JP3672888B2 - 木材処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物の酵素的高分子化方法及びその方法で得られる高分子化合物の利用方法に関する。
さらに詳しく言えば、本発明は、アルカリpH域において、ポリフェノール酸化作用を有する酵素をフェノール性化合物または芳香族アミン化合物に作用させることにより分子量の増大したフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を製造する方法、及び前記のアルカリ域における酵素の触媒作用を利用するフェノール性化合物または芳香族アミン化合物の速やかな分子量の増大反応を利用して得られる、増粘剤、安定剤、凝集剤、乳化剤、分散剤、保水剤、酸化防止剤、接着剤、コンクリート混和剤、染色剤、脱臭剤、塗料、石油回収剤、土壌改質剤、種子吹付表土安定剤、農薬展着剤、飼料のバインダー、殺菌剤、抗菌剤、ウィルス感染阻止剤、生物付着防止剤、生物忌避剤、殺虫剤、パップ剤、インキ基剤及び木材処理剤、これら各種剤類の製造方法、廃水処理方法、脱酸素方法、木材処理方法、コンクリート処理方法、及び土壌処理方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、フェノール性化合物等が、酵素、例えば担子菌類や不完全菌類の生産するラッカーゼやポリフェノールオキシダーゼを利用して高分子化できることが知られている(Journal of Biotechnology, 13, 229-241, 1990など)。しかしながら、菌類の生産するラッカーゼやポリフェノールオキシダーゼはその至適反応pHが酸性領域にあるため、これらの酵素を用いて高分子化反応を触媒・加速するためには、反応を酸性から中性のpH域で実施する必要があり、しかもその高分子化反応の速度は十分に高いものではなかった。また、これらの酵素が反応できる天然の有機化合物の多くはポリフェノール化合物であり、これらポリフェノール化合物の溶解度は酸性から中性のpH域において低下するにもかかわらず、酵素の至適反応pHが酸性領域にあるため、反応を酸性から中性のpH域で実施する必要があり、高濃度のポリフェノール化合物を効率よく高分子化することができないという欠点があった。また、多くのポリフェノール化合物はアルカリpH域でその自動酸化が加速されるにもかかわらず、従来は、酸性から中性のpH域において酵素的な酸化重合を行っていたため、自動酸化を有効に利用できないという欠点があった。
【0003】
また、従来よりビリルビンオキシダーゼによっても、フェノール性化合物等が高分子化でき、これをリグニンの高分子化、綿の染色に利用可能であることが知られている(WO95-01426号、特開平6-316874号)。しかしながら、ビリルビンオキシダーゼを用いる先行技術ではフェノール性化合物等の酵素触媒的な重合を酸性から中性のpH領域で実施しており、その高分子化反応の速度は十分に高いものではなく、ビリルビンオキシダーゼによってアルカリpH域でフェノール性化合物の高分子化反応が加速されることを示唆する記載は全くない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、アルカリpH域でフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を高分子化する酵素触媒による方法を提供することにある。
【0005】
本発明の他の課題は、ポリフェノール酸化作用を有する酵素を用いて、アルカリpH域においてフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を効率よく高分子化する工程を含む、増粘剤、安定剤、凝集剤、乳化剤、分散剤、保水剤、酸化防止剤、接着剤、コンクリート混和剤、染色剤、塗料、石油回収剤、土壌改質剤、種子吹付表土安定剤、脱臭剤、消臭剤、農薬展着剤、飼料のバインダー、殺菌剤、抗菌剤、ウィルス感染阻止剤、生物付着防止剤、生物忌避剤、殺虫剤、パップ剤、インキ基剤及び木材処理剤の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の課題は、前記フェノール性化合物または芳香族アミン化合物を効率よく高分子化してなる高分子化合物を含む、増粘剤、安定剤、凝集剤、乳化剤、分散剤、保水剤、酸化防止剤、接着剤、コンクリート混和剤、染色剤、塗料、石油回収剤、土壌改質剤、種子吹付表土安定剤、脱臭剤、消臭剤、農薬展着剤、飼料のバインダー、殺菌剤、抗菌剤、ウィルス感染阻止剤、生物付着防止剤、生物忌避剤、殺虫剤、パップ剤、インキ基剤及び木材処理剤を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の課題は、前記本発明による高分子化反応を利用してフェノール性化合物や芳香族アミン化合物を含有する廃水から前記化合物を除去する処理方法を提供することにある。
また、本発明の課題は、前記本発明による高分子化反応を利用して溶存酸素を除去する脱酸素方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の課題は、前記本発明による高分子化反応を利用した木材の処理方法を提供することにある。
また、本発明の課題は、前記本発明による高分子化反応を利用したコンクリート処理方法を提供することにある。
さらに本発明の課題は、前記本発明による高分子化反応を利用した土壌改質方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物を効率よく高分子化する方法を開発するため、鋭意研究を行った。そして、驚くべきことに、アルカリ域、特にpH8以上のアルカリpH域でポリフェノール酸化作用を有する適当な酵素を用いることにより、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物の高分子化を効率よく達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、上記の高分子化方法の利用方法のうち、特に以下の構成からなる木材処理方法に関する。
1.ミロセシウム・ヴェルカリア(Myrothecium verrucaria)SD3001(受託番号FERM BP-5520)またはミロセシウム・ロリダム(Myrothecium roridum)SD3002(受託番号FERM BP-5523)を培養して得られるポリフェノール酸化作用を有する酵素を、アルカリpH域においてフェノール性化合物または芳香族アミン化合物と共に木材に含浸させ、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物を木材中で高分子化することを特徴とする木材処理方法。
2.pH8以上のアルカリ域において高分子化する前記1に記載の木材処理方法。
3.フェノール性化合物がリグニンもしくはリグニン誘導体である前記1または2に記載の木材処理方法。
4.リグニン誘導体がリグニンスルホン酸である前記3に記載の木材処理方法。
5.ミロセシウム・ヴェルカリア(Myrothecium verrucaria)SD3001(受託番号FERM BP-5520)またはミロセシウム・ロリダム(Myrothecium roridum)SD3002(受託番号FERM BP-5523)を培養して得られるポリフェノール酸化作用を有する酵素を、アルカリpH域において木材に含浸させ、木材中に存在するフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を前記酵素で高分子化することを特徴とする木材処理方法。
