JP3670551B2 - 土壌加温方法およびそれに用いるハウス栽培設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、夏期における地中加温と太陽熱の併用による土壌の熱消毒、および冬期におけるハウス栽培の地中暖房による農作物の育成を効率的にできる土壌の加温方法およびそれに用いるハウス栽培設備に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
農作物の土壌病害は主として土壌中に生息している病原菌によって引き起こされる。こうした土壌病害に対しては、従来からクロルピクリン、臭化メチルなどの農薬による防除を行ってきた。しかし、近年農業分野における環境破壊に関心が高まり、これら他の生物にも毒性のある農薬散布による薬害の使用を回避できる土壌消毒方法が要請されている。また、特に臭化メチルは、他の生物への直接的影響だけでなく、オゾン層破壊物質であるため、将来は使用禁止となることが決定している。
【0003】
近年、このような農薬散布の代替え土壌消毒方法として、太陽熱消毒が提案され、効果も期待できるため、トマト、きゅうり、いちご、すいかおよびほうれん草など各種農作物のハウス栽培に適用されている。
【0004】
例えば、太陽熱消毒は、イチゴ萎黄病、ナス半身萎ちょう病、トマト根腐疫病、ピーマン疫病、ほうれん草苗立枯病、および各種作物の菌核病、白絹病などの予防に極めて効果的であり、かつトマト褐色根腐れ病、黒点根腐れ病、トマト萎ちょう病、きゅうりつる割病などのフザリウム病の予防効果がかなり高いことが報告されている。
【0005】
太陽熱消毒は、夏期の太陽熱を利用して土壌の温度を上昇させることにより、土壌中の病原菌、線虫、雑草の種子および昆虫の卵の死滅を図る方法である。
【0006】
より具体的には、太陽熱消毒は農作物栽培用ハウスまたは農作物栽培用トンネル(ビニールなどの透明樹脂フィルムおよびシート、プラスチック板およびガラスなどを用いて構成されるトンネル状壁部を備え、所望により端部を開放したままにした設備。通常、ハウスより高さが低い。)に、マルチ(土壌表面をビニールなどの透明樹脂フィルムまたはシートで直接覆うもの。)を組み合わせて、太陽光の強い夏期に行われる。
【0007】
ところで、太陽熱は土壌の表面から伝熱されるので熱伝導率が重要な因子であり、かつこの熱伝導率は土壌の水分量に影響される。したがって、太陽熱消毒は、熱伝導率を良好にして殺菌効果を高めるため、注水して土壌中の水分量を高めて行なわなければならなかった。
【0008】
また、土壌消毒のためには病原菌の種類にもよるが土壌温度を40℃以上とすることが必要である。従来の太陽熱消毒では、土壌温度を40〜50℃程度まで昇温して十分な消毒効果を得るには、この温度での積算時間が通常50〜200時間必要である。
【0009】
したがって、従来の太陽熱消毒では、実施期間が夏期の一定期間に限定されることが多い他、一日の内の数時間しか十分な温度に昇温ができないため、約1ヶ月という長期にわたって行わなければならない他、北海道などの夏期においても気温が低い地域では、十分な温度および積算時間を実現できないという問題があった。
【0010】
さらに、従来の太陽熱消毒では、同様の理由から、ハウス内の温度が70℃以上になっても、地表からせいぜい深さ20cmまでの土壌が40℃以上の土壌温度となるだけで、それより深い土壌は充分な消毒効果が得られないという欠点を有する。
【0011】
したがって、太陽熱消毒後に深く耕起して施肥したり畝立てをすると、20cmを越える深さの未消毒の土壌が、地表近くの土壌と混合されるため、消毒効果が低減または無効となる。そのため、従来の太陽熱消毒では、熱消毒前に施肥、畝立てを行う必要があり、上記注水とあいまって消毒実施作業が繁雑であった。
【0012】
また、従来の太陽熱消毒では、ハウス外部が低温である場合には、それに影響されてハウス内平面の外周縁近傍の温度が、ハウス内中央部よりも低くなり、十分な消毒効果が得られないという問題もあった。
