JP3672238B2 - 磁歪材料の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁歪特性の高い磁歪材料の製造方法に関する、さらに詳細には、原料を粉体にして焼結する粉末冶金法で、焼結密度の高い磁歪材料を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強磁性体を磁化したときに、磁性体の寸法が変化する現象を磁歪といい、このような現象を生ずる材料を磁歪材料という。磁歪による飽和変化量である飽和磁歪定数は、一般には10−5〜10−6(ppm)の値を有し、大きな飽和磁歪定数を有する磁歪材料は、発振器、フィルター、センサ等に広く利用されている。
現在、磁歪材料としては、さらに、飽和磁歪定数の大きい材料が求められており、鉄(Fe、以下元素記号で記す。)系アモルファス強磁性合金、R(希土類)とFeの化合物などが提案されている。特に、RとFeの化合物として、例えば、(1)FeとR(Tb、Sm、Dy、Ho、Er、Tm)との合金(米国特許第3,949,351号、米国特許第4,152,178号、米国特許第4,308,474号、米国特許第4,375,372号)、(2)Fe、MnとTb、Smとの合金(米国特許第4,378,258号)、(3)Tb、Dy、Ho、Fe、Ti等の金属からなる材料を使用する電磁歪変換素子等が挙げられる。これらは、いずれもRFeラーベス型金属間化合物を形成するが、外部磁界が大きいときには磁歪量が大きいが、外部磁界が小さいときには磁歪量が十分ではない。
【0003】
そこで、RFeラーベス型金属間化合物は、[111]軸が磁化容易軸であり、[111]軸方向の磁歪量が最も大きいことを利用して、結晶粒の方向をそろえる製造方法が提案されている。例えば、(1)RFeラーベス型金属間化合物を粉体にし、焼結前に磁場を印加して粒子を揃える磁歪材料が米国特許第4,152,178号に開示されている。同様に、Dy、TbとFeの合金であって、FeTb、FeDyの粒子を磁場中プレスにより圧縮成形体を作製し、焼結する合金が特開平1−180943号公報に開示されている。また、(2)RFeの粉末とRとFeの共晶組成でガスアトマイズ法又は回転電極法で調整した粉末とを混合して、さらに、微粉砕し、磁場プレス後に焼結する磁歪焼結体の製造方法が特開平6−256912号公報に提案されている。さらに、(3)磁場中での成形で高い配向を得るため、Tb、
Dy、T(鉄族金属)からなる原料A、Dy、Tb、Tからなる原料B、Tからなる原料Cの合金粉を作製し、これら3種混合し焼結する磁歪材の製造方法が特開平7−286249号公報に提案されている。さらに、(4)従来の技術として、焼結体で高い密度を得るために、ジェットミルにより微細な紛にして焼結する方法が知られている。
【0004】
しかし、ジェットミル等により微細な粉にする従来の技術、特開平1−180943号公報に提案されている単にAr雰囲気中で粉砕する製造方法では、
粉体の酸化物が多くなり、磁歪特性が低いという問題点がある。
また、特開平6−256912号公報に提案されているAr雰囲気中でのガスアトマイズ法により粉体を作製して、酸素濃度を低くし、焼結密度を高くしても、開示されているように液相焼結しては開気孔が生ずるために使用していると次第に磁歪特性が低下するという問題点がある。さらに、高磁歪特性とするには、焼結密度が必ずしも十分でないという問題点がある。
また、特開平7−286249号公報に提案されている磁歪材の製造方法では、必ずしも焼結密度が十分ではないという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、磁歪特性を向上させるため結晶方位を揃え、かつ、低い成形圧力でも緻密で焼結密度の高い磁歪材料の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、 式1:(Tb(x)Dy(1−x))T(y)(ここで、Tは、Fe、Ni、Coの群から選択される少なくとも1種類の金属をいう、以下同じ。x、yは、0.35<x≦0.50、1.70≦y≦2.00の範囲にある。)で表される原料Aと、 式2:Dy(t)T(1−t)(ここで、Dyは、TbとHoの双方又はいずれか一方を含むことがある。tは、0.37≦t≦1.00の範囲にある。)で表され、7000ppm≦水素量≦22000ppmの範囲にある水素を含む原料Bと、 Tを含有する原料Cと を混合し、焼結して、 式3:(Tb(v)Dy(1−v))T(w)(ここで、v、wは、0.27≦v<0.50、1.70≦w≦2.00の範囲にある。)で表される磁歪材料を製造する 磁歪材料の製造方法とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である磁歪材料の製造方法を示す図である。
