JP3680262B2 - 伸びフランジ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建設部材、機械構造用部材、自動車の構造部材等に用いられる伸びフランジ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
引張り強度が440MPaを超える高張力鋼板を下地とした溶融亜鉛めっき鋼板は、優れた防錆性と高い耐力とを兼ね備えているので、建設部材、機械構造用部材、自動車の構造部材等の原板として広く用いられている。
【0003】
この種の亜鉛めっき鋼板には、熱延鋼板を下地とするものと冷延鋼板を下地とするものとがある。このうち、熱延鋼板を下地とするものは、製造において冷間圧延工程が省略されるため、冷延鋼板を下地とするものよりもコスト面で優位になる。このため、熱延鋼板を下地とする亜鉛めっき鋼板に関する技術が従来から数多く開示されている。
【0004】
ところで、熱延鋼板を下地とする亜鉛めっき鋼板には優れた加工性が要求され、特に伸びフランジ性に優れていることが求められる。特開平5−105963号公報や特開平7−54051号公報には、このような伸びフランジ性に優れた亜鉛めっき鋼板の製造方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5−105963号公報や特開平7−54051号公報に開示された製造方法はいずれも、熱間圧延ラインにおいて、圧延機出側のランナウトテーブルで熱延鋼帯の冷却パターンを精密に制御し、巻取り温度を550℃以下の低温域に制御する特殊な操作を必要としている。このため、実操業の上で極めて大きな制約を受けるとともに、材質安定性や歩留まりの面で好ましいものではない。
【0006】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、特殊な操作を行なうことなく製造できる伸びフランジ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、熱延下地鋼板の成分組成、熱延条件および亜鉛めっき条件につき鋭意研究を積み重ねた結果、次に述べる知見を得るに至った。すなわち、熱延鋼板の組織が通常の熱延条件下で得られる「フェライト+パーライト」組織であっても、NbCによる析出強化を最大限に利用することによりC添加量を低減させてパーライトの体積率を低く抑え、かつ熱延後の焼鈍処理によりフェライト粒界にパーライトまたはセメンタイトを微細に分散析出させた組織とすることにより、高い引張り強度特性と優れた伸びフランジ性とをともに有する溶融亜鉛めっき鋼板を実現できるという知見を得た。
【0008】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものである。
【0009】
本発明によれば、高張力の熱延鋼板を下地とする溶融亜鉛めっき鋼板であって、質量%で、C:0.04〜0.1%、Si:0.7%以下、Mn:1.3〜2.3%、Al:0.05%以下、Nb:0.02〜0.05%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.007%以下を含有し、残部が実質的に鉄からなり、平均粒径20μm以下のフェライト粒からなるマトリックスのフェライト粒界に粒径5μm以下のパーライトまたはセメンタイトが分散された組織であることを特徴とする伸びフランジ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が提供される。
【0010】
この場合に、さらにV:0.02〜0.2質量%を含有することが好ましい。また、さらにTi:0.02〜0.1質量%を含有することが好ましい。さらに、溶融亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき皮膜は合金化されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、熱延鋼帯を巻き取って熱延コイルとする熱間圧延工程と、この熱延コイルを巻解して酸洗する酸洗工程と、連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、該酸洗された熱延鋼帯を亜鉛めっきするめっき工程とを備えた伸びフランジ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記熱間圧延工程では、600〜680℃の温度域で熱延鋼帯を巻き取り、前記めっき工程では、熱延鋼帯を亜鉛めっきする前に720〜850℃の温度域に均一に加熱保持した後に冷却することにより、質量%で、C:0.04〜0.1%、Si:0.7%以下、Mn:1.3〜2.3%、Al:0.05%以下、Nb:0.02〜0.05%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.007%以下を含有し、残部が実質的に鉄からなる鋼板を製造することを特徴としている。