6.ミロセシウム・ヴェルカリア(Myrothecium verrucaria)SD3001(受託番号FERM BP-5520)またはミロセシウム・ロリダム(Myrothecium roridum)SD3002(受託番号FERM BP-5523)を培養して得られるポリフェノール酸化作用を有する酵素、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物、及びキノン化合物、不飽和脂肪酸、不飽和アルコール及び不飽和アルキル化合物から選ばれる加熱硬化剤1以上を、アルカリpH域において木材に含浸させ、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物を木材中で高分子化することを特徴とする木材処理方法。
7.ミロセシウム・ヴェルカリア(Myrothecium verrucaria)SD3001(受託番号FERM BP-5520)またはミロセシウム・ロリダム(Myrothecium roridum)SD3002(受託番号FERM BP-5523)を培養して得られるポリフェノール酸化作用を有する酵素、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物、及び抗菌性化合物、抗ウイルス性化合物、生物忌避化合物、殺虫性化合物及び生物忌避性金属イオンから選ばれる生理活性基質1以上を、アルカリpH域において木材に含浸させ、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物を木材中で高分子化することを特徴とする木材処理方法。
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
[ポリフェノール酸化酵素]
本発明の目的に使用される酵素は、アルカリpHにおいてポリフェノール酸化作用を有するものであればよい。このような酵素の例として、微生物、例えば真菌または細菌によって産生されるか、もしくは植物によって産生されるカテコールオキシダーゼ、ラッカーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、またはビリルビンオキシダーゼ等のポリフェノール酸化酵素が挙げられる。またこれらの酵素の他に、アルカリpHにおいてポリフェノール酸化作用を有するものであれば、いかなる酵素蛋白質も本発明に使用し得る。
【0012】
本発明で使用するアルカリpH域でポリフェノール酸化作用を有する酵素としては、効率の良い高分子化反応の実施のために、ポリフェノール酸化反応の至適反応pHがpH7.5以上のアルカリ側にあるものが望ましい。具体的には、このような酵素は、後述するシリンガルダジン(syringaldazine)を用いる活性測定においてpH7.5以上のアルカリ側に至適反応pHを有するものであることが望ましい。
【0013】
本発明の目的に使用される酵素を産生する微生物の例としては以下のものが挙げられる。
真菌としては、不完全菌亜門(Deuteromycotina)に属する、アスペルギルス(Aspergillus)、ボトリティス(Botrytis)、ミロセシウム(Myrothecium)、ペニシリウム(Penicillium)、ペスタロチア(Pestalotia)、リゾクトニア(Rhizoctonia)、トリコデルマ(Tricoderma)、好ましくはアスペルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、ミロセシウム・ロリダム(Myrothecium roridum)、ミロセシウム・ヴェルカリア(Myrothecium verrucaria)、ミロセシウム・プレストニ(Myrothecium prestonii)、ミロセシウム・ロイコトリカム(Myrothecium leucotrichum)、ペニシリウム・スクレロティオラム(Penicillium sclerotiorum)、ペニシリウム・ヤンチネルム(Penicillium janthinellum)、ペスタロチア・パルマラム(Pestalotia palmarum)、リゾクトニア・プラティコラ(Rhizoctonia praticola)、トリコデルマ・レシィ(Tricoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Tricoderma viride)に属する菌株を含む。これらの中で特に好ましいのはミロセシウム・ヴェルカリア SD3001(Myrothecium verrucaria SD3001)(工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP-5520として寄託)またはミロセシウム・ロリダム SD3002(Myrothecium roridum SD3002)(工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP-5523として寄託)である。
【0014】
他の好ましい真菌は、担子菌亜門(Basidiomycotina)に属する、プロイロータス(Pleurotus)、レンティナス(Lentinus)、シゾフィラム(Schizophyllum)、アルミラリエラ(Armillariella)、フラムリナ(Flammulina)、アガリカス(Agaricus)、コプリナス(Coprinus)、ファネロカエテ(Phanerochaete)、フレビア(Phlebia)、レンチテス(Lenzites)、メラノロイカ(Melanoleuca)、フォリオタ(Pholiota)、ステレウム(Stereumu)、ポリポラス(Polyporus)、ポリポレルス(Polyporellus)、ミクロポラス(Microporus)、フォミトプシス(Fomitopsis)、ピクノポラス(Pycnoporus)、トラメテス(Trametes)、コリオラス(Coriolus)、デダレオプシス(Daedaleopsis)、リジドポラス(Rigidoporus)、フォメス(Fomes)、ガノデルマ(Ganoderma)、トラキデルマ(Trachyderma)、ヒメノカエテ(Hymenochaete)、イノノタス(Inonotus)、好ましくはプロイロータス・コルヌコピエ(Pleurotus cornucopiae)、プロイロータス・オストレアタス(Pleurotus osteratus)、レンティナス・エドデス(Lentinus edodes)、シゾフィラム・コミューン(Schizophyllum commune)、アルミラリエラ・メレア(Armillariella mellea)、フラムリナ・ベルティペス(Flammulina velutipes)、アガリカス・ビスポラス(Agaricus bisporus)、コプリナス・コマタス(Coprinus comatus)、コプリナス・シネレウス(Coprinus cinereus)、コプリナス・コングレガタス(Coprinus congregatus)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラジアータ(Phlebia radiata)、レンチテス・ベツリナ(Lenzites betulina)、メラノロイカ・ベルルシペス(Melanoleuca verrucipes)、フォリオタ・ナメコ(Pholiota nameko)、ステレウム・ヒルスタム(Stereumu