JP3681691B2 - 歯科用磁性アタッチメント及びこれに結合する無段階角度調整キーパーとアバットメント並びに歯科用工具 - Google Patents
歯科用磁性アタッチメント及びこれに結合する無段階角度調整キーパーとアバットメント並びに歯科用工具 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、埋入人工歯根(いわゆるインプラント)に義歯を結合するためのアバットメント、キーパー、アタッチメント等の歯科用結合具及びこれを組立てるための器具(以下、歯科用工具と云う)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
人工歯を義歯床に装着したものを義歯と呼び、義歯を口腔内に固定するための人工歯根をあご骨に植立し、フィクスチャーとアバットメントから構成される人工歯根のアバットメント部分に義歯床を結合して使用に供している(図8)。義歯床とアバットメントを結合するため、一般に義歯床に歯科用アタッチメントを取り付け、更にアタッチメントと対をなして結合機能を持つキーパーをアバットメント上部に取り付け、アタッチメントとキーパーとの結合作用により義歯床を人工歯根に固定している。
【0003】
登録実用新案第3007272号には、図8に示すように義歯床に取り付ける歯科用アタッチメントとして磁石構造体Aを用い、キーパーとして磁性金属Bを固定支持台(アバットメント)に相当するネジCにろう付けしたものを用いる歯科用結合具が開示されている。ネジ付キーパーは、あご骨内に埋入されたフィクスチャーDにねじ込むことにより固定される。
【0004】
アバットメントとキーパーの固定について、図9に示すように特開2000−24004号に別の方法が開示されている。即ち、フィクスチャーDにアバットメントCをアバットメントスクリューHにより止め、アタッチメントである磁石構造体(図示なし)に吸引されるべき磁性金属製キーパー本体Bを別のねじJによりアバットメントスクリューHに連結している。更に、キーパー本体BとアバットメントCとの連結面には、多角形の凹凸による嵌め合いを設けている。
【0005】
上記先行技術は、何れもアタッチメントとキーパーとの結合に磁力を用いているため、義歯の着脱が容易であり、義歯の清掃殺菌等に便利である。しかし、何れも結合面がフィクスチャーの軸方向に対して原則として垂直面を形成するように構成されている。
【0006】
ところで、一般にインプラントにおいては、歯列弓において人工歯根を植立する位置によって植立の方向、即ちフィクスチャーの軸方向が異なる。これは、歯列弓において一般に口腔の奥の位置に植立する場合に、口唇が植立作業の邪魔になり、フィクスチャーの頭部を口腔側に、また足部を頬側に傾けて埋入しがちとなるためとされる。また、あご骨に何らかの強度不足部位が存在し、これを回避して植立するため、不規則な方向に傾くこともある。
【0007】
義歯を安定且つ快適に使用するためには、対向歯が人工歯にもたらす咬合圧を前記キーパーの結合面において垂直に受けることが望ましい。これは、結合面に対して傾斜した力が作用するとフィクスチャー頭部がその力と同方向に、また足部がその反作用で反対方向に動こうとする捻転力が働き、あご骨に無理な圧迫を与えがちになるからである。このような事情から、この結合面が咬合圧に対して垂直になるように、結合面をフィクスチャーの軸方向(植立方向)に対し或る角度を持って傾斜させる必要がある。
【0008】
しかし、この結合面を植立方向に対して或る角度を持って形成するために、仮にアバットメントに対するキーパーの傾斜角度、義歯床に対するアタッチメントの傾斜角度を予め設定して製作するとしても、この角度をスピーディかつ正確に調整し確定することは困難かつ煩雑である。更に、スクリューによってフィクスチャーに固定する以上、傾斜方向を口腔内の所定方向に正確に一致させることと安定な固定との両立も充分にできない。
【0009】
製作時にこのような調整を行わずに咬合位置を安定化する方法として、特開2001−145642号には、図10に示すようにキーパーBの結合面を浅い凹球面に製作し、磁石構造体であるアタッチメントAの結合面を幾分大きいサイズで対応する凸球面に製作し、磁力により両者を結合して咀嚼位置を安定化する方法が開示されている。しかし、強力な磁界の中で義歯を埋入人工歯根に結合する際に、咬合圧を垂直に伝達するようにキーパー並びにフィクスチャーの植立方向に対するアタッチメントAの傾斜角を正確に調整するのは容易ではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、歯列弓における人工歯の位置や本数に関係なく、咬合圧が義歯床に装着した歯科用アタッチメントとキーパーとの結合面に垂直に作用するように、インプラント上部の傾斜角度を自由に調整することにより義歯を安定化させ、義歯の適合性を改善し、義歯の正確な取付けを容易にすることを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1の本発明はキーパーに関するものであり、埋入人工歯根に磁力により義歯床を結合するためのキーパー5であって、反磁性金属を除く金属製の球体3と、この球体の赤道面において球面により外接し且つ褶動が可能な磁性金属製円環体4と、前記球体3及びアバットメント7を貫通して共にフィクスチャー9に固定するスクリュー2と、からなることを特徴とする無段階角度調整キーパーの発明である。
【0012】
