JP3681252B2 - 粒子計数方法および粒子計数装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、粒子計数方法および粒子計数装置に関し、特に、細胞等の微小粒子の計数において、誤差数の要因を除去して正確な計数を可能とする粒子計数方法および粒子計数装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、人体の血液中に含まれる赤血球、白血球などの細胞の計数をするために、いわゆるフローサイトメータなどの種々の粒子計数装置が用いられている。フローサイトメータは、フローセルと呼ばれる容器に希釈した血液試料をシース液に包んで試料流として流し、この試料流にレーザ光を照射して、試料流に含まれる細胞粒子で散乱された散乱光を光検出器で検出し、この検出信号から血液試料中の粒子の分類・計数を行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
フローセル内では、細胞粒子が整列して流れる試料流を作るために、希釈された血液試料はシース液によって包まれて流される。
このとき、シース液が本来有する気泡あるいは測定対象外の粒子(たとえばチリやゴミ)等のため測定対象粒子のみを正確に計数することが困難である。
【0004】
実際、シース液には直径5μm程度の大きさの気泡が発生することが多いので、直径10μm以上の比較的大きな白血球や赤血球の計数を行う場合には、この気泡が誤計数の要因となることはほとんどないが、血小板などの直径が5μm程度以下の微小粒子を計数する場合には、気泡は誤計数の要因となり、正確な計数ができない。
【0005】
この発明は以上のような事情を考慮したものであり、誤計数の要因となる気泡やゴミを別途測定することにより、計数対象の粒子の正確な計数が行えるようにした粒子計数方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、フローサイトメータを用いて、測定対象粒子を含む試料液をシース液で包んで形成した試料流を光学的に測定して第1粒度分布を作成する第1の測定工程と、前記フローサイトメータを用いて前記シース液のみからなる試料流を形成し、その試料流を光学的に測定して第2粒度分布を作成する第2の測定工程と、第1粒度分布から第2粒度分布を減算することによって、測定対象粒子の粒度分布を求める解析工程とからなることを特徴とする粒子計数方法を提供するものである。またこの発明は、フローサイトメータを用いて、測定対象粒子を含む試料液をシース液で包んで形成した試料流を光学的に測定して粒度分布を求める粒子計数装置において、測定対象粒子を含む試料液をシース液で包んで形成した試料流を光学的に測定して得られた第1粒度分布から、シース液のみからなる試料流を光学的に測定して得られた第2粒度分布を減算することにより、測定対象粒子の粒度分布を求めることを特徴とする粒子計数装置を提供するものである。
さらに、この発明は、前記第1測定工程に続いて、シース液をフローセルに流すことによるフローセルの洗浄が行われ、前記第2測定工程が、シース液によるフローセルの洗浄の際に行われることを特徴とする粒子計数方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明に用いるフローサイトメータとは、測定対象粒子を含む希釈された試料をフローセルに導き、これをシース液に包んで細流化して、この細流化された粒子の流れにレーザ光を照射して粒子による散乱光や蛍光を検出することによって粒子の計数を行う粒子計数装置である。
この発明の測定対象粒子とは、主として、血液中の細胞であり、赤血球、白血球、血小板などである。この測定対象粒子は、通常希釈液で希釈した試料液として与えられる。
【0008】
また、測定対象粒子を含む試料液をシース液で包んで形成した試料流とは、このような測定対象粒子を含む試料液をフローセルを流れるシース液中に注入して形成される細流であり、測定対象粒子はシース液に包まれ整列されて流される。一般に試料液には、多くの粒子が含まれており、それぞれの粒子は、その形状、大きさ等によって分類することが可能である。
粒度分布とは、粒子の大きさ(粒度)ごとに試料流の中に含まれる粒子の個数(度数)を測定した分布をいう。
