JP3682931B2 - ガラクトシル−マルトオリゴ糖誘導体の製造方法 - Google Patents

ガラクトシル−マルトオリゴ糖誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、α−アミラーゼ活性測定用基質として有用なβ−1,4−D−ガラクトシル−α−1,4−D−マルトオリゴ糖誘導体の新規な製造方法に関する。更に詳しくは酵素の逆合成及び加水分解作用を利用した簡易で工業的に有用なβ−1,4−D−ガラクトシル−α−1,4−D−マルトオリゴ糖誘導体の新規な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒトの体液、例えば血液、尿等の含まれるα−アミラーゼの活性を測定し臨床診断に応用することが広く行われている。本発明者らはα−アミラーゼ活性の測定の際に、共役酵素(α−あるいはβ−グルコシダーゼ、グルコアミラーゼ等)の作用を受けない安定な基質を得る目的で、p−ニトロフェニルα−マルトオリゴシドの非還元末端グルコース残基に、ガラクトシル基がβ−結合した誘導体の製造方法、およびそれを用いるアミラーゼ活性測定法を既に提案している〔特開平3−264596号、特開平6−86683号〕。
【0003】
上記のガラクトシル−マルトオリゴ糖誘導体の製造方法(改良法)は、例えばマルトオリゴ糖とラクトースの混合物を緩衝溶液中に溶解し、β−ガラクトシダーゼを作用させて、ガラクトシル−マルトオリゴ糖を得て、このガラクトシルオリゴ糖と還元末端グルコース残基に発色団の結合したマルトオリゴ糖誘導体、例えばp−ニトロフェニルα−グルコシドとを緩衝溶液中に溶解し、オリゴ糖生成アミラーゼを作用させ、ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体を製造するものである。この方法は、従来の非還元末端のグルコースを化学修飾する方法(例えば、特開昭60−54395号、同60−87297号、同60−237998号、同61−63299号、同63−301892号、特開平1−157996号)に比較して簡易で効率の良い方法であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記のオリゴ糖生成アミラーゼを用いる方法で、例えばp−ニトロフェニル4−Ο−β−ガラクトシル−α−マルトペンタオシドを得たい場合、この目的生成物が全pNP誘導体(原料に用いたpNP−α−グルコシドも含む)中に約10〜15モル%程度生成する。しかしながら、上記目的生成物以外に重合度が近接している、p−ニトロフェニル4−Ο−β−ガラクトシル−α−マルトトリオシド、p−ニトロフェニル4−Ο−β−ガラクトシル−α−マルトテトラオシド及びp−ニトロフェニル4−Ο−β−ガラクトシル−α−ヘキサオシドなどが多量に副生する。そのため、反応生成物から目的生成物を得るためには、分離精製が必要である。しかし、重合度が近いことから分画精製は非常に煩雑かつ困難であり、高純度の目的物を経済的に効率良く得ることは困難であった。
【0005】
さらに、前記のオリゴ糖生成アミラーゼを用いる方法では、製法上の理由から、糖残基供与体基質のガラクトシルマルトオリゴ糖中には、主成分であるβ−1,4−ガラクトシルα−D−マルトオリゴ糖以外に異性体であるβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖(β−1,6体)が約10重量%程度含まれる。そして、上記β−1,6体を含む原料を用いて、従来法で使用されているシュードモナス ステッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来のマルトテトラオース(G4)生成アミラーゼで糖転移反応を行うと、最終製品であるガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体に10重量%程度のβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体が副生してしまう。
【0006】
α−アミラーゼ活性測定基質としての感度を比較した場合、β−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体はβ−1,4−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体の約1/3と低い。そのため、β−1,6体を各種クロマトグラフィーによる分離除去することが必要であったが、工業的規模でβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体を除去することは非常に煩雑かつ困難であり、経済的にも大きな問題であった。
【0007】
そこで本発明の目的は、目的とする重合度のマルトオリゴ糖誘導体の選択率が高く、かつ原料中にβ−1,6体が共存しても、β−1,6誘導体の副生も少ないか、実質的に生成しないβ−1,4−D−ガラクトシル−マルトオリゴ糖誘導体の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、β−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖とΟ−グルコシルまたはマルトオリゴシル誘導体との混合物に、マイクロコッカス エスピー(Micrococcus sp.)207起源のマルトテトラオース生成アミラーゼを作用させることを特徴とする下記一般式(1)(式中、Rは置換あるいは無置換のフェニル基を示し、nは3、4、5又は6を示す)で表されるβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖誘導体の製造方法。
