JP3680526B2 - 延伸樹脂容器及びその製法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、延伸樹脂容器に関するもので、より詳細には、底部の軽量化が可能であり、底部の耐熱性、耐ストレスクラック性、耐吸湿性等に優れ、容器の軸荷重強度、耐衝撃強度等が顕著に向上した延伸樹脂容器及びその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)の如き熱可塑性ポリエステルの二軸延伸ブロー成形容器は、優れた透明性や表面光沢を有すると共に、瓶に必要な耐衝撃性、剛性、ガスバリヤー性をも有しており、各種液体を熱充填してなる耐熱用容器或いは各種液体を無菌充填してなる無菌充填用容器等として利用されている。
特に、上記の耐熱用容器では、高温液体を充填した際の熱変形及び密封後の減圧変形を防止する耐熱性及び耐減圧変形性が要求される。一方、無菌充填用容器では、通常空容器が殺菌される際に比較的高温の殺菌液を使用するため、その殺菌温度条件に応じた耐熱性が要求される。
【0003】
この二軸延伸ブロー成形容器においては、胴部の器壁は高度な延伸配向状態にあり、これが容器の耐熱性、耐衝撃性、透明性、ガスバリアー性を高めるのに役立っている。問題は、底部の延伸配向を高度に行うことが困難であることにあって、これが容器の底部に厚肉の未延伸配向乃至低延伸配向部を必要とし、容器の軽量化を阻害するとともに、耐熱性の低下或いは耐衝撃性の低下の原因となっている。
【0004】
即ち、容器底部に比較的に薄肉の低延伸配向の部分があると、その部位は高延伸配向部に比べて耐変形強度、特に耐熱強度が低下する。そのため、その低延伸配向の部位を厚肉化し、且つ底中央部に例えば花びら状の複雑な形状を採用することにより、底部の耐変形強度、特に耐熱強度を高めている。
また、容器底部の耐熱強度は、底部の低延伸配向部を熱固定することにより上げることが可能であるが、その熱固定の際に低延伸配向部は白化する。その白化した低延伸配向部が比較的に広い範囲に及ぶ場合、美観的に問題となると共に、耐衝撃性の著しい低下が生じることになる。
【0005】
特開平8−267549号公報には、底部の中央に厚肉の熱結晶化部を有し、その周囲を高延伸配向状態にて薄肉化し、且つ熱固定したペタロイド底部を有する容器を開示している。
【0006】
また、容器底部をも可及的に高延伸して、未配向部乃至低配向部を可及的に小さくすることも行われている。
【0007】
特開昭57−8123号公報には、低配向部を減少させることを目的として、ポリエチレンテレフタレートから予備成形体を作成した後、二軸延伸ブロー成形して中空容器を製造するに当たり、予備成形体を、下記に定義する容器の肩部に相当する部位及び容器の底部周辺に相当する部位の何れか一方または双方において、該部位の肉厚がそれぞれの周辺の肉厚に対し、下記式(1)、(2)
t2 ≦t1 ‥(1)
0.5≦t2 /t3 ≦0.8 ‥(2)
式中、t1 容器の口部下端部に相当する予備成形体の肉厚、または予備成形体の底部中央の肉厚、
t2 容器の肩部に相当する部位または容器の底部周辺に相当する部位の予備成形体の肉厚、
t3 容器の胴部に相当する部位の予備成形体の肉厚
を満足するような形状のものとすることを特徴とする中空容器の製造法が記載されている。
【0008】
本発明者らの提案に係る特開平9−118322号公報には、樹脂の二軸延伸ブロー成形によって形成された口頸部、肩部、胴部及び複数の谷部及び足部とよりなる底部を備えた自立性容器において、比較的低延伸状態の底中心部を除く底部が1mm以下の厚みに薄肉化され、結晶化度が20%以上に比較的高延伸状態にて配向結晶化されており、且つ底中心部の直径Dc が胴径D0 の1〜20%の範囲内にあることを特徴とする耐熱耐圧性に優れた自立性容器が記載され、更に、延伸温度に加熱されたプリフォームを金型内でプリフォーム内部に挿入された延伸棒とプリフォーム外部のプレス棒とでプリフォームの底中心部を挟み込み、次に延伸棒を駆動しながら同時にプリフォーム内部に高圧気体を吹き込むと共に、延伸加工が終了する直前までの間上記底中心部の温度低下を40℃以内に保持して二軸延伸ブロー成形を行い、これにより、底中心部を除き比較的高延伸状態で薄肉化された、概ねドーム状の底部を有する2次成形品とし、該2次成形品の少なくとも底部及び底部に連なる胴部の一部を加熱収縮させて3次成形品とし、該3次成形品を金型内にて2次ブロー成形して最終容器とすることを特徴とする耐熱耐圧性に優れた自立性容器の製造方法が記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記先行技術の熱結晶化法では、容器底中央の熱結晶化部は、プリフォーム底部を加熱、熱結晶化させることにより得られるのであり、面倒な加熱工程が必要となる。
【0010】
また、延伸ブロー成形容器の製造に用いられるプリフォームは、樹脂の射出成形で製造されるが、このプリフォームの底部中心にはゲート部が必ず結合している。このゲート部は、余分のものとしてこれを切り取るトリミング操作乃至仕上げ操作を行っている。
しかしながら、このようなトリミング操作乃至仕上げ操作は面倒な工程であると共に、切り取り寸法を一定にすることが必ずしも容易でないという精度上の問題もある。特に、容器底部の成形性を考慮してゲート部の長さを限りなく零に近づけようとすると、トリミング操作後に研磨等の仕上げ操作が必要となり、工程が増えて一層面倒なことになる。
一方、ゲート残部がプリフォームに残留すると、ゲート残部は体積が大きく、この部分が熱結晶化により著しく脆化し、その脆化部が底部のかなりの部分を占めるようになるため、著しく耐衝撃性が低下する問題が生じる。また、熱結晶化により、低延伸配向状態の底部は白化するが、その領域が広くなり過ぎると美観上好ましくないという問題もある。
【0011】
一方、前記先行技術の底部高延伸法では、底部のかなりの部分を高延伸することが可能であるが、底中心のゲート残部には未だ未配向乃至低配向の部分が存在するという問題がある。更に、前述した底部周辺対応部分が薄肉化されたプリフォームを使用する方法では、容器底部周辺の薄肉化により、容器の軸荷重強度が低下するという問題もある。
【0012】
