JP3669423B2 - 正帯電用電子写真感光体、その製造方法および画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、正帯電用電子写真感光体、その製造方法および画像形成装置に関し、一成分接触現像ローラとの均一な現像ニップ圧を確保できると共に、転写に際しても安定したニップ圧により均一な転写を可能とでき、また、高解像度でかつクリーニング特性に優れ、さらに、帯電特性、光感度に優れる正帯電用電子写真感光体、その製造方法および画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、画像形成装置として、感光体ドラムを画像形成装置の本体に回転可能に支持し、画像形成動作時には感光体ドラムの感光層に静電潜像を形成した後、この潜像を現像装置の一成分系現像剤によって可視像化する方式においては、感光体ドラムが剛体から成る場合、現像ローラ上に極く薄く、例えばトナー粒子1個の厚さのトナー層を設け、潜像を形成した感光体ドラム表面と接触させるか或いは微小な間隔をあけて対置させる必要がある。しかしながら、感光体ドラムを高精度に製作することは困難であり、感光体ドラムの周面に僅かな歪みがあったり、製造上のバラツキがあると、ドラムと現像ローラ間に大きな隙間ができることにより画質低下の問題があり、また、圧接する場合にはドラム表面を傷つける等の問題がある。そのため、感光体をベルト化したり、また、中間転写ベルトを採用する等の技術も開発されているが、ベルトを支持するために少なくとも2つのローラを必要とし、複写機を小型化するにあたり障害となる。
【0003】
そのため、弾性ローラ基体上に有機感光層を塗布形成して感光体ドラムとし、感光体ドラムの表面を弾性変形可能とする方式の開発が進められている。例えば、特公平4−69383号公報には、弾性ローラ基体として、ゴム等の非発泡または発泡弾性ローラ基体上に感光体支持層をアルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等の薄膜のスリーブを嵌合して形成し、ドラムに外圧が作用した部分のみは変形するが他の部分は変形しないように構成し、また、外力が取り除かれた時には完全に元のスリーブ状態に復帰することを可能とすることが記載されている。また、同公報には、導電性ゴム層を感光体支持層として使用してもよいことも記載されているが、正帯電用電子写真感光体として適した構成に関する記載はされていない。
【0004】
また、導電性発泡体層上に導電性ゴム層を例えば塗布形成する場合には、導電性発泡体層における発泡径を少なくとも20μm以下としないと塗布液が導電性発泡体層に侵入し、硬化し、導電性発泡体層における弾性を利用できなくなるという問題があり、塗布したとしても塗布層表面の平滑性は粗く、トナー画像形成や転写後のクリーニング性が困難となるという問題もある。また、弾性感光体にあっては、感光体の直径を小さくすると、感光体ドラムに対する露光と現像を同時に行なう場合に、現像ローラとの圧接により発生する歪みが感光時の感光体表面領域にまで影響を与え、感光層表面に形成される潜像が乱れるという問題が生じるが、上記の公報には、導電性発泡体層と導電性ゴム層とを組み合わせた場合に関する具体的な教示はされていない。
【0005】
一方、電子写真感光体として、感光体表面を負極性に帯電させることにより画像出力を得る負帯電用電子写真感光体があるが、感光体表面の帯電にむらが生じやすく画像のむらとなったり、また、帯電を与えるコロトロンに負極性の高電圧を印加するために多量のオゾンが発生し、環境問題や電子写真装置内の周辺部品への悪影響を来す等の問題がある。そのため、正帯電用電子写真感光体の開発が進められているが、導電性基板材料に例えば上記公報において詳述されているアルミニウムを感光体支持層として使用し、有機感光層を積層した正帯電用電子写真感光体は、その帯電特性が劣り、実用化に不向きであるという問題がある。
【0006】
また、特開昭63−70258号公報には、正帯電用電子写真感光体において、導電性基板からの電荷注入による帯電電位低下を解決するために、導電性基板と有機感光層との間に障壁を形成するように仕事関数の大きい例えばパラジウム、金等の金属層を設けることにより、感光層への電荷注入を阻止し、帯電電位を大きく、暗減衰を小さくできることを開示するが、パラジウム、金等の金属層を設けることは実用的ではないという問題がある。
