JP3680470B2 - 電磁特性に優れた無方向性けい素鋼用溶鋼の溶製方法 - Google Patents
電磁特性に優れた無方向性けい素鋼用溶鋼の溶製方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電磁特性に優れた無方向性けい素鋼用溶鋼の溶製方法に関し、特に該溶鋼の脱硫を効果的に行うことにより、製品板における鉄損特性の有利な改善を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
無方向性電磁鋼板の鉄損特性は、製品板の結晶粒径に大きく依存し、低鉄損の製品を得るためには、基本的に結晶粒径を粗大化させる必要があることが知られている。
ここに、結晶粒の成長性は、鋼中に分散する第2相、すなわち析出物や介在物の影響が大きく、その成分やサイズ分布、分散状態に大きく左右される。
従って、粒成長性向上のためには、硫化物のような析出物を極力低減させることが重要である。
【0003】
硫化物を低減させる無方向性けい素鋼用溶鋼の取鍋精錬方法として、RH等の真空脱ガス装置で脱炭処理後、Si, Alにより脱酸し、ついで脱硫フラックスとCa合金を添加して脱硫を行う方法が知られている(特開昭59-74213号公報)。
【0004】
しかしながら、上記の方法に従い、脱硫フラックスとCa合金をインジェクションした場合、脱硫処理中にCの増加が生じる場合があり、極低炭素鋼の溶製が安定して行えないという問題があった。
また、この方法では、脱硫フラックスとCa合金の添加とくに脱硫フラックスの添加に伴う温度降下を補償するために、予め溶鋼温度を高くしておく必要があることから、取鍋耐火物の溶損が激しく、溶鋼中の不純物が増加して磁気特性の劣化を招くだけでなく、耐火物コストが高くなるところにも問題を残していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、Ca合金の添加に際し、C増加のおそれがなく、また取鍋耐火物の溶損に伴う溶鋼中不純物の増加や耐火物コストの上昇を招くことのない、無方向性けい素鋼用溶鋼の有利な溶製方法を提案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる知見を得た。
(1) 従来、より効果的な脱硫のためには、特開昭59-74213号公報に開示のように、脱硫フラックスとCa合金の複合添加が不可欠と考えられていたが、脱硫フラックスの使用は、それに伴い形成されるスラグの巻き込みや、このスラグによる耐火物の溶損に起因した鋼中不純物の増加など、種々の弊害をもたらす。
特に、Ca合金をインジェクションした場合にはこの傾向が強い。
(2) この点、脱硫剤としてCa合金のみを使用し、しかもこのCa合金をワイヤーの形で供給してやれば、スラグの形成やインジェクションに起因した上記の弊害は解消される。またCa合金のみの使用であれば、溶鋼温度を予め高くする必要がないので、取鍋耐火物の溶損は一層軽減される。
(3) しかも、Ca合金をワイヤーの形で供給してやると、高い歩留りが確実に得られるので、その使用量を従来より低減しても、従来と同等の脱硫効果を得ることができる。
(4) さらに、Ca脱硫によって生成したCaS等の硫化物は、少量の不活性ガス吹き込みで効果的に浮上分離できる。
【0007】
この発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、この発明は、転炉精錬後、RH処理によってC≦0.01wt%に脱炭した後、Alを 0.1wt%以上添加調整した溶鋼に対し、溶鋼温度:1600℃以下において、Ca合金ワイヤーを、Ca原単位:0.1 〜0.5 kg/tの範囲において添加することにより脱硫を行うことを特徴とする電磁特性に優れた無方向性けい素鋼用溶鋼の溶製方法である。
【0008】
また、この発明においては、Ca合金添加後、不活性ガスを 0.01 m3/t・min 以下の範囲で吹き込み、溶鋼を攪拌することによって、Ca脱硫により生成したCaS等の硫化物を効果的に浮上分離することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の基礎となった実験結果について説明する。
転炉精錬後、取鍋に出鋼した溶鋼(200t)に対し、RH装置の浸漬管を浸漬して真空脱炭処理を行い、C≦50 ppmに調整した。ついで、真空槽内にAl, Siを添加して成分調整を行ったのち、取鍋をCa合金添加位置に移動し、鉄被覆CaSiワイヤーを種々の速度で供給することにより、脱硫処理を行った。
【0010】
図1に、Al濃度を種々に変化させた場合における、脱硫処理前および処理後のS濃度について調べた結果を示す。なお、この時、溶鋼温度は1580℃、Ca原単位は 0.1〜0.5 kg/tとした。
同図に示したとおり、Al≧0.1 wt%とした場合に、処理後S濃度は10 ppm以下まで安定して低下した。
一方、Al濃度が0.1 wt%未満の場合には、満足いくほどの脱硫効果は得られなかった。
【0011】
次に、図2に、Ca原単位を種々に変化させた場合における、脱硫処理前および処理後のS濃度について調べた結果を示す。なお、この時、溶鋼温度は同じく1580℃であり、またAl濃度はAl≧0.1 wt%とした。
同図に示したとおり、Ca原単位を0.1 kg/t以上とした場合に、処理後のS濃度を10 ppm以下にすることができた。
【0012】
上述したとおり、Alで十分に脱酸を行った溶鋼に対して、Ca合金をCa原単位で0.1 〜0.5 kg/t添加することにより、極低炭極低硫鋼の安定した溶製が可能になったのである。
