JP3677167B2 - 作業用車両 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般公道の走行用に供しない走行車両に関し、特に、運搬車やゴルフカート、芝刈り作業車等の作業用車両に適用して有効な技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ゴルフ場においてプレーヤの移動やゴルフバック等の運搬に使用されるゴルフカートや、草刈り等の各種作業に用いられる作業用車両では、安全上の観点や操作性の面から車両最高速度を制限するため、いわゆるガバナ装置を取り付けたものが広く用いられている。
【0003】
このガバナ装置としては、従来よりトランスミッション等の減速機構の一部に組み込まれる機械式のものが知られており、そこでは、ガバナに対しギヤ等によって車速に比例した回転数を与えることにより、車速に応じたガバナフォースを得るようにしている。そして、このガバナフォースを利用することにより、機械的リンケージを介してアクセルペダルワイヤの引き力に抗してスロットルを閉じさせ、車両の最高速度を規制している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなガバナ装置では、機械的な機構により速度制限を行うため、走行路面の舗装状況の差による走行抵抗の変化や平坦路からの登坂、降坂などの急激な道路勾配の変化により制御遅れが発生するという問題があった。すなわち、機械的機構が周囲の状況変化に機敏に追従できず、オーバーシュートやアンダーシュートが発生したり、うねり等によりなめらかな車速制御ができないなどの問題があった。
【0005】
この場合、機械的なガバナ装置に代えて、例えば、特開平2−238136号公報や特開平5−65036号公報のような、車速を検知してエンジン回転数を電子的に制御するいわゆる電子ガバナ装置が開発され、機械的構成に起因する諸問題の解決が図られている。しかしながら、この電子ガバナ装置でも、車速センサの信号に基づいて車速を自動制御するにとどまり、外乱による急激な車速変化に対しては言わば対症療法的な制御形態しかとれず、追従性や安定性の点で十分とは言えない面もあった。
【0006】
本発明の目的は、車速制御時の外乱に対してスピーディでかつスムースな速度制御が可能な作業用車両を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、内燃機関を搭載し、前記内燃機関のスロットルバルブをアクセルペダルのストローク量に応じて駆動させると共に、車両最高速度の制限を行い車両の車速が最高速度規定値を越えないようにスロットルバルブの開度を制御する制御装置を備え、前記内燃機関のスロットルバルブを駆動するバルブ駆動手段と、前記アクセルペダルのストローク量を検出するアクセル開度検出手段と、車両の速度を検出する車速検出手段と、検出された車速に基づいて車両の現在の加速度を算出する加速度算出手段と、現在の車速と現在の加速度に基づき所定時間後の車速予測値を算出する車速予測手段とを有する作業用車両において、更に、前記車速予測値と車両最高速度を規定する最高速度規定値を超えないように予め設定された制御基準速度とを比較する車速比較手段と、前記車速予測値が前記制御基準速度より大きいとき、現在の条件として現在の加速度と現在のスロットルバルブ開度とに基づいて、この後に作業用車両が最高速度規定値を越えないようにするための目標スロットル開度を求める車速制限手段と、前記目標スロットル開度に基づき、前記アクセルペダルのストローク量にかかわらず、前記バルブ駆動手段を作動させて前記スロットルバルブの開度を制御する出力制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記車速制限手段は、前記現在の加速度と現在のスロットルバルブ開度とに基づき、車速が急激に前記最高速度規定値を超えると判断される場合には、一旦スロットルバルブを閉じ、その後、徐々にスロットルバルブを開くように前記目標スロットル開度を算出することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、更に、前記車速制限手段は、前記現在の加速度と現在のスロットルバルブ開度とに基づき、さほど急激に車速が前記最高速度規定値を超えないと判断される場合には、スロットルバルブの開度を現状から適宜減らすように前記目標スロットル開度を算出することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態であるゴルフカート(作業用車両、以下適宜カートと略記する)の構成を示す説明図である。本発明によるカートは、現在の加速度から車速予測値を求め、この予測値に基づきスロットルバルブの開度を制御することにより、制御遅れのないなめらかな速度制御を実行するようにしたものである。
