JP3674987B2 - 抗菌脱臭ボックス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は二酸化チタンの薄膜からなる光触媒反応による光触媒反応を利用した抗菌脱臭ボックスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、二酸化チタンTiO2 に代表される光半導体の微粒子による光触媒作用、特にその強い酸化触媒作用に高い注目が集められている。
即ち、二酸化チタン等の光半導性を有する粒子状物質をそのバンドキャップエネルギ以上の光(二酸化チタンの場合は400nm以下の光、即ち、紫外線)で照射すると、価電子帯の電子が光励起されて伝導帯に移り、伝導帯には自由電子が生成すると共に、価電子帯には正の電荷を帯びた粒子(正孔)が生成する。これらの正孔と電子とは半導体粒子内部を運動し、時間の経過と共に再結合して消滅する。しかしその粒子表面に空気または水、或いはそれらの正孔や電子よりもエネルギの低い空順位を有する化合物やイオンが存在すると、その粒子表面を通してそれらの正孔と電子が化合物やイオンに移動し、その結果、正孔は粒子表面に接触する化合物やイオンを直接酸化し、或いは活性酸素の1つである水酸基ラジカルを生成する。
【0003】
また、電子による還元反応は主に酸素の還元であり、電子が付加された酸化性のある酸素種が生成される。こうして、光半導体微粒子は光が照射されることによって酸化性の活性表面を形成し、有機化合物の分解等に触媒として作用する(「季刊 化学総説 『光が関わる触媒化学』No.23,1994)。
このような光半導体微粒子による酸化触媒作用は、光半導体の中でも二酸化チタンが特に高い。また、二酸化チタンは安定性や安全性にも優れている。そして、この二酸化チタンの微粉末を薄膜として基体表面に担持して光触媒を形成し、紫外線照射時のその高い酸化力を有機化合物等の分解に利用した種々の応用が既に知られている。
【0004】
例えば、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒をコーティングした中空のガラスビーズは海上に流出した原油の分解剤として知られている。すなわち、ガラスビーズ表面に付着した原油は太陽光中の紫外線によって活性化された二酸化チタンの強い酸化触媒作用によって分解される。
また最近では、室内空気の脱臭または消臭、殺菌(抗菌)、タバコのヤニや油膜等の汚れの分解にもその応用が試みられ、自然光または蛍光灯の光に含まれる紫外線を利用してその光触媒を活性化させ、それの酸触媒反応によって接触するメルカブタン等の臭気化合物、或いはタバコのヤニ等の有機物を分解し、または、細菌等の微生物を死滅させ、またはその繁殖を抑えるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、二酸化チタン(TiO2 )の薄膜を活性化させる紫外線源として、太陽光や蛍光灯に頼っていた。このため、太陽で照射されていない所では利用できないとか、大きな蛍光灯を必要とした。
本発明はかかる不都合を解消するもので、手軽に利用できかつ効率的に紫外線を二酸化チタン(TiO2 )の薄膜に照射できる抗菌脱臭ボックスを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の抗菌脱臭ボックスは、内部に収納室が形成されたボックス本体と、該ボックス本体と開閉可能な蓋と、該ボックス本体の該収納室を区画する内面の少なくとも一部に形成された二酸化チタンの薄膜と、該ボックス本体に保持され該二酸化チタンの薄膜に、波長320nm以下の遠紫外線を含まず、波長360〜400nmの紫外線を主に放射するpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体からなるチップと、このチップを封止すると共に放射された光に指向性を与えるモールドレンズとを主要部として備える発光ダイオ−ドと、を具備し、該収納室内を抗菌脱臭して清潔としたことを特徴とする。すなわち、本発明の抗菌脱臭ボックスは、その収納室を区画する内面に光触媒として機能する二酸化チタンの薄膜をもち、発光ダイオ−ドから照射される紫外線を受けて二酸化チタンの薄膜が活性化され、抗菌、脱臭作用を行う。このためボックス内は常に無臭で清潔に保たれる。また、発光ダイオードは極めて小型であるため、収納スペースを少なくすることも、ボックス自体を大きくする必要がない。
【0007】
本発明の抗菌脱臭ボックスはボックス本体と蓋と二酸化チタンの薄膜と発光ダイオ−ドとから構成されている。ボックス本体は通常の収納箱で、内部に収納室をもつ。具体的には、薬箱、クーラーボックス、密閉軟質樹脂容器、自動車に備えられるコンソールボックス等を挙げることができる。なお、蓋は引出しのように開口箱に押し込まれて、開口箱の天井が蓋の機能をするものでもよい。
【0008】
二酸化チタンの薄膜は、ボックス本体の収納室を区画する内面の少なくとも一部に形成される。内面の全面を二酸化チタンの薄膜で覆うこともできる。
