JP3674775B2 - 自律直進装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動田植機など農業作業車その他の車両を自律直進させる自律直進装置に関し、特に、車両を自律直進させるために必要な車両の目標方位を教習行程で取得する際に、取得した目標方位が往路又は復路の内のいずれの目標方位であるかを自動的に判定する自律直進装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動田植機などの農業作業車は、矩形などの一定区画に仕切られた田畑内を往復して農作業をすることが多い。田畑内を往復する農作業の代表的な例は、自動田植機による稲苗の植え付けである。例えば、自動田植機で図2に示すほぼ長方形の水田50に稲の苗を植え付けるときは、1回の往路で水田の端52から他方の端53まで畦道51に沿って直進する間に、6条の列に苗を植え付ける。列の間隔は例えば30cmであり、各条における苗の距離も約30cmである。そして、往路を進行し、端53に近づくと、その端53の手前で180°回転し、その端53から端52までを復路として直進する。復路でも、往路と同様に、30cm程度の間隔の6条の列に苗を植え付ける。
【0003】
自律直進装置搭載の車両は、走行モードとして、主に、目標方位を決定するための操縦者の操舵による教習走行モード(ティーチングモード)と、教習走行モードで得られた目標方位と車両の現状の方位とから操舵方向の制御を行いながら車両が自律的に走行する自律走行モードと、教習走行モードおよび自律走行モード以外の待機モードとを有する。
【0004】
この自動田植機による植付けにおいては、例えば、畦道51に近い側の最初の2往復を教習行程とし、残りを自律走行行程とする。ここで、端52から端53に到る往路および端53から端52に到る復路がそれぞれ1行程である。教習行程では、操縦者が自動田植機に乗車し、操縦者がハンドルで自動田植機を操縦する。操縦者は、図2における行程1では畦道51を視認しながら、畦道51に沿って自動田植機を操縦する。そして、行程2では、先に行程1で植え付けた苗の条を視認しながら、その苗条にできるだけ並行に自動田植機を操縦する。次の、行程3では行程2において植え付けた苗条に沿って、即ち行程2において植え付けた苗条に平行に操縦し、行程4では行程3において植え付けた苗条に平行に操縦する。
【0005】
自動田植機における自律直進装置は、磁気センサやジャイロ等でなる方位センサ、この方位センサで検出した方位を車両が直進するべき方位、即ち目標方位に変換する方位演算部およびその目標方位を記憶するメモリを有する。
【0006】
教習行程においては、方位センサで自動田植機の車体軸の方位を一定のサンプリング周期(例えば1/50秒)で検出し、各行程でサンプリングタイム毎に検出した方位を方位演算部で平均し、その行程で習得した目標方位Ψを生成し、目標方位Ψをメモリへ記憶する。往路において習得した目標方位Ψは往路目標方位Ψg、復路において習得した目標方位Ψは復路目標方位Ψcとなる。先に例示したように、教習行程を2往復とると、最初の往復における自動田植機の軌跡、すなわち苗条が多少蛇行し、或いは畦道51に対し角度をもった(畦道51との並行度が悪かった)としても、第1回目の往復の教習行程で習得した目標方位を第2回目に習得した目標方位で置き換えることにより、改善された目標方位をメモリに記憶できる。
【0007】
教習行程に続く自律走行行程では、教習行程においてメモリに記憶された往路目標方位Ψgまたは復路目標方位Ψcに自動田植機が進行方位をとるように、自動操縦装置で自動田植機を操縦する。この自律走行行程では、最後の往復教習行程往路で習得した往路目標方位Ψgおよび復路目標方位Ψcに往路および復路をそれぞれ平行に保持して往復を繰り返し、水田50全体に自動的に植付けを行う。
【0008】
自動田植機などの車両は、一般的にはほぼ長方形の長辺と平行に往復走行するので、目標方位としては往路用と復路用との2つが必要である。そこで、自律直進装置は、取得した目標方位が往路用か復路用かを認識しておく必要がある。