hirsutum)、ポリポラス・スクアモサス(Polyporus squamosus)、ポリポレルス・バディウス(Polyporellus badius)、ミクロポラス・フラベリフォルミス(Microporus flabelliformis)、フォミトプシス・ピニコラ(Fomitopsis pinicola)、ピクノポラス・コシネウス(Pycnoporus coccineus)、トラメテス・オリエンタリス(Trametes orientalis)、コリオラス・ヴェルシコラー(Coriolus versicolor)、コリオラス・ヒルスタス(Coriolus hirsutus)、デダレオプシス・トリコラー(Daedaleopsis tricolor)、リジドポラス・ゾナリス(Rigidoporus zonalis)、フォメス・フォメンタリウス(Fomes fomentarius)、ガノデルマ・ルシダム(Ganoderma lucidum)、トラキデルマ・ツノダエ(Trachyderma tsunodae)、ヒメノカエテ・ルビギノーサ(Hymenochaete rubiginosa)、イノノタス・ミカドイ(Inonotus mikadoi)に属する菌株である。
【0015】
他の好ましい真菌は、子嚢菌亜門(Ascomycotina)に属するポドスポラ(Podospora)、ノイロスポラ(Neurospora)、モノシリウム(Monocillium)、好ましくは、ポドスポラ・アンセリナ(Podospora anserina)、ノイロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、モノシリウム・インディカム(Monocillium indicum)に属する菌株である。
【0016】
いくつかの好ましい細菌には、アゾスピリウム(Azospirillum)、好ましくはアゾスピリウム・リポフェラム(Azospirillum lipoferum)、または、アクチノミセタレス目(Actinomycetales)、たとえばストレプトミセス(Streptomyces)、好ましくはストレプトミセス・アンチビオティカス(Streptomyces antibioticus)、または、アエロバクタ(Aerobacter)、好ましくはアエロバクタ・アエロゲネス(Aerobacter aerogenes)に属する菌株が含まれる。
【0017】
他の好ましい細菌は、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alcalophilus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・ファーマス(Bacillus firm us)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ナットー(Bacillus natto)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、好ましくはバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ナットー(Bacillus natto)である。
【0018】
本発明で使用する酵素を含有するいくつかの好ましい植物には、カケノキ(Acerpseudoplatanum)、ヤムノキ(Dioscorea)、オクラ(Abelmoschus)、グアバ(Psidium)、ヒマワリ(Helianthus)、ジャガイモ、リンゴ、カボチャ、キュウリ、小麦、アルファルファなどを含む。
【0019】
[酵素の調製]
本発明で使用する酵素は、前記の微生物、例えば真菌または細菌に属する菌株及びその変異株を培養して得られるほか、遺伝子操作菌を利用して調製することも可能である。すなわち、前記酵素蛋白質をコードするDNA配列と宿主生物での酵素発現機能を有する適当なプロモーター、及びオペレーター、ターミネーターDNA配列と共に、宿主生物中でベクターを複製するための複製開始点を有するDNAベクターに挿入された発現ベクターを用いて形質転換された宿主細胞、もしくは前記酵素蛋白質をコードするDNA配列と宿主生物での酵素発現機能を有する適当なプロモーター、及びオペレーター、ターミネーターDNA配列と共に、宿主細胞DNAに組み込むことにより形質転換された宿主細胞を、酵素蛋白質の発現できる条件のもとに培養し、さらに酵素蛋白質を培地から回収する方法によっても生産される。
【0020】
本発明に係る酵素蛋白質をコードするDNA断片の取得のためには、前記の微生物、例えば真菌または細菌に属する菌株からのcDNAまたはゲノムライブラリィを分離源とし、本発明に係る酵素蛋白質のアミノ酸配列に基づいて合成されたオリゴヌクレオチドをプローブとして目的のDNA断片を特定するか、または酸化酵素としての活性を発現するクローンを選択するか、または前記酵素蛋白質に対する抗体と反応する蛋白質を生産するクローンを選択するといった常法によって行うことができる。
【0021】
本発明に係る酵素蛋白質は、前記の植物由来の種子、または果実、葉などからの抽出で調製することも可能である。
また、本発明に係る酵素蛋白質を得るための真菌または細菌に属する菌株及びその変異株の培養は、通常用いられる合成培地や有機炭素源及び有機窒素源を含む栄養培地が使用可能である。培養の場合、Cu2+イオンを金属塩として0.001mMから10mM、好ましくは0.01mMから1mMの濃度で添加することが望ましい。
【0022】
本発明に係るポリフェノール酸化酵素が真菌または細菌の菌体外に分泌される場合は、培地中から周知の方法でこれを回収することができる。この回収手順には、遠心分離もしくはろ過、膜分離により培地から細胞を分離し、例えばイオン交換クロマトグラフィー等によるクロマトグラフィーを行うという一連の手順を含む。また、限外ろ過膜を用いる膜濃縮も有効である。酵素蛋白質が真菌または細菌の菌体内に蓄積される場合や植物組織内に存在する場合は、菌体組織や植物組織から、周知の方法でこれを回収することができる。この回収手順には、ホモジナイズによる組織の機械的破壊と、遠心分離もしくはろ過、膜分離により酵素蛋白質溶液を分離抽出し、例えばイオン交換クロマトグラフィー等によるクロマトグラフィーを行うという一連の手順を含む。また、限外ろ過膜を用いる膜濃縮も有効である。
【0023】
[活性測定法]
本発明においては、ポリフェノール酸化作用を有する酵素蛋白質のポリフェノール酸化活性の測定は、20℃において、20ppmのシリンガルダジン(syringaldazine)、及び100mMのTris−HClバッファーもしくはリン酸カリウムバッファーを含む水溶液中で、至適反応pHでの反応を行い、525nmの吸光度を測定することで行った。そして、1分間に1μmolのシリンガルダジンを酸化する活性量を1ユニット(以下、Uと略す。)と定義した。
【0024】
[高分子化反応方法及びその利用]
