JP3678633B2 - 油圧閉回路を備えた射出成形機用型締装置 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、油圧ポンプを回路上に有しない油圧閉回路装置における作動油の充填技術に関するものであり、特に、油圧閉回路装置への作動油の注入充填と、油圧閉回路に混入したエアの排出を、容易に且つ速やかに行うことの出来る、新規な方法および装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
油圧ポンプを回路上に有しない油圧閉回路装置は、一般に、外部から及ぼされる駆動力によって駆動せしめられる駆動側油圧シリンダ機構と、該駆動側油圧シリンダ機構に対して油圧管路を通じて接続されて、該駆動側油圧シリンダ機構で生ぜしめられた油圧が及ぼされて作動せしめられる作動側油圧シリンダ機構を含んで構成されており、かかる油圧閉回路装置は、パスカルの原理に基づく力の増幅が容易であって、動力伝達性に優れ、応答性も速いことなどから、従来から、油圧ジャッキ機構などに採用されており、射出成形機の型締装置における型締増圧機構等への適用も考えられている。
【0003】
ところで、このような油圧閉回路装置において目的とする作動や力を発現させるためには、動力伝達媒体(作動油)の実質的な非圧縮性が前提であり、圧縮性流体である空気の油圧回路内への混入を防止することが重要となる。
【0004】
ところが、油圧閉回路装置では、油圧ポンプを回路上に有していないことから、初期の立上げ段階で油圧回路内の空気を完全に排出して作動油を注入充填することが非常に難しいという問題があったのであり、特に、複雑な形状の油圧シリンダ室や、配管構造を持つ場合には、油圧回路内に作動油を充填するために長い時間をかけた面倒な作業が避けられなかった。
【0005】
また、たとえ油圧回路内に作動油を充填し得たとしても、装置の作動中にシール部分から油圧回路に空気が侵入するおそれがあり、一度、空気が混入すると、その排出が非常に困難であるという問題もあった。
【0006】
さらに、油圧回路内への空気の混入は、必ずしも容易に検出することが出来ないことから、空気の混入を見過ごして油圧閉回路装置を稼働させることによって、かかる装置の作動精度が大幅に低下してしまい、例えば、射出成形用型締装置などの製造装置においては、製造される製品の寸法精度や品質に悪影響が及ぼされて、目的とする製品を安定して製造することが出来なくなるおそれもあったのである。
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、油圧閉回路装置における油圧回路へのエアの混入を容易に且つ速やかに回避し、或いは解消することの出来る、新規な技術を提供することにある。
【0008】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0009】
すなわち、本発明が基礎とする油圧閉回路装置における作動油充填方法の特徴とするところは、外部から及ぼされる駆動力によって駆動せしめられる駆動側油圧シリンダ機構と、該駆動側油圧シリンダ機構に対して油圧管路を通じて接続されて、該駆動側油圧シリンダ機構で生ぜしめられた油圧が及ぼされて作動せしめられる作動側油圧シリンダ機構を含んで構成された油圧閉回路装置において、各油圧シリンダ機構に作動油を注入充填するに際して、(a)前記駆動側油圧シリンダ機構においてピストンを前進位置から減圧側に後退作動せしめると共に、前記油圧管路を切換設定して、該駆動側油圧シリンダ機構を前記作動側油圧シリンダ機構から遮断すると共に、該駆動側油圧シリンダ機構を別途準備した補助油タンクに接続せしめることにより、該補助油タンクから該駆動側油圧シリンダ機構に作動油を吸引させる油吸引工程と、(b)該油吸引工程の後、前記油圧管路を切り換えて、前記駆動側油圧シリンダ機構から前記補助油タンクを遮断すると共に、該駆動側油圧シリンダ機構に前記作動側油圧シリンダ機構を接続する油タンク遮断工程と、(c)該油タンク遮断工程の後、前記駆動側油圧シリンダ機構のピストンを増圧側に前進作動せしめることにより、該駆動側油圧シリンダ機構から前記作動側油圧シリンダ機構に作動油を圧送して供給すると共に、該作動側油圧シリンダ機構における残留エアを排出させる油充填工程とを、複数サイクル繰り返して行うようにした油圧閉回路装置における作動油充填方法にある。
【0010】
このような作動油充填方法に従えば、駆動側油圧シリンダ機構のピストンを往復作動させて、駆動側油圧シリンダ機構への作動油の吸引と作動側油圧シリンダ機構への作動油の供給を行うことにより、油圧閉回路装置を構成する駆動側油圧シリンダ機構があたかも作動油の吸引ポンプのように作用して、作動側油圧シリンダ機構を含む油圧閉回路に対して、補助油タンクから作動油が注入、充填されることとなる。
【0011】
それ故、このような作動油充填方法によれば、作動油注入用の特別な油圧ポンプ等の装置を必要とすることなく、簡単な設備で油圧閉回路に作動油を注入することが出来ると共に、重力を利用した自然注入等に比して、作動油を油圧閉回路に強制的に注入することが可能であり、油圧閉回路への空気の残留の防止と、速やかな注入充填作業が実現され得る。
【0012】
