JP3671396B2 - 交流発電機の固定子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば内燃機関により駆動される交流発電機の固定子に関し、特に、乗用車、トラック等の乗り物に搭載される車両用交流発電機の固定子構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図24は例えば日本特許第2927288号に記載された従来の車両用交流発電機の固定子の要部を示す側面図、図25は図24に示された従来の車両用交流発電機の固定子に適用される導体セグメントを示す斜視図、図26および図27はそれぞれ図24に示された従来の車両用交流発電機の固定子の要部をフロント側およびリヤ側から見た斜視図である。
図24乃至図27において、固定子50は、固定子鉄心51と、固定子鉄心51に巻装された固定子巻線52と、スロット51a内に装着されて固定子巻線52を固定子鉄心51に対して絶縁するインシュレータ53とを備えている。固定子鉄心51は、薄い鋼板を重ねて積層された円筒状の積層鉄心であり、軸方向に延びるスロット51aが内周側に開口するように所定ピッチで周方向に複数設けられている。ここでは、回転子(図示せず)の磁極数(16)に対応して、3相の巻線を2組収容するように、96本のスロット51aが形成されている。固定子巻線52は、多数の短尺の導体セグメント54を接合して所定の巻線パターンに構成されている。
【0003】
導体セグメント54は、絶縁被覆された矩形断面の銅線材を略U字状に成形したもので、6スロット(1磁極ピッチ)離れた2つのスロット51a毎に、軸方向のリヤ側から2本ずつ挿入されている。そして、導体セグメント54のフロント側に延出する端部同士が接合されて固定子巻線52を構成している。
【0004】
具体的には、6スロット離れた各組のスロット51aにおいて、1本の導体セグメント54が、リヤ側から、1つのスロット51a内の外周側から1番目の位置と、他のスロット51a内の外周側から2番目の位置とに挿入され、もう1本の導体セグメント54が、リヤ側から、1つのスロット51a内の外周側から3番目の位置と、他のスロット51a内の外周側から4番目の位置とに挿入されている。そこで、各スロット15a内では、導体セグメント54の直線部54aが径方向に1列に4本並んで配列されている。
そして、1つのスロット51a内の外周側から1番目の位置からフロント側に延出した導体セグメント54の端部54bと、そのスロット51aから時計回りに6スロット離れた他のスロット51a内の外周側から2番目の位置からフロント側に延出した導体セグメント54の端部54bとが接合されて、2ターンの外層巻線が形成されている。さらに、1つのスロット51a内の外周側から3番目の位置からフロント側に延出した導体セグメント54の端部54bと、そのスロット51aから時計回りに6スロット離れた他のスロット51a内の外周側から4番目の位置からフロント側に延出した導体セグメント54の端部54bとが接合されて、2ターンの内層巻線が形成されている。
さらに、6スロット離れた各組のスロット51aに挿入された導体セグメント54で構成される外層巻線と内層巻線とが直列に接続されて、4ターンの1相分の固定子巻線52が形成されている。
同様にして、導体セグメント54の挿入されるスロット位置を1スロットずつずらして、それぞれ4ターンの固定子巻線52が6相分形成されている。そして、これらの固定子巻線52は3相分ずつ交流結線されて、2組の3相固定子巻線を構成している。
【0005】
このように構成された従来の固定子50においては、固定子鉄心51のリヤ側では、同じ組のスロット51aに挿入された2本の導体セグメント54のターン部54cが径方向に並んで配列されている。その結果、ターン部54cが周方向に2列に配列されて、リヤ側のコイルエンド群を構成している。
一方、固定子鉄心51のフロント側では、1つのスロット51a内の外周側から1番目の位置からフロント側に延出した導体セグメント54の端部54bと6スロット離れたスロット51a内の外周側から2番目の位置からフロント側に延出した導体セグメント54の端部54bとの接合部と、1つのスロット51a内の外周側から3番目の位置からフロント側に延出した導体セグメント54の端部54bと6スロット離れたスロット51a内の外周側から3番目の位置からフロント側に延出した導体セグメント54の端部54bとの接合部とが、径方向に並んで配列されている。その結果、端部54b同士の接合部が周方向に2列に配列されて、フロント側のコイルエンド群を構成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この従来の車両用交流発電機の固定子50では、以上のように、固定子巻線52が、略U字状に成形された短尺の導体セグメント54を固定子鉄心51のスロット51aにリヤ側から挿入し、フロント側に延出する導体セグメント54の端部54b同士を接合して構成されている。
そこで、半田付けや溶接によって絶縁被膜が消失された端部54b同士の接合部を周方向に配列してフロント側のコイルエンド群が構成されているので、被水により腐蝕しやすいコイルエンド構造となっており、耐腐食性が極めて低くなっていた。
また、コイルエンド群は、96カ所の接合部を2列に、即ち192カ所の接合部から構成されているので、接合部同士が短絡しやすい構造となっており、短絡事故が発生しやすかった。
また、多数の短尺の導体セグメント54を固定子鉄心51に挿入し、かつ、端部54b同士を溶接、半田付け等により接合しなければならず、著しく作業性が低下してしまっていた。また、導体セグメント54のスロット51aへの押し込み量は固定子鉄心51の軸方向長さ以上を必要とし、絶縁被膜に傷を付けやすく、製品後の品質を低下させていた。さらに、端部54b同士の接合時に、半田垂れや溶接融けによる接合部間の短絡が頻発し、量産性が著しく低下していた。
【0007】
また、従来の固定子50においては、導体セグメント54の端部54b同士は、その一部を治具でクランプし、その頂点部を半田付けや溶接して接合されていた。そこで、治具によるクランプ面積が必要となる上に、半田付け部や溶接部の膨れが生じるので、コイルエンド高さが高くなるとともに、接合部間も狭くなっていた。また、導体セグメント54の端部54b同士を溶接した場合、溶接時の温度上昇により導体セグメント54が軟化して、固定子としての剛性が低下してしまう。その結果、従来の固定子50を車両用交流発電機に搭載した場合、コイルエンド部のコイルの漏れリアクタンスが増えて、出力が悪化し、また通風抵抗が増加して、風騒音が悪化し、さらに剛性が低下して、磁気騒音の低減効果が少なくなってしまっていた。
【0008】
この発明は、上記のような従来の技術の課題に鑑み、連続線からなる1ターンの巻線を複数配列して構成した巻線アッセンブリを用い、コイルエンドにおける接合カ所を著しく低減して耐腐食性および絶縁性が高められ、かつ、巻線の固定子鉄心への巻装性を高めて組立性および生産性が向上される交流発電機の固定子を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る交流発電機は、軸方向に延びるスロットが周方向に所定ピッチで複数形成された積層鉄心からなり、端面同士を当接、溶接して円筒状に構成された固定子鉄心と、連続線からなる素線が、上記固定子鉄心の端面側の上記スロット外で折り返されて、所定スロット数毎に上記スロット内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装されてなる複数の巻線からなる多相固定子巻線とを有し、
上記複数の巻線は、複数本の上記素線を同時に折り畳んで形成された少なくとも2組の巻線アッセンブリで構成され、
上記巻線アッセンブリは、直線部がターン部により連結されて所定スロットピッチで配列され、かつ、隣り合う該直線部が該ターン部によりスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るようにずらされたパターンに形成された2本の上記素線を、互いに上記所定スロットピッチずらして上記直線部を重ねて配列してなる素線対が、1スロットピッチずつずらされて上記所定スロット数と同数対配列されて構成されているものである。
【0010】
また、2組の上記巻線アッセンブリが上記固定子鉄心に径方向に2列に並んで巻装され、上記多相固定子巻線を構成する各相の固定子巻線が、同一スロット群に巻装された上記第1および第2巻線を直列に結線して4ターンの巻線に構成されているものである。
【0011】
また、3組の上記巻線アッセンブリが上記固定子鉄心に径方向に3列に並んで巻装され、上記多相固定子巻線を構成する各相の固定子巻線が、同一スロット群に巻装された上記第1および第2巻線を直列に結線して6ターンの巻線に構成されているものである。
【0012】
また、2組の上記巻線アッセンブリが一方の巻線アッセンブリで他方の巻線アッセンブリを内包するように上記固定子鉄心に巻装され、上記多相固定子巻線を構成する各相の固定子巻線が、同一スロット群に巻装された上記第1および第2巻線を直列に結線して4ターンの巻線に構成されているものである。
