲にし、そして尺骨を取り出しそして無菌の生理的食塩水中に入れ、同じ日に行う「押出し」試験に備えた。
各インプラントを骨から引き離すのに必要な力を測定するために、支持ジグと0〜200Nの負荷範囲に調整されたラムを特に有するInstronモデル1121引張試験機(Instron、英国)を使用した。支持ジグを装着するために、インプラントの太い方の端部を取り巻く骨の中にある試験されるべき試験片中にミリング用軌跡(millingtracks)を作り、そして試験片を支持ジグ上においた。ラムを毎分1ミリの速さで降下し、そしてインプラントを骨から引き離すのに必要な力を記録した。
記録されたこの力によりインプラントと骨とを連結する力が直接に評価され、必要な力がより大きいほど連結はより強力である。
結果を表1に記録する。
Figure 0003683910
本発明に従って処理されたインプラントと骨との連結の強さが著しくより大きいことが上記から明らかである。
組織学的検査により、実施例1のインプラントがそれと緊密に接触する新たに形成された骨の厚い層によって尺骨の海綿状体においてさえ包囲されていることが実証された。対照的に、非処理のインプラントすなわち比較例のインプラントは海綿状の領域において薄い骨の層によって部分的に覆われるのみであった。
実施例 2
対照用のインプラントを等級3のチタンを用いて毎分約7メートルの平均速度で旋削することにより製作した。
対照用インプラントの表面を以下の段階からなる標準的な清浄化方法により清浄にした。
1.超音波処理を併用しつつトリクロロエチレンで15分間処理する。
2.純エタノール中で10秒間すすぎ洗いする。
3.超音波処理を併用しつつトリクロロエチレンで各10分間連続的に3回処理する。
清浄にした各インプラントをMediplast(商標)無菌袋内に包装すべきであり、そしてCitomat 162(商標)(LIC Company)内で120℃で30分間オートクレーブ処理した。
弗化水素酸の0.2%水溶液で異なる時間室温で処理されたネジの切られていない実質的に円錐状であるインプラントを取り外す(押出す)のに必要な力を測定した実験結果を図1の線図に例示する。このインプラントは一端の直径が2mmで、他端の直径が3mmでありそして全体の長さが5mmであるように製作されており、また等級3のチタンからつくられそして対照用インプラントの表面を処理するための上記の方法に従って清浄にされそして無菌化された。処理時間は10秒間、30秒間、60秒間、90秒間、120秒間および180秒間であった。押出し試験を実施しそして90秒間および180秒間は除いて各処理について押出し力を線図にプロットした。非処理の対照用試験片に関する値もまた処理時間が0秒であるものとして線図に示す。
押出し試験の結果に関するそれぞれの値は各々のウサギの脛骨中にインプラントされそして骨組織内で癒着するように2ケ月放置された4個のインプラントについての値の平均値である。
対照用インプラントもまた上記したように処理した。処理したインプラントの表面で測定した弗素および酸素の含有率をそれぞれの処理時間に対して線図にプロットした。
パラメータを実施例1の機械と同じに設定したInstronモデル1211引張試験機(Instron、英国)を使用しまた弗化物および酸素の含有率をオスロのSINTEF/SIのエレクトロンマイクロプローブ(CAMECA camebax)によって測定した。この装置で測定した結果は以下の通りであった。
Figure 0003683910
図1の線図は、処理時間が10〜50秒間と変化する時に得られる押出し試験の値がより大きくなっていき、30秒に極大値があることを例示する。これら以外の処理時間に関する値および非処理の対照用試験片に関する値はより小さいが、ただし処理したインプラントは一般に非処理のインプラントより大きい値をもつ。10〜50秒間の処理時間についてはインプラント表面の酸素および弗素の含有率の値(それぞれ5.5〜5.8%および0.11〜約0.15%)は、他の処理時間についての対応する値より小さい。
2ケ月という短い時間の後、押出し試験を実施した。接合の強度の急速な増大の結果、骨の所与の強度に達するのに必要な癒着期間が短縮される。従って本発明の処理を使用すると、患者が活動できない時間が短縮するので特に整形外科において一段階での外科手術の方式を採用するのが容易になる。
図2はHFの濃度が0.2%で処理時間が30秒である処理によってインプラント表面が、大まかにみると、いかに影響をうけないかを例示するものであり、10000倍率に拡大しても効果が何ら認められない(もとからある工具加工跡には全く影響がみられない)。この写真は0.2%のHF中で一層長く(90秒間)処理されている表面について示す倍率か10000の写真と比較されるべきであり、図4においては当該の処理により表面が顕著に変化するさまが例示される。
図2の表面を52,000の倍率で示す図3を、非処理の表面を52,000の倍率で示す図6および図4の表面を52,000の倍率で示す図5と比較すべきである。これによって明らかなように0.2%溶液で処理された表面は構造に関して僅かな影響があるのみで、工具加工跡も未だ判然としているが、一方、より長い時間にわたって処理された表面には明らかな変化がありまた多孔質の層で覆われている。本発明の最も望ましい態様には、処理によって構造にだけ僅かな影響がでている表面が関与すると考えられるが、別な処理された表面もまた本発明から期待される効果を有するであろう。
