JP3673768B2 - 記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の記録モードで画像を記録することが可能な記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の記録装置においては、一般に搬送ローラにピンチローラを圧接し、搬送ローラを駆動回転することによって記録シートを搬送し、搬送された記録シートに所定記録を行うようにしており、この搬送ローラを駆動するべくステッピングモータ等の駆動がギヤ列等を用いて伝達される。
【0003】
前記記録装置においては、ドット単位で構成した記録要素をもった記録ヘッドをキャリッジの移動に伴って駆動して一行記録を行い、一行記録毎に記録シートを前記一行記録分搬送するように構成されている。
【0004】
また、最近は記録の高密度化が進み、記録要素は数ドツト/mmという微小単位に配列されているものが多くなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
(1)このような記録装置において、例えば高速のキャリッジ駆動による記録モード時においても、通常のキャリッジ速度による記録モード時においても、シートの搬送速度は常に一定であった。
【0006】
記録モードが高速の場合は、記録そのものも間引にて形成されるドラフトモードが一般的で、用途を考え合わせるとシートの搬送精度はあまり重要ではなく、重要度としては搬送速度が一番となる。一方、例えば、記録モードが高速でない場合は搬送精度、音が重要視されるのが理想である。
【0007】
このとき、搬送精度、音を重視した駆動方法によって高速の記録モードを行うと、キャリッジの高速にそぐわない低速の搬送となってしまう問題があった。一方、高速の記録モードに合わせた高速の駆動方法によって通常の記録モードを行うと、搬送精度が悪いため高密度の記録ヘッドによる画像が損なわれてしまう問題があった。
【0008】
また最近では、微小なドット単位での記録が行われるため、シートの搬送もより精度を増したもの、また搬送速度も要求され、さらには騒音も押えたいとの要求がある。このような要求を満足させるためには、搬送を行うための、例えばモータの駆動カーブ等を細かく制御する必要がでてくる。
【0009】
その結果、通常使用されるシートの搬送量、例えば1/6″送り等に必要な駆動量、すなわちステッピングモータ使用時にはステップ数を目一杯使用した駆動カーブにて制御を行わなければならない。一方、シートの搬送量は幾つかの通常使用される搬送量の他に、さらに細かな搬送量をもっている。そのため前記駆動カーブにて制御できない、すなわちステッピングモータ使用時ではステップ数が足りない場合は、一定のパルスレートにてステッピングモータを駆動することになる。
【0010】
しかし、このような一定のパルスレート(ランプアップダウンなしの自起動駆動)を行うと駆動速度が遅く、またそのため、騒音を発生してしまうという問題がでてくる。
【0011】
短い搬送時においても駆動カーブを理想して搬送を行うよう各搬送量全てにおいて駆動カーブを設定するような構成では、搬送量自体が無数にあるため非常に繁雑な制御の構成となってしまい、処理時間等も考え合わせると実際的ではない。小さい搬送量における騒音等の問題を解決するため、駆動カーブを立ち上げ時と立下げ時を対称形にしておき、各搬送量においてその立ち上げカーブの途中までを用い、その対称となる立下げの位置より後半の立下げカーブを用いるという方法もある。この場合の所定量以上の送りは、その対称形カーブの全立上げカーブと一定速度域と全立下げカーブにて構成されるカーブにて駆動されることとなるが、前述のような騒音、速度、精度の要求に対しては立上げ立下げが対称形という条件がつくため、通常送り時にも不十分なものとなってしまう問題があった。
【0012】
(2)記録速度向上のため、一行内の空白部を記録時よりも高速でキャリッジを走査させる、いわゆるスキップ動作を行なっている。また、キャリッジターンも同様に、高速でキャリッジを走査させる、いわゆる高速リターン動作を行なっている。
上記制御によると、記録速度の向上を図ることはできるが、キャリッジが高速で動くため摺動音が大きくなったり、記録精度が低下してしまい、高画質モードにおいては問題となっていた。
【0013】
(3)記録方式としてインクジェット方式を採用した場合、インクジェット記録ヘッドを非記録時に保護するキャッピングや、記録状態を維持するためにワイピングが行なわれる。
このとき、高速にキャリッジを走査してワイピングを行なうとワイピング動作時の可動音が大きくなり、記録モードによっては好ましくない。一方、低速でワイピグ動作を行なうと、全体のスループットが低下し、高速記録モードでは好ましくない。
【0014】
(4)同様に、記録方式としてインクジェット方式を採用した場合、インクジェット記録ヘッドの駆動状態によって、特に高速記録モードでは、記録ヘッドの温度上昇が変化するため、インクの吐出量が変動し、濃度ムラを生じることがあった。また、吐出したインクをノズル(吐出部)に再充填するのに必要なリフィル時間が、高速記録モードでは充分確保されにくい問題も生じていた。
【0015】
一方では、高画質記録モードにおいて、より濃度の高い記録画像を得ることが望まれている。
【0016】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、複数の記録モードを有する記録装置において、適切な記録条件で記録を行なうことのできる記録装置を提供することを目的とする。
【0017】
また本発明は、複数の記録モードで画像記録可能な記録装置において、所定の記録動作後の記録ヘッドに対する記録媒体の相対的な移動を適切に行うことが可能な記録装置を提供することにある。また本発明は、複数の記録モードで画像記録可能な記録装置において、適切な記録ヘッドの走査を行うことが可能な記録装置を提供することにある。また本発明は、複数の記録モードで画像記録可能な記録装置において、適切なインクの吐出量制御を行うことが可能な記録装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、インクを吐出する複数の吐出口を備え、前記吐出口からインクを吐出し記録を行う記録ヘッドを用い、ホスト装置から送られてくる記録データに応じた画像記録を、高品位モードを含む記録速度の異なる複数の記録モードで行うことが可能な記録装置において、前記記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させる移動手段と、前記複数の記録モードの中から記録モードを選択する選択手段と、前記選択手段で選択された記録モードに対応して前記移動手段による移動速度を制御する制御手段と、単位時間あたりに前記記録ヘッドから吐出されたドット数に基づいて、記録ヘッド温度を算出する算出手段と、環境温度に基づいてインクの吐出量が等しくなる記録ヘッド温度の目標温度を求め、前記記録ヘッド温度と前記目標温度との温度差に基づいて前記記録ヘッドの駆動テーブルのアドレスを選択し、選択したアドレスで決まる駆動情報に基づいて、前記記録ヘッドから吐出するインクの吐出量を制御する吐出量制御手段を有し、前記選択手段が前記高品位モードを選択した場合、前記吐出量制御手段は前記高品位モードにおけるインクの吐出量が他の記録モードにおけるインクの吐出量より大きくなるように前記温度差を補正することを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明が適用される記録装置の全体構成について、図1の全体斜視図及び図2の給紙部の正面図を参照して説明する。
【0024】
給紙部は、30°〜60°の角度をもって本体側に取りつけられており、セットされた記録シートは印字後、水平に排紙される構成となっている。
【0025】
給紙部は、給紙ローラー1、分離爪2、可動サイドガイド3、ベース4、圧板5、図示しない圧板バネ、駆動ギア、リリースカム、爪バネ、解除カム及び解除レバー10等から成る。通常はリリースカムが圧板5を押して下げているので、記録シートは給紙ローラー1から離れている。
【0026】
記録シートがセットされた状態で、搬送ローラーの駆動を駆動ギアにより、給紙ローラー1及びリリースカムに伝達する。リリースカムが圧板5より離れると、圧板5が上昇し、給紙ローラー1と記録シートが接し、給紙ローラー1の回転に伴いピックアップされ、分離爪2により1枚ずつ分離される。分離された記録シートは送紙部へ送られる。給紙ローラー1とリリースカムは、記録シートを送紙部へ送り込むまで1回転し、再び圧板5を給紙ローラー1に対してリリースした状態で送紙ローラー1からの駆動が切られ、このイニシャル状態を保持する。
【0027】
送紙部は、図示しない搬送ローラー、ピンチローラー、ピンチローラーガイド、ピンチローラーバネ、PEセンサーレバー、PEセンサー、PEセンサーバネ、上ガイド、プラテン等から成る。送紙部に送られた記録シートは、プラテンとピンチローラーガイド、上ガイドをガイドにして、搬送ローラーとピンチローラーのローラー対に送られる。このローラー対の前にPEセンサーレバーが設けられており、記録シートの先端を検知し、記録シート上での印字位置を求めている。ピンチローラーはピンチローラーガイドをピンチローラーバネにより付勢することで搬送ローラーに押し付けられ、記録シートの搬送力を生み出している。前記ローラー対により送られた記録シートは、LFモータ2によりローラー対が回転することにより、プラテン上を沿って進み、記録ヘッド27により所定の画像情報に基づいた記録を行うことができる。
