JP3682323B2 - プレストレストコンクリート用鋼棒の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ねじ部の引張強さを母材部のそれより大きくして、破断時にねじ部から破断しないで母材部で破断するようにした変形能の優れたプレストレストコンクリート用鋼棒の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼棒両端に設けられたねじを螺締してコンクリート部材に圧縮応力を付加するプレストレストコンクリート用の鋼棒は、従来図3のフローチャートに示すように鋼棒全体を規格強度に焼入れ・焼戻しの熱処理を施した後、定尺切断後その端部にねじ加工を行う方法で製造された。しかし、このような鋼棒はねじ部と母材部の引張強さが等しいため、鋼棒に過大な荷重がかかった場合に、母材部より有効断面積の小さいねじ部から破壊する。そのため、高強度のプレストレストコンクリート用の鋼棒としてその伸び性能をフルに発揮することができなかった。したがって、高強度プレストレストコンクリート用鋼棒としては、破断時にねじ部ではなく母材部で破断する鋼棒が要望されている。
【0003】
このため出願人は、ねじ部の引張強さを母材部より高くして、破断時にねじ部でなく母材部から切断するようにしたプレストレストコンクリート用鋼棒の製造方法を開示した(特公平5−53905号公報)。特公平5−53905号公報に記載発明(以下先行発明という)の製造方法は、図2のフローチャートに示すように焼戻しを1次、2次の2回に別けて行い、ねじ加工した場合に当該ねじ部の破断強度が低下する分を見越した引張強さになるように、鋼棒の全長にわたってあらかじめ焼入れ・1次焼戻しを施し、1次焼戻し後に定尺切断し、母材部分が所望の引張強さになり、ねじ部の引張強さが母材部より高くなるように、所定のねじ長さ範囲の両端部を除く母材部分を前記1次焼戻し温度より高い所定温度で焼戻しする2次焼戻しを施し、この2次焼戻し後に両端にねじ加工をする方法である。
【0004】
上記先行発明の方法によれば、ねじ部の引張強さを母材部のそれより高くできるので、後のねじ加工によりねじ部の有効断面積が母材部より小さくなっても、ねじ部の破断荷重が母材部の破断荷重より高いか、少なくとも等しくできる。これにより、破断の際にねじ部からでなく母材部が破断するプレストレストコンクリート用鋼棒を得ることができる。このような2次焼戻し熱処理の具体的方法として、1次焼戻しを施し定尺切断した鋼棒を、誘導加熱コイル中に連続的に通過させ、母材部となる部分が通過するときにのみ電力を付加して母材部のみを加熱し、2次焼戻しする方法とか、または母材部のみが加熱されるような長さの加熱炉中に装入して母材部のみを加熱して2次焼戻しする方法等がある(特公平5−53905号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記先行発明の製造方法の2次焼戻しにおいては、鋼棒のねじ部、母材部の長さが異なるたびに、誘導加熱コイルに付加する電力をオン・オフする位置、すなわちねじ部となる部分の検出位置をその都度変更するか、または異なる母材部の長さに応じた焼戻し炉を特別に必要とするなどの不便があり、このため、任意のねじ部や母材部の長さの鋼棒の生産では量産性に欠けるという問題点があった。そこで本発明は、簡易な方法で量産可能で、破断の際にねじ部からでなく母材部が破断する伸び性能のよいプレストレストコンクリート用鋼棒の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のプレストレストコンクリート用鋼棒の製造方法は、端部にねじ加工を施し、該ねじの締着によってコンクリート部材に圧縮応力を付加するプレストレストコンクリート用鋼棒の製造において、素材鋼棒または鋼線材を焼入れ後、鋼棒全体を鋼棒成品の所要規格値よりやや高い引張強さに焼戻しをする1次焼戻工程と、該1次焼戻し後に前記鋼棒端部にねじ加工を行うねじ加工工程と、該ねじ加工後に母材部の引張強さを鋼棒成品の所要規格値の引張強さになるようにねじ部と母材部を同一誘導加熱条件で高周波誘導加熱して焼戻しをする2次焼戻し工程とを含み、母材部の破断荷重よりねじ部の破断荷重が大きい鋼棒を得るものである。
