JP3670111B2 - ディスク駆動用モータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、記録ディスクを駆動するためのディスク駆動用モータに関し、特に高速、高精度に回転することが要求されるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
データの記録・再生を行うための記録ディスクとして、CD、FD、MO、MD、DVD、HD等種々のものがある。これらの記録ディスクは、記録・再生方式やデータ容量、回転速度、記録密度等の仕様あるいはディスクの材料、価格が異なるため、各ディスクごとにそれを駆動するモータとして種々のものが存在する。
【0003】
近年、電子情報が文字から画像へと移行し、それに伴う情報の高度化、大容量化によって、その情報を大量にかつ素早く記録・再生ができること、更には低コストであることなどが記録ディスク及びこれを駆動する駆動装置に対して要求されている。
【0004】
例えばCDの場合、当初は音楽再生用として登場したが、その利点を生かしCD−ROMとしてコンピュータ用へと用途が拡大した。これにより、データ容量が増大し、動作時間(シークタイム)の短縮化により記録ディスクであるCD側を速く回転させること、即ちディスク駆動用モータが高速化されるに至り、最近では音楽用CDを基準速度として、20倍速のものが実現されている。
【0005】
ところで、従来のディスク駆動用モータの具体的構成について図6を参照して説明する。
【0006】
図6に示すように、シャーシ等の固定部材1に形成された開口2にほぼ円筒状を成す保持部材3の下端部が嵌着され、保持部材3の底面開口部が閉塞板4により閉塞され、スラスト受5が閉塞板4上に載置されて保持部材3内の底部に配設され、滑り軸受6が保持部材3の内側に嵌着されている。
【0007】
さらに、保持部材3の外側にはコア8aが嵌着され、このコア8aにこのコア8aと共にステータ8を構成する巻線8bが巻装されている。また、シャフト9が滑り軸受6に嵌入され、その下端がスラスト受け5に当接し上端部が保持部材3の上方に突出して配設されている。シャフト9の上端部にはアルミニウム等の非磁性材から成るロータハブ10が嵌着され、鉄等の磁性材から成るヨーク11がロータハブ10に取り付けられている。
【0008】
このヨーク11は、円板状の基部とこの基部の周縁に下方に垂下して一体形成された垂下部とにより構成されている。そして、ヨーク11の基部の中央部に形成された開口に保持部材3が挿通された状態でその開口の周りがロータハブ10の下端部に取り付けられている。さらに、駆動用マグネット12がヨーク11の垂下部の内側に嵌入され、ステータ8に相対向する位置に配設されている。
【0009】
また図6に示すように、ロータハブ10の外側にターンテーブル14が嵌着され、このターンテーブル14の上面に緩衝材15を介して記録ディスクDが載置され、ロータハブ10の上面にこの上面とほぼ同一面を形成するようにクランプマグネット16が埋設され、このクランプマグネット16により図示しない駆動装置側のディスク押圧手段が磁気吸引されて記録ディスクDが固定されるようになっている。
【0010】
そして、ステータ8の巻線8bへの電流の通流方向が制御されてステータ8が回転磁界を発生し、この回転磁界と駆動用マグネット8の静磁界との吸引及び反発の繰り返しによって、静止状態のステータ8に対して駆動用マグネット12、ヨーク11、ロータハブ10及びシャフト9が回転し、これによりターンテーブル14及び記録ディスクDが一定方向に回転する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のようにモータが高速回転すると、それまでになかった問題が生じてくる。例えば、回転時の振れ、振動、騒音、寿命等の性能の維持、管理が困難なものとなり、特に回転振れが増大するようになったことが、データの記録・再生において避けることのできない問題である。
【0012】
これらの原因は、それまでの回転速度では無視できていた各部のわずかな寸法誤差が、高速回転により無視できなくなり、回転中のバランスの悪化を招いたためであると考えられる。
【0013】
しかしながら、上記した図6に示す従来のモータ構造では、シャフト9及び滑り軸受6の組み込み等の寸法精度を上げることによって、回転性能はある程度改善されるものの、製造コストの面から完全に改善できるものではなかった。
【0014】
