JP3681319B2 - 膜厚測定方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円形の半導体ウエハやガラス基板(以下、単に基板と称する)に対して光を照射し、基板からの反射光に基づき基板上に形成された薄膜の膜厚を測定する膜厚測定方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の半導体製造プロセスにおいてはパターンの微細化が進み、例えば、0.1μm台の線幅で薄膜のパターンが形成され始めている。プロセスにおいては膜厚管理も重要視されているが、現状の光干渉式膜厚測定装置では、0.5μm以下のパターンについては、その測定領域の大きさよりも線幅が極めて狭いのでパターンを形成している薄膜の膜厚を測定できていない。
【0003】
そのためSEM(走査型電子顕微鏡)を用いた断面検査を行って膜厚を測定することも行われているが、測定のために基板を破壊する必要がある。そこで、現在は、基板に形成されているTEG(テストエレメントグループ)パターン内に、光干渉式膜厚測定装置の測定領域と少なくとも同等の面積を有する膜厚測定用の領域を形成しておき、この部分の膜厚を測定して、これを製品パターンにおける目的薄膜の膜厚とすることが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、実際に測定したいのは製品パターン内にある目的薄膜の膜厚であって、TEGパターン内のものではない。
【0005】
TEGパターン内に形成された膜厚測定用の領域は、同一基板上であっても製品パターンとは異なる位置にあることや、異なるパターンが形成されているので、特にCMP(化学機械研磨)工程で発生しているディッシングやエロージョンなどの影響を大きく受け、TEGパターン内の膜厚をもって製品パターンにおける目的薄膜の膜厚とすると不正確になるという問題がある。
【0006】
CMP工程においては、パターンの線幅とその間隔(Line & Spaceを略してL&S と称する)の影響を大きく受ける。例えば、パターンが密な領域と粗な領域とでは一般的に粗な領域の方が密な領域に比較して研磨が早く進むことになって研磨度合いが大きく異なる。そのため製品パターンとTEGパターンとでは全くパターンが異なるので、TEGパターンから製品パターンにおける目的薄膜の膜厚を推定することは正確さに欠けるのである。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、目的薄膜を含んだ測定領域内の分光反射スペクトルから対象外薄膜の成分を除去することにより、測定領域より狭い線幅を有する目的薄膜の膜厚を正確に測定することができる膜厚測定方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の膜厚測定方法は、薄膜が形成された基板からの反射光に基づき膜厚を測定する膜厚測定方法であって、予め対象外薄膜の分光反射スペクトルを記憶しておく過程と、膜厚測定の対象である目的薄膜と、膜厚測定の対象外である対象外薄膜とを含む測定領域内からの分光反射スペクトルを測定する測光過程と、前記測光過程で測定した分光反射スペクトルから、予め記憶しておいた対象外薄膜の分光反射スペクトルを減算して目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する抽出過程と、前記抽出分光反射スペクトルに基づき前記目的薄膜の膜厚を算出する算出過程と、を実施することを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の膜厚測定方法は、膜厚測定の対象である目的薄膜が形成された基板の表面を覆う膜厚測定の対象外である対象外薄膜を所定量だけ除去して、基板上に目的薄膜および対象外薄膜とを含む層を露出させる過程で、基板上の目的薄膜の膜厚を測定する膜厚測定方法において、前記層内の目的薄膜および対象外薄膜を含む大きさを有する測定領域内からの分光反射スペクトルを測定する測定過程と、測定領域内の分光反射スペクトルと、予め記憶された対象外薄膜の分光反射スペクトルとを比較する比較過程と、比較過程で測定領域内の分光反射スペクトルと対象外薄膜の分光反射スペクトルとが不一致である場合に、測定領域内からの分光反射スペクトルから予め記憶された対象外薄膜の分光反射スペクトルを減算して目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