【0009】
【化2】
【0010】
以下本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の原料であるβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖は下記の一般式(2)(式中、mは3〜7の整数を示す)で表わされる。
【0011】
【化3】
【0012】
上記β−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖は公知の方法により製造することができる。例えば、特開平3−264596号や特開平6−86683号に記載されている、少なくとも1種のマルトオリゴ糖とβ−ガラクトシル残基を持つ糖との混合物にβ−ガラクトシダーゼを作用させることで得ることができる。上記β−ガラクトシル残基の受容体原料としてはマルトオリゴ糖(マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース)またはこれらの混合物が使用できる。工業的規模での製造を考慮した場合、混合物を使用することは、価格の面で非常に有利である。もう一つの出発原料であるβ−ガラクトシル残基の供与体は、例えばラクトース、ガラクトシル−ラクトースあるいはそれらの混合物を使用することが出来る。
【0013】
β−ガラクトシダーゼは、β−ガラクトシドを加水分解してガラクトースを遊離する酵素と知られている。上記転移反応で主にβ−1,4−ガラクトシド結合を生成し得る酵素であればいずれの起源の市販β−ガラクトシダーゼを用いても良い。例えば、大和化成(株)製β−ガラクトシダーゼ(B.circulans由来、商品名:Biolacta)を用いることができる。この糖転移反応において基質濃度は10〜40%とすることが適当である。β−ガラクトシダーゼを適量添加し、20〜60%℃の範囲で4〜24時間反応させる。煮沸失活後、グルコアミラーゼを添加し、残存するマルトオリゴ糖を選択的に加水分解させる。反応終了後、pH調整または加熱により酵素反応を停止し、例えば逆浸透膜、限外濾過膜あるいはゲルカラムクロマトグラフィーにより分画を行なって、低分子画分を除去して本発明において原料として使用するβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖(2)を得ることができる。
【0014】
但し、上記生成物中にはβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖中にβ−1,6−ガラクトシル−マルトオリゴ糖が混在することがある。本発明の方法では、β−1,6−ガラクトシル−マルトオリゴ糖が混在するβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖を用いても、β−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖が選択的に糖転移反応を起こすことから、混在するβ−1,6−ガラクトシル−マルトオリゴ糖を反応前に除去する必要はない。但し、β−1,6−ガラクトシル−マルトオリゴ糖を含まないβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖を反応原料として用いることも勿論できる。
尚、ガラクトシル−マルトオリゴ糖は上記のように酵素法によらず、例えば化学合成法によっても入手することは可能であり、本発明の方法では、このようなガラクトシル−マルトオリゴ糖も原料として使用できることは勿論である。
【0015】
本発明の方法のもう一方の原料は「O−グルコシルまたはマルトオリゴシル誘導体」である。この「O−グルコシルまたはマルトオリゴシル誘導体」は、上記β−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖残基の受容体として働く。
「O−グルコシルまたはマルトオリゴシル誘導体」は、例えば、下記一般式(3)で示される化合物(式中、Rは置換あるいは無置換のフェニル基であり、xは0、1又は2である)であることができる。
【0016】
【化4】
【0017】
Rで示される置換フェニル基の置換基としては、例えば、ニトロ基、クロル基等を挙げることができ、置換フェニル基としては、例えば、2−クロロ−4−ニトロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基等を挙げることができる。一般式(3)で示される化合物の具体例としては、p−ニトロフェニルα−グルコシド、p−ニトロフェニルα−マルトシド、p−ニトロフェニルα−マルトトリオシド等を例示できるが、工業的生産を考慮した場合、比較的安価なグルコシド及びマルトシドを用いることが望ましい。尚、Rで示される配糖体のアグリコン部の結合様式はα体、β体いずれでも良い。
【0018】