【0013】
また、上記各相の固定子巻線は、2組の上記巻線アッセンブリ間の上記第1および第2巻線の巻線端が2カ所の隣接番地渡り結線により結線され、かつ、一方の組の上記巻線アッセンブリ内の上記第1および第2巻線の巻線端が1カ所の同一番地渡り結線により結線されて4ターンの巻線に構成されているものである。
【0014】
また、上記各相の固定子巻線は、各組の上記巻線アッセンブリ内の上記第1および第2巻線の巻線端がそれぞれ1カ所の同一番地渡り結線により結線され、かつ、2組の上記巻線アッセンブリ間の上記第1および第2巻線の巻線端が1カ所の隣接番地渡り結線により結線されて4ターンの巻線に構成されているものである。
【0015】
また、上記素線の断面形状が略扁平形状であり、上記直線部が断面長手方向を径方向に一致させて1列に並んで上記スロットに収納されているものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図について説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の構成を示す断面図、図2はこの車両用交流発電機の固定子を示す斜視図、図3はこの車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明する平面図、図4はこの車両用交流発電機の回路図、図5および図6はそれぞれこの車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アッセンブリの製造工程を説明する図である。図7はこの車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アッセンブリを示す図であり、図7の(a)はその側面図、図7の(b)はその平面図である。図8はこの車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する素線の要部を示す斜視図、図9はこの車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する素線の配列を説明する図である。図10はこの車両用交流発電機の適用される固定子鉄心の構造を説明する図であり、図10の(a)はその側面図、図10の(b)はその背面図である。図11はこの車両用交流発電機の適用される固定子の製造工程を説明する工程断面図、図12はこの車両用交流発電機の適用される固定子の製造工程を説明する工程断面図である。なお、図2では口出し線および渡り結線が省略されている。
【0017】
図1において、車両用交流発電機は、ランドル型の回転子7がアルミニウム製のフロントブラケット1およびリヤブラケット2から構成されたケース3内にシャフト6を介して回転自在に装着され、固定子8が回転子7の外周側を覆うようにケース3の内壁面に固着されて構成されている。
シャフト6は、フロントブラケット1およびリヤブラケット2に回転可能に支持されている。このシャフト6の一端にはプーリ4が固着され、エンジンの回転トルクをベルト(図示せず)を介してシャフト6に伝達できるようになっている。回転子7に電流を供給するスリップリング9がシャフト6の他端部に固着され、一対のブラシ10がこのスリップリング9に摺接するようにケース3内に配設されたブラシホルダ11に収納されている。固定子8で生じた交流電圧の大きさを調整するレギュレータ18がブラシホルダ11に嵌着されたヒートシク17に接着されている。固定子8に電気的に接続され、固定子8で生じた交流を直流に整流する整流器12がケース3内に装着されている。
【0018】
回転子7は、電流を流して磁束を発生する回転子コイル13と、この回転子コイル13を覆うように設けられ、回転子コイル13で発生された磁束によって磁極が形成される一対のポールコア20、21とから構成される。一対のポールコア20、21は、鉄製で、それぞれ8つの爪形状の爪状磁極22、23が外周縁に周方向に等角ピッチで突設され、爪状磁極22、23をかみ合わせるように対向してシャフト6に固着されている。さらに、ファン5が回転子7の軸方向の両端に固着されている。
また、吸気孔1a、2aがフロントブラケット1およびリヤブラケット2の軸方向の端面に設けられ、排気孔1b、2bがフロントブラケット1およびリヤブラケット2の外周両肩部に固定子巻線16のフロント側およびリヤ側のコイルエンド群16a、16bの径方向外側に対向して設けられている。
【0019】
固定子8は、図2に示されるように、軸方向に延びるスロット15aが周方向に所定ピッチで複数形成された円筒状の積層鉄心から成る固定子鉄心15と、固定子鉄心15に巻装された多相固定子巻線16と、各スロット15a内に装着されて多相固定子巻線16と固定子鉄心15とを電気的に絶縁するインシュレータ19とを備えている。そして、多相固定子巻線16は、径方向に2列に配設された2組の巻線アッセンブリ29を備えている。巻線アッセンブリ29は、1本の素線30が、固定子鉄心15の端面側のスロット15a外で折り返されて、所定スロット数毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように波巻きされて巻装された複数の巻線から構成されている。ここでは、固定子鉄心15には、回転子7の磁極数(16)に対応して、後述する3相固定子巻線160を2組収容するように、96本のスロット15aが等間隔に形成されている。また、素線30には、例えば絶縁被覆された長方形の断面を有する長尺の銅線材が用いられる。
【0020】
つぎに、1相分の固定子巻線161の巻線構造について図3を参照して具体的に説明する。
1相分の固定子巻線161は、それぞれ1本の素線30からなる第1乃至第4巻線31〜34から構成されている。そして、第1巻線31は、1本の素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から1番目の位置と外周側から2番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第2巻線32は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から2番目の位置と外周側から1番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第3巻線33は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から3番目の位置と外周側から4番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第4巻線34は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から4番目の位置と外周側から3番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。
これにより、第1乃至第4巻線31〜34は、それぞれ、1本の素線30を6スロット毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装されてなる1ターンの巻線を構成している。そして、各スロット15a内には、素線30が長方形断面の長手方向を径方向に揃えて径方向に1列に4本並んで配列されている。
【0021】
そして、固定子鉄心15の一端側において、スロット番号の67番の外周側から2番目の位置から延出する第1巻線31の巻線端31bと、スロット番号の61番の外周側から3番目の位置から延出する第3巻線33の巻線端33aとが渡り結線(隣接番地渡り結線)され、ついで、スロット番号の61番の外周側から2番目の位置から延出する第2巻線32の巻線端32bと、スロット番号の55番の外周側から3番目の位置から延出する第4巻線34の巻線端34aとが渡り結線(隣接番地渡り結線)され、さらに、スロット番号の67番の外周側から4番目の位置から延出する第3巻線33の巻線端33bと、スロット番号の61番の外周側から4番目の位置から延出する第4巻線34の巻線端34bとが渡り結線(同一番地渡り結線)される。これにより、第1乃至第4巻線31〜34が直列に接続されて、4ターンの1相分の固定子巻線161が形成される。
この時、スロット番号の61番の外周側から1番目の位置から延出する第1巻線31の巻線端31aと、スロット番号の55番の外周側から1番目の位置から延出する第2巻線32の巻線端32aとが、固定子巻線161の口出し線(O)および中性点(N)となる。
【0022】
同様にして、素線30が巻装されるスロット15aを1つずつずらして6相分の固定子巻線161が形成されている。そして、図4に示されるように、固定子巻線161が3相分ずつ星型結線されて2組の3相固定子巻線160を形成し、各3相固定子巻線160がそれぞれ整流器12に接続されている。各整流器12の直流出力は並列に接続されて合成される。
【0023】