【0008】
本発明の磁歪材料の製造方法は、式1:(Tb(x)Dy(1−x))T(y)で表される原料Aを用いる。
ここで、原料AのTは、Fe、Co、Niの群から選択される少なくとも1種類の金属で、特に、TはFe単独でも良い。Feは、Tb、Dyと磁歪特性の高い(Tb、Dy)Fe金属間化合物を形成するからである。このときに、Feの一部をCo、Niで置換するものであってもよいが、Coは磁気異方性を大きくするが透磁率を低くし、また、Niはキュリー温度を下げ、結果として常温・高磁場での磁歪値を低下させるために、Feは70at%以上、一層好ましくは80wt%以上が良い。その他に、Tb、Dy、Hoの希土類金属と合金を形成する遷移金属を含んでいても良い。遷移金属としては、具体的にはMn、Cr、Mo、Wを挙げることができる。
原料AのTbの一部は、Dy、Hoを除く希土類(R‘)と置換しても良い。R’として、例えば、Nd、Pr、Gd、Y等を挙げることができる。
【0009】
x、yは、0.35<x≦0.50、1.70≦y≦2.00の範囲にある。xが小さいと最終の磁歪材料となったときに、原料Aが少ないことで、[111]軸方向の配向が困難になり、xが、0.5を越えると、最終の磁歪材料全体に対する原料Aの比率が低下するために焼結後の[111]軸方向の配向度が低くなる。
yが1.70未満では、原料Cの混合比率を高くしなければならず、磁歪材料全体に占める原料Aの比率が小さくなり、焼結後の[111]軸方向の配向度が低くなってしまう。yが大きいと(Tb、Dy)T等のFeリッチの相が多くなり、このため、磁場中成形による配向度が低くなり、それにつれて焼結後の磁歪材料の配向度も低くなる。
【0010】
また、本発明の磁歪材料の製造方法は、式2:Dy(t)T(1−t)で表され原料Bを用いる。
原料BのTは、Fe、Co、Niの群から選択される少なくとも1種類の金属で、特に、TはFe単独でも良い。このときに、Feの一部をCo、Niで置換するものであってもよく、これにより原料Bは粉砕されやすくなり、焼結による焼結密度を高くすることができる。
原料BのDyは、単独でも良いが、一部がHoと置換されていても良い。
tは、0.37≦t≦1.00の範囲にある。DyとTは共晶点を有するので、tがこの範囲を以外の組成では、原料Aと原料Cとの混合において、共晶組成であるRTが少なくなり、焼結密度を高くすることが難しくなる。
【0011】
また、原料Bは、7000ppm≦水素量≦22000ppmの水素を含んでいる。原料Bに水素を吸蔵させることにより、水素化物を形成するか又は水素原子が結晶内に侵入するかは別にして、歪みが生ずるために内部応力に耐えられなくなり、図2に示すように、原料Bの粒子は割れが生ずる。図2は、水素を吸蔵し、割れが入った粉体状の原料Bの写真である。このために、原料Aと原料Cと混合し、成形体を形成する時に圧力を懸けるため、割れの先端に応力が集中して、さらに割れるために、混合した状態の内部で粉砕されて細かくなり、原料Aの間に入り込むことで、焼結したときに緻密で密度の高い焼結体を形成する。さらに、密度を高くすることで気孔の少ない磁歪材料を製造することができる。
【0012】
原料Bは、水素ガス雰囲気中で水素を吸蔵する処理が行われるが、水素を吸蔵することで、酸化されにくくなる。Tb、Dy、Ho等の希土類は酸化されやすいために、わずかな酸素があっても表面に融点の高い酸化膜が形成されるために焼結の進行を抑制する。そのために、密度が低く、さらに開気孔も多くなる。この開気孔が多くなると、長期間使用している間に、さらにTb等の希土類金属の乾食が進行して酸化が進み、それに伴い磁歪特性が低下する。したがって、原料Bに水素吸蔵処理をして焼結体を製造することで焼結密度を高くし、かつ、磁歪特性の経時的な劣化を抑えることができる。