前記球体3の表面を充分滑らかに製作すれば、これに球面によって密着して外接する前記円環体4が順調に無段階に褶動することができ、第1本発明が成立する。但し、円環体の球体からの脱落防止及び角度調整のための褶動を容易かつ円滑に行うために、球体3に外接する円環体4の球面部分に例えば歯科用合成樹脂材料のように摩擦に対する潤滑性のある被覆を施しても良い。
【0013】
第2の本発明はキーパーとペアで用いるアバットメントに関するものであり、請求項1又は2記載のキーパー5と組合せるアバットメント7であって、前記円環体4に当接し且つ円環体が咬合圧に対し垂直平面を形成するように傾斜を調整した磁性金属製円環状の上平面部6とフィクスチャー9に接合する回転角度を固定し得る下凹面部8とを備え、この上平面部6と下凹面部8との空間を鋳造により形成した充填部71と、この充填部の上面に前記球体3に外接する凹球面72を備えたこと、を特徴とする無段階角度調整アバットメント7の発明である。
【0014】
前記上平面部6は、アバットメントを製作する便宜のため、円環体状つまり座金状の独立部品であっても良い。但し、充填部71を鋳造する際の鋳造材として歯科用合金やポリスルホン、ポリエーテルスルホン等の合成樹脂に適切なフィラーを配合した歯科材料などを用いることが可能であり、用いる歯科材料によって容易に上平面を形成できるのであれば、上平面部6は充填部71と同一材料により一体に鋳造成形したものであっても良い。
【0015】
前記下凹面部8は、予めフィクスチャー9の頭部に設けた回転防止凸部91に嵌め合いする形状の独立部品であっても良い。但し、充填部71を鋳造する際に用いる材料によって容易に下凹面を形成できるのであれば、上記同様に、下凹面部8は充填部71と一体に鋳造成形したものであってもも良い。
【0016】
第3の本発明は歯科用アタッチメントに関するものであり、義歯床に装着し請求項1記載のキーパー5と結合するための磁性アッタチメント1であって、前記キーパー5に対向する平面には前記球体3に外接する凹球面13を設け、少なくとも前記円環体4に当接する平面部は永久磁石により形成された平面磁石部11であること、を特徴とする歯科用磁性アタッチメントの発明である。
【0017】
前記平面磁石部11は、アタッチメント本体部12と独立の部品であっても良いが、本体部12と一体に形成して磁化することにより結果的に永久磁石の磁極となった平面部分であっても良い。
【0018】
前記アタッチメント本体部12の形状は、前記平面磁石部11と前記凹球面13を設ける他は、適切な接着剤等を用いて義歯床に充分固定できる限り特段の制約が無い。但し、本発明に必須ではないが、アタッチメント本体部12に義歯床の脱落を防ぐ形状の繋ぎ止部14を設けるのは、義歯床が半硬化の時点でアタッチメント1を押し込むのみで脱落せずに正確に装着できるので好ましい。
【0019】
第4の本発明は、前記本発明に係るキーパーとアバットメントを組立てるための工具に関するものであり、請求項1又は2記載のキーパー5と請求項3−6何れかに記載のアバットメントを組立てるための工具10であって、内部が中空若しくは中実の円筒形永久磁石15の一端の磁極部に前記球体3に外接する凹球面17を形成し、他端の磁極部に把持用の支持部16を設けたこと、を特徴とする歯科用工具の発明である。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1により、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施例を縦断面的に示した模式図である。人工歯根が、人工歯に対して対向歯から加わる咬合圧の方向と或る角度を持ってあご骨に植立されている場合に、最良の本発明の効果が得られる。図1において、人工歯根を構成するフィクスチャー9があご骨に埋入されている。本発明に係るアバットメント7は、この実施例ではフィクスチャー9の頭部突起91と嵌め合いする形状の下凹面部8と、咬合圧を垂直に受けるように配置された上平面部6と、両者の空間を充填するように鋳造により形成した充填部71とから構成される。
【0021】
これらの部品は適切な接着剤により接合するか又は充填部71を鋳造する際に部品を挿入して鋳造(インサート成形)するかして互いに結合されており、全体をスクリュー2によりフィクスチャー9に締め付けることで軸方向の動きを固定する。図2にアバットメントの一例を示す。
【0022】
図2(a)は、アバットメント7の上面すなわちキーパー5と結合する上平面部6を見る平面図である。上面にはキーパー5の形状に対応して上平面部6に内接する凹球面72が設けられており、凹球面にはスクリュー2が貫通する孔が設けられている。図2(c)は、アバットメント7の側面図であり、上平面部6と充填部71と下凹面部8が一体化し、上平面部6が咬合圧を垂直に受けるとき下凹面部8がフィクスチャー9の軸方向に垂直に対面するように、充填部71の形状が鋳造されている。
【0023】
図2(b)は、アバットメント7の底面図であり、下凹面部8形状の一例を示している。アバットメントの下面とフィクスチャー9との回転方向の動きは、フィクスチャー頭部との間に働く摩擦力が充分であれば、スクリュー2による締め付けのみでも固定できる。しかし、図2(b)に示したような互いに嵌め合いできる多角形の凹凸をアバットメントの下凹面部8とフィクスチャー頭部に配設することで確実を期すことができる。上平面部6を咬合圧の加圧方向と垂直になるようにセットして鋳造するので、スクリュー2の回転軸との傾斜の調整が多角形凹凸の形状による影響を受けることは無い。
【0024】