本発明者らは、プリフォームの底部を熱結晶化することなく、またプリフォームのゲート残部をも有効に利用して、自立構造型底部を高延伸配向状態とする二軸延伸ブロー成形手段を鋭意検討した。
その結果、ブロー成形における底部の延伸成形は成形体の底中心部であるゲート部が金型の底部に達した時点から顕著に行われることを突き止めた。そして、成形体の底中心部が金型底部に達する時点での底中心部及びその近傍の温度低下を一定以下に小さくする手段を採用することにより、底部全体を、ゲート残部をも含めて、高延伸配向状態に層状化できることを見いだした。
更に、特定の寸法形状のプリフォームを用いることにより、底コーナ部に相対的に厚肉の高延伸配向部を形成させることができ、これにより容器の諸特性を顕著に向上させうることを見出した。
【0013】
即ち、本発明の目的は、底部が、ゲート残部を含めて、有効に高延伸配向状態に配向結晶化され、更に底コーナ部に高延伸状態の環状厚肉部を有することにより、底部の軽量化が可能であり、底部の耐熱性、耐ストレスクラック性、耐吸湿性等に優れ、容器の軸荷重強度、耐衝撃強度等が向上した延伸樹脂容器を提供するにある。
また、本発明の他の目的は、ゲート残部を含めて、高延伸配向状態に配向結晶化され、更に底コーナ部に高延伸状態の環状厚肉部を有する底部と高延伸状態の胴部とを熱固定することにより、特に底部及び胴部の高い耐熱性が確保された延伸樹脂容器を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、樹脂の二軸延伸ブロー成形によって形成された口頸部、肩部、胴部及び中央部が下から見て凹状の底部を備えた自立性容器において、上記胴部及び底部が底中心ゲート残部を含めて高延伸配向層を有していると共に、底中心ゲート残部が高延伸配向状態のゲート接続部及びゲート周縁部と連続的に連なった高延伸配向層と低延伸配向部とから構成されており、且つ上記胴部と底部を連結する底コーナ部の少なくとも一部或いはその近傍に高延伸配向化された環状厚肉部を有することを特徴とする延伸樹脂容器が提供される。
本発明によればまた、有底状の底中心部にゲート部を有するプリフォームを二軸延伸ブロー成形して延伸樹脂容器を製造する方法において、上記プリフォームの底肩部がゲート周縁部及び胴部よりも厚肉のプリフォームであり、上記プリフォームの底部及び胴部を高度に延伸ブロー成形して、成形品の底コーナ部に高延伸配向した環状厚肉部を形成させ、且つ上記環状厚肉部に囲まれた底部を概ね高延伸配向化させると共に、延伸加工が終了する直前までの間、上記底中心の温度低下を40℃以内に保持して、成形品の底ゲート残部に高延伸配向層を形成させることを特徴とする延伸樹脂容器の製法が提供される。
【0015】
本発明の延伸樹脂容器においては、
1.上記底コーナ部及び接地部の肉厚が底コーナ部近傍の胴部の肉厚よりも厚いこと、
2.上記環状厚肉部の肉厚が0.4〜1mmであること、
3.上記高延伸配向層の配向に伴う結晶化度が20%以上であること、
4.上記底中心ゲート残部及びその近傍を除く部分の肉厚が1mm以下であること、
5.上記底部が25%以上の結晶化度にて熱固定されており、底中心ゲート残部を除いて、実質的に透明であること、
6.上記容器全体が25%以上の結晶化度にて熱固定されており、口頸部及び底中心残部を除いて、実質的に透明であること、
が好ましい。
【0016】
【発明の実施形態】
本発明の延伸樹脂容器は、樹脂の二軸延伸ブロー成形によって形成された口頚部、肩部、円筒状部或いは角筒状の胴部及び中央が下から見て凹状の底部を備え、自立性を有しているが、上記胴部及び底部が底中心ゲート残部を含めて高延伸配向層を有していること、及び上記胴部と底部を連結する底コーナ部の少なくとも一部或いはその近傍に高延伸配向化された環状厚肉部を有していることが、顕著な特徴である。
【0017】
尚、本明細書において底中心ゲート残部とは、プリフォームの射出成形時にその底中心から突出したゲート部が形成されるが、上記ゲート部に対応した容器の底中心の厚み方向の全体にわたる部分をいう。
【0018】
本発明の容器では、先ず、容器の胴部及び底部が底中心ゲート残部を含めて高延伸配向層を有しており、この高延伸配向層により、65℃程度までの温度範囲にて容器の必要とする剛性と柔軟性とを合わせ持つ優れた機械的特性を有することができる。特に、容器底部では、優れた機械的特性を保有したまま、薄肉化に伴う著しい軽量化が可能となる。
【0019】
本発明の容器の胴部及び底部を熱固定することにより、優れた耐熱性を得ることができる。即ち、容器の胴部及び底部全体を覆う高延伸配向層は熱固定されても透明状態を保持しており、優れた耐熱変形を有するとともに、剛性、耐衝撃性及び耐ストレスクラッキング性等にも優れている。
本発明の容器では底ゲート残部は高延伸配向層と低延伸配向部とから構成されるが、熱固定の際、低延伸配向部のみが白化し、高延伸配向層は透明のまま残る。この白化した底ゲート残部の低延伸配向部は比較的に脆いが、機械的特性に優れた高延伸配向層の上に局部的に乗った形態となっており、且つその低延伸配向部の大きさも限定されることから、底部の優れた機械的特性を阻害することは全くない。また、白化した低延伸配向部は、通常底中央の凹部に位置しており、その径の小さいことから、特に美観を損ねることもない。
【0020】
本発明者らは、ブロー成形を鋭意検討した結果、ブロー成形における底部の延伸成形は、プリフォーム成形体の底中心部であるゲート部が金型の底部に達した時点から顕著に行われることが分かった。そこで、成形体の底中心部が金型底部に達する時点での底中心部及びその近傍の温度低下を一定以下に小さくする手段を採用したところ、底部を、ゲート残部をも含めて、高延伸配向状態に薄肉化できることが分かった。
【0021】
上記ブロー成形において、これまではプリフォームのゲート長さが長すぎるとゲート残部及びその周辺が十分な高延伸状態に薄肉化することが難しいと考えており、プリフォームの状態で底ゲート残部及びその周辺を熱結晶化、すなわち球晶化して、球晶化部近傍を含む底部を高延伸配向させるか、プリフォームのゲート長さを殆ど零にして、ゲート残部をも薄肉化するというのが従来の考えであった。本発明では、プリフォ−ムのゲート長さが多少長くても、厚肉の底中心ゲート残部に前述した手段で高延伸配向層を形成することが可能となった。
