JP2006176873A - マグネシウム合金及びマグネシウム合金部材の製造方法 - Google Patents

マグネシウム合金及びマグネシウム合金部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性、鋳造性等の鋳造品質を向上させ、かつ、安価な重力鋳造法用のマグネシウム合金及びその処理方法を提供すること。
【解決手段】マグネシウム合金は、アルミニウムを7〜12.6質量%、希土類元素を3〜6質量%、マンガンを0.05〜0.5質量%含有し、残部がマグネシウムならびに不可避の不純物からなり、溶体化熱処理と人工時効処理が順次施されている。
【選択図】図3

Description

本発明は、マグネシウム合金及びマグネシウム合金部材の製造方法に関し、特に、耐熱性、鋳造性に優れたマグネシウム合金及びマグネシウム合金部材の製造方法に関する。
鋳造に使用できる耐熱マグネシウム合金としては、これまでにMg−4%Y−3%RE(希土類元素)系合金(単位は質量%)であるWE43材、並びにMg−2%Ag−2%RE系合金(単位は質量%)であるQE22材が良く知られており、実用に供されてきた。しかし、これらの合金は含有されるY、Agが非常に高価であることに加えて、機械的特性確保のためにはZr添加による微細化処理という鋳造工程上の手間も必須であり、鋳造品の著しいコストアップが避けられない。したがって、その用途は航空、宇宙、カーレース等の特殊な少量生産部品の用途に限定されていた。上記の実情を鑑み、より安価で耐熱性に優れた鋳造用のマグネシウム合金の開発も近年行われており、例えば、特許文献1並びに特許文献2には、0.2〜1.4質量%のCa添加による耐熱性向上を特徴とした砂型、金型等に適用可能な鋳造用マグネシウム合金が開示されている。また、特許文献3には、0.01〜1質量%のLi添加による熱間割れ、焼き付き等の鋳造性改善を特徴とした金型鋳造用の耐熱マグネシウム合金が開示されている。
特開平7−278717号公報 特許第2730847号公報 特許第3263442号公報
特許文献1〜3に記載の合金は、Y、Ag等の高価な元素を含有しないことから、前述のWE43材あるいはQEW22材に比べてコストは比較的安価であるものの、Ca、Li等の活性な元素(酸素との親和力の強い元素)を含有することから、これらの優先酸化に起因した溶湯の流動性(湯流れ性)の低下や、生成介在物の混入による鋳造欠陥の増加といった鋳造性と鋳造品質に係る製造上の問題を残している。
本発明の課題は、耐熱性、鋳造性等の鋳造品質を向上させ、かつ、安価なマグネシウム合金及びマグネシウム合金部材の製造方法を提供することである。
本発明の第1の視点においては、マグネシウム合金において、アルミニウムを7〜12.6質量%、希土類元素を3〜6質量%、マンガンを0.05〜0.5質量%含有し、残部がマグネシウムならびに不可避の不純物からなることを特徴とする。
本発明の第2の視点においては、マグネシウム合金において、アルミニウムを7〜12.6質量%、希土類元素を3〜6質量%、マンガンを0.05〜0.5質量%、亜鉛を0.3質量%以上2質量%以下含有し、残部がマグネシウムならびに不可避の不純物からなることを特徴とする。
本発明の第3の視点においては、マグネシウム合金部材の製造方法において、アルミニウムを7質量%以上12.6質量%以下、希土類元素を3質量%以上6質量%以下、マンガンを0.05質量%以上0.5質量%以下含有し、残部がマグネシウムならびに不可避の不純物からなるマグネシウム合金を鋳造して得られたマグネシウム合金部材に対して、400℃以上430℃以下の温度で10時間以上50時間以下保持した後に急冷する溶体化熱処理と、180℃以上260℃以下の温度で0.5時間以上50時間以下保持した後に放冷する人工時効熱処理とを順次施すことを特徴とする。