ここで、第1乃至第4巻線31〜34を構成するそれぞれの素線30は、1つのスロット15aから固定子鉄心15の端面側に延出し、折り返されて6スロット離れたスロット15aに入るように波巻きに巻装されている。それぞれの素線30は、6スロット毎に、スロット深さ方向(径方向)に関して、内層と外層とを交互に採るように巻装されている。そして、第1巻線31と第2巻線32とは電気角で180°ずれて反転巻装されている。同様に、第3巻線33と第4巻線34とは電気角で180°ずれて反転巻装されている。
また、固定子鉄心15の端面側に延出して折り返された素線30のターン部30aがコイルエンドを形成している。そこで、固定子鉄心15の両端において、ほぼ同一形状に形成されたターン部30aが周方向に、かつ、径方向に互いに離間して、2列となって周方向に整然と配列されてコイルエンド群16a、16bを形成している。
【0024】
ついで、固定子8の組立方法について図5乃至図12を参照しつつ具体的に説明する。
まず、図5に示されるように、12本の長尺の素線30を同時に同一平面上で雷状に折り曲げ形成する。ついで、図6に矢印で示されるように、直角方向に治具にて折り畳んでゆき、図7に示される巻線アッセンブリ29を作製する。そして、巻線アッセンブリ29が装着された鉄心37を環状に成形しやすくするために、巻線アッセンブリ29は作製後300℃で10分間アニール処理される。
なお、各素線30は、図8に示されるように、ターン部30aで連結された直線部30bが6スロットピッチ(6P)で配列された平面状パターンに折り曲げ形成されている。そして、隣り合う直線部30bが、ターン部30aにより、素線30の幅(W)分ずらされている。巻線アッセンブリ29は、このようなパターンに形成された2本の素線30を図9に示されるように6スロットピッチずらして直線部30bを重ねて配列された素線対が1スロットピッチずつずらして6対配列されて構成されている。そして、素線30の端部が巻線アッセンブリ29の両端の両側に6本ずつ延出されている。また、ターン部30aが巻線アッセンブリ29の両側部に整列されて配列されている。なお、図9に示されるように6スロットピッチずらして直線部30bを重ねて配列された素線対は、電気角で180°ずれている。
また、台形形状のスロット37aが所定のピッチ(電気角で30°)で形成されたSPCC材を所定枚数積層し、その外周部をレーザ溶接して、図10に示されるように、直方体の鉄心37を作製する。
【0025】
そして、図11の(a)に示されるように、インシュレータ19が鉄心37のスロット37aに装着され、2組の巻線アッセンブリ29の各直線部を各スロット37a内に重ねて押し入れる。これにより、図11の(b)に示されるように、2組の巻線アッセンブリ29が鉄心37に装着される。この時、素線30の直線部30bは、インシュレータ19により鉄心37と絶縁されてスロット37a内に径方向に4本並んで収納されている。
ついで、鉄心37を丸め、その端面同士を当接させて溶接して、図11(c)に示されるように、円筒状の鉄心38を得る。鉄心37を丸めることにより、スロット37a(固定子鉄心のスロット15aに相当)は略矩形断面形状となり、その開口部37b(スロット15aの開口部15bに相当)は直線部30bのスロット幅方向寸法より小さくなる。そして、同一素線30の端部同士を結線して、同一スロット群に巻装された第1乃至第4巻線31〜34がそれぞれ1ターンの巻線を構成する。
ついで、6スロット離れて対をなす2組のスロット対間で第1乃至第4巻線31〜34を構成する各素線30のターン部30aを切断する。そして、得られた第1乃至第4巻線31〜34の切断端(巻線端31a、31b、32a、32b、33a、33b、34a、34b)同士を、図3に示される結線方法に基づいて、結線して6相分の固定子巻線161を形成する。その後、鉄心38がSPCC材を積層してなる円筒状の外装鉄心39に挿入された後、焼きバメして一体化して、図12に示される固定子8を得る。ここで、鉄心38と外装鉄心39との一体物が固定子鉄心15に相当する。
【0026】
このように構成された車両用交流発電機では、電流がバッテリ(図示せず)からブラシ10およびスリップリング9を介して回転子コイル13に供給され、磁束が発生される。この磁束により、一方のポールコア20の爪状磁極22がN極に着磁され、他方のポールコア21の爪状磁極23がS極に着磁される。一方、エンジンの回転トルクがベルトおよびプーリ4を介してシャフト6に伝達され、回転子7が回転される。そこで、多相固定子巻線16に回転磁界が与えられ、多相固定子巻線16に起電力が発生する。この交流の起電力が整流器12を通って直流に整流されるとともに、その大きさがレギュレータ18により調整され、バッテリに充電される。
【0027】
そして、リヤ側においては、ファン5の回転により、外気が整流器12のヒートシンクおよびレギュレータ18のヒートシンク17にそれぞれ対向して設けられた吸気孔2aを通じて吸い込まれ、シャフト6の軸に沿って流れて整流器12およびレギュレータ18を冷却し、その後ファン5により遠心方向に曲げられて多相固定子巻線16のリヤ側のコイルエンド群16bを冷却し、排気孔2bより外部に排出される。一方、フロント側においては、ファン5の回転により、外気が吸気孔1aから軸方向に吸い込まれ、その後ファン5により遠心方向に曲げられて多相固定子巻線16のフロント側のコイルエンド群16aを冷却し、排気孔1bより外部に排出される。
【0028】
このように、この実施の形態1によれば、多相固定子巻線16は、1本の素線30が、固定子鉄心15の端面側のスロット15a外で折り返されて、6スロット毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装されてなる複数の第1乃至第4巻線31〜34を有している。そして、第1巻線31(第3巻線33)を1スロットピッチで6本配列して構成された第1巻線群と、第1巻線31(第3巻線33)に対して電気角で180°ずれて反転巻装された第2巻線32(第4巻線34)を1スロットピッチで6本配列して構成された第2巻線群との対で構成された2組の巻線アッセンブリ29を用いている。そして、2組の巻線アッセンブリ29が固定子鉄心15に径方向に2列に巻装されている。
【0029】
そこで、巻線アッセンブリ29を固定子鉄心15に2列に巻装することで、6相分の固定子巻線161が固定子鉄心15に巻装されることになり、組立性を著しく向上させることができる。
また、2組の巻線アッセンブリ29間の巻線結線が2カ所の隣接番地渡り結線により行われ、1組の巻線アッセンブリ29内の巻線結線が1カ所の同一番地渡り結線により行われているので、渡り結線部が極めて単純な構造となる。それにより、渡り結線のための素線30の引き回しや曲げ等の作業が著しく軽減され、結線作業性が大幅に向上される。
また、1相分の固定子巻線161における渡り結線部が6スロット離れて対をなすスロット対の隣接する2組の対に集中しているので、結線作業性が大幅に向上される。
また、多相固定子巻線16を構成する第1乃至第4巻線31〜34はそれぞれ1本の素線30(連続線)により作製されているので、従来の固定子50のように、多数の短尺の導体セグメント54を固定子鉄心51に挿入し、かつ、端部54b同士を溶接、半田付け等により接合する必要がなく、固定子8の生産性を著しく向上させることができる。
また、コイルエンドが素線30のターン部30aで構成されるので、コイルエンド群16a、16bにおける接合カ所は第1乃至第4巻線31〜34の端部同士の接合部および渡り結線接合部のみとなり、接合カ所が著しく削減される。これにより、接合による絶縁被膜の消失に伴う短絡事故の発生が抑えられるので、優れた絶縁性が得られるとともに、高歩留まりが得られる。さらに、接合による絶縁被膜の消失に伴う耐腐食性の低下を抑えることができる。
【0030】
また、連続線からなる2組の巻線アッセンブリ29を2列に並べて固定子鉄心15のスロット15aに挿入できるので、多数の導体セグメント54を1本ずつスロットに挿入する従来技術に比べて、作業性を著しく向上させることができる。
また、多相固定子巻線のターン数を増やす場合、連続線からなる巻線アッセンブリ29を直線部30b同士を相対して揃えるようにして重ねて巻装することで容易に対応することができる。
また、この実施の形態1による固定子8は、連続線からなる巻線アッセンブリ29を直方体の鉄心37のスロット37aに開口部37bから挿入し、その後鉄心37を環状に丸めて作製することができる。そこで、鉄心37の開口部37bの開口寸法を素線30のスロット幅方法寸法より大きくすることができるので、巻線アッセンブリ29の挿入作業性を高めることができる。また、鉄心37を環状に成形することで開口部37bの開口寸法を素線30のスロット幅方法寸法より小さくできるので、占積率が高められ、出力を向上させることができる。さらに、スロット数が多くなっても、固定子の生産性を低下させることはない。さらにまた、導体セグメント54のように固定子鉄心15の軸方向に沿ってスロット15a内に押し込む必要がないので、素線30の絶縁被膜の損傷が発生しにくく、高い歩留まりが実現できる。