【0022】
本発明では、プリフォームの形状と底部の肉厚及びブロー成形条件を調整して、ブロー成形時のプリフォーム底部の延伸倍率、特にゲート残部に接するゲート接続部を含むゲート周縁部の延伸倍率を適正化することにより、容器の底中心ゲート残部が厚肉である場合にも、その周囲のゲート接続部及びゲート周縁部を高延伸配向状態とし、これに伴って底中心ゲート残部をも有効に延伸することができる。
【0023】
さらに、上記のように底中心ゲート接続部及びゲート周縁部を高延伸配向状態とした本発明の容器では、驚くべきことに、厚肉のゲート残部に高延伸配向部、或いは更に低延伸配向部が存在し、しかも、このゲート残部の高延伸配向部は層状を成しており、高延伸配向状態のゲート接続部及びゲート周縁部と連続的に連なった構造となっていることが判った。
【0024】
上記の底中心ゲート残部の構造は、ブロー成形時に底中心ゲート残部に相当するプリフォームの底ゲート部の周囲を高延伸配向状態とすることにより、底ゲート部の肉厚方向における一部がその高延伸される周囲により引っ張られて局部的に高延伸配向して、結果的に層状の高延伸配向部を形成することを示している。
【0025】
一般に、底中心ゲート残部には、上記高延伸配向層と共に低延伸配向部とが存在するが、この低延伸配向部は、ゲート残部中の高延伸配向部とは独立に存在し、高延伸配向部の層状構造や、高延伸配向状態のゲート接続部及びゲート周縁部と連続的に連なった連続層状構造を何ら分断しないので、耐熱性あるいは耐衝撃性等の阻害要因とはならない。
【0026】
本発明の容器は、上記の通り、胴部及び底部が底中心ゲート残部を含めて高延伸配向層を有するものであるが、上記胴部と底部を連結する底コーナ部の少なくとも一部或いはその近傍に高延伸配向化された環状厚肉部を有することが顕著な特徴である。
【0027】
一般に、自立性延伸樹脂容器の底部においては、底中心ゲート残部が最も肉厚であり、底コーナ部、即ち胴部との接続部に向けて次第に肉厚が減少するような肉厚分布をとり、特に接地するコーナ部においては、肉厚の減少が著しいものとなりやすい。
これに対して、本発明においては、肉厚の減少傾向の底コーナ部乃至その近傍に、高延伸配向化された環状厚肉部を設けるのである。この環状厚肉部は、当然のことながら、高延伸による分子配向を有しているが、肉厚の増大に伴って底コーナ部乃至その近傍の剛性が顕著に向上しており、このため、容器の軸荷重強度は30kgf以上に向上している。
【0028】
底コーナ部乃至その近傍における環状厚肉部の存在は、底中心から底周辺までの厚み分布を求めることにより、確認することができ、一般にこの環状厚肉部においては、厚みが極大値をとる少なくとも1個のピークが存在するか、或いは厚みが比較的平坦な肩部が存在する。添付図面の図4には、本発明の延伸樹脂容器の一例についての底部の厚み分布が示されている。
【0029】
一般には、最も厚肉な底中心ゲート残部と環状厚肉部との間には、これらよりも肉厚の減少した部分が存在する。というのは、既に指摘したとおり、底中心ゲート残部の周囲の高延伸が底中心ゲート残部における高延伸配向層の形成をもたらすからである。
【0030】
勿論、底中心ゲート残部と環状厚肉部との間にある肉厚減少部分の存在は、容器の軸荷重強度には特に妨げとはならない。というのは、流通過程で問題となる空容器の座屈は底コーナ部乃至その近傍において生じるからである。
【0031】
本発明の容器は、決してこれに限定されるものではないが、有底プリフォームとして、プリフォームの底肩部がゲート周縁部及び胴部よりも厚肉のプリフォームを用いて、このプリフォームの底部及び胴部を高度に延伸ブロー成形して、成形品の底コーナ部乃至その近傍に高延伸配向した環状厚肉部を形成させると共に、上記環状厚肉部で囲まれた底部を高延伸配向させることにより製造される。
用いるプリフォームは底中心にゲート部を有するものであるが、延伸加工が終了する直前までの間、上記底中心の温度低下を40℃以内に保持して、成形品の底ゲート残部に高延伸配向層を形成させるのがよい。
【0032】
本発明では、胴部及び底部が底中心ゲート残部を含めて高延伸配向層を有することに関連して、底中心ゲート残部及びその近傍を除く部分の肉厚が1.1mm以下、特に0.3乃至1.1mmとなるように薄肉化されており、この部分は、20%以上の配向結晶化度を有している。上記の程度の延伸薄肉化及び配向結晶化が行われていれば、剛性、耐熱性、耐衝撃性、耐ストレスクラッキング性に関しては満足すべき結果が得られ、また容器底部を軽量化することが可能となる。
【0033】
耐熱用容器の場合、高延伸配向層は、熱固定されているのが一般的であり、熱固定された高延伸配向層は、一般に30乃至55%の結晶化度を有しており、器壁は底中心ゲート残部の低延伸配向部を除いて実質的に透明である。
また、無菌充填用容器において、例えば容器殺菌時に比較的高温の殺菌剤を用いる場合には耐熱用容器と同様に高延伸配向層を熱固定して、耐熱性能を高めることができる。
【0034】
また、本発明では、底コーナ部の少なくとも一部乃至その近傍に高延伸配向状態の環状厚肉部を有するが、この環状厚肉部は、一般に0.4乃至1mmの肉厚を保持しており、この部分は20%以上の配向結晶化度を有している。底コーナ部乃至その近傍が上記肉厚及び配向結晶化度を保持することにより、容器の軸荷重強度を前述した範囲に高めることが可能となる。
【0035】
熱固定された環状厚肉部は、高延伸配向層と同様に一般に30乃至55%の結晶化度を有しており、この環状厚肉部も実質的に透明である。
【0036】
本発明の容器における底中心ゲート残部は、高延伸薄肉化された高延伸配向層を有しているが、この高延伸配向層は、底部の他の部分に形成される高延伸配向層と同様に透明であり、一般に0.3乃至1mm、特に0.35乃至1mmの肉厚と20%以上の配向結晶化度を有している。
熱固定を行った場合、底中心ゲート残部は一般に25乃至55%の結晶化度を有しているが、底中心ゲート残部に低延伸配向部が存在すると、この部分は白化する傾向である。
【0037】
【実施例】
[本発明の容器]