する抽出過程と、抽出分光反射スペクトルに基づき目的薄膜の膜厚を算出する算出過程と、を実施することを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3に記載の膜厚測定方法は、請求項1または2に記載の膜厚測定方法において、前記抽出過程では、対象外薄膜の分光反射スペクトルに対して、目的薄膜と対象外薄膜との線幅比に応じた補正係数を乗じるとともに、前記対象外薄膜の分光反射スペクトルに付加されているオフセットを加算し、この成分を前記目的薄膜の分光反射スペクトルから減算することに基づき前記抽出分光反射スペクトルを抽出するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4に記載の膜厚測定装置は、薄膜が形成された基板からの反射光に基づき膜厚を測定する膜厚測定装置において、予め対象外薄膜の分光反射スペクトルを記憶しておく記憶手段と、膜厚測定の対象である目的薄膜と、膜厚測定の対象外である対象外薄膜とを含む測定領域内からの分光反射スペクトルを測定する測光手段と、前記測光過程で測定した分光反射スペクトルから、予め記憶しておいた対象外薄膜の分光反射スペクトルを減算して目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する抽出手段と、前記抽出分光反射スペクトルに基づき前記目的薄膜の膜厚を算出する算出手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項5に記載の膜厚測定装置は、膜厚測定の対象である目的薄膜が形成された基板の表面を覆う膜厚測定の対象外である対象外薄膜を所定量だけ除去して、基板上に目的薄膜および対象外薄膜とを含む層を露出させる過程で、基板上の目的薄膜の膜厚を測定する膜厚測定装置において、予め対象外薄膜の分光反射スペクトルを記憶しておく記憶手段と、前記層内の目的薄膜および対象外薄膜を含む大きさを有する測定領域内からの分光反射スペクトルを測定する測光手段と、測定領域内の分光反射スペクトルと、予め記憶された対象外薄膜の分光反射スペクトルとを比較する比較手段と、比較過程で測定領域内の分光反射スペクトルと対象外薄膜の分光反射スペクトルとが不一致である場合に、測定領域内からの分光反射スペクトルから予め記憶された対象外薄膜の分光反射スペクトルを減算して目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する抽出手段と、抽出分光反射スペクトルに基づき目的薄膜の膜厚を算出する算出手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項6に記載の膜厚測定装置は、請求項4または5に記載の膜厚測定装置において、前記抽出手段では、対象外薄膜の分光反射スペクトルに対して、目的薄膜と対象外薄膜との線幅比に応じた補正係数を乗じるとともに、前記対象外薄膜の分光反射スペクトルに付加されているオフセットを加算し、この成分を前記目的薄膜の分光反射スペクトルから減算することに基づき前記抽出分光反射スペクトルを抽出するようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
【作用】
請求項1に記載の発明の作用は次のとおりである。
まず、膜厚測定の対象である目的薄膜と対象外薄膜とを含む測定領域内からの分光反射スペクトルを測定し、次いで分光反射スペクトルから、予め記憶しておいた対象外薄膜の分光反射スペクトルを減算して目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する。このようにして対象外薄膜の成分を除去した抽出分光反射スペクトルに基づき目的薄膜だけの膜厚を算出する。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、膜厚測定の対象である目的薄膜が形成された基板の表面を覆う膜厚測定の対象外である対象外薄膜を所定量だけ除去して、基板上に目的薄膜および対象外薄膜とを含む層を露出させる過程で、基板上の目的薄膜の膜厚を測定する場合には、対象外薄膜が除去できているか否かを、予め記憶された対象外薄膜の分光反射スペクトルのプロファイルと比較することで判断することができる。その比較の結果、プロファイルが一致しなかった場合には対象外薄膜が除去されていると判断されるので、抽出過程へと移行する。