一方、高速回転になると記録ディスク側の寸法誤差も回転性能に影響を及ぼすようになるが、これもディスクの製造コストを考慮した場合には現状以上に改善することは困難である。
【0015】
このように、寸法誤差をなくすことは事実上不可能であり、ある程度の寸法誤差はあるものとして回転性能を向上させる対策が望まれる。
【0016】
この発明が解決しようとする課題は、高速回転においても回転性能の低下を防止でき、特に回転振れを抑制できるようにすることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、静止部材と、前記静止部材に設けられたコア及びこのコアに巻装された巻線から成るステータと、前記静止部材に対して回転自在に支持された回転部材とを備え、前記回転部材が、前記ステータに相対向する駆動用マグネットと、前記駆動用マグネットに嵌合した嵌合部材と、前記嵌合部材の上方に配設され上面に記録ディスクが装着されるターンテーブルとにより構成されて成るディスク駆動用モータにおいて、前記回転部材と同心に形成された環状空間から成り底面が回転中心に向けて下側に傾斜している収容部と、前記収容部内に少なくとも周方向に移動自在に収容されたバランス体とにより構成され、回転時に生じる重量バランスの偏りを補正する補正機構を設けたことを特徴としている。
【0018】
この様な構成によれば、モータの回転時、特に高速回転時に、モータ各部の組み込み寸法誤差やディスクの寸法誤差による重量バランスの偏りが生じても、補正機構のバランス体がこの重量バランスの偏りを吸収するように収容部内を移動してこの重量バランスの偏りが補正されるため、極めて高い寸法精度を必要とすることなく回転時のバランス補正が可能になる。
特に、収容部の底面が、回転中心に向けて下側に傾斜しているので、底面の傾斜角度を考慮することでバランス体の位置を制御し易くなる。即ち、バランス体は、遠心力が小さい低速時には収容部の最内周部に位置し、遠心力が大きい高速時には収容部の最外周部に位置するようになり、更に始動時には必ず最内周部に位置する。
【0019】
このとき、請求項2に記載のように、前記収容部が前記ターンテーブルの下面と前記嵌合部材の上面との間に形成されていると、モータにおける駆動用マグネットやステータ等の主要部分の構造を犠牲にすることなくコンパクトにバランス体を配置することが可能になる。また、ターンテーブルの下面と嵌合部材の上面との間は、回転部材の重心に近いのでバランスされ易い。
【0021】
ところで、請求項3に記載のように、前記バランス体が複数個の球体から成ると、球体は収容部を機敏に移動するため、バランスの補正効果が迅速に発揮されると共に、バランス体が固体であるために組立時の作業性が良い。また、筆王とするバランス体の量を球体の個数の変更によって設定できるので、バランス調整がし易い。
【0022】
また、請求項4に記載のように、前記収容部の径方向長が、前記球体の直径の少なくとも2倍以上あると、球体が収容部の径方向を移動する移動量が大きくなるので、バランスの補正量を大きくすることが可能になる。
【0023】
さらに、請求項5または6に記載のように、球体の少なくともその表面が軟質材から成り、例えば鋼球に樹脂コーティングした二重構造、或いはゴム球のように単体構造であってもよく、球体同士の衝突音、摩耗等の不具合が緩和され、球体自身の損傷も抑制される。
【0024】
ところで、請求項7に記載のように、前記バランス体が、前記収容部に沿って環状を成すバネ体から成ると、バネ体は単品であるため組立時の作業性がよく、騒音が極めて低く、摩耗等の発生もほとんどないので耐久性に優れたものとなる。
【0025】
さらに、バランス体が請求項8に記載のように流動体から成ると、流動体は幾何学的形状に変形するため、よりきめ細かいバランス補正ができる。また、固体の場合に比べてバランス体の衝突音が実質的にないので極めて静粛性のあるものとなる。
【0026】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
この発明の第1の実施形態について図1を参照して説明する。
【0027】
図1において、21はシャーシ等の固定部材、22は固定部材21に形成された開口23に下端部が嵌着されたほぼ円筒状の静止部材としての保持部材、24は保持部材22の底面開口部を閉塞した閉塞板、25は閉塞板24上に載置されて保持部材22内の底部に配設されたスラスト受、26は滑り軸受であり、保持部材22の内側に嵌着されている。
