JP3670468B2 - 回転電機の現地オイルフラッシング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラスト軸受を備えた水車発電機,発電電動機,同期調相機およびフライホイール発電機などの縦軸回転電機に適用され、その回転電機が停止状態で、スラスト軸受部および潤滑油配管系統を洗浄する回転電機の現地オイルフラッシング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は縦軸回転電機に適用された従来の現地オイルフラッシング装置を示す系統図である。図6に示すように、縦軸回転電機は、回転子が固定されたシャフト1を有し、このシャフト1には回転板2が取り付けられ、この回転板2に所定間隔をおいてスラスト軸受部3が設置されている。このスラスト軸受部3は、回転板2に対し油膜を介して設置されたスラスト軸受静止板4と、このスラスト軸受静止板4を載置した多数のスラスト軸受スプリング5と、これらのスプリング5を支持するスプリング台6とを備えている。
【0003】
また、スラスト軸受部3の周囲には、潤滑油7を収容したスラスト軸受油槽8が設置され、このスラスト軸受油槽8の外部には現地オイルフラッシング装置10が設置されている。この現地オイルフラッシング装置10は、一端がスラスト軸受油槽8に接続され、かつ他端がスラスト軸受部3に接続された油循環配管11を有し、この油循環配管11には潤滑油7の流れ方向に対し上流側から循環ポンプ12,ストレーナ13,オイルクーラー14が順次設置されるとともに、ストレーナ13の入口側および出口側にそれぞれ圧力計15,16が設置されている。
【0004】
このように構成された現地オイルフラッシング装置10により現地オイルフラッシングを行うには、主機である縦軸回転電機が停止状態で、循環ポンプ12を駆動することにより、スラスト軸受油槽8内の潤滑油7を強制的にストレーナ13およびオイルクーラー14を通して再びスラスト軸受油槽8へ戻すように循環させ、途中ストレーナ13内に設けられたメッシュ網で潤滑油7中の異物を捕集する。そして、ストレーナ13の適切な清掃時期は、圧力計15,16の両者の差圧が規定値を超えた時であって、この時にオイルフラッシングを一時中断してストレーナ13を清掃していた。
【0005】
ところで、最近水車発電機,発電電動機などの回転電機は、需要家にとって高速,大容量および高効率化を要求するケースが多くなってきており、高速,大容量および高効率化に伴い、回転電機のスラスト軸受静止板4の油膜厚さは、以下に示す理由から低下傾向にある。すなわち、
(1)高速になると、スラスト軸受静止板4の単位面積当たりの発熱量が増大し、スラスト軸受静止板4の熱変形量が増大し、軸受油膜厚さにバラツキが生じるため、油膜厚さが局部的に低下することになる。
(2)大容量になると、スラスト軸受静止板4の大きさが増大する結果、熱変形量が増大し、軸受油膜厚さが局部的に低下することになる。
(3)高効率化のためには、軸受損失を低下させる必要があり、軸受損失を低下させるためには、軸受が小型になるので、軸受平均面圧が高まり、軸受温度が上昇する。その結果、軸受潤滑油粘度が低下し、油膜厚さが低下することになる。
【0006】
また、近年のスラスト軸受相似モデル試験により得たデータの解析研究により、スラスト軸受静止板4の形状は、熱的影響による変形や軸受油膜圧力などの要因に関係して非定常な運転状態で微妙に変化するため、軸受油膜厚さにバラツキが生じ、局部的に油膜厚さが低下することが分かってきた。
【0007】
このような状況で信頼性の高い運転を継続するためには、軸受油膜への異物である磁性物の混入によるスラスト軸受損傷、さらにスラスト焼損に発展し、主機が事故停止になることを回避しなければならない。そのため、スラスト軸受潤滑油中の異物を現地オイルフラッシングで時間をかけて可及的に除去することが必要になってきている。
【0008】