原料Bに、吸蔵させる水素の量としては、7000ppm≦水素量≦22000ppmの範囲がよい。水素の量が7000ppm未満では、水素の量が少なくて原料Bの内部歪みが小さく、成形時の割れが少なく、密度が低く、さらに開気孔も多くなる。さらに、長期間の使用により磁歪特性が低下する。水素量が22000ppmを越えると、原料Bの微細化が飽和し、これ以上吸蔵する効果がない。
【0013】
また、本発明の磁歪材料の製造方法は、Tを含む原料Cを用いる。Tは、上述したように、Fe、Co、Niの群から選択させる少なくとも1種類の金属である。その他に、Tb、Dy、Hoの希土類金属と合金を形成する遷移金属を含んでいても良い。遷移金属としては、具体的にはMn、Cr、Mo、Wを挙げることができる。
【0014】
また、本発明の磁歪材料の製造方法は、前記原料Aと原料Bと原料Cとを混合し、焼結して、式3:(Tb(v)Dy(1−v))T(w)で表される磁歪材料を製造するものである。ここで、v、wは、0.27≦v<0.50、1.70≦w≦2.00の範囲にある。
vが0.27未満では、常温より低い温度域で十分な磁歪量を示さず、vが0.50以上では常温域で十分な磁歪量を示さない。wが1.70未満では希土類リッチな相が多くなり、wが2.00を越えると、(Tb、Dy)T相等の異相が生じ磁歪量が低下する。
【0015】
前記原料Aと原料Bと原料Cとの混合の割合は、式3で表される磁歪材料になるように適宜決定することができる。
磁歪材料に対して、原料Aは50wt%以上で100wt%未満、一層好ましくは60wt%以上で95wt%以下が良い。原料Aが少ないと、磁場中成形で配向するものが少なく、焼結した磁歪材料の配向度が低くくなる。原料Aが多いと、水素を含有した原料Bが少なくなるために、焼結密度が高くならず、又、開気孔も多くなるために長期間の使用により乾食が進み、飽和磁歪量が低下する。
磁歪材料に対して、原料Bは40wt%以下で、一層好ましくは5wt%以上で30wt%以下が良い。原料Bが少ないと、焼結が進みにくく、緻密で密度の高い焼結体を得ることができない。原料Bが多いと、原料Aが少なくなるため飽和磁歪定数が低下する。
また、原料Cは、磁歪材料としたときのTの範囲になるように、原料A、Bの割合を考慮して、添加量を決定する。
【0016】
これらの原料A、B、Cは、図1に示すように、秤量してから混合し、粉砕処理される。各原料の平均粒径は、1〜100μm、一層好ましくは5〜20μmが良い。平均粒径が小さいと製造中に酸化する。平均粒径が大きいと焼結が進みにくく、焼結密度が高くならず、開気孔が多くなる。粉砕処理では、湿式ボールミル、アトライタ、アトマイザー等の粉砕機から適宜選択することができる。特に、アトマイザーが好ましい。衝撃と剪断を同時にかけることができ、粉体の凝集を防ぎ、かつ生産性が高いからである。
混合したものは、焼結前に所望の形状に成形するが、この成形時は磁場中で行うことで、原料A等を一定方向に揃えて、焼結後の磁歪材料を[111]方向に配向させる。印加する磁場は、2.4×10A/m以上、好ましくは4.8×10A/m以上が良い。磁場の方向は、圧力の方向に垂直でも、平行でも良い。成形圧力は、4.9×10Pa以上で、好ましくは2.9×10Pa以上が良い。
また、成形体の焼結条件は、適宜行うことができるが、1100℃以上で、好ましくは1150〜1250℃で、1〜10時間行うことがよい。焼結の雰囲気は、非酸化性雰囲気が良く、Ar、窒素ガス等の不活性ガス、又は真空中がよい。
【0017】
このようにして製造された磁歪材料は、多結晶体であり、磁歪が最も大きくなる[111]方向に配向している。この磁歪材料の結晶粒の平均粒径は、10μm以上である。結晶粒の平均粒径が小さいと結晶粒界が多くなり外部磁場による磁化率が低くなる。結晶粒の平均粒径の上限は特にないが、200μm以上になると磁歪量はほとんど飽和するためにこれ以上大きくする必要がなく、また、焼結等の時間がかかりすぎ実用的ではない。
【0018】
(第1の実施形態)