【0012】
この場合に、さらにV:0.02〜0.2質量%を含有することが好ましい。また、さらにTi:0.02〜0.1質量%を含有してもよい。さらに、めっき工程では、亜鉛めっきした後にさらに合金化処理することが好ましい。
【0013】
以下、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板について説明する。
【0014】
まず、上記の各成分の働きおよび成分範囲の限定理由を述べる。なお、以下の各成分範囲における「%」は「質量%」を意味する。
【0015】
(1)C:0.04〜0.1%
Cは、適量のパーライトやセメンタイトおよび後述するNbの炭化物NbCを生成し、鋼板として必要な強度を確保する働きを有し、その含有量は0.04%以上必要であるが、0.1%を超えるとパーライトまたはセメンタイトの体積率が増加して伸びフランジ性が劣化するおそれがある。
【0016】
(2)Si:0.7%以下
Siは、鋼板の延性を向上させる働きを有する。しかし、0.7%を超えるSi含有量にすると、延性がより向上するものの、下地鋼板と亜鉛めっき皮膜との密着性が低下するおそれや溶融亜鉛めっき鋼板の表面の外観を損なうおそれがある。
【0017】
(3)Mn:1.3〜2.3%
Mnは、鋼板の強度を確保する働きを有する。Mnを含有させることによりC含有量の上限を低く抑えることができ、パーライトまたはセメンタイトの体積率増加の抑制に寄与する。Mnは、1.3%以上の含有量であることが必要であるが、2.3%を超える含有量にすると、上記のパーライトまたはセメンタイトが層状に分布しやすくなり、伸びフランジ性を低下させるおそれがある。
【0018】
(4)P:0.05%以下
Pは、0.05%を超える含有量にすると、溶接部の靭性を劣化させるおそれがあるため、0.05%以下に規定する。
【0019】
(5)S:0.01%以下
Sは、0.01%を超える含有量にすると、溶接部の靭性を劣化させるおそれがあるため、0,01%以下に規定する。
【0020】
(6)Al:0.05%以下、N:0.007%以下
AlおよびNは、通常の鋼が含有する量であれば問題はなく、それぞれ0.05%以下、0.007%以下であればよい。
【0021】
(7)Nb:0.02〜0.05%
Nbは、フェライト粒を微細に析出させる働きと、NbCとして析出して析出強化させる働きとを有する。これによりC含有量を高めることなく必要な強度を確保できるとともに、パーライトまたはセメンタイトの体積率の増加を抑制するのに寄与する。Nb含有量を0.02%未満にすると、フェライト粒を微細に析出させる働きが十分になされないおそれがある。また、NbCの析出量が減少し、析出強化が十分になされないおそれがある。一方、0.05%を超えるNb含有量にすると、フェライト粒の微細析出とNbCによる析出強化とによる効果が飽和するだけでなく、延性を劣化させるおそれがある。
【0022】
(8)V:0.02〜0.2%
V元素を含有させることにより、フェライト粒の析出を促進させ、フェライト粒界にパーライトまたはセメンタイトを微細分散させる働きを有することを本発明者らは見出した。上記の働きは特に後述する熱延鋼板の焼鈍処理における冷却中に顕著となり、この冷却時に固溶C元素をフェライト粒界にはきださせ、パーライトまたはセメンタイトとしてフェライト粒界への分散化を促進させる。
【0023】
V含有量を0.02%未満にすると、上記の働きが十分になされないおそれがある。一方、0.2%を超えるV含有量にすると、上記の働きが飽和する上に延性を劣化させるおそれがある。
【0024】
(9)Ti:0.02〜0.1%
Tiは、硫化物の形態制御あるいは析出強化を補助する働きを有する。このため、Ti元素を含有させることによりNb元素の働きによるフェライトの微細析出および析出強化作用を高めることができる。Ti含有量を0.02%未満にすると上記の働きが不十分となり、0.1%を超えるTi含有量にすると上記の働きによる効果が飽和してそれ以上奏効しない可能性がある。
【0025】
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の下地熱延鋼板は、上述の特定範囲の各成分を含有し、平均粒径20μm以下のフェライト粒からなるマトリックスのフェライト粒界に粒径5μm以下のパーライトまたはセメンタイトが分散された組織である。
