JP3644919B2 - 交流発電機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば内燃機関により駆動される交流発電機に関し、特に、乗用車、トラック等の乗り物に搭載される車両用交流発電機の固定子構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図19は従来の車両用交流発電機を示す断面図、図20は従来の車両用交流発電機の固定子を示す斜視図である。
図19および図20において、車両用交流発電機は、ランドル型の回転子7がアルミニウム製のフロントブラケット1およびリヤブラケット2から構成されたケース3内にシャフト6を介して回転自在に装着され、固定子50が回転子7の外周側を覆うようにケース3の内壁面に固着されて構成されている。
シャフト6は、フロントブラケット1およびリヤブラケット2に回転可能に支持されている。このシャフト6の一端にはプーリ4が固着され、エンジンの回転トルクをベルト(図示せず)を介してシャフト6に伝達できるようになっている。回転子7に電流を供給するスリップリング9がシャフト6の他端部に固着され、一対のブラシ10がこのスリップリング9に摺接するようにケース3内に配設されたブラシホルダ11に収納されている。固定子50で生じた交流電圧の大きさを調整するレギュレータ18がブラシホルダ11に嵌着されたヒートシク17に接着されている。固定子50に電気的に接続され、固定子50で生じた交流を直流に整流する整流器12がケース3内に装着されている。
【0003】
回転子7は、電流を流して磁束を発生する回転子コイル13と、この回転子コイル13を覆うように設けられ、回転子コイル13で発生された磁束によって磁極が形成される一対のポールコア20、21とから構成される。一対のポールコア20、21は、鉄製で、それぞれ6つの爪形状の爪状磁極22、23が外周縁に周方向に等角ピッチで突設され、爪状磁極22、23をかみ合わせるように対向してシャフト6に固着されている。さらに、ファン5が回転子7の軸方向の両端に固着されている。
【0004】
固定子50は、軸方向に延びるスロット51aが周方向に所定ピッチで複数形成された円筒状の固定子鉄心51と、固定子鉄心51に巻装された固定子巻線52と、固定子巻線52のフロント側およびリヤ側のコイルエンド52a、52bをモールドしたエポキシ樹脂等からなる絶縁性樹脂25と、各スロット51a内に装着されて固定子巻線52と固定子鉄心51とを電気的に絶縁するインシュレータ(図示せず)とを備えている。ここでは、固定子鉄心51には、回転子7の磁極数(12)に対応して、3相交流巻線を1組収容するように、36箇所のスロット51aが等間隔に形成されている。
【0005】
また、吸気孔1a、2aがフロントブラケット1およびリヤブラケット2の軸方向の端面に設けられ、排気孔1b、2bがフロントブラケット1およびリヤブラケット2の外周両肩部に固定子巻線52のフロント側およびリヤ側のコイルエンド52a、52bの径方向外側に対向して設けられている。
【0006】
つぎに、従来の固定子50の製造方法について図21乃至図24を参照しつつ説明する。
まず、磁性材料であるSPCC材からなる帯状薄板から凹凸を有する帯状体を作製する。そして、この帯状体を所定枚積層し、その外周部をレーザ溶接して、図21に示される直方体の積層鉄心55を作製する。この積層鉄心55の一側には、36個のスロット55aが形成されている。
また、絶縁被覆された円形断面の銅線材からなる1本の素線56を3スロットピッチで波巻きに所定回数巻回して全体が平坦な形状の固定子巻線群57Aを作製する。この固定子巻線群57Aを構成する素線56の巻き始め端および巻き終わり端がそれぞれ口出し線56aおよび中性点リード線56bとなる。さらに、それぞれ1本の素線56を同様に巻回して固定子巻線群57B、57Cを作製する。
その後、3本の固定子巻線群57A、57B、57Cを、図22に示されるように、1スロットピッチずつずらして重ね合わせ、それぞれ3スロット毎のスロット55aに挿入して積層鉄心55に装着する。これにより、図23に示されるように、3本の固定子巻線群57A、57B、57Cが積層鉄心55に装着される。
ついで、積層鉄心55を成形装置(図示せず)により円筒状に曲げる。そして、積層鉄心55の両端面同士を突き合わしてレーザ溶接し、円筒状の固定子鉄心51を得る。これにより、図24に示されるように、3本の固定子巻線群57A、57B、57Cが固定子鉄心51に巻装された固定子を得る。
さらに、固定子巻線群57A、57B、57Cのコイルエンドを絶縁性樹脂25でモールドし、図20に示される固定子50が得られる。
【0007】
このように構成された固定子50では、固定子巻線群57A、57B、57Cを構成する各素線56の中性点リード線56bを結線して、3相交流巻線である固定子巻線52が得られる。これらの固定子巻線群57A、57B、57Cはそれぞれ120度の位相差を有し、3相交流巻線のa相、b相、c相の巻線に相当する。そして、固定子巻線群57A、57B、57Cを構成する各素線56の口出し線56aが整流器12に接続される。
【0008】
このように構成された車両用交流発電機では、電流がバッテリ(図示せず)からブラシ10およびスリップリング9を介して回転子コイル13に供給され、磁束が発生される。この磁束により、一方のポールコア20の爪状磁極22がN極に着磁され、他方のポールコア21の爪状磁極23がS極に着磁される。一方、エンジンの回転トルクがベルトおよびプーリ4を介してシャフト6に伝達され、回転子7が回転される。そこで、固定子巻線52に回転磁界が与えられ、固定子巻線52に起電力が発生する。この交流の起電力が整流器12を通って直流に整流されるとともに、その大きさがレギュレータ18により調整され、バッテリに充電される。
【0009】
そして、リヤ側においては、ファン5の回転により、外気が整流器12のヒートシンクおよびレギュレータ18のヒートシンク17にそれぞれ対向して設けられた吸気孔2aを通じて吸い込まれ、シャフト6の軸に沿って流れて整流器12およびレギュレータ18を冷却し、その後ファン5により遠心方向に曲げられて固定子巻線52のリヤ側のコイルエンド52bを冷却し、排気孔2bより外部に排出される。一方、フロント側においては、ファン5の回転により、外気が吸気孔1aから軸方向に吸い込まれ、その後ファン5により遠心方向に曲げられて固定子巻線52のフロント側のコイルエンド52aを冷却し、排気孔1bより外部に排出される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来の固定子50では、固定子巻線52を構成する固定子巻線群57A、57B、57Cがそれぞれ1本の素線56を3スロットピッチで波巻きに所定回数巻回して作製され、径方向に外層、中間層および内層を構成するように互いに1スロットずれて3スロット毎のスロット51aに巻装されていた。