【0016】
なお、『露出する過程』とは、例えば図10に示すように対象外薄膜が目的薄膜上に薄く残っている状態と、対象外薄膜が完全に除去されて目的薄膜が露出した状態の両方を含む。
【0017】
また、請求項4に記載の発明によれば、まず、測光手段が目的薄膜と対象外薄膜とを含む測定領域内からの分光反射スペクトルを測定し、次いで抽出手段が、分光反射スペクトルから、予め記憶しておいた対象外薄膜の分光反射スペクトルを減算して目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する。このようにして目的薄膜以外の対象外薄膜成分を除去した抽出分光反射スペクトルに基づいて、算出手段が目的薄膜だけの膜厚を算出することができる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明によれば、まず、測光手段が目的薄膜と対象外薄膜とを含む測定領域内からの分光反射スペクトルを測定し、次いで抽出手段が目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する。このようにして目的薄膜以外の対象外薄膜成分を除去した抽出分光反射スペクトルに基づいて、算出手段が目的薄膜だけの膜厚を算出することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明によれば、膜厚測定の対象である目的薄膜が形成された基板の表面を覆う膜厚測定の対象外である対象外薄膜を所定量だけ除去して、基板上に目的薄膜および対象外薄膜とを含む層を露出させる過程で、基板上の目的薄膜の膜厚を測定する場合には、予め記憶された対象外薄膜の分光反射スペクトルのプロファイルと測光手段で測定された分光反射スペクトルのプロファイルとを比較手段が比較することにより、不要な対象外薄膜が除去できているか否かを判断することができる。その比較の結果、プロファイルが一致しなかった場合には対象外薄膜が除去されていると判断されるので、抽出手段による抽出へと移行する。
【0020】
また、請求項6に記載の発明によれば、抽出手段は、線幅比に応じた補正係数を対象外薄膜の分光反射スペクトルに乗じ、さらにオフセットを加算し、この成分を測定領域の分光反射スペクトルから減算することに基づき抽出分光反射スペクトルを求める。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
図1は本発明に係る光干渉式膜厚測定装置の概略構成を示したブロック図である。
【0022】
膜厚測定の対象である目的薄膜が形成された基板Wは、図示しない移動機構により水平面内で移動可能に構成されたステージ1に載置されている。このステージ1の上方には、光源部3が配備されており、この光源部3から横向きに射出された光はビームスプリッタ5により下方に反射されて対物レンズ7を通り、基板Wに対して照射される。対物レンズ7を通して基板Wに光が照射される範囲内の所定範囲が本発明における測定領域に相当し、その大きさは、対物レンズ7の倍率と後述のプレート11aに形成されたピンホールの大きさにより決定されるもので、概ね数十μm径である。
【0023】
光源部3は、ハロゲンランプまたはハロゲンランプ及び重水素ランプを備えたランプ3aと、複数個のレンズ3bとを備えており、可視光または紫外光を含んだ可視光を射出する。なお、測定対象の目的薄膜の膜厚や膜種によってはランプ3aを重水素ランプだけで構成して紫外光だけを射出するようにしてもよい。
【0024】
基板Wの表面からの反射光は、再び対物レンズ7を通るとともに、その上方の光軸上に配備されたビームスプリッタ5を透過し、その上方に配備されているチューブレンズ9により集光されて分光ユニット11に入射される。
【0025】
また、分光ユニット11とチューブレンズ9の間には、プリズム13が配備されており、基板Wからの反射光の一部を取り出すようになっている。取り出された反射光の一部は撮像ユニット15に導かれ、レンズ15aを介して所定位置に集光される。集光位置には撮像素子15bが配設されており、測定領域に対応した画像信号が画像処理部17に出力される。
【0026】
画像処理部17は、入力された画像信号に所定の処理を施してI/O21に出力する。出力された画像信号は、CPUやメモリを内蔵した制御部23の制御の下でディスプレイ装置25に出力される。測定者は、このようにして表示される画像を見ながら、操作部27を操作してステージ1を移動させ、基板W表面の所望の位置に測定領域を設定して膜厚測定を行うようになっている。