【0007】
特許第2855448号には、導電性基材材料が仕事関数4.2eV以上のカーボン系導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、電荷発生材が有機顔料とした構成とすることにより、仕事関数の小さいアルミニウムの場合と比較して感光体表面の正電荷が導電性基板に注入されやすく、帯電特性に優れる感光体とできることを開示するが、感光体ドラムの表面を弾性変形可能とする方式については開示されていない。このように、感光体ドラムの表面を弾性変形可能とする方式において、正帯電用として適した感光体は未だ提供されていないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、一成分接触現像ローラとの均一な現像ニップ圧を確保できると共に転写に際しては安定したニップ圧により均一なトナー像の転写を可能とでき、また、高解像度でかつクリーニング特性に優れ、さらに、帯電特性、光感度に優れる正帯電用電子写真感光体、その製造方法、画像形成装置の提供にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の正帯電用電子写真感光体は、回転軸上に、体積抵抗が107 Ω・cm以下でアスカーC硬度が10〜50度の導電性発泡体層、体積抵抗が107 Ω・cm以下でJISK6253Dによる硬度が80度〜100度の導電性硬化樹脂からなる導電性表皮層、体積抵抗が107 Ω・cm以下の導電性下引き層、有機感光層を順次それぞれ円筒状に積層した正帯電用電子写真感光体において、該導電性発泡体層の膜厚が3mm〜15mmで、かつ、該導電性表皮層の膜厚が40μm〜200μmであって、導電性発泡体層と導電性表皮層とからなる導電性基体の導電性表皮層側からのアスカーC硬度を20度〜50度としたことを特徴とする。
【0010】
本発明の正帯電用電子写真感光体の製造方法は、回転軸上に、体積抵抗が107 Ω・cm以下でアスカーC硬度が10〜50度の導電性発泡体チューブを被覆して膜厚が3mm〜15mmの導電性発泡体層を形成した後、該導電性発泡体層上に、さらに体積抵抗が107 Ω・cm以下でJISK6253Dによる硬度が80度〜100度の導電性硬化樹脂チューブを被覆して膜厚が40μm〜200μmの導電性表皮層を形成し、該導電性発泡体層と導電性表皮層とからなる導電性基体の導電性表皮層側からのアスカーC硬度を20度〜50度とし、次いで、該導電性表皮層上に体積抵抗が107 Ω・cm以下の導電性下引き層、有機感光層を順次塗布形成することを特徴とする。
【0011】
本発明の画像形成装置は、感光体上に形成したトナー像を中間転写体上に転写し、該中間転写体上のトナー像を被転写材上に転写、定着する画像形成装置において、前記感光体が、回転軸上に、体積抵抗が107 Ω・cm以下でアスカーC硬度が10〜50度の導電性発泡体層、体積抵抗が107 Ω・cm以下でJISK6253Dによる硬度が80度〜100度の導電性硬化樹脂からなる導電性表皮層、体積抵抗が107 Ω・cm以下の導電性下引き層、有機感光層を順次それぞれ円筒状に積層し、該導電性発泡体層の膜厚が3mm〜15mmで、かつ、該導電性表皮層の膜厚が40μm〜200μmであって、導電性発泡体層と導電性表皮層とからなる導電性基体の導電性表皮層側からのアスカーC硬度を20度〜50度とした正帯電用電子写真感光体であることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1〜図3は、本発明の正帯電用電子写真感光体における回転軸の態様を相違する正帯電用電子写真感光体について、それぞれ断面により説明するための図で、図1は回転軸が金属軸である場合、図2は回転軸が金属パイプ2をブッシュ3を介して回転可能とする場合、図3は金属パイプ2上に導電性発泡体層、導電性表皮層、導電性下引き層、有機感光層を順次積層した感光体をフランジ4を介して回転可能とする場合である。図1〜図3中、1は金属軸、2は金属パイプ、3はブッシュ、4はフランジ、5は導電性発泡体層、6は導電性表皮層、7は導電性下引き層、8は有機感光層である。
【0013】
本発明の正帯電用電子写真感光体について説明する。
【0014】
図1に示す回転軸を金属軸1とする場合には、金属軸1は、直径が6mm〜20mmの鉄またはアルミ製の金属軸が例示され、正帯電用電子写真感光体を画像形成装置の本体に回転可能に支持するための部材である。
