JP3675161B2 - 車両用シート空調装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートへ空調空気を供給する車両用シート空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、実開昭59−164552号公報に記載された「車両用空調シート」がある。この空調シートは、シート内部にエアチャンバを具備し、フロントA/Cよりシート用ダクトを通ってエアチャンバに供給された空調風をシート表面より吹き出すように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の従来技術では、フロントA/Cで暖房を開始するまで(水温が上昇して送風を開始するまで)シート暖房を行うことができない。そこで、シート暖房の熱源として電気ヒータを使用することが考えられるが、シートヒータとして所望の暖房感を得るためには高能力の電気ヒータが必要となる。この場合、コストが高くなるとともに、車両側の発電能力(オルタネータの能力)の点で問題が生じる。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、低能力の電気ヒータでも即効暖房が可能な車両用シート空調装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の手段)
本発明の車両用シート空調装置は、空調装置よりシートへ空気を送る送風通路と、この送風通路を通じてシートへ強制送風するシート用送風機と、送風通路内に配された電気ヒータと、シート用送風機および電気ヒータの空気下流側で送風通路より分岐してリヤ吹出口に通じるリヤ送風路と、シートへ送風される空気量とリヤ吹出口より吹き出される空気量との割合を調節できる配風用ドアと、シート用送風機および電気ヒータの空気上流側で送風通路より分岐して通風口に通じるリヤ通風路と、このリヤ通風路を開閉できる開閉ドアを具備している。
この構成によれば、電気ヒータで暖めた空気をリヤ送風路へ流し、リヤ吹出口より車室内へ吹き出された空気を通風口より吸い込んで再び電気ヒータで暖めることが可能である。これにより、空調装置で温風が得られない場合(送風停止状態)でも、電気ヒータで再加熱した空気をシート用送風機によりシートへ送風することでシート暖房を実施することができる。
【0005】
(請求項2の手段)
配風用ドアが少なくともリヤ吹出口に通じる送風経路を確保し、且つ開閉ドアがリヤ通風路を開いた状態で、シート用送風機をオンすることにより、電気ヒータを通ってリヤ吹出口より吹き出された空気を通風口より吸い込んで再度電気ヒータに通す循環モードが設定されている。この循環モードを実施する際に電気ヒータをオンすることにより、シート用送風機を通じて循環する空気を電気ヒータで再加熱することができる。
また、空調装置より供給される温風によるシート温度が乗員にとって暑く感じられる時(例えば車室内温度が暖房設定温度に略等しい定常時)等には、電気ヒータをオフした状態で循環モードを実施することにより、シート温度の上昇を抑制できるため、シート温度が暑過ぎることによる乗員の不快感を低減できる。
(請求項3の手段)
請求項1または2に記載した車両用シート空調装置において、送風通路は、車両の床面に沿って配されるシート用送風ダクトによって形成されることを特徴とする。
(請求項4の手段)
請求項1または2に記載した車両用シート空調装置において、配風用ドアは、電気ヒータの下流側に配置され、シートに通じる通路を閉じることができるシート閉位置と、リヤ送風路を閉じることができるリヤ閉位置との間で回動可能に設けられ、何方か一方を選択して閉じることができる切替ドアであることを特徴とする。
(請求項5の手段)
請求項3に記載した車両用シート空調装置において、シート用送風ダクトは、空調装置から後席乗員へ空調風を供給するリヤフットダクトまたはリヤベントダクトを利用して設けられることを特徴とする。
(請求項6の手段)
請求項1または2に記載した車両用シート空調装置において、リヤ通風路は、空調装置から後席乗員の足元へ空調風を供給するリヤフットダクトを利用して設けられることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の車両用シート空調装置を図面に基づいて説明する。
図1は車両用シート空調装置の構成を模式的に示した断面図である。
本実施形態のシート空調装置1は、例えばフロントシート2の下部に配置されるシート送風ユニット3と、既存の空調装置であるフロント空調ユニット(下述する)からシート送風ユニット3へ空調空気を送るためのシート用送風ダクト4等を備える。
フロント空調ユニットは、内部に冷風通路5と温風通路6が形成されたA/Cケース7と、このA/Cケース7内で冷風通路5と温風通路6とを切り替える切替ドア8とを有している。なお、フロント空調ユニットは、車室内を暖房するための加熱手段である周知のヒータコア(図示しない)を具備し、このヒータコアの熱源としてエンジン冷却水を使用している。
【0007】
A/Cケース7には、温風通路6より前席乗員の足元へ温風を吹き出すためのフロントフット吹出口9と、シート用送風ダクト4が接続される接続口10とが設けられている。この接続口10は、切替ドア8によって選択された一方の通路(冷風通路5または温風通路6)と連通することができる。