【0026】
マトリックスのフェライト粒の平均粒径を20μm以下に規定した理由は、平均粒径20μmを超えるフェライト粒からなるマトリックスにすると、伸びフランジ性が劣化するためである。
【0027】
平均粒径20μm以下のフェライト粒からなるマトリックスにおいて、フェライト粒界に粒径5μm以下のパーライトまたはセメンタイトが分散された組織とする理由は、次に説明する図1の特性図から理解される。
【0028】
図1は、横軸にパーライトまたはセメンタイトの粒径(μm)をとり、縦軸に穴拡がり率(%)をとって、平均粒径20μm以下のフェライト粒からなるマトリックスにおけるパーライトまたはセメンタイトの粒径が溶融亜鉛めっき鋼板の伸びフランジ性に及ぼす影響について調べた結果を示す特性図である。ここで、「穴拡がり率」とは伸びフランジ性の指標となるものであり、次に説明する試験により求められる。
【0029】
まず、製造された溶融亜鉛めっき鋼板あるいは合金化溶融亜鉛めっき鋼板から採取した試験片に、公称孔径10mm・クリアランス12%の孔を打ち抜く。次に、打ち抜き孔のバリが突出する側を上面として水平に試験片を固定し、頂角60度の円錐状先端部を有するポンチを用いて、ポンチの先端部を試験片の下面側から徐々に垂直上方に押し上げて打ち抜き孔を拡開させる。ここで、孔の端面から進展したクラックが試験片板厚を貫通した時点での孔径d(mm)を測定する。穴拡がり率は、初期孔径値10mmからの孔径増加率{(d−10)/d}×100(%)として求められる。
【0030】
図1において、試料は、表1に示す鋼種A〜J、鋼種a〜dの各組成に調整された鋼片を用い、それぞれ表2に示す熱延条件および溶融亜鉛めっき条件で製造されたものである。
【0031】
図1中の白丸は表1の鋼種A、B、E、G、J、Vに該当するV無添加鋼を用いたときの結果を示し、黒丸は表1の鋼種C、D、F、H、Iに該当するV添加鋼を用いたときの結果を示し、黒三角は表1の鋼種a〜dを用いたときの結果を示す。また、図1の中で符号Aを付した黒丸および符号Iを付した白丸は、セメンタイトがフェライト粒内に析出した組織であるのに対して、それ以外の白丸、黒丸および黒三角はセメンタイトまたはパーライトがフェライト粒界に分散析出した組織である。
【0032】
図1において、まず、黒三角で示す鋼種に着目すると、パーライトまたはセメンタイトの粒径値にかかわらず60%以下の低い穴拡がり率となり、特定範囲を逸脱した組成の鋼種では伸びフランジ性が劣化することが判明した。次に、符号が付されていない白丸で示す鋼種に着目すると、パーライトまたはセメンタイトの粒径が5μmを超える領域では穴拡がり率が70%を下回り、伸びフランジ性に劣るのに対して、パーライトまたはセメンタイトの粒径が5μm以下の領域では穴拡がり率が100%以上となり優れた伸びフランジ性を示すことが判明した。また、符号が付されていない黒丸で示す鋼種に着目すると、いずれもパーライトまたはセメンタイトの粒径が5μm以下の領域に分布し、80%以上の高い穴拡がり率となり、優れた伸びフランジ性を示すことが判明した。一方、セメンタイトがフェライト粒内に析出した鋼種Aおよび鋼種Iは、セメンタイトの粒径が5μm以下であるものの、60%以下の低い穴拡がり率となり、伸びフランジ性に劣ることが判明した。
【0033】
以上説明したように、特定範囲内の組成であって、マトリックスが平均粒径20μm以下のフェライト粒からなり、かつフェライト粒界に粒径5μm以下のパーライトまたはセメンタイトが分散析出された組織である熱延鋼板を下地とする溶融亜鉛めっき鋼板は、高い引張り強度を有するとともに優れた伸びフランジ性を有している。
【0034】
次に、本発明に係る伸びフランジ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
【0035】
本発明に係る製造方法は、まず、基本成分であるC、Si、Mn、Nbの各成分を上記の(1)〜(3)、(7)に示す各成分範囲内で含有し、かつAl、N、P、Sの各成分を上記の(4)〜(6)に示す各上限値以下とし、残部が実質的に鉄からなるように成分調整した鋳片を調製する。この鋳片の調製工程において、上記のC、Si、Mn、Nbの各基本成分に加え、さらに、上記の(8)および(9)に挙げたV、Tiのうち1種または2種を含有させることが好ましい。
【0036】
調整した鋳片を、熱間圧延ラインにおいて、所要板厚に熱間圧延して熱延鋼帯とし、ついで巻取り機で巻取り温度を600〜680℃の範囲に制御して巻取り、熱延コイルを得る。
【0037】