【0015】
また、図2に示す金属パイプ2とする場合は、アルミまたは鉄等の素材からなる金属製スリーブ、例えば鉄パイプ(STKM、φ28.6mm、厚み1.2mm)が例示され、また、ブッシュ2は、電子写真感光体を画像形成装置の本体に感光体を回転可能に支持するための部材であり、快削鋼(SUM)等の素材が使用され、パイプ1内に圧入や摩擦溶接等により挿入され、固定される。
【0016】
また、図3に示す感光体は、図2の金属パイプ2上に導電性発泡体層、導電性表皮層、導電性下引き層(図2同様のため図示せず)、有機感光層(図2同様のため図示せず)を順次積層した感光体の両端に、金属製フランジ4が設けられ、金属製フランジ4を感光体端部の各部に圧着させた構造とするものであり、フランジに固定した図示しない駆動軸により感光体を回転駆動可能としたものである。これにより、フランジを通して各部に直接、回転力の伝達を可能とできるので、感光体に硬質のローラ、例えば表面を粗面化した金属製の現像ローラ11を接触させて圧接現像を行なう際に、感光体における導電性発泡体層のねじれの影響を減少させることができ、画質の劣化を減少することができる。
【0017】
導電性発泡体層5としては、カーボンブラック、金属粉等を練り込んだ体積抵抗で107 Ω・cm以下、好ましくは5×106 Ω・cm以下のエチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDMゴム)、シリコンゴム、CRゴム、NBRゴム、SBRゴム、IIRゴム等の発泡体から構成され、アスカーC硬度が10〜50度、片膜厚8mm〜20mmの導電性発泡体チューブを図1〜図3における回転軸に圧入、固定したのち、片膜厚3mm〜15mmに研削、表面研磨したものである。導電性発泡体チューブは、押出成型により公知の方法で発泡成型されるものでよいが、その内径を金属軸1、または金属パイプ2のそれぞれの外径より若干小さくしておくことにより、金属軸1、または金属パイプ2に対する密着性を上げて固定することができ、特別の接着剤を不要とできる。接着剤を使用する場合には通常のゴム系接着剤を電気抵抗に影響のない範囲で使用してもよい。
【0018】
導電性発泡体としては、120℃以上の耐熱性があること、加工性に優れること、耐溶剤性に優れること、圧縮永久歪みに優れること等の観点からシリコンゴム、EPDMゴム、CRゴム、NBRゴムの発泡体が好ましく、特にEPDMゴム発泡体が好ましい。また、導電性発泡体における発泡形状は、直径100μm〜800μmの気泡が相互に独立した単泡状態、または連泡状態が例示され、セル数は32/インチ〜254/インチとされるとよい。
【0019】
導電性表皮層6は、導電性硬化樹脂からなる。導電性硬化樹脂層は、体積抵抗で107 Ω・cm以下、好ましくは5×106 Ω・cm以下の硬化樹脂チューブを使用して形成される。硬化樹脂としては、熱硬化樹脂、光硬化樹脂、また、ポリエーテルウレタン等のごとく硬化剤を使用して硬化させたもので、例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、尿素メラミン系樹脂、アクリル系樹脂の硬化樹脂を使用して押出硬化成型により成型されたチューブが例示される。導電性表皮層は、導電性発泡体層との接着性に優れると共に可撓性を有するものが好ましく、可撓性の観点からポリイミド系樹脂からなるチューブが好ましい。また、下記に示すエポキシ系樹脂の硬化物でもよい。
【0020】
エポキシ系樹脂としては、下記構造式の化合物
【0021】
【化1】
(ビスフェノールAD)で例示されるビスフェノール系エポキシド、下記構造式の化合物
【0022】
【化2】
で例示されるアルキルフェノールジグリシジルエーテル類等のフェノール系エポキシド、下記構造式の化合物
【0023】
【化3】
で例示されるポリグリコール系エポキシド、下記構造式の化合物
【0024】
【化4】
で例示されるチオコール−ジグシジル等の硫黄含有エポキシド、下記構造式の化合物
【0025】
【化5】
で例示されるグリシジルシリコン等の珪素含有エポキシド等が例示される。
【0026】
ポリエーテルウレタンにおけるアミン系硬化剤としては下記構造式の化合物
【0027】
【化6】
