JP3676253B2 - 海水取水管の布設方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は海水取水管を陸側の陸揚げ地点と海側の海底着座地点との間の海底に布設する海水取水管の布設方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、海水取水管を水深200m以上の深海底に布設し、海水取水管を通して深海の海水(深層水)を揚水して産業の広い分野で利用する開発が進められている。従来、このような深海の海水を揚水するために使用する海水取水管の布設方法としては下記の方法が考えられる。
【0003】
即ち、図4(イ)に示すように、海水取水管1を搭載した布設船2を海側の海底着座地点3の海上位置3Aまで航行させ、その海上位置3Aにおいて、海水取水管1の取水口1Aを取水口支持枠4に取り付け、海水取水管1をブレーキ装置5により布設船2の収納部6から繰り出して海底着座地点3まで沈降させ、取水口支持枠4を海底着座地点3の海底に設置し、海水取水管1の取水口1Aを海底に着座させる。
【0004】
次に、図4(ロ)に示すように、布設船2を海側の前記海上位置3Aから陸側の陸揚げ地点7近くの海上位置7A(図5参照)に向けて矢印方向へ航行させると共に、布設船2より海水取水管1をブレーキ装置5で繰り出して海底に布設する。
【0005】
次に、布設船2が図5(イ)に示すように、陸側の前記海上位置7Aに到達したら、布設船2の航行を停止し、布設船2を図5(ロ)に示すように、例えば、図の時計方向へ180度Uターンさせる。次に、その位置で布設船2より海水取水管1をブレーキ装置5で繰り出し、繰り出された海水取水管1が海中に沈まないように、これを所定間隔をおいて多数のブイ8で浮上させ、海水取水管1に略U形状のループを形成させる。このような状態で、該ループの谷部分1Bを牽引ワイヤー9で陸揚げ地点7まで引張る。
【0006】
次に、陸揚げ地点7側の該ループの谷部分1Bから布設船側における海水取水管1の後端部までの海水取水管1の余長分1Cを切断して除去し、前記ブイ8を取り外して、余長分1Cを除去したループ残り部分の海上にある海水取水管1を海底に沈降させ、海水取水管1の布設を終了する。その後、海水取水管1の前記切断口に相当する海水取出口を取水ピット10に接続し、海水取水管1を通して揚水された海水を貯水できるようにする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の布設方法は、海側から陸側に布設船2を航行させて海水取水管1を布設する方法のため、最初に海底に布設される海水取水管1の取水口側は拘束のないフリーな状態にある。このため、水深の深い海底着座地点3まで海水取水管1の取水口側を沈降させるまでの間に、海水取水管が潮流の影響を受けて曲げられ、海水取水管1の取水口1Aを海底着座地点に正確に着座させることが難しい。また、海水取水管1の取水口1A側を海上から海底までほぼ垂直下方に沈降させた後、急激にカテナリー状にカーブさせるため、海水取水管1の取水口側に無理な曲げ力が作用して取水口が変形、損傷したり、海底に埋没したりし、海水の円滑な揚水が出来なくなる恐れがある。また、海水取水管1をブレーキ装置5で繰り出し、シュータで案内しながら海中に投下する際、海水取水管1がブレーキ装置5やシュータ等で大きな側圧を受けて潰れ、布設が困難になる恐れがある。更に、海水取水管1を陸揚げ地点7で陸揚げするときに、海水取水管1に余長分が生じて無駄になるという問題がある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決し、海水取水管の取水口を海底着座地点に正確に着座させることができ、海水の円滑な揚水ができ、布設中の海水取水管の潰れを防止でき、更に、海水取水管に無駄な余長分が出ないようにした海水取水管の布設方法を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の海水取水管の布設方法は、海水取水管を陸側の陸揚げ地点と海側の海底着座地点との間の海底に布設する方法において、海水取水管を搭載した布設船を前記陸揚げ地点近くの海上位置に停留させ、これより海水取水管を内部から流体で加圧しながら陸揚げ地点まで繰り出して布設した後、布設船を陸側の前記海上位置から海側の海底着座地点又はその近傍における海上位置まで航行させると共に、これより海水取水管を同様に内部から流体で加圧しながら繰り出し、海中に投下しながら海底の所定ルートに沿って布設し、海側の前記海上位置で、布設船より取り外した海水取水管の取水口側をその取水口が開口した状態で海底着座地点まで沈降させて布設し、その取水口を該地点の海底に着座させるようにしたものである。