本発明の延伸樹脂容器を示す図1において、この容器は、樹脂の二軸延伸ブロー成形で形成された口頸部1、口頸部に接続される肩部2及び胴部3及び底部4から成っている。この具体例において、底部4は、底中央凹部5と底中央凹部の周囲の底周囲凸部6とからなっており、この底周囲凸部6には、接地部7と、胴部に連なる底コーナ部8とがある。
底中央凹部5の中心には、底中心ゲート残部9が存在している。
肩部2及び胴部3は、口頸部1との接続部を除き、高延伸配向状態で薄肉化されている。
【0038】
底部4は、底中心に位置する厚肉のゲート残部9と、ゲート残部9と底周囲凸部6とを接続する、おおよそ円錐台形またはテーパー状のゲート周縁部10とからなっている。この容器では、ゲート残部9を除く底部4の各部位(10、7、6)は実質的に高延伸配向状態の層のみから成っている。また、ゲート残部9を除き、1.1mm以下の厚みに薄肉化されている。
【0039】
本発明の延伸樹脂容器を耐熱用容器または耐熱性を要求される無菌充填用容器として用いる際には、胴部及び底部を熱固定する。胴部及び底部を熱固定する手段については、本発明では特に限定されないが、通常高温のブロー金型によりブロー成形時に熱固定を行う手段が採用できる。
また、耐熱用容器では、通常口頸部1を加熱して球晶化、すなわち白化の状態とし、非晶化状態の口頸部1の耐熱性を向上させる。
【0040】
[底中心ゲート残部]
本発明の容器の底中心ゲート残部9は比較的厚肉であるが、図2の底部中心拡大断面図に示すとおり、高延伸配向部11と低延伸配向部12との組み合わせで構成されている。通常、ゲート残部9の高延伸配向部11はゲート残部を横断した連続層から成っており、且つゲート残部の周囲に広がるゲート周縁部10と連結している。その結果、本発明容器では底部4が連続した高延伸配向層にて覆われていることになる。
【0041】
ゲート残部9の好適な配置の一例を示す図2において、底部が熱固定されない場合には、ゲート残部9の低延伸配向層12は高延伸配向部11と同様に透明状態である。この際、ゲート残部9及びその近傍の剛性、耐熱性、耐衝撃性等の機械的特性は高延伸配向部11のそれに殆ど依存しており、優れた機械的諸特性を有している。
さらに、耐熱用容器では底部が熱固定されるが、その場合には、ゲート残部9の低延伸配向部12は通常熱結晶化が進行して白化する。一方、ゲート残部9の高延伸配向層11は熱固定されても透明のまま残る。この耐熱用延伸樹脂容器の底中心ゲート残部9では、内面側に高延伸配向層11が存在するため、耐熱性と耐衝撃性との組み合わせに特に優れている。
【0042】
高延伸配向層の好適な配置の一例を示す図3において、底中心ゲート残部9が、容器内面側に配置された高延伸配向層12を備えている点は図2の場合と同様であるが、容器外面側には特殊な複合構造が存在している。即ち、容器外面側には、リング状の低延伸配向部12aとその中央部に高延伸配向層11aとの複合層が構成されている。
底部が熱固定された場合には、リング状の低延伸配向部12aは白化するが、その中央部に位置する高延伸配向層は透明のまま残る。その複合形状は、高延伸配向層の厚みが特に増大しており、耐熱性及び耐衝撃性に特に優れている。
【0043】
また、容器内面側の一般に透明な高延伸配向層と容器外面側の一般に白化した低延伸配向部とから成る構造のものであっても、高延伸配向層11が非常に厚く、低延伸低配向部12がゲート中心或いはゲート周辺等の非常に限られた部位に薄く形成されていてもよい。この構造では、高延伸配向層11の厚みが増大していることによる底部降伏荷重の増大が著しい。
【0044】
底中心ゲート残部9の高延伸配向部11は、ブロー成形時に、一般的にいって20%以上、好ましくは25%の結晶化度に配向結晶化されていることが、耐熱性、耐衝撃性の点で好ましい。
【0045】
底中央ゲート残部をも含めて底部を熱固定することにより、ゲート残部9の低延伸配向層12は熱結晶化及び白化して結晶化度が増大する。一方、ゲート残部9の高延伸配向層11は実質的に透明の状態を保持しながら熱結晶化が進行する。この場合、白化したゲート残部の低延伸配向層12が容器の底中央部に存在することになるが、その大きさは限定されており、特に美観上問題になることはない。
【0046】
熱固定された底中心ゲート残部9では、低延伸配向層12は20%以上、特に25%以上の結晶化度を、高延伸配向層11は25%以上の結晶化度を有することが好ましい。
【0047】
底中心ゲート残部9の肉厚は、通常最大部で1〜3.5mm程度となるのがよく、本発明では、プリフォームのゲート部の仕上げを行う必要なしに、底中央ゲート残部が高延伸配向した容器底部を形成することができる。一方、底中央ゲート残部9における高延伸配向層12の厚みは、底部中心に十分な耐熱性を付与するものであればよく、一般的にいって、0.35mm以上、特に0.4乃至1.1mmの範囲にあり、ゲート残部の全体の厚みの20%以上、特に30%以上を占めることが好ましい。
【0048】
底中心ゲート残部9の直径Dg は、胴径D0 の0.25倍以下、特に0.2倍以下であることが、ゲート残部の存在が目立たないので、容器の外観特性の点で好ましい。
【0049】
[ゲート周縁部]
ゲート周縁部10は1mm以上の肉厚を多少越えても高延伸配向状態を保持することが可能である。そのゲート接続部の肉厚は0.3乃至1.1mm、特に0.35乃至1.0mmの範囲にあることが、やはりゲート残部9に高延伸配向層11を有効に形成させるために好ましい。
【0050】
ゲート周縁部10の肉厚が0.3mmを下回る場合、薄肉化しすぎて底中央部の剛性が低下し、好ましくない。一方、ゲート周縁部の肉厚が1.1mmを上回る部位が多くなると、ゲート残部に高延伸配向層を形成させることが困難となる。但し、ゲート周縁部の肉厚がごく限定された狭い部位において1.1mmを越える場合には、特にゲート残部の一部を高延伸配向化することを妨げるものではない。
【0051】
以上の様に、好ましい範囲の肉厚にあって、且つ高度に配向結晶化されたゲート周縁部10は耐熱性と耐衝撃強度に特に優れている。
【0052】
[環状厚肉部]
本発明の容器の底部において、底部4における各部位の厚み及び結晶化度は、既に述べた範囲にあるが、本発明では、底コーナ部8乃至その近傍に環状厚肉部13(図4)を設けることが重要である。
【0053】