原料Aとして、Tb、Dy、Feを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融して、合金を作製した。この合金を、アニールする熱処理を行い、合金作製時の各金属元素の濃度分布を一様にし、また、析出した異相を消滅させる。次に、図1に示すように、この原料Aを粉砕する。ここでは、原料Aとして、Tb0.4Dy0.6Fe1.93の組成にする。
原料Bとして、Dy、Fe、Coを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融して、合金を作製した。この合金を、粉砕して原料Bとする。ここでは、原料Bとして、Dy2.0Fe0.5Co0.5の組成にする。次に、この粉砕した原料Bを、水素ガス雰囲気中又は水素・Arガスの混合ガス雰囲気中に保持して、原料Bの結晶格子中に水素原子を侵入させ、又は水素化物にする。図2で示すように、水素吸蔵処理をすることで原料Bには、多数の割れが発生する。図3は、原料B合金の温度、雰囲気に関する水素吸蔵処理条件の一例を示す図である。初めに、水素ガス雰囲気中で一定温度で保持して、水素を吸蔵又は水素化物にし、次に、水素雰囲気中で温度を変え、雰囲気をArガス雰囲気に換えて一定温度で保持し、粉体中の水素の均質化を図る。この水素吸蔵処理の温度を150℃とし、Arで置換するAr置換温度による水素量、酸素量を表1に示す。ここで、水素量は、水素量測定装置(HORIBA社製:ZWGA−G21)で、酸素量は、酸素量測定装置(HORIBA社製:ZWGA−650A)で測定した。
【0019】
【表1】
<表1:水素吸蔵処理条件による原料Bの水素量と酸素量>
Figure 0003672238
表1から明らかなように、水素吸蔵処理無しでは、ほとんど水素を含んでいないが、水素吸蔵処理をすることでDy2.0Fe0.5Co0.5組成の原料Bは、多くの水素を吸蔵し、または水素化物になっていることがわかる。また、Ar置換温度が高くなるつれて、水素吸蔵量が低下している。水素量は、上述したように、7000≦水素量≦22000ppmの範囲が好ましいために、Ar置換温度は、常温〜750℃の範囲で行うことが好ましい。
原料Cとして、水素ガス雰囲気中で酸素を除去する還元処理を行ったFeを用いた。
【0020】
ここで、水素吸蔵処理条件の異なる原料Bによる、原料A、B、Cの混合・粉砕後の材料の平均粒径、水素量、酸素量を示す。粉砕は、ここでは、アトマイザー(東京アトマイザー製造(株)社製)を用いた。平均粒径は、サブシーブサイザー測定装置(フィッシャー社製)で測定した。
【表2】
<表2:原料Bの水素吸蔵処理条件と原料A、B、Cの混合後の材料の平均粒径、水素量、酸素量>
Figure 0003672238
表2からもわかるように、水素吸蔵処理をしない材料では、水素吸蔵処理をした材料に比べて、平均粒径が非常に大きいことがわかる。したがって、水素吸蔵処理により、原料Bが更に、原料A等の3者の粉砕・混合中に微細化していることがわかる。また、水素吸蔵処理された中では、Arガス保持温度が低い方が、材料中に含まれる水素量が多く、また、平均粒径が小さいことがわかる。
したがって、Arガスで均質化しても、水素吸蔵処理をすることで原料Bは微細化されている状態であることがわかる。
次に、原料A、B、Cを、混合した後、粉砕機で粉砕・混合する。その後、これらの混合物を磁場中で成形した。この成形体をAr雰囲気中で焼結して、磁歪材料を製造した。図4は、ここで行った焼結の熱処理条件の一例を示す図である。
【0021】
また、水素吸蔵処理をしなかった磁歪材料、水素吸蔵処理しAr置換温度が400℃の磁歪材料、Ar置換温度が500℃の磁歪材料、Ar置換温度が600℃の磁歪材料の特性を表3に示す。ここでは、同時に成形時の圧力による影響も同時に評価した。磁歪量の測定は、12×12×16mmの角柱の形状にした焼結体を用いて、成形時の印加磁場と平行な方向にストレインゲージで測定した。
【表3】
<表3:製造条件による磁歪材料の特性>
Figure 0003672238
表3からも明らかなように、焼結密度に関して、圧力の如何に関わらず、水素吸蔵処理をしなかった焼結密度が最も低い。また、水素吸蔵処理を行った場合では、Ar置換温度が低い方が密度が高くなっている。特に、Ar置換温度が400℃では、成形圧力が低い方が、焼結密度が高くなっている。
【0022】