この二酸化チタンの薄膜は光触媒となるものである。この二酸化チタンの薄膜を形成する二酸化チタンの粒子径は、十分に小さいほど「量子サイズ効果」等によって光触媒作用が高い。そのため、その薄膜は、二酸化チタンのコロイドを基体表面に塗布し焼成する等の方法によって、一般に0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下の膜厚の透明な薄膜として、またはそのような薄膜を多層化した薄膜として形成するのが好ましい。また、物理的蒸着法(PVD)や化学的蒸着法(CVD)等の方法によって形成することもできる。
【0009】
発光ダイオ−ドは、紫外線を放出できるもので、具体的にはpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体で構成することができる。このpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体は、波長360〜400nmの光(電磁波)、即ち、紫外線を放射する。
この発光ダイオードは、ボックス本体に保持され、収納室を区画する内面の二酸化チタン薄膜上に紫外線を照射する。この発光ダイオードは、ボックス本体の蓋の内面に固定し、蓋と対向する収納室の底の内面に形成された二酸化チタン薄膜上に紫外線を照射するものでもよい。また、蓋が開けば、発光ダイオードに供給される電気を切り、蓋が閉じれは電気が入れられる形態のものでもよい。なお、発光ダイオードに供給される電気は、ボックス本体に収納保持されたバッテリーから供給しても、電灯線から電気を引くこともできる。
【0010】
【作用】
本発明の抗菌脱臭ボックスは、波長360〜400nmの光(紫外線)を主に放射する発光ダイオ−ドを備え、この発光ダイオードから照射される紫外線により光触媒を形成する二酸化チタンの薄膜が活性化され、抗菌、脱臭作用を行う。発光ダイオ−ドは非常に小さな発光素子であると共に、作動電圧が小さいため、乾電池等によっても発光させることができる。そのため、発光ダイオ−ドは設置のための空間を多く必要としないので、ボックス本体に容易に収納保持でき、収納空間を狭くすることもない。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
(第一実施例)
図1は本発明の第一実施例の抗菌脱臭ボックス1の断面図である。この抗菌脱臭ボックス1は、合成樹脂で形成された上端開口のボックス本体11と、このボックス本体11に開閉自在に保持され合成樹皮で形成された蓋12と、このボックス本体11の収納室10を区画する内面全面に形成された二酸化チタンの薄膜2と発光ダイオ−ド3とから構成されている。
【0012】
蓋12には天井板13が設けられ、蓋12と天井板13との間に電池室14が形成され、その空間に電池が収納される。
ボックス本体11の収納室10を区画する内面全面に形成された二酸化チタンの薄膜2は二酸化チタンのコロイドを顔料として含む無機塗料を塗布して形成したものである。なお、この二酸化チタンのコロイドは、通常の顔料とは異なり、二酸化チタン表面に不活性化皮膜を持たず、直接二酸化チタン表面が表出している。
【0013】
発光ダイオ−ド3は、この天井板13に固定保持され、収納室10を照射する。また、蓋12には、発光ダイオード3に送る電流を断続するスイッチ15が設けられている。なお、スイッチ15により、蓋12の開時に発光ダイオード3は消灯し、蓋12の閉時に発光ダイオード3は点灯する。
発光ダイオード3はpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体からなる光を放射するチップと、このチップを封止すると共に放射された光に指向性を与えるモ−ルドレンズとを主要部として備える小さな発光素子である。
【0014】
なお、発光ダイオ−ド3は、人体に有害な紫外線、即ち、320nm以下の波長の遠紫外線(UV−B、UV−C)を放射しない。また、理想として、波長360〜400nmのスペクトル範囲の光のみ放射するものであることが、発光効率及び電力消費の点で好ましい。しかし、実際には、発光ダイオ−ドの放射する光は、半導体レーザの場合とは異なり、一般に少なくとも50nmのスペクトル範囲を有するため、波長360〜400nmのみの光を放射する発光ダイオ−ドを得ることは困難である。そのため、ここで使用する発光ダイオ−ド3としては、波長320nm以下の遠紫外線を含まず、かつ波長360〜400nmの紫外線を十分に含む光(電磁波)を放射するものであれば、どのような発光ダイオ−ドでも使用することができる。
【0015】
そして、このような発光ダイオ−ド3によれば、人体に無害な抗菌脱臭ボックスを形成することができ、日常生活における用途にも安全に使用することができる。
【0016】
これに対して、可視光である400nm以上の波長の光は人体に無害であるため、このような可視光を含む光を放射する発光ダイオ−ドは、何等問題なく使用することができる。また、そのような発光ダイオ−ド3を使用することによって、その発光ダイオ−ド3が作動していることを容易に確認することができ、更に、その可視光が明彩色である場合には照明や表示としての効果を得ることができる。ただし、400nm以下の波長の光(紫外線)であっても、380nm程度までの光はぼんやりとした背景(暗い紫色)を呈するため、発光ダイオ−ド3が400nm以下の波長の光のみ放射する場合でも、その光は完全なブラック光ではなく、一般に視認可能なものである。