【0009】
取得した目標方位が往路用か復路用かを認識する方法として、連続取得方法および往復路指定方法がある。連続取得方法では、教習行程を選択した直後の教習行程の開始から終了までに取得した目標方位は往路用とし、その次の教習行程の開始から終了までに取得した目標方位は復路用とする。往復路指定方法では、往路か復路かを手動で入力するための往路/復路指定スイッチを備える。自律直進装置の操縦者は、往路の教習行程を開始するに先立ちスイッチを“往路”に設定し、復路の教習行程を開始するに先立ちスイッチを“復路”に設定する。自律直進装置は、往路/復路指定スイッチの設定に応じ、実行されている教習行程が往路または復路の何れであるかを認識する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来の連続取得方法では、もし復路の途中に大きな石があり、直進できず、石を迂回した場合のように、復路の教習行程の途中で直進できない事態が生じると、そこまでに習得した往路の目標方位Ψgのデータまで利用できないこととなる。したがって、連続取得方法では、復路の教習行程で目標方位を取得に失敗すると、最初から教習行程をやり直さざるを得ず、教習行程の作業効率が悪い。
【0011】
また、往復路指定方法は、作業者に運転以外の操作、即ちスイッチによる選択操作を要求する。往復路指定方法では、今度の行程が往路か復路かのいずれであるかを操縦者が記憶し、操縦者の記憶に頼ってスイッチの設定をする必要がある。そこで、この往復路指定方法には、習得した目標方位が往路または復路の何れであるかを間違える危険があり、教習行程の信頼性を低下させ、また操縦者に心理的な負担を強いるという欠点がある。
【0012】
そこで、本発明は、教習行程において習得した目標方位が往路と復路の内の何れの方位であるかを自動的に認識し、メモリに記憶してある往路と復路の目標方位を自動的に更新でき、ひいては教習行程の作業効率が向上し、しかも教習行程における操縦者の方位設定操作を一切不要とする自律直進装置の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために本発明は次の手段を提供する。
【0014】
(1)農業作業車などの車両に搭載され、教習行程による該車両の走行の際には、該車両の往路および復路の目標方位を取得し、該往路および復路の目標方位をメモリに記憶し、自律走行行程による該車両の走行の際には、該教習行程で該メモリに記憶した前記往路および復路の目標方位に各々平行に直進するように前記車両の自動操舵制御を行う自律直進装置において、
先の教習行程で前記メモリに記憶された前記往路の目標方位Ψgおよび復路の目標方位Ψcのうちの少なくとも一方と最新の教習行程で取得した前記車両の目標方位Ψ0とを比較し、前記Ψg又はΨcと前記Ψ0との差Dが所定値ΔΨより小さい場合には、前記メモリに記憶された前記Ψg又はΨcのうちで差Dが所定値ΔΨより小さい方の目標方位Ψg又はΨcをΨ0に置き換えることを特徴とする自律直進装置。
【0015】
(2)農業作業車などの車両に搭載され、教習行程による該車両の走行の際には、該車両の往路および復路の目標方位を取得し、該往路および復路の目標方位をメモリに記憶し、自律走行行程による該車両の走行の際には、該教習行程で該メモリに記憶した前記往路および復路の目標方位に各々平行に直進するように前記車両の自動操舵制御を行う自律直進装置において、
先の教習行程で前記メモリに記憶された前記往路および復路の目標方位をそれぞれΨgおよびΨcとし、最新の教習行程で取得した前記車両の目標方位をΨ0とするとき、
|Ψ0−Ψc|<ΔΨ (1)
又は
|Ψg+180−Ψ0|<ΔΨ (2)
なる条件が満たされるときは、前記メモリに記憶した復路の目標方位ΨcをΨ0に置き換え、前記式(1)又は(2)のいずれの条件も満たされないときは前記メモリに記憶した往路の目標方位ΨgをΨ0に置き換える
ことを特徴とする自律直進装置。
【0016】