(ノルボルナンジアミン、2,5−(2,6−)ビス(アミノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン)
等の脂肪族アミン類が例示される。
【0028】
導電性表皮層中に含有される導電性物質としては、導電性カーボン、導電性シリカ、導電性チタン等が例示される。導電性カーボンとしては、ファーネスブラックが不純物が少なく導電性に優れており好ましく、その中で特に XCF ( Extra Conductive Furnace Black ) 、SCF ( Super Conductive Furnace Black )、CF ( Conductive Furnace Black ) 、SAF ( Super Abrasion Furnace Black )が好ましく、中でも窒素ガス吸着によるBET式比表面積が800m2 /g以上のものが好ましい。XCFとしてはケッチェンブラックインターナショナル社の「ケッチェンブラックEC」、Cabot社の「バルカンXC−72」等、SCFとしてはCabot社の「バルカンSC」、「バルカンP」等、Degssa社の「コーラックスL」等、CFとしてはCabot社の「バルカンC」等、Coloumbian社の「コンダクテックスSC」等、SAFとしては旭カーボン社の「旭#9」、三菱化学社の「ダイアブラックA」、Cabot社の「バルカン9」等が例示され、また、その混合物でもよい。また、これらのカーボンブラックが50%以上でカーボンブラック全体として窒素ガス吸着によるBET式比表面積が750m2 /g以上、好ましくは800m2 /g以上、特に900m2 /g以上であればアセチレンブラック等の他のカーボンブラックを併用してもよい。導電性物質は、硬化樹脂100重量部に対して2重量部〜50重量部、好ましくは4重量部〜30重量部の割合で添加されたものとするとよい。導電性表皮層には、他に、高分子系分散剤等が適宜含有されていてもよい。
【0029】
導電性硬化樹脂からなる導電性表皮層としては、120℃以上の耐熱性があること、JISK6253Dによる硬度が80度〜100度の範囲であること、加工性に優れること、耐溶剤性に優れること等の観点が要求され、ポリイミド系樹脂チューブとして市販されている、例えばグンゼ(株)製「エンジニアリングプラスチック、体積抵抗5.3×106 Ω・cm、内径40mm、片膜厚75μm、JISK6253Dによる硬度100度)、イノアックコーポレーション(株)製「エンジニアリングプラスチック、体積抵抗6.4×105 Ω・cm、内径49mm、片膜厚70μm、JISK6253Dによる硬度93度)等を使用してもよい。
【0030】
導電性硬化樹脂からなる導電性表皮層は、導電性硬化樹脂チューブを金属軸1、または金属パイプ2上に圧入した導電性発泡体層上に同様に圧入、固定され、必要により、研削、表面研磨して片膜厚40μm〜200μmの膜厚とされる。導電性硬化樹脂チューブは、導電性硬化性樹脂を遠心成型により硬化成型されて得られるものでよいが、その内径を回転軸に被覆した導電性発泡体層の外径より若干小さくしておくことにより、導電性発泡体層に対する密着性を上げて固定することができ、特別の接着剤を不要とできる。接着剤を使用する場合には、通常のゴム系接着剤を電気抵抗に影響のない範囲で使用してもよい。導電性硬化樹脂チューブを使用して導電性表皮層を形成すると、その表面の平滑性に優れるものとでき、表面粗さ(Ra)0.05μm〜0.25μm、表面粗度(Rmax)は2.50μm以下とでき、露光時における電位ムラや現像に際しての地よごれ等のないものとできる。
【0031】
後述するように、導電性表皮層上には導電性下引き層や有機感光層が設けられるが、導電性表皮層は、導電性下引き層や有機感光層形成用の塗布液に対して耐溶剤性のものとしておくとよい。また、導電性下引き層や有機感光層を塗布形成する際に使用される塗布液は導電性発泡体層上に直接塗布された場合には浸透して感光性能や導電性発泡体層を劣化させる原因ともなるが、導電性発泡体層上に導電性硬化樹脂層を形成しておくことにより、バリヤー層として作用するという利点がある。
【0032】
本発明の正帯電用電子写真感光体においては、上述した導電性発泡体層と導電性表皮層とからなる積層構造を導電性基体とすることを特徴とするが、導電性発泡体層、導電性表皮層のそれぞれの膜厚、硬度を適宜選択して積層し、導電性基体の片膜厚が3mm〜15mmとされる。
【0033】