本発明の方法によれば、目的とする生成物に応じて、原料であるβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖とΟ−グルコシルまたはマルトオリゴシル誘導体との組合せを選ぶことで、目的物を選択的に得ることができる。原料の組合せと主生成物の関係を以下の表1に示す。尚、表中、Gal−Gy(y:4〜8)は、原料であるガラクトシル−マルトオリゴ糖である。pNP−Gx(x:1〜3)のpNPはp−ニトロフェニルであり、CNP−Gx(x:1〜3)のCNPはクロロニトロフェニルであり、pNP−Gx及びCNP−Gxは、もう一方の原料であるO−グルコシルまたはマルトオリゴシル誘導体である。そして主生成物は、Gal−Gz−pNPまたはGal−Gz−CNP(z:4〜7)で表される。
【0019】
【表1】
【0020】
また、本発明の方法で使用するマルトテトラオース生成アミラーゼ(G4生成アミラーゼ)を生産するマイクロコッカス エスピー(Micrococcus sp.)207菌は、微工研菌寄第9878号(FERM P−9878)として寄託されている。
【0021】
上記207菌由来のG4生成アミラーゼについては、特開平1−218598号あるいは木村らの文献等[Appl.Environ.Microblol.,54巻,1066頁(1988年),Agric,Biol,Chem.,53巻,2019頁(1989年),Agric,Biol,Chem.,53巻,2963頁(1989年),Starch,42巻,403頁(1990年),Appl,Microbiol.Biotechnol.,34巻,52頁(1990年),J.Ferment.Bioeng.,70巻,134頁(1990年),FEMS Microbiol.Lett.,70巻,35頁(1990年)]に詳細に説明されている。
【0022】
207菌由来のG4生成アミラーゼの性質は以下のとおりである。
1)作用:アミロペクチン、アミロース、澱粉等、及びそれらの部分加水分解物のα−1,4−グルコピラノシド結合からなる直鎖状構造をエンド型に加水分解し、主成分としてマルトテトラオースを生成する。そしてその生成物のアノマー型はαタイプである。
2)基質特異性:マルトペンタオース以上の重合度を有するα−1,4−グルコピラノシド結合からなる直鎖状マルトオリゴ糖を加水分解する。(C3 −C7 を基質としたとき、遊離するグルコース量が、C1 の時を100とすると、C2 :3.1、C3 :14.2、C4 :84.3、C5 :32.5であった。)
3)至適pH及び安定pH範囲:至適pHは7.5〜8.0である。また30℃、5時間の条件下において、pH5.5〜11の範囲で安定である。
4)作用適温:約60℃
5)失活条件:50℃、1hの加熱で75%失活。60℃、1hでは98%以上失活。
6)阻害、活性化及び安定化:エチレンジアミン4酢酸(EDTA)で阻害されるがカルシウム塩で回復する。カルシウム塩によって活性化及び安定化される。
7)分子量:約42万(ゲル濾過法)、185,000(SDS−PAGE法)
【0023】
本発明では、上記207菌を培養して得られる培養上清濃縮物をG4生成アミラーゼを含有する粗酵素含有液としてそのまま、本発明の方法に用いることができる。さらに、上記粗酵素をエタノール、アセトン、イソプロパノール等による溶媒沈澱法、硫安分画法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クマトグラフィー等の通常の方法を用いて精製した後に、本発明の製造方法に用いることも出来る。
なお、本発明に用いるG4生成アミラーゼは以下の方法で酵素活性を測定することができる。
【0024】
0.1Mリン酸緩衝液を含む1%可溶性澱粉溶液300μlを40℃の恒温浴槽中で5分間予備加温した後、適当に希釈された酵素液100μlを添加し、同じく40℃で10分間反応させる。DNS試薬1mlを加え、反応を停止した後、10分間煮沸し、流水中で冷却後、脱イオン水5mlを加え、510nmにおける吸光度を測定する。
ここで1単位の酵素活性は同条件下で1分間に1μmol(マイクロモル)のグルコースを生成する酵素量とする。
【0025】
本発明の糖移転反応において、ガラクトシル−マルトオリゴ糖(2)の基質濃度は、例えば、10〜40%の範囲とすることが適当である。また、O−グルコシルまたはマルトオリゴシル誘導体(3)の基質濃度は、例えば、5〜30%とすることが適当である。
酵素を上記基質の混合物に添加し、例えば10〜24時間、例えば20〜60℃の範囲の温度で反応させることで、本発明のβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖誘導体(1)を生成させることができる。
【0026】
本発明の上記反応は、水−親水性有機溶媒の混合溶媒中で行うことが目的生成物の収率を高めるという観点から好ましい。上記混合溶媒に用いる親水性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アセトン、ジメチルスルホキサイド、エチレングリコール等を挙げることができる。また、混合溶媒には、親水性有機溶媒の2種以上を併用することもできる。混合溶媒における親水性有機溶媒の含有率は、例えば約20〜80%、好ましくは約30〜70%とすることが適当である。