【0012】
本実施の形態のカートは自動変速機付の走行車両であり、図1に示したように、車両本体中央にエンジン(内燃機関)1を配し、このエンジン1によって車両後部の駆動輪2を駆動するようになっている。エンジン1からの出力は、自動変速装置3を介してトランスミッション装置4に入力される。トランスミッション装置4内にはディファレンシャル装置61が設けられており、これを介して車軸62にエンジン1の動力が伝達され駆動輪2が回転する。
【0013】
当該カートでは、自動変速装置3としてベルト式の無段変速機(CVT)が採用されており、エンジン1の出力軸であるクランクシャフトには駆動プーリ5が設けられている。また、トランスミッション装置4の入力軸6には被動プーリ7が設けられており、これらの両プーリ5, 7の間にはベルト8が掛け渡されている。両プーリ5, 7は、TCU(トランスミッション制御ユニット)の指令の下、図示しない油圧装置によりその溝幅を適宜変更できるようになっており、この溝幅の変化によりベルト8の巻き付き径が適宜変化して無段階に変速を行えるようになっている。なお、当該カートは電子制御による油圧式を採用しているが、遠心ガバナによる機械式のものであっても良い。
【0014】
トランスミッション装置4の入力軸6には、外周部に複数の突起9aを備えたロータ9が取り付けられている。また、ロータ9の近傍には、突起9aの近接、離反を検知することにより車速の検出を行う車速センサ(車速検出手段)10が設けられている。当該実施の形態では、この車速センサ10としてマグネットピックアップ(磁気センサ)が使用されており、突起9aの通過に伴って発生するパルス信号がECU(エンジン制御ユニット)40に送出される。
【0015】
入力軸6はディファレンシャル装置61の前段に存在しており、当該カートでは、車速センサ10をディファレンシャル装置61の後段にある車軸62ではなく、その前段に位置する入力軸6に配設している。従って、ディファレンシャル装置61の差動作用による影響を受けることなく車速検出を行うことができ、エラーのない正確な車速検出を行えるようになっている。また、車速をパルスカウントによって検出できるため、車速に基づいて行われる各種制御の精度を向上させることも可能となっている。さらに、非接触式の車速検出機構であるため、磨耗による経年変化がなく信頼性も向上する。
【0016】
一方、図2に示したように、エンジン1のシリンダヘッド11には、吸気ポート12および排気ポート13が形成されている。また、これらのポート12, 13とエンジン1の燃焼室14との間には、吸気バルブ15および排気バルブ16が設けられており、これらは図示しないカムおよびロッカアームにより所定のタイミングにて開閉される。また、シリンダヘッド11には、その先端を燃焼室14に露呈させた点火プラグ17が設けられており、点火プラグ17は図示しないイグナイタを介してECU40によって点火時期が制御される。
【0017】
エンジン1の吸気系には、インジェクタ装置18および電子ガバナ装置19が設置されている。
【0018】
エンジン1の吸気ポート12には、これと連通して吸入管20が配設されており、両者の接続部の近傍にはインジェクタ装置18が取り付けられている。吸入管20には、吸入管圧力を検出する圧力センサ26が設けられている。インジェクタ装置18には、吸気ポート12に向けて燃料を噴射するインジェクタ21が設けられており、インジェクタ21には図示しない燃料タンクから燃料配管を経てフューエルレール22にガソリンが供給されている。そして、ECU40の制御の下、このインジェクタ21によりエンジン1に対してガソリンが噴射供給される。なお、ガソリン噴射量は、吸入管圧力とエンジン回転数に基づいて制御される。
【0019】
インジェクタ21の上流にはさらに、電子ガバナ装置(出力制御手段)19を備えたスロットルバルブ23が設けられている。当該実施の形態ではこのスロットルバルブ23として、フィードバック用信号出力付の電動式スロットルが採用されており、DCモータ(バルブ駆動手段)63によって駆動されるようになっている。そして、このDCモータ63をECU40によってフィードバック制御することにより、バルブ開度が所望の開度にて制御される。なお、バルブ開度は図示しないポテンショメータにより検出されている。
【0020】