(3)農業作業車などの車両に搭載され、教習行程による該車両の走行の際には、該車両の往路および復路の目標方位を取得し、該往路および復路の目標方位をメモリに記憶し、自律走行行程による該車両の走行の際には、該教習行程で該メモリに記憶した前記往路および復路の目標方位に各々平行に直進するように前記車両の自動操舵制御を行う自律直進装置において、
【0017】
先の教習行程で前記メモリに記憶された前記往路および復路の目標方位をそれぞれΨgおよびΨcとし、最新の教習行程で取得した前記車両の目標方位をΨ0とするとき、
|Ψ0−Ψg|<ΔΨ (3)
又は
|Ψc+180−Ψ0|<ΔΨ (4)
なる条件が満たされるときは、前記メモリに記憶した往路の目標方位ΨgをΨ0に置き換え、前記式(3)又は(4)のいずれの条件も満たされないときは前記メモリに記憶した復路の目標方位ΨcをΨ0に置き換える
ことを特徴とする自律直進装置。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照し、本発明を一層具体的に説明する。本発明になる自律直進装置の一実施の形態を搭載した自動田植機等の車両のブロック図を図1に示す。
【0019】
図1において、車両1は、自律直進装置11、舵角変更部12、車輪駆動部13および車輪14を含んでなる。また、自律直進装置11は、磁気センサ、ジャイロ等の方位センサ111、目標方位設定処理部112、直進信号発生部113および操向制御部114を含む。目標方位設定処理部112は、中央処理部(CPU)201、各種プログラムが格納されているメモリROM202及びデータ等を記憶するメモリRAM203を含んでいる。以下の記述では、車両1が自動田植機である場合について、本実施の形態を説明する。
【0020】
苗の植え付けは、車両1が直進をしている期間に行われる。そこで、苗の植え付けを開始する時は、車両1が直進を開始する時であり、苗の植え付けは車両1が180°の旋回を始める前に終了する。教習走行モードでは、苗の植え付け開始を手動スイッチで設定すると、苗植え付け開始命令発生部(図示省略)が苗植え付け開始命令を苗植付け装置(図示省略)に出力する。また、苗の植え付け停止を手動スイッチで設定すると、苗植え付け開始命令発生部が苗植え付け開始命令の発生を停止する。自律走行モードでは、直進走行を開始する際に、苗植え付け開始命令発生部が自動的に苗植え付け開始命令を苗植付け装置へ出力し、直進走行を終了し180°旋回を開始する前に、苗植え付け開始命令発生部が自動的に苗植え付け開始命令の出力を停止する。
【0021】
直進信号発生部113は、苗植え付け開始命令発生部から供給される苗植え付け開始命令を車両1の直進開始と認識し、苗植え付け開始命令を受けると同時に直進信号を生成し、目標方位設定処理部112へ直進信号を送る。目標方位設定処理部112は、直進信号を受けている期間は、方位センサ111からの検出方位をサンプリング周期ごとに受け付け、方位データの平均処理をした後、平均方位を目標方位ΨとしてRAM203の往路用または復路用メモリ領域に記憶する。操向制御部114は、車両1の方位とRAM203に記憶された目標方位Ψとの差により進行すべき方位のずれを修正する舵角制御信号を舵角変更部12に送る。舵角変更部12は、舵角制御信号に応じ、車輪14の向きを変更するための舵角変更信号を生成する。車輪駆動部13は、舵角変更部12からの舵角変更信号に応答し、車両1の方位を目標方位Ψに追従させるように車輪14の向きを変える。また、ROM202は、自律直進装置11等を制御する制御プログラムを格納している。
【0022】
次に、車両1の往復走行例および方位習得の例を図2を参照して説明する。
【0023】
車両1が、図2に示すように、水田50の端52から畦道51に沿って直進しながら植え付けを行い、端53近傍まで行くと、旋回するため植え付けを止める(行程1)。以下、この1本の直進走行を1行程と呼ぶ。端53の手前では、車両1は180度旋回して、行程1で植え付けた苗条と平行となるように端52に向かって次の1行程分直進走行する(行程2)。最初の行程1を往路行程とするならば、戻りの行程2は復路行程となり、以降この往復の繰り返し行程3,4、行程5,6等により田植えを行っていく。