また、該導電性基体の導電性表皮層側からのアスカーC硬度が20度〜50度、好ましくは22度〜40度とするとよい。アスカーC硬度が20度より低いと回転応力によるズレの問題があり、また、50度を越えると当接深さによる回転負荷の増大の問題がある。また、圧縮永久歪としては40%以下、好ましくは30%以下とすることができる。
【0034】
また、図5に示すように、正帯電用電子写真感光体(OPC)と剛体からなる現像ローラ(DR)とを圧接状態で接触させた際に、現像ローラ軸荷重を1.0kgf/cm〜2.5kgf/cmとしたときの感光体半径方向の変形量(食い込み量)を0.1mm〜0.38mmの範囲とできる。
【0035】
本発明の正帯電用電子写真感光体は、これにより、現像ローラとの圧接部分の近傍のみを変形させることができ、一成分接触現像ローラとの均一な現像ニップ圧を確保でき、また、転写に際しては安定したニップ圧により均一なトナー像の転写を可能とする、更に、高解像度でかつクリーニング特性に優れる感光体とできる。
【0036】
導電性基体における導電性表皮層上には、感光層の感度低下を防止することを目的として導電性下引き層7を形成するとよく、導電性下引き層は、後述する有機感光層塗布液の溶媒に対して、耐溶剤性とされるとよい。
【0037】
このような導電性下引き層は、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、アセチルセルローズ、メチル繊維素、エチル繊維素、ベンジル繊維素、ヒドロキシエチルセルローズ等と導電性物質および溶媒等からなる導電性熱可塑性樹脂組成物を、導電性表皮層上に塗布形成して得られる。導電性下引き層は、導電性表皮層との接着性に優れると共に可撓性に優れるものが好ましく、導電性弾性体としてEPDMゴムを使用する場合、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。
【0038】
ポリアミド樹脂としては、(株)鉛市製の「FR−101」、「FR−104」、「FR−105」、「FR−301」、東レ(株)製の「CM4000」、「CM8000」等が例示される。また、ポリビニルブチラール樹脂としては、積水化学工業(株)製の「エスレックB」の「BL−1」、「BL−2」、「BL−S」、「BM−1」等が挙げられる。また、ウレタン樹脂としては、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂等が例示される。
【0039】
導電性物質としては、導電性表皮層の項で記載した導電性物質が同様に使用され樹脂100重量部に対して2重量部〜35重量部、好ましくは4重量部〜25重量部の割合で添加され、他に、高分子系分散剤、酸化防止剤等が適宜含有される。
【0040】
溶媒としては、導電性表皮層に対して溶解性を有しないものが好ましく、水、メタノール、エタノール、ブチルアルコール、メチルエチルケトン、プロピレングリコール等が例示され、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル等を使用して上記各成分を混合・分散して導電性下引き層形成用組成物とされる。
【0041】
導電性下引き層形成用組成物はディップコート、リングコート、スプレーコート等により塗布され、乾燥後の膜厚が3μm〜20μm、好ましくは5μm〜15μmとされ、体積抵抗で107 Ω・cm以下、好ましくは5×106 Ω・cm以下の可撓性を有する導電性下引き層とされる。
【0042】
導電性下引き層は、導電性表皮層表面の平滑化等を目的として、必要に応じて絶縁層を介して導電性表皮層上に設けるとよい。絶縁層としては、上述した導電性下引き層に記載した樹脂及び溶剤から構成される絶縁層形成用組成物を使用して形成されるとよく、また、その膜厚は感光体を像露光した際に発生する電界下で電荷移動を容易に可能とし、かつ可撓性を有する膜厚、例えば乾燥後の膜厚が0.1μm〜0.2μmで塗布形成されるとよい。
【0043】
導電性下引き層上に設けられる有機感光層8は、導電性下引き層上に電荷発生層と電荷輸送層とを順次積層した所謂機能分離型の積層感光体、また、長寿命の観点から単層感光体である。単層有機感光体層は、電荷発生剤、電荷輸送剤、増感剤等とバインダーからなる。
【0044】