また、スロットルバルブ23は、後述するアクセルペダル31の踏み代や車速センサ10の検出値等に基づきECU40によって制御されると共に、電子ガバナ装置19によりその開度が適宜調節される。すなわち、車速センサ10によって車速が所定の最高速度を超えたことが検知されると、電子ガバナ装置19によってスロットルバルブ23の開度が制限されてエンジン1に対する空気供給量が絞られ、カート速度が制限されるようになっている。
【0021】
ここで、本発明によるカートでは前記のような最高速度制限に加え、車速センサ10と電子ガバナ装置19の機能を生かし、平地から急な下り坂に入ったときなど車速が急変する場合に、カートの加速度から車速動向を予測し、カート速度をスピーディかつスムースに制限する処理が実行される。
【0022】
すなわち、現在の車速と直前の車速とから現在の加速度が演算され、この加速度に基づいてカートの車速変化が予測されて所定時間後の車速予測値が算出される。そして、この車速予測値に基づいて、カート速度が最高速度規定値を超えないようにスロットルバルブ23の目標開度が設定され、アクセルペダル31の踏み代にかかわらず、スロットルバルブ23をその目標開度に制御する。
【0023】
このように当該カートでは車速の急変に際し、それが最高速度規定値に達してから車速を抑制するのではなく、車速予測値が制御基準速度以上になるおそれがある時点から車速を抑制する処置を施すことになる。従って、制御遅れのないなめらかな速度制御が可能となり、カートが最高速度規定値になるまで減速せず、かつそれを超えたときに急激に減速するというような運転フィーリングの悪化を防止することができる。
【0024】
また、当該カートでは、機械式ガバナ装置に変えて電子ガバナ装置19を採用しているため、アクセルワイヤの伸びや劣化、錆等による作動不良がなく、さらに、機械的リンケージがないため車両設計上の自由度も向上する。加えて、電子制御式であるため、機械的なセッティング不良による速度のうねりなどの不安定現象や、遊びの増加等に基づく制御遅れなどがなく、速度安定性や追従性に優れ車両の運転フィーリングが良好であると共にその設計の自由度も向上する。なお、スロットルバルブ23の上流にはエアクリーナ24が設けられており、吸入管20に流入する空気中の粉塵などを除去している。
【0025】
エンジン1のクランクシャフトには、外周部に複数の突起25aを備えたフライホイール25が取り付けられている。フライホイール25の近傍にはエンジン回転数センサ35が設けられており、これによって突起25aの近接、離反を検知することによりエンジン回転数が検出できるようになっている。
【0026】
さらに、エンジン1にはエンジン起動用のスタータジェネレータ27(図1参照)が取り付けられている。このスタータジェネレータ27は、ECU40によって制御され、エンジン起動時にはセルモータとして働き、エンジン起動後には発電機として作用する。なお、当該カートでは、運転者不在などの場合にはエンジン起動が抑止され、その際にはこのスタータジェネレータ27が作動しないように制御される。
【0027】
加えて、図1に示したように、当該カートの前方側には運転席28が設けられており、その前方にはカートの主電源スイッチであるキースイッチ30が設けられている。そして、このキースイッチ30をONするとECU40やTCU等はその旨の信号を得て所定の動作を開始するようになっている。また、運転席28の床面にはアクセルペダル31が設けられており、そのストローク量は電気信号の形でECU40に伝達される。当該カートでは、アクセルペダル31が所定のエンジン起動位置まで踏み込まれるとスタータジェネレータ27が駆動されてエンジン1が起動するようになっている。
【0028】
図3は、アクセルペダル31のストローク量検出機構の概略構成を示した説明図である。図3に示したように、アクセルペダル31はペダルボックス32に取り付けられた状態でカートに設置される。また、ペダルボックス32の内部には、リンク機構33を介してアクセルペダル31と連結されたポテンショメータ(アクセル開度検出手段)34が設けられている。そして、アクセルペダル31が踏み込まれると、リンク機構33の作用によりポテンショメータ34の摺動接点側が動かされ、その抵抗値が変動する。このためアクセルペダル31が踏まれると、ECU40に送出される電気信号の電流値がそのストローク量に応じて変動し、これによりECU40側ではアクセルペダル31のストローク量(アクセル開度)を認識できるようになっている。
【0029】