次に、巻取り温度を600〜680℃の温度域とする理由を説明する。
【0038】
巻取り温度を上記の特定温度域に制御するのは、NbCの析出を促進させて強度確保のために添加すべきC量を低減させ、パーライトまたはセメンタイトの体積率を低減化するためである。このようなNbCの析出が促進することにより、高い引張り強度特性が得られるとともに伸びフランジ性を向上させることができる。この巻取り温度を600℃未満にすると、NbCの析出を促進させることが不十分になり、NbCによる析出強化作用が低下するおそれがある。また、これに伴って強度確保のために添加すべきC量が増加しやすくなり、パーライトまたはセメンタイトの体積率が増加するおそれがある。他方、680℃を超える巻取り温度にすると、NbCの析出を促進できるものの、析出したNbCが粗大化しやすくなり、NbCによる析出強化作用が低下するおそれがある。
【0039】
本発明において、上記の巻取り温度以外には熱間圧延条件を特に規定していないが、仕上げ熱延をAr変態点を下回る温度域で行なったり、熱延終了後の鋼板を冷却速度10℃/秒以下の緩冷却操作を行なうなど、粒径が著しく粗大化する操作を行なわない限り、特に問題は生じない。また、上記の巻取り温度を特定した温度域に制御する限り、熱延終了時点から1秒以内に冷却速度100〜300℃/秒で急速冷却させる操作や、この操作にさらに仕上げ熱延時の圧下を大きくする操作を組み合わせるなど、粒径を小さくするための細粒化操作を行なうようにしてもよい。
【0040】
次に、熱間圧延ラインで得られた熱延コイルを巻解して酸洗する。
【0041】
次いで、連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、酸洗後の熱延鋼帯を720〜850℃の温度域に均一に加熱保持した後に冷却する焼鈍処理を行ない、つづいて亜鉛めっきを施す。この工程では、さらに、亜鉛めっき皮膜を合金化させる熱処理を行なってもよい。
【0042】
亜鉛めっきする前に上記の焼鈍処理を行なうことにより、熱延工程で生成した粗大なパーライトを基地中に再固溶させた後に微細なパーライトまたはセメンタイトとしてフェライト粒界に分散析出させることができる。これにより平均粒径20μm以下のフェライト粒からなるマトリックスのフェライト粒界に粒径5μm以下のパーライトまたはセメンタイトが分散された組織とすることができる。ここで、焼鈍処理時の加熱温度を720℃未満の温度域とすると、粗大なパーライトの基地中への再固溶が不十分となり所望の伸びフランジ性(例えば、穴拡がり率で80%以上)が得られなくなる。一方、焼鈍処理時の加熱温度を850℃を超える温度域とすると、再析出するパーライトが粗大化しやすくなり、所望の伸びフランジ性が得られなくなる。なお、上記の焼鈍処理において、冷却時の冷却速度に大きな制約はない。しかし、例えば1℃/秒を下回るような極端に遅い冷却速度にすると、パーライトまたはセメンタイトのフェライト粒界への微細分散化が不十分となるおそれがあるので好ましくない。また、本発明の製造方法においては、鋼板の組織がフェライトマトリックスにパーライトまたはセメンタイトが微細分散したものであるので、熱間圧延時の加熱温度から600℃近傍に冷却した後の熱履歴が組織に及ぼす影響はほとんどない。このため、焼鈍後の熱延鋼板を浸漬させる溶融亜鉛めっき浴の温度条件、亜鉛めっき後の冷却条件などは下地鋼板の組織にほとんど影響を及ぼさない。このことは、亜鉛めっき後に合金化処理を行なう場合であっても同様である。
【0043】
なお、本発明において、鋼片の調製の際には造塊または連続鋳造法のいずれであってもよい。また、熱間圧延工程では、ライン中に粗熱延バーを組み合わせた熱間圧延ラインにより連続熱延してもよく、インダクションヒーターを利用して200℃以内の温度域に昇温操作しても差し支えない。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0045】
(実施例)
まず、表1に示す鋼種A〜J、鋼種a〜dの鋼をそれぞれ転炉で出鋼し、連続鋳造によりそれぞれスラブとした。ここで、鋼種A〜Jの組成はいずれの成分も前述の特定した範囲内である。一方、鋼種a〜dの組成は少なくとも一種の成分が特定した含有量範囲を逸脱している。詳しくは、鋼種a、bの組成はともにC含有量が下限値未満であり、鋼種cの組成はMn含有量が上限値を超え、鋼種dの組成はMn含有量が上限値を超えるとともにNbが非含有となっている。
【0046】
【表1】
Figure 0003680262
【0047】