【0007】
また、前記1次焼戻し後の鋼棒の引張強さはプレストレストコンクリート用鋼棒の引張強さの所要規格値の110%〜130%であり、前記2次焼戻し後の母材部の引張強さはプレストレストコンクリート用鋼棒の所要規格値の引張強さであり、前記2次焼戻し後のねじ部の引張強さは前記母材部の引張強さの少なくも110%とすることによりねじ部でなく母材部から破断するプレストレストコンクリート用鋼棒がえられる。
【0008】
前述のようにプレストレストコンクリート用鋼棒の伸び性能をフルに発揮するためには、過大荷重が掛かった場合にねじ部でなく母材部で破断することが望ましいが、ねじ部の有効径は母材部の径より小さいため、全体が同じ引張強さに熱処理された従来の製造方法の鋼棒では、過大荷重がかかった場合に母材部でなくねじ部から破壊する。したがって、母材部の引張強さを目標規格値にすると共に、ねじ部の引張強さを有効断面積の減少分だけ母材部の引張強さより大きくなるように熱処理しておけば、破壊時にねじ部から破壊しないで母材部で破壊するようにすることができる。
【0009】
本発明は、誘導加熱コイル中で径の異なる段付き鋼棒を誘導加熱すると、鋼棒の小径部は大径部に比して温度が上昇し難いという高周波誘導加熱の特徴に注目し、端部にねじ加工した鋼棒の全長を同一条件で誘導加熱により加熱すれば、ねじ部の有効径が母材部の径より小さいため、ねじ部の温度が母材部より上がらず、母材部がねじ部に優先して焼戻しされることに着目したものである。そこで本発明は、ねじ加工前に部分的に2次焼戻しを行う先行発明の方法と異なり、焼入・1次焼戻しした鋼棒にねじ加工を施した後、鋼棒全長を同一条件で誘導加熱して2次焼戻しを行うことにより、ねじ部の引張強さを、母材部の引張強さより大きくして、簡易な方法でねじ部の強度が母材部より高いプレストレストコンクリート用鋼棒を得るものである。
なお、JIS規格のプレストレストコンクリート用鋼棒のねじ部の有効径と母材部の径との比率は慣用的に定められており、本発明はJIS規格のプレストレストコンクリート用鋼棒のねじ部の有効径と母材部の径の比率の鋼棒に適用できることを見出だしたものである。
【0010】
即ち、本発明のプレストレストコンクリート用鋼棒の製造方法では、焼入れした鋼棒全体を1次焼戻しして、プレストレストコンクリート用鋼棒の所要規格の引張強さよりやや高い引張り強さに焼戻しした後に両端面にねじ加工する。この1次焼戻し後の引張強さは、ねじ加工の容易性の点からは低い方が望ましい。しかし、後述する2次焼戻しにより母材部の引張強さを所要の規格引張強さに焼戻ししたとき、ねじ部の引張強さをねじ加工による有効断面積の減少分だけ母材部より大きくなるような設定しなければならない。したがって、最終的に必要な母材強度に見合った1次焼戻し温度の選定が必要であり、この1次焼戻し温度は所要規格強度と材質鋼種により変わり実験的に定められる。前記ねじ加工後に、ねじ部と母材部を同一誘導加熱条件で高周波誘導加熱コイル中で2次焼戻しを行うと、径の大きい母材部の温度が、径の小さいねじ部の温度より高くなり母材部が優先的に焼戻しされ、母材部の引張強さはねじ部の引張強さより低くなる。この2次焼戻しの条件は、1次焼戻し温度より高い温度で母材部が所要規格の引張強さになり、ねじ部の引張強さが断面積の減少分だけ母材部の引張強さより大きくなるように1次焼戻し温度都の組み合わせにより実験的に設定される。これにより、ねじ部の破断荷重が母材部のそれより高く、破断時にねじ部でなく母材部から破断する規格強度のプレストレストコンクリート用鋼棒を得ることができる。
【0011】