そこで、コイルエンドを構成する素線56のターン部が周方向に重なって整列していないので、絶縁性樹脂25でコイルエンドを全周にわたって均一にモールドすることが困難となり、絶縁性樹脂25が周方向にも、軸方向にも偏った形状となっていた。これにより、絶縁性樹脂25を含んだコイルエンド部の放熱性が不均一となり、固定子巻線52の冷却性が悪化し、固定子巻線52の温度上昇を抑えることができなくなるという課題があった。
また、コイルエンドを構成する素線56のターン部が周方向に重なって整列していないので、素線56を高密度に巻装できず、高出力が得られないという課題もあった。
また、内層および外層を構成する固定子巻線群57A、57Cの周方向に隣接する素線56のターン部同士が互いに径方向にずれており、絶縁性樹脂25の内周面および外周面が、図20に示されるように、周方向に凹凸を有する面形状となっていた。これにより、通風抵抗が増大し、かつ、回転子7と絶縁性樹脂25の内周面との間で干渉音が発生して、風騒音が増大してしまうという課題もあった。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するために、長尺の素線が、固定子鉄心の端面側のスロット外で折り返されて、所定スロット数毎にスロット内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装されて形成された複数の巻線により固定子巻線を構成し、かつ、コイルエンドを覆うように設けられた絶縁性樹脂の回転子対向面およびブラケット対向面の少なくとも一面を滑らかな面に形成して、固定子巻線の温度上昇を抑えるとともに、高出力、低騒音を実現できる車両用に適用できる交流発電機を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る交流発電機は、回転周方向に沿ってNS極を形成する回転子と、該回転子と対向配置された固定子鉄心およびこの固定子鉄心に装着された固定子巻線を有する固定子、上記回転子と上記固定子とを支持するブラケットと、上記回転子の回転に連動して上記ブラケット内に冷却風を通風させて上記固定子巻線を冷却する冷却手段とを備えた交流発電機において、上記固定子鉄心は、軸方向に延びるスロットが周方向に所定ピッチで複数形成された積層鉄心を備え、上記固定子巻線は、連続線からなる素線が、上記固定子鉄心の両端面側の上記スロット外で折り返されて、所定スロット数毎に上記スロット内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装された巻線を複数有し、上記複数の巻線は、複数本の上記素線を同時に折り畳んで形成された少なくとも1組の巻線アセンブリで構成され、上記巻線アセンブリは、直線部がターン部により連結されて所定スロットピッチで配列され、かつ、隣り合う該直線部が該ターン部によりスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るようにずらされたパターンに形成された2本の上記素線を、互いに上記所定スロットピッチずらして上記直線部を重ねて配列してなる素線対が、1スロットピッチずつずらされて上記所定スロット数と同数対配列され、素線端部がそれぞれ上記巻線アセンブリの両端の両側に延出され、かつ、重ねられた上記直線部の対が1スロットピッチで上記スロットの全数と同数対配列されて構成され、上記固定子鉄心の両端面側の上記スロット外で折り返された上記素線のターン部が周方向に並んでコイルエンドを構成し、絶縁性樹脂が、上記コイルエンドの全体を覆うように設けられ、上記絶縁性樹脂の回転子対向面およびブラケット対向面の少なくとも一方が滑らかな面に形成されているものである。
【0013】
また、上記絶縁性樹脂の回転子対向面が滑らかな面に形成され、上記絶縁性樹脂のブラケット対向面が上記ブラケットの内壁面に密接されているものである。
【0014】
また、上記絶縁性樹脂の回転子対向面において、周方向に並んだ上記ターン部の上記回転子に対向する面の少なくとも一部が上記絶縁性樹脂と同一面位置となるように露出しているものである。
【0015】
また、上記素線が上記スロットのそれぞれにスロット深さ方向に2n本ずつ配列され、上記素線のターン部が周方向にn列に並んで配列されているものである。
【0016】
また、上記固定子鉄心の少なくとも一方の端部のコイルエンドを構成する上記ターン部が、周方向に略同一形状に形成されているものである。
【0017】
また、上記固定子鉄心の少なくとも一方の端部のコイルエンドにおいて、周方向に隣り合う上記ターン部間の空間が略同一に形成されているものである。
【0018】
また、上記スロットの開口部の開口寸法が、上記素線のスロット幅方向寸法より小さいものである。
【0019】 上記素線の上記スロット内における断面形状が上記スロット形状に沿った略矩形形状であるものである。
【0020】
また、上記素線の断面形状が略扁平形状であり、上記直線部が断面長手方向を径方向に一致させて1列に並んで上記スロット内に収納されているものである。
【0021】
また、上記固定子巻線の少なくとも一方の上記コイルエンドが、上記冷却手段の上記ブラケット内に形成される冷却風の流通方向の下流側に該冷却手段に隣接して配置されているものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図について説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の構成を示す断面図、図2はこの車両用交流発電機の固定子を示す斜視図、図3はこの車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明する平面図、図4はこの車両用交流発電機の固定子における固定子巻線の巻装状態を説明する斜視図、図5はこの車両用交流発電機の回路図、図6および図7はこの車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アセンブリの製造工程を説明する図である。