【0027】
上記酵素反応後、加熱あるいはpHを低下させることにより、酵素反応を停止し、例えばカラムクロマトグラフィーにより分画を行ない、ガラクトシル−マルトオリゴ糖誘導体(1)を容易に単離することができる。尚、上記カラムクロマトグラフィーには、例えば、トヨパール(TOYOPEARL)HW−40Sゲルを充填したカラムを用いて分画する方法を挙げることができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明のβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖誘導体の製造方法は、体液α−アミラーゼの活性測定用基質として有用なβ−1,4−D−ガラクトシルα−1,4−D−マルトオリゴ糖(グルコース部分の重合度4〜7)誘導体の大量調整に適した方法として極めて有用である。
即ち、従来法においては糖移転反応に使用されてきた酵素の特性から重合度が近接した各種の糖転移物が生成し、これらを分別精製することは技術的にもまた経済的にも大きな問題点を残していた。しかし、本発明方法によれば従来方法に比し、主生成物の生成率が高いばかりでなく生成割合も非常に高いので、分別精製が容易となり、工程も簡略化し得るので、経済的にも大きな利点がある。
【0029】
しかも、従来法ではα−アミラーゼ基質としての有用性に乏しいβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体が約10重量%程度生成していたのに対し、本発明方法では全く生成しないか、もしくは実質的に無視し得る程度にしか生成しない。そのため、β−1,6体の除去に要した煩雑な精製操作が不要となるので経済的に非常に有利となるばかりでなく、得られる製品の品質面においても大きな技術的なメリットが得られる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
参考例
Micrococcus属細菌No.207株を先に述べた木村らの方法で培養して得た。即ち、バクトトリプトン2%(W/V)、酵母エキス1%、可溶性澱粉2%、K2 HPO 4 0.1%、MgSO 4・7H2 O 0.02%、MnCl2 ・4H2 O、1ppmを含む10リットルの液体培地(pH9)に予め同上培地で24時間30℃で回転振盪培養して得た1リットルのMicrococcus属細菌No.207株懸濁液を無菌的に接種し、30℃、通気量1.5v.v.m及び回転数300rpmで40時間通気攪拌培養した。ついで12,000g、4℃で10分間遠心分離をして菌体を除いて得た上清液をフィルトロン社製UF膜を用いて濃縮して235単位(U)/mlの粗G4生成アミラーゼ濃縮液250mlを得た。
【0031】
該アミラーゼ濃縮液に75%飽和となるように硫酸アンモニウムを加え、一夜冷室(4℃)中に放置して生成した沈澱物を遠心分離(12,000g、4℃、10分間)して集め、5mM塩化カルシウムを含む20mMトリス−酢酸緩衝液(pH7.3)に対して充分に透析した。ついで0.1M、NaClを含む同上緩衝液で平衡化したDEAE−トヨパール650S(東ソー製)カラムに通液して酵素を吸着させた後、同上緩衝液に含まれる0.1Mから0.5MのNaClの濃度匂配法で酵素を溶出させた。活性画分を集め、硫酸アンモニウムを加えて15%飽和とした後、15%飽和の硫酸アンモニウムを含む同上緩衝液で平均化したブチル・トヨパール650S(東ソー製)カラムに通液して酵素を吸着させた。ついで同上緩衝液に含まれる15%飽和から0%飽和の硫酸アンモニウムの濃度匂配法で酵素を溶出させた結果、約12%飽和の硫酸アンモニウム濃度に主要活性画分が、そして7%飽和に少量のアミラーゼ活性画分が得られたので主要活性画分を集め、アミコン社製UF膜(PM10)を用いて濃縮し、1,528U/mlの精製酵素15mlを得た。
【0032】
ついで本精製酵素の分子量及び等電点をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法並びに焦点電気泳動法により測定した結果、約185,000およびpH4.8であった。また、酵素反応の最適のpHおよび温度についても検討した結果、それぞれ55〜60℃および7.5〜8.0であり、これらは木村らが報告した数値とほぼ同一であった。
【0033】
実施例1
参考例で得られた精製酵素(G4生成アミラーゼ)82Uを一連のβ−D−ガラクトシル−α−D−マルトオリゴ糖[日本食品化工(株)製]400mgとp−ニトロフェニルα−D−グルコシド(pNP−α−G1)100mgを含む30%(V/V)メタノール水溶液(pH7.0)1.5mlに添加し、30℃で2時間反応させた。直ちに得られた反応液中に含まれる糖転移生成物の含有率をShodex RS−pak DC−613[昭和電工(株)製]カラムを用いる高速液体クロマトグラフ(HPLC)法で測定した結果を表2に示す。
なお、本測定の移動相には72/28=アセトニトリル/水(V/V,%)を用い、0.9ml/分の流速で、検出は310nmで行なった。なお、表中の値は紫外部吸収を有する全糖誘導体中の割合を重量%で示す。
【0034】
比較例1