電荷発生剤としてはフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キノン系顔料、ペリレン系顔料、キノシアトン系顔料、インジゴ系顔料、ビスベンゾイミダゾール系顔料、キナクリドン系顔料が挙げられ、好ましくはフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料である。電荷輸送剤としてはヒドラゾン系、スチルベン系、フェニルアミン系、アリールアミン系、ジフェニルブタジエン系、オキサゾール系等の有機正孔輸送化合物が例示され、また、増感剤としては各種の電子吸引性有機化合物であって電子輸送剤としても知られているパラジフェノキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、クロラニル等が例示される。バインダーとしてはポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が例示される。
【0045】
各成分の組成比は、バインダー40重量%〜75重量%、電荷発生剤0.5重量%〜20重量%、電荷輸送剤10重量%〜50重量%、増感剤0.5重量%〜30重量%であり、好ましくはバインダー45重量%〜65重量%、電荷発生剤1重量%〜20重量%、電荷輸送剤20重量%〜40重量%、増感剤2重量%〜25重量%である。各成分はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤と共に、ホモミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライター、ペイントコンディショナー等の攪拌装置で粉砕・分散混合され塗布液とされる。塗布液は、導電性下引き層上にディップコート、リングコート、スプレーコート等により乾燥後の膜厚15μm〜40μm、好ましくは20μm〜35μmで塗布・乾燥される。
【0046】
このようにして形成される本発明の正帯電用電子写真感光体は、図1に示す場合にはその外径が20mm〜30mm、図2〜図3に示す場合にはその外径が30mm〜80mmとされるとよい。
【0047】
本発明の電子写真感光体を規定する仕事関数(φ)は、表面分析装置(理研計器(株)製AC−1)により測定されるものであり、導電性発泡体層の仕事関数(φR )は、発泡体を構成する樹脂の種類、組成により変化させることができ、4.4eV〜4.9eV、好ましくは4.5eV〜4.8eVとするとよい。
【0048】
導電性表皮層である導電性硬化樹脂層の仕事関数(φIS)は、4.5eV〜5.0eV、好ましくは4.6eV〜4.9eVとするとよい。
【0049】
また、導電性下引き層の仕事関数(φUCL )は、4.6eV〜5.7eVとし、好ましくは4.7eV〜5.5eVのものとするとよい。
【0050】
また、有機感光層の仕事関数(φOpc )は、4.0eV〜5.6eVであり、好ましくは4.2eV〜5.5eVである。
【0051】
本発明にあっては、各層における仕事関数が下記の ▲1▼ 、▲2▼ 式
▲1▼ φUCL > φOpc
▲2▼ φUCL > φIs > φR
の関係を同時に充たすとよく、これにより、帯電電位が高く、同時に光減衰残留電位の低く光感度に優れる正帯電用電子写真感光体とできる。
【0052】
一般に、仕事関数の相違する層を積層した構造にあっては、仕事関数の小さい層から仕事関数の大きい層へと電子注入性を有する。本発明の正帯電用電子写真感光体にあっては、その詳細な理由は不明であるが、有機感光層表面を正帯電したとき、暗中にあってはφUCL >φOpc とすることにより導電性下引き層から有機感光層への電子注入性を抑制することができ、導電性発泡体層と導電性表皮層とからなる導電性基体に誘起される負電荷の注入性が抑制されて有機感光層表面の正電荷の帯電性が高められるものと考えられる。
【0053】
また、露光時にあっては、導電性下引き層、導電性表皮層、導電性発泡体層との間に、φUCL > φIs > φR の関係により導電性発泡体層や導電性表皮層から導電性下引き層への電子注入性とできるので、有機感光層内における発生キャリヤである正孔と、基板背面側に誘起される負電荷との再結合を容易にすることができ、光減衰残留電位が低く光感度の向上した電子写真感光体となるものと考えられる。
【0054】