ところで、従来の現地オイルフラッシング方法は、回収した磁性物の大きさだけを評価してフラッシング終了可否の判定を行っており、磁性物の重量評価は実施していなかった。また、フラッシングを必要回数繰り返して回収した磁性物の合計重量についても制限値が何等設定されていなかった。
【0009】
さらに、オイルフラッシング異物回収用のストレーナ13の中に組み込まれたメッシュ網の種類は、200メッシュが使用され、またオイルフラッシング中、作業者はストレーナ13の入口側および出口側に設置した圧力計15,16の値を常時読み取り、両者の差圧が規定値以内であるか否かを監視していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の現地オイルフラッシング方法は、回収した磁性物の大きさが判定値を満足すれば、多量に存在しても評価対象にならず、異常と判断できないので、オイルフラッシングを中断して点検作業に着手することができない。したがって、この状態で主機を運転すると、潤滑油中に残留した磁性物によりスラスト軸受滑り面を損傷させる可能性があった。
【0011】
また、フラッシングを必要回数繰り返して回収した磁性物の合計重量は、制限値が設定されていないため、多量になっても異常と判断することができず、オイルフラッシングを中断して磁性物発生源を特定するための調査を実施することができなかった。その結果、この状態で主機を運転すると、潤滑油中に残留した磁性物によりスラスト軸受滑り面を損傷させる可能性があった。
【0012】
さらに、オイルフラッシング異物回収用のストレーナ13のメッシュ網の種類は、200メッシュを使用していたので、磁性物1個の大きさが最大75μmより小さい磁性物は回収することができず、その残留した磁性物によりスラスト軸受滑り面を損傷させる可能性があった。
【0013】
そして、オイルフラッシング異物回収用のストレーナ13の入口側および出口側に設置された圧力計15,16の値を作業者がオイルフラッシング中監視し、両者の差圧が制限値を超えた時にオイルフラッシングを中断し、ストレーナ13の清掃を行うようにしていたので、オイルフラッシング中、作業者がストレーナ13付近に終始待機している必要があった。
【0014】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、スラスト軸受部の潤滑油から磁性物を除去してスラスト軸受滑り面の損傷を未然に防止可能とするとともに、作業員による圧力計の読取作業を不要にした回転電機の現地オイルフラッシング方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、回転電機のスラスト軸受部に供給する潤滑油を循環ポンプにより循環し、前記潤滑油中の異物をストレーナで回収する回転電機の現地オイルフラッシング方法において、前記ストレーナで回収した異物の中から磁性物を選り分け、その磁性物1個の大きさを最大100μm、1回のフラッシングの回収磁性物の重量を0.005gに設定し、これら制限値を満たすまで必要回数フラッシングを繰り返すことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、スラスト軸受特性上有害な大きさおよび重量を伴う磁性物をスラスト軸受油槽内および油循環配管を満たす潤滑油から排除することができ、その結果信頼性の高い主機運転を達成することができる。
【0019】
また、スラスト軸受部への影響を考慮して油膜厚さ100μmより大きな磁性物が主機運転時、高速旋回流に乗って強制的に油膜に入り込むと、スラスト軸受静止板の滑り面に傷をつけると考えて、磁性物1個の大きさを最大100μmとする制限値を設けることにより、それらの制限値を満足するまでフラッシングを繰り返して行うことで、スラスト軸受特性上有害な磁性物をスラスト軸受油槽内および油循環配管系統を満たす潤滑油中から残さず回収、排除することができる結果、信頼性の高い主機運転を達成することができる。
【0020】