【0031】
このように構成された固定子8を交流発電機に搭載することにより得られる効果について以下に述べる。
まず、コイルエンドが素線30のターン部30aで構成されるので、コイルエンド群16a、16bにおける接合カ所が著しく削減される。これにより、溶接による素線30の軟化がなく、固定子としての剛性が高くなり、磁気騒音を低減できる。
また、コイルエンド群16a、16bは、ターン部30aを周方向に配列して構成されている。これにより、導体セグメント54の端部54b同士を接合している従来のコイルエンド群に比べて、コイルエンド群の固定子鉄心15の端面からの延出高さを低くできる。これにより、コイルエンド群16a、16bにおける通風抵抗が小さくなり、回転子7の回転に起因する風音を低減させることができる。また、コイルエンドのコイルの漏れリアクタンスが減少し、出力・効率が向上する。
【0032】
また、4本の素線30がスロット15a内に径方向に1列に配列され、ターン部30aが周方向に2列に並んで配列されている。これにより、コイルエンド群16a、16bを構成するターン部30aがそれぞれ径方向に2列に分散されるので、コイルエンド群16a、16bの固定子鉄心15の端面からの延出高さを低くできる。その結果、コイルエンド群16a、16bにおける通風抵抗が小さくなり、回転子7の回転に起因する風音を低減させることができる。
【0033】
また、固定子鉄心15の端面側で折り返されたターン部30aが6スロット離れた異なるスロット15a内に異なる層として配置された2つの直線部30bを直列に接続している。これにより、各相のコイルエンド間の干渉が抑えられ、固定子巻線の高占積化が図られるので、高出力化が実現される。また、各ターン部30aは容易に略同一形状に形成できる。そして、各ターン部30aを略同一形状に形成することで、即ちコイルエンド群16a、16bを構成するターン部30aを周方向で略同一形状に形成することで、コイルエンド群16a、16bの内径側端面における周方向の凹凸が抑えられるので、回転子7とコイルエンド群16a、16bとの間で発生する風騒音を低減させることができる。また、漏れインダクタンスが等しくなり、安定した出力が得られる。また、ターン部30aが周方向に離間し、かつ、ターン部30a間の空間が周方向に略同一に形成されているので、コイルエンド群16a、16b内への通風が容易となり、冷却性が高められるとともに、冷却風とコイルエンドとの干渉による騒音が低減される。また、各ターン部30aが略同一形状に形成されて周方向に整列されて配列されているので、各ターン部30aにおける放熱性が同等となり、さらにコイルエンド群16a、16bにおける放熱性が同等となる。それにより、多相固定子巻線16での発熱は、各ターン部30aから均等に放熱され、さらに両コイルエンド群16a、16bから均等に放熱されることになり、多相固定子巻線16の冷却性が向上される。
【0034】
また、素線30が巻装されるスロットピッチは回転子7のNS極ピッチに対応したピッチであるので、全節巻線となり、大きな出力が出せる。
また、スロット15aの開口部15bの開口寸法が素線30のスロット幅方向寸法より小さく構成されているので、スロット15aから径方向内側への素線30の飛び出しが阻止されるとともに、開口部15bでの回転子7との干渉音も低減される。
【0035】
また、直線部30bが長方形断面に形成されているので、直線部30bをスロット15a内に収容したときに、直線部30bの断面形状がスロット形状に沿った形状となっている。これにより、スロット15a内における素線30の占積率を高めることが容易となるとともに、素線30から固定子鉄心15への伝熱を向上させることができる。また、素線30が長方形の断面形状に形成されているので、コイルエンドを構成するターン部30bからの放熱面積が大きくなり、多相固定子巻線16の発熱が効果的に放熱される。さらに、長方形断面の長辺を径方向と平行に配置することで、ターン部30b間の隙間を確保でき、コイルエンド群16a、16b内への冷却風の通風を可能にできるとともに、径方向への通風抵抗を低減することができる。ここで、この実施の形態1では、直線部30bが長方形断面に形成されているものとしているが、直線部30bの断面形状は、長方形断面に限らず、長方形の短辺を円弧とした長円形断面、長楕円断面等の略扁平形状であればよい。
【0036】
また、回転子7の磁極数が16で、96個のスロット15aが固定子鉄心15に等角ピッチで形成されている。そして、巻線30が6スロット毎のスロット15aに波巻きされているので、巻線30が波巻きされるスロットのピッチが回転子7のNS極に対応したピッチとなっている。これにより、最大トルクが得られるようになり、高出力化を実現できる。
また、図4に示されるように、第1乃至第4巻線31〜34を直列に接続して構成された固定子巻線161が3本ずつ星型結線されて2組の3相固定子巻線160を構成し、2組の3相固定子巻線160がそれぞれ整流器12に接続され、さらに2つの整流器12の出力が並列に接続されている。これにより、4ターンの3相固定子巻線160の直流出力を合成して取り出すことができ、低回転域での発電不足を解消することができる。
【0037】
また、コイルエンド群16a、16bは、高さが低く、接合部も少ないので、回転子7の回転により、ファン5により形成された冷却風とコイルエンド群16a、16bとの間の干渉音が小さい。両コイルエンド群16a、16bの形状が略等しく、かつ、ファン5が回転子7の両端部に設けられているので、両コイルエンド群16a、16bがバランス良く冷却され、固定子巻線温度が均一に、かつ、大きく低減される。
ここで、ファン5は必ずしも回転子7の両端に設ける必要はなく、大きな発熱体である固定子巻線や整流器の配設位置を考慮して設ければよい。例えば、最大の発熱体である固定子巻線のコイルエンドは冷却速度の大きいファンの吐出側に配置し、整流器の配置されている側の回転子の端部にファンを配設することがよい。また、車両エンジンに取り付けられる場合、通常プーリがクランクシャフトにベルトを介して連結されるので、ファンの冷却排出風がベルトに影響しないように、ファンを反プーリ側に配設することがよい。なお、回転子の爪状磁極の型部も送風作用があり、冷却手段として用いることができる。
【0038】
また、コイルエンド群16a、16bの内周側を構成する素線30の傾斜方向が平行となっているので、ケース3内の軸方向流れが素線30の傾斜に沿って旋回する。これにより、回転子7の回転によって生じる軸方向流れがコントロールされる。
つまり、コイルエンド群16a、16bの内周側を構成する素線30が回転子7の回転方向成分と冷却風の軸方向流れ成分との合成方向に傾斜していれば、冷却風の軸方向流れが促進される。これにより、回転子コイル13が効率よく冷却されるので、回転子コイル13の温度が下がり、界磁電流が大きくなり、出力向上が望める。この場合、コイルエンド群16a、16bの内周側を構成する素線30が軸方向流れ成分に沿って傾斜しているので、干渉による風騒音も低減される。
一方、コイルエンド群16a、16bの内周側を構成する素線30が回転子7の回転方向成分と冷却風の反軸方向流れ成分との合成方向に傾斜していれば、冷却風の軸方向流れが低減される。これにより、径方向の吐出側の風量が増加し、吐出側に配置されているコイルエンドの冷却性が向上される。
【0039】
また、コイルエンドを含んだ固定子8の軸方向長さがポールコア20、21の軸方向長さより小さくなっているので、小型化が実現できる。また、ファン5が回転子7の両端部に設けられている場合、ファン吐出側にコイルエンドがないので、通風抵抗が著しく小さくなり、風騒音が低減されるとともに、整流器12等の冷却内蔵物の温度上昇を抑えることができる。
【0040】
また、多相固定子巻線16が収容されるスロット数が毎極毎相当たり2であり、毎極毎相当たりのスロットに対応した2つの3相固定子巻線160を有している。これにより、起磁力波形を正弦波形に近くすることができ、高調波成分を低減でき、安定した出力を得ることができる。また、スロット15a数が多くなるので、固定子鉄心15のティースが細くなり、対向する爪状磁極22、23間のティース内の磁気漏れが低減され、出力の脈動を抑制できる。また、スロット15aが多くなるほど、スロット15aに対応してターン部30aも多くなるので、コイルエンド群の放熱性が向上される。
また、スロット15aおよび開口部15bが電気角で30°の等間隔で配列されているので、磁気騒音の加振力の原因である磁気脈動を低減できる。
【0041】
なお、上記実施の形態1では、第1乃至第4巻線31〜34のそれぞれの素線30の端部同士を接合して1ターンの巻線を形成した後、第1乃至第4巻線31〜34を構成する素線30のターン部30aを切断し、その切断端を用いて渡り結線するものとしているが、第1乃至第4巻線31〜34のそれぞれの素線30の端部を用いて渡り結線するようにしてもよい。この場合、接合カ所がさらに削減できるとともに、切断工程も不要となる。
【0042】
実施の形態2.