図8はこの車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する内層側の巻線アセンブリを示す図であり、図8の(a)はその側面図、図8の(b)はその平面図である。図9はこの車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する外層側の巻線アセンブリを示す図であり、図9の(a)はその側面図、図9の(b)はその平面図である。図10はこの車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する素線の要部を示す斜視図、図11はこの車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する素線の配列を説明する図である。図12はこの車両用交流発電機の固定子鉄心を構成する積層鉄心を示す斜視図、図13はこの車両用交流発電機に適用される固定子の製造工程を説明する工程断面図、図14はこの車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アセンブリの積層鉄心への装着状態を示す平面図である。なお、図4では口出し線、中性点リード線および渡り結線が省略されている。
【0023】
図1および図2において、回転子7を構成する一対のポールコア20、21は、鉄製で、それぞれ8つの爪形状の爪状磁極22、23が外周縁に周方向に等角ピッチで突設され、爪状磁極22、23をかみ合わせるように対向してシャフト6に固着されている。また、冷却手段としてのファン5が回転子7の軸方向の両端に固着されている。
固定子8は、軸方向に延びるスロット15aが周方向に所定ピッチで複数形成された円筒状の固定子鉄心15と、固定子鉄心15に巻装された固定子巻線16と、固定子巻線16のフロント側およびリヤ側のコイルエンド16a、16bの全体をモールドしたエポキシ樹脂等からなる絶縁性樹脂25と、各スロット15a内に装着されて固定子巻線16と固定子鉄心15とを電気的に絶縁する後述されるインシュレータ19とを備えている。そして、固定子巻線16は、1本の素線30が、固定子鉄心15の端面側のスロット15a外で折り返されて、所定スロット数毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように波巻きされて巻装された巻線を複数備えている。ここでは、固定子鉄心15には、回転子7の磁極数(16)に対応して、後述する3相交流巻線160を2組収容するように、96本のスロット15aが等間隔に形成されている。また、素線30には、例えば絶縁被覆された長方形の断面を有する長尺の銅線材が用いられる。
なお、他の構成は図19に示された従来の車両用交流発電機と同様に構成されている。
【0024】
つぎに、1相分の固定子巻線群161の巻線構造について図3を参照して具体的に説明する。
1相分の固定子巻線群161は、それぞれ1本の素線30からなる第1乃至第4の巻線31〜34から構成されている。そして、第1巻線31は、1本の素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の内周側から1番目の位置と内周側から2番目の位置とを交互に採るように1ターン波巻きして構成されている。第2巻線32は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の内周側から2番目の位置と内周側から1番目の位置とを交互に採るように1ターン波巻きして構成されている。第3巻線33は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の内周側から3番目の位置と内周側から4番目の位置とを交互に採るように1ターン波巻きして構成されている。第4巻線34は、素線30を、スロット番号の1番から91番まで6スロットおきに、スロット15a内の内周側から4番目の位置と内周側から3番目の位置とを交互に採るように1ターン波巻きして構成されている。そして、各スロット15a内には、素線30が長方形断面の長手方向を径方向に揃えて径方向に1列に4本並んで配列されている。
以降、素線30が収納されるスロット15a内の内周側1番目乃至4番目の位置をそれぞれ1番地乃至4番地と呼ぶ。
【0025】
そして、固定子鉄心15の一端側において、スロット番号の1番の2番地から延出する第2巻線32の端部32aと、スロット番号の91番の3番地から延出する第4巻線34の端部34bとが接合され、さらにスロット番号の1番の4番地から延出する第4巻線34の端部34aと、スロット番号の91番の1番地から延出する第2巻線32の端部32bとが接合されて、第2および第4巻線32、24からなる2ターンの巻線が形成されている。
また、固定子鉄心15の他端側において、スロット番号の1番の1番地から延出する第1巻線31の端部31aと、スロット番号の91番の4番地から延出する第3巻線33の端部33bとが接合され、さらにスロット番号の1番の3番地から延出する第3巻線33の端部33aと、スロット番号の91番の2番地から延出する第1巻線31の端部31bとが接合されて、第1および第3巻線31、33からなる2ターンの巻線が形成されている。
【0026】
さらに、スロット番号の61番の3番地と67番の4番地とから固定子鉄心15の一端側に延出する第3巻線33の素線30の部分が切断され、スロット番号の67番の3番地と73番の4番地とから固定子鉄心15の一端側に延出する第4巻線34の素線30の部分が切断される。そして、第3巻線33の切断端33cと第4巻線34の切断端34cとが接合されて、第1乃至第4巻線31〜34を直列接続してなる4ターンの1相分の固定子巻線群161が形成されている。
なお、第3巻線33の切断端33cと第4巻線34の切断端34cとの接合部が渡り結線接続部となり、第3巻線33の切断端33dと第4巻線34の切断端34dとがそれぞれ口出し線(O)および中性点リード線(N)となる。
【0027】
この固定子8では、素線30が巻装されるスロット15aを1つづつずらして6相分の固定子巻線161が形成されている。これらの6相分の固定子巻線161が固定子巻線16を構成している。
ここで、第1乃至第4巻線31〜34を構成するそれぞれの素線30は、1つのスロット15aから固定子鉄心15の端面側に延出し、折り返されて6スロット離れたスロット15aに入るように波巻きに巻装されている。そして、それぞれの素線30は、6スロット毎に、スロット深さ方向(径方向)に関して、内層と外相とを交互に採るように巻装されている。
