JP3673299B2 - ハニカム体の形成方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、各種内燃機関の排ガス浄化用触媒の担体などに使用される、金属製ハニカム体の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車、ボイラー、発電用等の内燃機関の排ガス浄化用触媒の担体には、耐熱ステンレス鋼製の外筒に、同ステンレス鋼製のハニカム体を嵌入したメタル担体、あるいはセラミック製のハニカム体を嵌入したセラミック担体が使用されている。メタル担体は、セラミック担体に比べて熱容量が小さく、触媒が作用する温度に早く加熱されるので、エンジン始動初期の排ガス浄化能力が優れている。また、ハニカム体の壁が、薄い金属箔からなるので排気抵抗が小さく、エンジン出力の損失が少ないという利点を有している。
【0003】
従来のメタル担体において、ハニカム体は、厚さ50μm程度の金属箔からなる平箔と、該平箔をコルゲート加工した波箔とを重ね、渦巻状に巻回して製造されている。そして、このハニカム体を外筒に嵌入し、平箔と波箔を接合するとともに、ハニカム体と外筒を接合してメタル担体とする。接合は、ろう付け、電子ビーム溶接、レーザ溶接、抵抗溶接、あるいは非酸化性雰囲気で加熱する拡散接合により行われる。接合の不十分な箇所があると、使用中に剥離し、メタル担体が破損するので、ハニカム体の中心部から外周部にわたって、平箔と波箔が確実に接合されなければならない。そのため、平箔と波箔を重ねて巻回する際、両者を確実に密着させ、かつ適正な接触面圧を持たせることが必要である。
【0004】
緩みのないハニカム体を製造するため、従来は、平箔および波箔を巻取軸に挟み込み、該軸を回転させるとともに、形成されつつあるハニカム体の両側面をサイドプレートで挟持し、該プレートを回転させ、その摩擦力でハニカム体を回転させ、平箔にバックテンションをかけて巻回していた。巻回の初期、ハニカム体の径が小さいときは、サイドプレートとの摩擦力が小さいので、バックテンションを強くすると、サイドプレートとハニカム体がスリップし、中心の巻取軸近傍の波箔がつぶれるという問題があった。ハニカム体の径が大きくなると、バックテンションを高めても面圧がかからなくなるという問題があった。
【0005】
特に拡散接合の場合、平箔と波箔を中心から外周まで面圧を規定以上に保ち、密着させて巻回する必要がある。しかし、バックテンションによりこのことを達成するには、ハニカム体の径が大きくなるにつれて、バックテンションをさらに大きくする必要がある。ハニカム体の径が大きくなったときに、バックテンションを大きくすると、中心部に対するトルクが大きくなり、平箔と波箔の間にスリップが発生し、その近傍の波箔に強い圧縮力が作用し、ついには波箔が座屈して波箔の高さが低くなり、面圧が低下し、同部の接合が不完全になる。
【0006】
一方、メタル担体において、エンジン始動初期、触媒の作用温度により早く加熱されるよう、またエンジン出力の損失をより少なくするため、ハニカム体の箔厚をより薄くすることが有利である。しかし、箔厚を薄くすると、上記巻回法の問題点がより顕著となり、波箔のつぶれや、平箔および波箔のたるみ発生などによって、巻回不可能に至ることにもなる。したがって、ハニカム体形成法の改善が必要である。
【0007】
本発明者等は、ハニカム体の形成方法に関し、巻回と同時に平箔と波箔を接合する技術として、図5に示すように、平箔2と波箔3の巻き込み点をずらせて巻き込むとともに、平箔2および波箔3の最外層に電極を接触させ、通電加圧し抵抗溶接する方法を提案し、特開平1−237222号公報に開示されている。図5において、平箔2に接触させる電極にはシュー型電極21を、波箔3に接触させる電極には歯車型電極22を採用し、それぞれ電源10と接続し、また加圧装置25でハニカム体1を加圧している。歯車型電極22は軸受23で保持され、スリップリング24で電源10と接続されている。4はハニカム体1の巻取軸、26は巻取用モータである。