上記の熱処理条件のように、焼入れを高周波誘導加熱などにより急速加熱・短時間保持後急冷する熱処理とするのは、これにより通常の熱処理に比し組織が微細で高靭性が得られ、また1次及び2次焼戻しを高周波誘導加熱などにより急速加熱・短時間保持の熱処理を行うことにより一層冷間加工性が向上し、高強度で靭性が高くねじ転造が容易になるからである。この事実は特公昭56−13568号公報において開示されている。
【0012】
前記1次及び2次の焼戻し温度は、プレストレストコンクリート用鋼棒の規格種及び素材の鋼種によって選択される。1次焼戻し温度は、前述のようにねじ加工性を考慮して選択されるが、400℃より低いとねじ加工が困難になり、700℃を越すと鋼のAc1変態点にかかり焼きなましされるので、上記温度範囲で選択される。2次焼戻し温度は、1次焼戻し温度より高くされるが鋼のAc1変態点より高くすることはできない。すなわち、1次焼戻し温度及び2次焼戻し温度は、プレストレストコンクリート用鋼棒が所定の最終製品としての材料強度が得られ、しかもねじ部の引張強さが母材部の引張強さより高い(ねじ部破断荷重が母材部の破断荷重より高い)条件を満足する組み合わせが実験値により定められる。
【0013】
なお、前述のようにねじ加工後に高周波誘導加熱すると母材部の温度が大きく上昇するが、ねじ部の温度も多少は上昇するので、これらの加熱条件と前記焼戻し温度の組み合わせも考慮して各工程の引張強さを以下のように取ることが望ましい。すなわち、前記の1次焼戻し後の鋼棒全体の引張強さを所要規格引張強さの110%〜130%の範囲になるようにし、2次焼戻し後の鋼棒の母材部の引張強さが所要規格範囲で、ねじ部の引張強さが母材部の110%以上にする条件を選ぶことにより破断時に母材部から破断し破断伸びの大きい変形能の優れたプレストレストコンクリート用鋼棒が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について先行発明と比較しながら具体的に説明する。図1は本発明の実施形態のプレストレストコンクリート用鋼棒の製造工程のフローチャート、図2は前述した先行発明のプレストレストコンクリート用鋼棒の製造工程のフローチャート、図4は2次焼戻し後の鋼棒全長の引張強さの分布を示す概念図である。
【0015】
図1に示すように、鋼棒または鋼線材の素材は、表面のスケールをショットブラストなどにより除いた後(脱スケール工程)、所定の寸法に引抜加工される(引抜工程)。引抜加工された鋼棒は高周波誘導加熱により焼入れされた後(焼入れ工程)、所要規格引張強さより高い引張強さに高周波誘導加熱により1次焼戻しされる(1次焼戻し工程)。1次焼戻しされた鋼棒は、所定長さの定尺に切断され(定尺切断工程)、転造加工などにより一端または両端に所定長さのねじ部をねじ加工される(ねじ加工工程)。その後、高周波誘導加熱により母材部が所要規格の引張強さになる温度で2次焼戻し処理が行われる(2次焼戻し工程)。そして検査工程を経て成品として出荷される。このように本発明の製造方法は、ねじ加工後に全体を同一条件で2次焼戻しを行う点で、前述の図2のフローチャートに示した母材部のみを2次焼戻した後にねじ加工する、先行発明の製造方法とは異なる。
【0016】
図4は本発明実施形態により、前記2次焼戻しした鋼棒の引張強さの分布を概念的に示す図である。図の横軸は鋼棒の全長を示し、縦軸は鋼棒各部の引張強さを示す。鋼棒は焼入れ・1次焼戻しにより、全長が図の破線に示すσ1の引張強さにされる。1次焼戻し後に定尺切断、ねじ加工された鋼棒は、母材部の引張強さがプレストレストコンクリート用鋼棒の所望規格の引張強さσ2になる条件で鋼棒全長を高周波誘導加熱により2次焼戻しされる。この誘導加熱の際、ねじ部は母材部より有効径が小さいため、温度が上昇しない。したがって、図の実線で示すように、ねじ部の引張強さはσ1のままほとんど変化しないで、ねじ部を除いた母材部の引張強さがプレストレストコンクリート用鋼棒の規格の引張強さσ2に焼戻しされる。