なお、上述の作動油充填方法、および後述のエア抜き方法およびエア抜き可能な油圧閉回路装置、更に本発明に係るエア抜き可能な油圧閉回路を備えた射出成形機用型締装置において、駆動側油圧シリンダ機構と作動側油圧シリンダ機構は、何れも、単一でも複数でも良く、状況等に応じて、駆動側油圧シリンダ機構を作動側油圧シリンダ機構として使用すると共に、作動側油圧シリンダ機構を駆動側油圧シリンダ機構として使用することも可能である。また、駆動側油圧シリンダ機構に対して外部から及ぼされる駆動力は、ねじ送り機構を備えた回転モータや、リニアモータ、ソレノイド等による他、人力を利用したものであっても良い。更にまた、油充填工程において、作動側油圧シリンダ機構における残留エアを排出させるには、例えば、油圧閉回路の最も高い位置に圧抜孔を設けて、作動油の充填後に該注入孔を開閉弁等で閉鎖せしめるようにすることなどによって実現可能であるが、作動油の排出を出来るだけ抑えて空気だけを排出させることが望ましく、例えば、低圧でエアの排出を許容すると共に、圧力上昇した際に排出ポートを閉じて作動油の排出を阻止せしめるような、公知のエアブリード弁などを、かかる圧抜孔に設置することが有効である。更に、補助油タンクは、油圧閉回路への作動油の注入充填時にのみ必須であって、作動油の注入充填後には、必ずしも必要でない。
【0013】
さらに、本発明の基礎となる油圧閉回路装置におけるエア抜き方法の特徴とするところは、外部から及ぼされる駆動力によって駆動せしめられる駆動側油圧シリンダ機構と、該駆動側油圧シリンダ機構に対して油圧管路を通じて接続されて、該駆動側油圧シリンダ機構で生ぜしめられた油圧が及ぼされて作動せしめられる作動側油圧シリンダ機構とを、含んで構成された油圧閉回路装置において、何れかの前記油圧シリンダ機構に混入したエアを排出せしめるエア抜き方法であって、(d)前記駆動側油圧シリンダ機構に前記作動側油圧シリンダ機構が接続されると共に、該駆動側油圧シリンダ機構に対して別途準備した補助油タンクが遮断されるように、前記油圧管路を設定する油タンク遮断工程と、(e)該油タンク遮断工程の後、前記駆動側油圧シリンダ機構のピストンを増圧側に前進作動せしめて、該駆動側油圧シリンダ機構から前記作動側油圧シリンダ機構に作動油を圧送して供給すると共に、該作動側油圧シリンダ機構における残留エアを排出させるエア排出工程と、(f)該エア排出工程の後、前記駆動側油圧シリンダ機構を圧抜作動せしめると共に、前記油圧管路を切換設定して、前記駆動側油圧シリンダ機構を前記作動側油圧シリンダ機構から遮断すると共に、該駆動側油圧シリンダ機構を前記補助油タンクに接続せしめる油タンク接続工程と、(g)該油タンク接続工程の後、前記駆動側油圧シリンダ機構のピストンを減圧側に後退作動せしめることにより、前記補助油タンクから該駆動側油圧シリンダ機構に作動油を吸引させる油吸引工程とを、少なくとも一サイクル行う油圧閉回路装置におけるエア抜き方法にある。
【0014】
このようなエア抜き方法に従えば、駆動側油圧シリンダ機構のピストンを往復作動させて、駆動側油圧シリンダ機構から作動側油圧シリンダ機構に作動油を圧送することにより、油圧閉回路装置を構成する駆動側油圧シリンダ機構があたかも油圧ポンプのように作用して、油圧閉回路にエアが残留乃至は侵入等した場合でも、作動側油圧シリンダ機構から強制的に且つ速やかに排出されることとなる。
【0015】
それ故、このようなエア抜き方法によれば、作動油注入用の特別な油圧ポンプ等の装置を必要とすることなく、簡単な設備で、速やかに、油圧閉回路に残留乃至は侵入した空気を排出することが出来るのである。
【0016】
また、本発明の基礎となるエア抜き可能な油圧閉回路装置の特徴とするところは、外部から及ぼされる駆動力によって駆動せしめられる駆動側油圧シリンダ機構と、該駆動側油圧シリンダ機構に対して油圧管路を通じて接続されて、該駆動側油圧シリンダ機構で生ぜしめられた油圧が及ぼされて作動せしめられる作動側油圧シリンダ機構を含んで構成された油圧閉回路装置において、(h)前記駆動側油圧シリンダ機構に接続される補助油タンクと、(i)該補助油タンクと前記駆動側油圧シリンダ機構を接続する給油管路上に配された第一の開閉弁と、(j)前記駆動側油圧シリンダ機構と前記作動側油圧シリンダ機構を接続する前記油圧管路上に配された第二の開閉弁と、(k)前記作動側油圧シリンダ機構に接続されたエア抜き手段と、(l)前記駆動側油圧シリンダ機構におけるピストンの増圧側への前進作動に際して、前記第一の開閉弁を閉じると共に、前記第二の開閉弁を開いて、該駆動側油圧シリンダ機構から前記作動側油圧シリンダ機構に作動油を圧送する一方、かかる駆動側油圧シリンダ機構におけるピストンの減圧側への後退作動に際して、前記第二の開閉弁を閉じると共に、前記第一の開閉弁を開いて、該駆動側油圧シリンダ機構における前記補助油タンクからの作動油の吸引を許容する制御装置とを、設けたエア抜き可能な油圧閉回路装置にある。
【0017】
このような構造とされた油圧閉回路装置においては、第一の開閉弁を開いて第二の開閉弁を閉じた状態下で駆動側油圧シリンダ機構を作動させることにより、作動油を補助油タンクから油圧閉回路に強制的に吸引することが出来ると共に、第一の開閉弁を閉じて第二の開閉弁を開いた状態下で駆動側油圧シリンダ機構を作動させることにより、油圧閉回路内において、駆動側油圧シリンダ機構から作動側油圧シリンダ機構に作動油を圧送して、油圧閉回路内に混入したエアを作動側油圧シリンダ機構から強制的に排出することが出来る。
【0018】
従って、このような油圧閉回路装置を採用することにより、装置の立上げ時に作動油を油圧閉回路に対して強制的に注入、充填することが出来ると共に、装置の立上げ後においても、必要に応じて、油圧閉回路に侵入したエアを強制的に排出すると共に、不足分の作動油を速やかに補給することが出来るのである。そして、また、このような油圧閉回路装置を採用すれば、前述の如き、作動油充填方法やエア抜き方法が、何れも、有利に実現可能とされ得る。