次に、本発明の画像形成装置について説明する。図4は本発明に係る現像装置を搭載した画像形成装置の1構成例を示す図であり、この画像形成装置は、イエローY、シアンC、マゼンタM、ブラックKからなる4色のトナー(現像剤)による現像器を用いてフルカラー画像を形成することのできる装置である。
【0055】
図4において、100は像担持体ユニットが組み込まれた像担持体カートリッジである。この例では、感光体カートリッジとして構成されていて、本発明の正帯電用電子写真感光体(潜像担持体)140が図示しない適宜の駆動手段によって図示矢印方向に回転駆動される。感光体140の周りにはその回転方向に沿って、帯電手段として帯電ローラ160、現像手段としての現像器10(Y、M、C、K)、中間転写装置30、およびクリーニング手段170が配置される。
【0056】
帯電ローラ160は、感光体140の外周面に当接してその外周面を一様に帯電させる。一様に帯電した感光体140の外周面には、露光ユニット40によって所望の画像情報に応じた選択的な露光L1がなされ、この露光L1によって感光体140上に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器10によって現像剤が付与されて現像される。
【0057】
現像器として、イエロー用の現像器10Y、マゼンタ用の現像器10M、シアン用の現像器10C、およびブラック用の現像器10Kが設けられている。これら現像器10Y、10C、10M、10Kは、それぞれ揺動可能に構成されており、選択的に1つの現像器の現像ローラ(現像剤担持体)11のみが感光体140に圧接し得るようになっている。したがって、これらの現像器10は、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックKのうちのいずれかのトナーを感光体140の表面に付与して感光体140上の静電潜像を現像する。現像ローラ11は、硬質のローラ、例えば表面を粗面化した金属ローラで構成されている。現像されたトナー像は、中間転写装置30の中間転写ベルト36上に転写される。クリーニング手段170は、上記転写後に、感光体140の外周面に残留し付着しているトナーTを掻き落とすクリーナブレードと、このクリーナブレードによって掻き落とされたトナーを受ける受け部とを備えている。
【0058】
中間転写装置30は、駆動ローラ31と、4本の従動ローラ32、33、34、35と、これら各ローラの周りに張架された無端状の中間転写ベルト36とを有している。駆動ローラ31は、その端部に固定された図示しない歯車が、感光体140の駆動用歯車190と噛み合っていることによって、感光体140と略同一の周速で回転駆動され、したがって中間転写ベルト36が感光体140と略同一の周速で図示矢印方向に循環駆動されるようになっている。
【0059】
従動ローラ35は、駆動ローラ31との間で中間転写ベルト36がそれ自身の張力によって感光体140に圧接される位置に配置されており、感光体140と中間転写ベルト36との圧接部において一次転写部T1が形成されている。従動ローラ35は、中間転写ベルト36の循環方向上流側において一次転写部T1の近くに配置されている。
【0060】
従動ローラ31には、中間転写ベルト36を介して図示しない電極ローラが配置されており、この電極ローラを介して、中間転写ベルト36の導電層に一次転写電圧が印加される。従動ローラ32は、テンションローラであり、図示しない付勢手段によって中間転写ベルト36をその張り方向に付勢している。従動ローラ33は、二次転写部T2を形成するバックアップローラである。このバックアップローラ33には、中間転写ベルト36を介して二次転写ローラ38が対向配置されている。二次転写ローラ38には、二次転写電圧が印加され、図示しない接離機構により中間転写ベルト36に対して接離可能になっている。従動ローラ34は、ベルトクリーナ39のためのバックアップローラである。ベルトクリーナ39は、中間転写ベルト36と接触してその外周面に残留し付着しているトナーを掻き落とすクリーナブレード39aと、このクリーナブレード39aによって掻き落とされたトナーを受ける受け部39bとを備えている。このベルトクリーナ39は、図示しない接離機構により中間転写ベルト36に対して接離可能になっている。
【0061】