つまり、測定において、試料流の中に含まれる粒子の大きさを識別し、ある特定の大きさの粒子の数を計数する処理が行われる。
【0009】
このような粒子の大きさの識別及び計数には、マイクロコンピュータを用いることが好ましい。また、粒度分布の測定で求められた粒子の計数値は、RAM等のメモリに記憶されることが好ましい。
第2の試料流とは、測定対象粒子を含まないシース液からなる流れであり、シース液は第1の試料流の粒度分布を測定する際にも利用される液体である。
【0010】
前記解析工程は、マイクロコンピュータによって行われることが好ましい。
解析工程で行われる減算は、第1の測定工程で求められた第1粒度分布粒子の計数値から、第2の測定工程で求められた第2粒度分布の粒子の計数値を粒度毎に減算することを意味する。
このように、2つの計数値の引き算を、測定された粒子の大きさごとに行うことによって、誤計数の要因を除いた測定対象粒子の正確な粒度分布が求められる。
【0011】
第2の測定工程において、本来シース液に含まれる微小な気泡や不純物等は、同じ大きさの粒子として計数される。
また、この気泡等は、同じシース液を用いる第1の測定工程でも同様に存在すると考えられ、同じ大きさの粒子として計数されるため、測定対象粒子が気泡等と同じ程度の大きさである場合には、測定対象粒子は誤計数されうる。この意味において、誤計数の要因となる気泡や不純物のことを、バックグラウンドと呼ぶ。すなわち、第2の測定工程は、バックグラウンドの粒度分布を求めている。
【0012】
上記のようなこの発明の粒子計数方法は、微小粒子の計数を目的とする種々の粒子分析装置に適用可能である。たとえば、血小板のような直径が10μm以下の微小粒子の計数に用いることができる。
【0013】
また、この発明は、第2の測定工程が、第1の測定工程における粒度分布の測定に支障を及ぼさない期間に行われることを特徴とする。
ここで、第1の測定工程における粒度分布の測定に支障を及ぼさない期間とは、測定対象粒子を含む試料流を「実際に光学的に測定している期間」を除いた期間を意味し、この「実際に光学的に測定している期間」の前あるいは後であってもよい。
【0014】
また、第1の測定工程が、前記シース液をフローセルに流すことによってフローセルを洗浄する洗浄工程をさらに備え、第2の測定工程を、前記洗浄工程に並行して行うようにしてもよい。
【0015】
ここで、洗浄工程とは、フローセル、及びフローセルに接続され試料流が流れる測定経路上から、試料流に含まれる測定対象粒子やその他の不純物をシース液を流して除去する工程である。
この洗浄工程は、第1の測定工程に含まれることが好ましく、また、第2の測定工程の実施期間に並行して行われることがさらに好ましい。
【0016】
第2の測定工程と洗浄工程を同時に並行して行えば、バックグラウンドの粒度分布の測定を行っても、この発明の粒子計測方法の全工程のトータル時間は増加せず、全工程の時間的効率は低下しない。
【0017】
以下、図面に示す実施例に基づいてこの発明を詳述する。なお、これによってこの発明が限定されるものではない。
図1にこの発明の一実施例における構成図を示す。
【0018】
図1において、1はレーザ光光源であり、たとえば半導体レーザ、Arレーザ、He−Neレーザなどが使用される。
フローセル4は、計数対象である細胞粒子を整列させて流すものであり、フローセル4の中の粒子が細流化された部分にレーザ光源1からのレーザ光が照射される。
受光部2は、たとえばフォトダイオードが使用される。受光部2では、粒子によって散乱された散乱光の光強度が検出され、電気信号に変換される。
【0019】
解析部3は、変換された電気信号をもとに、フローセル4を流れる粒子の大きさを判断して計数を行い、いわゆる粒度分布を作成するものである。また解析部3は、誤計数の要因となるいわゆるバックグラウンドの計数を行って、計数対象となる粒子の正確な計数を行うための種々の演算を行う。
【0020】
このような解析部3は、CPU、ROM、RAM、タイマー、I/Oインタフェースなどのいわゆるマイクロコンピュータから構成されることが好ましく、RAM等のメモリに計数手順を示したプログラムが格納されている。
【0021】
ジェットノズル7は試料液をフローセル4に導入するものであり、シース液回収チャンバ5は、計数後の試料流を回収するものである。