本発明の第4の視点においては、マグネシウム合金部材の製造方法において、アルミニウムを7質量%以上12.6質量%以下、希土類元素を3質量%以上6質量%以下、マンガンを0.05質量%以上0.5質量%、亜鉛を0.3質量%以上2質量%以下以下含有し、残部がマグネシウムならびに不可避の不純物からなるマグネシウム合金を鋳造して得られたマグネシウム合金部材に対して、400℃以上430℃以下の温度で10時間以上50時間以下保持した後に急冷する溶体化熱処理と、180℃以上260℃以下の温度で0.5時間以上50時間以下保持した後に放冷する人工時効熱処理とを順次施すことを特徴とする。
本発明(請求項1−6)によれば、耐熱性、鋳造性に優れ、安価なマグネシウム合金及びマグネシウム合金部材の製造方法を提供することができる。
本発明(請求項2、5)によれば、Zn添加により、人工時効熱処理後の析出量が増加し、析出物も均一・微細に分布するようになり、合金の耐熱性を損なうことなく、機械的性質の向上に寄与する。
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係るマグネシウム合金について説明する。マグネシウム合金は、アルミニウムを7〜12.6質量%、希土類元素を3〜6質量%、マンガンを0.05〜0.50質量%含有し、残部がマグネシウム並びに不可避の不純物(例えば、Fe等)よりなる。組成の数値範囲の臨界的意義は、以下の通りである。
アルミニウムは、マグネシウム合金中に7〜12.6質量%含まれている。これにより、合金の強化に寄与し、湯流れ性と機械的性質の向上に寄与する。また、アルミニウムがこの範囲(7〜12.6質量%)で含有されていると、熱処理を施すことにより、マグネシウムとアルミニウムとの化合物相あるいはマグネシウムとアルミニウムと後述する希土類元素(RE)との化合物相(以下、Al化合物相とする)が、結晶粒界ではなく結晶粒内に析出しやすくなる。これにより、結晶粒界に析出するAl化合物相が減少するため、粒界すべりが抑制され、合金の高温強度向上が図られる。また、Al化合物相が結晶粒内に析出するため、結晶粒内における析出硬化も強度の向上に寄与すると考えられる。一方、アルミニウムを同程度(8質量%程度)含有し、RE(希土類元素)を含有しないAZ91D合金(JIS規格)においては、熱処理をしてもAl化合物相が結晶粒界に析出するため、粒界すべりのためにかえって高温強度が著しく低下することが知られている。アルミニウムの含有量が7質量%未満の場合は、湯流れ性が低下し、鋳型内への材料充填が不足する不廻り不良を起こすおそれがある。加えて、熱処理後のAl化合物系の析出量の低下に伴い、材料硬さ、耐力が低下するおそれがある。一方、アルミニウムの含有量が12.6質量%より多い場合は、Mg−Alの2元素の固溶限を超えることとなるため、凝固時の初晶がMg相からMg−Al化合物相に変化することに起因して湯流れ性の低下が生じるおそれがある。アルミニウムの含有量の好ましい範囲は、7〜12質量%であり、より好ましくは7〜11質量%である。
希土類元素(RE)は、マグネシウム合金中に3〜6質量%含まれている。これにより、REは初晶α−Mg相に固溶し、固溶強化により耐熱性の向上に寄与する。また、REは初晶α−Mg相の結晶粒界にMg−RE系化合物相(MgCe、MgLa等)を形成し、粒界すべりを抑えることによって、合金の耐熱性向上に寄与する。REの含有量が3質量%未満の場合は、耐熱性向上要因となる初晶α−Mg相のセル間隙および粒界でのMg−RE系化合物相の晶出量が減少し、耐熱性が低下するおそれがある。一方、REの含有量が6質量%より多い場合は、Mg−RE系化合物相の晶出量の増大による伸び、靭性の低下を招くおそれがある。また、6質量%を超えるREの過剰添加分は、実質的には鋳造時の溶湯保持状態において坩堝下部へ沈降分離するため、過剰含有が困難であるという製造上の問題も有する。なお、REは、原子番号57〜71の単体を用いる場合だけでなく、単体の分離困難性に鑑みてミッシュメタルを用いることができる。ミッシュメタルは、原子番号57〜71の希土類元素のうち少なくとも1種を主成分とする希土類合金である。REの含有量の好ましい範囲は、3.2〜5質量%であり、より好ましくは3.5〜4.5質量%である。