次に、上記の各スラブを用い、熱間圧延ラインにおいて熱延コイルを作製した。熱延条件としては、表2に示すように、スラブの熱間圧延時の加熱温度を固定し、熱間圧延により得られた熱延鋼帯(板厚2.3mm)の巻取り温度を種々変更した。次いで、作製した熱延コイルを巻解して酸洗した後、連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、表2に示すめっき前の焼鈍時の加熱温度を種々変更して溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。さらに、合金化温度域に加熱して亜鉛めっき皮膜を合金化させる熱処理を行ない、合金化溶融亜鉛めっき鋼板をも製造した。
【0048】
製造した溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板について下地組織の観察を行なった結果、いずれもフェライトをマトリックスとし、パーライトまたはセメンタイトが析出した組織であった。この組織観察において、フェライト平均粒径、パーライトまたはセメンタイトの粒径、パーライトまたはセメンタイトの分布形態を調べた。
【0049】
また、製造した溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板について引張強度TS(MPa)を調べ、さらに前述した図1で説明したのと同様な試験を行ない、穴拡がり率(%)を調べた。
【0050】
以上調べた結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
Figure 0003680262
【0052】
表2に示すように、巻取り温度を500℃と特定範囲を逸脱して製造された例1(鋼種A)の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、下地熱延鋼板の組織において、フェライト平均粒径とパーライトまたはセメンタイトの粒径とが特定範囲内にあるものの、セメンタイトがフェライト粒内に析出した分布形態となっており、穴拡がり率が50%となり低い伸びフランジ性を有することが判明した。また、巻取り温度500℃、焼鈍時の加熱温度を600℃と特定範囲を逸脱して製造された例15(鋼種I)の合金化溶融亜鉛めっき鋼板も、上述した例1(鋼種A)で説明したのと同様にセメンタイトがフェライト粒内に析出した分布形態となっており、穴拡がり率が60%となり低い伸びフランジ性を有することが判明した。さらに、焼鈍時の加熱温度が特定範囲を逸脱して製造された例4(鋼種D)、例5(鋼種D)、例10(鋼種D)および例12(鋼種F)の各合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、パーライトまたはセメンタイトがフェライト粒界に分散した分布形態であるものの、いずれもパーライトまたはセメンタイトの粒径が5μm超であり、穴拡がり率が40〜65%となり低い伸びフランジ性を有することが判明した。さらに、特定した成分範囲を満たさない組成のスラブを用いて製造された例17〜20(鋼種a、b、c、d)の各合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、いずれもパーライトまたはセメンタイトがフェライト粒界に分散した分布形態であるものの、穴拡がり率が25〜40%となり非常に低い伸びフランジ性を有することが判明した。特に、例18(鋼種b)の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、パーライトまたはセメンタイトの粒径が規定を超える6μmであり、穴拡がり率が25%となり極めて低い伸びフランジ性を示すことが判明した。
【0053】
これらの例1(鋼種A)、例4(鋼種D)、例5(鋼種D)、例10(鋼種D)、例12(鋼種F)、例15(鋼種I)および例17〜20(鋼種a〜d)に対して、例2(鋼種B)、例3(鋼種C)、例6〜9(鋼種D)、例11(鋼種E)、例13(鋼種G)、例14(鋼種H)および例16(鋼種J)の溶融亜鉛めっき鋼板あるいは合金化溶融亜鉛めっき鋼板においては、いずれもフェライト粒界にパーライトまたはセメンタイトが分散した分布形態であって、パーライトまたはセメンタイトの粒径が5μm以下であり、高い引張り強度を有するとともに穴拡がり率が80%以上の高い伸びフランジ性をも有することが判明した。特に、V元素を含有する鋳片を用いて製造された例3(鋼種C)、例6〜9(鋼種D)、例14(鋼種H)では、穴拡がり率が100%以上となり極めて優れた伸びフランジ性を有することが判明した。
【0054】
図2は、上記の例2の溶融亜鉛めっき鋼板の下地組織を示すSEM(走査電子顕微鏡)写真である。なお、図2の写真の下にはスケールを付記している。