【0019】
なお、かかる油圧閉回路装置において、補助油タンクは、平常的な作動状態下で不要であることから、油圧閉回路から補助油タンクを取り外し可能なアタッチメント構造で接続しても良い。また、第一及び第二の開閉弁は、油圧管路を連通/遮断切換し得るものであれば良く、特に、電気的制御が容易で、切換作動を速やかに行うことが出来る電磁式の切換弁や開閉弁等が好適に採用される。更にまた、制御装置は、例えば、アナログ式のロジック回路の他、コンピュータ等を利用してソフトウエア的に実現することも可能である。
【0020】
また、前述の如き課題を解決するために為された、エア抜き可能な油圧閉回路を備えた射出成形機用型締装置に係る本発明の特徴とするところは、固定盤と受圧盤を互いに離隔して固定的に対向配置すると共に、それら固定盤と受圧盤の対向面間に可動盤を配して、該可動盤と該受圧盤の何れか一方の側に支持されたボールねじ軸と他方の側に支持されたボールねじナットを電動モータで相対回転させてねじ送り作用により該可動盤を前記固定盤に対して型開閉作動せしめるようにする一方、前記受圧盤側に、それらボールねじ軸とボールねじナットのねじ送り作用によって作動せしめられる増圧シリンダ機構と、該増圧シリンダ機構で生ぜしめられた油圧が及ぼされる型締シリンダ機構を、それぞれ設けると共に、該増圧シリンダ機構において増圧ピストンを移動不能に係止する解除可能なロック手段と、該型締シリンダ機構において型締ピストンを前記可動盤に対して係止する解除可能な係止手段を、それぞれ設けて、前記固定盤と前記可動盤の型閉状態下で前記ボールねじ軸と前記ボールねじナットのねじ送り作用で前記増圧シリンダ機構を作動せしめることにより、前記型締シリンダ機構に生ぜしめられる型締力を固定盤と可動盤の間に及ぼすようにした油圧閉回路を備えた射出成形機用型締装置において、(m)前記増圧シリンダ機構に接続される補助油タンクと、(n)該補助油タンクと前記増圧シリンダ機構を接続する給油管路上に配された第一の開閉弁と、(o)前記増圧シリンダ機構を前記型締シリンダ機構に接続する油圧管路上に配された第二の開閉弁と、(p)前記型締シリンダ機構に接続されたエア抜き手段と、(q)前記増圧シリンダ機構における増圧ピストンの増圧側への前進作動に際して、前記第一の開閉弁を閉じると共に、前記第二の開閉弁を開いて、該増圧シリンダ機構から前記型締シリンダ機構に作動油を圧送する一方、かかる増圧シリンダ機構における増圧ピストンの減圧側への後退作動に際して、前記第二の開閉弁を閉じると共に、前記第一の開閉弁を開いて、該増圧シリンダ機構における前記補助油タンクからの作動油の吸引を許容する制御装置とを、設けたエア抜き可能な油圧閉回路を備えた射出成形機用型締装置を、特徴とする。
【0021】
このような本発明に従う構造とされた射出成形機用型締装置においては、増圧シリンダ機構および型締シリンダ機構と、それら両シリンダ機構を相互に接続する油圧管路によって油圧閉回路が構成されており、そこにおいて、第一の開閉弁を開いて第二の開閉弁を閉じた状態下で増圧シリンダ機構を作動させることによって、作動油を補助油タンクから油圧閉回路に強制的に吸引することが出来ると共に、第一の開閉弁を閉じて第二の開閉弁を開いた状態下で増圧シリンダ機構を作動させることにより、油圧閉回路内において、増圧シリンダ機構から型締シリンダ機構に作動油を圧送して、油圧閉回路内に混入したエアを型締シリンダ機構から強制的に排出することが出来る。
【0022】
従って、このような射出成形機用型締装置においては、型締装置の立上げ時に作動油を油圧閉回路に対して強制的に注入、充填することが出来ると共に、型締装置の立上げ後の射出成形時においても、必要に応じて、油圧閉回路に侵入したエアを強制的に排出すると共に、不足分の作動油を速やかに補給することが出来る。それ故、かかる型締装置においては、目的とする型締作動を安定して行うことが可能となり、安定した射出成形作動が実現されて、目的とする射出成形品を安定した品質と寸法精度で連続成形することも可能となるのである。
【0023】
また、上述の如き、エア抜き可能な油圧閉回路装置、およびエア抜き可能な油圧閉回路を備えた射出成形機用型締装置に係る本発明においては、何れも、前記駆動側油圧シリンダ機構または前記型締シリンダ機構と前記エア抜き手段を接続するエア抜き管路上に、該エア抜き管路を遮断する第三の開閉弁を設けた構成が、好適に採用される。即ち、油圧閉回路による平常的な作動状態下であって、油圧閉回路へのエアの侵入が殆どないような状況では、エア抜き手段や補助油タンク等は特に必要でないことから、エア抜き手段も油圧閉回路から切り離すことが可能であり、それによって、エア抜き手段を通じての作動油の漏れやエア侵入等の不具合を防止することが可能となる。
【0024】
さらに、前述の如き作動油充填方法およびエア抜き方法においては、油吸引工程乃至は油タンク接続工程における補助油タンク接続のための油圧管路の切換設定を、例えば、駆動側油圧シリンダ機構におけるピストンの位置信号や駆動制御信号等に基づいて行なうことが望ましく、その他、駆動側油圧シリンダ機構に接続された作動側油圧シリンダ機構の圧力の検出信号等に基づいて行なうことも可能である。
【0025】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0026】