【0013】
【発明の目的】
本発明は、このような従来技術に伴う問題点を解決するためになされたものであり、使用可能期間および地域の制限が小さく、簡単な作業で、十分な深さの土壌消毒が可能であり、冬期などでは土壌暖房もできる他、ハウス内平面の外周縁部と中央部とを均一に昇温することも可能な土壌加温方法およびこれを用いた温室設備を提供することを目的としている。
【0014】
【発明の概要】
本発明の土壌加温方法は、農作物栽培用ハウス内の土壌中に、該ハウスの両側縁間で複
数並列した放熱パイプを所定深さで埋設し、該放熱パイプ中に熱媒体を通して土壌を加熱する土壌加温方法であって、前記放熱パイプ並列方向での単位距離当たり、前記ハウス内平面の両側縁部での埋設放熱パイプの平均断面積が、該両側縁部の間での埋設放熱パイプの平均断面積よりも大きくなるようにしたこと特徴としている。
【0015】
本発明の土壌加温方法では、如何なる方法で前記ハウス両側縁部の土壌中に埋設される放熱パイプの断面積を増加させてもよい。例えば、本発明の方法では、前記両側縁部での埋設放熱パイプの平均本数を、該両側縁部間での埋設放熱パイプの平均本数より多くしてもよく、あるいは前記両側縁部での埋設放熱パイプの平均直径を、該両側縁部間での埋設放熱パイプの平均直径より大きくしてもよい。
【0017】
本発明のハウス栽培用設備は、農作物栽培用ハウスと、該ハウス両側縁間に亘って並列し、かつ各々該ハウス内の土壌に所定深さで埋設された複数の放熱パイプと、熱媒体を加熱するボイラと、該ボイラおよび前記放熱パイプ間で前記熱媒体を循環させるポンプとを備え、前記放熱パイプ並列方向での単位距離当たり、前記ハウス内平面の両側縁部での埋設放熱パイプの平均断面積が、該両側縁部の間での埋設放熱パイプの平均断面積よりも大きいこと特徴としている。
【0019】
【発明の具体的説明】
本発明の土壌加温方法では、農作物栽培用ハウス内の土壌中に、該ハウスの両側縁間で、該両側縁に沿ってまたは平行して延在し、かつ複数並列した放熱パイプを所定深さで埋設し、該放熱パイプ中に熱媒体を通して土壌を加熱している。
【0020】
本発明では、これら放熱パイプは、その平均埋設深さ、平均直径および平均配設間隔などを、本発明が実施される地域および期間、使用するパイプの規格などに合わせて適宜選択できる。
【0021】
例えば、放熱パイプの埋設深さは、通常40cm〜80cmの範囲から選択される。放熱パイプの並列方向の平均配設間隔は、通常40cm〜100cmの範囲から選択される。また、放熱パイプの直径は、通常10mm〜30mmの範囲から選択される。
【0022】
このような放熱パイプに供給される熱媒体としては、例えば水、油、不凍液などを例示できる。
【0023】
本発明に係る第1の土壌加温方法では、このような放熱パイプから構成される地中加熱手段において、これら放熱パイプの並列方向での単位距離当たりの、前記ハウス内平面の両側縁部での埋設放熱パイプの平均断面積が、該両側縁部の間での埋設放熱パイプの平均断面積よりも大きくなるようにして、ハウス両側縁近傍での放熱量を増加させている。
【0024】
本発明の土壌加温方法では、如何なる方法で両側縁部における埋設放熱パイプの平均断面積を増加させてもよい。
【0025】
本発明の土壌加温方法では、例えば、前記ハウス内平面の両側縁部での埋設放熱パイプの平均本数を、該両側縁部間での埋設放熱パイプの平均本数より多くして、両側縁部の埋設放熱パイプの平均断面積を増加させてもよい。
【0026】
より具体的には、例えば、ハウス両側縁の各々に沿って内側に幅70〜150cm以内、特に100cm以内に延在するハウス両側縁部の土壌に埋設する放熱パイプ数は、その配設間隔を、中央部の2/3〜1/3、特に1/2として配設間隔を小さくして増加させることができる。
【0027】