また、磁歪特性に関しては、いずれの水素吸蔵処理に係わらず、成形圧力が大きくなるにつれて、磁歪量が大きくなっている。さらに、水素吸蔵処理をしなかった場合でも、磁歪量は、ほぼ同等の大きさになっている。
以上のことから、水素吸蔵処理した原料Bを用いて磁歪材料を製造することで、焼結密度の高い磁歪材料を得ることができる。特に、水素吸蔵条件が異なっても、成形圧力が小さくとも、焼結密度の高い磁歪材料を得ることができることがわかった。
【0023】
また、図5は、焼結体内部を顕微鏡で観察した写真である。図5(a)は、水素吸蔵処理をしなかった時の焼結体内部の写真であり、図5(b)は、水素吸蔵処理を行い、Ar置換温度が400℃で、成形圧力が9.8、29.4、58.8、88.3、117.7×10Paの成形体を焼結して得た焼結体内部の写真である。焼結体を、切断した後に、ラッピングしてから金属顕微鏡で観察した。
図5(a)では、成形圧力が大きくなるつれて、黒く見える気孔が次第に小さく、少なくなっているのがわかる。図5(b)の方は、図5(a)より、成形圧力に関わりなく、気孔が少なく、かつ小さい。これにより、水素吸蔵処理をした焼結体の方が、密度の違いを反映し、気孔の少ないことがわかる。
【0024】
図6は、開気孔率と閉気孔率の関係を示すグラフである。気孔には、内部にある気孔が外部表面に表れて開いた状態になっており、空気等が内部に侵入することができる開気孔と、内部にある気孔が外部表面に表れることなく焼結体内部で閉じた状態になっている閉気孔とがある。空気が内部に侵入すると焼結体表面の酸化が進行し、磁歪特性等が次第に低下する。図6に示すように、閉気孔率は開気孔率の低下にともなって、同時に低下する。さらに、図6には示されていないが、左に進むにしたがって、密度が大きくなっている。従って、焼結密度を大きくすることで、気孔を減らし、さらに、開気孔率を少なくすることができる。なお、開気孔率、閉気孔率は、アルキメデスの方法に準じて測定した。
【0025】
(第2の実施形態)
原料Bとして、Dy(t=1.0)、DyFe(t=0.67)を用いて、図2に示すように、水素吸蔵処理を行った。
図7は、Dyの水素吸蔵条件による状態の変化を示すX線回折のチャートである。水素吸蔵温度が100℃では、結晶の格子定数が大きくなっていることがわかる。水素吸蔵温度が200℃以上では、水素化物(DyH)が表れ、水素吸蔵温度が500℃以上では、完全に水素化物になっていることがわかる。
図8は、DyFeの水素吸蔵条件による状態の変化を示すX線回折のチャートである。水素吸蔵温度が100℃、200℃では、結晶の格子定数が大きくなっているのがわかる。水素吸蔵温度が200℃以上では、水素化物(DyH)が表れ、それに伴いFe単独のピークが表れる。これは、RFeラーベス型金属間化合物からFeがはじき出され、分離していることを示している。
本発明では、原料Bが水素を吸蔵することで、内部歪みを生じさせ、それにより割れを発生させて、原料Bを微細化させることにある。したがって、原料Bを、侵入型として水素を吸蔵するか、水素化物になって水素を吸蔵するかは問題ではない。また、これらが混在していても良い。
【0026】
また、図9は、DyFeの原料Bの水素吸蔵処理条件によるBET値を測定したグラフである。BET値は、表面積測定装置(ユアサアイオニックス社製:マルチソープ12)でNガスを用いて測定した。水素吸蔵温度が高くなるにつれて、Ar置換処理の有無に係わらず、BET値が低下している。水素吸蔵温度が低いほど、水素量が多く、それに伴い原料Bに割れが多く発生し、微細化していることを示している。特に、同じ原料Bを用いても、水素吸蔵処理しないと、BET値が非常に低い値になっていることからも明らかである。また、Ar置換処理については、その有無によりBET値に大きな差がないことから、Ar置換処理するかはいずれであっても良い。
【0027】
次に、原料Bとして、Dy(t=1)、DyFe(t=0.67)、DyFe(t=0.5)、DyFe1.73(t=0.37)を用いて、150℃で水素を吸蔵させ、400℃でAr置換させた。この原料Bを用いて、磁歪材料を製造した。このときの、焼結密度、磁歪値、インダクタンス特性を評価した。その結果を、表4に示す。