そして、固定子鉄心15の端面側に延出して折り返された素線30のターン部30aがコイルエンドを形成している。そこで、固定子鉄心15の両端において、図4に示されるように、ほぼ同一形状に形成されたターン部30aが周方向に、かつ、径方向に互いに離間して、2列となって周方向に整然と配列されてコイルエンド16a、16bを形成している。
【0028】
ついで、絶縁性樹脂25により固定子巻線16のコイルエンド16a、16b全体を完全に覆うようにモールドして、図2に示される固定子8が得られる。この時、絶縁性樹脂25は、ターン部30aが所定の間隙をもって配列している周方向における不連続な状態に起因する凹凸を表面に生じさせないようにモールドされている。つまり、絶縁性樹脂25の内周面である回転子対向面25aおよび外周面であるブラケット対向面25bがそれぞれ滑らかな面に形成されている。このように構成された固定子8は、車両用交流発電機に搭載され、図5に示されるように、固定子巻線群161が3相分づつ星型結線されて2組の3相交流巻線160を形成し、各3相交流巻線160がそれぞれ整流器12に接続されている。そして、各整流器12の直流出力が並列に接続されて合成される。
【0029】
ついで、固定子8の製造方法について図6乃至図14を参照しつつ具体的に説明する。
まず、図6に示されるように、12本の長尺の素線30を同時に同一平面上で雷状に折り曲げ形成する。ついで、図7に矢印で示されるように、直角方向に治具にて折り畳んでゆき、図8に示される内層側の巻線アセンブリ35Aを作製する。さらに、同様にして、図9に示されるように、渡り結線、中性点リード線および口出し線を有する外層側の巻線アセンブリ35Bを作製する。
なお、各素線30は、図10に示されるように、ターン部30aで連結された直線部30bが6スロットピッチ(6P)で配列された平面状パターンに折り曲げ形成されている。そして、隣り合う直線部30bが、ターン部30aにより、素線30の幅(W)分ずらされている。巻線アセンブリ35A、35Bは、このようなパターンに形成された2本の素線30を図11に示されるように6スロットピッチずらして直線部30bを重ねて配列された素線対が1スロットピッチづつずらして6対配列されて構成されている。そして、素線30の端部が巻線アセンブリ35A、35Bの両端の両側に6本づつ延出されている。また、ターン部30aが巻線アセンブリ35A、35Bの両側部に整列されて配列されている。
また、台形形状のスロット36aが所定のピッチ(電気角で30°)で形成されたSPCC材を所定枚数積層し、その外周部をレーザ溶接して、図12に示されるように、直方体の積層鉄心36を作製する。
【0030】
そして、図13の(a)に示されるように、インシュレータ19が積層鉄心36のスロット36aに装着され、2つの巻線アセンブリ35A、35Bの各直線部を各スロット36a内に重ねて押し入れる。これにより、図13の(b)に示されるように、2つの巻線アセンブリ35A、35Bが積層鉄心36に装着される。この時、素線30の直線部30bは、インシュレータ19により積層鉄心36と絶縁されてスロット36a内に径方向に4本並んで収納されている。また、2つの巻線アセンブリ35A、35Bは、図14に示されるように、重なって積層鉄心36に装着されている。
ついで、積層鉄心36を丸め、その端面同士を当接させてレーザ溶接し、図13の(c)に示されるように、円筒状の固定子鉄心15を得る。積層鉄心36を丸めることにより、スロット36a(固定子鉄心15のスロット15aに相当)は略矩形断面形状となり、その開口部36b(スロット15aの開口部15bに相当)は直線部30bのスロット幅方向寸法より小さくなる。そして、図3に示される結線方法に基づいて、各素線30の端部同士を結線して固定子巻線群161を形成する。さらに、絶縁性樹脂25により固定子巻線16のコイルエンド16a、16b全体を覆うようにモールドする。
【0031】
このように、この実施の形態1によれば、絶縁性樹脂25でコイルエンド16a、16b全体を覆うようにモールドしているので、コイルエンド部の絶縁性が確保されるとともに、振動により隣接するターン部30a同士が接触して絶縁被膜を損傷し、短絡事故を発生させることもなく、信頼性を向上させることができる。また、固定子8の剛性が高められ、磁気騒音を低減させることができる。
また、絶縁性樹脂25の回転子対向面25aが滑らかな面に形成されているので、絶縁性樹脂25と回転子7との間を流通する冷却風の通風抵抗が小さくなるとともに、絶縁性樹脂25と回転子7との間の干渉音が少なくなり、風騒音を低減することができる。
さらに、絶縁性樹脂25のブラケット対向面25bが滑らかな面に形成されているので、絶縁性樹脂25とブラケット1、2との間を流通する冷却風の通風抵抗が小さくなり、風騒音を低減することができる。
【0032】
また、固定子巻線16は2組の3相交流巻線160を備え、各3相交流巻線160は3相の固定子巻線群161を交流結線して構成されている。そして、固定子巻線群161は第1乃至第4巻線31〜34を直列接続して構成されている。そして、第1巻線31は1本の素線30を6スロット毎にスロット15a内の1番地と2番地とを交互に採るように波巻きされて構成されている。つまり、第1巻線31は1本の素線30を6スロット毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように1ターン波巻きされて構成されている。同様に、第2、第3および第4巻線32、33、34もまた、1本の素線30を6スロット毎にスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように1ターン波巻きされて構成されている。
そこで、第1および第2巻線31、32を構成する素線30のターン部30aをほぼ同一形状に形成でき、ターン部30aを周方向に重なって整列して配列できる。同様に、第3および第4巻線33、34を構成する素線30のターン部30aをほぼ同一形状に形成でき、ターン部30aを第1および第2巻線31、32の外周側で周方向に重なって整列して配列できる。つまり、ターン部30aが周方向に略同一形状となり、ターン部30a間の空隙が周方向に略同一となる。
この巻線構造を採ることで、絶縁性樹脂25でコイルエンド16a、16bを全周に渡って均一にモールドすることが容易となり、絶縁性樹脂25の周方向および軸方向の分布をほぼ均一に形成することができる。これにより、絶縁性樹脂25を含んだコイルエンド部の放熱性が均一となり、固定子巻線16の冷却性の悪化が抑制され、固定子巻線16の温度上昇を抑えることができる。