比較のため、従来から用いられてきたシュウドモナス ステッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来のG4生成アミラーゼ[日本食品化工(株)製、商品名オリゴアミラーゼ]を上記条件で作用させた後、実施例1と同様な方法で糖転移生成物の含有率を測定した結果を表3に示す。
【0035】
【表2】
実施例1の結果
表中( )内は同一重合度の糖転移生成物中のβ−1,6−D−ガラクトシルα−D−マルトオリゴシド誘導体の割合を重量%で示している。
【0036】
【表3】
比較例1の結果
表中( )内は同一重合度の糖転移生成物中のβ−1,6−D−ガラクトシルα−D−マルトオリゴシド誘導体の割合を重量%で示している。
【0037】
その結果、表2及び表3から明らかなように、本発明方法によれば各種重合度のガラクトシルマルトオリゴ糖、特にマルトオリゴ糖の重合度4〜7のガラクトシルマルトオリゴ糖を糖残基の供与体とし、pNP−α−G1を受容体とした場合、体液α−アミラーゼ活性測定用として有用なpNP−β−D−ガラクトシルα−D−マルトテトラオシド(Gal−G4−pNP)およびpNP−β−D−ガラクトシル−α−D−マルトペンタオシド(Gal−G5−pNP)がより選択的に生成した。
さらに、特筆すべき事として、従来法ではα−アミラーゼの基質として有用ではないβ−1,6−D−ガラクトシルα−D−マルトオリゴ糖誘導体が約10重量%程度生成し、その除去精製が非常に煩雑かつ困難であったが、本発明方法によれば実質的に無視し得る程度もしくは全く生成しない点で大きな優位性を有することが明らかである。
【0038】
実施例2
乳糖100gとマルトオリゴ糖混合物[日本食品化工(株)製、商品名フジオリゴG67S]300g、β−ガラクトシダーゼ[大和化成(株)製、商品名BIOLACTA、、10,100U/g]130mgを含む1リットルの50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を40℃で5時間反応させた。ついで沸騰水浴中で5分間加熱して酵素を失活させた後、グルコアミラーゼ[生化学工業(株)製、39.9U/mg]を2,000U添加してpH5.5で一晩反応させて未反応のマルトオリゴ糖をグルコースに加水分解してガラクトシルマルトオリゴ糖12.6%を含む糖質を得た。
なお、糖組成の分析は実施例1と同様なHPLC法にて測定した。また含有率は全糖質中の重量%で示した。該操作で得られた約400gの反応糖質中のガラクトシルマルトオリゴ糖をトヨパールHW−40S[東ソー製]を用いるゲル濾過法で精製分取し、約41.5gの凍結乾燥粉末を得た。本凍結乾燥粉末中の糖組成を上記方法にて分析した結果、Gal−G4が1.8%、Gal−G5が16%、Gal−G6が45%、Gal−G7が30%であった。
【0039】
ついで、得られた4gの凍結乾燥粉末及び1gのpNP−α−G1を、参考例で得た粗G4生成アミラーゼ800Uおよび終濃度30%(V/V)のメタノールを含む10mlの20mMリン酸緩衝液(pH7.0)を30℃で2時間加温して糖転移反応を行った。生成するガラクトシルマルトオリゴ糖のpNP誘導体を実施体1記載の方法で測定した。結果を表4に示す。
【0040】
比較例2
参考例で得たG4生成アミラーゼに代えて、比較例1で用いたシュウドモナスステッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来のG4生成アミラーゼ800Uを用いた以外は、実施例2と同様な条件で反応させた。結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
( )内は同一重合度の糖転移反応生成物中に占めるβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体の生成率を重量%で示している。
【0042】
表4から明らかなように、糖残基の供与体基質にGal−G5,Gal−G6及びGal−G7を主成分とするガラクトシルマルトオリゴ糖混合物を、そして受容体基質にpNP−α−G1を用いた場合でも本発明の主生成物はGal−G5−pNPであり、その生成率は従来法に比較し、非常に高かった。また、他の副生成物の生成が非常に少ないばかりでなく、α−アミラーゼ基質として不要なβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体も殆ど生成しなかった。一方、従来法では約10重量%程度のβ−1,6−体が生成した。
【0043】
実施例3
糖受容体基質であるpNP−α−G1に代えて2−クロロ−4−ニトロフェニルβ−D−グルコシド(CNP−β−G1)を用い、溶媒をn−プロパノールに代えた他は実施例2に記載した同一条件で反応を行ないガラクトシルマルトオリゴ糖CNP誘導体を得た。結果を表5に示す。
比較例3
参考例で得たG4生成アミラーゼに代えて、比較例1で用いたシュウドモナスステッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来のG4生成アミラーゼ800Uを用いた以外は、実施例3と同様な条件で反応させた。結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
( )内は同一重合度の糖転移反応生成物中に占めるβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体の生成率を重量%で示している。