一方、ECU40は、図4に示したように、CPU41と、ROM42、RAM43およびバックアップ用のRAM44、タイマ45とI/Oインターフェース46がバスライン47を介して互いに接続されたマイクロコンピュータと、その周辺回路とから構成される。そして、車速センサ10やポテンショメータ34等のセンサ類やキースイッチ30等からの信号を処理し、電子ガバナ装置19や、インジェクタ21やスロットルバルブ23等のアクチュエータ類に制御信号を送出する。
【0030】
I/Oインターフェース46には、車速センサ10、エンジン回転数センサ35が波形整形回路48を介して接続されている。また、スロットルバルブ23、圧力センサ26、キースイッチ30、ポテンショメータ34は、それぞれA/D変換器49を介してI/Oインターフェース46に接続されている。さらに、I/Oインターフェース46には、インジェクタ21やスロットルバルブ23、スタータジェネレータ27が、駆動回路50を介して接続されている。
【0031】
ROM42には、制御プログラムおよび各種制御用固定データが記憶されており、当該カートの速度予測制御プログラムや最高速度として予め設定された最高速度規定値もここに格納されている。また、RAM43には、データ処理した後の各センサ類やスイッチからの入力信号やインジェクタ21等への出力信号、CPU41にて演算処理したデータなどが格納される。そして、CPU41では、ROM42に記憶されている制御プログラムに従い、空燃比制御や点火時期制御等に加えて、車速センサ10やポテンショメータ34等の出力値に基づきスロットルバルブ23や電子ガバナ装置19の制御を行い、当該カートの速度制御を実行する。
【0032】
図5は、ECU40における速度制御に関する主要機能構成を示すブロック図である。図5に示したように、ECU40は作業用車両の制御装置として次のような機能手段を有している。すなわち、ECU40はまず、ポテンショメータ34によって検出されたアクセル開度や車速センサ10、圧力センサ26の検出値に基づきスロットルバルブ23の開度を決定するスロットルバルブ開度算出手段51を備えており、通常走行時はこのスロットルバルブ開度算出手段51における演算結果に基づきDCモータ63が駆動されスロットルバルブ23が所定の開度に開くことになる。
【0033】
また、ECU40には、車速センサ10によって検出された現在の車速V0 とROM42に格納されている最高速度規定値Vmаxとを比較してカート速度の制限を行う最高速比較手段52が設けられている。
【0034】
さらに、ECU40には、車速センサ10から現在の車速V0 を読み込み、この車速V0 とRAM43に格納されている直前の車速V0-1 とから現在のカートの加速度ΔVを算出する加速度算出手段53と、算出した加速度ΔVから所定時間後のカートの速度を予測して車速予測値VX を算出する車速予測手段54が設けられている。
【0035】
加えて、車速予測手段54の後段には、車速予測値VX と予め最高速度規定値Vmaxを超えないように設定されている制御基準速度VR とを比較する車速比較手段55、さらに、車速予測値VX が制御基準速度VR を超えると予想され、速度予測に基づく車速制御処理が実行される場合には、加速度ΔVと現在のスロットル開度TA0 からROM42に格納されている制御マップに基づき目標スロットル開度を算出し、電子ガバナ装置19に対しスロットルバルブ23の開度を制限する速度制限信号を出力する車速制限手段56とを有する構成となっている。
【0036】
次に、これらの機能手段による速度制御処理について説明する。図6は、当該カートにおいて走行中に急激な車速変化が生じた場合の速度制御手順を示すフローチャートである。
【0037】
当該カートでは、通常、ポテンショメータ34により検知されたアクセル開度や車速、吸入管圧力に基づきスロットルバルブ開度算出手段51によってスロットルバルブ23の開度が算出され、その値に応じてDCモータ63が駆動されてスロットルバルブ23が開かれる。これによりエンジン1の吸気系に空気が供給され、インジェクタ21から供給された燃料との混合気によってエンジン1が駆動される。
【0038】
この場合、最高速比較手段52は、キースイッチ30がONの状態の時には常に車速と最高速度規定値Vmаxとの比較を行っており、カートの走行速度が規定値以上となるとその旨の信号を車速制限手段56に送出する。すなわち、カートが緩やかに加速して最高速度規定値Vmаxに達したときなどは、車速予測制御を行うことなく車速制限手段56に直接最高速度を超えた旨が通知される。
【0039】