図13はこの発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を示す平面図である。
図13において、1相分の固定子巻線161Aは、それぞれ1本の素線30からなる第1乃至第4巻線31〜34から構成されている。そして、第1巻線31は、1本の素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から1番目の位置と外周側から2番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第2巻線32は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から2番目の位置と外周側から1番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第3巻線33は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から3番目の位置と外周側から4番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第4巻線34は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から4番目の位置と外周側から3番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。
これにより、第1乃至第4巻線31〜34は、それぞれ、1本の素線30を6スロット毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装されてなる1ターンの巻線を構成している。
【0043】
そして、固定子鉄心15の一端側において、スロット番号の67番の外周側から2番目の位置から延出する第1巻線31の巻線端31bと、スロット番号の61番の外周側から3番目の位置から延出する第3巻線33の巻線端33aとが渡り結線(隣接番地渡り結線)され、ついで、スロット番号の67番の外周側から4番目の位置から延出する第3巻線33の巻線端33bと、スロット番号の61番の外周側から4番目の位置から延出する第4巻線34の巻線端34bとが渡り結線(同一番地渡り結線)され、さらに、スロット番号の61番の外周側から1番目の位置から延出する第1巻線31の巻線端31aと、スロット番号の55番の外周側から1番目の位置から延出する第2巻線32の巻線端32aとが渡り結線(同一番地渡り結線)される。これにより、第1乃至第4巻線31〜34が直列に接続されて、4ターンの1相分の固定子巻線161Aが形成される。
この時、スロット番号の61番の外周側から2番目の位置から延出する第2巻線32の巻線端32bと、スロット番号の55番の外周側から3番目の位置から延出する第4巻線34の巻線端34aとが、固定子巻線161Aの口出し線(O)および中性点(N)となる。
【0044】
以上説明したように、この実施の形態2による1相分の固定子巻線161Aは、第1乃至第4巻線31〜34の渡り結線方法を除いて、上記実施の形態1による固定子巻線161と同様に構成されている。
つまり、この実施の形態2では、2組の巻線アッセンブリ29を固定子鉄心15に径方向に2列に巻装している。そして、2カ所の同一番地渡り結線により各組の巻線アッセンブリ29内の巻線間を結線し、1カ所の隣接番地渡り結線により2組の巻線アッセンブリ29間の巻線間を結線して4ターンの1相分の固定子巻線161Aを形成している。そこで、この実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0045】
実施の形態3.
図14はこの発明の実施の形態3に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を示す平面図である。
図14において、1相分の固定子巻線161Cは、それぞれ1本の素線30からなる第1乃至第6巻線31〜36から構成されている。そして、第1巻線31は、1本の素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から1番目の位置と外周側から2番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第2巻線32は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から2番目の位置と外周側から1番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第3巻線33は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から3番目の位置と外周側から4番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第4巻線34は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から4番目の位置と外周側から3番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第5巻線35は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から5番目の位置と外周側から6番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第6巻線36は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から6番目の位置と外周側から5番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。
これにより、第1乃至第6巻線31〜36は、それぞれ、1本の素線30を6スロット毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装されてなる1ターンの巻線を構成している。
【0046】
そして、固定子鉄心15の一端側において、スロット番号の67番の外周側から2番目の位置から延出する第1巻線31の巻線端31bと、スロット番号の61番の外周側から3番目の位置から延出する第3巻線33の巻線端33aとが渡り結線(隣接番地渡り結線)され、スロット番号の67番の外周側から4番目の位置から延出する第3巻線33の巻線端33bと、スロット番号の61番の外周側から5番目の位置から延出する第5巻線35の巻線端35aとが渡り結線(隣接番地渡り結線)され、ついで、スロット番号の61番の外周側から2番目の位置から延出する第2巻線32の巻線端32bと、スロット番号の55番の外周側から3番目の位置から延出する第4巻線34の巻線端34aとが渡り結線(隣接番地渡り結線)され、スロット番号の61番の外周側から4番目の位置から延出する第4巻線34の巻線端34bと、スロット番号の55番の外周側から5番目の位置から延出する第6巻線36の巻線端36aとが渡り結線(隣接番地渡り結線)され、さらに、スロット番号の67番の外周側から6番目の位置から延出する第5巻線35の巻線端35aと、スロット番号の61番の外周側から6番目の位置から延出する第6巻線36の巻線端36aとが渡り結線(同一番地渡り結線)される。これにより、第1乃至第6巻線31〜36が直列に接続されて、6ターンの1相分の固定子巻線161Cが形成される。
この時、スロット番号の61番の外周側から1番目の位置から延出する第1巻線31の巻線端31aと、スロット番号の55番の外周側から1番目の位置から延出する第2巻線32の巻線端32aとが、固定子巻線161Cの口出し線(O)および中性点(N)となる。
【0047】
以上説明したように、この実施の形態3による1相分の固定子巻線161Cは、ターン数および第1乃至第6巻線31〜36の渡り結線方法を除いて、上記実施の形態1による固定子巻線161と同様に構成されている。
つまり、この実施の形態3では、3組の巻線アッセンブリ29を固定子鉄心15に径方向に3列に巻装している。そして、1カ所の同一番地渡り結線により1組の巻線アッセンブリ29内の巻線間を結線し、4カ所の隣接番地渡り結線により隣接する巻線アッセンブリ29間の巻線間を結線して6ターンの1相分の固定子巻線161Cを形成している。そこで、この実施の形態3においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0048】
実施の形態4.