この場合、補助放熱パイプ以外の各放熱パイプの埋設深さおよび放熱パイプの直径は、特に限定されないが、両側縁部および中央部に拘わらず同一であってもよい。例えば、放熱パイプの埋設深さは、40cm〜80cm、特に約60cmであり、補助放熱パイプを含む放熱パイプの直径は、10mm〜30mm、特に13mmとすることができる。
【0028】
また例えば、上記両側縁部の土壌に埋設する放熱パイプの本数は、通常の深さ(40cm〜80cm)に配設した放熱パイプの上方、特に40cm未満の深さにに少なくとも1本の補助放熱パイプを追加配設することによっても、増加させることができる。
【0029】
この場合、補助放熱パイプを含む放熱パイプの直径は、特に限定されないが、両側縁部および中央部に拘わらず一定であってもよく、例えば10mm〜30mm、特に13mmである。
【0030】
さらに、本発明の方法では、ハウス両側縁部に埋設される放熱パイプの直径を、該両側縁部間に埋設される放熱パイプの平均直径より大きくして、両側縁部における埋設放熱パイプの平均断面積を増加させてもよい。
【0031】
例えば、上記ハウス両側縁部の土壌に埋設する放熱パイプの平均断面積は、放熱パイプの直径を、30mm〜50mm、特に32mmとし、該両側縁部の間(以下中央部と記すこともある)の土壌に埋設する放熱パイプの直径の約1.5〜4倍、特に約2倍として、増加させることができる。この際、各放熱パイプの埋設深さおよび並列方向の埋設間隔は、特に限定されないが、直径の大小に拘わらず、両側縁部および中央部において同一であってよい。このような埋設深さは、具体的には、40cm〜80cm、特に約60cmであり、配設間隔は、40cm〜100cm、特に60cmであってよい。
【0032】
以上説明した本発明の土壌加温方法によれば、放熱パイプに供給する熱媒体の温度を70〜90℃、特に約80℃とし、この放熱パイプからの放熱と太陽熱との併用により土壌消毒を行なった場合、従来の太陽熱だけによる土壌消毒では高々地表から20cm以内しか土壌消毒が行われないのに対し、太陽熱と地中加温の併用により土壌の表面と地中の両方から加温し、地表から20cm以上の深さ、即ち放熱パイプ埋設深さ近傍から上の土壌も50℃以上に昇温して完全に熱消毒か可能である。
【0033】
また、冬期に熱媒体の温度を40℃〜60℃、特に50℃に設定することで土壌を温め、冬期での農作物の育成を促進したり、育成期間の延長を図ることができる。
【0034】
また、本発明の土壌加温方法によれば、放熱パイプ並列方向での単位距離当たり、前記
両側縁部での埋設放熱パイプの平均断面積を、中央部での埋設放熱パイプの平均断面積よりも大きくし、ハウス両側縁近傍での放熱量を増加させているため、農作物栽培用ハウス外部温度に影響されて昇温させ難い両側縁部を、中央部と同様の温度まで均一に昇温できる。
【0035】
なお、ハウス内部の両側縁部での埋設放熱パイプの平均断面積を増加させる上記構成は、各々単独で適用しても、2つ以上を組み合わせて適用してもよいことは、言うまでもない。
【0036】
本発明の土壌加温方法では、放熱パイプの配設構造は特に限定されないが、前記ハウスの外側の地表を前記両側縁に沿って所定幅で覆う断熱材または透明シートを配設してもよい。
【0037】
本発明の土壌加温方法で用いられる断熱材としては、発泡スチロール板、グラスウール不織布、ポリエチレン板等を例示できる。
【0038】
また、透明シートとしては、ビニール、ポリオレフィン、ポリエチレンなどの透明または半透明樹脂シートおよびフィルムを例示できる。
【0039】
このような断熱材および透明シートの幅は、特に限定されないが、100cm以下、特に60cm〜100cmである。
【0040】
本発明の土壌加温方法によれば、20cm以上の深さ、即ち放熱パイプ近傍の深さ以上での土壌消毒が可能である他、断熱材を配設して両側縁部からの放熱を防止することで、農作物栽培用ハウス外部温度の影響を遮断し、両側縁部を中央部と同様の温度まで均一に昇温できる。また、透明シートを配設することにより、農作物栽培用ハウス外側の地表を太陽熱によって昇温でき、これによって外部温度の影響を遮断し、両側縁部を中央部と同様の温度まで均一に昇温できる。