そして、これを受けた車速制限手段56は、車速を規定値以下とすべく電子ガバナ装置19に対し速度制限信号を送出し、電子ガバナ装置19によりスロットルバルブ23の開度を制限させる。すなわち、速度制限信号を受けた電子ガバナ装置19は、アクセル開度に関わらずDCモータ63を駆動させてスロットルバルブ23の開度を減少させる。これにより、エンジン1に対する空気供給量が絞られてエンジン回転数が抑制され、カートが最高速度規定値Vmаx以上の速度とならないように制御される。
【0040】
一方、ECU40は前述の処理と平行して、車速センサ10から現在の車速V0 を所定時間間隔(例えば、0. 1秒)にて読み込んでおり、図6に示したように、ステップS11で車速センサ10から現在の車速V0 を読み込む。車速V0 が読み込まれると、車速V0 がRAM43に格納されると共に、ステップS12に進み、ステップS12では、加速度算出手段53はRAM43に格納されている直前の車速V0-1 を読み出し、これとステップS11で読み込んだ車速V0 との差を取り、そこからカートの現在の加速度ΔVを符号付き(+:加速、−:減速)で算出する。加速度ΔVが得られるとステップS13に進み、車速予測手段54により所定時間後の車速が予測演算され車速予測値VX が求められる。
【0041】
車速予測値VX が得られるとステップS14に進み、車速比較手段55において、車速予測値VX と制御基準速度VR が比較され、車速予測値VX が制御基準速度VR 以下の場合にはルーチンを抜ける。また、車速予測値VX が制御基準速度VR より大きい場合には、ステップS15に進む。ステップS15では、車速制限手段56において、ROM42内の制御マップを参照することにより加速度ΔVと現在のスロットル開度TA0 から目標スロットル開度が算出される。この場合、制御マップには加速度ΔVやスロットル開度TA0 に応じて、車速が最高速度規定値Vmаxを超えないようにするために必要とされる制御条件がテーブル化されて格納されている。ここでは、この制御条件としてスロットルバルブ23の目標開度や開閉時間が格納されており、例えば、バルブ「全閉」の指示であれば、「0」(開度0゜を意味する)、「5゜開」であれば「5」などの数値が格納されている。車速制限手段56はこの制御マップを参照し、そこから現在の条件(加速度ΔV, スロットル開度TA0 )において、この後にカートが最高速度規定値Vmаxを超えないようにするための目標スロットル開度を取得する。
【0042】
そして、車速制限手段56は電子ガバナ装置19に対し、取得した目標スロットル開度を示した速度制限信号を出力し、これを受けた電子ガバナ装置19は、アクセルペダル31のストローク量にかかわらずDCモータ63を作動させてスロットルバルブ23を目標スロットル開度に制御する。
【0043】
これにより当該カートでは、現在の状態のままカートが進めば車速がどのようになるかという観点で速度制御が行われ、例えば車速が急激に最高速度規定値Vmаxを超えると判断される場合には、一旦スロットルバルブ23を閉じ、その後徐々にバルブを開いて加速度を緩めつつ車速を最高速度規定値Vmаx以内に収束させるような制御が行われる。すなわち、この場合には制御マップ上における「全閉」の指示(「0」)に基づきバルブを一旦閉じ、その後ステップS11〜S15を繰り返しつつ、「5」、「10」、「15」などとバルブ開度が制御され、車速が迅速かつなめらかに最高速度規定値Vmаxに収束することになる。
【0044】
また、さほど急激に最高速度規定値Vmаxを超えないと判断される場合には、スロットルバルブ23の開度を現状から適宜減らし、最終的には最高速度規定値Vmаx内に収束させるような制御が行われる。さらに、最高速度規定値Vmаx以内に収まると判断される場合にはバルブ開度を現状維持とする制御が行われる。
【0045】
このように、当該カートでは車速の急変に際し、それが最高速度規定値Vmаxに達してから車速を抑制するのではなく、制御基準速度VR 以上になるおそれがある時点から車速を抑制する処置を施すため、制御遅れのないなめらかな速度制御が可能となる。なお、車速制限手段56は、車速予測値VX に基づきカート速度が最高速度規定値Vmаxを超えないような目標スロットル開度を算出して車速制御を行うが、これは速度制御中に車速が最高速度規定値Vmаxを一瞬たりとも超えないことを意味するものではなく、目標スロットル開度に基づく制御中に最高速度規定値Vmаxを若干超えることがあっても、それを大きくはみ出すことなく最終的には規定値内に収束することを意味している。
【0046】