フローセル4には、その下部に取りつけられたジェットノズル7から計数対象粒子を含んだ試料液が導入される。また、シース液チャンバ6に蓄えられたシース液が、バルブV7を経由してフローセル4に導かれる。そして、フローセル4の上部にシース液によって細く絞られた試料流が導かれ、1つずつ整列された粒子にレーザ光が照射される。細く絞られた試料流はフローセル4の上部から排出され、バルブV8を通って、シース液回収チャンバ5に蓄えられる。
【0022】
希釈液チャンバ11は、計数対象である試料を希釈するための希釈液を蓄える容器である。
サンプリングバルブ10は、試料14と希釈液とを混合した一定量の試料液を取り出すためのバルブであり、たとえば一部に空洞を持つ3枚の円板から構成される。この3枚の円板の少なくとも1つを回転させることにより、一定量の試料液が切り出される。たとえば、10μlの試料を含む試料液が切り出される。
ポンプ13は試料14をサンプリングバルブ10へ導くためのものである。
【0023】
ダイヤフラム式希釈ポンプ12は、一定量(たとえば200ml)の希釈液を希釈液チャンバ11から取り出すためのポンプである。
バルブV1、V2を切り換えて、ダイヤフラム式希釈ポンプ12に陰圧をかけると、希釈液は一旦ダイヤフラム式希釈ポンプ12内に引き込まれ、その後バルブV1、V2を切り換えてダイヤフラム式希釈ポンプ12に陽圧をかけると、引き込まれた希釈液はバルブV2を経由してサンプリングバルブ10の方へ押し出される。
【0024】
試料液チャンバ9は、切り出されて希釈された試料を一時蓄えておく容器である。この中には、たとえば、約200倍に希釈された試料液が蓄えられる。
試料液押し出し用シリンジ19は、バルブV3を通って引き込まれた試料液をジェットノズル7の方へ押し出すものである。
モータ20は、試料液押出し用シリンジの駆動用のモータである。
【0025】
陽圧印加部15は、0.3kg/cm2程度の陽圧をシース液チャンバ6へかけるものである。
バルブV7が開放されると、この陽圧によって0.2ml/sec程度のシース液がシース液チャンバ6からフローセル4へ流れ込む。
陰圧印加部16は、−400mmHgの陰圧を廃液チャンバにかけるものであるが、バルブV3及びV5が開放されたときに、この陰圧によって、バルブV3とバルブV5との間の経路に、試料液チャンバ9に蓄えられていた試料液が導かれる。
【0026】
また、バルブV3及びV5を閉じた状態で、試料液押出し用シリンジ19が押出されると、バルブV3とバルブV5との間の経路に導かれた試料液がジェットノズルへと出射される。
このとき、試料液の押出し流量は、約0.4μl/sec程度である。
【0027】
陽圧印加部17は、0.3kg/cm2程度の陽圧をダイヤフラム式希釈ポンプ12へかけるものであり、陰圧印加部18は、−400mmHgの陰圧を前記ポンプ12へかけるものである。
【0028】
また図1には、8つのバルブ(V1〜V8)を示しているが、これらのバルブは、解析部3のCPUからの制御信号によりその開閉が制御される。
後述するように、このバルブの開閉のタイミングを制御することによって、フローセルにおける試料粒子の計数及び誤計測の要因となるバックグラウンドの計数が行われる。
【0029】
各バルブの役割は、次のようなものである。
希釈ポンプ吐出バルブV1は、ダイヤフラム式希釈ポンプ12にかけられる陽圧及び陰圧の切り換えを行うものである。
希釈ポンプ吐出バルブV2は、希釈液チャンバ11からの経路と、ダイヤフラム式希釈ポンプ12又はサンプリングバルブ10への経路と接続の切り換えを行うものである。
【0030】
試料液吸引バルブV3は、試料液を吸引する際の経路の開閉を行うものである。
試料液チャンバ排出バルブV4は、測定後、試料液チャンバ9に残った試料液を廃液チャンバ8へ導くための経路の開閉を行うものである。
【0031】
試料液吸引バルブV5は、試料液を吸引する際の経路の開閉およびジェットノズル7内に残った試料液を廃液チャンバ8へ引き込む際の経路の開閉を行うものである。
試料液測定ライン洗浄バルブV6は、シース液チャンバ6と試料液押出しシリンジ19の間の経路を開閉するものである。
このバルブV6は、開放されたとき、試料液押出し用シリンジ19とバルブV5との間の経路にシース液を流すことによってこの経路の洗浄をするために用いられるものである。