ここで、前記母材部の引張強さσ2は、プレストレストコンクリート用鋼棒の破断荷重が目標規格の破断荷重になるように設定された引張強さであり、前記1次焼戻し後の引張強さσ1はねじ加工によりねじ部の有効断面積が母材部より小さくなったときに、ねじ部の破断荷重が規格破断荷重またはそれ以上になるように設定された引張強さである。これによって、ねじ部の破断荷重が母材部の破断荷重より高いか、少なくとも等しくなる鋼棒が得られ、破断の際にねじ部からでなく母材部が破断するプレストレストコンクリート用鋼棒を得ることができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例についてさらに具体的に説明する。図5は本実施例に使用した製造装置の構成を示す図、図6は本実施例の試験片の製造工程を示すである。これらの図において、引抜加工された鋼棒素材Wは、図5の右側から連続焼入れ・1次焼戻し装置30のピンチロール31、縦段矯正ロール32、横段矯正ロール33、ピンチロール34を介して連続的に送り出され、焼入れ用高周波誘導加熱コイル35で900℃または960℃の焼入温度まで加熱され、水冷ジャケット36で急冷されて焼入れされる。ついで1次焼戻し用高周波誘導加熱コイル37で565℃または645℃の1次焼戻し温度に加熱された後、水冷ジャケット38により急冷されピンチロール39で送り出される。
【0018】
次に、切断装置20のピンチロール21で送り出された鋼棒は、切断刃22により3000mm長さに定尺切断される。定尺切断された鋼棒は、ねじ転造機25の転造ロール26により、その一端または両端にねじ加工される。その後、鋼棒は2次焼戻し装置10に移送され、2次焼戻し装置10のピンチロール11により連続的に抽送され、2つの2次焼戻し用高周波誘導加熱コイル12及び13により2次焼戻し温度に加熱された後、水冷ジャケット14において急冷されピンチロール15で送り出される。上記設備を用いて作成したねじ付き鋼棒の母材部とねじ部から試験片を採取して引張試験を行った。
【0019】
[実施例1] 実施例1では材質SAE1547の23mm径の引抜材を用い、前記製造装置により前記図6に示す工程で試験片を製造した。熱処理温度は、表1に示すが、鋼棒を50℃/secの加熱速度で急速加熱して900℃で60sec間保持後、急冷して焼入れした後、再び前記加熱速度で急速加熱して565℃で60sec間保持後、急速冷却する1次焼戻しを行った。これにより、全長が引張強さ1136N/mm2 のB種1号規格の強度の鋼棒が得られた。この鋼棒を3,000mm長さに定尺切断し、両端にM24×P2.0のねじを転造加工した。このねじ加工した鋼棒を、高周波誘導加熱コイル中に連続して通し前記加熱速度で目標温度400〜700℃の範囲に再加熱し、60secの保持後に急速冷却して2次焼戻しを行った。この鋼棒の母材部とねじ部から試験片を採取して引張試験を行った。その試験結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
表1の左欄には試験片の熱処理温度を、右欄には引張試験結果を示す。表左欄に示すように、2次焼戻しの高周波誘導加熱において、母材部の実測温度392〜688℃では、母材部に比してねじ部の加熱温度が23〜29℃低くなった。これは前述したようにねじ部の径が母材部より小さいため加熱されないからである。表右欄に示すように、2次焼戻しを施さないままの試験片はねじ部の破断荷重PSが451KNと、母材部の破断荷重PWの472KN(引張強さ1136N/mm2 )に比して低く、ねじ強度比(PS/PW)は0.956になりねじ部から破断した。これに2次焼戻しを施すことによって、前述のように母材部の引張強さは低下するが、ねじ部の引張強さはあまり低下しない。表1から分かるように、母材部の2次焼戻の温度が1次焼戻し温度の565℃に近い578℃以下では母材部の引張り強さの低下は少なく、ねじ部と母材部の破断荷重の差、すなわちねじ強度比(PS/PW)はほとんど変わらないことが分かる。これにより、2次焼戻の温度が578℃以下では破断はねじ部から生ずる。2次焼戻温度が1次焼戻し温度より高い688℃になると、焼戻し効果により母材部の引張強さが低下する一方、前記温度差のためねじ部の引張強さの低下は少なく、ねじ部の引張強さが母材部のそれより大きくなる。これにより、破断荷重も、母材部の荷重439KNよりねじ部の荷重は444KNと大きくなり、ねじ強度比(PS/PW)が1.020となって破断はねじ部でなく母材部から発生する。この場合の母材部の強度は表の下欄に規格を示すようにJIS・A種2号のプレストレストコンクリート用鋼棒規格を満足する。