前記の押出し試験においては、対照用インプラントの表面と同じ方法で製作しそして処理したインプラントを使用した。しかしながら臨床的な場面でそして(または)勿論研究において使用すべき金属インプラントは、インプラント表面が弗素の含有率に関して基準となる表面(reference surface)と同等であるかぎり、任意の金属からつくられそして本発明の請求の範囲内に属する任意の方法で処理されることができる。
実施例 3
本処理の効果につき記述する別な方法は、燐酸カルシウム沈澱の誘導による方法である。この方法はJournal of Dental Research 1991年10月所收のDamen,Ten Cate,Ellingsenの「Induction of Calcium Precipitation by Titanium Dioxide」中に記載のインビトロテストである。この方法においては燐酸カルシウムの飽和溶液にインプラントが浸漬される。表面によるが、インプラントへのカルシウムの沈澱が起きる。Ca++の濃度がモニターされそして沈澱が起きるまでの時間遅れ(誘導時間)が測定される。この試験の背後にある理論的根拠は、インプラント表面のカルシウムイオンとの親和性とインプラント表面の骨組織内での生体適合性との間に相関があるという仮定である。試験の結果を添付の図7〜10の線図に示す。Ca++の濃度はY軸に示す(2.00e-1は2.00×10-1を意味する)。試験時間はX軸に分単位で示す。
試験でのインプラントは下記のように処理してあった。
Figure 0003683910
非処理の対照用インプラントもまた処理した。
試験溶液は1mMのCaCl2と50mMのHEPESとを含む溶液(pH7.2)に7.5mMのKH2PO4と50mMのHEPESとを含む溶液(pH7.2)を添加したものであった。HEPESは標準的な緩衝溶液である。試験の際の溶液の温度は37℃であった。
各インプラントを浸漬した後の溶液中のカルシウム濃度は5時間にわたってカルシウム選択電極で測定した。上記の線図に示すごとく、対照用インプラントおよび0.15%のHFで処理したインプラントとが5時間の浸漬時間にわたって浸漬される溶液には沈澱は何らなかった(図7参照)。
0.2%のHFで処理したいくつかのインプラントについては、浸漬後早くも4時間すると試験溶液中に沈澱があった。これらのインプラントはHFによって60〜120秒間処理されていた。0.2%のHFで30秒間処理されていたインプラントは沈澱を生んだが、それは約5時間であった(図8参照)。
0.5%のHFで60秒間処理されたインプラントは約4時間の浸漬時間の後、沈澱を生んだが、一方2.0%のHFで60秒間処理されたインプラントは5時間の浸漬時間より前にも後にも共に沈澱を生んだ。
これらのデータによると、所望の結果を生むHFの濃度および処理時間にはある範囲があるように思われ、0.2〜0.5%あたりの中心的な範囲がより良い結果を生む。これらのデータは前記の諸実施例でのデータをある程度補完し、従って本発明のインプラントは比較的簡単なものであるこの試験によって規定できると考えられる。
以上から、本発明のインプラントはHFで処理されており、そして1mMのCaCl2と50mMのHEPESとを含む溶液(pH7.2)に7.5mMのKH2PO4と50mMのHEPESとを含む溶液(pH7.2)を加えたものであって試験時の温度が37℃である溶液からカルシウムイオンが表面に沈澱されるインプラントと規定することができる。
実施例 4
ウサギの尺骨内の骨組織に2ケ月間インプラントされているネジ型のインプラントをトルクを与えて除去しそしてインプラント表面の組織学的研究を行った。
0.2%のHF中で120秒間処理した標準的なインプラントの骨接触は63.3%であったが、非処理の標準的な対照用インプラントの骨接触はただの42.4%であった。
二酸化チタン粒子でブラストしそして0.2%HF中で90秒処理したインプラントの骨接触は53.5%であったが、同様にブラストはしたが未処理のインプラントの骨接触は37.8%であった。
上記の値は4〜8個のインプラントの平均値であった。
処理されたインプラントの骨接触は海綿状体においては一層顕著であった。
従って処理されたインプラントは非処理のインプラントと比較する顕著な改良を示す。

Claims (7)

  1. 室温で30〜120秒間0.2〜0.5%の濃度の弗化水素酸水溶液により金属インプラントを処理することからなる金属インプラントの処理方法。
  2. 室温で30〜120秒間、ナトリウムおよびナトリウムイオンを含有せず、0.2〜0.5%の濃度で弗化物イオンを含有する水溶液により金属インプラントを処理することからなる金属インプラントの処理方法。
  3. 請求項1または2記載の方法によって得られるインプラント。
  4. 燐酸カルシウムの飽和溶液からカルシウムイオンを沈澱させる請求項記載の金属インプラント。
  5. 1mMのCaCl2と50mMのHEPES(pH7.2)からなる溶液に、7.5mMのKH2PO4と50mMのHEPES(pH7.2)からなる溶液を添加したものから、37℃の温度で5時間にわたる試験の期間に、インプラント表面上にカルシウムイオンの析出が生起する、請求項記載の金属インプラント。
  6. 試験の期間が4時間である、請求項記載の金属インプラント。
  7. 金属インプラントが商業的に純粋なチタンまたはチタン合金から作られたものである、請求項3〜6のいずれか一項に記載の金属インプラント。
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