請求項2の発明は、回転電機のスラスト軸受部に供給する潤滑油を循環ポンプにより循環し、前記潤滑油中の異物をストレーナで回収する回転電機の現地オイルフラッシング方法において、前記ストレーナに、300メッシュ網を使用するとともに、オイルフラッシングを必要回数繰り返して回収した磁性物の合計重量の制限値を0.3gに設定し、この設定値に達した場合は異常と判定し、前記オイルフラッシングを中断して磁性物発生源特定の調査を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、磁性物がまだ潤滑油中に残留した状態で、主機運転を行うことを回避することができるので、磁性物によるスラスト軸受静止板の滑り面の損傷を防止することができる。
また、本発明によれば、スラスト軸受特性に及ぼす影響を検討した結果に基づいて回収した磁性物の合計重量を0.3gに制限することにより、0.3gに達した場合は異常の判定をしてオイルフラッシングを中断し、磁性物発生源特定の調査のため、抜油し、スラスト軸受油槽内、油循環配管系統および配管系統に接続された補機を点検し、原因を見つけることにより、その対策が採られる結果、磁性物を除去することができるので、スラスト軸受静止板の滑り面の損傷を未然に防止することができる。
また、本発明によれば、オイルフラッシング異物回収用のストレーナに、300メッシュ網を使用することにより、大きさが50μm以上の磁性物が回収することができるようになるので、油膜に入り込む磁性物の大きさがより制限されて磁性物によるスラスト軸受静止板の滑り面の損傷を軽減することができ、信頼性の高い主機運転を達成することができる。
【0026】
請求項3の発明は、回転電機のスラスト軸受部に供給する潤滑油を循環ポンプにより循環し、前記潤滑油中の異物をストレーナで回収する回転電機の現地オイルフラッシング方法において、前記ストレーナの入口側および出口側の圧力を電気信号に変換し、変換した各電気信号との間の偏差に制限値を設け、その制限値を超えた場合に警報を発し、前記ストレーナの清掃時期を知らせることを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、従来の人間系による圧力計の読取作業から解放され、より確実で信頼性の高いオイルフラッシング監視作業を達成することができる。
また、本発明によれば、オイルフラッシング異物回収用のストレーナの入口側と出口側との差圧に制限値を設けておき、ストレーナに異物が捕集されると、差圧が増加し、制限値を超えた場合に警報が作動するので、作業者はオイルフラッシング中、常時ストレーナの入口側および出口側の圧力を監視する必要がなくなり、ストレーナの清掃時期を知ることができるので、信頼性の高いオイルフラッシング作業が達成することができるとともに、現地作業の省力化にも貢献することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は本発明に係る回転電機の現地オイルフラッシング方法の各実施形態を適用した装置を示す系統図である。なお、従来の構成と同一または対応する部分には図6と同一の符号を用いて説明する。また、現地オイルフラッシング装置10は、縦軸回転電機のスラスト軸受に適用される。
【0032】
図1に示すように、シャフト1には図示しない回転子が固定されるとともに、回転板2が取り付けられ、この回転板2に所定間隔をおいてスラスト軸受部3が設置されている。このスラスト軸受部3は、回転板2に対し油膜を介して設置されたスラスト軸受静止板4と、このスラスト軸受静止板4を載置した多数のスラスト軸受スプリング5と、これらのスプリング5を支持するスプリング台6とを備えている。
【0033】
また、スラスト軸受部3の周囲には、潤滑油7を収容したスラスト軸受油槽8が設置され、このスラスト軸受油槽8の外部には現地オイルフラッシング装置10が設置されている。この現地オイルフラッシング装置10は、一端がスラスト軸受油槽8に接続され、かつ他端がスラスト軸受部3に接続された油循環配管11を有し、この油循環配管11には潤滑油7の流れ方向に対し上流側から循環ポンプ12,ストレーナ13,オイルクーラー14が順次設置されるとともに、ストレーナ13の入口側および出口側にそれぞれ圧力計15,16が設置されている。