切替ドア8は、冷風通路5を遮断する位置(図1の実線位置)と温風通路6を遮断する位置(図1の一点鎖線位置)との間で回動可能に設けられ、図示しないサーボモータ等のアクチュエータにより駆動される。
シート用送風ダクト4は、例えばフロント空調ユニットから後席乗員の足元へ温風を供給する既存のリヤフットダクトを利用したものであり、車両の床面に沿って配されている。
【0008】
シート送風ユニット3は、ケース本体(下述する)、シート用送風機11、電気ヒータ12(例えばPTCヒータ12)、切替ドア13、開閉ドア14等より構成され、シート2の下部に一体的に取り付けられている。
ケース本体は、シート用送風機11のファンケース15、このファンケース15より後席側へ延設された第1リヤ送風ダクト16、シート用送風ダクト4に接続されて後席側へ延設された第2リヤ送風ダクト17、ファンケース15と第2リヤ送風ダクト17とを連結する可動ダクト18より構成されている。
ファンケース15は、シート用送風機11のスクロールケーシングを形成するもので、シート用送風機11の吸込口20を通じて可動ダクト18と連通し、シート用送風機11の吐出側に形成された送風口19を通じてシート2に接続されている。
第1リヤ送風ダクト16は、その空気下流端に後席乗員の足元へ空調風を吹き出すための第1リヤ吹出口16aが設けられている。
【0009】
第2リヤ送風ダクト17は、シート用送風ダクト4と共に既存のリヤフットダクトを構成するもので、その空気下流端に後席乗員の足元へ空調風を吹き出すための第2リヤ吹出口17aが設けられている。この第2リヤ吹出口17aは、図1に示すように、第1リヤ吹出口16aの近傍に開口している。
可動ダクト18には、シート2に固定されたファンケース15がシート2の位置調整によって移動するため、そのファンケース15の移動に対応できるように蛇腹部18aが設けられている。
【0010】
シート用送風機11は、ファンケース15の内部に配された遠心送風式のファン11aと、このファン11aを回転駆動するモータ11bから成り、吸込口20より吸い込んだ空気を強制送風する。
電気ヒータ12は、フロント空調ユニットで十分な温風が得られない場合(例えば、ヒータコアの熱源であるエンジン冷却水の温度が低い時)等に通電(ON)することにより、電気ヒータ12を通過する送風空気を加熱することができる。なお、この電気ヒータ12は、シート用送風機11の空気上流側(吸込口20側)に配置しても良い。
切替ドア13は、送風口19を閉じるシート閉位置と第1リヤ送風ダクト16の入口を閉じるリヤ閉位置との間で回動可能に設けられ、図示しないサーボモータ等のアクチュエータにより駆動される。また、切替ドア13の開度によってシート2へ送風される空気量と第1リヤ吹出口16aより吹き出される空気量との割合を調節することができる。
開閉ドア14は、第2リヤ送風ダクト17内に具備され、第2リヤ送風ダクト17を閉じる閉位置と第2リヤ送風ダクト17を開く開位置との間で回動可能に設けられ、図示しないサーボモータ等のアクチュエータにより駆動される。
【0011】
シート空調に係わる制御(切替ドア8、シート用送風機11、電気ヒータ12、切替ドア13、開閉ドア14等の制御)は、例えばA/C操作パネル21に設けられたシート空調スイッチ22がONされることにより、ECU23を通じて実行される(図2参照)。
ECU23は、マイクロコンピュータを内蔵する周知の電子制御装置であり、図2に示すように、A/C操作パネル21でのスイッチ操作に基づいて出力される操作信号、及び各種センサ(内気センサ24、外気センサ25、日射センサ26、水温センサ27等)のセンサ信号等を入力し、所定の制御プログラムに従ってシート空調制御に係わる各種の演算処理を行い、その演算処理により決定された制御信号を各空調機器のアクチュエータに出力している。
【0012】
シート2は、シートバック2Aとシートクッション2Bより構成され、それぞれ通気性を有するシート表面材2Cにより覆われている。また、シートバック2Aとシートクッション2Bの内部には、シート送風ユニット3の送風口19が接続される配風用ダクト2aと、その配風用ダクト2aより分岐してシートバック2A及びシートクッション2Bの表面へ伸びる複数の送風出口2bとが設けられている。これにより、シート送風ユニット3より供給された空調空気は、配風用ダクト2aを通って各送風出口2bへ分配され、各送風出口2bよりシート表面材2Cを通過してシート2に着座する乗員へ吹き付けられる。
【0013】
次に、シート暖房の作動について説明する。
シート空調スイッチ22をONしてシート暖房を開始した時に、ブロワ遅動制御によりフロント空調ユニットで送風を停止している間は、電気ヒータ12を熱源としてシート用送風機11をONすることによりシート暖房を実施する。この時、シート送風ユニット3の切替ドア13をシート閉位置に駆動し、開閉ドア14を開位置に駆動すると、電気ヒータ12で加熱されて第1リヤ吹出口16aより吹き出された空気を第2リヤ吹出口17aより吸い込んで再度電気ヒータ12で加熱することができる(本発明の循環モード)。
この循環モードを所定時間実施した後、切替ドア13を中立位置(中間開度)に駆動してシート2への送風を開始する。これにより、フロント空調ユニットで送風を停止している時でも、シート暖房の即効性を得ることができる。
【0014】