図1において本発明に係るキーパー5は、この実施例では金属製球体3と、この球体の赤道面において球体に外接する円環体4と、球体3の中心及び前記アバットメント7を貫通して球体及び円環体をアバットメント7の上平面部6に固定するスクリュー2とから構成されている。図3(a)は、この3部品の組立を示す外観斜視図である。なお、この図ではスクリュー2と球体3は夫々別個の部品として説明しているが、別の実施形態として、スクリュー2と球体3とを一体化したものも実用的に有用である。即ち、球体3の一部分が突起してできる軸状部分に雄ねじを刻むことでスクリュー2を球体3と一体に形成しても良く、本発明はこの実施形態を包含するものとする。これにより、球体3を回転させることで一体化されたスクリュー2に相当する雄ねじを締めることができ、キーパー5とアバットメント7がフィクスチャー9に固定される。
【0025】
円環体内側の球面によって円環体4は球体3と外接しており、円環体4が球体3から脱落しないためには、実用上、円環体の上下方向の幅が或る程度必要である。図3(a)から理解される通り、円環体4と球体3とは自由自在の方向に褶動することができるので、円環体4とスクリュー2の回転軸との角度は、キーパー5を組立てる際に、後述する工具10を用いて球体3と円環体4とを精密に褶動させることで、調整する。上記図2(c)に示したようにアバットメント7の充填部71上面には円環体4より外にはみ出た球体3の半球部分にフィットする凹球面72が設けられており、スクリュー2をフィクスチャー9に締め付けることでキーパー5がアバットメント7を介してフィクスチャー9に固定される。
【0026】
円環体4の製作事例としては、金属製円環の内側に球面を切削加工し、半割にして球体3に外接させた後、ろう付け或は溶接しても良い。または、球体3が通過できる程度の内径を持つ円筒形の円環体を球体3に外接させた後、球体金属とは接着しないが円環体金属とは接着する硬化性合成樹脂をこの隙間に注入し、球体脱落防止と球体自由回転の潤滑とを兼ねた被覆を形成しても良い。図3(b)は、このように潤滑性被覆41を施す円環体内側部位を示している。
【0027】
図1において、本発明に係る歯科用アタッチメント1は、義歯床に装着されており、磁力により前記キーパーの円環体4を吸引結合するための平面磁石部11を備えている。図4(a)は、歯科用アタッチメント1の一例を示す縦断面図である。アタッチメント本体部12のキーパー5に対向する面には、前記円環体4より外にはみ出た球体3の半球部分にフィットする凹球面13を備えている。
【0028】
従って、キーパー5の円環体4は、製作材料として磁性金属を用いることが必須である。しかし、キーパー5の球体3は、反磁性材料を用いないことが必須であるが、非金属であっても耐熱性や硬度が充分であれば使用可能であり、特段の制約は無い。但し、アバットメントの充填部71を歯科用金属材料により鋳造する場合には、凹球面72の形成上、球体3の材料が金属である必要がある。
【0029】
図1において、例えば硬化した歯科用材料により形成された義歯床に、咬合圧に対して正しくセットされた人工歯を装着し、同時に図4(a)に示したような本発明に係るアタッチメント1を咬合圧に対して平面磁石部11が垂直になるように人工歯に対向する義歯床下面に装着し、適切な接着剤を用いて固定する。或は、半硬化した歯科材料により形成された義歯床の所定位置にアタッチメント1を押し込みした後、歯科材料を硬化させて固定する。この場合、図4(b)に示すように脱落防止用の繋ぎ止部14を設けると一層好ましい。
【0030】
実施例2として、上顎又は下顎歯列弓全体に亘る義歯を適切な位置に植立した複数本のインプラントにより固定する総義歯に、本発明を適用した事例について説明する。図5(a)は、歯列弓全体に亘る義歯床に人工歯を装着したいわゆる総義歯を示す平面図である。図5(b)は、総義歯の下側に植立され、総義歯を支えて固定するインプラント(この事例では4本)を示す平面図である。
【0031】
図6(a)は、前図の歯列弓を両頬方向に当るX−X’線沿いに切断した断面における総義歯及びインプラントの関係を示す模式図である。この事例では、咬合圧の作用方向よりかなり舌側に傾いて顎堤に植立されたフィクスチャーに、本発明に係るアバットメントが結合され、これに本発明に係るキーパーがネジ止めされている。本発明に係るアタッチメントは、人工歯に直接的に接触する形で義歯床に組み込まれており、義歯床を磁力によりインプラントに結合する。
【0032】
本発明に係るアバットメントとキーパーの作用は、図6(a)に示したように全てのインプラントに関してキーパーの金属円環体上面がアタッチメントから受ける咬合圧に対して垂直面を形成するように、アバットメント製作時にキーパーの金属円環体上面の方向を無段階的に自由に調整できることである。
【0033】
図6(b)は、同じく前図を歯列弓に沿ったY−Y’線において切断した断面を模式的に示す図である。図に示すようにインプラントの植立位置によらず、口唇側と奥歯側とで植立方向がかなり異なるインプラントの上面がアタッチメントから受ける咬合圧に対して垂直面を形成するように、本発明に係るアバットメントとキーパーの作用により金属円環体上面の方向を無段階的に自由に調整することができる。
【0034】
本発明に係る歯科用工具の詳細を図5により説明する。図5は工具10の一事例を示す縦断面図である。この実施例では中実の円筒形永久磁石15の一方の磁極部に、キーパー5の球体3に外接する凹球面17を形成してある。また、円筒形永久磁石15の他方の磁極部に相当する位置に、把持用の支持部16を設けてある。
【0035】
前記工具10の把持部16を本発明に係る歯科用結合具を組立てる装置(図示せず)により把持し、スクリュー2を貫通させた球体3が工具の凹球面17にフィットするように、球体3に外接した磁性金属体である円環体4を磁力により工具10に装着する。次いで、スクリュー2の回転軸の方向を、予め測定したフィクスチャー9の植立方向と対向歯から与えられる咬合圧の作動方向との角度に合わせて調整し、固定する。