【0055】
図2において、細く薄い灰色を呈する線は粒界を示し、この線で囲まれた黒色領域はフェライト粒を示している。また、白色を強く呈するパーライトまたはセメンタイトが粒界に沿って所々介在している。この図から、フェライト粒は平均粒径が20μm以下となっていることがわかる。また、パーライトまたはセメンタイトは、粒径が約3μmとなっており、フェライト粒界に分散した分布形態となっていることがわかる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、熱延ラインにおいてランナウトテーブルでの冷却パターンの精密な制御や熱延鋼板を低温域で巻取るような特殊な操作を必要とすることなく、高張力熱延鋼板を下地とする伸びフランジ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を提供することができる。このため、製造コストが大幅に低減されるとともに高品質の亜鉛めっき鋼板を提供できるので、本発明が持つ工業的な価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】平均粒径20μm以下のフェライト粒からなるマトリックスにおけるパーライトまたはセメンタイトの粒径が溶融亜鉛めっき鋼板の伸びフランジ性に及ぼす影響について調べた結果を示す特性図。
【図2】例2の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の下地組織を示すSEM写真。

Claims (8)

  1. 高張力熱延鋼板を下地とする溶融亜鉛めっき鋼板であって、質量%で、C:0.04〜0.1%、Si:0.7%以下、Mn:1.3〜2.3%、Al:0.05%以下、Nb:0.02〜0.05%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.007%以下を含有し、残部が実質的に鉄からなり、
    マトリックスが平均粒径20μm以下のフェライト粒からなり、フェライト粒界に粒径5μm以下のパーライトまたはセメンタイトが分散された組織であることを特徴とする伸びフランジ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. さらに、質量%で、V:0.02〜0.2%を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. さらに、質量%で、Ti:0.02〜0.1%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. さらに、亜鉛めっき皮膜が合金化されていることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 熱延鋼帯を巻き取って熱延コイルとする熱間圧延工程と、この熱延コイルを巻解して酸洗する酸洗工程と、連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、該酸洗された熱延鋼帯を亜鉛めっきするめっき工程とを備えた伸びフランジ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、
    前記熱間圧延工程では、600〜680℃の温度域で熱延鋼帯を巻き取り、前記めっき工程では、熱延鋼帯を亜鉛めっきする前に720〜850℃の温度域に均一に加熱保持した後に冷却することにより、質量%で、C:0.04〜0.1%、Si:0.7%以下、Mn:1.3〜2.3%、Al:0.05%以下、Nb:0.02〜0.05%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.007%以下を含有し、残部が実質的に鉄からなる鋼板を製造することを特徴とする伸びフランジ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  6. さらに、V:0.02〜0.2質量%を含有することを特徴とする請求項5に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  7. さらに、Ti:0.02〜0.1質量%を含有することを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 前記めっき工程では、亜鉛めっきした後にさらに合金化処理することを特徴とする請求項5ないし7のうちいずれか1項に記載の方法。
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