【0028】
さらに図1において、28は保持部材22の外側に嵌着して設けられたコア28a及びこのコア28aに巻装された巻線28bから成るステータ、29は滑り軸受に嵌入され下端がスラスト受け25に当接し上端部が保持部材22の上方に突出して配設された回転部材としてのシャフト、30はシャフト29の上端部に嵌着されたアルミニウム等の非磁性材から成る回転部材としてのターンテーブル、31は鉄等の磁性材から成る回転部材を構成する嵌合部材としてのヨーク、32は回転部材としての駆動用マグネットである。
【0029】
このときヨーク31は、ほぼ円板状の基部とこの基部の周縁に下方に垂下して一体成形された垂下部とにより構成され、ヨーク31の基部の中央部に形成された開口に保持部材22が挿通された状態でその開口の周りの部分がターンテーブル30の下端部に取り付けられている。また駆動用マグネット32は、ヨーク31の垂下部の内側に嵌入され、ステータ28に相対向する位置に配設されている。更にターンテーブル30の上面には緩衝材33を介してCD−ROM等の記録ディスクDが載置されるようになっている。
【0030】
また図1において、35はターンテーブル30の下面に形成された環状凹部であり、この環状凹部35の開口した下面側がヨーク31の基部によって塞がれて環状空間から成る収容部36が形成されている。37はこの収容部36に収容されたバランス体としての複数個の球体であり、各球体37及びこれらを収容した収容部36により重量バランスの偏りを補正する補正機構38が構成されている。ここで、収容部36はターンテーブル30等の回転部材と同心に形成され、収容部36の径方向における幅寸法は、球体37の径よりも若干大きく設定されているが、各球体37は径方向へ移動がほとんど不可能で周方向へのみ移動できるような設定がなされている。
【0031】
ところで球体37は、9個の鋼球から成り、各球体37は収容部36の約45゜の中心角の範囲を占有して配設され、収容部36の残りの約315゜の中心角の領域は各球体37の移動用の空間となっている。
【0032】
さらに図1において、39はクランプマグネットであり、ターンテーブル31の上面にこの上面とほぼ同一面を形成するように埋設され、このクランプマグネット39により、図示しない駆動装置側に設けられたディスク押圧手段が磁気吸引されて記録ディスクDが固定されるようになっている。
【0033】
そして、ステータ28の巻線28bへの電流の通流方向が制御されてステータ28が回転磁界を発生し、この回転磁界と駆動用マグネット32との静磁界との吸引及び反発の繰り返しによって、静止状態のステータ28に対して駆動用マグネット32、ヨーク31、ターンテーブル30及びシャフト29が回転し、これにより記録ディスクDが一定方向に回転する。
【0034】
つぎに、CD−ROM等の記録ディスクDを搭載したときの動作について説明する。
【0035】
まずアンバランスの回転状態にある場合は、モータの始動後、記録ディスクDを搭載したモータの固有振動数に共振する共振回転数を越えるまでの間において、各球体37は収容部36内をランダムに移動して重力の作用により主として収容部36の最下点を中心に任意の位置に分布する。このとき、各球体37のランダムな移動による過重によってモータの回転部分はその回転中心とシャフト29の中心線とが一致しない不安定な状態のまま回転する。
【0036】
そして、共振回転数を越えた定格回転域では、記録ディスクDを搭載したモータにおいて、回転中心に対して重量バランスが偏った位置と対称な位置に各球体37が集中して配置するため、この重量バランスの偏りが補正されてモータの回転部分の傾きが修正され、回転部分はその回転中心とシャフト29の中心線とが一致した状態で安定して回転するのである。
【0037】
一方、バランスされている正常な回転状態の場合は、モータの始動後記録ディスクDを搭載したモータの固有振動数に共振する共振回転数を越えるまでの間においては、上記の場合と同様に球体37のランダムな移動による過重によって、モータは不安定な回転となる。そして、共振回転数を越えた定格回転数では、球体37は3個を単位として120゜間隔に3箇所に均等に位置する。このように、もともとバランスが良好な場合は、球体37自身が回転のバランスを乱さないように分布する。
【0038】
