JP3683852B2 - ベーンポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、カムリングおよびロータにサイドプレートを隣接して用いるベーンポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
図3〜5に、従来のベーンポンプを示す。図3に示すようにボディ1に収納穴2を形成し、この収納穴2に、サイドプレート3を収納している。さらに収納穴2にはカムリング4を挿入して、図4に示すように、このカムリング4を後述するカバー10に設けたピン5によって固定している。上記カムリング4の内周には、図4に示すように略楕円形の後述するベーン7の摺動面となるリング孔4aを形成している。そして、このリング孔4aにロータ6を回転自在に組み込んでいる。ロータ6には、突出自在とした複数枚のベーン7を放射状に組み込んでいる。
【0003】
また、図3に示すように、上記ボディ1には軸孔8を形成し、この軸孔8にシャフト9を回転自在に挿入している。また、このシャフト9をロータ6の中心部分に貫通させて、シャフト9を回転させれば、ロータ6が回転されるようにしている。
さらに、上記ボディ1の端面にはカバー10を固定し、ボディ1の収納穴2を塞いでいる。そして、このカバー10に形成した軸受穴11内で、上記シャフト9の先端を回転自在に支持している。
【0004】
このようにしたベーンポンプでは、図示しない駆動源によってシャフト9を回転させると、ロータ6が回転する。ロータ6が回転すると、その遠心力によって、ベーン7がロータ6から突出する。したがって、ベーン7の先端がカムリング4の内壁であるリング孔4aに押し付けられる。このように押し付けられた状態で、ロータ6が回転することによって、各ベーン間に形成された室の容積が順次変化することになる。
【0005】
上記ロータ6を図4の矢印k方向に回転させる場合、ベーン7間の室の容積が大きくなる工程、すなわち、図4の一点鎖線Sで示す吸い込み部分では、作動油を吸い込むことになる。
そこで、上記カバー10には図3に示すように紙面奥側と手前側とに二股状に分岐させた吸い込み通路12を形成している。
【0006】
なお、図4に示すように、カムリング4の左右両側の吸い込み側部分には、連通孔13を形成している。これら連通孔13は、吸い込み通路12の作動油をボディ1側に導くためのものである。そして、ベーン7間の室に作動油が吸い込まれるとき、カバー10側からだけでなく、ボディ1側からも吸い込ませるようにして吸い込み効率を向上させている。
【0007】
一方、ベーン7間の室の容積が小さくなる工程、すなわち、図4の一点鎖線Tで示す吐出部分では、上記吸い込んだ作動油を吐出することになる。また、ボディ1には図3に示すように、高圧室cを形成し、この高圧室cに吐出した作動油を導くとともに、その圧力作用によってサイドプレート3全体を隣接するロータ6側に押し付けている。このようにサイドプレート3全体を押し付けることで、このサイドプレート3と、ロータ6と、ベーン7とのクリアランスを小さくし、これらクリアランス部からの作動油の漏れを減少させる。すなわち、この従来のベーンポンプでは、上記のようなプレッシャーローディング機構を採用している。
また、上記のように、サイドプレート3をロータ6側に押し付けるようにしているが、このサイドプレート3とロータ6との間では、吐出圧力が高くなるにつれてクリアランスが小さくなり漏れを減少させるようにしている。
【0008】
図5は、上記サイドプレート3の斜視概要図であるが、この斜視概要図は、サイドプレート3をボディ1に組み付けるときのボディ1側から見たものである。図示したように、このサイドプレート3には、高圧室c側の背圧面14の反対側に位置する圧接面15に一対の吸い込みポート16、16を対向形成している。この吸い込みポート16、16は、圧接面15およびサイドプレート3の側面3aに開口する吸い込みポート用凹部17、17によって形成される。
また、上記一対の吸い込みポート16、16をX軸線上に形成するとともに、このX軸線とほぼ直交するY軸線上には貫通孔からなる一対の吐出ポート18、18を対向形成している。