【0042】
本発明に係るハウス栽培設備は、上述した本発明に係る土壌加温方法に好適に適用できる設備である。
【0043】
即ち、本発明のハウス栽培設備は、農作物栽培用ハウスと、上述の土壌加温方法で説明した構成の複数の放熱パイプと、熱媒体を加熱するボイラと、該ボイラおよび前記放熱パ
イプ間で前記熱媒体を循環させるポンプとを備えている。
【0044】
以下、本発明に係るハウス栽培設備を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0045】
添付 図1は、本発明のハウス栽培設備の好ましい一態様を示す模式図であり、図2は
、その配管構造を示す配管図である。
【0046】
図示されるように、本態様のハウス栽培設備1は、農作物栽培用ハウス3と、上述の土壌加温方法で説明した構成の複数の放熱パイプ5と、熱媒体を加熱するボイラ7と、ボイラ7および放熱パイプ5間で熱媒体を循環させるポンプ9とを備えている。
【0047】
農作物栽培用ハウス3は、太陽光を取入れることができかつ外気と実質的に遮断された空間を形成する壁部および/または天井部からなる建物であれば、特に限定されない。したがって、ハウス3は、所謂ビニールハウス、あるいはプラスチック板またはガラス板を用いて、例えばこれらを金属製または木製の枠体に固定して構成された壁部および/または天井部を備えた温室などであってよい。
【0048】
ハウス3の両側縁3a,3a間には、該両側縁3a,3aと平行に複数並列して放熱パイプ5,5...が埋設されている。各放熱パイプ5,5は、交互にその一端が第1ヘッダー11または第2ヘッダー12に連結される。また、各放熱パイプ5,5の隣接する2本は、その他端がU字管14を介して連結されて一組となっている。
【0049】
そして、本態様のハウス栽培設備1では、ハウス両側縁3a,3aの各々に沿った幅100cm以内に延在するハウス両側縁部Sにおいて、放熱パイプ5,5...の配設間隔L1が、例えば約30cmであり、両側縁部S間、即ち中央部Mでは、放熱パイプ5,5...の配設間隔L2がより広く、例えば約60cmである。また、放熱パイプ5,5...の直径および埋設深さDは、適宜選択でき、両側縁部Sおよび中央部Mに拘わらず等しくても良く、各々例えば13mmおよび約60cmである。
【0050】
このような放熱パイプ5,5...が接合される第1ヘッダー11および第2ヘッダー12は、各々電磁弁15,16および主管17,18を介してループ管14に接続されている。
【0051】
ループ管14には、第1および第2三方弁21,23が、主管17の接合部(以下第1接合部と記す)17aを挟んで配設されている。即ち、図中左周りで順次下流となるとした場合に、第1三方弁21の下流には、第1接合部17a、第2三方弁23および主管18の接合部(以下第2接合部と記す)18aがこの順で配設されることとなる。
【0052】
ボイラ7は、その温水吐出口20が、温水供給管24を介して第2三方弁23に接合され、冷水供給口22が、下流側冷水供給管27、ポンプ9および上流側冷水供給管28を介して第1三方弁21に接合されている。
【0053】
このように構成することによって、第1三方弁20および第2三方弁23を切り換え、ボイラ7の温水吐出口20から供給される温水が、第1または第2ヘッダー11,12の何れに供給されて放熱パイプ5,5...に通され、かつ他方の第2または第1ヘッダー12,11の何れからボイラ7の冷水供給口22に返還されるかを、即ち温水の循環方向を選択できる。
【0054】
また、ハウス内の土壌中20cmには、所定間隔で温度センサ33,33...が埋設されている。
【0055】
このようなボイラ7、ポンプ9、電磁弁15,16、三方弁21,23および温度センサ33,33...は、制御装置31に接続されている。