【0032】
シース液流入バルブV7は、シース液チャンバ6とフローセル4との間の経路を開閉するものである。
シース液流入バルブV8は、フローセル4の排出口とシース液回収チャンバ5との経路を開閉するものであり、開放状態のとき、フローセル4の排出口から排出される試料液とシース液の混合液がシース液回収チャンバ5に導かれる。
【0033】
次に、試料計数とバックグラウンド計数の各工程について説明する。
図2に、この発明の計数シーケンスの一実施例を示す。
ここで、この実施例では、測定対象である試料の計数を行った後に行う洗浄工程を含む後工程のときに、バックグラウンドの計数を行うことを特徴とする。
【0034】
計数シーケンスは、主として次の9つの工程(AからI)に分けられる。
横軸は各工程の時間(単位秒)を示している。
まず希釈工程Aは、ダイヤフラム式希釈ポンプ12により、サンプリングバルブ10内に取り出された試料を希釈液によって希釈して試料液チャンバ9へ押出す工程である。
この希釈工程Aにおいて、ポンプ13による吸引によって、サンプリングバルブ10の中に一定量(10μl)の試料14が、取出されている必要がある。
【0035】
この希釈工程Aでは、まずバルブV2及びV1によって、希釈液チャンバ11とダイヤフラム式希釈ポンプ12との間の経路と、陰圧印加部18とダイヤフラム式希釈ポンプ12との間の経路とが接続される。これによって希釈液チャンバ11から、一定量(2ml)の希釈液がダイヤフラム式希釈ポンプ12内に取り出される。
【0036】
次に、バルブV1、V2を逆に切りかえて、陽圧印加部17とダイヤフラム式希釈ポンプ12との間の経路と、ダイヤフラム式希釈ポンプ12とサンプリングバルブ10との間の経路とが接続される。これによって、ダイヤフラム式希釈ポンプ12内の希釈液は、サンプリングバルブ10の方へ押し出される。
【0037】
このとき、サンプリングバルブ10では、予め取り出されていた試料14と希釈液とが混合され、この混合液(すなわち試料液)は陽圧印加部17による陽圧によって試料液チャンバ9に導かれる。
なお、この希釈工程Aでは、バルブV3、V4は閉じられている。
また希釈工程は、図2に示すように、3秒程度とすることができる。
【0038】
吸引工程Bは、試料液チャンバ9に導かれた試料液を、バルブV3とバルブV5との間の経路(以下、シース測定部という)へ吸引する工程である。
この工程Bでは、バルブV3、V5が開放で、バルブV4、V6、V7、V8は閉状態である。この工程も約3秒あればよい。
【0039】
シース形成工程Cは、シース液とシース測定部に吸引された試料液とをフローセル4へ流入させてシース流を形成すると共に、試料液チャンバ9の中に残った試料液を廃液チャンバ8へ捨てる工程である。
この工程Cでは、バルブV3を閉じて、バルブV4を開くことによって試料液が廃液チャンバ8へ捨てられる。
【0040】
またこの工程Cでは、バルブV6が閉じられ、バルブV7及びV8が開かれる。
バルブV7、V8が開かれることによってシース液チャンバ6内に蓄えられていたシース液がフローセル4へ導かれ、フローセル4の上方の排出口から出射される。
【0041】
一方、このシース形成工程Cにおいて、試料液押出し用シリンジ19がモータ20によって駆動され、シース測定部にあった試料液がジェットノズル7の中に導かれる。このとき、試料液押出し用シリンジ19は12μl/sec程度の速度で駆動される。このシース形成工程Cは、前工程と同様に約3秒でよい。
【0042】
第1待機工程Dは、シース流の安定化のためにしばらく待つ工程である。たとえば約1秒間待てばよい。この工程Dに入る際にバルブV4が閉じられる。
【0043】
計数工程Eは、実際に計数対象である試料流の計数を行う工程である。
すなわち、試料液押出し用シリンジ19が0.4μl/sec程度の速さで押され、ジェットノズル7から試料液がフローセル4の中へ流入される。
フローセル4では、この試料液とシース液とが混合され、シース液で包まれた細流となって排出口へと導かれる。
一方、この計数工程Eにおいて、レーザ光が放射され、試料粒子によって散乱された散乱光が受光部2で検出される。
【0044】
この検出された信号をもとに解析部3で計数が行われる。
計数は、たとえば7秒間行われ、終了時には、試料液押出し用シリンジ19がその位置で停止される。
