JP3672734B2 - 鋼板の表面処理方法、表面処理鋼板、および表面処理鋼板を用いた熱可塑性樹脂被覆鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板の表面処理方法、その表面処理を施した鋼板、およびその表面処鋼板に熱可塑性樹脂を被覆してなる熱可塑性樹脂被覆鋼板に関する。より詳細には、缶蓋、絞り缶などへの加工のみならず、絞りしごき缶、絞り加工後ストレッチ加工を施した缶、絞り加工後ストレッチ加工を施し、さらにしごき加工を施した缶などの厳しい加工が施される用途に適し、さらに成形加工された缶に内容物を充填し、水蒸気中で加熱殺菌処理(以下レトルト処理という)を施しても、被覆した熱可塑性樹脂が剥離することのない、皮膜の密着性、特に加工密着性、および加工後の耐レトルト性が要求される鋼板に適した表面処理方法、またその表面処理を施した鋼板、さらにまたその表面処理鋼板に熱可塑性樹脂を被覆してなる熱可塑性樹脂被覆鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
缶蓋、絞り缶、絞りしごき缶、絞り加工後ストレッチ加工を施した缶、絞り加工後ストレッチ加工を施し、さらにしごき加工を施した缶などの成形加工用途、および内容物を充填した後レトルト処理する缶用途には、塗膜、熱可塑性樹脂フィルムなどの皮膜が被覆された鋼板が用いられている。これらの皮膜の密着性、特に加工密着性は、下地となる鋼板の表面処理の状態に大きく影響される。そのため、鋼板と樹脂皮膜の密着性を向上させることを目的とし、有機樹脂皮膜との密着性に優れた電解クロム酸処理皮膜を鋼板に形成させた電解クロム酸処理鋼板(ティンフリースチールまたはTFS、以下TFSという)が、有機樹脂皮膜を被覆する下地の鋼板として広く用いられている(特開平4−224936号公報など)。
【0003】
上記のTFSは、平板、缶蓋、絞り缶など比較的軽度の加工が施される用途のみならず、絞りしごき缶、絞り加工後ストレッチ加工を施した缶、絞り加工後ストレッチ加工を施し、さらにしごき加工を施した缶などの厳しい加工が施される用途においても被覆皮膜の加工密着性に優れている。TFSはこれらの缶の缶上部に施される缶蓋を巻しめるための張り出した縁を設けるためのフランジ加工や、缶上端の缶径を縮小させるためのネックイン加工を施しても、被覆皮膜が剥離することのない極めて優れた加工密着性を有しているが、これらの加工を施した缶に内容物を充填し、高温の水蒸気中でレトルト処理した場合に、前記のフランジ加工やネックイン加工を施した部分の皮膜が剥離することがあり、極めて優れた加工密着性を有するTFSといえども、厳しい加工を施した後の耐レトルト性は必ずしも満足の行くものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする技術課題は、上記のような厳しい成形加工を施した後、高温の水蒸気中でレトルト処理しても加工部の皮膜が十分な密着強度を有する鋼板の表面処理方法、その表面処理を施した鋼板、さらにその表面処理鋼板に熱可塑性樹脂を被覆してなる熱可塑性樹脂被覆鋼板を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の鋼板の表面処理方法は、鋼板をアルカリ脱脂し水洗し、次いで酸洗し水洗した後、電解クロム酸処理を施し水洗し、さらにシランカップリング剤を用いてシラン処理を施す一連の工程からなる鋼板の表面処理方法において、前記電解クロム酸処理を施し水洗した後鋼板を乾燥し、その後、水とエタノールの混合比率が水:エタノール=1:4〜4:1とした混合液中に、前記混合液に対して0.5〜20%濃度のシランカップリング剤を加えたシラン処理液中に浸漬してシラン処理皮膜を生成させることを特徴とする。
請求項2に記載の鋼板の表面処理方法は、請求項1にあって、前記シラン処理において、生成するシラン処理皮膜中に2〜6mg/m2のシリコンが生成するように処理することを特徴とする。
請求項3に記載の鋼板の表面処理方法は、請求項1または2にあって、前記電解クロム酸処理において、下層となる金属クロム皮膜を30〜300mg/m2、 上層となるクロム水和酸化物皮膜を、クロムとして0〜20mg/m2 形成させることを特徴とする。