【0010】
上記の布設方法によると、陸側から海側に布設船を航行させて海水取水管を布設する方法のため、水深の深い海底着座地点まで海水取水管の取水口側を沈降させるのは布設の最終段階のときであり、海水取水管の取水口側を海底着座地点まで沈降させるときまでに、大部分の海水取水管は既に海底の所定位置に布設され、海底との摩擦抵抗等により容易に移動しないように拘束されている。従って、海水取水管の取水口側を海底着座地点まで沈降させる間に、海水取水管が潮流によって大きく曲げられることがなくなり、海水取水管の取水口を海底着座地点に正確に着座させることができる。
【0011】
また、海水取水管の取水口側を海底着座地点まで沈降させるに伴い、海中にある海水取水管のカテナリー状のカーブが緩くなってくるので、海水取水管の取水口側には無理な曲げ力が作用せず、取水口の変形、損傷、海底への埋没を回避することができ、海水を円滑に揚水することができる。
【0012】
更に、布設船より海水取水管を内部から流体で加圧しながら繰り出して布設するので、海水取水管が布設中に潰れるようなことがなく、海水取水管の布設を円滑に行うことができるほか、海水取水管を布設する際、無駄な余長分が生じないので経済的である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面により詳細に説明する。図1は海水取水管の陸側の陸揚げ地点近傍における布設状況を示している。なお、従来の技術で説明した布設方法と同一の構成、機能を有するものは同一符号を用いている。
【0014】
先ず、海水取水管1を搭載した布設船2(埋設船、作業船を含む)を陸側の陸揚げ地点7近くの海上位置7Aまで航行させて、その位置7Aに停留させる。海水取水管1としては、例えば、プラスチック内管の外側を金属補強した可撓性を有する複合プラスチック管が使用される。次に、海水取水管1をブレーキ装置5により布設船2の収納部6から繰り出すと共に、海水取水管1の先端部である海水取出口に引込みワイヤー11を取り付けて、陸揚げ地点7側に引き込む。そして、布設船2から海上に繰り出された海水取水管1が海底に沈降しないように、多数のブイ8で浮上させた状態に保持する。
【0015】
また、海水取水管1を布設船2よりブレーキ装置5で繰り出し、シュータで案内しながら海上に延出させ、前記陸揚げ地点7まで布設して行く間、海水取水管1を内部から、例えば、工業用水、飲料水等の淡水で加圧しておく。これにより、海水取水管1にブレーキ装置5等により大きな外力が作用しても潰れて損傷するようなことがなく、円形その他の所定形状を保持することができる。海水取水管1をその内部から流体で加圧する方法としては、海水取水管1を布設船2に搭載する前に海水取水管1内に淡水を加圧充填しておいてもよいし、海水取水管1を布設船2に搭載するとき、又は、布設船2より海水取水管1を繰り出して布設中に、該管1内に前記淡水を加圧充填するようにしてもよい。なお、海水取水管1内に加圧充填する流体としては、前記淡水のほかに海水や圧縮空気を使用してもよい。また、海水取水管1を内部から加圧する圧力としては、海水取水管1の材質、内径(外径)、管肉厚、布設長、布設水深の深さ等によって異なるが、50〜300kPaの範囲で適宜設定するのが望ましい。
【0016】
海水取水管1を布設船2に搭載する前に、海水取水管1内に淡水を加圧充填する場合には、海水取水管1の製造工場内で、海水取水管1の出荷検査のために、海水取水管1の両端を密閉して、海水取水管1内に淡水を加圧充填してその気密試験を行い、試験終了後に水抜きを行わないで所定の内圧をかけた状態にしておくことにより実施してもよく、このような加圧充填方法を採用すると、手間が省けるので望ましい。
【0017】
また、海水取水管1を布設船2に搭載するとき、又は、布設船2より海水取水管1を繰り出して布設中に、該管1内に前記淡水を加圧充填する場合には、海水取水管1の先後端部のいずれか一方の側又は両側から淡水を加圧充填するようにしてもよい。