【0027】
分光ユニット11は、反射光の入射位置にピンホールが形成されたプレート11aと、このプレート11aの上方に配備されて反射光を分光する凹面回折格子11bと、この凹面回折格子11bによって分光された回折光の分光光強度を検出する光検出器11cとを備えている。光検出器11cは、例えば、フォトダイオードアレイやCCDなどにより構成されており、プレート11aに形成されているピンホールと共役な関係に配置されている。したがって、分光ユニット11に入射した反射光は、凹面回折格子11bで分光され、この光の分光光強度に対応した信号が光検出11cから分光反射スペクトルとしてデータ処理部19に出力される。
【0028】
なお、分光ユニット11が本発明における測光手段に相当する。
【0029】
データ処理部19は、詳細は後述するが、操作部27を介しての測定者の指示に基づく制御部23からの制御信号に応じて処理を行う。具体的には、分光反射スペクトルに基づき基板Wに被着された目的薄膜の分光反射スペクトルだけを抽出するとともに、この抽出分光反射スペクトルに基づいて目的薄膜の膜厚を算出する等の処理を行う。このようにして求められた目的薄膜の膜厚は、ディスプレイ装置25に表示される。
【0030】
また、データ処理部19は、目的薄膜とは異なる対象外薄膜の分光反射スペクトルを記憶しており、このプロファイルと、測定した分光反射スペクトルのプロファイルとを比較して、ほぼ同じであった場合には目的薄膜の膜厚測定ができない状態であると判断して、データ処理を中断するとともにディスプレイ装置25にその旨を表示するようにもなっている。または、対象外薄膜だけの分光反射スペクトルと分光反射スペクトルとのプロファイルを比較して、これらが一致しない場合には、対象外薄膜が目的薄膜を覆っていない状態であると判断して膜厚測定のためのデータ処理を実施する。上記の比較の対象となる対象外薄膜の分光反射スペクトルは、予め実際に測定しておいてもよく、理論的な計算から求められたスペクトルを用いてもよい。
【0031】
なお、データ処理部19は、本発明における抽出手段及び算出手段に相当するとともに記憶手段及び比較手段にも相当する。
【0032】
次に、図2のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図2は、本発明に係る膜厚測定方法の流れを示したフローチャートである。
【0033】
また、基板Wは、図3の測定領域Rにおける薄膜の状態を示した平面図及び縦断面図に示すように、一例としてシリコン基板Waの上に目的薄膜である酸化膜F1が形成され、その上にタンタルナイトライド(TaN) などのバリアメタル膜F2が被着され、さらにその上に銅配線用の対象外薄膜である銅膜F3が被着されているものとする。そして、基本的には、図3(b)に示すように銅膜F3をバリアメタル膜F2とともに研磨処理し、図3(c)に示すような状態まで研磨処理を施した後に酸化膜F1の膜厚測定を行うようになっている。但し、場合によっては図3(c)の状態にまで至っていない場合もありうる。
【0034】
なお、本実施例では、図3(c)に示す研磨処理後の膜厚測定において、対象外薄膜を銅膜F3としてこの成分を分光反射スペクトルから除去するが、バリアメタル膜F2の成分は除去しない。これは、バリアメタル膜F2の線幅d3が酸化膜F1の線幅d1や銅膜F3の線幅(d2−d3×2)と比較して極めて細く影響が少ないためである。
【0035】
ステップS1(測光過程)
まず、測定者は研磨処理を終えた基板Wをステージ1に載置し、ディスプレイ装置25に映し出される測定領域Rの画像を見ながら、操作部27を操作してステージ1を移動させることにより所望の位置に測定領域Rを位置させる。
【0036】
そして、所望の位置に移動した場合には、操作部27を介して測定開始の指示を行う。すると、測定領域Rからの分光反射スペクトルが分光ユニット11からデータ処理部19に与えられる。図4は、このようにして測定された分光反射スペクトルの一例を示したグラフである。なお、この図4の分光反射スペクトルは、図3(a)に示した酸化膜F1の幅d1と、酸化膜F1同士の間隔d2との線幅比(L&S )が1μm:1μm等の50:50の基板Wから得られたものである。
【0037】
ステップS2(比較過程)
データ処理部19は、測定した分光反射スペクトルと、予め記憶しておいた対象外薄膜である銅膜F3の分光反射スペクトルとを比較し、この結果に応じて処理を分岐する。