【0024】
これら行程1,2,3,4等のそれぞれの行程において、方位センサ111により取得された方位は目標方位設定処理部112により平均処理され、平均化された方位は更新するべき目標方位Ψとしてメモリ203の往路用メモリ領域または復路用メモリ領域に記憶されていく。
【0025】
いま、行程4までを教習走行モードとし、教習走行を行ったとする。メモリ203の往路用メモリ領域Gには、まず行程1の往路走行により習得された目標方位Ψg1が記憶される。そして、行程3の往路走行を終えると、往路用メモリ領域Gの目標方位Ψgは行程3の往路走行により習得した目標方位Ψg3に更新される。
【0026】
同様に、メモリ203の復路用メモリ領域Cには、まず行程2の復路走行により習得された目標方位Ψc2が記憶され、次に行程4の復路走行を終えたときに、復路用メモリ領域Cの目標方位Ψcは行程4の復路走行で習得した目標方位Ψc4に更新される。
【0027】
続いて、行程5から自律走行モードに設定されたとすると、車両1は行程3において習得された往路の目標方位Ψg3を基準として走行する。教習行程における最後の往路行程で習得した往路目標方位Ψg3を基準として走行するので、行程1で習得した往路目標方位Ψg1を基準とした走行に比べ、隣の条との平行性を向上できる。
【0028】
同様に、行程6においては、車両1は行程4において習得された復路の目標方位Ψg4を基準として走行する。教習行程における最後の復路行程で習得した復路目標方位Ψg4を基準として走行するので、行程2で習得した復路目標方位Ψg2を基準とした走行に比べ、隣の条との平行性を向上できる。
【0029】
次に、本実施の形態における目標方位の習得および更新の方法の手順を図3を参照して説明する。この方法では、習得した目標方位が往路のものか或いは復路のものかを自動的に決定できる。
【0030】
まず、自動田植機である車両1が水田の端から直進走行を始め、植え付けが開始される(ステップ301)と、直進信号発生部113は直進信号を発生する。この直進信号に応答して、目標方位設定処理部112は、目標方位Ψを計算するために必要な方位を方位センサ111からサンプリングタイミング毎に逐次取得する(ステップ302)。
【0031】
水田の他端まで直進走行すると、車両1は旋回する前に植え付けを終了し、直進信号の発生は止まるので、目標方位Ψ計算用の方位取得を終了する(ステップ303)。
【0032】
目標方位設定処理部112は、たとえば、植え付け開始から終了までに方位センサ111から逐次取得した車両方位の平均値を求めることにより目標方位Ψ=Ψ0を計算する(ステップ304)。
【0033】
次に、現在求めた目標方位Ψ0と、既にメモリ203に格納されている往路目標方位Ψgおよび復路目標方位Ψcとを比較する。
【0034】
(A)現在求めた目標方位Ψ0と復路目標方位Ψcとの差がΔΨ以下である、すなわち
|Ψ0−Ψc|<ΔΨ (1)
であれば、現在メモリに格納されている復路目標方位Ψcを更新し、現在求めた目標方位Ψ0を新たな復路目標方位Ψcとして設定する(ステップ305,307)。
【0035】
(B)また、現在求めた目標方位Ψ0と復路目標方位Ψcとの差がΔΨを超えたとき、往路目標方位Ψgに180度加算した値と現在求めた目標方位Ψ0との差がΔΨ以下である、すなわち
|Ψg+180−Ψ0|<ΔΨ (2)
であれば、現在メモリに格納されている復路目標方位Ψcを更新し、現在求めた目標方位Ψ0を新たな復路目標方位Ψcとして設定する(ステップ305,306,307)。
【0036】
(C)上記(1),(2)式のいずれをも満たさないときは、現在メモリ203に格納されている往路目標方位Ψgを更新し、現在求めた目標方位Ψ0を新たな往路目標方位Ψgとして設定する(ステップ305,306,308)。
【0037】