この計数工程Eにおいて、計数された数値には、実際の試料の計数値と共に、気泡などの計数してほしくないバックグラウンドによる計数値も含まれる。
すなわち、計測した試料の大きさと、バックグラウンドとなる気泡等の大きさがほぼ同じ場合には、その大きさの計数値には、かなりの誤差が含まれることになる。
【0045】
逆流工程Fは、ジェットノズル7の中に残った試料液を逆流させて廃液チャンバ8の中へ引き込む工程であり、洗浄工程の一つである。
ここでは、バルブV3を閉じ、バルブV7、V8を開いたまま、バルブV5を開く。このとき、陰圧印加部16による陰圧によって、ジェットノズル7の中の試料液がバルブV5を通って廃液チャンバ8へ引き込まれる。
この工程は、約1秒あればよい。
【0046】
次のプレ洗浄工程G、洗浄工程H、第2待機工程Iは、試料計数が終了し、次の試料計数に入るための準備工程であるが、これらの3つの工程期間中にバックグラウンドの計数を行う。
すなわち、新たにバックグラウンド計数のための工程を別途設けるものではない。
通常の試料計数に必要な準備工程期間中に誤計数の要因となるバックグラウンドの計数を行うので、試料計数のための全工程の効率を低下させることなく、バックグラウンドの計数が可能となる。
【0047】
プレ洗浄工程Gでは、バルブV6を開く。
このとき、シース液チャンバ6からシース液が、バルブV6、試料液押出し用シリンジ19、シース測定部、バルブV5を経由して、廃液チャンバ8へ流れる。すなわち、このプレ洗浄工程Gでは、試料液押出し用シリンジ19とバルブV5の間のシース測定部の洗浄が行われる。
【0048】
一方、この工程Gにおいて、バルブV7及びV8は開放されているので、シース液はバルブV7、フローセル4、フローセル4の上部排出口、バルブV8を経由して、シース液回収チャンバ5へと流れる。
このフローセル4の上部排出口へのシース液の流れに、レーザ光を照射し、散乱光を測定することによって、気泡等のバックグラウンドのみの計数が行われる。
【0049】
洗浄工程Hでは、試料液押出し用シリンジ19を初期位置まで引き戻すほかは、プレ洗浄工程Gと同じ状態を保つ。
すなわち、シース液によるシース測定部の洗浄と、バックグラウンドの計測を行う。
プレ洗浄工程Gは約1秒、洗浄工程Hは約3秒程度あればよい。
【0050】
第2待機工程Iは、シース測定部の洗浄が終了した後、ジェットノズル7よりシース液がフローセル4の方へ流出されることのないように待機する工程である。
この工程では、バルブV7、V8は開いたままであるが、バルブV5とV6とが閉じられる。このときバルブV3も閉じられている。
したがって、ジェットノズル7、バルブV5及びV3、試料液押出し用シリンジ19及びバルブV6とで形成される。シース測定部の経路では、シース液の出入りはない。
【0051】
一方、第2待機工程Iにおいても、バルブV7、V8は開放されているので、シース液は、バルブV7、フローセル4、バルブV8を経由してシース液回収チャンバ5へと流される。したがって、この工程Iにおいても、バックグラウンドの計数は続行する。
第2待機工程Iは、バルブV7及びV8を閉じると終了し、同時に、バックグラウンドの計数も終了する。この第2待機工程Iは、たとえば1秒程度設ければよい。
【0052】
以上のように、3つの工程G、H、Iにおいて、シース液のみがフローセル4内に流され、約5秒間バックグラウンドの計数が行われる。
【0053】
ところで、解析部3における計数処理では、粒子の大きさごとに計数が行われ、いわゆる粒度分布が作成され、RAM等のメモリに記憶される。
図3に、この発明の粒度分布のグラフの一実施例を示す。
図3(a)は、計数工程Eで測定された粒度分布であり、計数対象粒子のなかに、いわゆるバックグラウンドも含んだ分布である。
図3(b)は、3つの工程G、H、Iで測定された粒度分布であり、バックグラウンドのみの粒度分布を示している。
【0054】
したがって、粒子の大きさごとに、図3(a)のその粒子の計数値から、図3(b)のその粒子の大きさに相当するバックグラウンドの計数値を減算すれば、その大きさの粒子自体の計数値が求められる。
図3(c)は、このような減算によって求めた粒度分布であり、バックグラウンドを除去した計測粒子のみの粒度分布を示している。
【0055】