【0038】
すなわち、このステップS2では、図3(b)の状態から研磨処理が進み、図3(c)のように研磨処理が完了して目的薄膜である酸化膜F1が表面に露出した状態であるか否かを判断するのである。研磨処理が完了していない場合には、測定した分光反射スペクトルが対象外薄膜F3の分光反射スペクトル(図5)と一致するので、ステップS3に戻って研磨処理を行った後にステップS2に戻り、処理が完了している場合にはそれらが不一致となるので、次のステップS4に移行する。
【0039】
なお、銅膜F3のみの分光反射スペクトルは、図5に示すように、長波長側に向かうにつれて徐々に反射比率が上昇するとともに550nm付近で急激に上昇し、その後、600nm付近で緩やかな上昇カーブを描くようになっている。本実施例では、処理の簡略化を図るために、波長400〜550nmまでの分光反射スペクトルのプロファイルと、測定した分光反射スペクトルのプロファイルとを比較するようにしている。また、後述する抽出処理においてもこの波長範囲だけを対象にして処理を行っているが、比較処理や抽出処理において全波長範囲を対象に処理を行うようにしてもよい。
【0040】
このように基板Wの表面全体を銅膜F3で覆った後に酸化膜F1の膜厚を測定する場合には、不要な銅膜F3が除去できているか否かを、銅膜F3の分光反射スペクトルのプロファイルと比較することで判断することができる。その比較の結果、プロファイルが一致しなかった場合には銅膜F3が除去されていると判断されるので抽出処理へと移行することで、酸化膜F1の膜厚測定を適切に行うことができるようになっている。
【0041】
ステップS4(抽出過程)
ここでは、ステップS2において測定された分光反射スペクトルから対象外薄膜である銅膜F3による成分を除去して目的薄膜である酸化膜F1の成分だけを抽出する。
【0042】
具体的には、次の(1)式によって抽出分光反射スペクトルF(λ)を算出する。なお、式中の記号λは400〜550(あるいは800)nmであり、M(λ)は測定領域における分光反射スペクトルであり、N(λ)は対象外薄膜の分光反射スペクトルを表している。また、kは目的薄膜のL&S に応じた補正係数であり、f(offset) は反射比率オフセットを表している。
【0043】
ΣF(λ)=Σ{M(λ)−N(λ)・k+f(offset) } ………(1)
【0044】
この(1)式により、ステップS1で測定した分光反射スペクトルM(λ)から、対象外薄膜である銅膜F3の分光反射スペクトルN(λ)を差し引いて抽出分光反射スペクトルF(λ)とするのである(イメージ的には、図4から図5を引く)。但し、目的薄膜の線幅比であるL&S によって銅膜F3の影響が異なるので、その分を補正係数kで補う。因みに、補正係数kは、材料が銅の場合であって線幅比が50:50の場合は発明者等の種々の実験により『0.7』程度が好ましいことが判っている。なお、本実施例における分光反射スペクトルM(λ),N(λ)は、シリコン基板Waに対する相対反射率である。
【0045】
また、銅膜F3を含む基板W面の分光反射率スペクトルから銅膜F3の成分を除去するが、発明者等が実験を繰り返した結果、差分をとると全体的に分光反射比率方向(上下方向)にシフトする傾向があることがわかった。そこで、銅膜F3の分光反射スペクトルに付加されている成分を補償するために、経験的な値であるオフセットf(offset) を加えることにした。なお、本実施例では、波長に係わらず補正係数kもオフセットf(offset) も一定としているが、波長に応じて変えるようにしてもよい。
【0046】
因みに、図6は、上記の(1)式により図4から図5の成分を除去して求めた抽出分光反射スペクトルである。なお、上述した理由から、この場合に有効なのは二点鎖線で示した波長550nm以下である。また、図7は、上記のようにして測定対象とした基板Wに形成されている酸化膜F1と同じ膜厚を有し、測定領域Rよりも十分に幅の広い酸化膜を対象にして測定した分光反射スペクトルの一例である。この図6と図7とを波長400〜550nmの範囲内で比較すると、プロファイルがほぼ一致していることが判る。
【0047】
ステップS5(算出過程)
上記のようにして求めた抽出分光反射スペクトルF(λ)に基づいて酸化膜F1の膜厚を算出する。
【0048】