【0022】
上記実施例では、1次焼入れによりJIS B種1号相当の強度を有する鋼棒を作成し、これをねじ加工後に高周波誘導加熱により、母材部が688℃の温度に加熱する条件で鋼棒全体を2次焼戻しすることにより、ねじ部破断荷重が母材部破断荷重より大きく、ねじ部でなく母材部から破断するJIS A種2号規格のプレストレストコンクリート用鋼棒が得られることが分かった。
【0023】
[実施例2] 実施例2は、材質NC48SiCr規格の21mm径の引抜材を用い、実施例1と同様の製造工程で表2の熱処理条件で試験片を作成し、引張試験を行った。その結果を表2に示す。なお、ねじ加工はM22×P2.0にした。
【0024】
【表2】
【0025】
表2は、表1と同様に左欄に試験片の熱処理温度を、右欄に引張試験結果を示す。鋼棒は960℃で焼入れし、1次焼戻し温度を2種類に選択し、表上側欄に560℃焼戻しを、表下側欄に645℃焼戻しを行った鋼棒の結果を示す。表上側欄の560℃で1次焼戻しした鋼棒は、母材部の破断荷重(PW)が511KN(引張強さ1475N/mm2 )のJIS規格D種1号相当の強度(規格値は表下欄に示す)を有し、ねじ部の破断荷重(PS)は483KNでねじ強度比(S/PW)が0.945となりねじ部から破断した。これを母材部の実測温度486〜678℃で高周波誘導加熱したとき、ねじ部の加熱温度が母材部に比して78〜84℃低くなった。この結果、母材部の実測温度594℃以下の焼戻しでは、ねじ強度比(PS/PW)が0.945〜0.992となり、破断はねじ部から生じた。母材部の2次焼戻温度が678℃になると、焼戻し効果により母材部の引張強さが低下し、ねじ部の破断荷重(PS)が457KNに対し、母材部の破断荷重(PW)は430KNになり、ねじ強度比(PS/PW)が1.063となり、破断はねじ部でなく母材部から発生した。この場合の母材部の強度はC種1号のプレストレストコンクリート用鋼棒規格を満足する。
【0026】
一方、表下側欄の1次焼戻しを645℃で行った鋼棒は、母材部の破断荷重(PW)が444KN(引張強さ1282N/mm2 )のJIS規格C種1号相当の強度(規格値は表下欄に示す)を有し、ねじ部の破断荷重(PS)は424KNでねじ強度比(PS/PW)が0.955となりねじ部から破断した。これを母材部の実測温度584〜700℃で高周波誘導加熱したとき、ねじ部の加熱温度は母材部に比して70〜72℃低くなった。この結果、母材部の実測温度670℃以下では、ねじ強度比(PS/PW)が0.955〜0.986となり、破断はねじ部から生じた。母材部の2次焼戻温度が700℃では、母材部の破断荷重(PW)が404KN、ねじ部の破断荷重(PS)が457KNにになり、ねじ強度比(PS/PW)が1.063で、破断はねじ部でなく母材部から発生した。この場合の母材部の強度はJIS規格B種1号のプレストレストコンクリート用鋼棒規格を満足する。
【0027】
上記の試験結果から、1次焼入れによりD種1号相当の強度を有する鋼棒を作成し、これをねじ加工後に高周波誘導加熱により、母材部が678℃の温度に加熱する条件で鋼棒全体を2次焼戻しすることにより、ねじ部破断荷重が母材部破断荷重より大きく、ねじ部でなく母材部から破断するC種1号規格のプレストレストコンクリート用鋼棒が得られることが分かった。また、同様にC種1号相当の強度を有する鋼棒を,ねじ加工後に母材部が700℃の温度に加熱する条件で2次焼戻しすることにより、ねじ部でなく母材部から破断するB種1号規格のプレストレストコンクリート用鋼棒が得られることが分かった。