マンガンは、マグネシウム合金中に0.05〜0.5質量%含まれている。これにより、溶融状態で優先的に、不可避の不純物であるFeと化合物を形成することにより、耐食性に有害なFe元素を無害化し、耐食性を向上させる。マンガンの含有量が0.05質量%未満の場合、前記効果が弱まり耐食性が低下するおそれがある。一方、マンガンの含有量が0.5質量%より多い場合は、耐食性向上効果が飽和するので添加する意味がなくなる。マンガンの含有量の好ましい範囲は、0.08〜0.4質量%であり、より好ましくは0.1〜0.3質量%である。
このように、本実施形態のアルミニウム合金は、優れた湯流れ性を有するため、鋳造用マグネシウム合金として好適に使用することができる。また、ダイカスト鋳造のように急速に冷却凝固させて、Mg−RE系化合物相を結晶粒界に分散させなくても、後述する熱処理を施すことにより合金の強度を向上させることができる。そのため、特に重力鋳造法に適したマグネシウム合金である。なお、ダイカスト鋳造法においても、鋳造後のマグネシウム合金部材に後述する熱処理を施せば、十分に強度を向上させることができるため、ダイカスト鋳造法に使用しても問題ない。この場合、鋳物に対して熱処理を行わない通常のダイカスト鋳造法よりも、鋳物に対する熱処理が可能な減圧ダイカスト鋳造法、特に真空ダイカスト鋳造法において好適に使用することができる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係るマグネシウム合金部材の製造方法について説明する。マグネシウム合金部材の製造方法として、本実施形態2のマグネシウム合金部材の製造方法は、実施形態1に記載のマグネシウム合金により鋳造されたマグネシウム合金部材に対して、溶体化熱処理と人工時効熱処理を順次施す。
ここで、鋳造は重力鋳造を採用するのが好ましいが、これに限られるものではない。また、重力鋳造に使用される鋳型の材質は、砂あるいは石膏を主成分とするものが適するが、これらに限定されるものではない。
溶体化熱処理は、母相である初晶α−Mg相中において、析出に寄与する溶質元素(Al、RE)を過飽和固溶させた上で、その後の急冷により析出物(Al化合物、Mg−RE系化合物)の拡散形成に必要な焼入れ空孔を材料中に導入する処理である。この処理では、400〜430℃の温度で10〜50時間保持した後に急冷する。400℃より低い場合は、溶質元素の母相への固溶度が不足となるため、後に行う人工時効熱処理後の析出強化も不足するおそれがある。一方、430℃より高い場合は、合金の溶融開始温度が約437℃であるので、合金鋳物品自体が部分溶解してしまう不具合が生じる。また、10時間未満の場合は、前述の400℃より低い場合と同様に析出強化量が不足し、材料強度が低下するおそれがある。一方、50時間より長い場合、初晶α−Mg相並びに共晶β−Mg相のオストワルド成長による粗大化が生じ、機械的性質が著しく劣化するおそれがある。加えて、長時間の熱処理はエネルギー消費量増大に伴うコスト上昇という生産上の制約もある。溶体化熱処理での処理温度の好ましい範囲は410〜420℃である。溶体化熱処理での保持時間の好ましい範囲は10〜30時間である。