【0028】
記録ヘッド27は、インクタンクと一体に構成され、交換容易なインクジェット記録ヘッドである。記録ヘッド27には、電気変換体を備え、印加される熱エネルギーにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して吐出口よりインクを吐出させ記録を行う。
【0029】
キャリッジ部は、記録ヘッド27を取り付けるキャリッジ28と、キャリッジ28を記録シートの搬送方向に対し直角方向に往復走査させるためのガイド軸29と、キャリッジ28の後端を保持し、ヘッド〜紙間を維持するガイド30、キャリッジモータ48の駆動をキャリッジ28に伝達するタイミングベルト31、タイミングベルト31を張設するアイドルプーリー32、記録ヘッド27へ電気基板からのヘッド駆動信号を伝えるためのフレキ基板33等からなる。前記記録ヘッド27はキャリッジ28と一体となり、走査されることにより、プラテン上を搬送される記録シート上に画像を形成する。
【0030】
排紙部は、排紙ローラー34と、排紙ローラー34に搬送ローラーの駆動を伝える伝達ローラー35と排出を補助するための拍車36、排紙トレー37が設けられている。排紙ローラー34及び拍車36により、排紙トレー37上に記録シート上の画像を汚すことなく排紙トレー37に排出される。
【0031】
クリーニング部は、記録ヘッド27のクリーニングを行うポンプ42と記録ヘッド27の乾燥を抑えるためのキャップ49及び搬送ローラーからの駆動を給紙部及びポンプ42に切り換える駆動切り換えレバー43から構成されている。給紙時クリーニング時以外は駆動切り換えレバー43は図1に示した位置にあり、搬送ローラーの軸芯を中心に回転する不図示の遊星ギヤを所定の位置で固定しているので、搬送ローラーの駆動はポンプ42、そして、給紙部へは伝達されない。キャリッジ28を移動させることで、駆動切り換えレバー43を矢印A方向に移動させると搬送ローラーの正転、逆転に応じて、遊星ギヤが移動し、搬送ローラーの正転時に給紙部に駆動が伝達され、逆転時にポンプ42に駆動が伝達させる様に構成されている。
【0032】
また、搬送ローラー等を駆動するLFモーター6及び、キャリッジ28を駆動するキャリッジモーター48は、不図示のドライバーより送られる信号に応じて所定の角度だけ回転するステッピングモーターを用いている。
【0033】
(実施例1)
次に、本発明の紙送り制御に関する実施例1について、図3乃至図7を参照して説明する。
【0034】
図3は、実施例1の回路構成図であり、ホストコンピュータ101からのデータをCPU等を有する制御部102が受信する。103、104、105は記録ヘッド27、搬送モータ26、キャリッジモータ48を夫々駆動するドライバである。
【0035】
図4と図5乃至図7は、紙送り制御を説明するためのフローチャート及びテーブルであり、以下、これに従って説明する。
【0036】
データの受信・展開(ステップS1)、印字(ステップS2)の後、紙送り量が20/360インチ以上か否かの判断を行う(ステップS3)。これは紙送りが1パルス=1/360インチとなっているため、20パルス以上の送りか、それ未満の微少送りか否かの判断を行っているものである。
【0037】
微少送りの場合は、ステップS4でCの汎用カーブ(図7)に従って送り量の略半分のランプアップをランプアップテーブルの途中迄行い、残り略半分のランプダウンをランプダウンテーブルの途中以降にて行う。
【0038】
次に、微少送りでない場合には、SHQモードか否かの判断を行う。(ステップS5)SHQモードでない場合は、テーブルB(図6)による2−2相の励磁により紙送りを行う。(ステップS6)この場合の紙送りは早い速度の紙送りが行われる。SHQモードの場合には、テーブルA(図5)による1−2相の励磁により紙送りが行われる(ステップS7)。この場合は紙送り速度は遅いが、静かで精度も向上した紙送りが行われる。
【0039】
この結果としてSHQモードの紙送りは通常1−2相,20パルス以下の場合は2−2相にて行われることになる。
【0040】
以上のとおり、本実施例では、▲1▼の微少送り時のテーブルと通常のテーブルを分ける、▲2▼HQ、HSに対してSHQモードにては静かで精度の出るランプアップ定数及び励磁方法(1−2相)をとることを特徴とする。
【0041】
より詳細には、所定量以上の送りを制御するための少なくとも一つの専用の立上げ、立下げ時の速度カーブと、少なくとも一つの汎用の立上げ、立下げ時の速度カーブとを有し、前記汎用の速度カーブの制御は送り量に応じて前記速度カーブの立上げ途中までと、立下げの途中よりを用いるようにしたものである。
【0042】
これによれば通常使用する所定量のシートの搬送時には理想的な立上げ、立下げの制御することが可能となり、精度、速度、騒音といった要求を満足することが可能となる。一方所定量以下のシートの搬送時も、どのような搬送量の時にも同一のカーブを用いることができ、一定パルスレート駆動時に発生する音の問題、速度の問題も解決できる駆動が可能となる。
【0043】
また、複数の画像記録モードに応じて駆動速度を異なるモードで制御するものである。
【0044】
又、前記画像記録モードがサイレント画像記録モードの場合、シートの駆動手段の駆動方法も音を重視した制御を行うものである。
【0045】
又、前記画像記録モードが高品位画像記録モードの場合、シートの駆動手段の駆動方法も搬送精度を重視したモードにて制御するものである。
【0046】
これによれば、記録手段とシートの相対移動時に画像記録モードに合った駆動を行うことが可能となる。またサイレントの画像記録モード時には搬送音も静かであるシート搬送が実現でき、また高品位の画像記録モード時には搬送精度が良いシート搬送が可能となる。
【0047】
(実施例2)
次に、本発明のスキップ及び高速リターン制御に関する実施例2について、図8、9を参照して説明する。
【0048】
HQモードにおいては、一般に全体としての印字速度向上のためにキャリッジ制御として以下の2点の速度切換えを行っている。
▲1▼スキップ動作:図8(A)に示すように一行内の印字中に多くの空白部がある場合には、一連のブロック(図中では前半の5個のA)を173cpsにて印字後速度の切換えを行う。この際、173cpsの印字速度より徐々に248cpsの速度迄変化させる。所定量この速度にてキャリッジ移動を行った後、徐々に173cpsの速度迄戻す。こうして、次の一連のブロック(図中では後半の5個のA)を173cpsの印字速度にて駆動させる。
▲2▼高速リターン動作:図に示すように印字をせずキャリッジリターンさせる場合は高速の248cpsにて行う。
【0049】
上記制御によると印字速度の向上は図られるが、キャリッジが高速で動くため摺動音が大きくなり、また高周波の耳障りな音となる問題がある。また速度を高速から印字速度へ切り換える時に生じる速度ムラによる印字精度ダウンを完全に防止できない。
【0050】
そこで本実施例では、スピードを重視したHQモードに対して印字精度・音を重視したSHQモードにては、スキップ動作及び高速リターンを止めることにより、速度ムラによる印字の乱れ及び摺動音による音を小さく抑えることを可能とする。
【0051】
次に、図9に示すフローチャートに従って、動作説明を行う。ステップS11でデータ受信を行い、ステップS12、S13で印字を始める前に現在のモードがSHQか、HQか、HSかの判断を行う。
【0052】
SHQモードの場合は印字速度が124cpsに設定され、スキップ及び高速リターンはなしと設定される(ステップS14〜S16)。一方、HQモードの場合は印字速度が173cpsに設定され、スキップは高速の248cpsにまたリターン時も高速の248cpsに設定される(ステップS17〜S19)。HSモードの場合は、スキップ及び高速リターンはなく印字及びリターン時ともに248cpsに設定される(ステップS20〜S21)。
【0053】
その後、ステップS23で設定されたスキップ、リターンモードに応じた印字を行なう。
【0054】
(実施例3)
次に、キャッピング及びワイピング制御に関する実施例3について、図10、11を参照して説明する。
【0055】
本実施例のインクジェット記録装置は、インクを吐出して、記録媒体に画像を形成する記録ヘッド、記録ヘッドを搭載して左右方向に往復移動するキャリッジ、キャリッジを案内するガイド軸、ヘッドフェイス面の紙粉等のゴミや、付着したインクを除去するワイパー、ヘッドフェイス面のノズルの目詰まりを防止したり、さらには吸引回復を行なうためのキャップ等から構成される。
【0056】
以上のような構成において、記録媒体を記録ヘッドと対向する位置に保持するプラテン面に、紙送りモータによって駆動された送紙ローラにより、記録媒体が送給され、キャリッジがガイド軸に沿って往復移動することにより、記録媒体に画像が形成される。そして、右側のキャップ近傍にキャリッジが移行することによりワイピング動作が行なわれる。なお、記録の速度は往復移動するキャリッジの速度によって決まる。このインクジェット記録装置においては、記録ヘッドの性能をフルに生かした標準の印字速度モード(以後HQモード)と、記録状態を多少劣化させた(吐出するインク滴の量を間引いて印字するため、印字濃度が薄くなる)高速モード(以後HSモード)、さらには高画質印字が要求される今日の状況に対応した高詳細・低騒音モード(以後SHQモード)の3種類の印字速度モードを有している。