【0028】
以上説明したように、本発明実施例の製造方法によれば、適切な焼入れ・1次焼戻しした鋼棒素材をねじ加工後に、全体を高周波誘導加熱により加熱し、適切な温度で2次焼戻しを行うことにより、母材部のみが部分的に焼戻しされて、母材部が規格の強度を有しながら、ねじ部の強度が母材部より高く破断がねじ部でなく母材部から生ずる伸び性能のよいプレストレストコンクリート用鋼棒が得られる。例えば、ねじ部でなく母材部から破断する伸び性能のよいJIS規格A種2号のプレストレストコンクリート用鋼棒を製造するには、材質SAE1547のB種1号相当の1次焼戻した鋼棒をねじ加工後に、全体を高周波誘導加熱により母材部が688℃で2次焼戻しすれば良く、同様にJIS規格C種1号のプレストレストコンクリート用鋼棒を製造するには、材質48SiCrのD種1号相当の1次焼戻した鋼棒を、同様に母材部が678℃で2次焼戻しすれば良いことが分かる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、母材部のみを部分焼戻しするような特別の方法や装置を必要としないで、過大荷重がかかった場合にねじ部でなく母材部から破断する伸びの大きい高強度のプレストレストコンクリート用鋼棒が簡易に量産できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のプレストレストコンクリート用鋼棒の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】先行発明のプレストレストコンクリート用鋼棒の製造工程の概要を示すフローチャートである。
【図3】従来のプレストレストコンクリート用鋼棒の製造工程の概要を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態のプレストレストコンクリート用鋼棒の2次焼戻し後の全長の引張強さの分布を示す概念図である。
【図5】本発明実施例に使用したプレストレストコンクリート用鋼棒の製造装置の構成を示す図である。
【図6】本発明実施例のプレストレストコンクリート用鋼棒の試験片の製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 2次焼戻し装置
11 ピンチロール
12 2次焼戻し加熱コイル
13 2次焼戻し加熱コイル
14 急冷装置
15 ピンチロール
20 切断装置
21 ピンチロール
22 切断刃
25 ねじ転造機
26 転造ロール
30 1次焼入れ・焼戻し装置
31 ピンチロール
32 横ロール
33 縦ロール
34 ピンチロール
35 焼入れ加熱コイル
36 急冷装置
37 1次焼戻しコイル
38 急冷装置
39 ピンチロール
Claims (2)
- 端部にねじ加工を施し、該ねじの締着によってコンクリート部材に圧縮応力を付加するプレストレストコンクリート用鋼棒の製造において、素材鋼棒または鋼線材を焼入れ後、鋼棒全体を鋼棒成品の所要規格値よりやや高い引張強さに焼戻しをする1次焼戻工程と、該1次焼戻し後に前記鋼棒端部にねじ加工を行うねじ加工工程と、該ねじ加工後に母材部の引張強さを鋼棒成品の所要規格値の引張強さになるようにねじ部と母材部を同一誘導加熱条件で高周波誘導加熱して焼戻しをする2次焼戻し工程とを含み、母材部の破断荷重よりねじ部の破断荷重が大きい鋼棒を得ることを特徴とするプレストレストコンクリート用鋼棒の製造方法。
- 前記1次焼戻し後の鋼棒の引張強さはプレストレストコンクリート用鋼棒の引張強さの所要規格値の110%〜130%であり、前記2次焼戻し後の母材部の引張強さはプレストレストコンクリート用鋼棒の所要規格値の引張強さであり、前記2次焼戻し後のねじ部の引張強さは前記母材部の引張強さの少なくも110%とすることを特徴とする請求項1に記載のプレストレストコンクリート用鋼棒の製造方法。
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