先ず、図1には、本発明の一実施形態としての射出成形機用型締装置のモデル的な概略説明図が示されている。かかる型締装置10は、水平方向で相互に離隔して対向配置された固定盤12と受圧盤14を備えていると共に、それら固定盤12と受圧盤14の対向面間に可動盤16が配設されている。また、固定盤12と可動盤16には、それぞれの対向面上に固定金型18と可動金型20が固定されており、可動盤16が固定盤12に対して対向方向で接近/離隔駆動されることにより、固定金型18と可動金型20が型開閉されるようになっている。そして、良く知られているように、両金型18,20の型締状態下で、型合わせ面間に形成された成形キャビティに対して、図示しない射出装置から溶融樹脂が射出充填されて、冷却,固化せしめられた後、両金型18,20が型開きされて成形品が離型されて取り出されるようになっており、そのような成形サイクルを繰り返すことによって、目的とする製品が連続射出成形されるようになっている。なお、図面上に明示はされていないが、固定盤12と受圧盤14は、図示しないベースによって固定的に支持されており、それらの対向面間に跨がって掛け渡された複数本のタイバーによって、可動盤16が移動方向に案内されるようになっている。
【0027】
そこにおいて、型締装置10には、受圧盤14に対して、ねじ送り機構22が設けられており、このねじ送り機構22により、可動盤16に対して、型開閉用の駆動力が及ぼされるようになっている。更に、かかる型締装置10には、駆動側油圧シリンダ機構としての増圧シリンダ機構24と、作動側油圧シリンダ機構としての型締シリンダ機構26が設けられており、これらの増圧シリンダ機構24と型締シリンダ機構26により、可動盤16に対して、型締用の駆動力が及ぼされるようになっている。そして、本実施形態では、これら増圧シリンダ機構24および型締シリンダ機構26と、それら両者24,26を接続する油圧管路としての接続管路28によって、油圧閉回路が構成されている。
【0028】
より詳細には、増圧シリンダ機構24においては、受圧盤14に固設された増圧シリンダ30に対して、増圧ピストン32が、可動盤16の移動方向となる水平方向(図中の左右方向)で滑動可能に、且つ中心軸回りで回転不能に組み込まれている。そして、この増圧ピストン32の外周面と増圧シリンダ30の内周面の径方向対向面間に、円筒形状の増圧シリンダ室34が形成されており、増圧ピストン32の前進方向(図中、左方向)への移動に伴い、増圧シリンダ室34の容積が小さくなるようにされている。また、増圧ピストン32は、中心軸上を軸方向に貫通したねじ穴36を有するボールねじナットとされており、このねじ穴36に対して、ボールねじ軸38が螺合されている。かかるボールねじ軸38は、可動盤12に固設されたサーボモータ40の出力軸に固定されており、可動盤12に対して軸方向に移動不能に支持されていると共に、サーボモータ40によって中心軸回りに正逆回転駆動されるようになっている。
【0029】
また、増圧シリンダ30には、ロック手段としてのロック装置42が固設されている。このロック装置42は、ソレノイドやシリンダ機構等の公知の駆動手段によって突出/引込作動せしめられるロックピン44を備えており、このロックピン44が突出作動されることにより、増圧ピストン32に形成された係止穴に係合されて、増圧ピストン32が増圧シリンダ30に対して移動不能に係止される一方、ロックピン44が引込作動されることにより、増圧ピストン32の係止状態が解除されて、増圧ピストン32の増圧シリンダ30内での滑動が許容されるようになっている。
【0030】
更にまた、型締シリンダ機構26においては、増圧シリンダ30と平行に延びる型締シリンダ46が固定盤12に対して固設されており、この型締シリンダ46に対して、メインラムとしての型締ピストン48が、増圧ピストン32と平行となる水平方向で滑動可能に組み込まれている。そして、この型締ピストン48の外周面と型締シリンダ46の内周面の径方向対向面間に、円筒形状の型締シリンダ室50が形成されており、型締ピストン48の引込方向(図1中、左方向)への移動に伴い、型締シリンダ室50の容積が小さくなるようにされている。なお、型締ピストン48の有効ピストン面積は、増圧ピストン32の有効ピストン面積よりも大きくされており、増圧シリンダ室34の圧力が型締シリンダ室50に及ぼされることにより、油圧駆動力の増幅効果が発揮されるようになっている。また、型締ピストン48は、中心軸上を軸方向に貫通した挿通孔54を有しており、この挿通孔54に対して、可動盤16から突出して固設されたメカニカルラム56が挿通配置されている。
【0031】
かかるメカニカルラム56は、大径の中空乃至は中実の円形ロッド形状を有しており、可動盤16から移動方向後方に向かってボールねじ軸38と平行に延びる状態で固定的に突設されている。また、メカニカルラム56の外周面には、周方向に延びる環状の係止歯58が、軸方向に等間隔に複数条形成されており、メカニカルラム56の外周面が、鋸歯状の縦断面形状とされている。また一方、型締ピストン48には、一対の半円環形状のハーフナット62,62を備えた係止装置60が固設されている。各ハーフナット62,62には、内周面上において、メカニカルラム56の係止歯58に対応した形状で周方向に延びる噛合歯64が一体形成されている。そして、これらのハーフナット62,62は、メカニカルラム56を挟んだ径方向両側で対向位置せしめられており、かかるハーフナット62,62が、ソレノイドやシリンダ機構等の公知の駆動手段によって、メカニカルラム56に対して径方向で接近/離隔作動せしめられることにより、型締ピストン48に設けられたハーフナット62,62の噛合歯64が、メカニカルラム56に形成された係止歯58に対して係止/離脱されるようになっている。
【0032】