請求項4に記載の鋼板の表面処理方法は、請求項3にあって、前記上層となるクロム水和酸化物皮膜を、クロムとして0〜10mg/m2 形成させることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の鋼板の表面処理鋼板は、請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板の表面処理方法を用いて、鋼板の少なくとも片面に、金属クロム皮膜、その上層にクロム水和酸化物皮膜層、さらにその上層にシラン処理皮膜を形成させてなることを特徴とする。
請求項6に記載の表面処理鋼板は、請求項5において、前記電解クロム酸処理および前記シラン処理により生成する表面処理皮膜の表層に、シリコンが原子分率で50〜100%含有していることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の熱可塑性樹脂被覆鋼板は、請求項6に記載の表面処理鋼板の少なくとも片面に、熱可塑性樹脂皮膜を被覆してなることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明においては、鋼板をアルカリ脱脂し水洗し、次いで酸洗し水洗した後、電解クロム酸処理を施し水洗し、さらにシランカップリング剤を用いてシラン処理を施す一連の工程からなる鋼板の表面処理方法において、前記電解クロム酸処理を施して一定量の金属クロム皮膜とクロム水和酸化物皮膜を形成させた鋼板を水洗し乾燥し、その後シラン処理を施し、鋼板上に一定量のシリコンを含有するシラン処理皮膜を形成させることにより、本発明の目的に適う優れた皮膜の加工密着性と加工後の耐レトルト性が得られることが判明した。
本発明において、その一層の向上を目的とする皮膜の加工密着性と加工後の耐レトルト性は、電解クロム酸処理により形成される皮膜中の金属クロム皮膜量、およびクロム水和酸化物皮膜量、さらにシラン処理により形成される皮膜量により異なるが、単に皮膜量の多少だけではなく、電解クロム酸処理を施し水洗した後の乾燥状態が、その後に形成させるシラン処理皮膜の性状、引いては皮膜の加工密着性と加工後の耐レトルト性に大きな影響を与える。すなわち、下地となる鋼板の金属クロムによる被覆が不十分で鋼の露出面積が大きい場合は加工後の耐レトルト性が不良となり、一方、金属クロム皮膜上にやや多めのクロム水和酸化物皮膜を形成させるように電解クロム酸処理を施し、水洗した後に乾燥せず直ちにシラン処理を施す場合、優れた耐レトルト性を得るためにはシラン処理皮膜を多量に形成させる必要があるが、電解クロム酸処理を施し、水洗した後に乾燥してシラン処理を施すと、形成されたシラン処理皮膜が少量であっても優れた耐レトルト性が得られる。この原因についてはよく分からないが、同一量のシラン処理皮膜を形成させた場合、乾燥後にシラン処理を施して生成したシラン処理皮膜の方が、乾燥せずにシラン処理を施して生成したシラン処理皮膜に比較して皮膜表層のシリコン原子分率が高いことから、乾燥状態でシラン処理を施すことにより、シラン処理皮膜の下層であるクロム水和酸化物皮膜が最表層に露出する程度が少なくなり、このことが耐レトルト性に影響を与えているものと考えられる。
【0007】
以上の事実に基づき、以下に本発明を詳細に説明する。
まず本発明に用いられる鋼板は、本発明の目的とする絞りしごき缶、絞り加工後ストレッチ加工を施した缶、絞り加工後ストレッチ加工を施し、さらにしごき加工を施した缶などの厳しい成形加工が可能な鋼板であれば特に限定することはないが、コストおよび成形加工性の点から缶の成形に広汎に用いられている板厚0.15〜0.30mmの低炭素冷延鋼板が好ましい。
【0008】
つぎに、本発明の鋼板の表面処理方法について説明する。本発明の鋼板は、カセイソーダなどのアルカリ水溶液中で脱脂し水洗し、硫酸や塩酸などの酸に浸漬して酸洗脱錆し水洗し、次いで電解クロム酸処理を施し、下層が金属クロム、上層がクロム水和酸化物からなる2層皮膜を形成させ水洗した後、直ちにシラン処理を実施せず、洗浄水が付着した電解クロム酸処理を施した鋼板を、1対の絞りロールを用いて絞るなどして洗浄水を除去する、あるいはさらに熱風を吹き付けるなどして残った水分を蒸発させて除去した後、シランカップリング剤を用いてシラン処理を施すことを特徴とする。