従って、第1の実施形態によれば、例えばモータの高速回転時に重量バランスの偏りが生じても、収容部36内に収容した各球体37によって、この重量バランスの偏りを補正することができるため、極めて高い寸法精度を必要とすることなく回転時の重量バランスの偏りを自動補正して回転振れを防止することが可能になり、モータ及び記録ディスクのいずれに寸法誤差を含んでいても、データの記録・再生動作をなす記録ディスクDが搭載された状態のモータを安定して回転することができる。勿論、正常な重量バランスの状態のときに、球体37がバランスを崩すことはない。
【0039】
また、球体37を、上記した鋼球以外の金属またはセラミック、ゴム、プラスチックを用いてもよい。更に球体37は移動すると必ず他の球体37または収容部36に衝突するので、球体37の表面に衝突しても衝突音が発生しにくい軟質材を配するようにしてもよい。例えば、鋼球を樹脂コーティングした二重構造にしたり、ゴム球であればゴム自体が軟質材となる。
【0040】
このような何れの球体37であっても、収容部36内での移動がスムーズでバランス補正を迅速に行うことができ、特に球体37の表面に樹脂コーティングのように軟質材を形成すれば、移動時の衝突音や摩擦音等の騒音を緩和でき、球体37自体の損傷または錆も抑制することができる。このことは、モータの静粛性と長寿命化に寄与することになる。
【0041】
さらに、ターンテーブル30の下面とヨーク31の上面との間に収容部36を形成したため、モータにおける駆動用マグネット32やステータ28等の主要部分の構造を犠牲にすることなくコンパクトにバランス体である球体37を配置することが可能になる。このとき、収容部36の形成位置であるターンテーブル32の下面とヨーク31の上面との間は、これらターンテーブル32やヨーク31等の回転部材の重心に近いため、バランスされ易くなる。
【0042】
なお、各球体37が占有する中心角の大きさは、特に上記した45゜に限定されるものではなく、重量バランスの偏り量に応じて収容すべき球体37の個数、大きさ、比重等の考慮により決定すればよい。
【0043】
このとき、球体37の個数は、種々のバランス状態に対応するために少なくとも2個は必要で、実験によると6個または9個のように3の倍数であることが望ましい。これは記録ディスクDを搭載したモータがバランスされている正常な回転状態において、球体37が120゜間隔の3箇所に均等に分布し、2箇所または4箇所の場合よりも安定するためである。
【0044】
さらに、球体37が収容部36を占有する範囲は、収容部36の半円分(中心角が180゜)を越えないようにする。その理由として、収容部36の半円分を越えた球体37がバランスを乱すように作用するのを防止するためである。
【0045】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態について図2を参照して説明する。但し、図2において図1と同一符号は同一のもの若しくは相当するものを示しており、以下において重複した説明は省略することとし、図1と相違する点についてのみ説明する。
【0046】
本実施形態では、図2に示すように、ターンテーブル30の下面には環状凹部41が形成され、この環状凹部41の開口した下面側がヨーク31の基部によって塞がれて環状空間から成る収容部42が形成されているが、この場合収容部42の径方向の幅寸法は球体37の径よりも十分大きく、本例では球体37の直径の約2倍に設定され、各球体37が径方向にも移動できるようになっている。
【0047】
さらに、収容部42の底面を構成するヨーク31の円板状の基部は、その周縁部が上方に反り返って傾斜し、つまりヨーク31の基部はその周縁部が回転中心に向けて下側に傾斜した形状を成しており、収容部42の径方向における上下寸法が外側に向かうに連れて小さくなっている。このためモータが回転していない静止状態では、各球体37は収容部42の最下点である最内周部に寄っている。
【0048】
ところで、通常CD−ROM駆動装置の場合、その動作方式の関係上、ディスクの内周部と外周部とでデータの読み書きの際における回転速度を変更する事が行われる。このような場合に、収容部42が上記したように球体37の径よりも十分大きな幅を有していると、定格回転域内におけるモータ回転数の変更に対しても即座に追随してバランス補正することが可能になる。
【0049】
即ち、図2に示す構造のモータでは、モータの始動後、記録ディスクDを搭載したモータの固有振動数に共振する共振回転数を越えるまでの間は、上記した第1の実施形態の場合と同様、各球体37は収容部36の内周側をランダムに移動してモータの回転部分はその回転中心とシャフト29の中心線とが一致しない不安定な状態のまま回転する。