具体的には、抽出分光反射スペクトルF(λ)のプロファイルと、膜厚が既知である種々の膜厚の酸化膜が被着された基板を対象に膜厚測定を行い、その結果得られた各膜厚に対応する分光反射スペクトルのプロファイルとを比較することによって膜厚を決定する。分光反射スペクトルは、膜種が同一であって厚さが異なると、図8に示すように膜厚に応じてプロファイルが変わる。なお、図8(a)は最も膜厚が薄く、図8(c)は最も膜厚が厚く、図8(b)はそれらの間の膜厚の例を示している。つまり、膜厚が厚くなるにしたがって干渉が増加して分光反射スペクトル中の周期が増加するという特性を有する。換言すると、膜厚が厚くなるにつれて山と谷の数が増加する特性を有しているのである。
【0049】
上記の膜厚毎の分光反射スペクトルを実験により測定するかあるいは理論的に求めておいて予めデータ処理部19に格納しておき、抽出分光反射スペクトルF(λ)のプロファイルとそれらのプロファイルとに基づいてカーブフィット法を用いて正確な膜厚を算出する。
【0050】
すなわち、膜厚毎の分光反射スペクトルにおける各波長毎の分光反射比率と、抽出分光反射スペクトルにおける各波長毎の分光反射比率とで同じ波長同士の差分をとって二乗するとともに、各波長毎に加算することで得られる誤差平方和を求める。そして、各膜厚毎に誤差平方和をプロットすると、図9に示すようになる。そして、誤差平方和が最小となった膜厚が、その抽出分光反射スペクトルF(λ)の膜厚である。
【0051】
なお、上記のようにして求めた膜厚が適切であるか否かを判定するために、誤差平方和に対して閾値を設定しておくことが好ましい。つまり、誤差平方和が最小となっても、その値がある閾値を越える場合には不適切であると判断し、膜厚を表示せずにその旨をディスプレイ装置25に表示し、その値が閾値以下である場合にのみ求まった膜厚を表示することが好ましい。
【0052】
上述したようにこの膜厚測定装置によれば、目的薄膜である酸化膜F1と対象外薄膜である銅膜F3とを含んだ測定領域R内からの分光反射スペクトルM(λ)を測定した後、酸化膜F1の成分だけを抽出分光反射スペクトルF(λ)として抽出する。そして、銅膜F3の成分を除去した抽出分光反射スペクトルF(λ)に基づき酸化膜F1だけの膜厚を算出することにより、測定領域Rよりも狭い線幅である酸化膜F1だけの膜厚を求めることができる。したがって、基板W上の製品パターン内で酸化膜F1の膜厚を測定することができるので、CMP工程などによる悪影響を受けることがない。その結果、酸化膜F1の膜厚を正確に測定することができるようになっている。
【0053】
なお、本発明は以下のように変形実施が可能である。
【0054】
(1)研磨処理が完了していることが明らかな基板を対象にして測定を行う場合には、上述したステップS2,S3を実施する必要はない。また、銅膜F3などの対象外薄膜を除去する処理は研磨処理に限定されず、例えば、エッチングにより対象外薄膜を除去してもよい。
【0055】
(2)研磨処理を行いながらインラインで膜厚測定が可能なように、上述した膜厚測定装置を研磨処理装置に組み込んだ構成としてもよい。
【0056】
(3)抽出分光反射スペクトルを求める方法は、上述した(1)式だけに限定されるものではなく種々の数式を利用することができる。
【0057】
(4)上述した実施例では、膜厚の算出にカーブフィット法を用いたが、これに代えて、図8に示すように膜厚に応じてプロファイルが変わり、プロファイルと山と谷の数が増減することを利用したピーク&バレイ法により膜厚を算出してもよい。
【0058】
(5)研磨処理後(図3(c))において対象外薄膜を銅膜だけとして、バリアメタル膜の影響を無視しているが、この分光反射スペクトルをも考慮して抽出反射分光スペクトルを算出するようにしてもよい。
【0059】
(6)上述した実施例では研磨処理後の基板の分光反射スペクトルに基づき目的薄膜の膜厚を求めたが、研磨処理中の基板の分光反射スペクトルに基づき目的薄膜の膜厚を求めても良い。図10は、図3(b)に示す状態と図3(c)に示す状態との間の状態を示し、銅膜F3/バリアメタル膜F2/酸化膜F1からなる層を所定量だけ研磨し、銅膜F3を一部除去して酸化膜F1上のバリアメタル膜F2に銅膜F3が厚さd4で形成されている状態である。銅膜F3の厚さd4が例えば50nm以下になると銅膜F3中を光が透過するので、酸化膜F1およびバリアメタル膜F2の分光反射スペクトルを測定することが可能となる。この測定した分光反射スペクトルから対象外薄膜である銅膜F3およびバリアメタル膜F2の成分を除去して目的薄膜である酸化膜F1の成分だけを抽出してもよい。図10の状態からさらに研磨処理が進み、酸化膜F1上にバリアメタル膜F2のみが残っている状態においても、上述と同様に測定した分光反射スペクトルから銅膜F3およびバリアメタル膜F2の成分を除去して酸化膜F1の成分だけを抽出することができる。