また、この巻線構造を採ることで、絶縁性樹脂25の回転子対向面25aおよびブラケット対向面25bを滑らかな面に容易に形成することができる。
また、この巻線構造を採ることで、素線30を高密度にできるようになり、出力の向上が図られるとともに、絶縁性樹脂25の量を従来の固定子50に比べて削減でき、低価格化が図られる。
【0033】
また、4本の素線30がスロット15a内に径方向に1列に配列され、ターン部30aが周方向に2列に並んで配列されている。これにより、コイルエンド16a、16bを構成するターン部30aがそれぞれ径方向に2列に分散されるので、コイルエンド16a、16bの固定子鉄心15の端面からの延出高さを低くできる。その結果、コイルエンド16a、16bをモールドしている絶縁性樹脂25の高さを低くでき、絶縁性樹脂25における通風抵抗が小さくなり、回転子7の回転に起因する風音を低減させることができるとともに、コイルエンドのコイル端漏れリアクタンスが減少し、出力、効率が向上される。
また、コイルエンド16a、16bがファン5の下流側にファン5に隣接して配されているので、ファン5によって通風路に流される冷却風が効率よくコイルエンド16a、16bをモールドしている絶縁性樹脂25の冷却に供せられ、固定子巻線16の冷却性を向上させることができる。
【0034】
また、回転子7の磁極数が16で、96個のスロット15aが固定子鉄心15に等角ピッチで形成されている。そして、巻線30が6スロット毎のスロット15aに波巻きされているので、巻線30が波巻きされるスロットのピッチが回転子7のNS極に対応したピッチとなり、固定子巻線16が全節巻線となる。これにより、最大トルクが得られるようになり、高出力化を実現できる。
また、スロット15aの開口部15bの開口寸法が素線30のスロット幅方向寸法より小さく構成されているので、スロット15aから径方向内側への素線30の飛び出しが阻止されるとともに、開口部15bでの回転子7との干渉音も低減される。
【0035】
また、直線部30bが長方形断面に形成されているので、直線部30bをスロット15a内に収容したときに、直線部30bの断面形状がスロット形状に沿った形状となっている。これにより、スロット15a内における素線30の占積率を高めることが容易となるとともに、素線30から固定子鉄心15への伝熱を向上させることができる。ここで、この実施の形態1では、直線部30bが長方形断面に形成されているものとしているが、直線部30bの断面形状は、略矩形断面のスロット形状に沿った略矩形断面形状であればよい。この略矩形形状とは、長方形に限らず、正方形、4辺の平面と丸い角とで構成された形状、長方形の短辺を円弧とした長円形等であってもよい。
【0036】
また、素線30が長方形の断面形状に形成されているので、コイルエンドを構成するターン部30bからの放熱面積が大きくなり、固定子巻線16の発熱が効率的に放熱される。
【0037】
また、図5に示されるように、第1乃至第4巻線31〜34を直列に接続して構成された固定子巻線群161が3本づつ星型結線されて2組の3相交流巻線160を構成し、2組の3相交流巻線160がそれぞれ整流器12に接続され、さらに2つの整流器12の出力が並列に接続されている。これにより、4ターンの3相交流巻線160の直流出力を合成して取り出すことができ、低回転域での発電不足を解消することができる。
【0038】
また、この巻線構造を採ることで、固定子巻線のターン数を増やす場合、連続線からなる巻線アセンブリ35(35A、35B)をその直線部30b同士を相対して揃えるようにして重ねて固定子鉄心15に巻装することで容易に対応することができる。
また、この実施の形態1による固定子8は、連続線からなる巻線アセンブリ35を直方体の積層鉄心36のスロット36aに開口部36bから挿入し、その後積層鉄心36を環状に丸めて作製することができる。そこで、積層鉄心36の開口部36bの開口寸法を素線30のスロット幅方法寸法より大きくすることができるので、巻線アセンブリ35の挿入作業性を高めることができる。また、積層鉄心36を環状に成形することで開口部36bの開口寸法を素線30のスロット幅方法寸法より小さくできるので、占積率が高められ、出力を向上させることができる。さらに、スロット数が多くなっても、固定子の生産性を低下させることはない。
【0039】
また、両コイルエンド16a、16b(コイルエンド16a、16bをモールドした絶縁性樹脂25)の形状が略等しく、かつ、ファン5が回転子7の両端部に設けられているので、両コイルエンド16a、16bがバランス良く冷却され、固定子巻線温度が均一に、かつ、大きく低減される。
ここで、ファン5は必ずしも回転子7の両端に設ける必要はなく、大きな発熱体である固定子巻線や整流器の配設位置を考慮して設ければよい。例えば、最大の発熱体である固定子巻線のコイルエンドは冷却速度の大きいファンの吐出側に配置し、整流器の配置されている側の回転子の端部にファンを配設することがよい。また、車両エンジンに取り付けられる場合、通常プーリがクランクシャフトにベルトを介して連結されるので、ファンの冷却排出風がベルトに影響しないように、ファンを反プーリ側に配設することがよい。なお、回転子の爪状磁極の型部も送風作用があり、冷却手段として用いることができる。
【0040】
また、絶縁性樹脂25を含んだ固定子8の軸方向長さがポールコア20、21の軸方向長さより小さくなっているので、小型化が実現できる。また、ファン5が回転子7の両端部に設けられている場合、ファン吐出側に絶縁性樹脂25がないので、通風抵抗が著しく小さくなり、風騒音が低減されるとともに、整流器12等の冷却内蔵物の温度上昇を抑えることができる。
【0041】
また、固定子巻線16が収容されるスロット数が毎極毎相当たり2であり、毎極毎相当たりのスロットに対応した2つの3相交流巻線160を有している。これにより、起磁力波形を正弦波形に近くすることができ、高調波成分を低減でき、安定した出力を得ることができる。また、スロット15a数が多くなるので、固定子鉄心15のティースが細くなり、対向する爪状磁極22、23間のティース内の磁気漏れが低減され、出力の脈動を抑制できる。また、スロット15aが多くなるほど、スロット15aに対応してターン部30aも多くなるので、コイルエンドの放熱性が向上される。
また、スロット15aおよび開口部15bが電気角で30°の等間隔で配列されているので、磁気騒音の加振力の原因である磁気脈動を低減できる。
【0042】
実施の形態2.
