JP3682667B2 - 地盤形成用構造体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は建築物、建造物等の基礎構造に関するものであり、特に軟弱地盤に用いる筒基礎等の構築の際にゴム単層を用いた地盤形成用構造体に係るものである。
【0002】
【発明の背景】
軟弱地盤上に建てられた建築物、建造物は、地震を受けたときに基礎の移動が発生し、この移動が甚だしい場合には損壊を被ることがある。そこで建築物、建造物の損壊を防止するには、基礎の有効深さを増大し、且つ載荷面直下の土が横方向に逃げるのを防止すればよい。
このため従来、筒基礎と呼ばれる基礎構造が採用されている。このものは鉄筋コンクリート製の角筒、円筒断面の外殻等の先端を、軟弱層の下方に位置する硬質の支持層に当接させ、外殻部材の底部になる部分にコンクリートを打ち、更にこのコンクリート上に土砂、コンクリート等を充填したものである。
このような筒基礎は、筒の下端面より上の上載土、筒と土との間の表面摩擦及び全剪断破壊における土の剪断抵抗により、実質的に基礎の有効深さを増し、地耐力が向上するものである。
【0003】
ところで先の阪神淡路大震災時には、免震構造を採用した建造物は被害が少なかったため、積層ゴムを用いたアイソレータ等各種免震構造の開発が盛んに行われている。これら免震構造に関する研究開発においては、免震原理の基本機構(支持、可動、減衰)もさることながら、構法のローコスト化が重要な課題とされている。一般的に免震構造を採用した場合、建築物の階数が多くなる程、免震構造のコストが吸収されて経済的になるのであり、現在14〜15階建て程度では従来工法と比べほとんど変わらないまでに低コスト化が進んでいる。一方、2〜3階建てがほとんどである一般住宅においては、免震構造のコストが住宅全体に占める割合が極めて高くなるため、人命保全と生活保全が要求される施設であるにもかかわらず、免震構造は充分な普及に至っていないのが実情である。
【0004】
【開発を試みた技術課題】
本発明はこのような背景から成されたものであり、筒基礎の基本構成を踏襲しつつ、施工効率が良く、また廃材を適用することで低コスト化を実現し得る、新規な地盤形成用構造体の開発を技術課題としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち請求項1記載の地盤形成用構造体は、軟弱地盤に構築される建造物の基礎であり、硬質支持層上の軟弱層中にゴム単層を積み重ねて外殻を形成し、この外殻中に充填材を充填したことを特徴とする。
この発明によれば、筒基礎の外殻部材を容易に形成することができ、施工効率を向上することができる。
【0006】
また請求項2記載の地盤形成用構造体は、前記要件に加え、前記ゴム単層は古タイヤであることを特徴とする。
この発明によれば、廃棄処理が困難である古タイヤの有効利用ができるとともに、コストを著しく抑えることができる。
【0007】
更にまた請求項3記載の地盤形成用構造体は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記充填材はセメントミルク単体あるいはセメントミルクと廃材との混合物であることを特徴とする。
この発明によれば、地盤形成用構造体を強固なものとすることができ、また廃材を混入した場合にはコストを抑えることができる。
【0008】
更にまた請求項4記載の地盤形成用構造体は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記充填材は砂もしくは砂利またはこれらの混合物であることを特徴とする。
この発明によれば、地盤形成用構造体をエラスティックに構成し、この上に構築される建造物に免震性を与えることができる。
そしてこれら各請求項記載の発明により前記課題の解決が図られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の地盤形成用構造体1について、その施工方法の一例を示すとともに具体的に説明する。
まず本発明の主要部材であるゴム単層3について説明すると、このものは、直径数10cm〜1m程度、高さ10数cm〜数10cm程度の円筒部材であり、適宜の弾性素材、好ましくは合成ゴム、天然ゴムあるいはこれらの混合ゴムを原料として成る。本実施の形態においては、ゴム単層3として請求項2で定義した古タイヤを用いる。
【0010】
図1は地盤形成用構造体1及びこれを土台として構築される建造物2等を含めた全体形状を示すものであって、地盤形成用構造体1は軟弱地盤WGに対して建造物2を構築する際に地盤改良を担う部分である。
通常このような建造物2の構築が可能である軟弱地盤WGは、砂、砂利、多湿土等から成る厚さ数10cm〜数m程度の軟弱層WLの下部に、硬質な支持層SLが存在するものである。
【0011】
まず図2(b)に示すように、軟弱地盤WGにおける施工個所の軟弱層WLに対して、ゴム単層3よりも径の大きい縦穴(直径数10cm程度)を掘削するのであり、この掘削は地表GLから支持層SLの表面にわたって行う。
【0012】