【0060】
(7)上述した実施例では目的薄膜を酸化膜と、対象外薄膜を銅膜としたが、本発明はこれらに限定されないことは言うまでもない。例えば、測定波長に対する透明膜を目的薄膜とし、金属膜などの測定波長に対する不透明膜を対象外薄膜としてもよい。また、測定領域内に複数種の透明膜が存在する場合、その中の一つを目的薄膜とし、他の透明膜を対象外薄膜とすることも可能である。
【0061】
以上の説明から明らかなように、請求項1に記載の方法発明によれば、目的薄膜と対象外薄膜とを含んだ測定領域内からの分光反射スペクトルを測定した後、分光反射スペクトルから、予め記憶しておいた対象外薄膜の分光反射スペクトルを減算して目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する。そして、対象外薄膜の成分を除去した抽出分光反射スペクトルに基づき目的薄膜だけの膜厚を算出することにより、測定領域よりも狭い線幅である目的薄膜だけの膜厚を求めることができる。したがって、基板上の製品パターン内で目的薄膜の膜厚を測定することができるので、CMP工程などによる悪影響を受けることがない。その結果、目的薄膜の膜厚を正確に測定することができる。
【0062】
また、請求項2に記載の方法発明によれば、膜厚測定の対象である目的薄膜が形成された基板の表面を覆う膜厚測定の対象外である対象外薄膜を所定量だけ除去して、基板上に目的薄膜および対象外薄膜とを含む層を露出させる過程で、基板上の目的薄膜の膜厚を測定する場合には、不要な対象外薄膜が除去できているか否かを、予め記憶された対象外薄膜の分光反射スペクトルのプロファイルと比較することで判断することができる。その比較の結果、プロファイルが一致しなかった場合には対象外薄膜が除去されていると判断されるので抽出過程へと移行することで、目的薄膜の膜厚測定を適切に行うことができる。
【0063】
また、請求項3に記載の方法発明によれば、線幅比に応じた補正係数を対象外薄膜の分光反射スペクトルに乗じ、さらにオフセットを加算し、この成分を測定領域の分光反射スペクトルから減算することに基づき抽出分光反射スペクトルを求めることができる。これにより分光反射スペクトルから対象外薄膜の成分を適切に除去することができ、抽出分光反射スペクトルの精度を高めて膜厚測定精度を高めることができる。
【0064】
また、請求項4に記載の装置発明によれば、請求項1に記載の方法発明を好適に実施することができる。
【0065】
また、請求項5に記載の装置発明によれば、請求項2に記載の方法発明を好適に実施することができる。
【0066】
また、請求項6に記載の装置発明によれば、請求項3に記載の方法発明を好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る光干渉式膜厚測定装置の要部を示したブロック図である。
【図2】膜厚測定方法の流れを示すフローチャートである。
【図3】基板上の測定領域における薄膜の状態を示した平面図及び縦断面図である。
【図4】測定領域内からの分光反射スペクトルを示したグラフである。
【図5】金属薄膜からの分光反射スペクトルを示したグラフである。
【図6】金属薄膜の成分を除去した後の分光反射スペクトルを示したグラフである。
【図7】理論的に求められた分光反射スペクトルを示したグラフである。
【図8】膜厚既知の基板を使って測定された種々の膜厚毎の分光反射スペクトルを示すグラフである。
【図9】分光反射スペクトルのプロファイルを比較して膜厚を求める手法の説明に供する図である。
【図10】基板上の測定領域における薄膜の状態を示した縦断面図である。
【符号の説明】
W … 基板
Wa … シリコン基板
F1 … 酸化膜(目的薄膜)
F3 … 銅膜(対象外薄膜)
M(λ) … 酸化膜の分光反射スペクトル
N(λ) … 銅膜の分光反射スペクトル
F(λ) … 抽出分光反射スペクトル
1 … ステージ
3 … 光源部
5 … ビームスプリッタ
11 … 分光ユニット
19 … データ処理部
Claims (6)
- 薄膜が形成された基板からの反射光に基づき膜厚を測定する膜厚測定方法であって、