【0057】
ここで、上述したワイピング動作の詳細を図10を用いて以下に説明していく。
【0058】
図10において、201はワイパー104を保持するワイパーホルダー、202はカム面202Aを有し、そのカム面をキャリッジ102のレバー押下部102Aが通過することにより、押下するワイパーレバー、201Aはワイパーレバー202をワイパーホルダー201に回転自在に取り付けるためのレバー軸であり、これに取り付けられたワイパーレバー202は同図中のX方面には回転自在、Y方向には未回転となるように取り付けられ、さらに、不図示のバネ等の付勢力により、つねに図2の状態を保つようになっている。203はワイパーホルダー201を常に上方(ワイピング位置)に押上げているホルダーバネである。
【0059】
ここで、キャリッジ102が、キャップ105の方向に移動すると、レバー押下部102Aとカム面202Aは突き当たり、キャリッジ102のさらなる移動によりワイパーホルダー201はワイパーレバー202と共に押下される。これによりワイパー104は下方向に下がるためヘッドフェイス面101Aとワイパー104は非接触となり、ワイピングは行なわれない。そして、ヘッドフェイス面101Aとキャップ105が対向したのち、印字等の命令により、キャリッジ102は印字領域へと移動を開始する。
【0060】
このとき、レバー側トリガー部202Bとキャリッジ側トリガー部102Bが突き当たり、ワイパーレバー202は図10中矢印X方向に回転させられ、それにより、ワイパーホルダー201はホルダバネ203の圧力により、上昇し、ワイピングが可能な状態となり、さりに、キャリッジ102が印字領域側に進むと、ヘッドフェイス面101Aとワイパー104が接触し、ワイピングがなされる。
【0061】
しかしながら、従来の制御では次のような欠点があった。
▲1▼上述した3種類の印字速度モードを切換えて動作させたとき、SHQ(高精細及び低騒音)モードのときに、上述したワイピング動作時の可動音が大きく、SHQモードの特長を生かしきれない。
▲2▼ワイピング動作時の可動音を小さくしようとするとワイピング動作時のキャリッジの速度を遅くせざるをえないため、他のHQ・HS(標準・高速)モードで、記録媒体全体を印字するときのトータル的な印字速度が遅くなるという欠点が生じる。
【0062】
そこで本実施例では、ワイピング動作時の動作モードを標準タイプ(HQ、HSモード用)のものと、低騒音タイプ(SHQモード用)のものの2種類を保有し、各印字モードに対して、上記ワイピング動作モードを切り換えて使用することにより、記録装置の標準スペックをそこなうことなく、装置の低騒音化を図れるものである。
【0063】
ここで、実施例の動作を図11を用いて説明する。まず、ユーザーに印字モードを選択し、KEYスイッチ等で命令をする(S1)。そして、それを記録装置が判断(S2)し、撰択されたモードに印字モードがセットされ、それと同時に回復係のワイピング動作のモードも各印字モードに対応したものにセットされる(S3)。
【0064】
ここで、本実施例では、HQ・HSモードのときに標準速度のワイピング動作モードを行ない、SHQモードの時にワイピング速度は遅いが、騒音の少ないワイピング動作モードを行なうようにしている。
【0065】
以上のように複数の印字速度モードに対して、ワイピング動作のモードも複数個保有し、各印字モードの特長を生かすようにワイピング動作のモードを撰択することにより、記録装置のトータル的なスペックUPが可能となる。
【0066】
(実施例4)
次に、制御構成に関する実施例4について、図12乃至図18を参照して説明する。
【0067】
図12は本発明を実施した記録装置の制御回路の構成要素を示すブロック図である。301はCPU、302はROM、303はRAM、304はインターフェース、305はプリンタコントロールIC、306は記録ヘッド、307はヘッドドライバ、308はプリンタユニット、309はモータドライバ、310は操作パネルである。
【0068】
CPU301はホストコンピュータから受信したコマンド、データ類を解析し、最終的な記録内容に対応したビットイメージデータを作成すると共に、記録装置全体を制御するものである。ROM302にはCPU301の制御のためのプログラムが格納されている。RAM303はインターフェース304から受信したデータを一時的に格納すると共に、前記受信データをCPU301が解析して得られた記録データを格納する。インターフェース304はホストコンピュータとの接続部である。プリンタコントロールIC305はCPU301のバスラインに接続され、CPU301からの指令に基づきRAM303、インターフェース304、記録ヘッド306を制御する。記録ヘッド306は64ノズル(吐出口)の熱エネルギーを用いるインクジェット方式であり、インクタンク一体型でユーザーが交換可能なものである。ヘッドドライバ307はプリンタコントロールIC305が出力するヘッド制御信号を、記録ヘッドの駆動可能な電圧・電流レベルに変換する。プリンタユニット308は記録動作を行う機構部であり、キャリッジモータを駆動源として記録ヘッドを走査するキャリッジ系、紙送りモータを駆動源として記録紙を搬送する紙送り系、キャリッジ位置検出センサ、紙検出センサ等で構成される。モータドライバ309はキャリッジモータドライバと紙送りモータドライバで構成される。操作パネル310はスイッチと表示ランプで構成される。
【0069】
次にプリントモードについて説明する。プリントモードにはHS、HQ、SHQの3種類があり、HSモードでは印字速度が最も早くなりSHQモードでは印字品位が最も良くなる。HQは印字速度、品位とも中間的なモードである。ユーザーは操作パネル10を操作してモードを設定することが可能である。また、ホストコンピュータからコマンドを送ることによってもモードを変更することができる。
【0070】
図13に操作パネル310のモード設定部の外観を示す。321はモードスイッチ、322はHSモード表示ランプ、323はHQモード表示ランプである。プリンタの電源ON時にはHQモードが設定され、表示ランプ323のみが点灯する。モードスイッチ321を一回押すとSHQモードとなり表示ランプ322、323がともに点灯する。モードスイッチ321をもう一回押すとHSモードとなり表示ランプ322のみが点灯する。さらにモードスイッチ321を押すとHQモードに戻り、以後同様にしてモードを循環的に変更できる。
【0071】
図14にコマンドによるモード設定方法を示す。モードを設定するコマンドはESC“x”nの3バイトであり、nの値でモードを指定する。n=0のときはHSモードとなり、n=1のときはHQまたはSHQモードのうち、以前に設定されていた方のモードに戻る。
【0072】
図15に記録ヘッドの電気的な構成を説明するための回路図を示す。341はヒータ抵抗、342はダイオードであり、共に記録ヘッドのチップボード上に作成される。ヒータ抵抗341は全部で64個あり、記録ヘッドの各ノズル部に配置される。ダイオード342も同様に64個存在する。
【0073】
ヒータ抵抗341の一端は8本づつまとめて接続された上で各電流流入端子CM1〜CM8に接続されている。以後、CM1〜CM8端子をコモン端子と称する。ヒータ抵抗341の他端は、それぞれダイオード342のアノード側に接続されている。ダイオード342のカソード側は、コモン端子側の接続と直交する形で8本毎に接続され、電流流出端子SG1〜SG8に接続されている。以後、SG1〜SG8端子をセグメント端子と称する。
【0074】
記録ヘッドはコモン端子側からセグメント端子側に電流を流すことによって駆動される。駆動はコモン端子毎に行われる。最初、CM1端子に接続されているドライバをONすることによって、CM1端子に接続されている8本のヒータ抵抗に通電することが可能となる。その際、セグメント側のドライバのON/OFFを制御することによって通電するヒータ抵抗を選択する。ONされたセグメント端子に接続されたヒータ抵抗は通電により発熱して近傍のインクを発泡させる。この発泡の圧力によってノズルからインク滴が吐出される。以下、CM2からCM8まで順次コモン側のドライバをONしていくことにより全てのヒータ抵抗に通電が可能となる。
【0075】
図16はヘッドドライバ307の回路構成を示すブロック図である。351はプリドライバ、352はコモンドライバ、353はセグメントドライバである。プリンタコントロールIC305はコモン制御信号COM1〜COM8とセグメント制御信号SEG1〜SEG8を出力する。プリドライバ351はプリンタコントロールIC305が出力したコモン制御信号COM1〜COM8を、コモンドライバ352を駆動可能なレベルに変換する。コモンドライバ352はソース型のドライバで記録ヘッド6のコモン端子CM1〜CM8に電流を流し込む。セグメントドライバ353はソース型のドライバであり、プリンタコントロールIC305が出力したセグメント制御信号SEG1〜SEG8により、記録ヘッド306のセグメント端子SG1〜SG8から電流を吸い出す。
【0076】