この実施の形態2では、図15に示されるように、固定子8は絶縁性樹脂25のブラケット対向面25bがフロントおよびリヤブラケット1、2の内壁面に密接するように配設されているものである。なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0043】
この実施の形態2によれば、絶縁性樹脂25のブラケット対向面25bがブラケット1、2の内壁面に密接するように配設されているので、コイルエンド16a、16bで発生した熱が絶縁性樹脂25を介して効率よく低温のブラケット1、2に伝達され、固定子巻線16の冷却性を向上できるとともに、絶縁性樹脂25とブラケット1、2の内壁面との間に隙間がない分交流発電機の小型化が図られる。
【0044】
実施の形態3.
この実施の形態3では、図16に示されるように、内層側を構成する素線30のターン部30aの外周面(回転子7と対向する面)の一部が絶縁性樹脂25の回転子対向面25aと同一面位置となるように露出されているものである。なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0045】
この実施の形態3によれば、冷却風が素線30のターン部30aの露出面に当たるので、コイルエンド16a、16bで発生した熱がターン部30aの露出面から効率よく放熱され、固定子巻線16の冷却性を向上できる。
ここで、素線30が長方形の断面に形成されていれば、絶縁性樹脂25の回転子対向面25aに露出する一面を規定し易いが、円形断面の素線であっても、素線の側面の一部を露出させれば、同様の効果が得られる。
【0046】
なお、上記実施の形態3では、内層側を構成する素線30のターン部30aの回転子7と対向する面が絶縁性樹脂25の回転子対向面25aと同一面位置となるように露出されているものとしているが、外層側を構成する素線30のターン部30aの外周面(ブラケット1、2と対向する面)が絶縁性樹脂25のブラケット対向面25bと同一面位置となるように露出されていてもよい。
【0047】
実施の形態4.
この実施の形態4では、図17に示されるように、固定子鉄心150のスロット150aが等角ピッチで形成され、スロット開口部150bの周方向空隙中心が電気角で(α°)と(60-α)°とを交互に繰り返す不等間隔に形成されているものとする。ここで、α≠30である。なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0048】
この実施の形態4によれば、スロット開口部150bの周方向空隙中心の間隔が電気角で(α°)と(60-α)°とを交互に繰り返す不等間隔に形成されているので、2組の3相交流巻線160は互いに電気角で(60-α)°の位相差をもって巻装されている。ここで、αを変えた固定子を交流発電機に搭載し、磁気騒音の要因となる固定子起磁力高調波の各次数成分の変化を測定した結果を図18に示す。なお、ティース部150cの先端に設けられた鍔部150dの周方向長さを調整してαを変えている。
図18から、スロット開口部150bの周方向空隙中心の間隔が、16度と44度とを繰り返す不等間隔と、29度と31度とを繰り返す不等間隔との範囲であれば、固定子の5次、7次、11次および13次の起磁力高調波の上限値が13%以下に抑えられることが分かる。
さらに、スロット開口部150bの周方向空隙中心の間隔が、22度と38度とを繰り返す不等間隔と、24度と36度とを繰り返す不等間隔との範囲であれば、固定子の5次、7次、11次および13次の起磁力高調波の上限値が8%以下に抑えられ、即ち5次、7次、11次および13次の起磁力高調波をバランスよく低減できることが分かる。
【0049】
なお、上記各実施の形態では、絶縁性樹脂25としてエポキシ樹脂を用いるものとしているが、この絶縁性樹脂として、樹脂の主剤より熱伝導性の高い部材を混入したものを用いてもよい。例えば、熱伝導率が0.5(W/mk)のエポキシ樹脂(主剤)と熱伝導率が3.5(W/mk)のアルミナとを1:4の割合で混合したものを絶縁性樹脂として用いてもよい。この場合、固定子巻線16で発生した熱が絶縁性樹脂中を速やかに伝導して絶縁性樹脂の表面に至り、絶縁性樹脂の表面から放熱されるので、固定子巻線16の冷却性を向上させることができる。
また、上記各実施の形態では、ファン5がケース3内に配設されているものとしているが、ファンは車両用交流発電機の外に回転子の回転と伴って回転するように設けてもよい。
また、上記各実施の形態では、各相の固定子巻線161が4ターンのものについて説明しているが、固定子巻線161のターン数は4ターンに限定されるものではない。更に低速出力が要求される場合には、固定子巻線161を6ターン、8ターンとすればよい。この場合でも、巻線アセンブリを径方向に重ねて固定子コアに挿入するだけで対応できる。むろん、奇数のターン数でもよい。
また、上記各実施の形態では、全節巻き発電機に適用するものとして説明しているが、短節巻(全節巻きでない)発電機に本構造を適用しても良い。
また、この発明は、回転子コイルをブラケットに固定し、エアギャップより回転界磁を供給するタイプの車両用交流発電機にも適用できる。
また、上記各実施の形態では、16極の磁極数に対して、固定子のスロット数を96スロットとしたが、12極の磁極数に対しては、3相で72個のスロット、20極の磁極数に対しては3相で120個のスロットを採用してもよい。また、毎極毎相1の場合は、16極の磁極数でスロット数48、12極の磁極数でスロット数36、20極の磁極数でスロット数60でも良い。
また、上記各実施の形態では、コイルエンドを含んだ固定子の軸方向長さが回転子の軸方向長さより小さく構成されているものとしているが、この発明は、コイルエンドを含んだ固定子の軸方向長さが回転子の軸方向長さより大きく構成されている発電機に適用してもよい。この場合、ファン吐出側にコイルエンドが存在するので、固定子の温度上昇を抑えることができる。
【0050】
また、上記各実施の形態では、爪状磁極を持つランデル型の回転子を用いるものとしているが、突極型の磁極を持つセーレント型の回転子を用いても、同様の効果が得られる。
また、上記各実施の形態では、整流器が反プーリ側に配置され、ファンも回転子に対して同じ側に配置されているが、整流器の温度に特に問題がない場合は、ファンをプーリ側に配置しても良い。固定子のコイルエンドの高さが低いために、ファンの通風路における吐出側の通風抵抗は著しく減少しているので、全体風量は増える。従って、整流器やプーリとファンとの位置関係は、エンジンの取り付け位置や、風騒音、磁気騒音、各部の温度状態を鑑みて、最適な位置を選択すればよい。
また、上記各実施の形態では、巻線アセンブリの積層鉄心への挿入時に、予め積層鉄心側にインシュレータを挿入しているが、巻線アセンブリのスロット収容部にインシュレータを予め巻き付けて、積層鉄心に挿入するようにしてもよい。また、長尺のインシュレータを直方体の積層鉄心上に載置し、その上から巻線アセンブリを挿入するようにして、インシュレータも同時にスロット内に収容するようにしてもよい。この場合、後工程で、突出したインシュレータを一括除去すればよい。さらに、予め、巻線アセンブリのスロット収容部を絶縁樹脂でモールドしておいても良い。この場合、量産性が格段に向上する。