【0034】
そして、圧力計15,16により計測された圧力は、圧力計15,16にそれぞれ取り付けた図示しない圧力センサーにより電気信号に変換される。つまり、計測された圧力を圧力センサーにより電気信号に変換し、この電気信号に基づいて制御盤17の回収異物監視装置18に表示する。これにより、ストレーナ13内の異物の捕集状況を確認することが可能となる。
【0035】
ここで、圧力計15,16により計測された圧力は、それぞれ圧力センサーにより電気信号に変換された後、制御盤17内の比較器で比較され、その差圧に予め制限値を設けておき、その制限値を超えた場合に制御盤17に設けられたブザーやランプなどの警報器19から警報を発し、ストレーナ13の清掃時期を知らせるようにしている。
【0036】
[第1実施形態]
次に、本発明に係る回転電機の現地オイルフラッシング方法の第1実施形態を説明する。
【0037】
現地オイルフラッシング装置10により現地オイルフラッシングを行うには、主機である縦軸回転電機が停止状態で、循環ポンプ12を駆動することにより、スラスト軸受油槽8内の潤滑油7を強制的にストレーナ13およびオイルクーラー14を通して再びスラスト軸受油槽8へ戻すように循環させ、途中ストレーナ13内に設けられたメッシュ網で潤滑油7中の異物を捕集する。
【0038】
そして、第1実施形態では、オイルフラッシング異物回収用のストレーナ13のメッシュ網に付着した異物の中から磁性物を選り分け、1個の磁性物の寸法を顕微鏡を使用して測定するとともに、磁性物の総重量を電子分析天秤を使用して測定することにより、磁性物の大きさまたは重量のいずれか一方の制限値を満足しても他方の制限値を満足しない場合は、オイルフラッシングを必要回数繰り返して行うことにより、最終的に両者の制限値を満足するに至る。
【0039】
その結果、スラスト軸受油膜に入り込んでスラスト軸受静止板4の滑り面を損傷させる有害な磁性物をスラスト軸受油槽8内および油循環配管11を満たす潤滑油7から除去することができるので、信頼性の高い主機運転を達成することができる。
【0040】
[第2実施形態]
本発明に係る回転電機の現地オイルフラッシング方法の第2実施形態を図2〜図4に基づいて説明する。図2(A),(B)は制限値を数値化するための油膜と磁性物の大きさとの関係を示す説明図、図3(A),(B)は軸受潤滑油中の磁性物によるスラスト軸受静止板の損傷状況を示す説明図、図4はフラッシング時間と回収磁性物重量との関係を示す図である。
【0041】
第2実施形態は、前記第1実施形態において、磁性物の大きさおよび重量の制限値が、それぞれ磁性物1個の大きさを最大100μm、1回の回収磁性物の重量を0.005gに設定している。
【0042】
図2(A),(B)に示すように、回転板2とスラスト軸受静止板4との間の油膜20の平均厚さは、通常100μmであるが、これ以上の大きさの磁性物21が図3(A)に示すように高速旋回流に乗って油膜20内に強制的に入り込むと、図3(B)に示すようにスラスト軸受静止板4に筋状の傷22を付けたり、磁性物21が滑り面に噛み込んだりして、最悪の場合は磁性物21により局部的に回転板2とスラスト軸受静止板4とが金属接触となり、瞬時にスラスト軸受焼損事故に発展することがある。そのため、本実施形態では、1個の磁性物21の大きさを最大100μmとする制限値を設けている。
【0043】
また、過去のプラントで実施したオイルフラッシングで回収した磁性異物の重量を運転条件、フラッシング条件、フラッシング時間毎にプロットしグラフ化した一例を図4に示す。
【0044】
この図4から分かるように、必要回数繰り返して回収した磁性物採取量の実績に基づいて1回のフラッシングで回収する磁性物21の重量は、0.005g以内であれば、スラスト軸受部3への影響を考慮した場合、スラスト軸受静止板4の滑り面の損傷を回避可能であることが、実プラントでの定期的なスラスト軸受静止板4の点検結果実績から立証することができた。