人工時効熱処理では、180〜260℃の温度で、0.5〜50時間保持した後に放冷する。180℃未満の場合は、単位時間当たりの析出物(Al化合物、Mg−RE系化合物)に係る析出量が適正範囲内の温度に比べて少ないため、析出強化能低下による材料強度、硬さの低下を招くおそれがある。一方、260℃より高い場合は、単位時間当りの析出物に係る析出量は増大するものの、析出速度の増加に起因した鋳物内部における析出サイズ及び化合物分布の不均一が顕著となり、1個の鋳物製品内での各部位間の機械的性質(硬さ、引張強さ等)のバラツキ、並びに同一複数個の熱処理ロット内での個々の製品間での機械的特性値のバラツキが顕著となるおそれがある。また、0.5時間未満の場合は、析出物に係る時効析出量の不足により機械的特性の向上が不足するおそれがある。一方、50時間より長い場合は、析出物の粗大化と結晶構造が変化することにより母相(初晶α−Mg相)と非整合な安定相となってしまうため、強化に必要な転位をピンニングし整合するための歪場がなくなるという、いわゆる過時効軟化状態となるので鋳物製品の機械的特性が低下するおそれがある。人工時効熱処理での処理温度の好ましい範囲は200〜250℃である。人工時効熱処理での保持時間の好ましい範囲は10〜30時間である。
以上に示したマグネシウム合金は、軽量化及び耐熱性の双方が要請される部品に適用することができる。例えば、車両のシリンダヘッドカバー、シリンダブロック、トランスミッションケース、オイルパン等に用いることができるが、これらに限定されるものではない。
(実施形態3)
本発明の実施形態3に係るマグネシウム合金について説明する。マグネシウム合金は、アルミニウムを7〜12.6質量%、希土類元素を3〜6質量%、マンガンを0.05〜0.50質量%、亜鉛を0.3質量%以上2質量%以下含有し、残部がマグネシウム並びに不可避の不純物(例えば、Fe等)よりなる。つまり、実施形態3に係るマグネシウム合金は、亜鉛を0.3質量%以上2質量%以下含有している点が実施形態1に係るマグネシウム合金と異なる。亜鉛に係る組成の数値範囲の臨界的意義は、以下の通りである。
亜鉛は、マグネシウム合金中に0.3〜2質量%含まれている。これにより、合金の耐熱性を損なうことなく、機械的性質の向上に寄与する。具体的には、亜鉛添加により人工時効熱処理後の析出量が増加し、析出物も均一・微細に分布するようになる。この効果による機械的性質の向上は亜鉛が0.3〜2質量%で顕著である。亜鉛の含有量が0.3質量%未満の場合、析出物の生成サイトが増加せず析出量も変わりがないことから、機械的特性は顕著に向上しない。一方、亜鉛の含有量が2質量%より多い場合、亜鉛添加による析出の増加量が飽和するため、これより多い亜鉛添加は特性向上およびコスト的観点から意味がない。亜鉛の含有量の好ましい範囲は、0.4〜1.8質量%であり、より好ましくは0.5〜1.4質量%である。
なお、実施形態3に係るマグネシウム合金により鋳造されたマグネシウム合金部材については、実施形態2に係るマグネシウム合金部材の製造方法と同様に、実施形態3に記載のマグネシウム合金により鋳造されたマグネシウム合金部材に対して、溶体化熱処理と人工時効熱処理を順次施すことによって製造される。
本発明の実施例について比較例と対比しながら説明する。ガス溶解炉にて表1に記載の各合金のインゴットを約60〜100kg溶解し、フラックスによる精錬処理後、溶湯温度700〜730℃に保持して、有機自硬性砂型に柄杓にて注湯し、凝固完了後、砂型をバラして所定の鋳造品を取り出し、各種評価に供した。
Figure 2006176873
ここで、希土類元素としては、ミッシュメタルを用いた。ミッシュメタルの基本組成は、ミッシュメタルを100質量%としたとき、重量比で、セリウムが50質量%、ランタンが27質量%、ネオジム11質量%、プラセオジムが5質量%、残部が他の希土類元素である。表1の希土類元素量(RE;質量%)は、マグネシウム合金からセリウム、ランタン、ネオジム、プラセオジムの分析値を求め、それらの合計量(質量%)を求め、その合計量(質量%)×(100/93)から求められる。
また、有機自硬性砂型は、キャビテイ部を7号〜9号けい砂にて造形し、バックアップ部を5〜7号けい砂にて造型したものである。また、有機自硬性砂型中の粘結剤にはフェノールレジン系バインダを使用した。さらに、有機自硬性砂型中の防燃剤としての砂には予めケイ弗化カリウムを微量混合した。