図17はHQおよびSHQモードにおけるヘッド制御信号のタイミングチャートである。図17においてはコモン制御信号COM1〜COM8が順次駆動され、各コモン制御信号がONされている間にセグメント制御信号SEG1〜SEG8が記録データに対応して選択的にONされる。セグメント制御信号は先に奇数セグメントSEG1、3、5、7が駆動され、続いて偶数セグメントSEG2、4、6、8が駆動される。セグメント制御信号を2度に分けて駆動することにより、コモン端子CM1〜CM8に流れる電流は全セグメントを同時に駆動する場合に比べて半減するので、コモンドライバ352の許容電流容量を減らして回路の小型化と低価格化を計ることができる。また同時に駆動されるノズル数が半減するのでインク滴の吐出によって発生するヘッド内のインクの振動が低減される。インクの振動はインク滴の均一な吐出を妨げ、印字品位の悪化の原因となるので、インクの振動の低減は印字品位の向上に寄与する。
【0077】
図18はHSモードにおけるヘッド制御信号のタイミングチャートである。HSモードにおいては奇数カラム印字時には奇数セグメントSEG1、3、5、7のみが駆動され、偶数カラム印字時には偶数セグメントSEG2、4、6、8のみが駆動される。そのため、印字結果は千鳥上にドットが間引かれた形となる。HQやSHQモードと同様、HSモードにおいても同時に駆動されるセグメント数は全セグメントの半分となるので、コモンドライバ352の許容電流容量を減らして回路の小型化と低価格化を計ることができる。また、HSモードではセグメントを2度に分けて駆動する必要がないので、HQやSHQモードに比べてコモン信号のON時間が短くなりヘッドの駆動時間が短縮される。そのためヘッドの駆動周波数を高くして印字速度を上げることができる。
【0078】
以上説明したように、HQおよびSHQモードでは同時に駆動するセグメントを奇数と偶数に分けて時分割で駆動することにより、またHSモードではカラム毎に奇数セグメントと偶数セグメントを交互に駆動することにより、共にコモンドライバ352の許容電流容量を減らして回路の小型化と低価格化を計ることができる。
【0079】
HQおよびSHQモードではセグメントを時分割で駆動することにより、ヘッド内のインクの振動を低減させ、印字品位の向上が可能となる。
【0080】
HSモードでは印字を千鳥状に間引くことによってそのためヘッドの駆動時間を短縮して印字速度を上げることができる。
【0081】
(実施例5)
次に、吐出量制御とヘッド駆動制御に関する実施例5について、図19乃至図37を参照して説明する。
【0082】
本実施例では印字モード、環境温度とヘッドチップ温度に応じて記録ヘッドの駆動条件を制御する。印字モードとしてHQモード、SHQモード、HSモードの3モードを有し、吐出量を増減させる駆動制御を行っており、環境温度やヘッドチップ温度の変化にともなう吐出量変化を矯正し高画像品位を実現している。
【0083】
インクジェット記録装置に於いて、記録ヘッドの温度を一定領域内に制御することによって吐出、吐出量の安定化が図られ、高画像品位の記録が可能になる。安定した高画像品位の記録を実現する為の、記録ヘッドの温度の演算検出手段、該温度に応じた最適駆動制御方法等の概要を以下に記す。
【0084】
(1)目標温度の設定
以下説明する吐出量安定化の為のヘッド駆動制御は、ヘッドのチップ温度を制御の基準とする。即ちヘッドのチップ温度を、その時点で吐出している1ドットあたりの吐出量を検出する代用特性としている。しかし、チップ温度が一定であってもタンク内のインク温度は環境温度に依存するので吐出量は異なる。この差異を解消する目的で、環境温度別に(即ちインク温度別に)吐出量が同等になるヘッドのチップ温度を定めた値が目標温度である。目標温度は目標温度テーブルとして予め設定しておく。本実施例で使用する目標温度テーブルを図19に示す。
【0085】
(2)記録ヘッド温度の演算手段
記録ヘッド温度を過去の投入エネルギーから推定演算する。演算方法としては、記録ヘッドの温度推移を単位時間当たりの離散値の積み重ねとして扱うもので、該離散値に応じた記録ヘッドの温度の温度推移を投入可能なエネルギーの範囲内で予め演算しておきテーブル化しておく。ここで、このテーブルを単位時間当たりの投入エネルギーと経過時間の2次元のマトリックス(2次元テーブル)で構成しておく。
【0086】
また、本実施例に於ける温度演算アルゴリズム手段に於いては、複数の熱伝導時間の異なる部材を組み合わせて構成されている記録ヘッドを、実際よりも少い数の熱時定数で代用してモデル化し、該モデル単位(熱時定数)毎に必要演算間隔と必要データ保持時間を分けて個々に演算を行う。さらには、熱源を複数設定し、個々の熱源毎に上記モデル化単位で昇温幅を演算し、これを後に加え合わせてヘッド温度を演算することを特徴とする。
【0087】
チップ温度をセンサーを用いてセンシングせず、投入エネルギーから演算推定する理由は、
▲1▼センサーを用いるよりも演算推定した方がレスポンスに優れる。→チップ温度の変化に対して敏速な対処が出来る。
▲2▼コストダウン
である。上記演算推定されたヘッド温度が、本実施例での吐出駆動、サブヒータ駆動の基準となる。
【0088】
(3)PWM制御
各環境下でヘッドが上記目標温度テーブルに記されているチップ温度で駆動が行われれば吐出量の安定化は図られる。しかしながら、チップ温度は印字duty等に応じて時々変動しており一定ではない。そのため、吐出量の安定化を図る目的でヘッドの駆動をマルチパルスPWM駆動にし、温度に依存させずに吐出量の制御を行う手段がPWM制御である。本実施例では、ヘッド温度とその環境下での目標温度との差により、その時点で最適な波形/幅のパルスを規定したPWMテーブルを予め設定して於き、吐出駆動条件を定める。
【0089】
(4)サブヒータ駆動制御
PWM駆動を行っても所望の吐出量が得られない場合に、印字の直前にサブヒータを駆動することによってヘッド温度を目標温度に近づける制御が、サブヒータ制御である。ヘッド温度とその環境下での目標温度との差により、その時点で最適なサブヒータ駆動時間を予め設定して於き、サブヒータの駆動条件を定めている。
【0090】
次に本実施例の主要をなす個々の制御の詳細を以下に記す。
【0091】
(温度予測制御)
概略的には、ヘッドの温度変化をヘッドの熱時定数と投入可能なエネルギーの範囲内で予め計算したマトリックスで評価することにより演算する。
【0092】
記録ヘッドの温度推定は、基本的には以下の熱伝導の一般式に準じる。
・加熱時
△temp=a{1−exp[−m*T]}・・・(1)
・加熱の途中から冷却
△temp=a{exp[−m(T−T1 )]−exp[−m*T]}・・・(2)
但し、temp;対象物の昇温温度
a;熱源による対象物の平衡温度
T;経過時間
m;対象物の熱時定数
T1 ;熱源を取り去った時間
記録ヘッドを集中定数系として扱えば、熱時定数毎に印字Dutyに応じて上記(1),(2)を計算する事により、理論上は記録ヘッドのチップ温度は推定できる。
【0093】
しかし一般には処理速度の問題から上記演算をそのまま行う事は困難である。・厳密には全ての構成部材が異なる時定数を持っており、また部材間で時定数が生じるので、演算回数が膨大になる。
・一般的にはMPUでは直接指数演算は行えないので、近似計算を行うか換算表から求めるなどしなくてはならず演算時間が短縮できない。
【0094】
上記問題を本実施例では次にあげるモデル化、及び演算アルゴリズムで解決している。
【0095】
(1)モデル化
本発明者は、前記構成よりなる記録ヘッドにエネルギーを投入し、該記録ヘッドの昇温過程のデータをサンプリングしたところ、図20に示すような結果を得た。上記構成よりなる記録ヘッドは、厳密には多くの熱伝導時間の異なる部材の組み合わせで構成されているが、上記ログ変換を行った昇温データと経過時間の関数の微分値が一定である範囲に於いては(即ち、傾きが一定であるA、B、Cの範囲に於いては)、実用上単一部材の熱伝導として扱えることを示している。
【0096】
以上の結果から本実施例では、熱伝導に関するモデルに於いては記録ヘッドを2つの熱時定数で取り扱うこととする。なお、上記結果では、3つの熱時定数を持つモデル化を行う方がより正確に回帰が行えることを示しているが、同図のBとCのエリアに於ける傾きがほぼ等しいと判断し演算効率を優先して本実施例では2つの熱時定数で記録ヘッドをモデル化している。具体的には、一方の熱伝導は0.8秒で平衡温度まで昇温する時定数を有するもののモデル化であり(同図ではAの領域に相当)、もう一方は512秒で平衡温度まで昇温する時定数を有するもののモデル化である(同図ではB及びCの領域のモデル化である)。
【0097】
更には、本実施例では記録ヘッドを以下のように扱いモデル化する。
・熱伝導中の温度分布は無視できるものとし、全て集中定数系で扱う。
・熱源は、印字のためのヒートと、サブヒータのヒートの2つを想定する。
【0098】
図21に、本実施例でモデル化した熱伝導の等価回路を記す。同図に於いては、熱源を1つしか示していないが、2つの場合は直列の構成とすれば良い。
【0099】
(2)演算アルゴリズム
本実施例でのヘッド温度の演算は、演算処理を簡易にするため、前記の熱伝導の一般式を以下のように展開して用いる。
【0100】
〈熱源ON後nt時間経過後の温度変動〉
a{1−exp[−m*n*t]}・・・〈1〉
=a{exp[−m*t]−exp[−m*t]+exp[−2*m*t]−e
xp[−2*m*t]+...+exp[−(n−1)*m*t]
−exp[−(n−1)*m*t]+1−exp[−n*m*t]}
=a{1−exp[−m*t]}
+a{exp[−m*t]−exp[−2*m*t]}
+a{exp[−2*m*t]−exp[−3*m*t]}
...