本発明の容器の底部の位置と、厚みの分布との関係を示す図4において、底中心ゲート残部9は最も肉厚が大きく、底中心周辺部10では厚みが減少しているが、底コーナ部8乃至その近傍では厚みが増大して、厚みの極大値をとる部位が存在する。
環状厚肉部13の肉厚は通常0.4〜1mmの範囲にあり、特に最大厚肉部の肉厚は通常0.5〜1mmの範囲にある。
【0054】
環状厚肉部13の厚みの極大値をT 6 、底部4に連なる胴部3の下部の厚みをT4 及び底中心周辺部10の厚みをT5 としたとき、一般に、
T 6 >T4
及び
T 6 ≧T5 、特にT6 >T5
である。
破裂強度及び軸荷重強度の向上の見地からは、T 6 >T4 の厚み比は、1.3乃至3.5、特に1.5乃至3の範囲にあり、またT 6 >T5 の厚み比は、1乃至2.2、特に1.1乃至2の範囲にあることが好ましい。
【0055】
環状厚肉部13の幅d、即ち厚みの立ち上がり部間の幅は、容器底部の寸法や形状によっても相違するが、一般に15乃至30mmの範囲にあることが、軸荷重強度の向上及び耐熱性の向上の点で好ましい。
【0056】
[容器の肉厚、結晶化度]
本発明の容器では、口頸部1及びその近傍部、及び底中心ゲート残部9及びその近傍を除く容器の肉厚が0.2mm乃至l.1mm、好ましくは0.3mm乃至0.9mmの範囲にある。
【0057】
口頸部1及びその近傍部、及びゲート残部9を除く容器の延伸配向に伴う結晶化度が20%、好ましくは25%以上である。
【0058】
耐熱性が必要とされる本発明容器では、容器全体が熱固定されていることが好ましく、結晶化度が25〜55%であることが好ましい。その熱固定の後、口頸部1及びその近傍部及びゲート残部9の低延伸配向部を除く部位は実質的に透明状態を保持している。
【0059】
[樹脂]
本発明において、プラスチック材料としては、延伸ブロー成形及び熱結晶化可能なプラスチック材料であれば、任意のものを使用し得るが、熱可塑性ポリエステル、特にエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが有利に使用される。勿論、ポリカーボネートやアリレート樹脂等を用いることもできる。
【0060】
本発明に用いるエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルは、エステル反復単位の大部分、一般に70モル%以上、特に80モル%以上をエチレンテレフタレート単位を占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50乃至90℃、特に55乃至80℃で、融点(Tm)が200乃至275℃、特に220乃至270℃にある熱可塑性ポリエステルが好適である。
【0061】
ホモポリエチレンテレフタレートが耐熱圧性の点で好適であるが、エチレンテレフタレート単位以外のエステル単位の少量を含む共重合ポリエステルも使用し得る。
【0062】
テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0063】
また、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルにガラス転移点の比較的高い例えばポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート或いはポリアリレート等を5%〜25%程度をブレンドした複合材を用いることができ、それにより比較的高温時の材料強度を高めることができる。
さらに、ポリエチレンテレフタレートと上記のガラス転移点の比較的高い材料とを積層化して用いることができる。
【0064】
用いるエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルは、少なくともフィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、用途に応じて、射出グレード或いは押出グレードのものが使用される。その固有粘度(I.V.)は一般的に0.6乃至1.4dL/g、特に0.63乃至1.3dL/gの範囲にあるものが望ましい。
【0065】
[容器の製造法]
本発明の容器は、決してこれに限定されるものではないが、有底プリフォームとして、プリフォームの底肩部がゲート周縁部及び胴部よりも厚肉のプリフォームを用いて、このプリフォームの底部及び胴部を高度に延伸ブロー成形して、成形品の底コーナ部乃至その近傍に高延伸配向した環状厚肉部を形成させると共に、上記環状厚肉部で囲まれた底部を高延伸配向させることにより製造される。
用いるプリフォームは底中心にゲート部を有するものであるが、延伸加工が終了する直前までの間、上記底中心の温度低下を40℃以内に保持して、成形品の底ゲート残部に高延伸配向層を形成させるのがよい。
【0066】
本発明の容器の製造に用いるプリフォームは、図5で20に示すような形状を有しており、このプリフォーム20は、首部21、胴部22及び閉塞底部23から成っており、首部21には、ネジ等の蓋締結機構及び容器保持のためのサポートリング等が設けられており、一般に首部21は熱結晶化すなわち球晶化されている。この球晶化された首部21は、図1の容器口頸部1となるものである。また、閉塞底部23の中心には、ゲート残部24が存在している。
【0067】
このプリフォームの底部を拡大して示す図6及びプリフォームの底と容器の底との対応関係を示す図7において、このプリフォームの底部23は底肩部25及びゲート周縁部26を備えているが、胴部22の厚みT1 、ゲート周縁部の厚みT2 及び底肩部の厚みT3 は、下記式
T3 ≧T1
及び
T3 >T2
を満足する関係にあることが、容器の底コーナ部8乃至その近傍に環状厚肉部を形成させるために重要である。
【0068】
即ち、本発明の容器の製造では、プリフォーム20のゲート部24が容器の底中心ゲート残部9、プリフォームのゲート周縁部26が容器のゲート周縁部10、プリフォームの底肩部25が容器の底コーナ部8を含む底凸部6、及びプリフォームの胴部22が容器の胴部3にそれぞれ対応するように、延伸条件を設定し、しかもプリフォームの器壁の肉厚を前述した関係を満足するようにすることにより、容器の底コーナ部乃至その近傍に環状厚肉部を形成させることが可能となるわけである。
