JP3674489B2 - 展伸用Mg合金およびその製造方法 - Google Patents
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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、展伸用Mg合金に関し、特に熱間加工に適した展伸用Mg合金およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に市販されている展伸用Mg合金は、熱間加工性が低く、熱間加工中に割れが発生し易いため、例えば鋳造インゴット等から板材を作製するには、高温で多数回の熱間圧延を行う必要があり、熱間加工製品のコストを上昇させる一つの原因になっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来よりも低温で割れ発生せず容易に熱間加工のできる展伸用Mg合金およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の展伸用Mg合金は、Mg基母材中に、該Mg基母材の溶湯中で安定であって該溶湯の凝固時に結晶生成核となる粒径10μm以下の粒子が0.01〜10体積%の量で分散していることを特徴とする。
【0005】
本発明の展伸用Mg合金を製造する方法は、Mg基母材の溶湯中に、該Mg基母材の溶湯中で安定であって該溶湯の凝固時に結晶生成核となる粒径10μm以下の粒子を0.01〜10体積%の量で分散させた後に鋳造することを特徴とする。
本発明においては、0.01〜10体積%の量で分散している粒径10μm以下の微細な粒子を核としてMg基母材の結晶が生成することにより、鋳造組織の結晶粒が微細化され、熱間割れ感受性が低下し、熱間加工性が向上する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、Mg基母材は、従来汎用されているものも含めて展伸用Mg合金であればよく、特に限定する必要はない。従来汎用されている展伸用Mg合金として代表的なものは、Mg−Al系(例えばASTM規格では、AZ31、AZ61、AZ80等。Al:2〜10wt%、Zn:0.1〜2wt%、残部Mgおよび不可避不純物)、Mg−Zr系(例えばASTM規格では、ZK10、ZK30、ZK60等。Zr:0.1〜1wt%、Zn:0.5〜7wt%、残部Mgおよび不可避不純物)等がある。
【0007】
本発明に用いる粒子の材質は、Mg基母材の溶湯中で分解せず安定に存在する粒子であって、この粒子を含有するMg合金の耐食性、機械的性質に悪影響を及ぼさないものであればよい。このような粒子の代表的なものとして、Al4C3、TiC、TiB2、AlN、TiN、MgB2、AlB2、MoB、VB、TiBがある。これらから選択した1種類を単独で、または複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0008】
上記粒子のうちで、MgB2、AlB2は、結晶構造がMgと同じく六方晶であり、Mg基母材の溶湯中で安定に存在するため望ましい。
また、MoB、VB、TiBは、格子常数がMgの格子常数(0.3nm)の整数倍であり、Mg基母材の溶湯中で安定に存在するため望ましい。
本発明に用いる粒子の粒径は、10μm以下に限定する。図1に示したように、粒子が結晶粒微細化に有効な結晶生成核として作用するためには、粒径が10μm以下でなくてはならない。粒径が10μmを超えると熱間加工性の向上に必要な結晶粒微細化効果が得られない。なお、図1はMg基母材としてAZ91Dを用い、粒径を種々に変えて、Al4C3粒子を0.2体積%の量で分散させた場合の例であるが、本発明の範囲内において、他のMg基母材を用い、他の粒子を他の含有量で分散させた場合にも同じ傾向が得られる。
【0009】
更に、結晶粒微細化効果が発現するためには、結晶生成核としての粒子が0.01体積%以上の量で存在する必要がある。図2に示したように、粒子の量が0.01体積%未満であると、熱間加工性の向上に必要な結晶粒微細化効果が得られない。一方、粒子の量が10体積%を超えると、Mg基母材の溶湯の粘性が大きくなって、鋳造が極めて困難になる。したがって、粒子の量は、0.01体積%〜10体積%の範囲に限定する。なお、図2はMg基母材としてAZ91Dを用い、粒径1μmのAl4C3粒子を種々の量で分散させた場合の例であるが、本発明の範囲内において、他のMg基母材を用い、他の粒径の他の粒子を分散させた場合にも同じ傾向が得られる。
【0010】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0011】
【実施例】
750℃に保持したAZ31Mg合金溶湯中に、粒径0.5μmのTiC粒子を1体積%の量で添加し、分散させた後、金型内に鋳造して板材(厚さ5mm、幅70mm、長さ150mmとした。比較のために、従来例として、750℃に保持したAZ31合金溶湯に粒子を添加せずに上記と同じ寸法の板材に鋳造した。
【0012】
得られた板材をロールプレス機により熱間圧延した。圧延条件(温度・圧力)および圧延結果を表1(従来例)および表2(本発明例)にまとめて示す。各表中の数値は割れ発生なしに得られた圧下率であり、「×」印は割れが発生したことを示す。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】
表1と表2の比較から、本発明に従って結晶生成核となる粒子を添加した実施例においては、粒子を添加しなかった従来例に比べて、低い圧延温度でも割れ発生なしに高い圧下率での圧延が可能であることが分かる。