+a{exp[−(n−1)*m*t]−exp[−n*m*t]}
=a{1−exp[−mt]}・・・〈2−1〉
+a{exp[−m*(2t−t)]−exp[−m*2t]}・・・〈2−2〉
+a{exp[−m*(3t−t)]−exp[−m*3t]}・・・〈2−3〉
...
+a{exp[−m*(nt−t)]−exp[−m*nt]}・・・〈2−n〉
【0101】
以上のように展開したことにより、〈1〉式が〈2−1〉+〈2−2〉+〈2−3〉+...+〈2−n〉と一致する。ここで、
〈2−n〉式;時刻0からtまで加熱し、時刻tからntまで加熱をOFFした場合の、時刻ntに於ける対象物の温度に等しい。
〈2−3〉式;時刻(n−3)tから(n−2)tまで加熱し、時刻(n−2)tからntまで加熱をOFFした場合の、時刻ntに於ける対象物の温度に等しい。
〈2−2〉式;時刻(n−2)tから(n−1)tまで加熱し、時刻(n−1)tからntまで加熱をOFFした場合の、時刻ntに於ける対象物の温度に等しい。
〈2−1〉式;時刻(n−1)tからntまで加熱した場合の時刻ntに於ける対象物の温度に等しい。
【0102】
上記式の合計が〈1〉式に等しいということは、即ち対象物1の温度の挙動(昇温温度)を、単位時間あたりに投入されたエネルギーによって昇温した対象物1の温度が、単位時間経過後毎に何度に降温していくかを求め(各々の〈2−1〉式、〈2−2〉式、...、〈2−n〉式に相当)、現在の対象物1の温度は過去の各単位時間あたりに昇温した温度が現時点に於いて何度に降温しているかの総和を求める(〈2−1〉+〈2−1〉+...+〈2−n〉)ことにより演算推定することが可能であることを示す。
【0103】
以上から本実施例では、前記のモデル化により記録ヘッドのチップ温度の演算は4回(熱源2*熱時定数2)行う。4回の演算の為のそれぞれの必要演算間隔、データ保持時間は図22に示す通りである。また、前記ヘッド温度を演算する、投入エネルギーと経過時間の2次元のマトリックスからなる演算表を、図23から図26に記す。ここで
図23は、熱源;吐出ヒータ、時定数;ショートレンジの部材群、の演算表、
図24は、熱源;吐出ヒータ、時定数;ロングレンジの部材群、の演算表、
図25は、熱源;サブヒータ、時定数;ショートレンジの部材群、の演算表
図26は、熱源;サブヒータ、時定数;ロングレンジの部材群、の演算表、
である。
【0104】
各図に記す通り、0.05秒間隔で、
(1)ショートレンジで代表される熱時定数の部材が、吐出の為のヒータの駆動で何度昇温しているか(△Tmh)、
(2)ショートレンジで代表される熱時定数の部材が、サブヒータの駆動で何度昇温しているか(△Tsh)、1.0秒間隔で、
(3)ロングレンジで代表される熱時定数の部材が、吐出の為のヒータの駆動で何度昇温しているか(△Tmb)、
(4)ロングレンジで代表される熱時定数の部材が、サブヒータの駆動で何度昇温しているか(△Tsb)、
以上の演算を適時行い、△Tmh、△Tsh、△Tmb、△Tsbを加え合わせる事によって(=△Tmh+△Tsh+△Tmb+△Tsb)、その時点でのヘッド温度を演算する事が出来る。
【0105】
上記のように、複数の熱伝導時間の異なる部材を組み合わせて構成されている記録ヘッドを、モデル的に実際よりも少い数の熱時定数で代用することにより、
・忠実に全ての熱伝導時間の異なる部材及び部材間の熱時定数別に演算処理を行うのと比較して、演算精度をさほど落とすことなく格段に演算処理量を減少することができる。
・また、時定数を判断基準としてモデル化したことにより、少ない処理回数で且つ演算精度を落とさずに演算処理することが可能となる。例えば上記の例で説明すれば、時定数毎にモデル化をしなかった場合、必要演算処理間隔は時定数の小さいA領域で定まり50msecが必要演算間隔になる。一方離散化データのデータ保持時間は時定数の大きいB,C領域で定まるため、512secが必要データ保持時間となる。即ち、50msec間隔で過去512秒分の10240データを積み上げ演算処理することとなり、本実施例の場合と比較して数百倍の演算処理回数となる。
【0106】
以上のように、
(1)記録ヘッドの温度推移を単位時間当たりの離散値の積み重ねとして扱うこと、
(2)該離散値に応じた記録ヘッドの温度の温度推移を、投入可能なエネルギーの範囲内で予め演算しておきテーブル化すること、
(3)さらには、該テーブルが単位時間当たりの投入エネルギーと経過時間の2次元のマトリックスで構成すること、
による温度演算アルゴリズムに加え、
複数の熱伝導時間の異なる部材を組み合わせて構成されている記録ヘッドをモデル的に実際よりも少い数の熱時定数で代用し、該モデル単位(熱時定数)毎に必要演算間隔と必要データ保持時間を分けて個々に演算を行い、さらには、熱源を複数設定し個々の熱源毎に上記モデル化単位で昇温幅を演算し、後に加え合わせてヘッド温度を演算する(複数熱源演算アルゴリズム)ことにより、記録ヘッドに温度センサーは設けることなく、安価な記録装置に於いても記録ヘッドの温度の推移を全て演算処理にて演算処理することが可能となる。
【0107】
更には、上述した記録ヘッドの温度を一定領域内に制御するPWM駆動制御、サブヒータ制御が適切に行え、吐出、吐出量の安定化が図られ、高画像品位の記録が可能になる。
【0108】
尚、前記説明した構成の記録ヘッドを用い、本項で説明したヘッド温度演算手段で推定した記録ヘッド温度と、実測した記録ヘッド温度の比較を図27に記す。同図に於いて、
横軸;経過時間(sec)
縦軸;昇温温度(△t)
印字パターン;(25%Duty*5Line+50%Duty*5Line+100%Duty*5Line)*5回(延べ75Line印字)
図27(A);ヘッド温度演算手段で推定した記録ヘッド温度の推移、
図27(B);実測した記録ヘッド温度の推移、
であり、同図から、該温度演算手段によりヘッド温度が正確に推定できる事が分かる。
【0109】
(PWM制御)
次に、図面を参照して本実施例の吐出量制御方法を詳細に説明する。
【0110】
図28は本発明の一実施例にかかる分割パルスを説明するための図である。同図において、VOPは駆動電圧、P1は複数の分割されたヒートパルスの最初のパルス(以下、プレヒートパルスという)のパルス幅、P2はインターバルタイム、P3は2番目のパルス(以下、メインヒートパルスという)のパルス幅である。T1,T2,T3はP1,P2,P3を決めるための時間を示している。駆動電圧VOPは、この電圧を印加される電気熱変換体がヒータボードとして天板とによって構成されるインク液路内のインクに熱エネルギーを発生させるために必要な電気エネルギーを示すものの一つである。その値は電気熱変換体の面積、抵抗値、膜構造や記録ヘッドの液路構造によって決まる。分割パルス幅変調駆動法は、P1,P2,P3の幅で順次パルスを与えるものであり、プレヒートパルスは、主に液路内のインク温度を制御するためのパルスであり、本発明の吐出量制御の重要な役割を荷っている。このプレヒートパルス幅はその印加によって電気熱変換体が発生する熱エネルギーによってインク中に発泡現象が生じないような値に設定される。
【0111】
インターバルタイムは、プレヒートパルスとメインヒートパルスが相互干渉しないように一定時間の間隔を設けるため、およびインク液路内インクの温度分布を均一化するために設けられる。メインヒートパルスは液路内のインク中に発泡を生ぜしめ、吐出口よりインクを吐出させるためのものであり、その幅P3は電気熱変換体の面積、抵抗値、膜構造や記録ヘッドのインク液路の構造によって決まる。
【0112】
例えば、図29(A)および(B)に示すような構造の記録ヘッドにおけるプレヒートパルスの作用について説明する。同図(A)および(B)は、本発明を適用可能な記録ヘッドの一構成例を示すそれぞれインク液路に沿った概略縦断面図および概略正面図である。同図において、電気熱変換体(吐出ヒータ)は上記分割パルスの印加によって熱を発生する。この電気熱変換体はこれに分割パルスを印加するための電極配線等とともにヒータボード上に配設される。ヒータボードはシリコンにより形成され、記録ヘッドの基板をなすアルミ板によって支持される。天板には、インク液路等を構成するための溝が形成されており、天板とヒータボード(アルミ板)とが接合することによりインク液路や、これにインクを供給する共通液室が構成される。また、天板には吐出口が形成され、それぞれの吐出口にはインク液路が連通している。