また、鋳造品は、重量3.8kgの乗用車V6エンジン用オイルパン又はJIS H5203砂型試験片用鋳物(1型について試験片4本)であり、重力鋳造時には、溶湯の燃焼を防ぐために、砂型内部のキャビテイ部および注湯部にSFガスを吹き付けた。
そして、鋳造品の特性評価としては、硬さ特性、引張特性、軸力特性、湯流れ性を測定した。
硬さ特性については、ビッカース硬さを測定した。引張特性については、引張り強さ、0.2%耐力、伸びを測定した。
軸力特性については、残留軸力保持率を測定した。残留軸力保持率の測定では、マグネシウム合金で形成されたオイルパンのフランジのボルト締結部(座面外径20mm、内径(ボルト貫通穴)9〜9.5mm、厚さ約10mm)を供試材100とした。そして図2に模式的に示すように、雄ネジをもつボルト200を、ワッシャ105(外径18mm、厚さ3mm、A6061−T6)を介して供試材100の挿通孔101に挿通すると共に、相手材300のネジ孔301に締結した。使用したボルト200はM8×25、強度区分10.9(JIS B1180六角ボルト相当)の鋼製とした。相手材300はJIS規格ADC12のアルミダイカスト合金部材とした。そして、ボルト200を初期軸力7.8KNで締結した。軸力は、ボルト200に付着させた歪みゲージ400を用いて測定した。その後、ボルト200で締結した供試材100及び相手材300からなる試験片を大気炉に装入し、150℃、300時間の条件で高温保持し、その後、室温まで冷却した。その後、ボルト200の軸力を再び測定した。そして前記した初期軸力に対する軸力保持率を求めた。この場合、軸力保持率は複数個の平均値として求めた。ここで、軸力保持率が76%であることは、上記した条件における高温保持により、初期軸力7.8KN×0.76の軸力に低下したことを意味する。なお、超音波軸力測定法によってもボルト200の軸力を測定したが、歪みゲージ400を用いた場合と同様な結果が得られた。
湯流れ性については、鋳造品であるオイルパンおよびJIS H5203による砂型試験片の鋳造時において、砂型内のキャビティへの充填の度合い、溶湯が進入する押湯部やガス抜き穴の空間における溶湯充填量の大きさを評価基準とした。ここで5段階評価とし、湯流れ性について優の評価を1とし、湯流れ性について劣の評価を5とした。
(硬さ特性;時効硬化曲線)
鋳造品(実施例1、実施例2、比較例3、比較例4、比較例5;表1参照)を412℃×20時間で溶体化熱処理した後、200〜240℃で所定時間の人工時効熱処理した場合の時効硬化曲線の調査結果を図1に示す。比較例3はダイカスト加圧鋳造用合金である市販材AE42材であり、比較例4はAE42材のRE量を2%から4%に増量したものであるが、比較例3および比較例4は熱処理による時効硬化をほとんど示さないことがわかる。このことは、Al量をさらに6%近くに増量した比較例5においても同様であり、時効温度が200℃、220℃および240℃のいずれかの場合においても溶体化熱処理体(A.Q.)に比べて時効処理後の硬さの上昇はHVで5程度と小さく、時効硬化能がほとんどないことが明らかである。これに対して実施例1および実施例2の場合は、適切なAl、RE量の配合を行うことにより200℃、220℃および240℃のいずれの時効温度においても、時効硬化による顕著な硬さの向上が認められ、熱処理による機械的特性の改善が可能であることが示される。一方、実施例2の合金に対して0.58%の亜鉛を追加配合した実施例6の場合には、亜鉛添加による析出強化能の増加に起因した硬さの向上が240℃の時効硬化曲線において認められる。
(硬さ特性、引張特性、軸力特性、湯流れ性)
図1の結果等を基に選定した熱処理条件とビッカース硬さの測定結果を表2に示す。表2の熱処理条件を施した場合の室温での引張特性と150℃、300時間の高温保持後の残留軸力保持率、および鋳造時の湯流れ性の評価結果をそれぞれ表3に示す。