【0036】
次に、例えば磁性金属体から製作した上平面部6を上記円環体4に磁力吸引させ、これに接して歯科用印象材などを用いて前記スクリュー2の回転軸方向に沿うようにアバットメント充填部71を形成し、この充填部の端に予め製作した下凹面部8をフィクスチャー9の軸方向と合わせながら接着し、印象材を硬化させた後、円環体4を球体3と共に凹球面17から取り外す。
【0037】
次に、この印象材により形成されたアバットメント7模型を用いて鋳物砂などにより鋳造用の鋳型を製作する。次いで、この鋳型を使用して、前記上平面部6用部品、前記下凹面部8用部品、歯科用合金などを用いて所望のアバットメン7を鋳造する。
【0038】
上記説明において、工具の製作材料を除く全ての材料については、磁性、硬化性や固化性、硬度などの物理的化学的性質に関して記述した要件のほかに、例えば慢性毒性やアレルギー等の人体に対する如何なる有害性(遺害性)も有しないことが大前提であることは云うまでも無い。
【0039】
【発明の効果】
本発明に係る一対のアバットメントとキーパーを用いた埋入人工歯根は、歯列弓の如何なる位置において如何なる埋入方向に植立する場合にも、キーパーのアタッチメントに結合する面が常に咬合圧を垂直に受けるように、結合面の方向を調整することができる。しかも、この調整は、無段階であり、如何なる微調整も可能である。この結果、埋入人工歯根があご骨を無理に圧迫するような捻転が生じないため、患者に快適であり、しかも治療結果が長持ちする。
【0040】
インプラントの技工においても、本発明に係るアバットメントとキーパーを組合せて、与えられた既存のフィクスチャーにスクリュー1本で極めて容易に結合することができる。しかも、アバットメントとキーパーは製作時に予め咬合圧に対する方向性を確定してあるので、フィクスチャーに結合する際の微調整は短時間に容易に行うことができる。この結果、歯科治療時の患者の苦痛負担が大いに軽減される。
【0041】
歯列弓全体又は大部分に亘る総義歯を埋入人工歯根に結合する場合、図5に示したようにより多数本数の人工歯根を埋入する必要がある。このため、植立方向の異なる多数の埋入歯根の上面を咬合圧の作用方向に対し垂直に調整する必要が生じ、従来は煩雑な製作作業を要した。このような場合に本発明を適用すると、容易に個々のインプラント上面を咬合圧に対して垂直方向に無段階的に正確に調整することができる。これにより、総義歯の安定性、適合性を著しく改善することができる。
【0042】
本発明に係るキーパーはスクリューにより上下方向にも横方向にも固定されている。義歯に装着したアタッチメントは、上下方向に関して磁力によりキーパーに固定されると同時に、半球に近い球面により横方向にも固定される。本発明に係るキーパーとアタッチメントの組合せを使用することで、患者は咬合圧を垂直に受けるように義歯を容易かつ正確に人工歯根に結合することができる。この結果、義歯の清掃殺菌などの際にずれ等の不具合を生じないので、義歯の安定性が増し、義歯の適合性改善にも役立っている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を説明する模式図
【図2】 本発明に係るアバットメントを例示する平面図、底面図、側面図
【図3】 本発明に係るキーパーの外観を示す斜視図
【図4】 本発明に係る歯科用アタッチメントを例示する縦断面図
【図5】 総義歯に本発明を適用した事例を説明する模式図
【図6】 (a)は前図のX−X’断面図、(b)は同Y−Y’断面図
【図7】 本発明に係る歯科用工具を例示する縦断面図
【図8】 従来のアタッチメント、キーパー、アバットメントの一例を説明する模式図
【図9】 従来のアタッチメント、キーパー、アバットメントの別事例を説明する断面図
【図10】 従来のアタッチメント、キーパーを説明する断面図
【符号の説明】
1 歯科用磁性アタッチメント
11 平面磁石部 12 アタッチメント本体部
13 凹球面 14 繋ぎ止部
2 スクリュー
3 金属製球体
4 磁性金属製円環体
41 潤滑性被覆を施す部位
5 無段階角度調整キーパー
6 上平面部
7 無段階角度調整アバットメント
71 充填部 72 凹球面
8 下凹面部
9 フィクスチャー
91 回転防止凸部
10 歯科用工具
15 円筒形磁石 16 支持部 17 凹球面
A アタッチメント
B キーパー
C アバットメント
D フィクスチャー
H アバットメント用スクリュー
J キーパー用スクリュー
【発明の属する技術分野】
本発明は、埋入人工歯根(いわゆるインプラント)に義歯を結合するためのアバットメント、キーパー、アタッチメント等の歯科用結合具及びこれを組立てるための器具(以下、歯科用工具と云う)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
人工歯を義歯床に装着したものを義歯と呼び、義歯を口腔内に固定するための人工歯根をあご骨に植立し、フィクスチャーとアバットメントから構成される人工歯根のアバットメント部分に義歯床を結合して使用に供している(図8)。義歯床とアバットメントを結合するため、一般に義歯床に歯科用アタッチメントを取り付け、更にアタッチメントと対をなして結合機能を持つキーパーをアバットメント上部に取り付け、アタッチメントとキーパーとの結合作用により義歯床を人工歯根に固定している。
【0003】
登録実用新案第3007272号には、図8に示すように義歯床に取り付ける歯科用アタッチメントとして磁石構造体Aを用い、キーパーとして磁性金属Bを固定支持台(アバットメント)に相当するネジCにろう付けしたものを用いる歯科用結合具が開示されている。ネジ付キーパーは、あご骨内に埋入されたフィクスチャーDにねじ込むことにより固定される。