さらに、前記増圧シリンダ機構24の増圧シリンダ室34には、給油管路66を通じて、補助油タンク68が接続されている。なお、この補助油タンク68は、常時接続されている必要はなく、急速継手70を介して接続されることにより、適宜に接続/取外し可能とされている。また、かかる給油管路66上には、第一の切換弁としての第一の電磁切換弁72が配設されており、この第一の電磁切換弁72の切換操作に基づいて、増圧シリンダ室34が補助油タンク68に対して接続/遮断されるようになっている。なお、本実施形態では、第一の電磁切換弁72として、ノーマル開の2ポート電磁切換弁が採用されており、制御装置としてのバルブ制御装置74からの制御信号に基づいて切換作動されるようになっている。
【0033】
また、増圧シリンダ機構24の増圧シリンダ室34と型締シリンダ機構26の型締シリンダ室50は、油圧管路としての接続管路28によって相互に接続されており、増圧シリンダ室34と型締シリンダ室50の間で、作動油が接続管路28を通じて相互に給排流動せしめられるようになっている。即ち、このことから明らかなように、本実施形態では、接続管路28によって相互に接続された増圧シリンダ室34と型締シリンダ室50により、油圧閉回路が構成されているのである。なお、接続管路28は、増圧シリンダ室34からのエア排出が有利に為され得るように、増圧シリンダ室34における最も高い位置に接続されていることが望ましい。また、かかる接続管路28は、型締シリンダ室50からのエア逆流が防止されるように、型締シリンダ室50における低い位置に接続されていることが望ましい。
【0034】
更にまた、接続管路28上には、第二の切換弁としての第二の電磁切換弁78が配設されており、この第二の電磁切換弁78の切換操作に基づいて、増圧シリンダ室34が型締シリンダ室50に対して接続/遮断されるようになっている。なお、本実施形態では、第二の電磁切換弁78として、ノーマル開の2ポート電磁切換弁が採用されており、制御装置74からの制御信号に基づいて切換作動されるようになっている。
【0035】
また、接続管路28には、第二の電磁切換弁78よりも型締シリンダ室50側に位置して、圧力センサ80が接続されており、この圧力センサ80によって、型締シリンダ室50の圧力が常時検出されるようになっていると共に、圧力センサ80による圧力検出値としての電気信号がバルブ制御装置74に入力されて、かかる圧力検出値に基づいて、第一及び第二の電磁切換弁72,78の作動制御が行われるようになっている。なお、圧力検出手段としては、設定圧力に達したら電気信号を出力するものが望ましく、例えば、ストレンゲージや電歪素子等を利用した圧力センサの他、油圧回路に採用される公知の圧力スイッチなどが、何れも採用可能である。
【0036】
さらに、本実施形態では、非常時の安全機構として、接続管路28における第二の電磁切換弁78よりも増圧シリンダ室34側に対して、リリーフ弁82が接続されており、リリーフ弁82を介して、増圧シリンダ室34が油タンク84に接続されている。即ち、このリリーフ弁82によって、サーボ系の暴走等に起因する接続管路28系の圧力の異常上昇が回避されるようになっているのである。
【0037】
さらに、型締シリンダ室50には、油圧閉回路における最も高い位置に対してエア抜き管路86が接続されており、かかるエア抜き管路86上に配設されたエア抜き手段としてのエアブリード弁88を通じて、型締シリンダ室50が油タンク84に連通されている。このエアブリード弁88は、型締シリンダ室50から鉛直上方に延び出した高い位置に配設されており、回路の圧力が設定値より小さい場合には、回路内の圧力を外部に逃がす一方、回路の圧力が設定値以上になると完全に遮断される構造となっている。なお、回路が遮断される設定値は、回路内の作動油の排出を抑えると共に、回路内へのエアの侵入を防止するために、0に近い正圧とすることが望ましく、例えば、0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下、より好ましくは0.05MPa以下とされる。
【0038】
上述の如き構造とされた型締装置10においては、バルブ制御装置74により第一の電磁切換弁72を遮断すると共に、第二の電磁切換弁78を接続せしめて、増圧シリンダ機構24と型締シリンダ機構26を接続管路28で接続して油圧閉回路を構成せしめた状態下で、中央制御装置90により、サーボモータ40やロック装置42,係止装置60等を、図示しない射出装置と連携させて作動制御することによって、型開閉および型締作動せしめられて、目的とする射出成形作動が行われることとなる。
【0039】
具体的には、先ず、増圧ピストン32をロック装置42で増圧シリンダ30に固定せしめた状態下で、サーボモータ40でボールねじ軸38を回転駆動せしめることにより、ボールねじ軸38による増圧ピストン32のねじ送り作用に基づいて、可動盤16が、固定盤12への接近/離隔方向に駆動変位せしめられて型開閉作動される。なお、かくの如き型開閉作動に際しては、型締ピストン48に設けられた係止装置60のハーフナット62,62がメカニカルラム56から離脱状態に保持せしめられることにより、増圧シリンダ機構24および型締シリンダ機構26の作動を伴うことなく、型開閉作動が行われる。
【0040】