Figure 2006176873
Figure 2006176873
まず、比較例1〜3は市販材のAZ91D材、AS21材およびAE42材の場合であるが、比較例1のAZ91D材では引張強さ、耐力および鋳造時の湯流れ性は良好であるものの、軸力保持率が23%と評価合金中で最も低く耐熱部品への適用が困難であることが示される。また、比較例2のAS21材、および比較例3のAE42材においては、軸力保持率が43%、46%と比較的良好で耐熱性部品への適用が期待されるが、引張強さ及び0.2%耐力が比較例1のAZ91D材に比べて著しく低く、従って鋳物部品の剛性不足が懸念され、加えて砂型鋳造時の湯流れ性も悪いことから鋳物製造時の不廻り欠陥、不良等の問題が生じやすい等、実用上の問題を有している。さらに、比較例4、比較例5の合金においては、耐熱性を示す軸力保持率がそれぞれ58%、52%と良好であるものの、0.2%耐力がそれぞれ42MPa、46MPaと著しく低いことから鋳物の剛性不足が懸念され、砂型鋳造時の湯流れ性もあまりよくない。
一方、比較例1〜5に対して、本発明の実施例1〜5の合金は、適切な溶体化・時効熱処理を施すことにより時効強化による特性改善がなされており、引張特性、硬さ及び軸力保持率において、前述した市販耐熱マグネシウム合金であるAE42材あるいはAS21材に比べて同等以上の優れた耐熱および機械的特性を有すると同時に、市販材で鋳造性に優れるAZ91D材と同等の湯流れ性を有している。また、本発明の実施例1〜5の合金は、WE43材、QE22材のように高価な耐熱性向上元素のY、Ag等を一切含んでいないことから、これらの材料に比べてコスト的に安価であり、この点においても従来に比べて優れている。
実施例1〜5の合金に対して、本発明の実施例6〜9の合金の場合は、亜鉛添加による析出強化能向上により、伸び、軸力保持率、鋳造性(湯流れ性)を実施例2と同等レベルに維持したまま、引張強さおよび0.2%耐力がさらに向上(引張強さで約20MPa、0.2%耐力で約30MPa)している。
(金属組織)
次に、金属組織について図面を用いて説明する。図3は、本発明の実施例2(表1〜3参照)に係るマグネシウム合金の金属組織を示した光学顕微鏡写真である。図4は、比較例4(表1〜3参照)に係るマグネシウム合金の金属組織を示した光学顕微鏡写真である。図5は、本発明の実施例6(表1〜3参照)に係るマグネシウム合金の金属組織を示した光学顕微鏡写真である。金属組織は、耐水ペーパーとバフ研磨後、グリコール液にてエッチングして観察したものである。実施例2と比較例4は、RE(3.60質量%と3.70質量%)とMn(0.24質量%と0.28質量%)の組成が近似しており、溶体化熱処理と人工時効熱処理の処理条件が共通する。ただし、実施例2はAlを9.26質量%含有し、比較例4はAlを3.73質量%含有する。実施例6は、実施例2の合金に対して0.58質量%の亜鉛を追加配合したものである。なお、図3(A)および図4(B)は低倍率で等しい倍率の光学顕微鏡写真であり、図3(B)、図4(B)、および図5は高倍率で等しい倍率の光学顕微鏡写真である。
図3および図4の比較から理解できるように図3に示す実施例2の金属組織によれば、初晶α−Mg相の粒のサイズは、図4に示す比較例4の金属組織よりも微細化していることがわかる。このことから、Alの組成は金属組織の微細化に寄与するものと推察される。また、図3に示す実施例2の金属組織によれば、Al化合物が初晶α−Mg相内(結晶粒内)に析出しており、結晶粒界にはほとんど析出していないことがわかる。また、図3に示す実施例2の金属組織は、図4に示す比較例4の金属組織に比べて、Mg−RE系化合物相が結晶粒界に多く生成している。この化合物相が多くなることにより粒界すべりを効果的に防止でき、マグネシウム合金の耐熱性を高めることができるものと推察される。なお、この化合物相は走査型電子顕微鏡部とエネルギー分散型X線分析部とをもつ装置(SEM−EDX)により同定した。