【0045】
表5から明らかなように、糖受容体基質をpNP−α−G1からCNP−β−G1に変更しても本発明の主生成物はGal−G5−CNPであり、生成比率も従来法に比較し、非常に高かった。また、同様にβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体は殆ど生成しなかった。一方、従来法ではやはりβ−1,6体が約10重量%程度生成た。
【0046】
実施例4
糖受容体基質であるpNP−α−G1に代えてp−ニトロフェニルα−D−マルトシド(pNP−α−G2)[日本食品化工(株)製]を用い、溶媒をn−プロパノールに代えた他は実施例2に記載した同一条件で反応を行ないガラクトシルマルトオリゴ糖pNP誘導体を得た。結果を表6に示す。
【0047】
比較例4
参考例で得たG4生成アミラーゼに代えて、比較例1で用いたシュウドモナスステッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来のG4生成アミラーゼ800Uを用いた以外は、実施例4と同様な条件で反応させた。結果を表6に示す。
【0048】
【表6】
( )内は同一重合度の糖転移反応生成物中に占めるβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体の生成率を重量%で示している。
【0049】
表6から明らかなように、糖受容体基質をpNP−α−G1からpNP−α−G2に変更した時、本発明の主生成物はGal−G6−pNPであり、生成比率も従来法に比較し、非常に高かった。また、同様にβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体は殆ど生成しなかった。一方、従来法ではやはりβ−1,6体が約10重量%程度生成した。
【0050】
実施例5
糖受容体基質であるpNP−α−G1に代えて2−クロロ−4−ニトロフェニルβ−D−マルトトリオシド(CNP−β−G3)を用いた他は実施例2に記載した同一条件で反応を行ないガラクトシルマルトオリゴ糖pNP誘導体を得た。結果を表7に示す。
【0051】
比較例5
参考例で得たG4生成アミラーゼに代えて、比較例1で用いたシュウドモナスステッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来のG4生成アミラーゼ800Uを用いた以外は、実施例5と同様な条件で反応させた。結果を表7に示す。
【0052】
【表7】
( )内は同重合度の糖転移反応生物中のβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体の生成率を重量%で示している。
【0053】
表7から明らかなように、糖受容体基質pNP−α−G1からCNP−β−G3に変更した時、本発明の主生成物はGal−G7−CNPであり、生成比率も従来法に比較し、非常に高かった。また、同様にβ−1,6−ガラクトシルマルトオリゴ糖誘導体は殆ど生成しなかった。一方、従来法ではやはりβ−1,6体が約10重量%程度生成した。

Claims (6)

  1. β−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖と下記一般式(3)で示されるΟ−グルコシルまたはマルトオリゴシル誘導体との混合物に、マイクロコッカス エスピー(Micrococcus sp.)207起源のマルトテトラオース生成アミラーゼを作用させることを特徴とする下記一般式(1)で表されるβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖誘導体の製造方法。
    (式中、Rは置換あるいは無置換のフェニル基を示し、nは3、4、5又は6を示す。)
    (式中、Rは置換あるいは無置換のフェニル基を示し、xは0、1又は2を示す。)
  2. マルトテトラオース生成アミラーゼの作用を水−親水性有機溶媒混合溶媒中で行う請求項1記載の製造方法。
  3. グルコース残基数が4〜8であるβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖の1種又は2種以上の混合物を原料として用いる請求項1又は2記載の製造方法。
  4. β−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖が、少なくとも1種のマルトオリゴ糖及びβ−ガラクトシル残基を持つ糖との混合物にβ−ガラクトシダーゼを作用させて得られるものである請求項3記載の製造方法。
  5. マルトオリゴシル誘導体が、マルトシル誘導体もしくはマルトトリオシル誘導体である特許請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. β−1,6−ガラクトシル−マルトオリゴ糖が共存するβ−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖を原料として用い、β−1,4−ガラクトシル−マルトオリゴ糖誘導体を選択的に製造する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
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