なお、ΔΨは、方位差閾値であり、車両1の「180度旋回」プログラムを実施したときに、車両1が実際にどれだけの精度で回転するか、すなわち方位センサ111の変化が180度からどれだけずれるかを基に予め設定しておく値である。ΔΨは、たとえば10度とする。尤も、ΔΨは、現在求めた目標方位Ψ0が往路目標方位Ψgと復路目標方位Ψcと比べてどちらにより近いかを判定する際の判断基準とする閾値であり、厳密である必要はない。往路目標方位Ψgと復路目標方位Ψcとはほぼ180度相違するから、ΔΨを例えば45度に設定しても本実施の形態は実現できる。
また、車両が高精度の目標方位設定が難しい状態に置かれる場合には、植え付けの開始から一定時間の間は方位取得をしないこともできる。
【0038】
上述の例ではステップ305で、現在求めた目標方位Ψ0を復路目標方位Ψcと比較した。しかし、復路目標方位Ψcに代えて往路目標方位Ψgと現在求めた目標方位Ψ0とをまず比較するようにしても本発明は実現できる。このときは、上述の手順(A),(B)及び(C)は次(A’),(B’)及び(C’)のように変わる。
【0039】
(A’)現在求めた目標方位Ψ0と往路目標方位Ψgとの差がΔΨ以下である、すなわち
|Ψ0−Ψg|<ΔΨ (3)
であれば、現在メモリに格納されている往路目標方位Ψgを更新し、現在求めた目標方位Ψ0を新たな往路目標方位Ψgとして設定する。
【0040】
(B’)また、現在求めた目標方位Ψ0と往路目標方位Ψgとの差がΔΨを超えたとき、復路目標方位Ψcに180度加算した値と現在求めた目標方位Ψ0との差がΔΨ以下である、すなわち
|Ψc+180−Ψ0|<ΔΨ (4)
であれば、現在メモリに格納されている往路目標方位Ψgを更新し、現在求めた目標方位Ψ0を新たな往路目標方位Ψgとして設定する)。
【0041】
(C’)上記(3),(4)式のいずれをも満たさないときは、現在メモリ203に格納されている復路目標方位Ψcを更新し、現在求めた目標方位Ψ0を新たな復路目標方位Ψcとして設定する。
【0042】
さらに、植え付け開始から終了までの時間が予め設定しておいた値等に比較して短い場合や、舵角計(図示せず)により舵角をモニターして舵角が大きいと判断した場合のように、方位の計測精度が期待できない場合には、その走行行程における目標方位の習得を止めてもよい。あるいは、車両速度計(図示せず)により車両速度の積分による距離を計算し、これを上述の時間の代わりに使用することもでき、植え付け開始からの距離が一定距離に達するまでの間は方位取得を行わないようにしてもよい。
上述の実施の形態では、目標方位設定処理部112は、方位センサ111からサンプリング周期で取得した方位のデータを平均することにより目標方位Ψを得た。しかし、目標方位Ψは、方位データの平均処理にかえて、その他の処理、例えば方位データの二乗平均の平方根(root - mean _ square)を計算する処理で取得しても差し支えない。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態の自律直進装置では、現在求めた目標方位Ψ0が前回習得の復路目標方位Ψcに近いか、あるいは、前回習得の往路目標方位Ψgの180度旋回した方位に近ければ、現在求めた目標方位Ψ0を新たな復路目標方位Ψcとし、それ以外であれば、現在求めた目標方位Ψ0を新たな往路目標方位Ψgとして更新設定することに大きな特徴がある。これにより、教習行程のそれぞれにおいて常に往路および復路のいずれかの目標方位Ψを適切に更新することができる。
【0044】
すなわち、直進信号に連動して車両1の走行開始から終了までの間、目標方位Ψを計算するための方位を取得し、求められた目標方位Ψが往復路いずれに相当するのかの判定を自動的に行うことにより、作業者が目標方位を取得するために一切の操作を行わなくとも常に現在の行程に相当する目標方位を高精度で設定することができる。
【0045】
【発明の効果】