【0113】
図29に示される記録ヘッドにおいて、駆動電圧VOP=18.0(V),メインヒートパルス幅P3=4.114[μsec]とし、プレヒートパルス幅P1を0〜3.000[μsec]の範囲で変化させた場合、図30に示すような吐出量Vd[ng/dog]とプレヒートパルス幅P1[μsec]との関係が得られる。
【0114】
図30は吐出量のプレヒートパルス依存性を示す線図であり、図において、V0はP1=0[μsec]のときの吐出量を示し、この値は図29に示すヘッド構造によって定まる。因みに、本実施例でのV0は環境温度TR=25℃の場合でV0=18.0[ng/dog]であった。図30の曲線aに示されるように、プレヒートパルスのパルス幅P1の増加に応じて、吐出量Vdはパルス幅P1が0からP1LMTまで線形性を有して増加し、パルス幅P1がP1LMTより大きい範囲ではその変化が線形性を失い、パルス幅P1MAXで飽和し最大となる。
【0115】
このように、パルス幅P1の変化に対する吐出量Vdの変化が線形性を示すパルス幅P1LMTまでの範囲は、パルス幅P1変化されることによる吐出量の制御を容易に行える範囲として有効である。因みに、曲線aに示す本実施例ではP1LMT=1.87[μsec]であり、このときの吐出量はVLMT=24.0[ng/dot]であった。また、吐出量Vdが飽和状態となるときのパルス幅P1MAXは、P1MAX=2.1[μsec]であり、このときの吐出量VMAX=25.5[ng/dot]であった。
【0116】
パルス幅がP1MAXより大きい場合、吐出量VdはVMAXより小さくなる。この現象は上記範囲のパルス幅を有するプレヒートパルスが印加されると電気熱変換体上に微小な発泡(膜沸騰の直前状態)を生じ、この気泡が消泡する前に次のメインヒートパルスが印加され、上記微小気泡がメインヒートパルスによる発泡を乱すことによって吐出量が小さくなる。この領域をプレ発泡領域と呼びこの領域ではプレヒートパルスを媒介にした吐出量制御は困難なものとなる。
【0117】
図30に示すP1=0〜P1LMT[μsec]の範囲の吐出量とパルス幅との関係を示す直線の傾きをプレヒートパルス依存係数と定義すると、プレヒートパルス依存係数:KPは
KP=△VdP/△VP1[ng/μsec・dot]
となる。この係数KPは温度によらずヘッド構造・駆動条件・インク物性等によって定まる。すなわち、図30中曲線b,cは他の記録ヘッドの場合を示しており、記録ヘッドが異なると、その吐出特性が変化することが分かる。このように、記録ヘッドが異なるとプレヒートパルスP1の上限値P1LMTが異なるため、後述するように記録ヘッド毎の上限値P1LMTを定めて吐出量制御を行う。因みに本実施例の曲線aで示される記録ヘッドおよびインクにおいては、KP=3.209[ng/μsec・dot]であった。
【0118】
インクジェット記録ヘッドの吐出量を決定する別の要因として、記録ヘッドの温度(インク温度)がある。図31は吐出量の温度依存性を示す線図である。同図の曲線aに示すように、記録ヘッドの環境温度TR(=ヘッド温度TH)の増加に対して吐出量Vdは直線的に増加する。この直線の傾きを温度依存係数と定義すると、温度依存係数:KTは
KT=△VdT/△TH[ng/℃・dot]
となる。この係数KTは駆動条件にはよらず、ヘッドの構造・インク物性等によって定まる。図31においても他の記録ヘッドの場合を曲線b,cに示す。因みに本実施例の記録ヘッドにおいてはKT=0.3[ng/℃・dot]であった。
【0119】
以上、図30および図31に示す関係を用いることによって本実施例にかかる吐出量制御を行うことができる。
【0120】
本実施例では、ダブルパルスでのPWM駆動制御を行っているが、トリプルパス等マルチパルスであっても良く、また、シングルパルスでメインパルス幅を変調するメインパルスPWM駆動方式であっても良い。
【0121】
本実施例では、前記目標温度と、ヘッド温度の温度差(△T)から一元的にPWM値が設定されるよう制御する。該△TとPWM値の関係を図32に記す。同図中、「温度差」とは上記△Tを現し、「プレヒート」とは上記P1を現し、「インターバル」とは上記P2を現し、「メイン」とは上記P3を現す。また「セットアップタイム」とは記録命令が入力されてから実際に上記P1が立ち上がるまでの時間を現す。主には、ドライバーの立ち上がりまでの余裕時間であり、本発明の要部をなす値ではない。また「重み」とは、ヘッド温度を演算する為に検出する印字ドット数に掛け合わせる重み係数である。同じドット数を印字していても、例えば7μsecのパルス幅で印字しているのと4.5μsecのパルス幅で印字しているのとではヘッド温度の昇温に差が生じてしまう。このパルス幅変調に伴う温度の差を、どのPWMテーブルが選択されているかによって補正する手段として、該「重み」を用いる。
【0122】
(サブヒータ駆動制御)
PWM駆動手段を行っても、なお実吐出量が基準吐出量を下回る場合は、印字直前にサブヒータ駆動を行い吐出量を基準吐出量に合わせ込む。サブヒータの駆動時間は、目標温度と実ヘッド温度の差(△t)に応じてサブヒータテーブルから設定される。サブヒータテーブルは「急加速サブヒータテーブル」と「ノーマルサブヒータテーブル」の2種類があり、以下に記す条件により使い分ける(図33参照)。
【0123】
[印字休止中からの印字再開時]
前回印字終了点から10sec以上経過していた場合には、「急加速サブヒータテーブル」を用いる。10sec未満の場合には「ノーマルサブヒータテーブル」を用いる。
【0124】
[連続印字時]
印字休止状態から印字を再開して5sec以上経過後は「ノーマルサブヒータテーブル」を用いる。5sec未満の場合には上記印字開始時に用いたテーブルを継承する。即ち、急加速サブヒータテーブルを用いていた場合には「急加速サブヒータテーブル」を用い、ノーマルサブヒータテーブルを用いていた場合には「ノーマルサブヒータテーブル」を用いる。
【0125】
2つのテーブルを使い分けて、急加速サブヒータテーブルを用いる意味は、サブヒータによる吐出量制限手段は、ヘッド温度を上げることによって吐出量を制御する手法なので昇温の為に時間を要し、キャリッジのランプアップ時間内に所望の昇温が完了しなかった場合には、印字の開始を遅らせて昇温の為の時間を費やさねばならず、スループットを低下させる弊害があるからである。
【0126】
具体的なサブヒータ駆動条件を図34に記す。図中、「温度差」とは目標温度と実ヘッド温度の差(△t)を表し、「LONG」とは急加速サブヒータテーブルを現し、「SHORT」とはノーマルサブヒータテーブルを現す。
【0127】
(全体フロー制御)
次に図35、図36を用いて制御系全体の流れを説明する。
【0128】
図35は、吐出の為のPWM駆動値、及びサブヒータ駆動時間を設定するための割り込みルーチンである。本割り込みルーチンは50msec毎に発生する。よって、印字中なのか休止中なのか、またサブヒータの駆動が必要な環境なのか不要な環境なのかには関係なく、常に50msec毎にPWM値、サブヒータ駆動時間が更新される。
【0129】
まず、50msecの割り込みがかかると、直前までの50msec間の印字duytが参照される(S2010)。但し、この時参照される印字dutyとは(PWM制御)の項で説明した様に、実際に吐出したドット数にPWM値毎の重み係数が掛け合わされた値である。該50msec間のdutyと過去0.8秒間の印字履歴から熱源が吐出ヒータで、時定数がショートレンジの部材群の昇温温度(△Tmh)を演算する(S2020)。次に、同様に50msec間のサブヒータの駆動dutyが参照され(S2030)、該50msec間のサブヒータの駆動dutyと過去0.8秒間のサブヒータの駆動履歴から熱源がサブヒータで、時定数がショートレンジの部材群の昇温温度(△Tsh)を演算する(S2040)。そして、後述するメインルーチンで計算されている、熱源が吐出ヒータで、時定数がロングレンジの部材群の昇温温度(△Tmb)と、熱源がサブヒータで、時定数がロングレンジの部材群の昇温温度(△Tsb)を参照し、それらを加え合わせる事によって(=△Tmh+△Tsh+△Tmb+△Tsb)ヘッド温度を算出する(S2050)。