図15はこの発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機における固定子を示す斜視図である。なお、図15では口出し線および渡り結線等が省略されている。
【0049】
図15において、固定子8Aは、固定子鉄心15と、固定子鉄心15に巻装された多相固定子巻線16Aと、各スロット15a内に装着されて多相固定子巻線16Aと固定子鉄心15とを電気的に絶縁するインシュレータ19とを備えている。そして、多相固定子巻線群16Aは、1本の素線40(400)が、固定子鉄心15の端面側のスロット15a外で折り返されて、所定スロット数毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように波巻きされて巻装された巻線を複数備えている。この実施の形態4においても、固定子鉄心15には、回転子の磁極数(16)に対応して、3相固定子巻線を2組収容するように、96本のスロット15aが等間隔に形成されている。
なお、多相固定子巻線16Aは、素線40により形成された巻線が、素線400により形成された巻線に内包されるように巻装されて構成されているので、図15では、素線40は素線400のターン部400aに覆われて見えていない。
【0050】
ついで、1相分の固定子巻線162の巻線構造について図16を参照しつつ説明する。
1相分の固定子巻線162は、それぞれ1本の素線400からなる第1および第2巻線41、42とそれぞれ1本の素線40からなる第3および第4巻線43、44とから構成されている。そして、素線40、400は、同一のもので、例えば絶縁被覆された長方形断面を有する銅線材が用いられる。
そして、第1巻線41は、1本の素線400を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から1番目の位置と外周側から4番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第2巻線42は、素線400を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から4番目の位置と外周側から1番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第3巻線43は、素線40を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から2番目の位置と外周側から3番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。第4巻線44は、素線40を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の外周側から3番目の位置と外周側から2番目の位置とを交互に採るように波巻きして構成されている。
これにより、第1乃至第4巻線41〜44は、それぞれ、1本の素線400(40)を6スロット毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装されてなる1ターンの巻線を構成している。そして、各スロット15a内には、素線400、40が長方形断面の長手方向を径方向に揃えて径方向に1列に4本並んで配列されている。
【0051】
そして、固定子鉄心15の一端側において、スロット番号の67番の外周側から3番目の位置から延出する第3巻線43の巻線端43bと、スロット番号の61番の外周側から4番目の位置から延出する第2巻線42の巻線端42aとが渡り結線(隣接番地渡り結線)され、ついで、スロット番号の61番の外周側から3番目の位置から延出する第4巻線44の巻線端44bと、スロット番号の55番の外周側から4番目の位置から延出する第1巻線41の巻線端41aとが渡り結線(隣接番地渡り結線)され、さらに、スロット番号の61番の外周側から2番目の位置から延出する第3巻線43の巻線端43aと、スロット番号の55番の外周側から2番目の位置から延出する第4巻線44の巻線端44aとが渡り結線(同一番地渡り結線)される。これにより、第1乃至第4巻線41〜44が直列に接続されて、4ターンの1相分の固定子巻線162が形成される。
この時、スロット番号の67番の外周側から1番目の位置から延出する第2巻線42の巻線端42bと、スロット番号の61番の外周側から1番目の位置から延出する第1巻線41の巻線端41bとが、固定子巻線162の口出し線(O)および中性点(N)となる。
【0052】
同様にして、素線40、400が巻装されるスロット15aを1つずつずらして6相分の固定子巻線162が形成されている。そして、上記実施の形態1と同様に、図4に示されるように、固定子巻線162が3相分ずつ星型結線されて2組の3相固定子巻線を形成し、各3相固定子巻線がそれぞれ整流器12に接続されている。各整流器12の直流出力は並列に接続されて合成される。
【0053】
ここで、第1乃至第4巻線41〜44を構成するそれぞれの素線40、400は、1つのスロット15aから固定子鉄心15の端面側に延出し、折り返されて6スロット離れたスロット15aに入るように波巻きに巻装されている。それぞれの素線40、400は、6スロット毎に、スロット深さ方向(径方向)に関して、内層と外相とを交互に採るように巻装されている。そして、第1巻線41と第2巻線42とは電気角で180°ずれて反転巻装されている。同様に、第3巻線43と第4巻線44とは電気角で180°ずれて反転巻装されている。
【0054】
ついで、固定子8Aの組立方法について図17乃至図22を参照しつつ具体的に説明する。
まず、12本の長尺の素線40を折り曲げ加工して、図17に示されるように、第1の巻線アッセンブリ45が作製される。各素線40は、図18に示されるように、ターン部40aで連結された直線部40bが6スロットピッチ(6P)で配列された平面状パターンに折り曲げ形成されている。そして、隣り合う直線部40bが、ターン部40aにより、素線40の幅(W)分ずらされている。
第1の巻線アッセンブリ45は、このようなパターンに形成された2本の素線40を図19に示されるように6スロットピッチ(6P)ずらして直線部40bを重ねて配列された素線対が1スロットピッチずつずらして6対配列されて構成されている。そして、素線40のターン部40aが第1の巻線アッセンブリ45の両側部に整列されて配列されている。
【0055】
ついで、図示していないが、12本の長尺の素線400を折り曲げ加工して、第2の巻線アッセンブリが作製される。各素線400は、図20に示されるように、ターン部400aで連結された直線部400bが6スロットピッチ(6P)で配列された平面状パターンに折り曲げ形成されている。そして、隣り合う直線部400bが、ターン部400aにより、素線400の幅のほぼ2倍(2W)分ずらされている。また、ターン部400aの内径が第1の巻線アッセンブリ45を構成する素線40のターン部40aの外径(D)と略同等に形成されている。第2の巻線アッセンブリは、このようなパターンに形成された2本の素線400を図21に示されるように6スロットピッチ(6P)ずらして直線部400bを重ねて配列された素線対が1スロットピッチずつずらして6対配列されて構成されている。そして、素線400のターン部400aが第2の巻線アッセンブリの両側部に整列されて配列されている。
なお、素線400は、素線40と同じものである。そして、第2の巻線アッセンブリは、ターン部400aの径および直線部400bのずれ量が異なる点を除いて、第1の巻線アッセンブリ45と同様に構成されている。
【0056】
ついで、このように構成された第1の巻線アッセンブリ45を第2の巻線アッセンブリ内に挿入し、2重の巻線アッセンブリ群を得る。この時、2重の巻線アッセンブリ群においては、図22に示されるように、ターン部400aはターン部40aを取り囲むように配置され、直線部400bは2本の直線部40bの両側に配置されている。なお、図22は1相分の固定子巻線162を構成する第1乃至第4巻線41〜44の要部を示している。
【0057】
ついで、図示していないが、インシュレータ19が鉄心37のスロット37aに装着され、2重の巻線アッセンブリ群の各直線部40b、400bを各スロット37a内に押し入れて、2重の巻線アッセンブリ群が鉄心37に装着される。これにより、素線40、400の直線部40b、400bは、インシュレータ19により鉄心37と絶縁されてスロット37a内に径方向に4本並んで収納されている。
その後、鉄心37を丸め、その端面同士を当接させてレーザ溶接し、円筒状の鉄心38を得る。そして、図16に示される結線方法に基づいて、各素線40、400の端部同士を結線して多相固定子巻線16Aを形成する。その後、鉄心38がSPCC材を積層してなる円筒状の外周鉄心39に挿入され、焼きバメして一体化して、図15に示されるような固定子8Aを得る。
【0058】
このように構成された固定子8Aでは、第1乃至第4巻線41〜44を構成するそれぞれの素線40、400は、1つのスロット15aから固定子鉄心15の端面側に延出し、折り返されて6スロット離れたスロット15aに入るように波巻きに巻装されている。そして、固定子鉄心15の端面側に延出して折り返された素線40、400のターン部40a、400aがコイルエンドを形成している。その結果、固定子鉄心15の両端において、ターン部400aがターン部40aを取り囲むようにして、ターン部40a、400aが周方向に整然と配列されてコイルエンド群16a、16bを形成している。
【0059】
このように、この実施の形態4によれば、多相固定子巻線16Aは、1本の素線30が、固定子鉄心15の端面側のスロット15a外で折り返されて、6スロット毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装されてなる複数の第1乃至第4巻線41〜44を有している。そして、第1巻線41(第3巻線43)を1スロットピッチで6本配列して構成された第1巻線群と、第1巻線41(第3巻線43)に対して電気角で180°ずれて反転巻装された第2巻線42(第4巻線44)を1スロットピッチで6本配列して構成された第2巻線群との対で構成された第1および第2の巻線アッセンブリ45を用いている。そして、第2の巻線アッセンブリが第1の巻線アッセンブリ45を内包するようにして固定子鉄心15に巻装されている。
【0060】
そこで、第1および第2の巻線アッセンブリを2重にして固定子鉄心15に巻装することで、6相分の固定子巻線162が固定子鉄心15に巻装されることになり、組立性を著しく向上させることができる。
また、第1および第2の巻線アッセンブリ間の巻線結線が2カ所の隣接番地渡り結線により行われ、第2の巻線アッセンブリ内の巻線結線が1カ所の同一番地渡り結線により行われているので、渡り結線部が極めて単純な構造となる。それにより、渡り結線のための素線40、400の引き回しや曲げ等の作業が著しく軽減され、結線作業性が大幅に向上される。
また、1相分の固定子巻線162における渡り結線部が6スロット離れて対をなすスロット対の隣接する2組の対に集中しているので、結線作業性が大幅に向上される。
また、この実施の形態4によれば、ターン部40a、400aが重なって2層となって周方向に配列されているので、コイルエンド高さは素線40の1本分高くなるが、周方向におけるターン部40a、400a間距離が大きくなり、素線間の短絡事故を防止できる。
また、多相固定子巻線のターン数を増やす場合、連続線からなる巻線アッセンブリを高さ方向に重ねて巻装することで容易に対応することができる。
【0061】
実施の形態5.