本発明方法による分子量の増大したフェノール性化合物または芳香族アミン化合物の製造における、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物の濃度は0.01〜90%、好ましくは1〜80%である。また、反応温度は0〜150℃、好ましくは0〜100℃である。さらに、反応のpHは7.0〜12、好ましくは7.5〜10である。また、使用する酵素活性濃度は1〜10,000U/リッター、好ましくは10〜2000U/リッターである。酵素活性濃度は、目的によって調整することが望ましい。すなわち、速やかな高分子化およびゲル化または固化を達成したい場合には高い活性濃度で反応を行えばよい。一方、低い活性濃度で反応を行えば穏やかな高分子化反応が進行し、液状物質としてより均一な高分子物溶液を得ることができ、さらに反応を続行すると、穏やかなゲル化反応が反応液全体にわたって進行する。適当な重合度に至った時点での反応の停止は、NaOH、NH3、Na2CO3、CaCO3などのアルカリやアルカリ塩の添加、塩酸、硫酸、硝酸などの酸の添加、既知の酵素阻害剤の添加、あるいは100℃、15分間といった加熱処理によって実施できる。
【0025】
また、ゲル化したフェノール性化合物または芳香族アミン化合物は、所望により50〜230℃で加熱することにより、再び溶解させることが可能である。こうした熱溶解性は、分散剤、接着剤、塗料などの用途に用いるときに有用な性質である。また熱溶解後に熱水などを添加し、分散・溶解させることで、非常に分子量の高いフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を、溶液として得ることが可能である。
【0026】
また、加熱による硬化を促進する目的で、フルフリルアルコールや糖などのポリオールなどを添加することも可能である。また、高分子化合物に生理活性物質を含有させ、生理活性物質の固定化物質、あるいは生理活性物質の徐放性を有する物質を得る目的で、抗菌性化合物、抗ウィルス性化合物、生物忌避化合物、殺虫性化合物もしくは金属イオンを共存させて高分子化反応を行わせるか、または高分子化反応の後に、抗菌性化合物、抗ウィルス性化合物、生物忌避化合物、殺虫性化合物もしくは金属イオンを添加することも可能である。この目的で用いる抗菌性化合物、抗ウィルス性化合物、生物忌避化合物、殺虫性化合物もしくは金属イオンには、従来知られている多くの物質が使用可能である。
【0027】
本発明による高分子化反応は、ポリフェノール酸化作用を有する酵素を酸化触媒とするものであり、空気中の酸素を酸化剤として使用でき、このことは本発明の広範な利用分野への適用を可能にする。また、高分子化物を大量に生産する場合には、反応液の機械的な撹拌や、空気あるいは酸素を反応系に加える操作が有効である。また、反応液にペルオキシダーゼと過酸化水素、もしくは過酸化水素の代りに過酸化水素を生成できるオキシダーゼとその基質を添加し、酸素を酸化剤とする本発明の反応と、過酸化水素を酸化剤とする反応を同時に進行させることも可能である。
【0028】
[フェノール性化合物または芳香族アミン化合物]
本発明で高分子化する対象であるフェノール性化合物または芳香族アミン化合物は、本発明で使用する酵素が酸化できる物質であればいかなる化合物も使用可能である。
このようなフェノール性化合物または芳香族アミン化合物の具体的な例としては、リグニン、リグニンスルホン酸、フミン酸、ニトロフミン酸、タンニン、カテキン、没食子酸、ウルシオール、ヘスペリジン、クロロゲン酸、ヒノキチオール、ピロカテコール、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、エチル 3,4−ジヒドロキシケイ皮酸、ピロガロール、ラウリル ガレート、オクチル ガレート、シリンギン酸、フェルラ酸、バニリン、o−バニリン、バニラ酸、バニリルアルコール、アスコルビン酸、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸、アンスラロビン、アリザリン、キニザリン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、o−アニシジン、p−アニシジン、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、1,2−ジアミノアンスラキノン、1,4−ジアミノアンスラキノンである。
【0029】
これらの化合物の他にも本発明で使用する酵素が酸化できる物質あれば、高分子化物の原料として、あるいは、高分子化反応の触媒として使用可能である。このような化合物の例は、ABTS(2,2′−アゾビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))、ビリルビン、イソアスコルビン酸、ケルセチン、ルチン、グアイアコール、4−メトキシフェノール、ビフェノール、4,4′−エチレンジアニリン、メチルハイドロキノン、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、6−ヒドロキシ−2,4,5−トリアミノピリミジン、4,5,6−トリアミノピリミジン、2,3−ジヒドロキシピリダジン、3,6−ジヒドロキシピリダジン、2,3−ジヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸、メチル4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸、4,5−ジアミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2,3−ジアミノピリジン、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、2−アミノ−3−ヒドロキシピリジン、3−アミノ−2−メトキシジベンゾフラン、2,4−ジメトキシアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、3,4−ジメトキシアニリン、2′,5′−ジメトキシアセトフェノン、3′,4′−ジメトキシアセトフェノン、1,4−ジメトキシベンゼン、ベラトロール、2,3−ジメトキシ安息香酸、2,5−ジメトキシ安息香酸、ベラトル酸、3,4−ジメトキシベンジルアルコール、3,4−ジメトキシフェネチルアミン、(3,4−ジメトキシフェニル)酢酸、(3,4−ジメトキシフェニル)アセトニトリル、4−アリール−2−メトキシフェノール、2−メトキシ−4−プロフェニルフェノール、2−メトキシ−5−メチルアニリン、2−メトキシ−5−ニトロアニリン、4−メトキシ−2−ニトロアニリン、3−メトキシサリチル酸、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、メチルガレート、プロピル ガレート、3,4,5−トリメトキシアニリン、3,4,5−トリメトキシフェノール、トロポロン、プルプロガリン、サリチルアルドキシム、3−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸、プルプリン、2,3−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシ−1,4−アントラセンジオン、各種のアゾ系染料である。
また、高分子化物の物性を調節する目的で、これらのフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0030】
また、本発明によって高分子フェノール性化合物または芳香族アミン化合物を製造する際に、同様の反応経路によって高分子化されるキノン化合物を共存させることもできる。このようなキノン化合物の例は、アンスラキノン−2−スルホン酸、アンスラキノン−1,5−ジスルホン酸、アンスラキノン−2,6−ジスルホン酸、アンスラキノン−2−カルボン酸、1−アミノアンスラキノン、2−アミノアンスラキノン、アンスラルフィン、アミノナフトキノン、1,8−ジヒドロキシアンスラキノン、カムフォキノン、デヒドロアスコルビン酸、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、イサチン、5−ニトロイサチン、各種のアンスラキノン系染料である。また、オレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸、または、オレイルアルコールなどの不飽和アルコール、さらには、スクアレンなどの不飽和アルキルといった自動酸化される物質を共存させ、酵素反応と同時に空気酸化、重合を行うことも可能である。