【0130】
次に、目標温度を目標温度テーブルから設定し(S2060)、ヘッド温度と目標温度との温度差(△T)を求める(S2070)。該温度差△TとPWMテーブル及びサブヒータテーブルから、△Tに応じた最適ヘッド駆動条件であるPWM値を設定する(S2080)。また。選択したサブヒータテーブル(S2090)に基づいて、該温度差△Tに応じた最適ヘッド駆動条件であるサブヒータ駆動時間が設定される(S2100)。以上で、割り込みルーチンを終了する。
【0131】
図36はメインルーチンである。ステップ3010で印字命令が入ると過去1秒間の印字dutyを参照する(S3020)。但し、この時参照される印字dutyとは、(PWM制御)の項で説明した様に実際に吐出したドット数にPWM値毎の重み係数が掛け合わされた値である。該1秒間のdutyと過去512秒間の印字履歴から熱源が吐出ヒータで、時定数がロングレンジの部材群の昇温温度(ΔTmb)を演算し、50msec毎の割り込み時に容易に参照できるように定められたメモリー位置に格納更新する(S3030)。次に、同様に1秒間のサブヒータの駆動dutyが参照され(S3040)、該1秒間のサブヒータの駆動dutyと過去512秒間のサブヒータの駆動履歴から熱源がサブヒータで、時定数がロングレンジの部材群の昇温温度(ΔTsb)を演算する。ΔTmbを格納更新した場合と同様、50msec毎の割り込み時に容易に参照できるように定められたメモリー位置に格納更新する(S3050)。
【0132】
そして、50msec毎の割り込みが入る毎に更新されていくPWM値、及びサブヒータ駆動時間に従って印字及びサブヒータの駆動を行い(S3060)、その後1行分の印字を行う(S3070)。
【0133】
本実施例では吐出量、及びヘッド温度を制御するためにダブルパルス、シングルパルスのPWMを用いたが、トリプルパルス以上のパルスのPWMを用いても良い。また、ヘッドチップ温度が印字目標温度よりも高温で、小さいエネルギーのPWMで駆動していてもヘッドチップ温度を低下出来ない時などには、キャリッジの走査速度を制御しても良く、またはキャリッジの走査開始タイミングを制御しても良い。
【0134】
この実施例では、温度センサーを用いることなく将来のヘッド温度を予測することができるので、実際の印字前に種々のヘッド制御を行うことが可能となり、より適切な記録を行うことができる。また、モデルが簡素化されており、且つ演算アルゴリズムが容易な計算の積み重ねによるものであるので、予測制御も簡易となる。本実施例内で用いている温度予測のサイクル(50msec間隔と1sec間隔)等の定数は一例であり、本発明を拘束するものではない。
【0135】
本実施例ではHQモード、SHQモード、HSモードの3つの印字モードを有する。印字モードに応じて吐出量を変え、印字モードに応じた駆動制御を行っている。上述した通り、駆動制御を行うためには、環境温度により定められるヘッドの目標温度と実際のヘッドチップ温度との差異(△t)が演算されるが、△t演算後、印字モードに応じて△tを補正する。吐出量の直接的な制御パラメータであるPWM値やサブヒータの駆動時間は、△tにより決定されるので、印字モードに応じて△tを補正することにより、吐出量を制御することが可能となる。
【0136】
以下に各印字モードについて説明する。
【0137】
(印字モード)
本実施例は通常、HQ(HighQuality)モードが設定される。HQモードは高速且つ高画質を同時に実現するモードである。SQH(SuperHighQuality)モードはHQモードにより、更に高画質を追求した超高画質モードである。また、HS(HighSpeed)モードは高速印字用に設けられたドラフト高速モードである。この3つの各モードの特徴を以下に記す。
【0138】
(1)HQモード
HQモードは6.25kHzの駆動周波数で、印字速度173cps(10cpi)の高速印字を行える。この駆動周波数は1駆動ブロック(コモン)内におけるセグメントずらしの効果により初めて可能になった周波数領域であり、8個のセグメントを同時に駆動する従来の駆動方法では実現できなかった。
【0139】
セグメントずらし駆動とは、本出願人が特願平4−77411号公報明細書で提案したもので図37に示すように1つのブロックのなかでONされる8個のセグメントのオンタイミングを偶数ノズルと奇数ノズルとで分割駆動となるようにディレイをかける駆動方法であり、インクのリフィルのピークをずらすことにより連続吐出時のリフィルの遅延を防止している。また、吐出ノズルの発泡エネルギーを利用して近傍ノズルのリフィルの支援を行っている。従来のセグメント同時駆動では、高周波駆動になるとインクのリフィルが追いつかずに、ノズル内にインクが充分に満たされていない状態で吐出が行われてしまい、吐出不良となることが多かった。それが連続して行われると、共通液室内に消泡しきれなかった気泡が蓄積してしまい、インク落ちの原因となってしまう。セグメントずらし駆動はこのような問題を防止している。同図に於いて、t1は奇数ノズル、t2は偶数ノズルがコモンがオンされてからそれぞれオンされるまでの時間である。また、TConはコモンのオン時間であり、本モードでは15.57μsecとなっている。
【0140】
本モードは6.25kHzの高い駆動周波数であるため、一定時間内に投入される電力は大きく、本実施例のなかで最も高電力になる。高電力で駆動すると、ヘッド駆動に起因して昇温しやすく、濃度ムラができやすくなってしまう。本実施例では50msec毎にマルチパルスPWM等の駆動条件を更新しているので、ライン内及びライン間濃度ムラを防止することができる。また、環境温度とヘッドチップ温度との差異から、その温度差に最適なマルチパルスPWMを制御することで、無駄なエネルギー投入を行わずに最適な駆動条件で行っているので、極力昇温を抑えている。昇温そのものをさせないようにして濃度ムラを最低限に抑えている。
【0141】
(2)SHQモード
SHQモードは4.46kHzの駆動周波数で印字速度124cps(10cpi)の印字を行える超高画質モードである。
【0142】
本モードはHQモード同様、環境温度とヘッドチップ温度との差異からマルチパルスPWMを制御しているが、その温度差から得られるテーブルより、複数段階大きめのテーブルを選ぶようにしている。例えば、図32に於いて温度差が“1.5℃〜”である場合ら、単にそのテーブルに設定するのではなく、3つテーブルをジャンプさせて“10.5℃〜”のテーブルに設定する。インク吐出量を一定にする観点から最適なテーブルより、大きい吐出量を得ることのできるテーブルを選択している。よって、SHQモードでは吐出量を上げて、紙種によらずに高濃度の画像を提供できる。但し、OHPシート等の極端に定着性の劣る記録媒体に対しては、本モードよりHQモードを用いる方が好ましい。また、高温環境下では吐出量が大きくなりすぎるのを防ぐために吐出量を逆に小さくするようにしている。これにより高濃度の高画質モードである本モードの使用できる温度範囲を広げることができる。
【0143】
本モードでは画質を重要視しているので、速度は若干落としても、より高精度で本体を制御できるようにしている。例えば、ヘッドの取付角度が称呼値である場合、ライン間罫線ズレは、HQモードでは5.1μmであるのに対して本モードでは4.2μmになるようにしている。更に騒音の面でもHQモードが42dBであるのに対し、本モードでは40dBと高静粛性を持っている。
【0144】
本モードは吐出安定性を維持するために、HQモード同様にセグメントずらし駆動を行っている。セグメントずらしにより、記録ヘッド内のインクのゆらぎを小さくしているが、超高画質を実現するために、周波数的に不安定な領域では使わないようにしている。したがって、HQモードに比べると4.46kHzと低周波数であり、この領域はゆらぎが少なく、吐出安定性も非常に優れている。特に、低温環境下では吐出量をアップしたことがより効果的であり、吐出安定性も優れているので低温環境下で発生し易い、インクのリフィル不足による吐出不良等を防止している。低温環境下でも超高画質を維持しており、HQモードに比べて画質的に高いレベルにある。