【0069】
本発明においては、プリフォームの胴部22の厚みT1 、ゲート周縁部の厚みT2 及び底肩部の厚みT3 は、下記式
T1 /T3 =0.8〜1
及び
T2 /T3 =0.75〜0.98
を満足する関係にあることが、容器の底コーナ部8乃至その近傍に明確に且つ確実に環状厚肉部を形成させると共に、容器の底底各部の厚み寸法を前述した範囲に維持するために好適である。
【0070】
本発明の延伸樹脂容器の製造に当たっては、延伸温度に加熱された前記プリフォームを金型内でプリフォーム内部に挿入された延伸棒を駆動しながらプリフォームの底中心部を突き上げて縦方向に延伸し、その延伸に同期してプリフォーム内部に高圧気体を吹き込んで延伸樹脂容器を製造するのが好ましく、この際、延伸加工が終了する直前までの間上記底中心部の温度低下を40℃以内に保持して底中心部をも高延伸するのが最も好ましい。
【0071】
耐熱性容器の場合、容器の製造に際し、先ず有底筒状のプリフォームを成形し、必要によりこのプリフォームの口頸部を加熱して、局部的に球晶化部を設ける。
【0072】
プラスチック材料のプリフォーム20への成形には、射出成形を用いることができる。即ち、プラスチックを冷却された射出型中に溶融射出して、過冷却された非晶質のプラスチックプリフォームに成形する。
【0073】
射出機としては、射出プランジャーまたはスクリューを備えたそれ自体公知のものが使用され、ノズル、スプルー、ゲートを通して前記ポリエステルを射出型中に射出する。これにより、ポリエステル等は射出型キャビティ内に流入し、固化されて延伸ブロー成形用のプリフォームとなる。
【0074】
射出型としては、容器形状に対応するキャビティを有するものが使用されるが、ワンゲート型或いはマルチゲート型の射出型を用いるのがよい。
射出温度は270乃至310℃、圧力は28乃至110kg/cm2 程度が好ましい。
【0075】
プリフォーム20の首部21の球晶化は、これらの部分をそれ自体公知の手段で選択的に加熱することにより行うことができる。ポリエステル等の熱結晶化は、固有の結晶化温度で顕著に生じるので、一般にプリフォームの対応する部分を、結晶化温度に加熱すればよい。加熱は、赤外線加熱或いは誘電加熱等により行うことができ、一般に延伸すべき胴部を熱源から断熱材により遮断して、選択的加熱を行うのがよい。
【0076】
上記の球晶化は、プリフォーム20の延伸温度への予備加熱と同時に行っても或いは別個に行ってもよい。
【0077】
本発明では、プリフォーム20の閉塞底部23の中心を球晶化することなく、二軸延伸ブロー成形に使用する。この閉塞底部23の中心には、射出成形の際形成されるゲート部24が存在する。本発明では、このゲート部24を、更に切断する等の仕上げ工程に付することなく、そのまま残留させた状態で、容器の底部中心に高延伸配向層11(図2参照)を形成させるために利用する。
【0078】
このゲート部24の寸法を説明するための図8において、ゲート部24は、長さhと付け根径dとを有していて、一般に先細りのテーパ状(テーパ角α)となっている。hは3mm以下、特に0.1乃至1mmの範囲にあるのがよく、dは2乃至6mm、αは0.5乃至6度の範囲にあるのが適当である。
【0079】
プリフォーム20の延伸温度は、一般に85乃至135℃、特に90乃至130℃の温度が適当であり、その加熱は、赤外線加熱、熱風加熱炉、誘電加熱等のそれ自体公知の手段により行うことができる。また、耐熱用容器における口部球晶化は、プリフォーム底部及び口部を、他の部分と熱的に絶縁した状態で、一般に140乃至220℃、特に160乃至210℃の温度に加熱することにより行うことができる。プリフォーム口部の結晶化度は25%以上であるのがよい。
【0080】
尚、プリフォームからの延伸ブロー成形には、成形されるプリフォーム成形品に与えられた熱、即ち余熱を利用して、プリフォーム成形に続いて延伸ブロー成形を行う方法も使用できるが、一般には、一旦過冷却状態のプリフォーム成形品を製造し、このプリフォームを前述した延伸温度に加熱して延伸ブロー成形を行う方法が好ましい。
【0081】
本発明の容器では、口頚部を除く容器全体を実質的に高延伸状態にて薄肉化することが特徴であり、特にゲート残部を含めた底中心部を含む底部全体に高延伸配向層を設けることが重要である。
【0082】
特に、本発明では、ブロー成形の際に底中心ゲート残部9に接続する部位であるゲート周縁部10(図1)を適正な肉厚にて高延伸配向状態とすることが重要である。それにより、底中心ゲート残部9(図1)は厚肉であるにも係わらず高延伸配向部11(図2)をその一部に連続した層状に形成させることができる。
【0083】
この際、ゲート周縁部10(図1)の適正な肉厚とは高延伸配向状態を保持できる最大の肉厚以下であって、且つ極端に薄肉化しない程度の肉厚以上の前述した範囲にあることが好ましい。この場合、ゲート周縁部の肉厚が厚すぎると、ゲート残部に高延伸配向層を形成することが難しくなり、一方、ゲート周縁部の肉厚が薄すぎると、底部の剛性が低下する問題が生じる。
【0084】
二軸延伸ブロー成形において、上記のゲート周縁部10(図1)を適正な肉厚にて高延伸配向状態とするには、プリフォームの底部からゲート周縁部に延伸ブロー成形する際の延伸倍率を適正化することが重要である。
具体的には、そのゲート周縁部の延伸の際の面積延伸倍率を3.5倍乃至12.5倍、特に5倍乃至10倍とすることが好ましい。
【0085】
ブロー成形にて、上記の好ましい底中心ゲート周縁部10の延伸倍率を達成するには、まず最初にプリフォーム20の形状及び肉厚分布、特に最終的にゲート周縁部となるプリフォーム底部の部位26の肉厚T2 を適正化する必要がある。
次に、ブロー成形を行うブロー成形条件を適正化して、ゲート周縁部の所定の延伸倍率を得る。ブロー成形条件としては、プリフォームの加熱温度及び温度分布、延伸棒によりプリフォーム底部を突き上げる延伸速度、延伸棒の延伸の開始から高圧空気を成形体内吹き込むタイミング、高圧空気流量にて決まる延伸ブロー速度、さらに底部が実質的に延伸される際の成形体の温度レベル等を適正化することが重要である。
【0086】