【0004】
アバットメントとキーパーの固定について、図9に示すように特開2000−24004号に別の方法が開示されている。即ち、フィクスチャーDにアバットメントCをアバットメントスクリューHにより止め、アタッチメントである磁石構造体(図示なし)に吸引されるべき磁性金属製キーパー本体Bを別のねじJによりアバットメントスクリューHに連結している。更に、キーパー本体BとアバットメントCとの連結面には、多角形の凹凸による嵌め合いを設けている。
【0005】
上記先行技術は、何れもアタッチメントとキーパーとの結合に磁力を用いているため、義歯の着脱が容易であり、義歯の清掃殺菌等に便利である。しかし、何れも結合面がフィクスチャーの軸方向に対して原則として垂直面を形成するように構成されている。
【0006】
ところで、一般にインプラントにおいては、歯列弓において人工歯根を植立する位置によって植立の方向、即ちフィクスチャーの軸方向が異なる。これは、歯列弓において一般に口腔の奥の位置に植立する場合に、口唇が植立作業の邪魔になり、フィクスチャーの頭部を口腔側に、また足部を頬側に傾けて埋入しがちとなるためとされる。また、あご骨に何らかの強度不足部位が存在し、これを回避して植立するため、不規則な方向に傾くこともある。
【0007】
義歯を安定且つ快適に使用するためには、対向歯が人工歯にもたらす咬合圧を前記キーパーの結合面において垂直に受けることが望ましい。これは、結合面に対して傾斜した力が作用するとフィクスチャー頭部がその力と同方向に、また足部がその反作用で反対方向に動こうとする捻転力が働き、あご骨に無理な圧迫を与えがちになるからである。このような事情から、この結合面が咬合圧に対して垂直になるように、結合面をフィクスチャーの軸方向(植立方向)に対し或る角度を持って傾斜させる必要がある。
【0008】
しかし、この結合面を植立方向に対して或る角度を持って形成するために、仮にアバットメントに対するキーパーの傾斜角度、義歯床に対するアタッチメントの傾斜角度を予め設定して製作するとしても、この角度をスピーディかつ正確に調整し確定することは困難かつ煩雑である。更に、スクリューによってフィクスチャーに固定する以上、傾斜方向を口腔内の所定方向に正確に一致させることと安定な固定との両立も充分にできない。
【0009】
製作時にこのような調整を行わずに咬合位置を安定化する方法として、特開2001−145642号には、図10に示すようにキーパーBの結合面を浅い凹球面に製作し、磁石構造体であるアタッチメントAの結合面を幾分大きいサイズで対応する凸球面に製作し、磁力により両者を結合して咀嚼位置を安定化する方法が開示されている。しかし、強力な磁界の中で義歯を埋入人工歯根に結合する際に、咬合圧を垂直に伝達するようにキーパー並びにフィクスチャーの植立方向に対するアタッチメントAの傾斜角を正確に調整するのは容易ではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、歯列弓における人工歯の位置や本数に関係なく、咬合圧が義歯床に装着した歯科用アタッチメントとキーパーとの結合面に垂直に作用するように、インプラント上部の傾斜角度を自由に調整することにより義歯を安定化させ、義歯の適合性を改善し、義歯の正確な取付けを容易にすることを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1の本発明はキーパーに関するものであり、埋入人工歯根に磁力により義歯床を結合するためのキーパー5であって、反磁性金属を除く金属製の球体3と、この球体の赤道面において球面により外接し且つ褶動が可能な磁性金属製円環体4と、前記球体3及びアバットメント7を貫通して共にフィクスチャー9に固定するスクリュー2と、からなることを特徴とする無段階角度調整キーパーの発明である。
【0012】
前記球体3の表面を充分滑らかに製作すれば、これに球面によって密着して外接する前記円環体4が順調に無段階に褶動することができ、第1本発明が成立する。但し、円環体の球体からの脱落防止及び角度調整のための褶動を容易かつ円滑に行うために、球体3に外接する円環体4の球面部分に例えば歯科用合成樹脂材料のように摩擦に対する潤滑性のある被覆を施しても良い。
【0013】
第2の本発明はキーパーとペアで用いるアバットメントに関するものであり、請求項1又は2記載のキーパー5と組合せるアバットメント7であって、前記円環体4に当接し且つ円環体が咬合圧に対し垂直平面を形成するように傾斜を調整した磁性金属製円環状の上平面部6とフィクスチャー9に接合する回転角度を固定し得る下凹面部8とを備え、この上平面部6と下凹面部8との空間を鋳造により形成した充填部71と、この充填部の上面に前記球体3に外接する凹球面72を備えたこと、を特徴とする無段階角度調整アバットメント7の発明である。
【0014】
前記上平面部6は、アバットメントを製作する便宜のため、円環体状つまり座金状の独立部品であっても良い。但し、充填部71を鋳造する際の鋳造材として歯科用合金やポリスルホン、ポリエーテルスルホン等の合成樹脂に適切なフィラーを配合した歯科材料などを用いることが可能であり、用いる歯科材料によって容易に上平面を形成できるのであれば、上平面部6は充填部71と同一材料により一体に鋳造成形したものであっても良い。
【0015】
前記下凹面部8は、予めフィクスチャー9の頭部に設けた回転防止凸部91に嵌め合いする形状の独立部品であっても良い。但し、充填部71を鋳造する際に用いる材料によって容易に下凹面を形成できるのであれば、上記同様に、下凹面部8は充填部71と一体に鋳造成形したものであってもも良い。