【0145】
(3)HSモード
HSモードは8.93kHzの駆動周波数で印字速度248cps(10cps)の印字を行える高速モードである。
【0146】
本モードはSHQモードの2倍の印字速度を有し、パルス分割のドラフト印字を行うことで、高速印字を可能としている。画像より速度を重要視しているので、ゆらぎ等をあまり考慮していない。また、ドラフト印字なので、吐出量も少なく、経済的にも有利なモードである。
【0147】
以上説明してきたようにそれぞれの印字モードで、独自の特徴をもった印字を行える。それぞれがユーザーのニーズに合わせた設定になっており、ユーザー判断により選択できる。
【0148】
本発明は、特にインクジェット記録方式の中でも熱エネルギーを利用する方式の記録ヘッド、記録装置において、優れた効果をもたらすものである。
【0149】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰させて、結果的にこの駆動信号に一対一対応し液体(インク)内の気泡を形成出来るので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号として、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。尚、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、更に優れた記録を行うことができる。
【0150】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59年第123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59年第138461号公報に基づいた構成としても本発明は有効である。
【0151】
更にまた、本発明は上記実施例1〜5単独であっても、上述のとおり優れた作用・効果を奏するものであるが、2つまたはそれ以上組み合わせて構成することによって、更に優れた作用・効果を得ることができ、極めて有効である。
【0152】
【発明の効果】
本発明によれば、複数の記録モードを有する記録装置において、記録モードに応じて適切な記録条件で記録を行うことができる。
【0153】
また、記録モードに応じて所定の記録後の記録ヘッドに対する記録媒体の相対移動制御、記録ヘッドの走査制御、吐出量制御を適切に行うことができるので、記録速度、記録精度、記録品位、記録音等において適切な条件で記録を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリアル記録装置の全体斜視図である。
【図2】給紙部の正面図である。
【図3】実施例1の制御構成である。
【図4】紙送り制御のフローチャートである。
【図5】紙送り制御のテーブルである。
【図6】紙送り制御のテーブルである。
【図7】紙送り制御のテーブルである。
【図8】キャリッジ制御の説明図である。
【図9】キャリッジ制御のフローチャートである。
【図10】ワイピングの構成図である。
【図11】ワイピング制御のフローチャートである。
【図12】制御回路のブロック図である。
【図13】モード設定の外観を示す図である。
【図14】モード設定方法を示す図である。
【図15】記録ヘッドの構成を示す回路図である。
【図16】ヘッドドライバ307の回路構成を示すブロック図である。
【図17】HQおよびSHQモードにおけるヘッド制御信号のタイミングチャートである。
【図18】HSモードにおけるヘッド制御信号のタイミングチャートである。
【図19】本実施例で使用する目標温度テーブルである。
【図20】実施例における記録ヘッドの昇温過程を示すグラフである。
【図21】実施例でモデル化した熱伝導の等価回路である。
【図22】温度演算を行うための必要演算間隔とデータ保持時間を示す表である。
【図23】熱源を吐出ヒータとし、時定数をショートレンジの部材群としたときの演算テーブルである。
【図24】熱源を吐出ヒータとし、時定数をロングレンジの部材群としたときの演算テーブルである。
【図25】熱源をサブヒータとし、時定数をショートレンジの部材群としたときの演算テーブルである。
【図26】熱源をサブヒータとし、時定数をロングレンジの部材群としたときの演算テーブルである。
【図27】実施例のヘッド温度演算手段で推定した記録ヘッドと、実測した記録ヘッドを比較して示すグラフである。
【図28】分割パルス幅変調駆動法の説明図である。
【図29】本発明を適用可能な記録ヘッドの一構成例を示すそれぞれインク液路に沿った概略縦断面図および概略正面図である。
【図30】吐出量のプレヒートパルス依存性を示す線図である。
【図31】吐出量の温度依存性を示す線図である。
【図32】目標温度とヘッド温度の温度差に対する各パルス幅を示すPWMテーブルである。
【図33】サブヒータ駆動制御を説明するためのグラフである。
【図34】目標温度とヘッド温度の温度差に対する各サブヒータ駆動制御時間を示すテーブルである。
【図35】PWM駆動値及びサブヒータ駆動時間を設定するための割り込みルーチンを示すフローチャートである。
【図36】メインルーチンを示すフローチャートである。
【図37】セグメントずらし駆動の説明図である。
Claims (6)
- インクを吐出する複数の吐出口を備え、前記吐出口からインクを吐出し記録を行う記録ヘッドを用い、ホスト装置から送られてくる記録データに応じた画像記録を、高品位モードを含む記録速度の異なる複数の記録モードで行うことが可能な記録装置において、
前記記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させる移動手段と、
前記複数の記録モードの中から記録モードを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された記録モードに対応して前記移動手段による移動速度を制御する制御手段と、
単位時間あたりに前記記録ヘッドから吐出されたドット数に基づいて、記録ヘッド温度を算出する算出手段と、
環境温度に基づいてインクの吐出量が等しくなる記録ヘッド温度の目標温度を求め、前記記録ヘッド温度と前記目標温度との温度差に基づいて前記記録ヘッドの駆動テーブルのアドレスを選択し、選択したアドレスで決まる駆動情報に基づいて、前記記録ヘッドから吐出するインクの吐出量を制御する吐出量制御手段を有し、
前記選択手段が前記高品位モードを選択した場合、前記吐出量制御手段は前記高品位モードにおけるインクの吐出量が他の記録モードにおけるインクの吐出量より大きくなるように前記温度差を補正することを特徴とする記録装置。 - 前記記録装置はさらに操作パネルを有し、前記選択手段は、前記操作パネルからの記録モードの設定や、前記ホスト装置から送られるコマンドにより、記録モードの選択を行うことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
- 前記移動手段は、前記記録ヘッドを記録のための走査を行わせ、前記制御手段は前記選択された記録モードに対応した前記記録ヘッドの走査速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
- 前記移動手段は、前記記録媒体を搬送し、前記制御手段は前記選択された記録モードに対応した前記記録媒体を搬送する搬送速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
- 前記複数の記録モードは、通常モード、高品位モード、高速記録モードの3モードから成ることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
- 前記記録ヘッドは、前記複数の吐出口に対応する吐出口毎に設けられ、インクに熱による状態変化を生起させ、該状態変化に基づいてインクを前記吐出口から吐出させて飛翔的液滴を形成する熱エネルギー発生手段とを有したことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
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