【0009】
まず鋼板表面を公知の方法を用いてアルカリ脱脂し水洗し、酸洗し水洗した後、無水クロム酸を主体とし、助剤として少量の硫酸、硫酸塩、弗酸、弗化物、硅弗化物、硼弗化物のうち1種以上を含む公知の処理浴中で、鋼板を陰極として電解処理し、金属クロム皮膜を得る。 この金属クロム皮膜上には、クロム析出過程の中間還元生成物であるクロム水和酸化物が不可避的に形成される。本発明においては通常のTFSとは異なり、クロム水和酸化物皮膜量を20mg/m2 以下とすることが、優れた加工密着性および耐レトルト性を維持する上で不可欠である。クロム水和酸化物皮膜の生成量が20mg/m2 を越える場合は、クロム水和酸化物皮膜量に応じてシラン処理皮膜量を増加させないと、絞り加工後ストレッチ加工を施し、次いでフランジ加工やネックイン加工を施す、といった極めて厳しい加工を施し、さらに高温の水蒸気中でレトルト処理した場合に十分な皮膜の密着性が得られず、高価なシラン処理剤を多く必要とし、経済的ではない。好ましくは10mg/m2 以下であり、より好ましくは5mg/m2 以下である。クロム水和酸化物皮膜の生成を抑制する析出方法としては、経験的に下記の技術が知られており、容易に実施可能である。
(1)浴組成
1)無水クロム酸濃度
通常のTFSの作成においては50〜300g/lで行われるが、80〜300g/lのように、無水クロム酸濃度が高めの方がクロム水和酸化物の生成は少ない。
2)助剤の種類および濃度
通常のTFSの作成における助剤の代表的なものとして硫酸がある。他に弗酸、弗化物、硅弗酸、硼弗酸、およびそれらのアルカリ金属塩の単独添加、または硫酸との併用添加も行われるが、一般に弗素系助剤の方が硫酸系の助剤よりもクロム水和酸化物の生成は少ない。助剤の添加量は種類により多少異なるが、無水クロム酸濃度の1〜5%程度である。
(2)浴温
通常のTFSの作成においては30〜60℃で行われるが、50〜60℃のように、浴温が高めの方がクロム水和酸化物の生成は少ない傾向にある。
(3)陰極電流密度
通常のTFSの作成においては10〜100A/dm2 で行われるが、30〜100A/dm2 のように、陰極電流密度が高めの方がクロム水和酸化物の生成は少ない傾向にある。
【0010】
上記の条件を選択し、さらに必要に応じて金属クロムを析出させる電解の終了後、処理浴中に浸漬保持するとクロム水和酸化物が溶解するので、クロム水和酸化物皮膜量を20mg/m2 以下とすることは容易に達成可能である。このようにして、水和酸化物皮膜の生成を極力抑制させながら、金属クロムを鋼板上に析出させる。金属クロムの析出量としては30〜300mg/m2 析出させる。金属クロム皮膜量が 30mg/m2未満の場合は下地の鋼板の露出面積が大きくなり、絞り加工後ストレッチ加工を施し、次いでフランジ加工やネックイン加工を施す、といった極めて厳しい加工を施し、さらに高温の水蒸気中でレトルト処理した場合に十分な皮膜の密着性が得られない。一方、 300mg/m2を越えて金属クロム皮膜を析出させても加工密着性および耐レトルト性の向上効果が飽和し、経済的でなくなる。好ましくは50〜200mg/m2 であり、より好ましくは70〜150mg/m2である。
【0011】
上記の様にして金属クロム皮膜およびクロム水和酸化物皮膜を形成させ水洗して余剰の処理液を洗浄除去した後、表面に付着した洗浄水を除去し乾燥する。余剰洗浄水の除去は、例えば1対の絞りロールなどの除去手段を用いて水分を除去した後、そのまま放置して蒸発乾燥させる。あるいはまた除去手段を用いて水分を除去した後、冷風、温風、または熱風を吹き付けるなどの乾燥手段を用いて直ちに蒸発乾燥させる。梅雨期などの高温多湿時には、乾燥後に湿気が再び鋼板上に付着するので、除去手段を用いて水分を除去し、次いで乾燥手段を用いて蒸発乾燥させた後、直ちに次のシラン処理を施す方が、安定した皮膜の加工密着性や加工後の耐レトルト性を得る上で好ましい。
【0012】