【0016】
第3の本発明は歯科用アタッチメントに関するものであり、義歯床に装着し請求項1記載のキーパー5と結合するための磁性アッタチメント1であって、前記キーパー5に対向する平面には前記球体3に外接する凹球面13を設け、少なくとも前記円環体4に当接する平面部は永久磁石により形成された平面磁石部11であること、を特徴とする歯科用磁性アタッチメントの発明である。
【0017】
前記平面磁石部11は、アタッチメント本体部12と独立の部品であっても良いが、本体部12と一体に形成して磁化することにより結果的に永久磁石の磁極となった平面部分であっても良い。
【0018】
前記アタッチメント本体部12の形状は、前記平面磁石部11と前記凹球面13を設ける他は、適切な接着剤等を用いて義歯床に充分固定できる限り特段の制約が無い。但し、本発明に必須ではないが、アタッチメント本体部12に義歯床の脱落を防ぐ形状の繋ぎ止部14を設けるのは、義歯床が半硬化の時点でアタッチメント1を押し込むのみで脱落せずに正確に装着できるので好ましい。
【0019】
第4の本発明は、前記本発明に係るキーパーとアバットメントを組立てるための工具に関するものであり、請求項1又は2記載のキーパー5と請求項3−6何れかに記載のアバットメントを組立てるための工具10であって、内部が中空若しくは中実の円筒形永久磁石15の一端の磁極部に前記球体3に外接する凹球面17を形成し、他端の磁極部に把持用の支持部16を設けたこと、を特徴とする歯科用工具の発明である。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1により、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施例を縦断面的に示した模式図である。人工歯根が、人工歯に対して対向歯から加わる咬合圧の方向と或る角度を持ってあご骨に植立されている場合に、最良の本発明の効果が得られる。図1において、人工歯根を構成するフィクスチャー9があご骨に埋入されている。本発明に係るアバットメント7は、この実施例ではフィクスチャー9の頭部突起91と嵌め合いする形状の下凹面部8と、咬合圧を垂直に受けるように配置された上平面部6と、両者の空間を充填するように鋳造により形成した充填部71とから構成される。
【0021】
これらの部品は適切な接着剤により接合するか又は充填部71を鋳造する際に部品を挿入して鋳造(インサート成形)するかして互いに結合されており、全体をスクリュー2によりフィクスチャー9に締め付けることで軸方向の動きを固定する。図2にアバットメントの一例を示す。
【0022】
図2(a)は、アバットメント7の上面すなわちキーパー5と結合する上平面部6を見る平面図である。上面にはキーパー5の形状に対応して上平面部6に内接する凹球面72が設けられており、凹球面にはスクリュー2が貫通する孔が設けられている。図2(c)は、アバットメント7の側面図であり、上平面部6と充填部71と下凹面部8が一体化し、上平面部6が咬合圧を垂直に受けるとき下凹面部8がフィクスチャー9の軸方向に垂直に対面するように、充填部71の形状が鋳造されている。
【0023】
図2(b)は、アバットメント7の底面図であり、下凹面部8形状の一例を示している。アバットメントの下面とフィクスチャー9との回転方向の動きは、フィクスチャー頭部との間に働く摩擦力が充分であれば、スクリュー2による締め付けのみでも固定できる。しかし、図2(b)に示したような互いに嵌め合いできる多角形の凹凸をアバットメントの下凹面部8とフィクスチャー頭部に配設することで確実を期すことができる。上平面部6を咬合圧の加圧方向と垂直になるようにセットして鋳造するので、スクリュー2の回転軸との傾斜の調整が多角形凹凸の形状による影響を受けることは無い。
【0024】
図1において本発明に係るキーパー5は、この実施例では金属製球体3と、この球体の赤道面において球体に外接する円環体4と、球体3の中心及び前記アバットメント7を貫通して球体及び円環体をアバットメント7の上平面部6に固定するスクリュー2とから構成されている。図3(a)は、この3部品の組立を示す外観斜視図である。なお、この図ではスクリュー2と球体3は夫々別個の部品として説明しているが、別の実施形態として、スクリュー2と球体3とを一体化したものも実用的に有用である。即ち、球体3の一部分が突起してできる軸状部分に雄ねじを刻むことでスクリュー2を球体3と一体に形成しても良く、本発明はこの実施形態を包含するものとする。これにより、球体3を回転させることで一体化されたスクリュー2に相当する雄ねじを締めることができ、キーパー5とアバットメント7がフィクスチャー9に固定される。
【0025】
円環体内側の球面によって円環体4は球体3と外接しており、円環体4が球体3から脱落しないためには、実用上、円環体の上下方向の幅が或る程度必要である。図3(a)から理解される通り、円環体4と球体3とは自由自在の方向に褶動することができるので、円環体4とスクリュー2の回転軸との角度は、キーパー5を組立てる際に、後述する工具10を用いて球体3と円環体4とを精密に褶動させることで、調整する。上記図2(c)に示したようにアバットメント7の充填部71上面には円環体4より外にはみ出た球体3の半球部分にフィットする凹球面72が設けられており、スクリュー2をフィクスチャー9に締め付けることでキーパー5がアバットメント7を介してフィクスチャー9に固定される。
【0026】