【0013】
【作用】
この発明において、RH処理におけるC濃度を0.01wt%以下の範囲に限定した理由は、RH処理後のC濃度が0.01wt%を超えていると、この発明で対象とする極低炭素鋼が得難いからである。
また、Al添加量は 0.1wt%以上とする必要がある。というのは、Al量が 0.1wt%に満たないと鋼中酸素を十分に低減することができず、その後に添加するCaがこの酸素と反応して、前掲図1に示したように、Caによる脱硫効率が低下するからである。
とはいえ、Al量が 3.0wt%を超えると、製品の打抜性が劣化するので、Al量の上限は 3.0wt%程度とするのが好ましい。
【0014】
さらに、Ca合金の供給量は、Ca原単位で 0.1〜0.5 kg/tの範囲に制限することが肝要である。
というのは、Ca原単位が 0.1kg/t未満では、前掲図2に示したように十分な脱硫効果が得られず、一方Ca原単位が 0.5kg/tを超えると耐火物の溶損が激しくなり、連鋳での鋳込みが困難になるからである。
また、Ca合金をワイヤーの形で供給することにより、スラグ攪拌が必要以上に行われないので、炭素の増加なしに効果的な脱硫処理が可能となる。
なお、Ca合金については、特に限定されることはないが、CaSiやCaAl等がとりわけ有利に適合する。勿論、金属Caの使用も可能である。
【0015】
また、この発明では、溶鋼温度を従来のように高くする必要はなく、1600℃以下(好ましくは1560℃以上)で十分である。
このように、1600℃以下で脱硫処理を行うことにより、耐火物の溶損が軽減され、ひいては鋼中不純物の増加を効果的に低減することができる。
【0016】
さらに、この発明では、Ca合金添加後、不活性ガス吹き込みによる溶鋼攪拌によってCaS等の硫化物の浮上分離を促進することができるが、その際の不活性ガス吹き込み量は 0.01 m3/t・min 以下とすることが好ましい。
というのは、吹き込み量が 0.01 m3/t・min を超えると、耐火物の溶損量が増大し、それに伴い耐火物から大量の不純物が鋼中に混入して、製品の磁気特性を劣化させるからである。
なお、不活性ガスとしては、Arが好適である。
【0017】
【実施例】
転炉より出鋼した取鍋内溶鋼に対し、RHによる真空脱炭処理により、鋼中C量を 30 ppm に調整した後、真空槽内にAlを含む合金元素を添加し、溶鋼組成を、Si:0.6 wt%、Al:0.7 wt%、Mn:0.55%wt%に調整した。
ついで、実施例1として、成分調整の終了した取鍋内溶鋼に、溶鋼温度:1585℃で、CaSiワイヤーをCa原単位で 0.3 kg/t 添加した。
また、実施例2として、実施例1の脱硫処理の際、溶鋼中に不活性ガスとしてArを 0.007 Nm3/t・min 吹き込むガス攪拌処理を行った。
なお、比較例1として、脱硫フラックス2kg/tとCaSi合金1kg/t(Ca原単位:0.3 kg/t)とをインジェクションした(溶鋼温度:1620℃)。
また、比較例2として、CaSiワイヤーを用いてCaを添加しつつ、 0.015 Nm3/t・min のガス流量で攪拌を行った。
【0018】
得られた各溶鋼から連続鋳造によって得た各スラブを、熱間圧延し、 950℃, 30秒の熱延板焼鈍後、冷延圧延により板厚:0.5 mmに仕上げ、ついで 800℃, 1分の仕上げ焼鈍後、 750℃, 2hの歪み取り焼鈍を施して製品とした。
かくして得られた各製品板の鉄損値を対比して、図3に示す。
同図から明らかなように、この発明に従い得られた溶鋼を用いた場合には、低鉄損の製品板を安定して得ることができた。
これに対し、比較例1のように、脱硫フラックスとCaSi合金とをインジェクションする場合には、RH処理後(脱硫前)の溶鋼温度を1600℃超とする必要があったため、炭素および鋼中不純物の増加が生じ、その結果鉄損値に大きなばらつきが生じた。
また、攪拌ガス流量を0.015Nm3/t・min に増加させた場合も、同様の理由で鉄損特性のばらつきが大きくなった。
【0019】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、脱硫フラックスを使用せず、また1600℃以下という比較的低温での脱硫処理が可能なので、従来のように溶鋼中C量の増加や取鍋耐火物の溶損に伴う溶鋼中不純物の増加を招くことなしに、効果的なCa脱硫処理を行うことができ、ひいては低鉄損の無方向性けい素鋼板を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Al濃度を種々に変化させた場合における、脱硫処理前および処理後のS濃度を示したグラフである。
【図2】 Ca原単位を種々に変化させた場合における、脱硫処理前および処理後のS濃度を示したグラフである。
【図3】実施例1、実施例2、比較例1および比較例2に従って無方向性けい素鋼板を製造した場合における、各製品板の鉄損値を対比して示したグラフである。
Claims (2)
- 転炉精錬後、RH処理によってC≦0.01wt%に脱炭した後、Alを 0.1wt%以上添加調整した溶鋼に対し、溶鋼温度:1600℃以下において、Ca合金ワイヤーを、Ca原単位:0.1 〜0.5 kg/tの範囲において添加することにより脱硫を行うことを特徴とする電磁特性に優れた無方向性けい素鋼用溶鋼の溶製方法。
- 請求項1において、Ca合金添加後、不活性ガスを 0.01 m3/t・min 以下の範囲で吹き込み、溶鋼を攪拌することを特徴とする電磁特性に優れた無方向性けい素鋼用溶鋼の溶製方法。
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