【0018】
次に、海水取水管1の先端部(海水取出口)が前記陸揚げ地点7まで到達したら、海水取水管1の繰り出しと引込みを停止し、海水取水管1の先端部側を支持固定し、海水取水管1を浮上させるブイ8を取り除き、布設船2と陸揚げ地点7間の海水取水管1を海底に沈降させて布設する。
【0019】
次に、図2に示すように、布設船2を陸側の前記海上位置7A(図1参照)から海側の海底着座地点3又はその近傍における海上位置3A(図3参照)に向けて矢印方向に航行させると共に、布設船2より海水取水管1を同様に内部から前記水で加圧しながらブレーキ装置5で繰り出し、シュータで海中に投下しながら海底の所定ルートに沿って布設する。
【0020】
次に、布設船2が、図3に示すように、海側の前記海上位置3Aに到達したら、布設船2をその位置で停留させる。そして、布設船2の収納部6より海水取水管1の取水口1A側を取り外し、布設船2上において、海水取水管1の取水口1Aを取水口支持枠4に取り付ける。次に、取水口支持枠4に取水口吊降しワイヤー12を取り付け、これを布設船2上に設けたウインチ等の昇降機13に接続し、昇降機13を駆動して、該ワイヤー12を下降させ、前記海上位置3Aで、取水口支持枠4、即ち、取水口1Aを海中に入水させ、海面直下の海中に位置させる。そこで、ダイバーにより、その海中で海水取水管1の取水口1Aを開口させ、海水取水管1内に加圧充填されていた前記淡水を海中に放出させながら、該ワイヤー12を下降させ、取水口1Aが開口した状態で、取水口支持枠4、即ち、海水取水管1の取水口側を海底着座地点3に向け徐々に沈降させて海底に設置する。
【0021】
なお、海水取水管1が海中を沈降するに伴い、海水取水管1に外部から水圧が加わり、水深に比例して大きくなるが、海水取水管1には開口した取水口1Aから同水圧の海水が入り込んで、海水取水管1にその外水圧に等しい内水圧が加わるので、海水取水管1には内外力が作用しない状態になる。従って、海水取水管1が海水の水圧によって潰されるようなことがない。
【0022】
このようにして、海水取水管1の取水口1Aを該地点3の海底に着座させることにより、海水取水管1の布設を終了する。このような布設方法により、海水取水管1の取水口1Aを海底着座地点3の海底に正確に着座させることが可能になる。また、海水取水管1の取水口1A側を海底着座地点3まで沈降させるに伴い、海中にある海水取水管1のカテナリー状のカーブが緩くなってくるので、海水取水管1の取水口1A側には無理な曲げ力が作用せず、取水口1Aの変形、損傷、海底への埋没を回避することができ、海水を円滑に揚水することができる。更に、布設船2より海水取水管1を内部から流体で加圧しながら繰り出して布設するので、海水取水管1が布設中にブレーキ装置5やシュータ等で大きな側圧を受けても潰れるようなことがなく、海水取水管1の布設を円滑に行うことができる。
【0023】
なお、前記海水取水管1に取水口1Aを開口する時期は、布設船2の収納部6より海水取水管1の取水口1A側を取り外してから、海水取水管1の取水口1Aを取り付けた取水口支持枠4を海面直下の海中に沈降させるまでの間で行ってもよい。ただし、海水取水管内に加圧充填される流体が淡水や海水のような液体の場合には、海水取水管1の取水口1Aが海中に入水する前に、海水取水管1内に加圧充填された淡水が大気中に勢いよく放出されて作業性を低下させる恐れがあるので、前記したように、取水口1Aが海面直下の海中に入水した時点で取水口1Aを開口する方が望ましい。
【0024】
また、海水取水管1の取水口1Aを海上位置3Aから海底着座地点3まで沈降、着座させる間、布設船2を図3の右側、即ち、陸揚げ地点7から遠ざかる方向に所定距離航行させるようにすると、取水口支持枠4の沈降をより円滑、容易に行うことができるので好ましい。
【0025】
更に、前記取水口吊降しワイヤー12は、取水口支持枠4を海底に設置した後に取り外してもよいが、取水口支持枠4から取り外さずに、該ワイヤーの上端にブイ(図示せず)を付けて、該上端を海上に浮かしておき、取水口1Aの着座位置確認の標識として利用するようにしてもよい。そうすると、海水取水管布設後に、取水口支持枠4を修理又は取り換える等のメンテナンスが容易になるので好ましい。
【0026】