円環体4の製作事例としては、金属製円環の内側に球面を切削加工し、半割にして球体3に外接させた後、ろう付け或は溶接しても良い。または、球体3が通過できる程度の内径を持つ円筒形の円環体を球体3に外接させた後、球体金属とは接着しないが円環体金属とは接着する硬化性合成樹脂をこの隙間に注入し、球体脱落防止と球体自由回転の潤滑とを兼ねた被覆を形成しても良い。図3(b)は、このように潤滑性被覆41を施す円環体内側部位を示している。
【0027】
図1において、本発明に係る歯科用アタッチメント1は、義歯床に装着されており、磁力により前記キーパーの円環体4を吸引結合するための平面磁石部11を備えている。図4(a)は、歯科用アタッチメント1の一例を示す縦断面図である。アタッチメント本体部12のキーパー5に対向する面には、前記円環体4より外にはみ出た球体3の半球部分にフィットする凹球面13を備えている。
【0028】
従って、キーパー5の円環体4は、製作材料として磁性金属を用いることが必須である。しかし、キーパー5の球体3は、反磁性材料を用いないことが必須であるが、非金属であっても耐熱性や硬度が充分であれば使用可能であり、特段の制約は無い。但し、アバットメントの充填部71を歯科用金属材料により鋳造する場合には、凹球面72の形成上、球体3の材料が金属である必要がある。
【0029】
図1において、例えば硬化した歯科用材料により形成された義歯床に、咬合圧に対して正しくセットされた人工歯を装着し、同時に図4(a)に示したような本発明に係るアタッチメント1を咬合圧に対して平面磁石部11が垂直になるように人工歯に対向する義歯床下面に装着し、適切な接着剤を用いて固定する。或は、半硬化した歯科材料により形成された義歯床の所定位置にアタッチメント1を押し込みした後、歯科材料を硬化させて固定する。この場合、図4(b)に示すように脱落防止用の繋ぎ止部14を設けると一層好ましい。
【0030】
実施例2として、上顎又は下顎歯列弓全体に亘る義歯を適切な位置に植立した複数本のインプラントにより固定する総義歯に、本発明を適用した事例について説明する。図5(a)は、歯列弓全体に亘る義歯床に人工歯を装着したいわゆる総義歯を示す平面図である。図5(b)は、総義歯の下側に植立され、総義歯を支えて固定するインプラント(この事例では4本)を示す平面図である。
【0031】
図6(a)は、前図の歯列弓を両頬方向に当るX−X’線沿いに切断した断面における総義歯及びインプラントの関係を示す模式図である。この事例では、咬合圧の作用方向よりかなり舌側に傾いて顎堤に植立されたフィクスチャーに、本発明に係るアバットメントが結合され、これに本発明に係るキーパーがネジ止めされている。本発明に係るアタッチメントは、人工歯に直接的に接触する形で義歯床に組み込まれており、義歯床を磁力によりインプラントに結合する。
【0032】
本発明に係るアバットメントとキーパーの作用は、図6(a)に示したように全てのインプラントに関してキーパーの金属円環体上面がアタッチメントから受ける咬合圧に対して垂直面を形成するように、アバットメント製作時にキーパーの金属円環体上面の方向を無段階的に自由に調整できることである。
【0033】
図6(b)は、同じく前図を歯列弓に沿ったY−Y’線において切断した断面を模式的に示す図である。図に示すようにインプラントの植立位置によらず、口唇側と奥歯側とで植立方向がかなり異なるインプラントの上面がアタッチメントから受ける咬合圧に対して垂直面を形成するように、本発明に係るアバットメントとキーパーの作用により金属円環体上面の方向を無段階的に自由に調整することができる。
【0034】
本発明に係る歯科用工具の詳細を図5により説明する。図5は工具10の一事例を示す縦断面図である。この実施例では中実の円筒形永久磁石15の一方の磁極部に、キーパー5の球体3に外接する凹球面17を形成してある。また、円筒形永久磁石15の他方の磁極部に相当する位置に、把持用の支持部16を設けてある。
【0035】
前記工具10の把持部16を本発明に係る歯科用結合具を組立てる装置(図示せず)により把持し、スクリュー2を貫通させた球体3が工具の凹球面17にフィットするように、球体3に外接した磁性金属体である円環体4を磁力により工具10に装着する。次いで、スクリュー2の回転軸の方向を、予め測定したフィクスチャー9の植立方向と対向歯から与えられる咬合圧の作動方向との角度に合わせて調整し、固定する。
【0036】
次に、例えば磁性金属体から製作した上平面部6を上記円環体4に磁力吸引させ、これに接して歯科用印象材などを用いて前記スクリュー2の回転軸方向に沿うようにアバットメント充填部71を形成し、この充填部の端に予め製作した下凹面部8をフィクスチャー9の軸方向と合わせながら接着し、印象材を硬化させた後、円環体4を球体3と共に凹球面17から取り外す。
【0037】
次に、この印象材により形成されたアバットメント7模型を用いて鋳物砂などにより鋳造用の鋳型を製作する。次いで、この鋳型を使用して、前記上平面部6用部品、前記下凹面部8用部品、歯科用合金などを用いて所望のアバットメン7を鋳造する。
【0038】
上記説明において、工具の製作材料を除く全ての材料については、磁性、硬化性や固化性、硬度などの物理的化学的性質に関して記述した要件のほかに、例えば慢性毒性やアレルギー等の人体に対する如何なる有害性(遺害性)も有しないことが大前提であることは云うまでも無い。
【0039】
【発明の効果】
本発明に係る一対のアバットメントとキーパーを用いた埋入人工歯根は、歯列弓の如何なる位置において如何なる埋入方向に植立する場合にも、キーパーのアタッチメントに結合する面が常に咬合圧を垂直に受けるように、結合面の方向を調整することができる。しかも、この調整は、無段階であり、如何なる微調整も可能である。この結果、埋入人工歯根があご骨を無理に圧迫するような捻転が生じないため、患者に快適であり、しかも治療結果が長持ちする。