上に実施の形態をあげ具体的に説明したように、教習行程において習得した目標方位が往路と復路の内の何れの方位であるかを自動的に認識し、メモリに記憶してある往路と復路の目標方位を自動的に更新でき、ひいては教習行程の作業効率が向上し、しかも教習行程における操縦者の方位設定操作を一切不要とする自律直進装置を提供できる。そこで、本発明の自律直進装置を農業作業車などの車両に搭載することにより、操縦者の負担を軽減できる、教習行程における最終の目標方位データに基づき自動的に自律走行をするので、往復直進走行の平行性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自律直進装置を搭載した車両の構成を示すブロック図である。
【図2】自動田植機の往復走行による田植え作業の概要を示す図である。
【図3】図1の実施の形態における目標方位設定処理部で行う目標方位の習得および更新方法の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1:車両
11:自律直進装置
12:舵角変更部
13:車輪駆動部
14:車輪
111:方位センサ
112:目標方位設定処理部
113:直進信号発生部
114:操向制御部
201:中央処理部(CPU)
202:メモリ(ROM)
203:メモリ(RAM)
Ψ0:現在求めた目標方位
Ψg:往路目標方位
Ψc:復路目標方位
ΔΨ:閾値
D:Ψg又はΨcとΨ0との差

Claims (3)

  1. 農業作業車などの車両に搭載され、教習行程による該車両の走行の際には、該車両の往路および復路の目標方位を取得し、該往路および復路の目標方位をメモリに記憶し、自律走行行程による該車両の走行の際には、該教習行程で該メモリに記憶した前記往路および復路の目標方位に各々平行に直進するように前記車両の自動操舵制御を行う自律直進装置において、
    先の教習行程で前記メモリに記憶された前記往路の目標方位Ψgおよび復路の目標方位Ψcのうちの少なくとも一方と最新の教習行程で取得した前記車両の目標方位Ψ0とを比較し、前記Ψg又はΨcと前記Ψ0との差Dが所定値ΔΨより小さい場合には、前記メモリに記憶された前記Ψg又はΨcのうちで差Dが所定値ΔΨより小さい方の目標方位Ψg又はΨcをΨ0に置き換えることを特徴とする自律直進装置。
  2. 農業作業車などの車両に搭載され、教習行程による該車両の走行の際には、該車両の往路および復路の目標方位を取得し、該往路および復路の目標方位をメモリに記憶し、自律走行行程による該車両の走行の際には、該教習行程で該メモリに記憶した前記往路および復路の目標方位に各々平行に直進するように前記車両の自動操舵制御を行う自律直進装置において、
    先の教習行程で前記メモリに記憶された前記往路および復路の目標方位をそれぞれΨgおよびΨcとし、最新の教習行程で取得した前記車両の目標方位をΨ0とするとき、
    |Ψ0−Ψc|<ΔΨ (1)
    又は
    |Ψg+180−Ψ0|<ΔΨ (2)
    なる条件が満たされるときは、前記メモリに記憶した復路の目標方位ΨcをΨ0に置き換え、前記式(1)又は(2)のいずれの条件も満たされないときは前記メモリに記憶した往路の目標方位ΨgをΨ0に置き換える
    ことを特徴とする自律直進装置。
  3. 農業作業車などの車両に搭載され、教習行程による該車両の走行の際には、該車両の往路および復路の目標方位を取得し、該往路および復路の目標方位をメモリに記憶し、自律走行行程による該車両の走行の際には、該教習行程で該メモリに記憶した前記往路および復路の目標方位に各々平行に直進するように前記車両の自動操舵制御を行う自律直進装置において、
    先の教習行程で前記メモリに記憶された前記往路および復路の目標方位をそれぞれΨgおよびΨcとし、最新の教習行程で取得した前記車両の目標方位をΨ0とするとき、
    |Ψ0−Ψg|<ΔΨ (3)
    又は
    |Ψc+180−Ψ0|<ΔΨ (4)
    なる条件が満たされるときは、前記メモリに記憶した往路の目標方位ΨgをΨ0に置き換え、前記式(3)又は(4)のいずれの条件も満たされないときは前記メモリに記憶した復路の目標方位ΨcをΨ0に置き換える
    ことを特徴とする自律直進装置。
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