この抵抗溶接する方法は、溶接点の強度が低いため、メタル担体を低温の排気系に使用するときは、特に問題ないが、高温で激しい温度差がある場合には使用できないという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、自動車、ボイラー、発電用等の各種内燃機関の排ガス浄化用触媒の担体などに使用される、金属製ハニカム体の形成方法であって、平箔と波箔を重ねて巻回する際、ハニカム体の中心部から外周部にわたって、両箔の接触面圧を適正にすることにより、箔厚を薄くした場合でも、その後の接合工程で接合不良のない信頼性の高いメタル担体を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ハニカム体を形成中のバックテンションを強くしても、平箔と波箔間のスリップを防止すれば、波箔の座屈を発生させず、平箔との面圧を低下させることがないので、良好な拡散接合ができることを発見したことによりなされたものである。そのため、本発明は、平箔と、平箔をコルゲート加工した波箔を巻取軸の周りに巻回すると同時に、形成されつつあるハニカム体の外周面の周方向に3個以上のロールを配設して、該ロールで挟圧しながらハニカム体を形成する方法において、形成されつつあるハニカム体の外周面の平箔に電極を接触させて該平箔と波箔とを部分的に抵抗溶接し、ハニカム体の中心部から外周部にかけて平箔と波箔の接触面圧を適正に保ち、平箔と波箔を拡散接合することを特徴とするハニカム体の形成方法である。そして、平箔、波箔の箔厚が40μm未満であることが好ましい。
【0010】
【作用】
本発明法の例を図1に示す。平箔2と波箔3を巻取軸4の周りに巻回してハニカム体1を形成しており、波箔3は平箔2をコルゲート加工して形成されている。形成されつつあるハニカム体1の外周面の平箔2に、2個の電極5が接触させてあり、両電極5は電源10に接続されている。まず、平箔2および波箔3の先端を巻取軸4で挟み、サイドプレート7で挟持し、巻取軸4およびサイドプレート7を回転させてハニカム体1を形成しつつ、両電極5をハニカム体1の外周に接触させ、電源10から間欠的に電流を流して平箔2と波箔3を部分的に抵抗溶接する。たとえば、ハニカム体1の1周あたり2点以上溶接する。巻回し終わったら、サイドプレート7による挟持を開放してハニカム体1を取り出す。
【0011】
図1において、8はサイドプレート7を回転させるための駆動輪であり、チェーン9で接続されている。11はブレーキロールであり、上記溶接前のハニカム体1が緩まない程度のバックテンションを平箔2にかける。また、電極5は、ハニカム体1の外周に沿って回転するリング状のものを示しており、軸方向に適宜間隔で複数個設けることができる。このほか、図5に示したシュー型電極21を摺動させることもできる。さらに、電極5に図5のような加圧装置25を付加して、両電極5でハニカム体1を挟圧することもできる。
【0012】
このような本発明法によれば、形成されつつあるハニカム体1の平箔2と波箔3を部分的に溶接するので、巻回の初期、ハニカム体1が小径のときでも、スリップによる巻き締まりが生じず、中心部の波箔3が潰れることがない。またバックテンションは、溶接点までの平箔2に作用すればよいので軽度でよい。したがって、箔厚を薄手化しても波箔3が潰れることがなく、ハニカム体1の中心部から外周部にかけて、平箔2と波箔3が適度な接触面圧を保持した状態で巻回することができる。そして、溶接は部分的に行うので、巻回速度を低速化する必要もない。得られたハニカム体は、外筒に嵌入し、非酸化性雰囲気で加熱することにより、平箔と波箔およびハニカム体と外筒とが拡散接合され、部分的にも接合不良が生じるおそれがない。
【0013】
なお、本発明法において、特に波箔の厚さを薄くした場合、バックテンションにより波箔が座屈することがあり、これを避けるためには、締付け力を1ケ所に集中させず、多くに分散させるのがよい。そこで、本発明法は、図2の例に示すように、ハニカム体1の外周面の周方向に3個以上(図2では3個)のロール6を配設し、ロール6でハニカム体1を挟圧することが好ましい。ロール6の個数は、ハニカム体1の周方向には3個以上、ハニカム体1の径や箔厚に応じて適宜定める。またハニカム体1の軸方向には、ハニカム体1の長さに応じて1個ないし数個、適宜定める。挟圧手段としては、図2に示すように空気圧あるいは油圧などによるシリンダー12でロール6をハニカム体1の半径方向に押し付けることができる。
【0014】
以上述べたように、本発明法によれば、ハニカム体の中心部から外周部にわたって、平箔と波箔の接触面圧を高く維持できるので、接合不良の問題が解消される。特に、拡散接合においてその効果が発揮される。
さらに、本発明法により、従来困難であった40μm未満の薄箔ハニカム体が安定製造できる。このような薄箔ハニカム体を採用することにより、エンジン始動初期、触媒が作用する300℃以上の温度に担体が早期昇温されるので、排ガス浄化能力がより向上する。また、ハニカム体を通過する排ガスの抵抗が低下するので、エンジン出力の損失がより低減する。
【0015】
【実施例】
本発明例−1: 厚さ50μm 、幅100mmのAl含有ステンレス鋼平箔と、該平箔をコルゲート加工した波高1.22mmの波箔を、図1の方法により巻回して、直径100mmのハニカム体を製造した。溶接位置は、ハニカム体1の1周あたり2点とした。バックテンションは8kgf とした。得られたハニカム体の外観は、波箔のつぶれおよび平箔と波箔の間の隙間がなく良好であった。