そして、サーボモータ40による型閉作動の完了後に、係止装置60のハーフナット62,62をメカニカルラム56側に突出させて、ハーフナット62,62の噛合歯64,64をメカニカルラム56の係止歯58に係止させて、メカニカルラム56を型締ピストン48に固定せしめた後に、油圧閉回路構造をもって構成された増圧シリンダ機構24と型締シリンダ機構26によって型締作動が行われる。即ち、型閉作動の完了後、ロック装置42を解除した状態下で、サーボモータ40を回転駆動させて、ボールねじ軸38による増圧ピストン32のねじ送り作用に基づいて、増圧シリンダ30に対して増圧ピストン32を前進方向に滑動させると、増圧シリンダ30内の油圧が上昇せしめられて、かかる油圧が、接続管路76を通じて型締シリンダ室50内に及ぼされて、型締ピストン48が突出方向(図1中、右方向)に向かって増幅された大きな駆動力で駆動されるようになっており、それによって、固定盤12と可動盤16の間に大きな型締力が及ぼされるのである。
【0041】
また一方、上述の如き構造とされた型締装置10においては、装置設置後の立ち上げに際して、増圧シリンダ機構24や型締シリンダ機構26を含む油圧閉回路に対する作動油の注入充填を、増圧シリンダ機構24を利用した吸引作動によって自動的に行うことが出来る。
【0042】
具体的には、図2〜3に示されているように、自動油充填作動がスタートすると、先ず、ステップ:S1で、係止装置60においてハーフナット62,62の各噛合歯64をメカニカルラム56の係止歯58に噛合させて型締ピストン48をメカニカルラム56に固定すると共に、ロック装置42のロックピン44を引込ませて、増圧ピストン32の増圧シリンダ30に対する係止を解除する。なお、かかる状況下、増圧シリンダ機構24の増圧ピストン32は、出来るだけ前進して位置せしめられていることが望ましく、必要に応じて、ロック装置42のロックピン44を係止解除せしめた状態下でサーボモータ40を作動させて、増圧ピストン32を前進移動せしめる。また、かかるステップ:S1において、第二の電磁切換弁78はノーマル位置(非通電状態)に維持したまま、第一の電磁切換弁72だけを、作動位置(通電状態)とする。即ち、増圧シリンダ室34を、補助油タンク68から遮断すると共に、型締シリンダ室50に連通せしめる。
【0043】
その後、ステップ:S2で、サーボモータ40を作動せしめて、ボールねじ機構により増圧ピストン32を図1中右方に後退駆動させることによって、増圧シリンダ室34を減圧する減圧作動を行う。また、この減圧作動に際して、増圧シリンダ室34が接続された型締シリンダ室50の圧力を、圧力センサ80によって監視し、かかる型締シリンダ室50の圧力が、予め設定された設定値よりも小さくなった場合に、第一の電磁切換弁72を、作動位置からノーマル位置に切り換えると共に、第二の電磁切換弁78を、ノーマル位置から作動位置に切り換える。即ち、増圧シリンダ室34を、補助油タンク68に連通せしめると共に、型締シリンダ室50から遮断する。なお、電磁切換弁72,78の切換の基準となる型締シリンダ室50の圧力設定値は、型締シリンダ室50の残圧を抑えるために0に近い正圧とされることが望ましい。
【0044】
続いて、ステップ:S3で、タイマ時間設定などによって所定の待機時間を与えることにより、増圧ピストン32の後退作動によって減圧されて負圧とされた増圧シリンダ室34に対して、補助油タンク84から、給油管路66を通じて作動油を吸引させて、注入せしめる。
【0045】
そして、待機時間の経過後、続くステップ:S4において、サーボモータ40を作動せしめて増圧ピストン32を図1中左方に前進駆動させることによって、増圧シリンダ室34を増圧する増圧作動を行う。また、この増圧作動に際して、好ましくは増圧シリンダ室34の負圧が解消された後に、第一の電磁切換弁72を、ノーマル位置から作動位置に切り換えると共に、第二の電磁切換弁78を、作動位置からノーマル位置に切り換える。即ち、増圧シリンダ室34を、補助油タンク68から遮断すると共に、型締シリンダ室50に接続する。なお、このような第一及び第二の電磁切換弁72,78の切り換えは、例えば、サーボモータ40の作動開始と同時に、或いは僅かに前後して行うことも可能であり、また、図面上に明示はされていないが、圧力センサ等で増圧シリンダ室34の圧力を監視して、得られた圧力値に基づいて第一及び第二の電磁切換弁72,78を切換作動せしめるようにしても良い。
【0046】
また、ステップ:S4で増圧ピストン32が前進駆動せしめられると、増圧シリンダ室34が増圧されて、その圧力が、接続管路28を通じて型締シリンダ室50に及ぼされることとなる。ここにおいて、型締シリンダ室50は、エア抜き管路86により、エアブリード弁88を通じてエアの排出が許容されるようになっていることから、増圧シリンダ室34と型締シリンダ室50の圧力差によって、増圧シリンダ室34に吸引注入された作動油が、型締シリンダ室50に導かれて注入されることとなる。
【0047】
そして、ステップ:S5において、前記ステップ:S2〜4における増圧ピストンの往復作動が、予め設定された、作動油注入のために必要とされる回数:mに達したか否かを判断し、かかる回数:mだけ、ステップ:S2〜4を繰り返し、その後に、作動油の自動充填作動を終了する。
【0048】
これによって、増圧シリンダ室34と型締シリンダ室50および接続管路28からなる油圧閉回路において、エアが排出されると共に、作動油が注入,充填されることとなる。
【0049】
さらに、上述の如き構造とされた型締装置10においては、連続的な射出成形作動を行っている間に油圧閉回路にエアが侵入した場合にも、かかる侵入エアの油圧閉回路からの排出を、増圧シリンダ機構24を利用したエア抜き作動によって自動的に行うことが出来る。
【0050】