なお、上記吸い込みポート16、16が図4の一点鎖線Sで示す吸い込み部分に対応し、吐出ポート18、18が一点鎖線Tで示す吐出部分に対応するようにしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のベーンポンプにおいて、サイドプレート3の吸い込みポート16、16を形成した部分では、その厚さが他の部分よりも薄くなっている。このようなサイドプレート3の全体に高圧室cからの圧力が作用すると、この薄くなっている部分のたわみ量が他の部分よりも大きくなる。したがって、サイドプレート3は、一対の吸い込みポート16、16を結ぶX軸線に沿って局部的にたわむ。すなわち、X軸線に沿ってボディ1側からロータ6側へ歪みが発生する。このようにサイドプレート3がX軸線に沿って局部的に歪むと、この歪んだ部分が、他の部分よりも余計にロータ6およびベーン7側へと押し付けられる。
このように他の部分よりも余計にロータ6やベーン7側へと押し付けられると、この余計に押し付けられたX軸線上の圧接面15とロータ6、あるいは圧接面15とベーン7との間で焼き付きが発生してしまうという問題があった。
【0010】
また、上記焼き付きを防止するために、サイドプレート3の歪み分を見込んで、サイドプレート3とロータ6およびベーン7との間のクリアランスを全体的に大きくすることも考えられる。しかし、このクリアランスを大きくすると、上記歪んだX軸線以外の部分では、圧接面15とロータ6およびベーン7間のクリアランスが必要以上に大きくなってしまう。すなわち、上記X軸にほぼ直交するY軸方向の圧接面15が、ロータ6およびベーン7に十分に隣接しなくなる。
このように、クリアランスを大きくすると、十分に隣接しない部分が生じ、この部分から作動油が漏れて吐出効率が低下してしまう。したがって、焼き付きを防止するためにむやみに上記クリアランスを大きくすることもできなかった。
【0011】
この発明の目的は、作動油の吐出効率を向上させながらもサイドプレートの焼き付きを防止することができるベーンポンプを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ケーシングと、ケーシング内に設けたカムリングと、カムリング内周のリング孔に回転自在に組み込んだロータと、ロータ内に複数設けるとともにこのロータに対して放射状に突出自在のベーンと、上記カムリングとロータとベーンとに隣接した圧接面およびこの圧接面の反対側の背圧面を備えるサイドプレートと、サイドプレート背圧面側に高圧を導く高圧室とを設け、上記サイドプレートにはその圧接面および側面に開口する凹部によって形成される一対の吸い込みポートをX軸線上に対向配置するとともに、サイドプレートの背圧面側にのみ開口する圧接力調整用の凹部をX軸線にほぼ直交するY軸線方向に形成し、少なくとも上記吸い込みポートの凹部を除いたサイドプレートの厚さと、上記圧接力調整用の凹部を除いたサイドプレートの厚さとをほぼ等しくする構成にしたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1、2は、この発明の一実施形態を示したものである。この実施形態では、サイドプレート19に形成した一対の吸い込みポート20、20を結ぶX軸にほぼ直交するY軸方向の背圧面21に圧接力調整用の凹部22を形成したことを最大の特徴とする。この特徴以外については、従来例と同様なので、従来例と同様の構成要素については、従来例と同じ符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0014】
上記サイドプレート19に形成した吸い込みポート20、20は、圧接面24およびサイドプレート19の側面19aに開口する吸い込みポート用凹部23、23によって形成している。また、吐出ポート25、25をほぼY軸線上に貫通孔によって設けている。したがって、上記背圧面21に設けた圧接力調整用の凹部22は、一方の吐出ポート25から他方の吐出ポート25に亘って形成されるようになる。
また、上記圧接力調整用の凹部22、22と、吸い込みポート用凹部23、23との間には、適度な間隔を設けるようにしている。したがって、上記圧力調整用の凹部22、22と吸い込みポート用凹部23、23とは、互いに干渉しあうことがない。また、サイドプレート19の反対側の面に設けている上記圧接力調整用の凹部22、22と、吸い込みポート用凹部23、23とを、サイドプレート19の同じ面に設けたとしても、これらが互いに干渉しないので、従来のような局部的なたわみが発生することがない。
この圧接力調整用の凹部22、22は、サイドプレート19の外周には貫通させていないが、これは、ケース1とサイドプレート19との間で密封性を確保する図示しないシール部を形成するためである。