【0016】
本発明例−2: 厚さ30μm 、幅100mmのAl含有ステンレス鋼平箔と、該平箔をコルゲート加工した波高1.23mmの波箔を、図2の方法により巻回して、直径100mmのハニカム体を製造した。溶接位置は、ハニカム体1の1周あたり2点とし、3個のロール6は、シリンダー12によりハニカム体1に終始押付けられており、その押付力は20kgf 、バックテンションは4kgf とした。得られたハニカム体の外観は、波箔のつぶれおよび平箔と波箔の間の隙間がなく良好であった。
【0017】
従来例−1: 本発明例−1と同じ箔厚50μm の平箔と波箔を、巻回中は溶接せず、ロール6を使用せず、サイドプレート10により20kgf で挟持し、バックテンション15kgf として巻回した。得られたハニカム体の外観を観察すると、中心部に波箔のつぶれが認められ、外周部の一部には平箔と波箔の間に隙間が見られた。
従来例−2: 本発明例−2と同じ箔厚30μm の平箔と波箔を、巻回中は溶接せず、ロール6を使用せず、サイドプレート10により20kgf で挟持し、バックテンション10kgf として巻回したが、波箔がつぶれて所定径まで巻回することができなかった。
【0018】
本発明例−1〜2および従来例−1で得られたハニカム体を、Al含有ステンレス鋼製の外筒に嵌入し、非酸化性雰囲気で加熱して拡散接合し、メタル担体を製造した。これらについて、図3に示すような冷押し評価法により、接合状態の評価を行った。すなわち、水平に置かれた段付き受台16に、厚さを30mmに切断したメタル担体15を、軸を鉛直にして載置し、室温にて、上方から段付きポンチ17をメタル担体15に押入れ、ロードセル18で荷重を、変位計19で変位量を測定し、荷重−変位曲線を作成した。その結果を図4に示す。本発明例はいずれも接合剥離が認められず、良好な塑性変形カーブが描かれた。従来例−1は、平箔と波箔の間およびハニカム体と外筒の間での接合不良および剥離が認められ、それによる荷重低下が見られた。
【0019】
【発明の効果】
本発明は、自動車、ボイラー、発電用等の内燃機関の排ガス浄化用触媒のメタル担体に使用されるハニカム体の形成方法であって、平箔と波箔を重ねて巻回する際、巻回中のハニカム体の外周面の平箔に電極を接触させ、平箔と波箔を部分的に溶接することにより、平箔と波箔の接触面圧を、ハニカム体の中心部から外周部にわたって適正にできる。さらに、外周面の周方向に3個以上のロールを配置し、該ロールでハニカム体を挟圧することにより、箔厚40μm未満の薄箔ハニカム体も安定製造できる。
【0020】
したがって、本発明法により製造したハニカム体の平箔と波箔を、拡散接合等により接合して得られるメタル担体は、接合不良がなく信頼性の高いものである。また、薄箔メタル担体により、エンジン始動初期の排ガス浄化能力がより向上し、エンジン出力の損失がより低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法の例を示す説明図である。
【図2】本発明法の別の例を示す説明図である。
【図3】実施例における評価法の説明図である。
【図4】実施例における評価結果を示すグラフであり、(a)および(b)は本発明例、(c)は従来例である。
【図5】従来法の例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…ハニカム体
2…平箔
3…波箔
4…巻取軸
5…電極
6…ロール
7…サイドプレート
8…駆動輪
9…チェーン
10…電源
11…ブレーキロール
12…シリンダー
15…メタル担体
16…段付き受台
17…段付きポンチ
18…ロードセル
19…変位計
21…シュー型電極
22…歯車型電極
23…軸受
24…スリップリング
25…加圧装置
26…巻取用モータ
Claims (2)
- 平箔と、平箔をコルゲート加工した波箔を巻取軸の周りに巻回すると同時に、形成されつつあるハニカム体の外周面の周方向に3個以上のロールを配設して、該ロールで挟圧しながらハニカム体を形成する方法において、形成されつつあるハニカム体の外周面の平箔に電極を接触させて該平箔と波箔とを部分的に抵抗溶接し、ハニカム体の中心部から外周部にかけて平箔と波箔の接触面圧を適正に保ち、平箔と波箔を拡散接合することを特徴とするハニカム体の形成方法。
- 平箔、波箔の箔厚が40μm未満であることを特徴とする請求項1記載のハニカム体の形成方法。
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