上記の様にして金属クロムおよびクロム水和酸化物からなる2層皮膜を形成させた鋼板の洗浄水を乾燥し除去した後、2層皮膜の上層にシラン処理層を形成させる。本発明のシラン処理においては、市販のシランカップリング剤を溶媒に希釈し、鋼板に塗布し乾燥する。溶媒としては水単独でも使用可能であるが、エタノールと水の混合溶媒を用いることが好ましい。例えば、水とエタノールの混合比率が水:エタノール=1:4〜4:1、好ましくは1:2〜2:1の混合溶媒を用いると好結果が得られる。水に対するエタノールの混合割合が1:4より多い場合はシランカップリング剤が混合液中に十分均一に分散するが、エタノールが高価であり、コスト面で有利ではなくなる。一方混合割合が4:1より少ない場合はシランカップリング剤が混合液中に十分均一に分散せず、また鋼板表面に塗布した後の乾燥に長時間を要するようになる。シランカップリング剤の濃度は前記混合溶液に対して 0.5〜20%の範囲が好ましく、1〜10%の範囲がより好ましい。0.5 %未満では乾燥後の塗布状態が不均一となりやすく、十分な密着性が得られない。20%を越えると密着性の向上の効果が飽和し、コスト面で有利ではなくなる。処理液の温度は室温〜90℃の範囲が好ましい。処理方法としては鋼板を処理液に浸漬した後、絞りロールを用いて余剰の液を絞り、次いで乾燥させる。浸漬時間は1〜15秒で十分であり、3〜10秒の範囲がより好ましい。処理量はシラン処理に先立つ電解クロム酸処理で生成するクロム水和酸化物量にもよるが、シリコンとして 2〜6mg/m2の範囲が、加工後の耐レトルト性および経済性の点から好ましく、3〜5mg/m2 の範囲がより好ましい。上記のようにしてシラン処理を施した後、乾燥して本発明の表面処理鋼板とする。
【0013】
このようにして金属クロム皮膜、クロム水和酸化物皮膜、およびシラン処理皮膜からなる表面処理皮膜を形成させた本発明の表面処理鋼板においては、表面処理皮膜の表層にシリコンが原子分率で50〜100%含有していることが好ましい。ここでいう原子分率とは、ESCAを用い、本発明の表面処理鋼板を測定した際の、クロムおよびシリコンのピーク面積の和に対するシリコンのピーク面積を百分率で表したものである。また、表層とは表面処理皮膜の最表面からESCAの検出深さで数十オングストロームまでの深さの層を表す。前述したようにシリコンとして 2〜6mg/m2のシラン処理皮膜を形成させ、かつ表面処理皮膜の表層にシリコンが原子分率で50〜100%含有することにより、本発明の目的とする優れた皮膜の加工密着性と加工後の耐レトルト性が得られる。表面処理皮膜の表層のシリコンが原子分率で50%未満である場合は、加工密着性と加工後の耐レトルト性が不十分となり、好ましくない。シラン処理皮膜がクロム水和酸化物皮膜を完全に被覆する場合は表層のシリコンは原子分率で100%となるので、これを上限とする。
【0014】
本発明において、上記の表面処理を施した鋼板に熱可塑性樹脂を被覆する場合、被覆される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂の1種、2種以上の共重合樹脂、または2種以上をブレンドした複合樹脂があげられる。これらの熱可塑性樹脂は、耐熱性、耐食性、加工性、接着性など、それぞれ異なる特性を有しているが、目的とする用途に応じて選択されるべきである。例えば、絞り加工後ストレッチ加工を施し、さらにしごき加工が施されるような特に厳しい成形加工される缶の用途には、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート単位を主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレート単位を主体としたポリエステル、およびこれらをブレンドした複合樹脂からなるフィルムを被覆することが好ましく、これらの樹脂の二軸配向したフィルムを用いることがより好ましい。さらに、耐衝撃加工性が要求される場合は、上記のポリエステルにビスフェノールAポリカーボネートをブレンドした複合樹脂からなるフィルム、または上記の複合樹脂を上層とし、上記のポリエステルを下層とした二層のフィルム、さらにまたは上記のポリエステルを上層、および下層とし、上記のビスフェノールAポリカーボネートを中間層とした三層のフィルムを用いることが好ましい。
【0015】
