JP3671524B2 - 電磁弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気的にバルブの開閉を行う電磁弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
電磁弁は、弁体を駆動する可動子を備える。この可動子は、可動子保持スリーブに内包された状態で電磁弁に組み付けられる。この可動子保持スリーブは、可動子の周囲を覆って摺接する筒部と、可動子の反弁体側の移動範囲を規制する規制部とを一体に設けたもので、コイルの内側に固定される。
【0003】
この可動子保持スリーブを固定する技術としては、可動子保持スリーブの弁体側の端をフランジ状に設け、そのフランジ部を磁気回路を構成するヨークの端に溶接で接合する固定技術が知られているとともに、磁気回路を構成するプレートの端部とフランジ部との間にウエーブワッシャを介在させ、ヨークの端でフランジ部をプレート側に押し付け、ウエーブワッシャを弾性変形させて可動子保持スリーブを固定する固定技術が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
溶接で可動子保持スリーブをヨークに固定する技術は、電磁弁の製造工程において、溶接工程を必要とするため、工程数が増加するとともに、溶接機を使用することによる設備費増により、電磁弁のコストが上昇する不具合が生じる。
また、ウエーブワッシャ等の固定部材を別途用いて可動子保持スリーブを固定する技術は、部品点数の増加によって、電磁弁のコストが上昇する不具合が生じる。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、可動子保持スリーブを固定するために、特別な接合工程や、特別な固定部材を必要としない電磁弁の提供にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1を採用したことにより、可動子保持スリーブの端部に一体に設けられた弾性変形部が、従来のウエーブワッシャのように作用して、可動子保持スリーブが電磁弁に固定される。つまり、可動子保持スリーブは、溶接等の接合工程や、ウエーブワッシャ等の特別な固定部材を用いることなく、電磁弁に固定される。
このように、工程数の低減、あるいは部品点数の減少により、電磁弁の組付が容易となるとともに、電磁弁の製造コストを低く抑えることができる。
【0007】
また、請求項2を採用すると、弾性変形部を凹凸部として先端をプレートあるいはコイルボビンに当接させて保持させることで、軸方向の寸法誤差を吸収できる。
さらに、弾性変形部の先端をプレートあるいはコイルボビンに当接させることで、磁気回路の変更なしで可動子保持スリーブを形成できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を、実施例および変形例に基づき説明する。
〔実施例の構成〕
図1は本発明が適用された電磁弁の断面図を示す。なお、この実施例に示す電磁弁は、無通電時に油圧によって弁体がオープン位置に移動するノーマリーオープンタイプの油路切り替え用のものである。
【0009】
電磁弁1は、通電を受けて磁力を発生するコイル2を備える。このコイル2は、樹脂製ベース3によって形成されたコイルボビン3aの周囲に巻回されたもので、コイル2の端部は、ベース3に固定されたターミナル4に接続されている。なお、ターミナル4の周囲には、ターミナル4接続用の樹脂製コネクタ部5が設けられている。
また、ベース3には、油圧の供給を受けるインポート3b、このインポート3bに同軸的に設けられた弁座3c、インポート3bおよび弁座3cに対して垂直方向に設けられた流出用のアウトポート3dが設けられてる。
【0010】
電磁弁1は、コイル2の発生した磁力によって磁気回路の一部を構成する磁性体金属製のプレート6およびヨーク7を備える。
プレート6は、ベース3内にモールド固定されたもので、コイル2の内側に配置されるプレート内周部6aの内側に、円筒状の弁体用スリーブ8が圧入されている。
【0011】
この弁体用スリーブ8は、その内側において、弁体9を軸方向に摺動自在に支持するものである。なお、弁体用スリーブ8も磁性体金属製で、プレート6に磁気的に結合して磁気回路の一部を構成している。
弁体9は、ステンレスなどの非磁性体金属製で、弁体用スリーブ8によって弁座3cに対して同軸的に配置される。この弁体9は、略棒状を呈し、その両端はそれぞれ略球状に設けられており、その一端は弁座3cに当接して弁座3cを閉塞可能に設けられている。
【0012】
ヨーク7は、コイルボビン3aの後方(図右側)から取り付けられるもので、コイルボビン3aの内側に挿入されるヨーク内周部7aと、コイルボビン3aの外側を覆う外周部7bとを備え、この外周部7bの前端(図左側の端)が内側にカシメられて固定されている。
【0013】
ヨーク内周部7aの内側には、ステンレスなどの非磁性体金属製の薄板をプレス形成した略カップ状を呈した可動子保持スリーブ10が組み付けられている。この可動子保持スリーブ10は、弁座3cおよび弁体9に対して同軸に配置される略円柱状の可動子11を軸方向に案内するもので、可動子11の周囲を覆って可動子11を軸方向に摺動自在に支持する筒部10aと、弁体9とは異なった側(後端側)の可動子11の移動範囲を規制する規制部10bとを備える。
【0014】
また、可動子保持スリーブ10の弁体9側の端(前端)には、軸方向に弾性変形可能な弾性変形部10cが一体に設けられている。この弾性変形部10cは、プレート内周部6a(他の部材に相当する)の先端部6a’に当接し、弾性変形した状態で固定されるもので、断面が略S字状の凹凸形状に設けられている。この凹凸形状に設けられた弾性変形部10cの根元部10c’が、ヨーク内周部7aの先端部7a’によってプレート6(他の部材に相当する)に向けて押し付けられており、これによって、弾性変形部10cが弾性変形した状態で固定される。