【0050】
そして、共振回転数を越えた定格回転域では、回転中心に対して重量バランスが偏った位置と対称な位置に各球体37が集中して配置し、モータの回転部分の傾きが修正されて安定な状態で回転する。さらに、このような定格回転域において回転速度の変更が生じると、各球体37に作用する遠心力も変化し、各球体37は収容部42を径方向にも移動できることから、回転速度に応じた径方向の位置に移動して安定な回転状態が維持されるのである。
【0051】
従って、第2の実施形態によれば、上記した第1の実施形態の場合と同等の効果を得ることができるのは勿論のこと、収容部42が球体37の径よりも十分大きな幅を有していて球体37が周方向のみならず径方向にも移動できるため、回転速度が変わった場合であっても、球体37が回転速度に応じた径方向の位置に容易に移動して安定な回転状態を維持することが可能である。
【0052】
また、環状凹部41の開口した下面側を閉塞するヨーク31の基部の周縁部が上方に反り返って傾斜した形状を有し、収容部36の底面が回転中心に向けて下側に傾斜しているため、球体37は重力と底面に対する垂直抗力の合成力である内心力(回転中心側に向く力)が作用する。これによって、球体37は、静止時には収容部36の最内周部に位置し、回転時にはその内心力から回転数に比例する遠心力を差し引いただけの力が作用する。それ故に、内心力と遠心力の関係に応じて、球体37の位置を制御することができる。即ち、球体37や回転数以外に傾斜角度をも考慮することで、球体37を所定位置(バランス補正機能を作用させたくない回転数時は内周側で、作用させたい回転数時は外周側の位置)にくるような制御を容易に行うことが可能になる。また、静止時には球体37は遠心力が作用しないので、必ず最内周に位置し、常に同じ状態で始動させることができる。
【0054】
(第3の実施形態)
この発明の第3の実施形態について図3を参照して説明する。但し、図3において図1と同一符号は同一のもの若しくは相当するものを示しており、以下において重複した説明は省略することとし、図1と相違する点についてのみ説明する。
【0055】
本実施形態では、ターンテーブル30の下面が平坦に形成され、ヨーク31がシャフト29に嵌着されると共に、円板の周縁部が上方に屈曲された形状を有する閉塞体44が、ターンテーブル30とヨーク31との間に配設されてシャフト29に嵌着され、閉塞体44によってターンテーブル30の下面が包被されて環状空間から成る収容部45が形成されている。
【0056】
このとき、ターンテーブル30の平坦な下面を閉塞体44により包被することにより、収容部45の径方向における幅寸法は、図2に示す第2の実施形態の場合よりも更に大きく設定されており、各球体37の径方向への移動量としてモータ径からシャフト径を差し引いた分の十分な量が確保されている。
【0057】
従って、第3の実施形態によれば、球体37の径方向への移動量を大きくした分、回転速度の大きな変化にも対応することが可能になる。また、収容部45が閉塞体44とターンテーブル30の下面とを特異な形状に加工することなく形成されるので簡単な構造となり、組み立て易いという利点がある。
【0058】
なお、本実施形態では閉塞体44を使って収容部45を形成した場合について説明したが、上記した第1、第2の実施形態と同様にして、ターンテーブル30とヨーク31とにより径方向の幅寸法の大きな収容部45を形成したり、第2の実施形態のように収容部45の底面を回転中心に向けて下側に傾斜させる構造としてもよいのはいうまでもない。
【0059】
(第4、第5の実施形態)
この発明の第4、第5の実施形態について図4、図5をそれぞれ参照して説明する。
【0060】
第4の実施形態を示す図4において、47はバランス体としての環状のバネ体である弦巻バネであり、この弦巻バネ47は比較的バネ係数が小さく設定されており、上記した第1ないし第3の実施形態における各球体37に代わり、収容部36、42、45に収容されて収容部36、42、45に沿って環状を成すものである。
【0061】
また、第5の実施形態を示す図5において、49はバランス体としての環状のバネ体である板バネであり、上記した第1ないし第3の実施形態における各球体37に代わり、収容部36、42、45に収容されて収容部36、42、45に沿って環状を成すものである。
【0062】