上記の熱可塑性樹脂層の厚さは、要求される特性に基づいて選択されるべきであるが、一般に5〜50μmの範囲が好ましく、10〜25μmの範囲がより好ましい。厚さが5μm未満の場合、表面処理を施した鋼板への被覆作業が著しく困難になるとともに、被覆後、または成形加工後にピンホールが発生しやすく、十分な耐食性が得られない。一方50μmを越えると塗料を塗装した皮膜と比較し、コスト面で有利でなくなる。
【0016】
上記の熱可塑性樹脂には必要に応じて、安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、滑剤、腐食防止剤などの添加剤を添加しても差し支えない。
【0017】
上記の熱可塑性樹脂の鋼板への密着性、特に上記の厳しい加工を施した後の密着性が十分ではない場合、または熱可塑性樹脂層単独では十分な耐食性が確保できない場合は、熱硬化性樹脂からなる接着剤、例えばエポキシ−フェノール系接着剤を鋼板に塗布した後に熱可塑性樹脂を被覆するか、または被覆する熱可塑性樹脂の鋼板との接着面に予め前記接着剤を塗布しておき、鋼板に被覆してもよい
。
【0018】
上記の熱可塑性樹脂は、樹脂を加熱溶融して直接鋼板上に押し出して積層する押出法、または熱可塑性樹脂の二軸配向フィルムを樹脂の融点以上の温度に加熱した鋼板に当接し、一対のロールで両者を挟み付けて積層するフィルムラミネート法のいずれの方法を用いても被覆することが可能である。
【0019】
以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例)
板厚 0.18mmの冷延鋼板の両面に、実施例として定法を用いてアルカリ脱脂処理し水洗し、ついで酸洗処理し水洗した。その後表1〜3に示す条件で電解クロム酸処理を施し水洗した後、1対の絞りロールを用いて鋼板に付着した洗浄水を絞り除去した。次いで直ちに熱風乾燥機を用いて80℃の熱風を鋼板に吹き付け、鋼板表面を乾燥した。その後直ちにシラン処理を施した。また比較例として、電解クロム酸処理を施し水洗した後、1対の絞りロールを用いて鋼板に付着した洗浄水を絞り除去し、鋼板表面に薄い水膜が残存した状態で直ちにシラン処理を施した試料も作成した。次いで上記の様にして得られた表面処理鋼板の表面処理皮膜量を、蛍光X線法を用いて測定した。表面処理皮膜の表層のシリコン原子分率を、ESCAにより、励起X線源としてMg−Kα線を使用し、加速電圧15eV、真空度1.0×10-8〜10-9Torr の測定条件で測定した。測定結果を表1〜3に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
またこれらの表面処理が施された鋼板を240℃に加熱し、その両面にポリエチレンテレフタレート88モル%、ポリエチレンイソフタレート12モル%からなる共重合ポリエステルを二軸延伸し熱固定して得られたフィルム(後述する缶に成形した後、缶内面となる面:厚さ25μm、缶外面となる面:厚さ15μm)を同時に当接し、一対のロールでフィルムと鋼板を挟み付けて積層し、直ちに水中に浸漬し急冷し、次いで乾燥した。
【0024】
上記のようにして得られたポリエステルフィルム被覆鋼板の両面にパラフィン系ワックスを約50mg/m2 塗布し、以下に示す成形加工を施した。まず直径160mmのブランクに打ち抜いた後、絞り加工により缶径が100mmの絞り缶に成形した。次いで再絞り加工により缶径が80mmの再絞り缶に成形した。この再絞り缶を、ストレッチ加工としごき加工を同時に行う複合加工により、缶径が66mmの絞りしごき缶に成形した。この複合加工は、下記に示す条件で実施した。
缶の上端部となる再絞り加工部としごき加工部の間隔:20mm
再絞りダイスの肩アール:板厚の1.5倍
再絞りダイスとポンチのクリアランス:板厚の1.0倍
しごき加工部のクリアランス:元板厚の50%
次いで定法により、缶上端をトリミングし、ネックイン加工、フランジ加工を施し、内容物を充填した後蓋を卷き締め得る状態のポリエステルフィルム被覆絞りしごき缶とした。
【0025】
上記のようにして得られたポリエステルフィルム被覆絞りしごき缶のネックイン加工部およびフランジ加工部のフィルム剥離の有無を肉眼観察し、以下に示す基準で判定し、加工密着性を評価した。
○:剥離無し
×:剥離有り
評価結果を表4に示す。
【0026】