【0040】
インプラントの技工においても、本発明に係るアバットメントとキーパーを組合せて、与えられた既存のフィクスチャーにスクリュー1本で極めて容易に結合することができる。しかも、アバットメントとキーパーは製作時に予め咬合圧に対する方向性を確定してあるので、フィクスチャーに結合する際の微調整は短時間に容易に行うことができる。この結果、歯科治療時の患者の苦痛負担が大いに軽減される。
【0041】
歯列弓全体又は大部分に亘る総義歯を埋入人工歯根に結合する場合、図5に示したようにより多数本数の人工歯根を埋入する必要がある。このため、植立方向の異なる多数の埋入歯根の上面を咬合圧の作用方向に対し垂直に調整する必要が生じ、従来は煩雑な製作作業を要した。このような場合に本発明を適用すると、容易に個々のインプラント上面を咬合圧に対して垂直方向に無段階的に正確に調整することができる。これにより、総義歯の安定性、適合性を著しく改善することができる。
【0042】
本発明に係るキーパーはスクリューにより上下方向にも横方向にも固定されている。義歯に装着したアタッチメントは、上下方向に関して磁力によりキーパーに固定されると同時に、半球に近い球面により横方向にも固定される。本発明に係るキーパーとアタッチメントの組合せを使用することで、患者は咬合圧を垂直に受けるように義歯を容易かつ正確に人工歯根に結合することができる。この結果、義歯の清掃殺菌などの際にずれ等の不具合を生じないので、義歯の安定性が増し、義歯の適合性改善にも役立っている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を説明する模式図
【図2】 本発明に係るアバットメントを例示する平面図、底面図、側面図
【図3】 本発明に係るキーパーの外観を示す斜視図
【図4】 本発明に係る歯科用アタッチメントを例示する縦断面図
【図5】 総義歯に本発明を適用した事例を説明する模式図
【図6】 (a)は前図のX−X’断面図、(b)は同Y−Y’断面図
【図7】 本発明に係る歯科用工具を例示する縦断面図
【図8】 従来のアタッチメント、キーパー、アバットメントの一例を説明する模式図
【図9】 従来のアタッチメント、キーパー、アバットメントの別事例を説明する断面図
【図10】 従来のアタッチメント、キーパーを説明する断面図
【符号の説明】
1 歯科用磁性アタッチメント
11 平面磁石部 12 アタッチメント本体部
13 凹球面 14 繋ぎ止部
2 スクリュー
3 金属製球体
4 磁性金属製円環体
41 潤滑性被覆を施す部位
5 無段階角度調整キーパー
6 上平面部
7 無段階角度調整アバットメント
71 充填部 72 凹球面
8 下凹面部
9 フィクスチャー
91 回転防止凸部
10 歯科用工具
15 円筒形磁石 16 支持部 17 凹球面
A アタッチメント
B キーパー
C アバットメント
D フィクスチャー
H アバットメント用スクリュー
J キーパー用スクリュー
Claims (10)
- 埋入人工歯根に磁力により義歯床を結合するためのキーパー5であって、反磁性金属を除く金属製の球体3と、
この球体の赤道面において球面により外接し且つ褶動が可能な磁性金属製円環体4と、
前記球体3及びアバットメント7を貫通して共にフィクスチャー9に固定するスクリュー2と、
からなることを特徴とする無段階角度調整キーパー。 - 前記円環体4は、前記球体3と外接する球面部分に潤滑性被覆41を施したことを特徴とする請求項1記載の無段階角度調整キーパー。
- 請求項1又は2記載のキーパー5と組合せるアバットメント7であって、
前記円環体4に当接し且つ円環体が咬合圧に対し垂直平面を形成するように傾斜を調整した磁性金属製円環状の上平面部6とフィクスチャー9に接合する回転角度を固定し得る下凹面部8とを備え、
この上平面部6と下凹面部8との空間を鋳造により形成した充填部71と、
この充填部の上面に前記球体3に外接する凹球面72を備えたこと、を特徴とする無段階角度調整アバットメント7。 - 前記上平面部6は、前記充填部71と一体に鋳造成形された上面部であることを特徴とする請求項3記載の無段階角度調整アバットメント。
- 前記下凹面部8は、予めフィクスチャー9の頭部に設けた回転防止凸部91に嵌め合いする形状の部品であることを特徴とする請求項3又は4記載の無段階角度調整アバットメント。
- 前記下凹面部8は、前記充填部71と一体に鋳造成形された下面部であることを特徴とする請求項3、4又は5記載の無段階角度調整アバットメント。
- 義歯床に装着し請求項1記載のキーパー5と結合するための歯科用アッタチメント1であって、
前記キーパー5に対向する平面には前記球体3に外接する凹球面13を設け、
少なくとも前記円環体4に当接する平面部は永久磁石により形成された平面磁石部11であること、を特徴とする歯科用磁性アタッチメント。 - 前記平面磁石部11は、アタッチメント本体部12と一体に形成された永久磁石の平面部分であることを特徴とする請求項7記載の歯科用磁性アタッチメント。
- 前記アタッチメント本体部12に義歯床の脱落を防ぐ繋ぎ止部14を設けたことを特徴とする請求項7又は8記載の歯科用磁性アタッチメント。
- 請求項1又は2記載のキーパー5と請求項3−6何れかに記載のアバットメントを組立てるための工具10であって、
内部が中空若しくは中実の円筒形永久磁石15の一端の磁極部に前記球体3に外接する凹球面17を形成し、
他端の磁極部に把持用の支持部16を設けたこと、を特徴とする歯科用工具。
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