次いで図2(c)に示すように、前記縦穴に対して、その底部となる支持層SLの上面に対してコンクリートを打設して深礎5を形成する。この深礎5は、支持層SLの硬度が充分である場合には省略することもできる。
【0013】
次いで図2(d)に示すように、深礎5あるいは支持層SL上に、ゴム単層3を地表GL付近まで積み重ねてゆくのである。このとき、複数のゴム単層3をあらかじめゴム糊等で仮止めし、適宜軟弱層WLの高さ寸法に応じた筒体を構成しておけば、作業を円滑に行うことができる。
【0014】
次いで図2(e)及び図3に示すように、ゴム単層3における中空部に対して充填材4を充填するのであるが、この充填材4は地盤形成用構造体1に付与する機能に応じて選択し得るものであり、可動系と固定系とに分類される。
まず固定系の充填材4は請求項3で定義したセメントミルク単体あるいはセメントミルクと廃材たるコンクリートの破砕片等との混合物であり、一方可動系の充填材4は請求項4で定義した砂もしくは砂利またはこれらの混合物等である。
因みにこれら充填材4の充填時には、バイブレータで振動を与えたり、また特に可動系の砂等の場合には水締めを行うと、高密度の充填が行える。
【0015】
このような充填材4の充填が完了し、またセメントミルクが固まったら、適宜ゴム単層3と軟弱層WLとの間を埋め戻すことで地盤形成用構造体1が完成するのである。
【0016】
このように構築された地盤形成用構造体1上に、図2(f)及び図1に示すように建造物2の基礎が打設されるのであり、建造物2の荷重は地盤形成用構造体1を介して強固な支持層SLに伝えられるのである。
【0017】
一方、前記可動系の充填材4を用いた地盤形成用構造体1の場合、水平方向の応力に対してエラスティックであるため、地震の際には振動を吸収し、建造物2の地震応答加速度を著しく低減することができる。
【0018】
【他の実施の形態】
本発明の地盤形成用構造体1は、前記実施の形態を基本の実施の形態とするものであるが、本発明の技術的思想に基づき、次のような実施の形態も採り得る。まず図4に示すように、ゴム単層3として古タイヤを用いる場合、この古タイヤの中空部(リムとトレッドの間)に対して、あらかじめコンクリートを打っておくことが好ましい。この場合、軟弱層WLに形成された縦穴中にゴム単層3を積層する際に、下部に位置するゴム単層3の変形を防止することができる。またゴム単層3内に充填材4が満遍なく充填される。更にまた縦穴に充填されるセメントミルクにゴム単層3が浮き上がってしまうのを防止する。従って施工を正確且つ迅速に行うことができる。
【0019】
また図5に示すように、ゴム単層3の積み重ねの際に、個々のゴム単層3の間に円環状の鋼板3Bを挟み込むようにしてもよい。この場合、垂直耐力が向上する。またゴム単層3の中空部に鉛プラグ3Pを挿入するようにしてもよい。この場合、垂直耐力が向上するとともに、水平方向の復元力が向上する。
【0020】
【発明の効果】
本発明は以上述べたような構成を有するものであり、以下のような効果を奏する。
まず請求項1記載の発明よれば、筒基礎の外殻部材を容易に形成することができ、施工効率を向上することができる。
【0021】
また請求項2記載の発明によれば、廃棄処理が困難である古タイヤの有効利用ができるとともに、コストを著しく抑えることができる。
【0022】
更にまた請求項3記載の発明によれば、地盤形成用構造体1をエラスティックに構成し、この上に構築される建造物2に免震性を与えることができる。
【0023】
更にまた請求項4記載の発明によれば、地盤形成用構造体1を強固なものとすることができ、また廃材を混入した場合にはコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の地盤形成用構造体並びに建造物下部を示す縦断正面図である。
【図2】同上施工手順を段階的に示す説明図である。
【図3】本発明の地盤形成用構造体における充填材の充填の様子を破断して示す斜視図である。
【図4】ゴム単層に対してあらかじめコンクリートを打設する場合の打設の様子を示す縦断側面図及びコンクリートを打設したゴム単層の一部を破断して示す斜視図である。
【図5】ゴム単層に対して鋼板を挟み込み、また鉛プラグを挿入する実施の形態を分解し、一部を破断して示す正面図である。
【符号の説明】
1 地盤形成用構造体
2 建造物
3 ゴム単層
3B 鋼板
3P 鉛プラグ
4 充填材
5 深礎
WG 軟弱地盤
WL 軟弱層
SL 支持層
GL 地表

Claims (4)

  1. 軟弱地盤に構築される建造物の基礎であり、硬質支持層上の軟弱層中にゴム単層を積み重ねて外殻を形成し、この外殻中に充填材を充填したことを特徴とする地盤形成用構造体。
  2. 前記ゴム単層は古タイヤであることを特徴とする請求項1記載の地盤形成用構造体。
  3. 前記充填材はセメントミルク単体あるいはセメントミルクと廃材との混合物であることを特徴とする請求項1または2記載の地盤形成用構造体。
  4. 前記充填材は砂もしくは砂利またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1または2記載の地盤形成用構造体。
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