具体的には、図4〜5に示されているように、自動エア抜き作動がスタートすると、先ず、ステップ:T1で、ロック装置42のロックピン44を突出させて、増圧ピストン32を増圧シリンダ30に係止する。続くステップ:T2で、第一及び第二の電磁切換弁72,78をノーマル位置(非通電状態)とした状態下において、サーボモータ40を作動せしめることにより、ボールねじ機構によって可動盤16を前進方向(固定盤12への接近方向)に作動せしめて低速型閉じを行う。型閉完了後、ステップ:T3で、係止装置60においてハーフナット62,62の各噛合歯64をメカニカルラム56の係止歯58に噛合させて型締ピストン48をメカニカルラム56に固定すると共に、ロック装置42のロックピン44を引込ませて、増圧ピストン32の増圧シリンダ30に対する係止を解除する。
【0051】
その後、ステップ:T4において、サーボモータ40を作動せしめて増圧ピストン32を図1中左方に前進駆動させることによって、増圧シリンダ室34を増圧し、更に、ステップ:T5で、かかる増圧状態を所定時間だけ保持する。これにより、増圧シリンダ室34が増圧されると、油圧シリンダ室34の作動油が、混入エアが存在する場合には混入エアを含んで、エアブリード弁88を通じてエアの排出が許容された型締シリンダ室50に導かれて、かかる型締シリンダ室50から混入エアが排出されると同時に、作動油が型締シリンダ室50に補填的に注入されて充填されることとなる。なお、ステップ:T5での増圧保持時間は、タイマ等で設定することによって一定時間として設定する他、圧力センサ80によって検出される型締シリンダ室50の圧力値に基づいて動的に設定しても良い。
【0052】
そして、ステップ:T5における油圧閉回路の増圧状態から、続くステップ:T6において、サーボモータ40を反対回りに回転作動せしめて増圧ピストン32を図1中右方に後退駆動させることによって、増圧シリンダ室34を減圧し、続くステップ:T7で、かかる減圧状態を所定の待機時間だけ保持する。また、ステップ:T6に際して、型締シリンダ室50の圧力を圧力センサ80で監視し、型締シリンダ室50の圧力が、予め設定された設定値よりも小さくなった場合に、第一の電磁切換弁72を、作動位置からノーマル位置に切り換えると共に、第二の電磁切換弁78を、ノーマル位置から作動位置に切り換えることにより、増圧シリンダ室34を、補助油タンク68に連通せしめると共に、型締シリンダ室50から遮断する。なお、電磁切換弁72,78の切換の基準となる型締シリンダ室50の圧力設定値は、前述の作動油の自動充填作動と同様、型締シリンダ室50の残圧を抑えるために0に近い正圧とされることが望ましい。
【0053】
これにより、タイマ時間等によって設定された所定の待機時間の間に、減圧されて負圧とされた増圧シリンダ室34に対して、補助油タンク68から、給油管路66を通じて作動油が吸引されて、注入せしめられることとなる。
【0054】
そして、ステップ:T8において、前記ステップ:T4〜7における増圧ピストンの往復作動が、予め設定された、エア抜きのために必要とされる回数:nに達したか否かを判断し、かかる回数:nだけ、ステップ:T4〜7を繰り返し、その後に、混入エアの自動排出作動(エア抜き作動)を終了する。
【0055】
これによって、増圧シリンダ室34と型締シリンダ室50および接続管路28からなる油圧閉回路において、混入エアが排出されると共に、作動油が補填的に注入されて,充填されることとなる。
【0056】
以上、詳述してきたように、本実施形態の型締装置10においては、油圧ポンプ等を備えない油圧閉回路装置であるにも拘わらず、油圧閉回路を構成する増圧シリンダ機構24と型締シリンダ機構26の作動を上手く組み合わせて利用することによって、油圧閉回路への作動油の注入,充填と、油圧閉回路からの混入エアの排出を、何れも、特別な装置等を必要とせずに簡単な操作で容易に且つ迅速に行うことが出来るのであり、作動油の注入や混入エアの排出に際しての作業性が飛躍的に向上され得るのである。
【0057】
しかも、油圧閉回路へのエアの混入が防止されると共に、エア混入があった場合にも、速やかに排出することが出来ことから、射出成形に際しての油圧閉回路へのエア混入の悪影響が有利に回避され得ることとなり、以て、目的とする射出成形作動を安定して行うことが可能となるといった利点もある。
【0058】
なお、上述の実施形態は、あくまでも本発明の一具体的な例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
【0059】
例えば、前記実施形態では、補助油タンク68が急速継手70を介して接続されていたが、急速継手を設けることなく、常時、接続しておいても良い。
【0060】
また、接続管路28におけるリリーフ弁82は、本発明において必ずしも必要ではない。
【0061】
更にまた、型締シリンダ室50をエアブリード弁88に接続するエア抜き管路86上に、開閉弁を配設して、エア抜きする必要がない通常作動時には、かかる開閉弁を閉じることにより、エア抜き管路86を完全に遮断状態としても良い。
【0062】
さらに、平常的な連続射出成形作動時においても、補助油タンク68やエアブリード弁88を接続しておけば、例えば、一ショット毎の射出成形に際して油圧閉回路からのエア排出作動を行わせることが可能であり、それ故、万一、油圧閉回路にエアが侵入した場合でも、速やかに対処することが可能となる。なお、射出成形作動と同時にエア抜き作動を行わせる場合には、例えば、図4〜5に示されている如きエア抜き作動を射出成形作動に組み込むことによって、容易に実現可能となる。即ち、その場合には、図4〜5中の増圧作動が型締作動となり、減圧作動が型締圧抜作動となる。また、n=1として、通常の連続射出成形作動を出来るだけ変更しないで、同時にエア抜きを行うことも可能である。