水温の上昇によってフロント空調ユニットで送風が開始されると、フロント空調ユニットより供給される温風をシート2へ送風することでシート暖房を行うことが可能となる。なお、フロント空調ユニットでは、切替ドア8によって温風通路6とシート用送風ダクト4とが連通して、温風通路6よりシート用送風ダクト4に温風が供給される。
この時、シート送風ユニット3では、フロント空調ユニットより供給される温風の温度や室内温度(またはシート表面温度)等に基づいて切替ドア13の開度および開閉ドア14の開閉位置を制御することができる。
【0015】
ウォームアップから室内温度が上昇して安定してくると、シート2の表面から吹き出される温風(電気ヒータ12をONしている場合)は乗員にとって暑過ぎて不快に感じる場合がある。そこで、室内温度が設定温度に略等しくなる定常時には、電気ヒータ12をOFFすることにより、シート2の過熱を防止することができる。但し、定常時に後席乗員への暖房を行う場合は、切替ドア13を中立位置に駆動して電気ヒータ12をONすることにより、シート暖房と後席乗員への暖房を両立させることができる。
また、開閉ドア14を開位置に駆動して第2リヤ吹出口17aより車室内空気を吸い込み、フロント空調ユニットから供給される温風と混合してシート2へ供給することにより、最適なシート温度を得ることも可能である。
【0016】
(本実施形態の効果)
本実施形態のシート空調装置1は、ウォームアップ時にフロント空調ユニットで送風を停止していても、電気ヒータ12を熱源としてシート暖房を行うことができ、且つ電気ヒータ12で加熱された空気を第1リヤ吹出口16aより吹き出した後、第2リヤ吹出口17aより吸い込んで再度電気ヒータ12で加熱することにより、シート暖房の即効性を高めることができる。この場合、高能力の電気ヒータ12を使用する必要がないため、コストを低く抑えることができ、且つオルタネータに対する負荷を低減できる。
【0017】
(変形例)
上記の実施形態では、シート送風ユニット3をシート2と一体に組み付けて構成しているが、図3に示すように、シート送風ユニット3をシート2から離して床置きタイプとして構成しても良い。
シート用送風ダクト4として既存のリヤフットダクトを利用しているが、後席乗員へ冷風を供給するためのリヤベントダクトを利用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用シート空調装置の構成を模式的に示した断面図である。
【図2】シート空調装置の制御ブロック図である。
【図3】車両用シート空調装置の構成を模式的に示した断面図である(変形例)。
【符号の説明】
1 車両用シート空調装置
2 シート
4 シート用送風ダクト(送風通路)
11 シート用送風機
12 電気ヒータ
13 切替ドア(配風用ドア)
14 開閉ドア
16 第1リヤ送風ダクト(リヤ送風路)
16a 第1リヤ吹出口(リヤ吹出口)
17 第2リヤ送風ダクト(リヤ通風路)
17a 第2リヤ吹出口(通風口)

Claims (6)

  1. 車室内を空調する空調装置よりシートへ空気を送る送風通路と、
    この送風通路を通じて前記シートへ強制送風するシート用送風機と、
    前記送風通路内に配された電気ヒータと、
    後席の乗員へ空調風を吹き出すためのリヤ吹出口を有し、前記シート用送風機および前記電気ヒータの空気下流側で前記送風通路より分岐して前記リヤ吹出口に通じるリヤ送風路と、
    前記電気ヒータを通過した後、前記シートへ送風される空気量と前記リヤ送風路を通って前記リヤ吹出口より吹き出される空気量との割合を調節できる配風用ドアと、
    前記リヤ吹出口の近傍に開口する通風口を有し、前記シート用送風機および前記電気ヒータの空気上流側で前記送風通路より分岐して前記通風口に通じるリヤ通風路と、
    このリヤ通風路を開閉できる開閉ドアとを備えたことを特徴とする車両用シート空調装置。
  2. 前記配風用ドアが少なくとも前記リヤ吹出口に通じる送風経路を確保し、且つ前記開閉ドアが前記リヤ通風路を開いた状態で、前記シート用送風機をオンすることにより、前記電気ヒータを通って前記リヤ吹出口より吹き出された空気を前記通風口より吸い込んで、再度前記電気ヒータに通す循環モードが設定されていることを特徴とする請求項1に記載した車両用シート空調装置。
  3. 前記送風通路は、車両の床面に沿って配されるシート用送風ダクトによって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載した車両用シート空調装置。
  4. 前記配風用ドアは、前記電気ヒータの下流側に配置され、前記シートに通じる通路を閉じることができるシート閉位置と、前記リヤ送風路を閉じることができるリヤ閉位置との間で回動可能に設けられ、何方か一方を選択して閉じることができる切替ドアであることを特徴とする請求項1または2に記載した車両用シート空調装置。
  5. 前記シート用送風ダクトは、前記空調装置から後席乗員へ空調風を供給するリヤフットダクトまたはリヤベントダクトを利用して設けられることを特徴とする請求項3に記載した車両用シート空調装置。
  6. 前記リヤ通風路は、前記空調装置から後席乗員の足元へ空調風を供給するリヤフットダクトを利用して設けられることを特徴とする請求項1または2に記載した車両用シート空調装置。
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