なお、当該カートでは車速センサ10がディファレンシャル装置61の前段に配設されており、車速検出をディファレンシャル装置61の差動作用の影響を受けることなく行うことができるようになっている。すなわち、曲線走行時など車軸62が左右で異なる回転数となる場合でも、車軸62の回転ではなくディファレンシャル装置前段の入力軸6にて車速検出を行っているため、正確な車速検出を行うことができる。また、車速をパルスカウントによって検出できるため、最高速度制御の精度を向上させることも可能である。
【0047】
さらに、前記最高速度規定値Vmаxや制御基準速度VR などはROM42に格納されているため、ユーザー側で簡単に書き換えることができない一方で、ROM42を交換すれば規定値を変更できる。従って、ゴルフカートのみならず工場敷地内での運搬車など、用途に応じて最高速度や制御基準速度を容易に変更することが可能である。すなわち、当該カートでは、従来の機械式ガバナ装置のようにユーザー側で安易に調整可能である反面、制限速度を正確に設定するために煩雑な調整作業を要するという手間もない。
【0048】
一方、当該カートでは電子制御方式を採っているため車速制御を外部から実施でき、カートの無人運転等の対応が可能となる。例えば、カートの呼び出しなどの遠隔操作や、カートが発信器を所持する利用者の後を所定距離、速度を維持しつつ追従するなどの制御も可能となる。また、通路にマグネットやビーコンを埋設し、人通りの多い所定のポイント間や通路が交差する地点などでは制限速度を下げるなど、制限速度の変更などを適宜行うことも可能となる。なお、その際にはカート上に、制限速度の変更信号を受ける受信部や、マグネットの通過を受けて信号を発生させる電磁誘導手段などをさらに設置する。
【0049】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0050】
たとえば、前述の実施の形態では、車速予測値VX を求めて車速制御を行う手順となっているが、加速度ΔVを別の規定値と比較しそれを超えている場合には加速度に見合ったスロットル制御量を求め、現在のスロットル開度に対して開度の加減を制御するようにしても良い。この方式によれば、前記の手順よりも簡易に車速制御を行うことができ、ECU40の負担もそれだけ軽減されることになる。
【0051】
加えて、前述のエンジン1では電動スロットルの駆動手段としてDCモータ63を用いたものを示したが、スロットル駆動手段として、ステッピングモータなどのスロットル駆動量が制御可能な他のアクチュエータを用いることも可能である。また、車速センサ10はロータ9の突起9aにより車速を検出しているが、それに代えて入力軸6に取り付けられた歯車の歯の通過を検知して車速検出を行っても良い。
【0052】
一方、ここでは作業用車両としてゴルフカートを例にとって説明したが、その適用対象はゴルフカートには限られず、ゴルフ場や庭園等の草刈りや液剤散布等に使用される自律走行作業車や草刈り機、除雪機、建設機械等の各種作業用車両にも適用可能である。
【0053】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、検出された車速に基づいて車両の現在の加速度を算出し、現在の車速と現在の加速度に基づき所定時間後の車速予測値を算出する。そして、この車速予測値と車両最高速度を規定する最高速度規定値を超えないように予め設定された制御基準速度とを比較し、車速予測値が制御基準速度より大きいとき、現在の条件として現在の加速度と現在のスロットルバルブ開度とに基づいて、この後に作業用車両が最高速度規定値を越えないようにするための目標スロットル開度を求める。そして、アクセルペダルのストローク量にかかわらず、目標スロットル開度に基づいて、バルブ駆動手段を作動させスロットルバルブの開度を制御するので、車速の急変に際し、車速が最高速度規定値に達してから車速を抑制する以前に、未然に、車速を抑制する処置を施すことができ、制御遅れの無い滑らかな最高車速制限の速度制御が可能となり、運転フィーリングの悪化を防止することができる。
また、車速予測値が、車両最高速度を規定する最高速度規定値を超えないように予め設定された制御基準速度を超えると予想されるとき、アクセルペダルのストローク量にかかわらず、目標スロットル開度による制御が行われるので、最高速度規定値に達する前に車速予測値に基づく制御を行うことが可能となり、より正確な車速予想値に基づく最高車速制限の車速制御を効率良く実行できる。
さらに、車速予測値が制御基準速度より大きいとき、現在の条件として現在の加速度と現在のスロットルバルブ開度とに基づいて、この後に作業用車両が最高速度規定値を越えないようにするための目標スロットル開度を求め、この目標スロットル開度により、スロットルバルブを制御するので、作業用車両が最高速度規定値を越えないように、現在の条件に応じて的確に目標スロットル開度を設定することができ、最高車速制限に際し、車速制御時の外乱に対して、よりプピーディで、且つスムースな速度制御を行い得る。