【0051】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0052】
この発明によれば、回転周方向に沿ってNS極を形成する回転子と、該回転子と対向配置された固定子鉄心およびこの固定子鉄心に装着された固定子巻線を有する固定子、上記回転子と上記固定子とを支持するブラケットと、上記回転子の回転に連動して上記ブラケット内に冷却風を通風させて上記固定子巻線を冷却する冷却手段とを備えた交流発電機において、上記固定子鉄心は、軸方向に延びるスロットが周方向に所定ピッチで複数形成された積層鉄心を備え、上記固定子巻線は、連続線からなる素線が、上記固定子鉄心の両端面側の上記スロット外で折り返されて、所定スロット数毎に上記スロット内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装された巻線を複数有し、上記複数の巻線は、複数本の上記素線を同時に折り畳んで形成された少なくとも1組の巻線アセンブリで構成され、上記巻線アセンブリは、直線部がターン部により連結されて所定スロットピッチで配列され、かつ、隣り合う該直線部が該ターン部によりスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るようにずらされたパターンに形成された2本の上記素線を、互いに上記所定スロットピッチずらして上記直線部を重ねて配列してなる素線対が、1スロットピッチずつずらされて上記所定スロット数と同数対配列され、素線端部がそれぞれ上記巻線アセンブリの両端の両側に延出され、かつ、重ねられた上記直線部の対が1スロットピッチで上記スロットの全数と同数対配列されて構成され、上記固定子鉄心の両端面側の上記スロット外で折り返された上記素線のターン部が周方向に並んでコイルエンドを構成し、絶縁性樹脂が、上記コイルエンドの全体を覆うように設けられ、上記絶縁性樹脂の回転子対向面およびブラケット対向面の少なくとも一方が滑らかな面に形成されている。これにより、素線が高密度に巻装できるようになり、出力が向上され、絶縁性樹脂の放熱性が周方向で均一となり、固定子巻線の冷却性が向上され、さらに絶縁性樹脂の回転子対向面やブラケット対向面を流通する冷却風の通風抵抗が小さくなり、風騒音が低減される交流発電機が得られる。
【0053】
また、上記絶縁性樹脂の回転子対向面が滑らかな面に形成され、上記絶縁性樹脂のブラケット対向面が上記ブラケットの内壁面に密接されている。これにより、絶縁性樹脂と回転子との間で発生する干渉音が小さくなるので、風騒音が低減されるとともに、固定子巻線の熱が絶縁性樹脂を介して低温のブラケットに伝達されるので、固定子巻線の温度上昇が抑えられる。
【0054】
また、上記絶縁性樹脂の回転子対向面において、周方向に並んだ上記ターン部の上記回転子に対向する面の少なくとも一部が上記絶縁性樹脂と同一面位置となるように露出しているので、ターン部の露出面が冷却風に曝され、固定子巻線の冷却性を高めることができる。
【0055】
また、上記素線が上記スロットのそれぞれにスロット深さ方向に2n本ずつ配列され、上記素線のターン部が周方向にn列に並んで配列されている。これにより、コイルエンド高さが低くなるので、コイル端漏れリアクタンスが低減されるとともに、絶縁性樹脂の高さが低くなり、通風抵抗が小さくなる。
【0056】
また、上記固定子鉄心の少なくとも一方の端部のコイルエンドを構成する上記ターン部が、周方向に略同一形状に形成されているので、絶縁性樹脂をコイルエンドに均一に設けることができ、絶縁性樹脂の回転子対向面やブラケット対向面を容易に滑らかな面に形成できる。
【0057】
また、上記固定子鉄心の少なくとも一方の端部のコイルエンドにおいて、周方向に隣り合う上記ターン部間の空間が略同一に形成されているので、絶縁性樹脂をコイルエンドに均一に設けることができ、絶縁性樹脂の回転子対向面やブラケット対向面を容易に滑らかな面に形成できる。さらに、樹脂成形時にかかる圧力が均一となり、ターン部が該圧力で動いて互いに干渉することがない。
【0058】
また、上記スロットの開口部の開口寸法が、上記素線のスロット幅方向寸法より小さいので、素線のスロットからの飛び出しが防止されるとともに、スロット内に流入した絶縁性樹脂が開口部から漏れ出しにくくなる。
【0059】
また、上記素線の上記スロット内における断面形状が上記スロット形状に沿った略矩形形状であるので、スロット内の素線の占積率が高められ、出力、効率が向上される。また、素線と固定子鉄心との接触面積が大きくなり、熱伝導性が高められ、固定子巻線の温度がさらに低下される。さらに、絶縁性樹脂がスロット内に流入しにくくなり、樹脂量を低減することができる。
【0060】
また、上記素線の断面形状が略扁平形状であり、上記直線部が断面長手方向を径方向に一致させて1列に並んで上記スロット内に収納されているので、スロット内の素線の占積率が高められるとともに、固定子巻線の放熱性が向上し、出力、効率が向上される。さらに、滑らかな樹脂面が構成しやすくなる。
【0061】
また、上記固定子巻線の少なくとも一方の上記コイルエンドが、上記冷却手段の上記ブラケット内に形成される冷却風の流通方向の下流側に該冷却手段に隣接して配置されているので、冷却風が効率よくコイルエンドあるいは絶縁性樹脂の冷却に供せられ、固定子巻線の冷却性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の構成を示す断面図である。
【図2】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の固定子を示す斜視図である。
【図3】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機における固定子巻線の1相分の結線状態を説明する平面図である。
【図4】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機における固定子巻線の結線状態を説明する斜視図である。
【図5】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の回路図である。
【図6】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アセンブリの製造工程を説明する図である。
【図7】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アセンブリの製造工程を説明する図である。
【図8】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する内層側の巻線アセンブリを示す図である。