本発明者らは、検討の結果、ブロー成形にて底部が実質的に高延伸状態となるのは、成形体の底ゲート残部が金型の底部に到達した後のことであり、その底部の延伸成形は、ほぼブロー形状が決まるブロー成形終了の直前まで行われていることを突き止めた。
その際、金型の底部に到達してブロー成形が終了する直前までの成形体の底中央部の温度を比較的に高く保持することにより、底部、特にゲート周縁部を適正な延伸倍率にて高延伸配向状態とすることができることを見いだした。その結果、ゲート残部に層状の高延伸配向部を成形させることが可能となった。
一方、金型の底部に到達した成形体の底中央部の温度が初期のプリフォーム加熱温度に比べて低すぎると、ゲート周縁部は比較的に低延伸配向状態にてとどまる。それに伴って、ゲート残部全体が低延伸配向状態或いは未延伸状態にて残ることになる。
【0087】
具体的には、ブロー成形中に金型の底部に到達して、底部の延伸成形がほぼ終了する直前の時点までの成形体のゲート残部の温度をプリフォームの加熱温度の40℃以内、特に30℃以内とすることが好ましい。
【0088】
一段ブロー成形による容器の製造を示す図9及び図10において、プリフォーム20は、コア金型31によりその首部を支持されており、閉じた割金型32、32内に保持される。コア金型の反対側には、成形品の底形状、即ち凹凸型底形状を規定する底金型33も配置されている。プリフォーム20内に延伸棒34を挿入し、プリフォーム底部23を突き上げることにより、延伸成形を行う。その延伸成形の途中の段階にてタイミングを見計らって、コア金型31を通して高圧気体を成形体内に吹き込むことにより、ブロー成形を行って金型に沿った形状の容器を得る。
【0089】
図9及び図10に示す実施例では、延伸棒34と同軸に、底金型33の側にプレス棒35を配置して、引っ張り延伸に際して、プリフォームのゲート部24が延伸棒34とプレス棒35とにより狭持され、プリフォームの底部のゲート部24が成形される容器底5の中心に位置するように位置規制する。即ち、このプレス棒35はプリフォームの引っ張り延伸の段階にて延伸棒34とでプリフォームのゲート部24を挟み込んで拘束し、さらにブロー成形の段階にて成形体の底ゲート残部を拘束する。このプレス棒の使用により、ゲート残部の心ずれを防止する効果を有する。
【0090】
延伸加工が終了する直前までの間にて、プリフォーム底部の挟み込み部の温度低下を40℃以内、より好ましくは30℃以内とすることにより、成形品36の底部を、その挟み込み部である底中心部を含めて底部全体にわたって、実質的に高延伸状態に薄肉化し、底中心ゲート残部に高延伸配向層を形成させることができる。
【0091】
上記のブロー成形に際して、第1に底中心ゲート周縁部となるべき部位が十分に延伸され、且つ適正な肉厚を有するように延伸倍率を考慮してプリフォームの形状及び肉厚分布を決めることが重要である。この際、プリフォーム底中央のゲート部の高さは0.1乃至3mm、特に0.5乃至1mmの範囲とすることが好ましい。
第2に、ブロー成形時に成形体の底中央部近傍の温度低下を防止する手段を講じる。この場合、ブロー成形時にプリフォームから延伸棒及びプレス棒への熱伝導を減少させることが重要である。具体的には、延伸棒或いはプレス棒の先端を耐熱性プラスチック或いはセラミック等の断熱素材とすることが有効である。また、プレス棒の少なくとも先端部を加温することが有効である。
なお、プレス棒を用いない場合には、成形体のゲート残部がブロー成形の際に最初に接触する金型底中央部の表面に断熱層を設けるか、または底型を加温しておくことが有効である。
【0092】
ブロー成形を行うに当って、プリフォームの加熱温度及び温度分布を適正化する。プリフォームの加熱温度は、一般に85乃至135℃、特に90乃至130℃の温度が適当である。その際、プリフォームの底部と胴部の加熱温度の差を10℃以内とすることが、底部を高延伸配向状態にする上で重要となる。この場合、プリフォームの底部と胴部の加熱温度差が10℃を越えると温度の高い方の部位のみが延伸されすぎる傾向が生じるため、好ましくない。
【0093】
上記の手段及び手法を用い、さらにブロー成形諸条件を適正化することにより、ロ頸部及びその近傍を除く容器全体を高延伸配向状態にて薄肉化した高延伸配向層を有する容器を成形することができる。
また、成形された容器の底中心ゲート周縁部10は肉厚が0.3乃至1.1mmの範囲で、高延伸配向状態となっており、それに伴って底中心ゲート残部9には高延伸配向層11が形成されている。
更に、プリフォームの底肩部25が厚肉化されているため、底コーナ部8乃至その近傍には、高延伸配向状態の環状厚肉部13を形成することができる。
【0094】
上記容器は肩部、胴部及び底部を熱固定することにより、耐熱性を向上させることができる。熱固定の際、高延伸配向層は実質的に透明状態を保持するが、通常、ゲート残部9の低延伸配向部12は球晶化して、白化する。この、白化したゲート残部の低延伸配向部12は脆化するものの、高延伸配向層11は十分な柔軟性を保持しているため、落下強度で示される耐衝撃性は極めて高いレベルを保っている。
具体的な容器の熱固定手段としては、ブロー金型、胴型及び底型の温度を樹脂の結晶化温度とすることにより、ブロー成形工程にて成形品を加熱して熱結晶化させることが有効である。
上記の熱結晶化温度は要求される耐熱性によりことなるが、通常110〜200℃にて熱固定が行われる。この際、熱結晶化に伴う結晶化度は20〜55%となる。
上記の金型による熱固定手段以外に、2度のブロー成形を行う2段ブロー成形法の中間工程にて熱固定を行う手段が採用できる。
【0095】
[製造例]
図9乃至図10に示されるようなブロー成形装置を用いて、図1に示されるような容量が1500mlでポリエチレンテレフタレート(PET)製の耐熱用容器を作成した。
【0096】
図5及び図6に示される有底状のプリフォームを用意した。そのプリフォームの胴部の肉厚T1 と底肩部の肉厚T3 の比T1 /T3 が0.85、ゲート周縁部の肉厚T2 と底肩部の肉厚T3 との比T2 /T3 が0.9であった。また、図8に示されるプリフォームのゲート部の径dは4mm、高さhは0.8mm、角度αは1゜であった。
そのプリフォームの口頸部が白化するまで加熱し、球晶化した。
【0097】