【0056】
この制御装置31には、温水温度;ボイラ7およびポンプ9のオンオフおよび可動時間;或いは温水循環方向および循環方向切換え時間などを設定することができる制御パネルが設けられている。そして、制御装置31は、設定条件に応じて各装置および弁を作動させる他、センサ33,33...からの入力信号によってこれらを調節する。例えば、制御装置31は、電磁弁15,16をボイラ7のオンオフに応じて制御し、かつ三方弁21,23を切り換えて熱媒体の循環方向を、所定の時間間隔またはセンサ33,33...からの入力信号によって変更する。
【0057】
このようなハウス栽培設備1を用いて土壌加温を行う場合には、ボイラ7で所定温度に昇温された温水などの熱媒体は、先ず、例えば第1三方弁、第1接合部17aおよび第1ヘッダー11を介して2本一組となった一方の放熱パイプ5,5...に供給され、次いで他方の放熱パイプ5,5...から第2ヘッダー12、第2接合部18a、第2三方弁、ポンプ9を介してボイラ7に返還される。また、隣接する放熱パイプ5,5間では、一方に加温熱媒体が供給され、他方から土壌加温後の冷却された熱媒体が返還されるため、温度差が存在する。したがって、両者近傍の土壌の加温温度を均一とするため、例えば、所定の時間間隔で、三方弁21,23を切り換えて熱媒体の循環方向を変更する。
【0058】
以上説明した本態様の設備1では、熱媒体の温度を約80℃とし、太陽熱との併用により、土壌の温度を上昇させて夏期の土壌熱消毒を行うと、従来の太陽熱だけによる土壌消毒では高々地表から20cm以内しか土壌消毒が行われないのに対し、太陽熱と地中加温の併用により土壌の表面と地中の両方から加温し、地表から20cm以上の深さ、即ち放熱パイプ埋設深さ(本態様では60cm)近傍から上の土壌も50℃以上に昇温して完全に熱消毒か可能である。
【0059】
また、本態様の設備1では、両側縁部Sの土壌に埋設される放熱パイプ5,5...の埋設間隔L1を、中央部Mの土壌の埋設される放熱パイプ5,5...の埋設間隔L2より小さくしているため、放熱パイプ5,5...の並列方向での単位距離当たり、両側縁部Sでの埋設放熱パイプ平均断面積を、中央部Mでの埋設放熱パイプ平均断面積よりも大きくでき、夏期の土壌消毒中ではハウス境界に近い両側縁部Sにおいて中央部Mと同じく1週間の加温で50℃以上とすることができる。
【0060】
また、本態様に係るハウス栽培設備1は、熱媒体の温度を例えば約50℃に設定することで土壌を温め、冬期での農作物の育成を促進したり、育成期間の延長を図ることができる。この場合でも、両側縁部Sおよび中央部Mでの農作物の育成速度などの格差をなくすることができる。
【0061】
以上、本発明に係る第1のハウス栽培設備を、その好ましい一態様を挙げて説明したが、本発明は、この態様に限定して解釈されるものではなく、種々設計変更が可能である。
【0062】
例えば、本発明に係る第1のハウス栽培設備では、如何なる方法でハウス両側縁部での放熱パイプの埋設断面積を増加させてもよく、具体的には、図3または図4に示す態様を採用してもよい。
【0063】
即ち、図3は、本発明に係る第1のハウス栽培設備の他の態様を示す模式図である。なお、図3において、図1、図2と同様の部分には、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図示されるように、本態様のハウス栽培設備51は、両側縁部Sおよび中央部Mに深さD1、例えば60cmで埋設される放熱パイプ5,5...の配設間隔を均一、例えば約60cmとし、かつ両側縁部Sにおいて、より浅い埋設深さD2、例えば約30cmで直径13mmの補助放熱パイプ55を設けた以外は、図1および図2の態様と同様の構成を有している。
【0065】
また、図4は、本発明に係る第1のハウス栽培設備の更に他の態様を示す模式図である。なお、図4において、図1および図2と同様の部分には、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