このとき、弦巻バネ47や板バネ49は、回転中心に対して重量バランスの偏った位置と対称なバランス位置側に集中して密部が形成され、その位置における重量が増してバランス補正が行われるのである。
【0063】
従って、第4,第5の実施形態によれば、球体37を用いる場合のような接触音がないため、低騒音のバランス補正機構を提供することができると共に、部品点数が少ないので組み立て易いものとなる。
【0064】
また、第5の実施形態によれば、板バネ49が弦巻バネ47よりも重いため、バランス体として大きな重量を要求される場合に適している。
【0065】
なお、その他の実施形態として、バランス体を、磁性流体、オイル、水銀、ゲル状体、或いは砂等の粒子群といった流動体により構成してもよい。このとき、磁性流体により構成する場合には適当な位置(液体の封入口や隙間付近)にマグネットを配設したり、オイルであれば撥油剤を塗っておく等して漏れを防止するのが好ましい。
【0066】
このように流動体から成るバランス体を上記した収容部36、42、45内に収容すると、球体37やバネ47、49の場合に比べて流動体はより連続的にかつ幾何学的形状に変形して移動するので、よりきめ細かいバランスの補正ができると共に、移動の際の騒音等がなく効果的である。
【0067】
また、上記各実施形態では、記録ディスクDをCD−ROMとした場合について説明しているが、CD−ROM以外の他の記録ディスクにもこの発明を適用できるのは勿論である。
【0068】
さらに、バランス体である球体37やバネ47、49、流動体を収容する収容部の形成位置は、上記したようなターンテーブル30の下面側に限るものではなく、モータ回転時の重量バランスの偏り位置との関係等に基づいて、例えばヨーク31の内部や駆動用マグネット32と固定部材21との間等、適宜決定すればよい。
【0069】
また、上記した各実施形態では、シャフト29が回転するタイプのモータにこの発明を適用した場合について説明したが、その他にインナーロータタイプのモータやシャフトが固定され外側のターンテーブル等が回転するいわゆるアウターロータタイプのモータにもこの発明を適用することができるのは勿論である。
【0070】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、モータの回転時に、モータの各部の組み込み寸法誤差やディスクの寸法誤差による重量バランスの偏りが生じても、補正機構のバランス体がこの重量バランスの偏りを吸収するように収容部内を移動してこの重量バランスの偏りが補正されるため、極めて高い寸法精度を必要とすることなく回転時のバランス補正が可能になり、特に高速回転用として好適である。特に、収容部の底面が、回転中心に向けて下側に傾斜しているので、底面の傾斜角度を考慮することによって、バランス体は、遠心力が小さい低速時には収容部の最内周部に位置し、遠心力が大きい高速時には収容部の最外周部に位置するようになり、更に始動時には必ず最内周部に位置するため、底面の傾斜角度を考慮することでバランス体の位置を制御し易い。
【0071】
また、請求項2に記載の発明によれば、モータにおける駆動用マグネットやステータ等の主要部分の構造を犠牲にすることなくコンパクトにバランス体を配置することが可能になる。また、ターンテーブルの下面と嵌合部材の上面との間は、回転部材の重心に近いのでバランスされ易くなる。
【0073】
また、請求項3に記載の発明によれば、バランス体を複数個の球体により構成することによって、バランスの補正効果を迅速に発揮できると共に、バランス体が固体であるために組立時の作業性の向上を図ることができる。また、必要とするバランス体の量を球体の個数の変更によって設定できるので、バランス調整を行い易い。
【0074】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、球体が収容部の径方向を移動する移動量が大きくなるので、バランスの補正量を大きくすることが可能になる。
【0075】
また、請求項5または6に記載の発明によれば、球体の少なくとも表面を軟質材から形成することによって、球体同士の衝突音摩耗等の不具合を緩和でき、球体自身の損傷も抑制することが可能になる。
【0076】
さらに、請求項7に記載の発明によれば、バランス体を収容部に沿って環状を成すバネ体により構成することによって、バネ体は単品であるため組立時の作業性の向上を図ることができる。また、球体同士のような衝突がなく騒音が極めて低く、摩耗等の発生もほとんどないので耐久性に優れたものとなる。