上記プリフォームを最初に約100℃に加熱し、図9に示されるような、底中央部が凹状で150℃に加熱された金型内に導入し、次にプリフォームの底部を内部に設置された延伸棒と外部に設置されたプレス棒とで挟み込み、延伸棒でプリフォーム底部を突き上げながら、同時に30kgf/cm2 の圧縮空気をプリフォーム内に吹き込んでブロー成形し、金型内にて3秒間熱固定した後、冷却された圧縮空気を導入して、成形品を冷却し、冷却された成形品である容器を金型から取り出した。
上記の延伸ブロー成形において、延伸棒及びプレス棒の先端の材質を断熱性の良好なポリテトラフルオロエチレン製(TF製)とし、ブロー成形時の底中心ゲート残分の温度低下を抑制して、容器の底部に高延伸配向層を形成させた。
【0098】
得られた容器の肩部、胴部及び底部は底中心ゲート残部を除いて、高延伸配向状態に薄肉化されており、1mm以下の肉厚で、かつ透明状態であった。その高延伸配向状態の器壁は高温状態の金型との接触にて熱固定されており、それらの部位の結晶化度は33〜38%であった。
底中心ゲート残部は約5mmの直径を有しており、図2に示す様に、内面側に位置する透明の高延伸配向層と外面側に位置する白化した低延伸配向層とで構成されていた。その高延伸配向層は約0.7mmの肉厚で、結晶化度は約33%であった。一方、白化した低延伸配向層は最大厚肉部が1mmであり、結晶化度は約30%程度に球晶化していた。
得られた容器の底コーナ部及びその近傍には環状厚肉部が形成されていた。その環状厚肉部の容器縦断面における最大厚肉部は底コーナR部に位置しており、その最大肉厚部の肉厚は0.6〜0.65mmの範囲にあった。また、その環状肉厚部の幅は約15mmであった。一方、環状厚肉部に近接する胴部の最小肉厚は0.38mm、ゲート周縁部の最小肉厚は0.4mmであった。
【0099】
上記の容器の軸荷重強度を測定したところ、40kgfであり十分な軸荷重強度を有していた。
さらに、上記の容器に83℃の熱水を充填し、容器の熱変形の程度を測定したが、胴部及び底部とも全く問題のないレベルにあった。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、底部が、ゲート残部を含めて、有効に高延伸配向状態に配向結晶化され、更に底コーナ部に高延伸状態の環状厚肉部を有することにより、底部の軽量化が可能であり、底部の耐熱性、耐ストレスクラック性、耐吸湿性等に優れ、容器の軸荷重強度、耐衝撃強度等が向上した延伸樹脂容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の容器の一例を示す一部断面側面図である。
【図2】本発明の容器における底中心ゲート残部の構造の一例を示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明の容器における底中心ゲート残部の構造の他の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の容器における底部の各部位と肉厚の分布との関係を示す説明図である。
【図5】本発明の方法に使用するプリフォームの一例を示す一部断面側面図である。
【図6】プリフォームの底部の寸法を説明するための拡大断面図である。
【図7】プリフォームの底部の各部位と容器の底部の各部位との対応関係を示す説明図である。
【図8】プリフォームのゲート部の形状及び寸法を示す説明図である。
【図9】本発明の1段ブロー成形法による容器製造の実施例において、ブロー成形開始前の状態を示す断面図である。
【図10】本発明の1段ブロー成形法による容器製造の実施例において、ブロー成形終了後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 口頸部
2 肩部
3 胴部
4 底部
5 底中央凹部
6 底周囲凸部
7 接地部
8 底コーナ部
9 ゲート残部
10 ゲート周縁部
11 高延伸配向部
12 低延伸配向部
13 環状厚肉部
20 プリフォーム
21 首部
22 胴部
23 プリフォーム底部
24 ゲート残部
25 底肩部
26 ゲート周縁部
31 コア金型
32 割金型
33 底金型
34 延伸棒
35 プレス棒
36 成形品
Claims (8)
- 樹脂の二軸延伸ブロー成形によって形成された口頸部、肩部、胴部及び中央部が下から見て凹状の底部を備えた自立性容器において、上記胴部及び底部が底中心ゲート残部を含めて高延伸配向層を有していると共に、底中心ゲート残部が高延伸配向状態のゲート接続部及びゲート周縁部と連続的に連なった高延伸配向層と低延伸配向部とから構成されており、且つ上記胴部と底部を連結する底コーナ部の少なくとも一部或いはその近傍に高延伸配向化された環状厚肉部を有することを特徴とする延伸樹脂容器。
- 上記底コーナ部及び接地部の肉厚が底コーナ部近傍の胴部の肉厚よりも厚い請求項1記載の容器。
- 上記環状厚肉部の肉厚が0.4〜1mmである請求項1または2記載の容器。
- 上記高延伸配向層の配向に伴う結晶化度が20%以上である請求項1乃至3の何れかに記載の延伸樹脂容器。
- 上記底中心ゲート残部及びその近傍を除く部分の肉厚が1mm以下である請求項1乃至4の何れかに記載の延伸樹脂容器。
- 上記底部が25%以上の結晶化度にて熱固定されており、底中心ゲート残部を除いて、実質的に透明である請求項1乃至5の何れかに記載の延伸樹脂容器。
- 上記容器全体が25%以上の結晶化度にて熱固定されており、口頸部及び底中心残部を除いて、実質的に透明である請求項1乃至5の何れかに記載の延伸樹脂容器。
- 有底状の底中心部にゲート部を有するプリフォームを二軸延伸ブロー成形して延伸樹脂容器を製造する方法において、上記プリフォームの底肩部がゲート周縁部及び胴部よりも厚肉のプリフォームであり、上記プリフォーム底部及び胴部を高度に延伸ブロー成形し、成形品の底コーナ部に高延伸配向した環状厚肉部を形成させると共に、延伸加工が終了する直前までの間、上記底中心の温度低下を40℃以内に保持して、成形品の底ゲート残部に高延伸配向層を形成させ、且つ上記環状厚肉部に囲まれた底部を概ね高延伸配向化させることを特徴とする延伸樹脂容器の製法。
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