図23はこの発明の実施の形態5に係る車両用交流発電機における固定子巻線の結線方法を説明する平面図である。
この実施の形態5では、上記実施の形態4と同様に、第2の巻線アッセンブリが第1の巻線アッセンブリ45を内包するように固定子鉄心15に巻装されている。
そして、固定子鉄心15の一端側において、スロット番号の67番の外周側から1番目の位置から延出する第2巻線42の巻線端42bと、スロット番号の61番の外周側から1番目の位置から延出する第1巻線41の巻線端41bとが渡り結線(同一番地渡り結線)され、ついで、スロット番号の61番の外周側から2番目の位置から延出する第3巻線43の巻線端43aと、スロット番号の55番の外周側から2番目の位置から延出する第4巻線44の巻線端44aとが渡り結線(同一番地渡り結線)され、さらに、スロット番号の61番の外周側から3番目の位置から延出する第4巻線44の巻線端44bと、スロット番号の55番の外周側から4番目の位置から延出する第1巻線41の巻線端41aとが渡り結線(隣接番地渡り結線)される。これにより、第1乃至第4巻線41〜44が直列に接続されて、4ターンの1相分の固定子巻線162Aが形成される。
この時、スロット番号の67番の外周側から3番目の位置から延出する第3巻線43の巻線端43bと、スロット番号の61番の外周側から4番目の位置から延出する第2巻線42の巻線端42aとが、固定子巻線162Aの口出し線(O)および中性点(N)となる。
【0062】
以上説明したように、この実施の形態5による1相分の固定子巻線162Aは、第1乃至第4巻線41〜44の渡り結線方法を除いて、上記実施の形態4と同様に構成されている。
つまり、この実施の形態5では、2カ所の同一番地渡り結線により各組の巻線アッセンブリ内の巻線間を結線し、1カ所の隣接番地渡り結線により2組の巻線アッセンブリ間の巻線間を結線して4ターンの1相分の固定子巻線161Aを形成している。そこで、この実施の形態5においても、上記実施の形態4と同様の効果が得られる。
【0063】
なお、上記各実施の形態では、ファン5がケース3内に配設されているものとしているが、ファンは車両用交流発電機の外に回転子の回転と伴って回転するように設けてもよい。
また、上記各実施の形態では、6ターン、4ターンおよび2ターンのものについて説明しているが、更に低速出力が要求される場合は、8ターンとしても良い。この場合でも、巻線アッセンブリ29を径方向に4列に並べて固定子鉄心15に挿入したり、巻線アッセンブリ45を4重に重ねて固定子鉄心15に挿入するだけで対応できる。むろん、奇数のターン数でもよい。
また、上記各実施の形態では、全節巻き発電機に適用するものとして説明しているが、短節巻(全節巻きでない)発電機に本構造を適用しても良い。
また、上記各実施の形態では、回転子コイルをブラケットに固定し、エアギャップより回転界磁を供給するタイプの車両用交流発電機にも適用できる。
また、上記各実施の形態では、16極の磁極数に対して、固定子のスロット数を96スロットとしたが、12極の磁極数に対しては、3相で72個のスロット、20極の磁極数に対しては120のスロットを採用してもよい。また、毎極毎相1の場合は、16極の磁極数でスロット数48、12極の磁極数でスロット数36、20極の磁極数でスロット数60でも良い。
また、上記各実施の形態では、固定子鉄心の外周鉄心をSPCC材の積層体として構成しているが、外装鉄心は一体物であるパイプ形状のものを用いても良い。
また、直方体の鉄心のスロットに巻線群を挿入した後、径方向からティース先端を加工治具を押し当て塑性変形させて、スロットの開口部を狭めても良い。
【0064】
また、上記各実施の形態では、爪状磁極を持つランデル型の回転子を用いるものとしているが、突極型の磁極を持つセーレント型の回転子を用いても、同様の効果が得られる。
また、上記各実施の形態では、ファン5として遠心ファンを用いるものとしているが、軸流成分を生じる軸流ファンや斜流ファンであっても、遠心成分を有するので、軸流ファンや斜流ファンを用いても、同様の効果が得られる。
また、上記各実施の形態では、整流器が反プーリ側に配置され、ファンも回転子に対して同じ側に配置されているが、整流器の温度に特に問題がない場合は、ファンをプーリ側に配置しても良い。固定子のコイルエンドの高さが低いために、ファンの通風路における吐出側の通風抵抗は著しく減少しているので、全体風量は増える。従って、整流器やプーリとファンとの位置関係は、エンジンの取り付け位置や、風騒音、磁気騒音、各部の温度状態を鑑みて、最適な位置を選択すればよい。
また、上記各実施の形態では、素線を離間させて巻線を形成するようにしているが、素線は絶縁被膜を有しているので、素線を完全に密接させるように巻線を成形してもよい。この構成によれば、コイルエンドをさらに高密度化でき、寸法をさらに小さくできる。また、素線間の隙間を小さくすることによって、凹凸が少なくなるので、風騒音をさらに低減できる。また、素線間の接触により、巻線の剛性が高くなるので、振動による素線間や鉄心との短絡、さらには磁気騒音を低減できる。また、素線間の熱伝導性が良くなるので、素線の温度が均一となり、さらに固定子の温度が低減される。
また、上記各実施の形態では、素線群の固定子鉄心への挿入時に、予め鉄心側にインシュレータを挿入しているが、素線群のスロット収容部にインシュレータを予め巻き付けて、鉄心に挿入するようにしてもよい。また、長尺のインシュレータを直方体の鉄心上に載置し、その上から素線群を挿入するようにして、インシュレータも同時にスロット内に収容するようにしてもよい。この場合、後工程で、突出したインシュレータを一括除去すればよい。さらに、予め、素線群のスロット収容部を絶縁樹脂でモールドしておいても良い。この場合、量産性が格段に向上する。
また、上記各実施の形態では、直方体の鉄心を丸めて作製した環状の鉄心を外装鉄心に挿入した後、焼きバメにより一体化するものとしているが、直方体の鉄心を丸めて作製した環状の鉄心を外装鉄心に圧入して一体化するようにしてもよい。
【0065】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0066】
この発明によれば、軸方向に延びるスロットが周方向に所定ピッチで複数形成された積層鉄心からなり、端面同士を当接、溶接して円筒状に構成された固定子鉄心と、連続線からなる素線が、上記固定子鉄心の端面側の上記スロット外で折り返されて、所定スロット数毎に上記スロット内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装されてなる複数の巻線からなる多相固定子巻線とを有し、上記複数の巻線は、複数本の上記素線を同時に折り畳んで形成された少なくとも2組の巻線アッセンブリで構成され、上記巻線アッセンブリは、直線部がターン部により連結されて所定スロットピッチで配列され、かつ、隣り合う該直線部が該ターン部によりスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るようにずらされたパターンに形成された2本の上記素線を、互いに上記所定スロットピッチずらして上記直線部を重ねて配列してなる素線対が、1スロットピッチずつずらされて上記所定スロット数と同数対配列されて構成されているので、コイルエンドにおける接合カ所が著しく低減され、耐腐食性および絶縁性が高められるとともに、複数の巻線を巻線アッセンブリとして一括して固定子鉄心に巻装でき、組立性および生産性が高められる交流発電機の固定子が得られる。
【0067】
また、2組の上記巻線アッセンブリが上記固定子鉄心に径方向に2列に並んで巻装され、上記多相固定子巻線を構成する各相の固定子巻線が、同一スロット群に巻装された上記第1および第2巻線を直列に結線して4ターンの巻線に構成されているので、各相4ターンの固定子巻線からなる多相固定子巻線を簡易に構成することができる。
【0068】
また、3組の上記巻線アッセンブリが上記固定子鉄心に径方向に3列に並んで巻装され、上記多相固定子巻線を構成する各相の固定子巻線が、同一スロット群に巻装された上記第1および第2巻線を直列に結線して6ターンの巻線に構成されているので、各相6ターンの固定子巻線からなる多相固定子巻線を簡易に構成することができる。
【0069】
また、2組の上記巻線アッセンブリが一方の巻線アッセンブリで他方の巻線アッセンブリを内包するように上記固定子鉄心に巻装され、上記多相固定子巻線を構成する各相の固定子巻線が、同一スロット群に巻装された上記第1および第2巻線を直列に結線して4ターンの巻線に構成されているので、各相4ターンの固定子巻線からなる多相固定子巻線を簡易に構成することができる。
【0070】
また、上記各相の固定子巻線は、2組の上記巻線アッセンブリ間の上記第1および第2巻線の巻線端が2カ所の隣接番地渡り結線により結線され、かつ、一方の組の上記巻線アッセンブリ内の上記第1および第2巻線の巻線端が1カ所の同一番地渡り結線により結線されて4ターンの巻線に構成されているので、渡り結線部が単純な構造となり、結線作業性を向上させることができる。