【0015】
可動子11は、可動子保持スリーブ10によって、弁体9と同軸的にコイル2内に保持されたもので、コイル2が通電を受けて磁力を発生すると、弁体用スリーブ8に吸引されて、プレート6、ヨーク7、弁体用スリーブ8とともに閉じた磁気回路を構成する。なお、可動子11が弁体用スリーブ8に吸引されると、弁体9を弁座3cに押し付けて弁座3cを閉じる。
【0016】
〔電磁弁1の作動〕
次に、電磁弁1の無通電時および通電時の作動を説明する。
(無通電時)
ターミナル4に電源の供給が無い場合、コイル2は磁力を発生せず、弁体9は可動子11とともに摺動自在な状態にある。このため、インポート3bから供給される油圧によって、弁体9が弁座3cから離れ、インポート3bに供給されるオイルは、弁座3cを介してアウトポート3dへ流出する。
【0017】
(通電時)
ターミナル4に電源が供給されるとコイル2が磁力を発生し、可動子11が吸引され供給油圧の付勢力に打ち勝って弁体9を弁座3cに押し付ける。このため、弁座3cが閉塞し、インポート3bからアウトポート3dへのオイルの流出が遮断される。
【0018】
〔電磁弁1の製造工程〕
次に、上記構成の電磁弁1の組付け順序を説明する。
1)プレート6を樹脂モールド製のベース3にインサート成形する。
2)コイルボビン3aにコイル2を巻回した後、所定形状に曲げ加工したターミナル4をベース3に圧入し、コイル2の先端末をフュージング固定する。なお、この工程に代えて、真っ直ぐなターミナル4をベース3に圧入した後、コイルボビン3aにコイル2を巻回し、ターミナル4を所定形状に曲げ加工し、その後にコイル2の先端末をフュージング固定しても良い。
【0019】
3)コネクタ部5を樹脂モールド成形する。
4)プレート内周部6aの内側に弁体用スリーブ8を圧入する。この時、弁体用スリーブ8がベース3に当接する位置まで圧入する。
5)弁体用スリーブ8の内側に弁体9を挿入する。
6)可動子保持スリーブ10内に可動子11を挿入し、これをコイルボビン3aの内側に挿入する。
7)最後に、コイルボビン3aと可動子保持スリーブ10の間に、ヨーク内周部7aが挿入されるように、ヨーク7を組付け、ヨーク7の前端をプレート6側にカシメて固定する。この時、弾性変形部10cがプレート6とヨーク7との間で弾性変形して、軸方向の寸法誤差を吸収する。
【0020】
〔実施例の効果〕
本実施例の電磁弁1は、上記の製造工程で示したように、可動子保持スリーブ10の端部に一体に設けられた弾性変形部10cが、従来のウエーブワッシャのように作用して、可動子保持スリーブ10が電磁弁1に固定される。つまり、可動子保持スリーブ10は、溶接等の接合工程や、ウエーブワッシャ等の特別な固定部材を用いることなく、電磁弁1に固定される。
このように、従来に比較して、工程数の低減、あるいは部品点数の減少により、電磁弁1の組付が容易となるとともに、電磁弁1の製造コストを低く抑えることができる。
【0021】
また、弾性変形部10cを断面凹凸形状に設け、その先端をプレート6の先端部6a’に当接させて保持させることで、プレート6と可動子保持プレート10の間に生じる軸方向の寸法誤差を、弾性変形部10cの変形量によって吸収できる。
さらに、弾性変形部10cの先端をプレート6の先端部6a’に当接させることで、磁気回路を従来構造に対して変更することなく、可動子保持スリーブ10を形成できる。
【0022】
〔変形例〕
上記の実施例では、無通電時に油圧によって弁体9がオープン位置に移動する電磁弁1に本発明を適用した例に示したが、弁体9をスプリングで付勢し、コイル2が通電されると可動子11がスプリングの付勢力に打ち勝って弁体9を駆動する電磁弁1に本発明を適用しても良い。
【0023】
上記の実施例では、略S字形の凹凸によって弾性変形部10cを構成した例を示したが、ジグザク形の凹凸によって弾性変形部10cを構成したり、凸のみによって弾性変形部10cを構成するなど、他の形状で弾性変形部10cを構成しても良い。
上記の実施例では、弾性変形部10cがプレート6に当接して弾性変形する例を示したが、弁体用スリーブ8に当接して弾性変形するように設けたり、コイルボビン3aに当接して弾性変形するように設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】電磁弁1の断面図である。
【符号の説明】
1 電磁弁
2 コイル
3a コイルボビン
3c 弁座
6 プレート
6a’ プレートの先端部
7 ヨーク
7a’ ヨークの先端部
9 弁体
10 可動子保持スリーブ
10a 筒部
10b 規制部
10c 弾性変形部
10c’ 根元部
11 可動子
Claims (2)
- (a)流体が通過可能な弁座と、
(b)この弁座を開閉する移動可能な弁体と、
(c)通電を受けて磁力を発生するコイルと、
(d)このコイルの発生する磁力を受けて前記弁体を所定方向へ付勢する可動子と、
(e)この可動子の周囲を覆うとともに、前記可動子を保持する保持部と、前記可動子の移動範囲を規制する規制部と、前記弁体側に設けられた弾性変形可能な弾性変形部とが一体に設けられ、前記弾性変形部が他の部材に当接して弾性変形した状態で固定される可動子保持スリーブと
を備える電磁弁。 - 請求項1の電磁弁において、
前記弾性変形部は、凹凸形状に設けられ、その前記弾性変形部の根元部は、磁気回路の一部を構成するヨークの先端部によって前記他の部材に向けて押し付けられ、
前記弾性変形部と当接する前記他の部材は、磁気回路の一部を構成するプレート、または前記コイルが巻回されたコイルボビンである
ことを特徴とする電磁弁。
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