インダクタンス特性は、直径3.5×30mmの円柱を用いて、LCRメータ(ヒューレット・パッカード社製:商品名4274A)で測定した。
【表4】
<表4:製造条件による磁歪材料の密度、磁歪特性、インダクタンス特性の特性>
Figure 0003672238
表4からも明らかなように、式2:Dy(t)T(1−t)で表され、ここで、tは、0.37≦t≦1.00の範囲にある原料Bを用いることで、磁歪量は、水素吸蔵処理の有無では大きな差はないが、水素吸蔵処理をする原料Bを用いることで、焼結密度が高く、かつ、インダクタンス特性の優れた磁歪材料を得ることができる。
【0028】
また、ここで、DyFe組成の原料Bを用いて、成形時の印加磁場の影響を測定した。横磁場とは、成形圧力の方向に平行に印加する磁場である。
<表5:DyFe組成の原料Bを用いる磁歪材料に対する成形時の印加磁場の影響>
Figure 0003672238
表5からも明らかなように、磁場の有無によって焼結密度は変わらないが、磁歪量及びインダクタンスは、両方とも磁場を印加して、成形した磁歪材料の方が大きい値を示している。
【0029】
(第3の実施形態)
次に、原料BのTとして、Fe、Co以外のNiを用いた。原料Bの組成は、DyNiで、150℃で水素を吸蔵させ、400℃でAr置換を行った。このときの、水素量、酸素量を表5に示す。
【表6】
<表6:DyNi組成の原料Bの水素吸蔵処理後の水素量と酸素量>
Figure 0003672238
表6から明らかなように、DyNi組成の原料Bは、16500ppmの水を吸蔵しており、本発明の磁歪材料の製造方法に用いる原料Bに適していることがわかる。
【0030】
DyNi組成の原料Bを用いて、磁歪材料を製造し、焼結密度、磁歪特性を評価した。その結果を表6に示す。
【表7】
<表7:DyNi組成の原料Bによる磁歪材料の焼結密度、磁歪特性>
Figure 0003672238
表7から明らかなように、水素吸蔵処理の有無により、磁歪量は大きくは変わらないが、焼結密度が高くなっていることがわかる。従って、Fe以外のNiを用いて、本発明の磁歪材料の製造方法で、焼結密度の高い磁歪材料を製造することができる。
【0031】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。
ここでは、本発明の製造方法を具体的に説明すると共に、製造した磁歪材料の焼結体としての特性、及び磁歪特性を評価する。
【表8】
<表8:実施例1及び2の組成>
Figure 0003672238
【0032】
原料Aとして、Tb、Dy、Feを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融して、Tb0.4Dy0.6Fe1.93の合金を作製した。この合金を、アニールする熱処理を行い、この原料Aを粉砕する。まず、ジョークラッシャーで粗粉砕し、次に、ブラウンミルで平均粒径100〜1500μmになるまで微粉砕した。原料Bとして、Dy、Fe、Coを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融して、Dy2.0Fe0.5Co0.5、DyFe合金を作製した。この合金を、ジョークラッシャーで平均粒径2〜10mmになるまで粉砕した。次に、この粉砕した粒子を、水素ガス雰囲気中又は水素・Arガスの混合ガス雰囲気中に保持して、水素吸蔵処理を行う。実施例1及び2では、水素ガス雰囲気中で150℃で保持して、水素を吸蔵させ、次に、水素雰囲気中で温度を上げて400℃にし、雰囲気をArガス雰囲気に換えて400℃で保持する。比較例1は、水素吸蔵処理を行わなかった。原料Cとして、平均粒径約5μmの還元鉄を用いるが、水素ガス雰囲気中に約200℃で、約30分時間保持して、酸素を除去する還元処理を行った。
【0032】
次に、原料A、B、Cを、表7に示す磁歪材料の組成になるように秤量する。これらを混合した後、粉砕機で粉砕・混合する。ここでは、粉砕機として、アトマイザー(東京アトマイザー製造(株)社製)を用い、平均粒径約15μmになるように粉砕した。
その後、これらの混合物を、80×10(A/m)の平行方向の磁場中で、59×10Paの圧力で成形した。次に、成形体をAr雰囲気中で焼結して、磁歪材料を製造した。焼結の熱処理条件は、5℃/min.の昇温速度で、940℃まで上げて1時間保持して、成形体を一様の温度にしてから、1235℃まで昇温して、3時間保持して焼結を完了させて、磁歪材料を得た。