【0045】
したがって、オイルフラッシングの判定値に1個の磁性物21の大きさを最大100μm、1回のオイルフラッシングの回収磁性物の重量を0.005gとする制限値を設定し、それらの制限値を満足するまでフラッシングを繰り返して行うことにより、スラスト軸受特性上有害な磁性物21をスラスト軸受油槽8内および油循環配管11を満たす潤滑油7中から残さず回収、排除することができる。
【0046】
その結果、主機運転時にスラスト軸受静止板4の滑り面が潤滑油7中の磁性物21によって損傷することはなくなるので、信頼性の高い安定運転を達成することができる。
【0047】
[第3実施形態]
本発明に係る回転電機の現地オイルフラッシング方法の第3実施形態を説明する。この第3実施形態は、オイルフラッシングを必要回数繰り返して回収した磁性物21の合計重量に制限値を設け、これに達した場合は異常と判定し、オイルフラッシングを中断して磁性物発生源特定の調査を行う方法である。
【0048】
すなわち、フラッシングの回収磁性物は、図4に示すようにフラッシング回数を重ねるに従って徐々に少なくなり、最終段階になれば、ほとんど0または測定不能な状態にまで改善されることが普通であるが、フラッシング回数を繰り返しても磁性物21の合計重量が一向に減少しないで、回収磁性物の合計重量が増加し続ける場合、合計重量に制限値を設けておくと、その制限値に到達した場合は、磁性物発生源が通常ではなく、明らかに「磁性物発生源に異常あり」と判断することができる。
【0049】
この場合、オイルフラッシングを一時中断し、磁性物発生源特定の調査を行い、必要箇所の分解,点検,清掃などを行って潤滑油7中に残留した磁性物21を直接除去することにより、磁性物21によるスラスト軸受静止板4の滑り面の損傷を防止することができる。
【0050】
[第4実施形態]
本発明に係る回転電機の現地オイルフラッシング方法の第4実施形態を図5に基づいて説明する。この第4実施形態は、前記第3実施形態において、オイルフラッシングを必要回数繰り返して回収した磁性物21の合計重量の制限値を0.3gに設定している。
【0051】
次に、磁性物21のスラスト軸受性能に及ぼす影響とフラッシング実績の両面から検討した結果を以下に述べる。
【0052】
(1)スラスト軸受性能に及ぼす影響からの検討
潤滑油7中に存在する大きさが最大75μmの磁性物(直径75μmの球と仮定)が各スラスト軸受静止板4当たり、その滑り面半径方向中央部横一列に幅50mm(スラスト軸受性能に影響を及ぼす長さ)並んだと仮定し、主機実運転時に潤滑油7中に存在する全磁性物21の合計重量の5%が上述したように一斉に全スラスト軸受静止板4(全12パッドと仮定)の滑り面に流入したとすると、全磁性物21の合計重量は0.42gとなる。
【0053】
ここで、スラスト軸受静止板4の滑り面の半径方向中央部に幅50mm、深さ75μmの線状の傷22の存在によるスラスト軸受油膜厚さの低下は、相似モデル試験データの解析結果から10%程度であり、これは軸受性能上支障になる値ではない。
【0054】
したがって、オイルフラッシング時の磁性物21の発生源特定の制限値として合計磁性物重量を0.3gとすることで、その制限値に達した場合、磁性物発生源特定調査を行い、その結果対策により磁性物を除去することができるので、磁性物によるスラスト軸受部静止板4の損傷を未然に防止することができる。
【0055】
(2)実際の現地オイルフラッシング実績による検討
実際の現地オイルフラッシングで、磁性物21の重量を運転条件、フラッシング時間毎にプロットし、グラフ化した一例を図5に示す。図5に示すように、回収磁性物合計重量が0.3gに達する場合は、明らかに磁性物発生源が異常であることが分かる。
【0056】
したがって、磁性物21の発生源特定の制限値として回収磁性物合計重量を0.3gとし、その制限値に到達した場合、異常と判断して磁性物発生源特定の調査を行い、その結果対策することで、磁性物を除去することができるので、磁性物21によるスラスト軸受損傷を未然に防止することができる。