【0017】
本実施例の抗菌脱臭ボックス1は、電池室14内に電池を収納し、スイッチ15をオンにすることにより、すなわち蓋12を閉めることにより発光ダイオ−ド3が発光し、波長320nm以下の遠紫外線を含まない、波長360〜400nmの紫外線を照射する。この紫外線は収納室10を直進し収納室10を区画する内面に設けられた二酸化チタンの薄膜2を照射する。そして紫外線により二酸化チタンの薄膜2には酸化性の活性表面が形成される。そしてこの活性表面により収納室10内に存在する臭い成分、微生物を分解除去する。これにより、収納室10は常に清潔に保たれ、気持ち良く使用できる。
【0018】
なお、第一実施例の抗菌脱臭ボックスは薬箱、あるいはクーラーボックスとして使用できる。
(第二実施例)
図2は本発明の第二実施例の抗菌脱臭ボックスであるコンソールボックスを示す。このコンソールボックスは図2に示すように、自動車の室内の中央部に設けられた本体4とこの本体4に揺動可能に保持された蓋5とから構成されている。本体4には、上面開口の収納室41が形成されている。そしてこの収納室41を区画する内壁面に二酸化チタンの薄膜6が形成されている。この二酸化チタンの薄膜6は二酸化チタンのコロイドを顔料として含む無機塗料を塗布して形成したものである。
【0019】
蓋5の内側には発光ダイオード7が固定保持され、紫外線を収納室41内に照射できるようになっている。発光ダイオード7はpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体からなる光を放射するチップと、このチップを封止すると共に放射された光に指向性を与えるモ−ルドレンズとを主要部として備える小さな発光素子である。この発光ダイオ−ド7は、波長360〜400nmの光(電磁波)を放射する。
【0020】
蓋5の発光ダイオード7は、自動車のバッテリー(図示せず)から電気が供給されて発光する。そして波長360〜400nmを主とする紫外線を収納室41を区画する内面に設けられた二酸化チタンの薄膜6を照射する。そして内壁面に形成された二酸化チタンの薄膜6が紫外線により活性化され、酸化性の活性表面が形成される。そしてこの活性表面により収納室41内に存在する臭い成分、微生物を分解除去する。これにより、収納室41は常に清潔に保たれ、気持ち良く使用できる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の抗菌脱臭ボックスは、波長320nm以下の遠紫外線を含まず、波長360〜400nmの光(紫外線)を主に放射する発光ダイオ−ドを備え、この発光ダイオードから照射される紫外線により光触媒を形成する二酸化チタンの薄膜が活性化され、抗菌、脱臭作用を行う。このため収納室は常に清潔に保たれる。
【0022】
発光ダイオ−ドは非常に小さな発光素子であるため、発光ダイオ−ドを設置するための多くの空間を必要としない。このため抗菌脱臭ボックスの収納空間を広くする事ができる。さらには、蓋の開時に消灯し、閉時に点灯する発光ダイオードを用いることにより、消費電力の少ない抗菌脱臭ボックスとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の第一実施例の抗菌脱臭ボックスの全体断面図、及び、ボックス本体と蓋との接触部の拡大断面図を示す。
【図2】 図2は本発明の第二実施例の抗菌脱臭ボックスであるコンソールボックスの蓋部が開口した全体斜視図を示す。
【符号の説明】
1:抗菌脱臭ボックス 2:二酸化チタンの薄膜
3:発光ダイオード 4:本体 5:蓋
6:二酸化チタンの薄膜 7:発光ダイオード 10:収納室
11:ボックス本体 12:蓋 13:天井板 14:電池室 15:スイッチ
41:収納室
Claims (4)
- 内部に収納室が形成されたボックス本体と、
該ボックス本体と開閉可能な蓋と、
該ボックス本体の該収納室を区画する内面の少なくとも一部に形成された二酸化チタンの薄膜と、
該ボックス本体に保持され該二酸化チタンの薄膜に、波長320nm以下の遠紫外線を含まず、波長360〜400nmの紫外線を主に放射するpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体からなるチップと、このチップを封止すると共に放射された光に指向性を与えるモールドレンズとを主要部として備える発光ダイオ−ドと、
を具備し、該収納室内を抗菌脱臭して清潔としたことを特徴とする抗菌脱臭ボックス。 - 前記二酸化チタンの薄膜は、0.3μm以下の膜厚の透明な薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌脱臭ボックス。
- 前記発光ダイオ−ドは、可視光を含む光を放射することを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌脱臭ボックス。
- 前記発光ダイオードは、前記蓋の内部に取付けられ、前記蓋の開時に消灯し、閉時に点灯することを特徴とする請求項1、2または3に記載の抗菌脱臭ボックス。
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