さらに、ポリエステルフィルム被覆絞りしごき缶のネックイン加工部の内外面に、缶の周方向にカッターを用いて鋼板に達する疵を入れ、フィルムカット部を設けた後、130℃の高温水蒸気中で30分間レトルト処理した。レトルト後の缶を肉眼観察し、フィルムカット部を基点として生じたフィルム剥離部の周方向における長さを以下に示す基準で判定し、成形加工後の耐レトルト性を評価した。
◎:剥離長さ 0mm
○:剥離長さ 0mmを越え、2mm未満
△:剥離長さ 2mmを越え、5mm未満
×:剥離長さ 5mm以上
評価結果を表4に示す。
【0027】
【表4】
【0028】
試料番号2、4、6、8、10、12、(実施例)は本発明の表面処理を施した鋼板にポリエステフィルムを被覆したフィルム被覆鋼板を絞りしごき缶に成形加工したものであり、いずれも優れた加工密着性、および優れた加工後の耐レトルト性を示す。一方、試料番号1(比較例)は金属クロムの付着量が好適範囲より少なく、成形加工後の皮膜の密着性に乏しい。また試料番号14および18(比較例)はシラン処理皮膜量が多く、クロム水和酸化物皮膜量も多い場合であり、耐レトルト性に乏しい。試料番号15および16(比較例)はシラン処理皮膜の量が好適範囲より少ない例であり、耐レトルト性に乏しい。試料番号3、5、7、9、11、13、17(比較例)は電解クロム酸処理を施し水洗した後、鋼板表面に水膜が残存した状態でシラン処理を施した場合であり、成形加工後の皮膜の密着性は優れているが、十分な耐レトルト性を得るためには乾燥状態でシラン処理を施した場合よりも多くのシラン処理皮膜量が必要であり、同程度のシラン処理皮膜量では乾燥状態でシラン処理を施した場合よりも耐レトルト性に劣る。試料番号19(比較例)は通常のTFSであり、成形加工後の皮膜の密着性は優れているが、耐レトルト性に乏しい。
【0029】
【発明の効果】
本発明の表面処理を施した鋼板は皮膜の加工密着性に優れている。本発明の表面処理を施した鋼板に熱可塑性樹脂を被覆した熱可塑性樹脂被覆鋼板は、絞り加工後ストレッチ加工を施し、さらにしごき加工が施されるような特に厳しい成形加工される缶に成形した後も皮膜の剥離が生じず、優れた加工密着性を示す。さらに、成形加工した缶に内容物を充填し高温の水蒸気中で加熱殺菌処理を施した後も皮膜の剥離が生じず、優れた耐レトルト性を示す。
Claims (7)
- 鋼板をアルカリ脱脂し水洗し、次いで酸洗し水洗した後、電解クロム酸処理を施し水洗し、さらにシランカップリング剤を用いてシラン処理を施す一連の工程からなる鋼板の表面処理方法において、
前記電解クロム酸処理を施し水洗した後鋼板を乾燥し、
その後、水とエタノールの混合比率が水:エタノール=1:4〜4:1とした混合液中に、前記混合液に対して0.5〜20%濃度のシランカップリング剤を加えたシラン処理液中に浸漬してシラン処理皮膜を生成させることを特徴とする、鋼板の表面処理方法。 - 前記シラン処理において、生成するシラン処理皮膜中に2〜6mg/m2のシリコンが生成するように処理することを特徴とする、請求項1に記載の鋼板の表面処理方法。
- 前記電解クロム酸処理において、下層となる金属クロム皮膜を30〜300mg/m2、 上層となるクロム水和酸化物皮膜を、クロムとして0〜20mg/m2 形成させることを特徴とする、請求項1または2に記載の鋼板の表面処理方法。
- 前記上層となるクロム水和酸化物皮膜を、クロムとして0〜10mg/m2 形成させることを特徴とする、請求項3に記載の鋼板の表面処理方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板の表面処理方法を用いて、鋼板の少なくとも片面に、金属クロム皮膜、その上層にクロム水和酸化物皮膜層、さらにその上層にシラン処理皮膜を形成させてなる表面処理鋼板。
- 前記電解クロム酸処理および前記シラン処理により生成する表面処理皮膜の表層に、シリコンが原子分率で50〜100%含有していることを特徴とする、請求項5に記載の表面処理鋼板。
- 請求項6に記載の表面処理鋼板の少なくとも片面に、熱可塑性樹脂皮膜を被覆してなる熱可塑性樹脂被覆鋼板。
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1998
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