【0015】
また、上記圧接力調整用の凹部22の深さは、吸い込みポート20、20の吸い込みポート用凹部23、23の深さとほぼ同じにしている。すなわち、X軸方向のサイドプレート19の厚さと、Y軸方向のサイドプレート19の厚さをほぼ等しくなるようにしている。
さらに、サイドプレート19全体で見た場合、サイドプレート19の厚さが極力均等になるように、圧力調整用の凹部22、22の形状や幅等を決めている。
なお、この実施形態において、ボディ1とカバー10とで、この発明でいうケーシングを構成している。
【0016】
上記のような実施形態によれば、サイドプレート19のX軸方向の厚さと、Y軸方向の厚さをほぼ等しくすることによって、従来はX軸線方向に集中していたたわみが、Y軸方向に分散されることになる。すなわち、サイドプレート19の背圧面21に高圧が作用したとき、このサイドプレート19は、X軸線方向とY軸線方向とにほぼ均等にたわむようになる。したがって、上記サイドプレート19がロータ6およびベーン7方向への局部的な歪みがなくなる。
上記サイドプレート19のたわみを均一にすることによって、局部的なたわみによる焼き付きを防止することができる。
【0017】
しかも、焼き付きを防止することができるので、焼き付き防止のためにサイドプレート19とロータ6およびベーン7とのクリアランスを余計に持たせるようなことを考える必要もない。すなわち、上記クリアランスはサイドプレート19が押し付けられたときに、ロータ6およびベーン7に接触することなく、これらのクリアランスを最小に抑えることができるような最適な値に設定しているものである。したがって、サイドプレート19が局部的にたわむことを考慮してクリアランスを大きくしたときに生じる油漏れを防止することもでき、作動油の吐出効率を向上させることができる。
【0018】
なお、この実施形態において、カバーに形成した軸受穴11内で、シャフト9の先端を回転自在に支持するようにしているが、上記カバーに軸受がない、いわゆる片軸受のベーンポンプを用いるようにしてもよい。
【0019】
【発明の効果】
第1の発明によれば、サイドプレートにはその隣接面および側面に開口する凹部によって形成される一対の吸い込みポートをX軸線上に対向配置するとともに、サイドプレートの背圧面側にのみ開口する圧接力調整用の凹部をX軸線にほぼ直交するY軸線方向に形成し、少なくとも上記吸い込みポートの凹部を除いたサイドプレートの厚さと、上記圧接力調整用の凹部を除いたサイドプレートの厚さとをほぼ等しくすることとしたので、サイドプレートに背圧を作用させたときに、X軸線方向とY軸線方向とに均等にたわむ。したがって、部分的なたわみを防止することができ、作動油の吐出効率を向上させながら、この部分的なたわみによって生じる焼き付きや、油漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態であるサイドプレートの斜視概要図である。
【図2】図1のサイドプレートのI-I線断面図である。
【図3】従来例のベーンポンプの断面図である。
【図4】図3のII-II線断面図である。
【図5】従来例のサイドプレートの斜視概要図である。
【符号の説明】
1 ボディ
4 カムリング
4a リング孔
6 ロータ
7 ベーン
10 カバー
c 高圧室
19 サイドプレート
19a 側面
20 吸い込みポート
21 背圧面
22 凹部
23 吸い込みポート用凹部
24 圧接面
Claims (1)
- ケーシングと、ケーシング内に設けたカムリングと、カムリング内周のリング孔に回転自在に組み込んだロータと、ロータ内に複数設けるとともにこのロータに対して放射状に突出自在のベーンと、上記カムリングとロータとベーンとに隣接した圧接面およびこの圧接面の反対側の背圧面を備えるサイドプレートと、サイドプレート背圧面側に高圧を導く高圧室とを設け、上記サイドプレートにはその圧接面および側面に開口する凹部によって形成される一対の吸い込みポートをX軸線上に対向配置するとともに、サイドプレートの背圧面側にのみ開口する圧接力調整用の凹部をX軸線にほぼ直交するY軸線方向に形成し、少なくとも上記吸い込みポートの凹部を除いたサイドプレートの厚さと、上記圧接力調整用の凹部を除いたサイドプレートの厚さとをほぼ等しくする構成にしたことを特徴とするベーンポンプ。
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