【0031】
本発明によって製造される高分子フェノール性化合物または芳香族アミン化合物の中では、特にリグニン、リグニンスルホン酸、フミン酸、ニトロフミン酸、タンニン、カテキン、没食子酸、ウルシオール、ヘスペリジン、ヒノキチオールなどの天然物もしくは天然物誘導体の高分子化物は、環境や人体への安全性が高いため有用性が高く、その高分子化合物の特性を生かして、増粘剤、安定剤、凝集剤、乳化剤、分散剤、保水剤、酸化防止剤、接着剤、コンクリート混和剤、染色剤、塗料、石油回収剤、土壌改質剤、種子吹付表土安定剤、脱臭剤、消臭剤、農薬展着剤、飼料のバインダー、殺菌剤、抗菌剤、ウィルス感染阻止剤、生物付着防止剤、生物忌避剤、殺虫剤、パップ剤、インキ基剤または木材処理剤などの様々な用途分野への利用が可能である。なお、これらの用途においては各々の分野で通常使用されている各種の添加剤成分を併用できる。
【0032】
さらに、これらの用途分野において、本発明に開示した製造方法で、天然もしくは非天然のフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を穏和な反応条件で高分子化し、粘性、接着性、保水性、水溶性、耐水性、弾性、強度などの物性や生理作用を調節することにより、高分子化合物としてのより高機能な用途展開が可能となる。
【0033】
また、本発明によりポリフェノール酸化作用を有する酵素をアルカリpH域においてフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を含有する廃水に作用させることにより、廃水中のフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を高分子化し容易に濃縮できるようにして、高分子化したフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を廃水から分離・除去するという廃水処理方法も可能である。このような利用法が特に有用な産業分野とその反応基質としては、紙パルプ分野におけるリグニンもしくはリグニン誘導体、着色・染色分野におけるアゾ系、アンスラキノン系などの染料がある。こうした高分子化反応の後に、凝集剤の添加による凝集沈殿処理や活性炭処理、ろ過処理を行うことで効率よく廃水中のフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を廃水から濃縮し分離・除去することが可能である。
【0034】
また、本発明によりポリフェノール酸化作用を有する酵素をアルカリpH域においてフェノール性化合物または芳香族アミン化合物に作用させ、溶存する酸素を消費せしめることを利用した脱酸素法あるいは脱酸素剤の製造も可能である。こうした脱酸素法及び脱酸素剤においては、天然もしくは非天然の多くのフェノール性化合物または芳香族アミン化合物が利用可能であり、溶存酸素濃度を急速に低減化することができ極めて有用である。
【0035】
また、本発明によりポリフェノール酸化作用を有する酵素を、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物と共に木材に含浸させ、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物、さらには木材中に既に含まれているリグニンなどのポリフェノール化合物を木材中で高分子化することにより、木材含浸処理後の乾燥工程での作業性の向上、木材蒸煮処理あるいは高温蒸気注入処理によるリグニン分解で低下した木材強度の向上、乾燥時あるいは凍結時の木材割れを防止する作用の向上、木材中の嫌気性環境の維持・向上による微生物の繁殖抑制が可能となる。
【0036】
また、本発明により、ポリフェノール酸化酵素が作用できる染料あるいは染料前駆体とポリフェノール酸化酵素を木材に作用させることにより、木材中で着色物質を生成すること、あるいは着色物質と木材中に既に含まれているリグニンなどのポリフェノール化合物を木材中で複合高分子化することが可能となるため、木材をより強固に染色・着色処理することができる。なお、上記の木材染色・着色処理において、多くのポリフェノール酸化酵素は木材中の着色物質であるリグニンを漂白することが知られており、本発明の木材染色・着色処理は、酵素的な漂白と染色・着色処理を同時に行うことができるため、工程の短縮、色調の向上が図られ極めて有用である。
【0037】
また、本発明によりポリフェノール酸化作用を有する酵素を、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物と共にコンクリートに添加し、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物をコンクリート中で高分子化することにより、スランプロスの改善、コンクリート強度の向上、コンクリート中の酸素濃度の低下による鉄筋のサビ抑制が可能である。
【0038】
【実施例】
以下に本発明について代表的な例を示し、さらに具体的に説明する。ただし、これらは単なる例示であり、本発明はこれらのみに限られるものではない。
なお、以下の例においては高分子化したフェノール性化合物または芳香族アミン化合物の分子量分析は、溶離液として50mMのリン酸カリウムバッファー(pH7.0)もしくは0.1mMの硫酸ナトリウム水溶液、検出器としてShodex RI(示差屈折率検出器)を用い、さらにはカラムとして、Shodex PROTEIN KW-802.5(2連)、もしくはShodex PROTEIN KW802.5とShodex OHpak SB-804HQを結したものを用いるHPLCによって行った。
【0039】
参考例1:培養及び粗精製、濃縮
500ml容のフラスコを培養装置に用い、0.134%Na2HPO4・12H2O、0.03%KH2PO4、1%マルトース、1%ペプトン、0.1%酵母エキス、0.05%MgSO4・7H2O、0.1mM CuSO4、1mM MnCl2、2mM CaCl2を含む100mlの培地に20%Na2CO3を加えてpHを7.8としたものに、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)SD3003(受託番号FERM BP-5801)を接種し、50℃、16時間の振とう培養後、培養温度を35℃に下げ、さらに3日間の培養を行った。培養後、4℃での遠心分離により除菌された培養ブロスを得た。これをさらに精製、濃縮するためには硫安分画が有効で、20〜60%飽和硫安濃度において大部分のポリフェノールオキシダーゼ活性を沈澱として回収することができた。得られた硫安沈澱は10mMビス・トリスHClバッファー溶液(pH7.0)に対して透析を行い、さらに精製、濃縮するために限外ろ過膜を用い、分子量10,000〜100,000の画範囲に粗精製濃縮水溶液(0.8U/ml)を得た。
【0040】
実施例1:培養及び濃縮