また、図5に示す実施例6の金属組織によれば、初晶α−Mg相の粒のサイズは、図3(B)に示す実施例2の金属組織よりもさらに微細化していることがわかる。このことから、亜鉛の組成は金属組織の微細化に寄与するものと推察される。また、図5に示す実施例6の金属組織によれば、図3に示す実施例2の金属組織と同様に、Al化合物が初晶α−Mg相内(結晶粒内)に析出しており、結晶粒界にはほとんど析出していないことがわかる。また、図5に示す実施例6の金属組織は、図3に示す実施例2の金属組織と同様に、図4に示す比較例4の金属組織に比べて、Mg−RE系化合物相が結晶粒界に多く生成している。図5に示す実施例6の金属組織についても、図3に示す実施例2の金属組織と同様に、Mg−RE系化合物相が多くなることにより粒界すべりを効果的に防止でき、マグネシウム合金の耐熱性を高めることができるものと推察される。
溶体化熱処理した後、人工時効熱処理した場合の時効硬化曲線の調査結果を示したグラフである。 軸力特性を測定する状態を模式的に示した構造図である。 本発明の実施例2に係るマグネシウム合金の金属組織を示した光学顕微鏡写真である。 比較例4に係るマグネシウム合金の金属組織を示した光学顕微鏡写真である。 本発明の実施例6に係るマグネシウム合金の金属組織を示した光学顕微鏡写真である。
符号の説明
100 供試材
101 挿通孔
105 ワッシャ
200 ボルト
300 相手材
301 ネジ孔
400 歪みゲージ

Claims (6)

  1. アルミニウムを7質量%以上12.6質量%以下、希土類元素を3質量%以上6質量%以下、マンガンを0.05質量%以上0.5質量%以下含有し、残部がマグネシウムならびに不可避の不純物からなることを特徴とするマグネシウム合金。
  2. アルミニウムを7質量%以上12.6質量%以下、希土類元素を3質量%以上6質量%以下、マンガンを0.05質量%以上0.5質量%以下、亜鉛を0.3質量%以上2質量%以下含有し、残部がマグネシウムならびに不可避の不純物からなることを特徴とするマグネシウム合金。
  3. 400℃以上430℃以下の温度で10時間以上50時間以下保持した後に急冷する溶体化熱処理と、180℃以上260℃以下の温度で、0.5時間以上50時間以下保持した後に放冷する人工時効熱処理とが順次施されたことを特徴とする請求項1又は2記載のマグネシウム合金。
  4. アルミニウムを7質量%以上12.6質量%以下、希土類元素を3質量%以上6質量%以下、マンガンを0.05質量%以上0.5質量%以下含有し、残部がマグネシウムならびに不可避の不純物からなるマグネシウム合金を鋳造して得られたマグネシウム合金部材に対して、400℃以上430℃以下の温度で10時間以上50時間以下保持した後に急冷する溶体化熱処理と、180℃以上260℃以下の温度で0.5時間以上50時間以下保持した後に放冷する人工時効熱処理とを順次施すことを特徴とするマグネシウム合金部材の製造方法。
  5. アルミニウムを7質量%以上12.6質量%以下、希土類元素を3質量%以上6質量%以下、マンガンを0.05質量%以上0.5質量%以下、亜鉛を0.3質量%以上2質量%以下含有し、残部がマグネシウムならびに不可避の不純物からなるマグネシウム合金を鋳造して得られたマグネシウム合金部材に対して、400℃以上430℃以下の温度で10時間以上50時間以下保持した後に急冷する溶体化熱処理と、180℃以上260℃以下の温度で0.5時間以上50時間以下保持した後に放冷する人工時効熱処理とを順次施すことを特徴とするマグネシウム合金部材の製造方法。
  6. 前記鋳造は重力鋳造であり、該重力鋳造に使用する鋳型の材質が砂あるいは石膏を主成分とすることを特徴とする請求項4又は5記載のマグネシウム合金部材の製造方法。
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