【0077】
さらに、請求項8に記載の発明によれば、バランス体を流動体により構成することによって、よりきめ細かいバランス補正を行うことができる。また、固体の場合に比べてバランス体の衝突音が実質的にないので極めて静粛性のあるものを得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態の全体構成を示す切断正面図である。
【図2】この発明の第2の実施形態の全体構成を示す切断正面図である。
【図3】この発明の第3の実施形態の全体構成を示す切断正面図である。
【図4】この発明の第4の実施形態の一部の斜視図である。
【図5】この発明の第5の実施形態の(a)は一部の平面図、(b)は斜視図である。
【図6】この発明の背景となるディスク駆動用モータの切断正面図である。
【符号の説明】
22 保持部材(静止部材)
28 ステータ
28a コア
28b 巻線
29 シャフト(回転部材)
30 ターンテーブル(回転部材)
31 ヨーク(嵌合部材、回転部材)
32 駆動用マグネット(回転部材)
36、42、45 収容部
37 球体(バランス体)
47 弦巻バネ(バランス体)
49 板バネ(バランス体)
D 記録ディスク
Claims (8)
- 静止部材と、前記静止部材に設けられたコア及びこのコアに巻装された巻線から成るステータと、前記静止部材に対して回転自在に支持された回転部材とを備え、前記回転部材が、前記ステータに相対向する駆動用マグネットと、前記駆動用マグネットに嵌合した嵌合部材と、前記嵌合部材の上方に配設され上面に記録ディスクが装着されるターンテーブルとにより構成されて成るディスク駆動用モータにおいて、
前記回転部材と同心に形成された環状空間から成り底面が回転中心に向けて下側に傾斜している収容部と、前記収容部内に少なくとも周方向に移動自在に収容されたバランス体とにより構成され、回転時に生じる重量バランスの偏りを補正する補正機構を設けたことを特徴とするディスク駆動用モータ。 - 前記収容部が前記ターンテーブルの下面と前記嵌合部材の上面との間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動用モータ。
- 前記バランス体が、複数個の球体から成ることを特徴とする請求項1または2に記載のディスク駆動用モータ。
- 前記収容部の径方向長が、前記球体の直径の少なくとも2倍以上あることを特徴とする請求項3に記載のディスク駆動用モータ。
- 前記球体は、少なくともその表面が軟質材から成ることを特徴とする請求項3または4に記載のディスク駆動用モータ。
- 静止部材と、前記静止部材に設けられたコア及びこのコアに巻装された巻線から成るステータと、前記静止部材に対して回転自在に支持された回転部材とを備え、前記回転部材が、前記ステータに相対向する駆動用マグネットと、前記駆動用マグネットに嵌合した嵌合部材と、前記嵌合部材の上方に配設され上面に記録ディスクが装着されるターンテーブルとにより構成されて成るディスク駆動用モータにおいて、
前記回転部材と同心に形成された環状空間から成る収容部と、前記収容部内に少なくとも周方向に移動自在に収容されたバランス体とにより構成され、回転時に生じる重量バランスの偏りを補正する補正機構を設け、
前記バランス体が、複数個の球体から成り、前記球体は、少なくともその表面が軟質材から成ることを特徴とするディスク駆動用モータ。 - 静止部材と、前記静止部材に設けられたコア及びこのコアに巻装された巻線から成るステータと、前記静止部材に対して回転自在に支持された回転部材とを備え、前記回転部材が、前記ステータに相対向する駆動用マグネットと、前記駆動用マグネットに嵌合した嵌合部材と、前記嵌合部材の上方に配設され上面に記録ディスクが装着されるターンテーブルとにより構成されて成るディスク駆動用モータにおいて、
前記回転部材と同心に形成された環状空間から成る収容部と、前記収容部内に少なくとも周方向に移動自在に収容されたバランス体とにより構成され、回転時に生じる重量バランスの偏りを補正する補正機構を設け、
前記バランス体が、前記収容部に沿って環状を成すバネ体から成ることを特徴とするディスク駆動用モータ。 - 前記バランス体が、流動体から成ることを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動用モータ。
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