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果に加え、現在の加速度と現在のスロットルバルブ開度とに基づき、車速が急激に最高速度規定値を超えると判断される場合には、一旦スロットルバルブを閉じ、その後、徐々にスロットルバルブを開くように前記目標スロットル開度を算出するので、車速が急上昇するときであっても、車速が最高速度規定値に達する前に、未然に車速を抑制して、車速を迅速且つ滑らかに最高速度規定値に収束することができる効果を有する。
請求項3記載の発明によれば、上記請求項2記載の発明による効果に加えて、現在の加速度と現在のスロットルバルブ開度とに基づき、さほど急激に車速が前記最高速度規定値を超えないと判断される場合には、スロットルバルブの開度を現状から適宜減らすように目標スロットル開度を算出するので、車速の上昇が比較的緩いときは、スロットルバルブの開度を現状から適宜減じて最終的に最高速度規定値内に収束させることができ、現在の条件に応じた最適制御を行い得る効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるゴルフカートの構成を示す説明図である。
【図2】エンジンに対するインジェクタ装置と電子ガバナ装置の取り付け状態を示す説明図である。
【図3】アクセルペダルのストローク量検出機構の概略構成を示した説明図である。
【図4】図1のゴルフカートにおける電子制御系の回路構成図である。
【図5】ECUにおける速度制御に関する主要機能構成を示すブロック図である。
【図6】図1のゴルフカートにおける速度制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
10 車速センサ(車速検出手段)
19 電子ガバナ装置(出力制御手段)
23 スロットルバルブ
31 アクセルペダル
34 ポテンショメータ(アクセル開度検出手段)
40 ECU
41 CPU
53 加速度算出手段
54 車速予測手段
55 車速比較手段
56 車速制限手段
63 DCモータ(バルブ駆動手段)
V0,V0-1 車速
VR 制御基準速度
VX 車速予測値
Vmаx 最高速度規定値
ΔV 加速度
Claims (3)
- 内燃機関を搭載し、前記内燃機関のスロットルバルブをアクセルペダルのストローク量に応じて駆動させると共に、車両最高速度の制限を行い車両の車速が最高速度規定値を越えないようにスロットルバルブの開度を制御する制御装置を備え、前記内燃機関のスロットルバルブを駆動するバルブ駆動手段と、前記アクセルペダルのストローク量を検出するアクセル開度検出手段と、車両の速度を検出する車速検出手段と、検出された車速に基づいて車両の現在の加速度を算出する加速度算出手段と、現在の車速と現在の加速度に基づき所定時間後の車速予測値を算出する車速予測手段とを有する作業用車両において、
更に、前記車速予測値と車両最高速度を規定する最高速度規定値を超えないように予め設定された制御基準速度とを比較する車速比較手段と、
前記車速予測値が前記制御基準速度より大きいとき、現在の条件として現在の加速度と現在のスロットルバルブ開度とに基づいて、この後に作業用車両が最高速度規定値を越えないようにするための目標スロットル開度を求める車速制限手段と、
前記目標スロットル開度に基づき、前記アクセルペダルのストローク量にかかわらず、前記バルブ駆動手段を作動させて前記スロットルバルブの開度を制御する出力制御手段とを有することを特徴とする作業用車両。 - 前記車速制限手段は、前記現在の加速度と現在のスロットルバルブ開度とに基づき、車速が急激に前記最高速度規定値を超えると判断される場合には、一旦スロットルバルブを閉じ、その後、徐々にスロットルバルブを開くように前記目標スロットル開度を算出することを特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
- 更に、前記車速制限手段は、前記現在の加速度と現在のスロットルバルブ開度とに基づき、さほど急激に車速が前記最高速度規定値を超えないと判断される場合には、スロットルバルブの開度を現状から適宜減らすように前記目標スロットル開度を算出することを特徴とする請求項2に記載の作業用車両。
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