本発明例と従来例について、圧延を行う前の鋳造組織を顕微鏡により観察した。図3および図4に、それぞれ本発明例および従来例の鋳造組織における結晶粒を強調して示し、図5に本発明例の鋳造組織における粒子を強調して示す。組織観察は、結晶粒界を現出するために鋳造材に415℃×3時間の溶体化を施した後に行った。図3と図4との比較から、本発明例は従来例に比べて結晶粒が顕著に微細化していることが分かる。また、図5から、本発明例においては、添加粒子(TiC:図中の白点)が鋳造組織内に均一に分散しており、特に結晶粒内に安定して存在していることが分かる。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来よりも低温で割れ発生せず容易に熱間加工のできる展伸用Mg合金およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、Mg合金中に含有される粒子の粒径とMg合金の鋳造組織の結晶粒径との関係を示すグラフである。
【図2】図2は、Mg合金中に含有される粒子の量とMg合金の鋳造組織の結晶粒径との関係を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明により粒子を分散させたMg合金の鋳造組織における結晶粒を強調して示す顕微鏡組織写真である。
【図4】図4は、粒子を含有しない従来のMg合金の鋳造組織における結晶粒を強調して示す顕微鏡組織写真である。
【図5】図5は、図3に示した本発明例の鋳造組織における分散粒子を強調して示す顕微鏡写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、展伸用Mg合金に関し、特に熱間加工に適した展伸用Mg合金およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に市販されている展伸用Mg合金は、熱間加工性が低く、熱間加工中に割れが発生し易いため、例えば鋳造インゴット等から板材を作製するには、高温で多数回の熱間圧延を行う必要があり、熱間加工製品のコストを上昇させる一つの原因になっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来よりも低温で割れ発生せず容易に熱間加工のできる展伸用Mg合金およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の展伸用Mg合金は、Mg基母材中に、該Mg基母材の溶湯中で安定であって該溶湯の凝固時に結晶生成核となる粒径10μm以下の粒子が0.01〜10体積%の量で分散していることを特徴とする。
【0005】
本発明の展伸用Mg合金を製造する方法は、Mg基母材の溶湯中に、該Mg基母材の溶湯中で安定であって該溶湯の凝固時に結晶生成核となる粒径10μm以下の粒子を0.01〜10体積%の量で分散させた後に鋳造することを特徴とする。
本発明においては、0.01〜10体積%の量で分散している粒径10μm以下の微細な粒子を核としてMg基母材の結晶が生成することにより、鋳造組織の結晶粒が微細化され、熱間割れ感受性が低下し、熱間加工性が向上する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、Mg基母材は、従来汎用されているものも含めて展伸用Mg合金であればよく、特に限定する必要はない。従来汎用されている展伸用Mg合金として代表的なものは、Mg−Al系(例えばASTM規格では、AZ31、AZ61、AZ80等。Al:2〜10wt%、Zn:0.1〜2wt%、残部Mgおよび不可避不純物)、Mg−Zr系(例えばASTM規格では、ZK10、ZK30、ZK60等。Zr:0.1〜1wt%、Zn:0.5〜7wt%、残部Mgおよび不可避不純物)等がある。
【0007】
本発明に用いる粒子の材質は、Mg基母材の溶湯中で分解せず安定に存在する粒子であって、この粒子を含有するMg合金の耐食性、機械的性質に悪影響を及ぼさないものであればよい。このような粒子の代表的なものとして、Al4C3、TiC、TiB2、AlN、TiN、MgB2、AlB2、MoB、VB、TiBがある。これらから選択した1種類を単独で、または複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0008】
上記粒子のうちで、MgB2、AlB2は、結晶構造がMgと同じく六方晶であり、Mg基母材の溶湯中で安定に存在するため望ましい。
また、MoB、VB、TiBは、格子常数がMgの格子常数(0.3nm)の整数倍であり、Mg基母材の溶湯中で安定に存在するため望ましい。
本発明に用いる粒子の粒径は、10μm以下に限定する。図1に示したように、粒子が結晶粒微細化に有効な結晶生成核として作用するためには、粒径が10μm以下でなくてはならない。粒径が10μmを超えると熱間加工性の向上に必要な結晶粒微細化効果が得られない。なお、図1はMg基母材としてAZ91Dを用い、粒径を種々に変えて、Al4C3粒子を0.2体積%の量で分散させた場合の例であるが、本発明の範囲内において、他のMg基母材を用い、他の粒子を他の含有量で分散させた場合にも同じ傾向が得られる。
【0009】
更に、結晶粒微細化効果が発現するためには、結晶生成核としての粒子が0.01体積%以上の量で存在する必要がある。図2に示したように、粒子の量が0.01体積%未満であると、熱間加工性の向上に必要な結晶粒微細化効果が得られない。一方、粒子の量が10体積%を超えると、Mg基母材の溶湯の粘性が大きくなって、鋳造が極めて困難になる。したがって、粒子の量は、0.01体積%〜10体積%の範囲に限定する。なお、図2はMg基母材としてAZ91Dを用い、粒径1μmのAl4C3粒子を種々の量で分散させた場合の例であるが、本発明の範囲内において、他のMg基母材を用い、他の粒径の他の粒子を分散させた場合にも同じ傾向が得られる。