0.5%グルコース及び0.1%NaNO3、1.34%Na2HPO412H2O、0.3%KH2PO4、0.1%NaCl、0.2%ペプトン、20ppm酵母エキス、0.01%MgSO4・7H2O、0.1mM CuSO4からなる3リッターの培地に10%NaOHを加えてpHを8としたものを含む培養槽にミロセシウム・ヴェルカリア(Myrothecium verrucaria)SD3001(受託番号FERM BP-5520)を接種し、28℃、3日間の振とう培養を行った。培養後、4℃での遠心分離により除菌された培養ブロス2.5リッターを得た。
次に、この培養ブロスの一部を、ミニタン・フィルターパケット(CAT.NO.:PTGC0MP04,ミリポア社製)を用いるミニタン限外ろ過システム(ミリポア社製)によって、分子量10,000以上の画分として濃縮した。
これをさらに、200ppm NH4HCO3に対して透析後、凍結乾燥に供し、粗精製物を凍結乾燥物として得た。凍結乾燥物のポリフェノールオキシダーゼ活性は15U/mgであった。
なお、この凍結乾燥物の水溶液は、銅含有蛋白質に特有の600nm付近での吸収極大を示した。
【0041】
実施例2:培養及び濃縮
0.5%グルコース及び0.1%NaNO3、1.34%Na2HPO4・12H2O、0.3%KH2PO4、0.1%NaCl、0.2%ペプトン、20ppm酵母エキス、0.01%MgSO4・7H2O、0.1mM CuSO4からなる3リッターの培地に10%NaOHを加えてpHを8としたものを含む培養槽に、ミロセシウム・ロリダム(Myrothecium roridum)SD3002(受託番号FERM BP-5523)を接種し、28℃、3日間の振とう培養を行った。培養後、4℃での遠心分離により除菌された培養ブロス2.5リッターを得た。
次に、この培養ブロスの一部を、ミニタン・フィルターパケット(CAT.NO.: PTGC0MP04,ミリポア社製)を用いるミニタン限外ろ過システム(ミリポア社製)によって、分子量10,000以上の画分として濃縮した。
これをさらに、200ppmNH4HCO3に対して透析後、凍結乾燥に供し、粗精製物を凍結乾燥物として得た。凍結乾燥物のポリフェノールオキシダーゼ活性は10U/mgであった。
なお、この凍結乾燥物の水溶液は、銅含有蛋白質に特有の600nm付近での吸収極大を示した。
【0042】
参考例2:高分子化反応
参考例1記載の粗精製濃縮水溶液を用いて以下の[参2−1]から[参2−3]の高分子化反応を、市販のポリフェノールオキシダーゼ(タカラ(TaKaRa)から入手)を用いて[参2−4]の高分子化反応を行った。
【0043】
[参2−1]:
リグニンスルホン酸ナトリウム塩(アルドリッチ・ケミカル・カンパニ(Aldrich Chemical Company, Inc.)から入手)を20%(W/V)、ポリフェノール酸化酵素として粗精製濃縮水溶液を300U/リッターの活性濃度で含有する反応液1mlを調製し、ガラス試験管において、反応温度70℃、100rpmの振とうを行い反応を実施した。反応液のpHは微量の硫酸により7.5に調整した。反応開始後、直ちに反応液の色調は濃くなり、6時間後には顕著な高分子化の進行が認められ、20時間後には反応液の大部分が固化した。
【0044】
[参2−2]:
また、ポリフェノール酸化酵素の活性濃度を60U/リッターに変えて反応を行った場合は、反応開始後20時間では反応液全体が粘性の高い液状を呈し、粘度の上昇と共に分子量が増大し、さらに20時間の反応継続後には、部分的な固化が認められた。なお、分子量分析用サンプルは、反応液の一部を抜き取り、水浴中で約100℃、15分間の加熱処理を行い、反応を停止することで調製した。
【0045】
[参2−3]:
また、リグニンスルホン酸の替わりにリグニン(アルカリ)(nacalai tesqueから入手)を20%(W/V)の濃度で用い、300U/リッターのポリフェノール酸化酵素の活性濃度、pH7.5で反応を実施したところ、反応開始の24時間後には反応液全体が粘性の高い液状を呈した。
【0046】
[参2−4]:
なお、リグニンスルホン酸ナトリウム塩を20%(W/V)、ポリフェノール酸化酵素として市販のポリフェノールオキシダーゼを300U/リッターの活性濃度で含有する反応液100mlを調製し、500ml容フラスコにおいて、反応温度25℃、100rpmの振とうを行い反応を実施した。ここで用いた市販のポリフェノールオキシダーゼは、シリンガルダジンを用いる活性測定で、pH6〜7に至適反応pHを有する酸性酵素であることが示されたため、高分子化反応での反応液のpHは少量の硫酸を用いて6.5に調整した。反応開始後、直ちに反応液の色調は濃くなったが、反応液の大部分が固化するためには、約80時間の反応時間を要した。
【0047】
実施例3:高分子化反応
実施例1記載の凍結乾燥物を用いて以下の[3−1]から[3−3]の高分子化反応を行った。
【0048】
[3−1]:
リグニンスルホン酸ナトリウム塩を20%(W/V)、ポリフェノール酸化酵素として凍結乾燥物を20ppm(300U/リッター)の濃度で含有する反応液100mlを調製し、500ml容フラスコにおいて、反応温度25℃、100rpmの振とうを行い反応を実施した。反応液のpHはNaOHを用いて9に調整した。反応開始後、直ちに反応液の色調は濃くなり、3時間後には顕著な高分子化の進行が認められ、10時間後には反応液の大部分が固化した。また、ポリフェノール酸化酵素の添加量を4ppmに変えて反応を行った場合は、反応開始後20時間では反応液全体が粘性の高い液状を呈し、さらに20時間の反応継続後には、部分的な固化が認められた。なお、分子量分析用サンプルは、反応液の一部を抜き取り、水浴中で90℃、5分間の加熱処理を行い、反応を停止することで調製した。
【0049】
[3−2]:
また、リグニンスルホン酸の替わりにリグニン(アルカリ)を20%(W/V)の濃度で用い、300U/リッターのポリフェノール酸化酵素の活性濃度、pH9、反応温度25℃で反応を実施した。反応開始後、直ちに反応液の色調は濃くなり、高分子化反応が進行し、24時間後には反応液の大部分が固化した。
【0050】
[3−3]:
なお、リグニンスルホン酸ナトリウム塩を20%(W/V)、300U/リッターのポリフェノール酸化酵素の活性濃度で、反応液のpHを少量の硫酸を用いて7に調整し、反応温度25℃で反応を実施した。反応開始後、直ちに反応液の色調は濃くなったが、反応液の固化は認められなかった。
【0051】
実施例4:高分子化反応
実施例2記載の凍結乾燥物を用いて以下の[4−1]から[4−2]の高分子化反応を行った。
【0052】
[4−1]:
リグニンスルホン酸ナトリウム塩を20%(W/V)、ポリフェノール酸化酵素として凍結乾燥物を30ppm(300U/リッター)の濃度で含有する反応液100mlを調製し、500ml容フラスコにおいて、反応温度25℃、100rpmの振とうを行い反応を実施した。反応液のpHはNaOHを用いて9に調整した。反応開始後、直ちに反応液の色調は濃くなり、3時間後には顕著な高分子化の進行が認められ、10時間後には反応液の大部分が固化した。
【0053】
[4−2]:
また、リグニンスルホン酸の替わりにリグニン(アルカリ)を20%(W/V)の濃度で用い、300U/リッターのポリフェノール酸化酵素の活性濃度、pH9、反応温度25℃で反応を実施した。反応開始後、直ちに反応液の色調は濃くなり、24時間後には反応液の大部分が固化した。
【0054】
参考例3:高分子化反応