【図9】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する外層側の巻線アセンブリを示す図である。
【図10】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する素線の要部を示す斜視図である。
【図11】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する素線の配列を説明する図である。
【図12】 この車両用交流発電機に適用される固定子鉄心を構成する積層鉄心を示す斜視図である。
【図13】 この車両用交流発電機に適用される固定子の製造工程を説明する工程断面図である。
【図14】 この車両用交流発電機に適用される固定子巻線を構成する巻線アセンブリの積層鉄心への装着状態を示す平面図である。
【図15】 この発明の実施の形態2に係る車両用交流発電機を示す要部断面図である。
【図16】 この発明の実施の形態3に係る車両用交流発電機の固定子を示す斜視図である。
【図17】 この発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機の固定子鉄心を示す斜視図である。
【図18】 この発明の実施の形態4に係る車両用交流発電機の出力特性を示す図である。
【図19】 従来の車両用交流発電機を示す断面図である。
【図20】 従来の車両用交流発電機の固定子を示す斜視図である。
【図21】 従来の車両用交流発電機の固定子に適用される固定子鉄心を構成する積層鉄心を示す斜視図である。
【図22】 従来の車両用交流発電機に適用される固定子の製造工程を説明する斜視図である。
【図23】 従来の車両用交流発電機に適用される固定子の製造工程を説明する斜視図である。
【図24】 従来の車両用交流発電機に適用される固定子の絶縁性樹脂モールド前の状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 フロントブラケット、2 リヤブラケット、5 ファン(冷却手段)、7回転子、8 固定子、15、150 固定子鉄心、15a、150a スロット、15b、150b 開口部、16 固定子巻線、16a フロント側のコイルエンド、16b リヤ側のコイルエンド、25 絶縁性樹脂、25a 回転子対向面、25b ブラケット対向面、30 素線、30a ターン部、31 第1巻線、32 第2巻線、33 第3巻線、34 第4巻線、35A、35B 巻線アセンブリ。

Claims (10)

  1. 回転周方向に沿ってNS極を形成する回転子と、該回転子と対向配置された固定子鉄心およびこの固定子鉄心に装着された固定子巻線を有する固定子、上記回転子と上記固定子とを支持するブラケットと、上記回転子の回転に連動して上記ブラケット内に冷却風を通風させて上記固定子巻線を冷却する冷却手段とを備えた交流発電機において、
    上記固定子鉄心は、軸方向に延びるスロットが周方向に所定ピッチで複数形成された積層鉄心を備え、
    上記固定子巻線は、連続線からなる素線が、上記固定子鉄心の両端面側の上記スロット外で折り返されて、所定スロット数毎に上記スロット内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装された巻線を複数有し、
    上記複数の巻線は、複数本の上記素線を同時に折り畳んで形成された少なくとも1組の巻線アセンブリで構成され、
    上記巻線アセンブリは、直線部がターン部により連結されて所定スロットピッチで配列され、かつ、隣り合う該直線部が該ターン部によりスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るようにずらされたパターンに形成された2本の上記素線を、互いに上記所定スロットピッチずらして上記直線部を重ねて配列してなる素線対が、1スロットピッチずつずらされて上記所定スロット数と同数対配列され、素線端部がそれぞれ上記巻線アセンブリの両端の両側に延出され、かつ、重ねられた上記直線部の対が1スロットピッチで上記スロットの全数と同数対配列されて構成され、
    上記固定子鉄心の両端面側の上記スロット外で折り返された上記素線のターン部が周方向に並んでコイルエンドを構成し、
    絶縁性樹脂が、上記コイルエンドの全体を覆うように設けられ、
    上記絶縁性樹脂の回転子対向面およびブラケット対向面の少なくとも一方が滑らかな面に形成されていることを特徴とする交流発電機。
  2. 上記絶縁性樹脂の回転子対向面が滑らかな面に形成され、上記絶縁性樹脂のブラケット対向面が上記ブラケットの内壁面に密接されていることを特徴とする請求項1記載の交流発電機。
  3. 上記絶縁性樹脂の回転子対向面において、周方向に並んだ上記ターン部の上記回転子に対向する面の少なくとも一部が上記絶縁性樹脂と同一面位置となるように露出していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の交流発電機。
  4. 上記素線が上記スロットのそれぞれにスロット深さ方向に2n本ずつ配列され、上記素線のターン部が周方向にn列に並んで配列されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の交流発電機。
  5. 上記固定子鉄心の少なくとも一方の端部のコイルエンドを構成する上記ターン部が、周方向に略同一形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の交流発電機。
  6. 上記固定子鉄心の少なくとも一方の端部のコイルエンドにおいて、周方向に隣り合う上記ターン部間の空間が略同一に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の交流発電機。
  7. 上記スロットの開口部の開口寸法が、上記素線のスロット幅方向寸法より小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の交流発電機。
  8. 上記素線の上記スロット内における断面形状が上記スロット形状に沿った略矩形形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の交流発電機。
  9. 上記素線の断面形状が略扁平形状であり、上記直線部が断面長手方向を径方向に一致させて1列に並んで上記スロット内に収納されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の交流発電機。
  10. 上記固定子巻線の少なくとも一方の上記コイルエンドが、上記冷却手段の上記ブラケット内に形成される冷却風の流通方向の下流側に該冷却手段に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の交流発電機。
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