【0071】
また、上記各相の固定子巻線は、各組の上記巻線アッセンブリ内の上記第1および第2巻線の巻線端がそれぞれ1カ所の同一番地渡り結線により結線され、かつ、2組の上記巻線アッセンブリ間の上記第1および第2巻線の巻線端が1カ所の隣接番地渡り結線により結線されて4ターンの巻線に構成されているので、渡り結線部が単純な構造となり、結線作業性を向上させることができる。
【0072】
また、上記素線の断面形状が略扁平形状であり、上記直線部が断面長手方向を径方向に一致させて1列に並んで上記スロットに収納されているので、スロット内の素線の占積率が高められるとともに、コイルエンド群内への冷却風の通風が可能となり、径方向への通風抵抗が低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の構成を示す断面図である。
【図2】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の固定子を示す斜視図である。
【図3】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明する平面図である。
【図4】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の回路図である。
【図5】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アッセンブリの製造工程を説明する図である。
【図6】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アッセンブリの製造工程を説明する図である。
【図7】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アッセンブリを示す図である。
【図8】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する素線の要部を示す斜視図である。
【図9】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する素線の配列を説明する図である。
【図10】 この車両用交流発電機の適用される固定子鉄心の構造を説明する図である。
【図11】 この車両用交流発電機の適用される固定子の製造工程を説明する工程断面図である。
【図12】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の適用される固定子の製造工程を説明する工程断面図である。
【図13】 この発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明する平面図である。
【図14】 この発明の実施の形態3に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明する平面図である。
【図15】 この発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機における固定子を示す斜視図である。
【図16】 この発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明する平面図である。
【図17】 この発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する第1の巻線アッセンブリを示す平面図である。
【図18】 第1の巻線アッセンブリを構成する素線の成形形状を説明する斜視図である。
【図19】 第1の巻線アッセンブリにおける素線の配列状態を説明する斜視図である。
【図20】 この発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する第2の巻線アッセンブリを構成する素線の成形形状を説明する斜視図である。
【図21】 第2の巻線アッセンブリにおける素線の配列状態を説明する斜視図である。
【図22】 この発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線における素線の配列状態を説明する斜視図である。
【図23】 この発明の実施の形態5に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明する平面図である。
【図24】 従来の車両用交流発電機の固定子の要部を示す側面図である。
【図25】 従来の車両用交流発電機の固定子に適用される導体セグメントを示す斜視図である。
【図26】 従来の車両用交流発電機の固定子の要部をフロント側およびリヤ側から見た斜視図である。
【図27】 従来の車両用交流発電機の固定子の要部をフロント側およびリヤ側から見た斜視図である。
【符号の説明】
8、8A 固定子、15 固定子鉄心、15a スロット、16、16A 多相固定子巻線、29 巻線アッセンブリ、30、40、400 素線、31、41 第1巻線、32、42 第2巻線、33、43 第3巻線、34、44 第4巻線、35 第5巻線、36 第6巻線、45 第1の巻線アッセンブリ、160 3相固定子巻線、161、161A、161C、162、162A 1相分の固定子巻線。
Claims (7)
- 軸方向に延びるスロットが周方向に所定ピッチで複数形成された積層鉄心からなり、端面同士を当接、溶接して円筒状に構成された固定子鉄心と、連続線からなる素線が、上記固定子鉄心の端面側の上記スロット外で折り返されて、所定スロット数毎に上記スロット内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装されてなる複数の巻線からなる多相固定子巻線とを有し、
上記複数の巻線は、複数本の上記素線を同時に折り畳んで形成された少なくとも2組の巻線アッセンブリで構成され、
上記巻線アッセンブリは、直線部がターン部により連結されて所定スロットピッチで配列され、かつ、隣り合う該直線部が該ターン部によりスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るようにずらされたパターンに形成された2本の上記素線を、互いに上記所定スロットピッチずらして上記直線部を重ねて配列してなる素線対が、1スロットピッチずつずらされて上記所定スロット数と同数対配列されて構成されていることを特徴とする交流発電機の固定子。 - 2組の上記巻線アッセンブリが上記固定子鉄心に径方向に2列に並んで巻装され、上記多相固定子巻線を構成する各相の固定子巻線が、同一スロット群に巻装された上記第1および第2巻線を直列に結線して4ターンの巻線に構成されていることを特徴とする請求項1記載の交流発電機の固定子。
- 3組の上記巻線アッセンブリが上記固定子鉄心に径方向に3列に並んで巻装され、上記多相固定子巻線を構成する各相の固定子巻線が、同一スロット群に巻装された上記第1および第2巻線を直列に結線して6ターンの巻線に構成されていることを特徴とする請求項1記載の交流発電機の固定子。
- 2組の上記巻線アッセンブリが一方の巻線アッセンブリで他方の巻線アッセンブリを内包するように上記固定子鉄心に巻装され、上記多相固定子巻線を構成する各相の固定子巻線が、同一スロット群に巻装された上記第1および第2巻線を直列に結線して4ターンの巻線に構成されていることを特徴とする請求項1記載の交流発電機の固定子。
- 上記各相の固定子巻線は、2組の上記巻線アッセンブリ間の上記第1および第2巻線の巻線端が2カ所の隣接番地渡り結線により結線され、かつ、一方の組の上記巻線アッセンブリ内の上記第1および第2巻線の巻線端が1カ所の同一番地渡り結線により結線されて4ターンの巻線に構成されていることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の交流発電機の固定子。
- 上記各相の固定子巻線は、各組の上記巻線アッセンブリ内の上記第1および第2巻線の巻線端がそれぞれ1カ所の同一番地渡り結線により結線され、かつ、2組の上記巻線アッセンブリ間の上記第1および第2巻線の巻線端が1カ所の隣接番地渡り結線により結線されて4ターンの巻線に構成されていることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の交流発電機の固定子。
- 上記素線の断面形状が略扁平形状であり、上記直線部が断面長手方向を径方向に一致させて1列に並んで上記スロットに収納されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の交流発電機の固定子。
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