【0063】
また、前記実施形態において示した型締装置は、本出願人が、先に、特願2000−101620号で新たに提案した、サーボモータと油圧シリンダ機構を併用したハイブリッド構造のものであって、詳細構造は、かかる先願に開示されているところであるが、本発明は、かかる実施形態に記載された特定構造の型締装置以外にも、各種構造の型締装置に対して適用可能であることは、言うまでもない。
【0064】
加えて、前記実施形態では、本発明を射出成形機用の型締装置に適用したものの一例を示したが、本発明は、その他、例えば型締装置以外の油圧ジャッキ機構など、油圧閉回路を備えた各種装置に対して、同様に適用可能である。
【0065】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0066】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、前記〔0009〕に記載の作動油充填方法に従えば、油圧閉回路装置において、駆動側油圧シリンダ機構等を巧く利用することにより、油圧ポンプ等を用いることなく、作動油を容易に且つ速やかに注入,充填することが可能となる。
【0067】
また、前記〔0013〕に記載のエア抜き方法に従えば、油圧閉回路装置において、万一エアが残留していたり侵入した場合でも、駆動側油圧シリンダ機構等を巧く利用することにより、油圧ポンプ等を用いることなく、作動油を容易に且つ速やかに排出することが可能となる。
【0068】
更にまた、前記〔0016〕に記載の油圧閉回路装置および本発明の射出成形機用型締装置においては、何れも、上記の〔0009〕や〔0013〕に記載の作動油充填方法やエア抜き方法を有利に実施することが可能であり、それによって、装置の立上時における作動油の注入,充填と、立上後における混入エアの排出を、何れも、容易に且つ速やかに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての射出成形機用型締装置の概略構造を示すモデル図である。
【図2】図1に示された型締装置における作動油の自動充填作動を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2に示された作動油の自動充填作動に際しての第一及び第二の電磁切換弁の切換作動状態を説明するための説明図である。
【図4】図1に示された型締装置における混入エアの自動排出作動を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示された混入エアの自動排出作動に際しての第一及び第二の電磁切換弁の切換作動状態を説明するための説明図である。
【符号の説明】
10 型締装置
12 固定盤
14 受圧盤
16 可動盤
22 ねじ送り機構
24 増圧シリンダ機構
26 型締シリンダ機構
28 接続管路
40 サーボモータ
42 ロック装置
56 メカニカルラム
60 係止装置
68 補助油タンク
72 第一の電磁切換弁
78 第二の電磁切換弁
80 圧力センサ
88 エアブリード弁
Claims (2)
- 固定盤と受圧盤を互いに離隔して固定的に対向配置すると共に、それら固定盤と受圧盤の対向面間に可動盤を配して、該可動盤と該受圧盤の何れか一方の側に支持されたボールねじ軸と他方の側に支持されたボールねじナットを電動モータで相対回転させてねじ送り作用により該可動盤を前記固定盤に対して型開閉作動せしめるようにする一方、前記受圧盤側に、それらボールねじ軸とボールねじナットのねじ送り作用によって作動せしめられる増圧シリンダ機構と、該増圧シリンダ機構で生ぜしめられた油圧が及ぼされる型締シリンダ機構を、それぞれ設けると共に、該増圧シリンダ機構において増圧ピストンを移動不能に係止する解除可能なロック手段と、該型締シリンダ機構において型締ピストンを前記可動盤に対して係止する解除可能な係止手段を、それぞれ設けて、前記固定盤と前記可動盤の型閉状態下で前記ボールねじ軸と前記ボールねじナットのねじ送り作用で前記増圧シリンダ機構を作動せしめることにより、前記型締シリンダ機構に生ぜしめられる型締力を固定盤と可動盤の間に及ぼすようにした油圧閉回路を備えた射出成形機用型締装置において、
前記増圧シリンダ機構に接続される補助油タンクと、
該補助油タンクと前記増圧シリンダ機構を接続する給油管路上に配された第一の開閉弁と、
前記増圧シリンダ機構を前記型締シリンダ機構に接続する油圧管路上に配された第二の開閉弁と、
前記型締シリンダ機構に接続されたエア抜き手段と、
前記増圧シリンダ機構における増圧ピストンの増圧側への前進作動に際して、前記第一の開閉弁を閉じると共に、前記第二の開閉弁を開いて、該増圧シリンダ機構から前記型締シリンダ機構に作動油を圧送する一方、かかる増圧シリンダ機構における増圧ピストンの減圧側への後退作動に際して、前記第二の開閉弁を閉じると共に、前記第一の開閉弁を開いて、該増圧シリンダ機構における前記補助油タンクからの作動油の吸引を許容する制御装置とを、
設けたことを特徴とするエア抜き可能な油圧閉回路を備えた射出成形機用型締装置。 - 前記型締シリンダ機構と前記エア抜き手段を接続するエア抜き管路上に、該エア抜き管路を遮断する第三の開閉弁を設けた請求項1に記載のエア抜き可能な油圧閉回路を備えた射出成形機用型締装置。
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