予め対象外薄膜の分光反射スペクトルを記憶しておく過程と、
膜厚測定の対象である目的薄膜と、膜厚測定の対象外である対象外薄膜とを含む測定領域内からの分光反射スペクトルを測定する測光過程と、
前記測光過程で測定した分光反射スペクトルから、予め記憶しておいた対象外薄膜の分光反射スペクトルを減算して目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する抽出過程と、
前記抽出分光反射スペクトルに基づき前記目的薄膜の膜厚を算出する算出過程と、
を実施することを特徴とする膜厚測定方法。 - 膜厚測定の対象である目的薄膜が形成された基板の表面を覆う膜厚測定の対象外である対象外薄膜を所定量だけ除去して、基板上に目的薄膜および対象外薄膜とを含む層を露出させる過程で、基板上の目的薄膜の膜厚を測定する膜厚測定方法において、
前記層内の目的薄膜および対象外薄膜を含む大きさを有する測定領域内からの分光反射スペクトルを測定する測定過程と、
測定領域内の分光反射スペクトルと、予め記憶された対象外薄膜の分光反射スペクトルとを比較する比較過程と、
比較過程で測定領域内の分光反射スペクトルと対象外薄膜の分光反射スペクトルとが不一致である場合に、測定領域内からの分光反射スペクトルから予め記憶された対象外薄膜の分光反射スペクトルを減算して目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する抽出過程と、
抽出分光反射スペクトルに基づき目的薄膜の膜厚を算出する算出過程と、
を実施することを特徴とする膜厚測定方法。 - 請求項1または2に記載の膜厚測定方法において、
前記抽出過程では、対象外薄膜の分光反射スペクトルに対して、目的薄膜と対象外薄膜との線幅比に応じた補正係数を乗じるとともに、前記対象外薄膜の分光反射スペクトルに付加されているオフセットを加算し、この成分を前記目的薄膜の分光反射スペクトルから減算することに基づき前記抽出分光反射スペクトルを抽出するようにしたことを特徴とする膜厚測定方法。 - 薄膜が形成された基板からの反射光に基づき膜厚を測定する膜厚測定装置において、
予め対象外薄膜の分光反射スペクトルを記憶しておく記憶手段と、
膜厚測定の対象である目的薄膜と、膜厚測定の対象外である対象外薄膜とを含む測定領域内からの分光反射スペクトルを測定する測光手段と、
前記測光過程で測定した分光反射スペクトルから、予め記憶しておいた対象外薄膜の分光反射スペクトルを減算して目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する抽出手段と、
前記抽出分光反射スペクトルに基づき前記目的薄膜の膜厚を算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする膜厚測定装置。 - 膜厚測定の対象である目的薄膜が形成された基板の表面を覆う膜厚測定の対象外である対象外薄膜を所定量だけ除去して、基板上に目的薄膜および対象外薄膜とを含む層を露出させる過程で、基板上の目的薄膜の膜厚を測定する膜厚測定装置において、
予め対象外薄膜の分光反射スペクトルを記憶しておく記憶手段と、
前記層内の目的薄膜および対象外薄膜を含む大きさを有する測定領域内からの分光反射スペクトルを測定する測光手段と、
測定領域内の分光反射スペクトルと、予め記憶された対象外薄膜の分光反射スペクトルとを比較する比較手段と、
比較過程で測定領域内の分光反射スペクトルと対象外薄膜の分光反射スペクトルとが不一致である場合に、測定領域内からの分光反射スペクトルから予め記憶された対象外薄膜の分光反射スペクトルを減算して目的薄膜の成分だけを抽出分光反射スペクトルとして抽出する抽出手段と、
抽出分光反射スペクトルに基づき目的薄膜の膜厚を算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする膜厚測定装置。 - 請求項4または5に記載の膜厚測定装置において、
前記抽出手段では、対象外薄膜の分光反射スペクトルに対して、目的薄膜と対象外薄膜との線幅比に応じた補正係数を乗じるとともに、前記対象外薄膜の分光反射スペクトルに付加されているオフセットを加算し、この成分を前記目的薄膜の分光反射スペクトルから減算することに基づき前記抽出分光反射スペクトルを抽出するようにしたことを特徴とする膜厚測定装置。
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