【0010】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0011】
【実施例】
750℃に保持したAZ31Mg合金溶湯中に、粒径0.5μmのTiC粒子を1体積%の量で添加し、分散させた後、金型内に鋳造して板材(厚さ5mm、幅70mm、長さ150mmとした。比較のために、従来例として、750℃に保持したAZ31合金溶湯に粒子を添加せずに上記と同じ寸法の板材に鋳造した。
【0012】
得られた板材をロールプレス機により熱間圧延した。圧延条件(温度・圧力)および圧延結果を表1(従来例)および表2(本発明例)にまとめて示す。各表中の数値は割れ発生なしに得られた圧下率であり、「×」印は割れが発生したことを示す。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】
表1と表2の比較から、本発明に従って結晶生成核となる粒子を添加した実施例においては、粒子を添加しなかった従来例に比べて、低い圧延温度でも割れ発生なしに高い圧下率での圧延が可能であることが分かる。
本発明例と従来例について、圧延を行う前の鋳造組織を顕微鏡により観察した。図3および図4に、それぞれ本発明例および従来例の鋳造組織における結晶粒を強調して示し、図5に本発明例の鋳造組織における粒子を強調して示す。組織観察は、結晶粒界を現出するために鋳造材に415℃×3時間の溶体化を施した後に行った。図3と図4との比較から、本発明例は従来例に比べて結晶粒が顕著に微細化していることが分かる。また、図5から、本発明例においては、添加粒子(TiC:図中の白点)が鋳造組織内に均一に分散しており、特に結晶粒内に安定して存在していることが分かる。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来よりも低温で割れ発生せず容易に熱間加工のできる展伸用Mg合金およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、Mg合金中に含有される粒子の粒径とMg合金の鋳造組織の結晶粒径との関係を示すグラフである。
【図2】図2は、Mg合金中に含有される粒子の量とMg合金の鋳造組織の結晶粒径との関係を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明により粒子を分散させたMg合金の鋳造組織における結晶粒を強調して示す顕微鏡組織写真である。
【図4】図4は、粒子を含有しない従来のMg合金の鋳造組織における結晶粒を強調して示す顕微鏡組織写真である。
【図5】図5は、図3に示した本発明例の鋳造組織における分散粒子を強調して示す顕微鏡写真である。
Claims (4)
- Mg基母材中に、該Mg基母材の溶湯中で安定であって該溶湯の凝固時に結晶生成核となる粒径10μm以下の粒子が0.01〜10体積%の量で分散していることを特徴とする展伸用Mg合金。
- 前記粒子が、Al4C3、TiC、TiB2、AlN、TiN、MgB2、AlB2、MoB、VBおよびTiBから成る群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の展伸用Mg合金。
- Mg基母材の溶湯中に、該Mg基母材の溶湯中で安定であって該溶湯の凝固時に結晶生成核となる粒径10μm以下の粒子を0.01〜10体積%の量で添加した後に鋳造することを特徴とする展伸用Mg合金の製造方法。
- 前記粒子が、Al4C3、TiC、TiB2、AlN、TiN、MgB2、AlB2、MoB、VBおよびTiBから成る群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の展伸用Mg合金の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2000310803A JP3674489B2 (ja) | 2000-10-11 | 2000-10-11 | 展伸用Mg合金およびその製造方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000310803A JP3674489B2 (ja) | 2000-10-11 | 2000-10-11 | 展伸用Mg合金およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002115020A JP2002115020A (ja) | 2002-04-19 |
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KR101658383B1 (ko) * | 2014-04-14 | 2016-09-22 | 연세대학교 산학협력단 | 마그네슘 재료 |
GB201419715D0 (en) * | 2014-11-05 | 2014-12-17 | Univ Brunel | Grain refiner for magnesium alloys |
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2000
- 2000-10-11 JP JP2000310803A patent/JP3674489B2/ja not_active Expired - Fee Related
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---|---|
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