【0057】
すなわち、磁性物の合計重量が0.3gに達した場合は異常の判定をしてオイルフラッシングを中断し、磁性物発生源特定の調査のため、抜油し、スラスト軸受油槽8内、油循環配管11および配管系統に接続された補機を点検し、原因を見つけることにより、その対策が採られる結果、磁性物21を除去することができるので、スラスト軸受静止板4の滑り面の損傷を未然に防止することができる。
【0058】
[第5実施形態]
本発明に係る回転電機の現地オイルフラッシング方法の第5実施形態を説明する。この第5実施形態は、オイルフラッシング異物回収用のストレーナ13に、300メッシュ網を使用している。
【0059】
スラスト軸受静止板4の滑り面の油膜厚さは、スラスト軸受静止板4の熱的影響による変形および潤滑油粘度の変化により、両者が安定状態に達するまでの領域においては低下する傾向を示し、その時滑り面の局部的領域では非常に油膜が薄くなることが最近の解析から明らかになった。
【0060】
したがって、潤滑油中に含まれる可及的に小さい磁性物までも主機運転前にオイルフラッシングで除去することが安定したスラスト軸受性能実現に必要なことであり、その結果信頼性の高い運転が可能となる。
【0061】
そこで、異物回収用のストレーナ13に、300メッシュ網を使用することにより、50μm以上の大きさの磁性物21を回収することができるようになるので、油膜20に入り込む磁性物21の大きさが制限され、スラスト軸受静止板4の滑り面の損傷を軽減することができ、より安全で信頼性の高い主機運転を達成することができる。
【0062】
[第6実施形態]
本発明に係る回転電機の現地オイルフラッシング方法の第6実施形態を図1に基づいて説明する。この第6実施形態は、ストレーナ13の入口側および出口側の圧力を電気信号に変換し、その電気信号に基づいてストレーナ13内の異物の捕集状況を確認するようにしている。
【0063】
図1に示すように、現地オイルフラッシング装置10は、ストレーナ13の入口側,出口側に設けた圧力計15,16に圧力センサーを取り付け、入口側,出口側圧力を電気信号に変換して制御盤17内の回収異物監視装置18に表示させることにより、ストレーナ13内の異物の捕集状況を補機運転管理データとともに一括して監視することができるので、人間系による圧力計の読取作業から解放されるとともに、より確実で信頼性の高いオイルフラッシング作業の監視が可能になる。
【0064】
[第7実施形態]
本発明に係る回転電機の現地オイルフラッシング方法の第7実施形態を図1に基づいて説明する。この第7実施形態は、前記第6実施形態において、ストレーナ13の入口側と出口側との差圧に制限値を設け、その制限値を超えた場合に警報を発し、ストレーナ13の清掃時期を知らせるようにしている。
【0065】
すなわち、第7実施形態では、現地オイルフラッシング装置10のストレーナ13の入口側と出口側との差圧に制限値を設定し、ストレーナ13内に組み込まれたメッシュに一定以上の異物が捕集されると差圧が増大し、制限値を超えた時、その電気信号が制御盤17内の回収異物監視装置18に表示されるとともに、警報器19から警報を発し、集中管理室の監視者にストレーナ13の清掃時期を知らせる。
【0066】
このように第7実施形態によれば、従来のように作業者が現場にオイルフラッシング中、常時滞在してストレーナ13の入口側,出口側の圧力計15,16を監視する必要がなくなるので、人間系の圧力値読取りの誤りがなくなり、信頼性の高いオイルフラッシング作業の監視が可能になるとともに、現地作業の省力化を図ることができる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、オイルフラッシング回収磁性物の1個の大きさおよび1回毎のフラッシングで回収した磁性物の総重量に制限値を設け、その制限値を満足するまでフラッシングを繰り返すことにより、潤滑油中に含まれるスラスト軸受に有害な磁性物を確実に除去することができる。