図示されるように、本態様のハウス栽培設備61は、両側縁部Sおよび中央部Mに深さD1、例えば約60cmで埋設される放熱パイプ5,5...の配設間隔を均一に約60cmとし、かつ両側縁部Sにおいて、最も両側縁よりの放熱パイプ5の直径を32mmに増大させた以外は、図1および図2の態様と同様の構成を有している。
【0067】
図3および図4に示す態様によっても、放熱パイプ5,5...(図3の対応では補助放熱パイプ55を含む)の並列方向の単位距離当たり、両側縁部Sでの埋設放熱パイプ平均断面積を、中央部Mでの埋設放熱パイプ平均断面積よりも大きくでき、したがって図1および図2示す態様と同様に、ハウス3の両側縁部Sおよび中央部Mの格差なく、夏期土壌消毒および冬期ハウス栽培を行うことが可能とである。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る第1の土壌加温方法および第1のハウス栽培設備では、ハウス内の土壌中に放熱パイプを複数並列して埋設し、該放熱パイプ並列方向での単位距離当たり、前記両側縁部での埋設放熱パイプの平均断面積を、中央部での埋設放熱パイプの平均断面積よりも大きくし、両側縁部での放熱量を増加させている。
【0076】
したがって、本発明によれば、埋設した放熱パイプからの放熱による強制的加温を行うために、注水作業を行わなくても十分な深さの土壌消毒が可能であり、消毒後に深く耕起して施肥したり畝立てを行うことができ、土壌消毒作業が簡略化できる。また、本発明によれば、さらには埋設放熱パイプを上述構成とするか、あるいは上記断熱材または透明シートを配設しているため、夏期の土壌消毒および冬期の土壌暖房の何れに使用する場合でも、ハウス側縁部および中央部を均一に加温でき、使用可能期間および地域の制限が小さいなどの多大な利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のハウス栽培設備の好ましい一態様を示す模式的断面図である。
【図2】図1のハウス栽培設備の配管構造を示す模式図である。
【図3】本発明のハウス栽培設備の他の態様を示す模式的断面図である。
【図4】本発明のハウス栽培設備の更に他の態様を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1,41,51,61・・・ハウス栽培設備
3・・・農作物栽培用ハウス
5,45・・・放熱パイプ
7・・・ボイラ
9・・・ポンプ
S・・・側縁部
M・・・中央部
Claims (4)
- 農作物栽培用ハウス内の土壌中に、該ハウス両側縁間で複数並列した放熱パイプを所定深さで埋設し、該放熱パイプ中に熱媒体を通して土壌を加熱する土壌加温方法であって、前記放熱パイプ並列方向での単位距離当たり、前記ハウス内平面の両側縁部での埋設放熱パイプの平均断面積が、該両側縁部の間での埋設放熱パイプの平均断面積よりも大きくなるようにしたこと特徴とする土壌加温方法。
- 前記ハウス内平面の両側縁部での埋設放熱パイプの平均本数を、該両側縁部間での埋設放熱パイプの平均本数より多くした請求項1記載の土壌加温方法。
- 前記ハウス内平面の両側縁部での埋設放熱パイプの平均直径を、該両側縁部間での埋設放熱パイプの平均直径より大きくした請求項1または2記載の土壌加温方法。
- 農作物栽培用ハウスと、該ハウス両側縁間で複数並列して、該ハウス内の土壌中に所定深さで埋設された放熱パイプと、熱媒体を加熱するボイラと、該ボイラおよび前記放熱パイプ間で前記熱媒体を循環させるポンプとを備え、前記放熱パイプ並列方向での単位距離当たり、前記ハウス内平面の両側縁部での埋設放熱パイプの平均断面積が、該両側縁部の間での埋設放熱パイプの平均断面積よりも大きくなるようにしたことを特徴とするハウス栽培設備。
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