【0033】
次に、実施例1及び2と比較例1の、焼結密度、開気孔率、閉気孔率、磁歪量とインダクタンスの劣化率を測定した。劣化率は、一定の温度・湿度の恒温槽に放置後の磁歪量等を測定して、劣化していない磁歪量等を0として評価した。
【表9】
<表9:実施例1及び2と比較例1の、焼結密度、開気孔率、閉気孔率、磁歪量とインダクタンスの劣化率>
Figure 0003672238
実施例1及び2、比較例1を比較すると、実施例1及び2が、開気孔率が0.4%以下と非常に小さい値を示しいるのに対して、水素吸蔵処理を行っていない比較例1は、1.3%と大きな値を示している。
閉気孔率も、同様に、実施例1及び2は、8.5%以下であるのに対して、比較例1は、14%と大きな値を示している。
これにともない、200℃で1000時間放置後の磁歪量の劣化率は、実施例1及び2では、20%以下であるが、比較例1では、31%であり、1.5倍以上劣化していることがわかる。
また、200℃で1000時間放置後のインダクタンスの劣化率は、実施例1及び2では、4.7%以下で、特に実施例2では、ほとんど劣化していない。しかし、比較例1では、10.5%であり、実施例1と比較しても2倍以上劣化して、劣化が非常に速いことがわかる。
【0033】
また、図10は、一定温度に1000時間放置後の磁歪量の劣化率を示すグラフである。図11は、一定温度に1000時間放置後のインダクタンスの劣化率を示すグラフである。これらのグラフからも、実施例1及び2は、比較例1に比べて、劣化率の低下が小さく、劣化が非常に遅いことがわかる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁歪材料の製造方法では、原料に水素吸蔵処理をさせることで、混合・成形時に割れやすくし、焼結して磁歪材料とする。このようにして製造した磁歪材料は、焼結密度が高く、インダクタンスが大きく、さらに、高温大気中で使用した場合の磁歪特性である磁歪値、インデクタンスの劣化を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である磁歪材料の製造方法を示す図である。
【図2】水素を吸蔵し、割れが入った粉体状の原料Bの写真である。
【図3】原料B合金の温度、雰囲気に関する水素吸蔵処理条件の一例を示す図である。
【図4】焼結の熱処理条件の一例を示す図である。
【図5】焼結体内部を顕微鏡で観察した写真である。図5(a)は、水素吸蔵処理をしなかった時の焼結体内部の写真であり、図5(b)は、水素吸蔵処理を行い、Ar置換温度が400℃の時の焼結体内部の写真である。
【図6】開気孔率と閉気孔率の関係を示すグラフである。
【図7】Dyの水素吸蔵条件による状態の変化を示すX線回折のチャートである。
【図8】DyFeの水素吸蔵条件による状態の変化を示すX線回折のチャートである。
【図9】DyFeの原料Bの水素吸蔵処理条件によるBET値を測定したグラフである。
【図10】一定温度に1000時間放置後の磁歪量の劣化率を示すグラフである。
【図11】一定温度に1000時間放置後のインダクタンスの劣化率を示すグラフである。

Claims (1)

  1. 式1:(Tb(x)Dy(1−x))T(y)(ここで、Tは、Fe、Ni、Coの群から選択される少なくとも1種類の金属をいう、以下同じ。x、yは、0.35<x≦0.50、1.70≦y≦2.00の範囲にある。)で表される原料Aと、
    式2:Dy(t)T(1−t)(ここで、Dyは、TbとHoの双方又はいずれか一方を含むことがある。tは、0.37≦t≦1.00の範囲にある。)で表され、7000ppm≦水素量≦22000ppmの範囲にある水素を含む原料Bと、
    Tを含有する原料Cと を混合し、焼結して、
    式3:(Tb(v)Dy(1−v))T(w)(ここで、v、wは、0.27≦v<0.50、1.70≦w≦2.00の範囲にある。)で表される磁歪材料を製造する
    ことを特徴とする磁歪材料の製造方法。
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