【0068】
また、フラッシングを必要回数繰り返して回収した磁性物の合計重量に制限値を設け、この制限値に達した場合は「磁性物発生源に異常あり」と判定し、オイルフラッシングを中断して磁性物発生源特定の調査、対策を行うことで、磁性物残留状態での運転を回避することができるので、スラスト軸受損傷を未然に防止することができる。
【0069】
さらに、異物回収用のストレーナのメッシュ網に、300メッシュ網を使用することにより、50μm以上の磁性物を回収することができるようになるので、スラスト軸受の油膜に入り込む磁性物の大きさがより制限され、その結果スラスト軸受滑り面損傷を軽減し、信頼性の高い主機運転が可能になる。
【0070】
そして、フラッシング異物回収用のストレーナの入口側,出口側圧力を電気信号に変換し、その電気信号に基づいてストレーナ13内の異物の捕集状況を確認する。また、その圧力差に制限値を設定し、制限値に達した場合は警報器から警報を発するようにすれば、監視者がストレーナ内の異物捕集状況とストレーナ清掃時期を把握することができるので、信頼性の高いオイルフラッシング作業の監視が可能になるとともに、現地作業の省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回転電機の現地オイルフラッシング方法の各実施形態を適用した装置を示す系統図。
【図2】(A),(B)は制限値を数値化するための油膜と磁性物の大きさとの関係を示す説明図。
【図3】(A),(B)は軸受潤滑油中の磁性物によるスラスト軸受静止板の損傷状況を示す説明図。
【図4】フラッシング時間と回収磁性物重量との関係を示す図。
【図5】フラッシング時間と合計重量を含む回収磁性物重量との関係を示す図。
【図6】縦軸回転電機に適用された従来の現地オイルフラッシング装置を示す系統図。
【符号の説明】
1 シャフト
2 回転板
3 スラスト軸受部
4 スラスト軸受静止板
5 スラスト軸受スプリング
6 スプリング台
7 潤滑油
8 スラスト軸受油槽
10 現地オイルフラッシング装置
11 油循環配管
12 循環ポンプ
13 ストレーナ
14 オイルクーラー
15 圧力計
16 圧力計
17 制御盤
18 回収異物監視装置
19 警報器
20 油膜
21 磁性物
22 傷
Claims (3)
- 回転電機のスラスト軸受部に供給する潤滑油を循環ポンプにより循環し、前記潤滑油中の異物をストレーナで回収する回転電機の現地オイルフラッシング方法において、前記ストレーナで回収した異物の中から磁性物を選り分け、その磁性物1個の大きさを最大100μm、1回のフラッシングの回収磁性物の重量を0.005gに設定し、これら制限値を満たすまで必要回数フラッシングを繰り返すことを特徴とする回転電機の現地オイルフラッシング方法。
- 回転電機のスラスト軸受部に供給する潤滑油を循環ポンプにより循環し、前記潤滑油中の異物をストレーナで回収する回転電機の現地オイルフラッシング方法において、前記ストレーナに、300メッシュ網を使用するとともに、オイルフラッシングを必要回数繰り返して回収した磁性物の合計重量の制限値を0.3gに設定し、この設定値に達した場合は異常と判定し、前記オイルフラッシングを中断して磁性物発生源特定の調査を行うことを特徴とする回転電機の現地オイルフラッシング方法。
- 回転電機のスラスト軸受部に供給する潤滑油を循環ポンプにより循環し、前記潤滑油中の異物をストレーナで回収する回転電機の現地オイルフラッシング方法において、前記ストレーナの入口側および出口側の圧力を電気信号に変換し、変換した各電気信号との間の偏差に制限値を設け、その制限値を超えた場合に警報を発し、前記ストレーナの清掃時期を知らせることを特徴とする回転電機の現地オイルフラッシング方法。
Priority Applications (1)
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