リグニンスルホン酸ナトリウム塩を20%(W/V)、ポリフェノール酸化酵素として市販のビリルビンオキシダーゼ(凍結乾燥物)(シグマ(Sigma)社から入手)を300U/リッターの濃度で含有する反応液100mlを調製し、500ml容フラスコにおいて、反応温度25℃、100rpmの振とうを行い反応を実施した。ここで用いた市販のビリルビンオキシダーゼは、シリンガルダジンを用いる活性測定で、pH8〜9に至適反応pHを有する酵素であることが示されたため、高分子化反応での反応液のpHは無調整でのpH8.5でそのまま実施した。反応開始後、直ちに反応液の色調は濃くなり、8時間後には顕著な高分子化の進行が認められ、24時間後には反応液の大部分が固化した。
また、リグニンスルホン酸の替わりにリグニン(アルカリ)を20%(W/V)の濃度で添加し、pH8.5で反応を実施したところ、反応開始の50時間後には反応液の大部分が固化した。
【0055】
実施例5:抗菌性
実施例3の[3−1]に記載の高分子化反応と同様の反応を行うことで得た固形(ゲル状)リグニンスルホン酸を、さらに小片(10mm×10mm×3mm)にスライスしたものを、Lアガー・プレートの中央に置き、さらにアスペルギルス・オリゼAHU7134(Aspergillus oryzae AHU7134)の胞子をプレートの培地面全体に加え、28℃で4日間の培養を行ったところ、リグニンスルホン酸の小片上部および周辺約2mmの範囲内での菌の生育阻止を認め、抗菌剤として有用であることが示された。
【0056】
実施例6:抗菌性
20%(W/V)のリグニンスルホン酸ナトリウム塩の水溶液に、ヒノキチオール(東京化成工業(株)から入手)を200ppm相当で添加し、90℃での加温によりヒノキチオールを融解し、さらにボルテックス・ミキサーによりヒノキチオールを懸濁させた後、25℃に冷却した。こうして得た高分子化反応の原料に、ポリフェノール酸化酵素として実施例1記載の凍結乾燥物を300U/リッターの活性濃度で添加し、反応温度25℃、pH9で高分子化反応を行いヒノキチオール含有固形(ゲル状)リグニンスルホン酸を得た。この固形物を小片(10mm×10mm×3mm)にスライスしたものを、Lアガー・プレートの中央に置き、さらにアスペルギルス・オリゼAHU7134(Aspergillus oryzae AHU7134)の胞子をプレートの培地面全体に加え、28℃で4日間の培養を行ったところ、リグニンスルホン酸の小片上部および周辺約10mmの範囲内での菌の生育阻止を認め、抗菌剤及び抗菌物質保持剤として有用であることが示された。
また、20%(W/V)のリグニンスルホン酸ナトリウム塩の水溶液に、(+)−カテキン・H2O(Sigmaから入手)を5000ppmの濃度で添加し、さらに、ポリフェノール酸化酵素として実施例1記載の凍結乾燥物を300U/リッターの活性濃度で添加し、反応温度25℃、pH9で高分子化反応を行いカテキン含有固形(ゲル状)リグニンスルホン酸を得た。この固形物について、上記実施例と同様にして抗菌性をみたところ、リグニンスルホン酸の小片上部および周辺約8mmの範囲内での菌の生育阻止を認め、抗菌剤及び抗菌物質保持剤として有用であることが示された。
【0057】
実施例7:木材処理
ポリフェノール酸化酵素として実施例1記載の凍結乾燥物を4ppmの濃度で含有する反応液を調製し、実施例3の[3−1]に記載の高分子化反応と同様にして反応を行い、水溶性の高分子化リグニンスルホン酸(20%(W/V))を得た。なお、熱などによる高分子化反応の停止操作は行わなかった。この高分子水溶液を水で10倍に希釈した液を木材処理用薬剤とし、樹皮を除去した後、60℃の0.1% Tween 80水溶液中で16時間処理したスギの丸太(直径3cm、長さ20cmの生木)に対して薬剤注入処理を行った。注入処理は720mmHgの減圧と10kg/cm2の加圧を行うベセル法で行った。高分子化を行っていないリグニンスルホン酸もしくは高分子化リグニンスルホン酸のそれぞれで注入処理した木材(各2本)を、白蟻の巣の周囲約20cmの土壌上に設置し、2ヶ月間放置の後、薬剤処理による防蟻効果を観察したところ、高分子化を行っていないリグニンスルホン酸で処理した木材では僅かながら白蟻による食害が見られたが、高分子化リグニンスルホン酸で処理した木材では白蟻による食害は全く見られず、また、木材表面の均質性(平滑性、つや)も維持されていた。
【0058】
実施例8:木材処理
1%のp−フェニレンジアミン・二塩酸(関東化学(株)から入手)水溶液を少量のNaOHを用いてpH9に調製したものに、ポリフェノール酸化酵素として実施例1記載の凍結乾燥物を0.2ppmの濃度で添加し、直ちに、これをナラの板材に塗布した。着色反応は板の表面及び内部(深さ〜約3mm)で速やかに進行し、黒褐色に強固に着色された板材を得た。
【0059】
参考例4:コンクリート改質
リグニンスルホン酸ナトリウム塩を20%(W/V)及びアンスラキノン−2−スルホン酸を1%(W/V)、ポリフェノール酸化酵素として参考例1記載の粗精製濃縮水溶液を60U/リッターの活性濃度で含有する反応液を調製し、参考例2の[参2−2]の記載の高分子化反応と同様にして反応を行い、得られた水溶性の高分子物を1/40量(リグニンスルホン酸として最終濃度0.5%重量)、砂率(S/A)36%重量、セメント440g/リッターで混和したとき、スランプ5.5cm、減水率は16.8%であった。なお、高分子化反応を行っていないもので上記実施例と同様の試験を行った場合は、スランプ5.7cm、減水率12.5%であり、高分子化による減水効果の向上を認めた。
【0060】
参考例5:コンクリート改質
リグニンスルホン酸ナトリウム塩を20%(W/V)及びアンスラキノン−2−スルホン酸を1%(W/V)、ポリフェノール酸化酵素として実施例1記載の凍結乾燥物を4ppmの濃度で含有する反応液を調製し、実施例3の[3−1]記載の高分子化反応と同様にして反応を行い、得られた水溶性の高分子物を1/40量(リグニンスルホン酸として最終濃度0.5%重量)、砂率(S/A)36%重量、セメント440g/リッターで混和したとき、スランプ5.6cm、減水率は16.9%であった。なお、高分子化反応を行っていないもので上記実施例と同様の試験を行った場合は、スランプ5.4cm、減水率12.8%であり、高分子化による減水効果の向上を認めた。
【0061】
参考例6:土壌改質
ポリフェノール酸化酵素として参考例1記載の粗精製濃縮水溶液を60U/リッターの活性濃度で含有する反応液を調製し、参考例2の[参2−2]に記載の高分子化反応と同様にして反応を行い、水溶性の高分子化リグニンスルホン酸(20%(W/V))を得、水で2倍に希釈したものを調製した。なお、熱などによる高分子化反応の停止操作は行わなかった。この高分子化リグニンスルホン酸水溶液3.0mlもしくは水3.0mlを、40g重量の畑土壌を含む50ml容のガラスビーカーにおいて、土壌表面に噴霧し、28℃でインキュベートし、乾燥による重量の減少を測定した。60時間後に、高分子化リグニンスルホン酸溶液を噴霧したものは約6g、水を噴霧したものは約12gの重量の減少を示し、高分子化リグニンスルホン酸による保水性の向上が認められた。また、高分子化リグニンスルホン酸溶液を噴霧したものでは土壌表面の硬度の向上が認められ、土壌改質剤、種子吹付表土安定剤として有用であることが示された。
【0062】
参考例7:土壌改質