図1に示したようなフローセルを用いた粒子測定においては、5μm程度の大きさの気泡やゴミやチリなどの計数対象外粒子がバックグラウンドとして多数計数されることが多い。
したがって、実際の血液中の細胞の計数において、5μm程度の大きさの粒子、たとえば血小板の計数に、この発明の計数処理を用いることは非常に有効である。
【0056】
なお、図2に示した計数シーケンスでは試料計数(7秒間)とバックグラウンド計数(5秒間)の時間が異なるが、両者の計数時間を統一するために、どちらか一方の計数値を換算してから、減算を行えばよい。
したがって、必ずしも両者の計数時間を一致させる必要はない。
【0057】
また、図2に示したように、バックグラウンドの計数を試料計数後の洗浄工程時に行うのが、全工程の時間を増加させることなく、最も効率的である。しかし、粒子計測の仕様、シーケンスの順序等の関係で、バックグラウンドの計測工程を独立に別途設けてもよいことは言うまでもない。
【0058】
また、バックグラウンドの計数において、通常の範囲を大きく超えるような異常なバックグラウンドが計測された場合には、粒子計測処理を中断し、所定の警告表示を行うことも可能である。
【0059】
【発明の効果】
この発明によれば、誤計数の要因となるバックグラウンドのみの計数を行っているので、計数対象粒子がバックグラウンドと同じ程度の大きさであっても、正確な計数が可能である。
また、通常の粒子計数処理の中で通常の粒子計数工程に支障をきたさない期間にバックグラウンドの計数を行うようにしているので、粒子計数にかかる全時間を増加させることなく、測定対象粒子の正確な計数が可能である。
特に、洗浄工程時にバックグラウンドの計数を行えば、最も効率的かつ正確な粒子計数が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の粒子計数装置の一実施例の構成図である。
【図2】この発明の計数シーケンスの一実施例の説明図である。
【図3】この発明の粒子分布の一実施例の説明図である。
【符号の説明】
1 レーザ光源
2 受光部
3 解析部
4 フローセル
5 シース液回収チャンバ
6 シース液チャンバ
7 ジェットノズル
8 廃液チャンバ
9 試料液チャンバ
10 サンプリングバルブ
11 希釈液チャンバ
12 ダイヤフラム式希釈ポンプ
13 ポンプ
14 試料
15 陽圧印加部
16 陰圧印加部
17 陽圧印加部
18 陰圧印加部
19 試料液押出し用シリンジ
20 モータ
A 希釈工程
B 吸引工程
C シース形成工程
D 第1待機工程
E 計数工程
F 逆流工程
G プレ洗浄工程
H 洗浄工程
I 第2待機工程
Claims (6)
- フローサイトメータを用いて、測定対象粒子を含む試料液をシース液で包んで形成した試料流を光学的に測定して第1粒度分布を作成する第1の測定工程と、前記フローサイトメータを用いて前記シース液のみからなる試料流を形成し、その試料流を光学的に測定して第2粒度分布を作成する第2の測定工程と、
第1粒度分布から第2粒度分布を減算することによって、測定対象粒子の粒度分布を求める解析工程とからなることを特徴とする粒子計数方法。 - 前記第2の測定工程が、前記第1の測定工程における粒度分布の測定に支障を及ぼさない期間に行われることを特徴とする請求項1記載の粒子計数方法。
- 前記第1測定工程に続いて、シース液をフローセルに流すことによるフローセルの洗浄が行われ、前記第2測定工程が、シース液によるフローセルの洗浄の際に行われることを特徴とする請求項1記載の粒子計数方法。
- 前記測定対象粒子が直径10μm以下の微小粒子を含むことを特徴とする請求項1から3に記載したいずれかの粒子計数方法。
- 前記測定対象粒子が、血小板である請求項1から3に記載したいずれかの粒子計数方法。
- フローサイトメータを用いて、測定対象粒子を含む試料液をシース液で包んで形成した試料流を光学的に測定して粒度分布を求める粒子計数装置において、測定対象粒子を含む試料液をシース液で包んで形成した試料流を光学的に測定して得られた第1粒度分布から、シース液のみからなる試料流を光学的に測定して得られた第2粒度分布を減算することにより、測定対象粒子の粒度分布を求めることを特徴とする粒子計数装置。
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