このようにして、海水取水管1の布設が終了したら、図1に示すように、海水取水管1の前記陸揚げ地点7に設置した取水ピット10に、海水取水管1の海水取出口を接続して、揚水ポンプ(図示せず)で海水取水管1の取水口1Aより該管を通して揚水した海水を貯水できるようにする。なお、前記海水取出口の取水ピット10への接続は、前記海水取水管1の布設終了後ではなく、陸揚げ地点7への海水取水管1の布設終了か、若しくは、陸揚げ地点7側から海底着座地点3側への海水取水管1の布設中に行ってもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、海水取水管を陸側の陸揚げ地点と海側の海底着座地点との間の海底に布設する方法において、海水取水管を搭載した布設船を前記陸揚げ地点近くの海上位置に停留させ、これより海水取水管を内部から流体で加圧しながら陸揚げ地点まで繰り出して布設した後、布設船を陸側の前記海上位置から海側の海底着座地点又はその近傍における海上位置まで航行させると共に、これより海水取水管を同様に内部から流体で加圧しながら繰り出し、海中に投下しながら海底の所定ルートに沿って布設し、海側の前記海上位置で、布設船より取り外した海水取水管の取水口側をその取水口が開口した状態で海底着座地点まで沈降させて布設し、その取水口を該地点の海底に着座させるようにしたので、海水取水管の取水口側を海底着座地点まで沈降させる間に、海水取水管が潮流によって大きく曲げられることがなくなり、海水取水管の取水口を海底着座地点に正確に着座させることができる。
【0028】
また、海水取水管の取水口側を海底着座地点まで沈降させるに伴い、海中にある海水取水管のカテナリー状のカーブが緩くなってくるので、海水取水管の取水口側には無理な曲げ力が作用せず、取水口の変形、損傷、海底への埋没を回避することができ、海水を円滑に揚水することができる。
【0029】
更に、布設船より海水取水管を内部から流体で加圧しながら繰り出して布設するので、海水取水管が布設中に潰れるようなことがなく、海水取水管の布設を円滑に行うことができるほか、海水取水管を布設する際、無駄な余長分が生じないので経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、海水取水管を陸側の陸揚げ地点近傍に布設する状態の説明図である。
【図2】上記の布設方法において、海水取水管を陸揚げ地点側から海側の海底着座地点に向けて布設する状態の説明図である。
【図3】上記の布設方法において、海水取水管の取水口を取り付けた取水口支持枠を海底着座地点まで沈降させ、取水口を海底に着座させる状態の説明図である。
【図4】従来の海水取水管の布設方法を示すもので、(イ)は海底着座地点における海水取水管の布設状態の説明図、(ロ)は海底着座地点から陸揚げ地点に向けて海水取水管を海水取水管を布設する状態の説明図である。
【図5】従来の布設方法において、陸揚げ地点近傍における海水取水管の布設状態を示すもので、(イ)は陸揚げ地点近傍まで布設船を航行させた状態の概略平面図、(ロ)は(イ)の状態から布設船を180度Uターンさせて、海水取水管を陸揚げ地点まで布設する状態の概略平面図である。
【符号の説明】
1 海水取水管
1A 取水口
1B 谷部分
1C 余長分
2 布設船
3 海底着座地点
3A 海上位置
4 取水口支持枠
5 ブレーキ装置
6 収納部
7 陸揚げ地点
7A 海上位置
8 ブイ
9 牽引ワイヤー
10 取水ピット
11 引込みワイヤー
12 取水口吊降しワイヤー
13 昇降機
Claims (1)
- 海水取水管を陸側の陸揚げ地点と海側の海底着座地点との間の海底に布設する海水取水管の布設方法において、海水取水管を搭載した布設船を前記陸揚げ地点近くの海上位置に停留させ、これより海水取水管を内部から流体で加圧しながら陸揚げ地点まで繰り出して布設した後、布設船を陸側の前記海上位置から海側の海底着座地点又はその近傍における海上位置まで航行させると共に、これより海水取水管を同様に内部から流体で加圧しながら繰り出し、海中に投下しながら海底の所定ルートに沿って布設し、海側の前記海上位置で、布設船より取り外した海水取水管の取水口側をその取水口が開口した状態で海底着座地点まで沈降させて布設し、その取水口を該地点の海底に着座させることを特徴とする海水取水管の布設方法。
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