ポリフェノール酸化酵素として実施例1記載の凍結乾燥物を4ppmの濃度で含有する反応液を調製し、実施例3の[3−1]に記載の高分子化反応と同様にして反応を行い、水溶性の高分子化リグニンスルホン酸(20%(W/V))を得、水で2倍に希釈したものを調製した。なお、熱などによる高分子化反応の停止操作は行わなかった。この高分子化リグニンスルホン酸水溶液3.0mlもしくは水3.0mlを、40g重量の畑土壌を含む50ml容のガラスビーカーにおいて、土壌表面に噴霧し、28℃でインキュベートし、乾燥による重量の減少を測定した。60時間後に、高分子化リグニンスルホン酸溶液を噴霧したものは約5g、水を噴霧したものは約12gの重量の減少を示し、高分子化リグニンスルホン酸による保水性の向上が認められた。また、高分子化リグニンスルホン酸溶液を噴霧したものでは土壌表面の硬度の向上が認められ、土壌改質剤、種子吹付表土安定剤として有用であることが示された。
【0063】
参考例8:廃水処理
フェノール性化合物または芳香族アミン化合物を含有する廃水のモデルとして、10mMのp−フェニレンジアミン・二塩酸水溶液を用いた。この水溶液に、ポリフェノール酸化酵素として実施例1記載の凍結乾燥物を2ppmの濃度で添加した反応液100mlを調製し、pH8の条件で500ml容フラスコにおいて、反応温度25℃、60rpmの振とうを行い高分子化反応を実施した。反応開始後、直ちに反応液の着色が始まり、1時間後には酸化と高分子化の進行による顕著な着色と高分子化合物の凝集が認められた。この反応液を、粉末セルロースであるKCフロック(日本製紙(株)から入手)をろ材として約40cm3の体積で含む簡易カラムに通液したところ、p−フェニレンジアミンに由来する高分子化合物の大部分を水溶液からろ別することができた。
なお、ポリフェノール酸化酵素として、実施例1記載の凍結乾燥物2ppmの替わりに実施例1記載の粗精製濃縮水溶液を30U/リッターの活性濃度で用い、他は上記実施例と同様にしてp−フェニレンジアミンを処理したところ、同様に、p−フェニレンジアミンに由来する高分子化合物の大部分を水溶液からろ別することができた。
【0064】
参考例9:脱酸素剤
フェノール性化合物として50mMのL−アスコルビン酸・Naを使用し、pH9.0、温度25℃において、実施例1記載の凍結乾燥物を4ppmの濃度で作用させ、マノメータで酸素消費速度を測定したところ、反応開始後1時間目の溶存酸素濃度は、反応開始時の0.05%に減少しており、高い脱酸素能を有することが示された。
なお、実施例1記載の凍結乾燥物4ppmの替わりに参考例1記載の粗精製濃縮水溶液を30U/リッターの活性濃度で用い、他は上記実施例と同様にして酸素消費速度を測定したところ、反応開始後1時間目の溶存酸素濃度は、反応開始時の0.2%に減少しており、同様に高い脱酸素能を有することが示された。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物の効率のよい高分子化反応が達成され、その高分子化合物を含む増粘剤、安定剤、凝集剤、乳化剤、分散剤、保水剤、酸化防止剤、接着剤、コンクリート混和剤、染色剤、塗料、石油回収剤、土壌改質剤、種子吹付表土安定剤、脱臭剤、消臭剤、農薬展着剤、飼料のバインダー、殺菌剤、抗菌剤、ウィルス感染阻止剤、生物付着防止剤、生物忌避剤、殺虫剤、パップ剤、インキ基剤または木材処理剤が効率よく提供される。
【0066】
また、本発明を利用することにより、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物を高分子化する工程を含む、増粘剤、安定剤、凝集剤、乳化剤、分散剤、保水剤、酸化防止剤、接着剤、コンクリート混和剤、染色剤、塗料、石油回収剤、土壌改質剤、種子吹付表土安定剤、脱臭剤、消臭剤、農薬展着剤、飼料のバインダー、殺菌剤、抗菌剤、ウィルス感染阻止剤、生物付着防止剤、生物忌避剤、殺虫剤、パップ剤、インキ基剤または木材処理剤の効率のよい製造方法が提供される。
【0067】
さらに、本発明によれば、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物の高分子化反応を利用した廃水処理方法、脱酸素方法、木材処理方法、コンクリート処理方法及び土壌処理方法が提供される。
また、本発明で用いるバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)SD3003、ミロセシウム・ヴェルカリア(Myrothecium verrucaria)SD3001、ミロセシウム・ロリダム(Myrothecium roridum)SD3002は本発明の高分子化物の製造に特に有用である。
Claims (7)
- ミロセシウム・ヴェルカリア(Myrothecium verrucaria)SD3001(受託番号FERM BP-5520)またはミロセシウム・ロリダム(Myrothecium roridum)SD3002(受託番号FERM BP-5523)を培養して得られるポリフェノール酸化作用を有する酵素を、アルカリpH域においてフェノール性化合物または芳香族アミン化合物と共に木材に含浸させ、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物を木材中で高分子化することを特徴とする木材処理方法。
- pH8以上のアルカリ域において高分子化する請求項1に記載の木材処理方法。
- フェノール性化合物がリグニンもしくはリグニン誘導体である請求項1または2に記載の木材処理方法。
- リグニン誘導体がリグニンスルホン酸である請求項3に記載の木材処理方法。
- ミロセシウム・ヴェルカリア(Myrothecium verrucaria)SD3001(受託番号FERM BP-5520)またはミロセシウム・ロリダム(Myrothecium roridum)SD3002(受託番号FERM BP-5523)を培養して得られるポリフェノール酸化作用を有する酵素を、アルカリpH域において木材に含浸させ、木材中に存在するフェノール性化合物または芳香族アミン化合物を前記酵素で高分子化することを特徴とする木材処理方法。
- ミロセシウム・ヴェルカリア(Myrothecium verrucaria)SD3001(受託番号FERM BP-5520)またはミロセシウム・ロリダム(Myrothecium roridum)SD3002(受託番号FERM BP-5523)を培養して得られるポリフェノール酸化作用を有する酵素、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物、及びキノン化合物、不飽和脂肪酸、不飽和アルコール及び不飽和アルキル化合物から選ばれる加熱硬化剤1以上を、アルカリpH域において木材に含浸させ、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物を木材中で高分子化することを特徴とする木材処理方法。
- ミロセシウム・ヴェルカリア(Myrothecium verrucaria)SD3001(受託番号FERM BP-5520)またはミロセシウム・ロリダム(Myrothecium roridum)SD3002(受託番号FERM BP-5523)を培養して得られるポリフェノール酸化作用を有する酵素、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物、及び抗菌性化合物、抗ウイルス性化合物、生物忌避化合物、殺虫性化合物及び生物忌避性金属イオンから選ばれる生理活性基質1以上を、アルカリpH域において木材に含浸させ、フェノール性化合物または芳香族アミン化合物を木材中で高分子化することを特徴とする木材処理方法。
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