中間転写ベルト36は、導電層と、この導電層の上に形成され、感光体140に圧接される抵抗層とを有する複層ベルトで構成されている。導電層は、合成樹脂からなる絶縁性基体の上に形成されており、この導電層に前述した電極ローラを介して一次転写電圧が印加される。なお、ベルト側縁部において抵抗層が帯状に除去されることによって導電層が帯状に露出し、この露出部に電極ローラが接触するようになっている。
【0062】
中間転写ベルト36が循環駆動される過程で、一次転写部T1において、感光体140上のトナー像が中間転写ベルト36上に転写され、中間転写ベルト36上に転写されたトナー像は、二次転写部T2において、二次転写ローラ38との間に供給される用紙等のシート(記録材)Sに転写される。シートSは、給紙装置50から給送され、ゲートローラ対Gによって所定のタイミングで二次転写部T2に供給される。51は給紙カセット、52はピックアップローラである。
【0063】
二次転写部T2でトナー像が転写されたシートSは、定着装置60を通ることによってそのトナー像が定着され、排紙経路70を通って、装置本体のケース80上に形成されたシート受け部81上に排出される。なお、この画像形成装置は、排紙経路70として、互いに独立した2つの排紙経路71、72を有しており、定着装置60を通ったシートはいずれかの排紙経路71又は72を通って排出される。また、この排紙経路71、72は、スイッチバック経路をも構成しており、シートの両側に画像を形成する場合には、排紙経路71又は72に一旦進入したシートが、返送路73を通って再び二次転写部T2に向けて給送されるようになっている。
【0064】
以上のような画像形成装置全体の作動の概要は次の通りである。
(1)図示しないホストコンピュータ等(パーソナルコンピュータ等)からの印字指令信号(画像形成信号)が画像形成装置の制御部90に入力されると、感光体140、現像器10の各ローラ11、および中間転写ベルト36が回転駆動される。
(2)感光体140の外周面が帯電ローラ160によって一様に帯電される。
(3)一様に帯電した感光体140の外周面に、露光ユニット40によって第1色目(例えばイエロー)の画像情報に応じた選択的な露光L1がなされ、イエロー用の静電潜像が形成される。
(4)感光体140には、第1色目の例えばイエロー用の現像器10Yの現像ローラのみが接触し、これによって上記静電潜像が現像され、第1色目のイエローのトナー像が感光体140上に形成される。
(5)中間転写ベルト36には、上記トナーの帯電極性と逆極性の一次転写電圧が印加され、感光体140上に形成されたトナー像が、一次転写部T1において中間転写ベルト36上に転写される。このとき、二次転写ローラ38およびベルトクリーナ39は、中間転写ベルト36から離間している。
(6)感光体140上に残留しているトナーがクリーニング手段170によって除去された後、除電手段41から除電光L2によって感光体140が除電される。
(7)上記(2)〜(6)の動作が必要に応じて繰り返される。すなわち、上記印字指令信号の内容に応じて、第2色目、第3色目、第4色目と繰り返され、上記印字指令信号の内容に応じたトナー像が中間転写ベルト36上において重ね合わされて形成される。
(8)所定のタイミングで給紙装置50からシートSが給送され、シートSの先端が二次転写部T2に達する直前にあるいは達した後に(要するにシートS上の所望の位置に、中間転写ベルト36上のトナー像が転写されるタイミングで)二次転写ローラ38が中間転写ベルト36に押圧されるとともに二次転写電圧が印加され、中間転写ベルト36上のトナー像(基本的には4色のトナー像が重ね合わせられたフルカラー画像)がシートS上に転写される。また、ベルトクリーナ39が中間転写ベルト36に当接し、二次転写後に中間転写ベルト36上に残留しているトナーが除去される。
(9)シートSが定着装置60を通過することによってシートS上にトナー像が定着し、その後、シートSが所定の位置に向け(両面印刷でない場合にはシート受け部81に向け、両面印刷の場合には、スイッチバック経路71または72を経て返送路73に向け)搬送される。
【0065】
本発明に係る画像形成装置では、感光体140には、現像ローラ11、中間転写媒体36が当接状態とされる。本発明の正帯電用電子写真感光体は、その導電性基体を導電性発泡体層と導電性表皮層の積層構造とし、柔軟な導電性発泡体層と硬質の導電性表皮層とを組み合わせ、該導電性表皮層側からのアスカーC硬度を20度〜50度とすることにより、現像ローラ11や中間転写媒体36により外圧が作用した部分のみは変形するが他の部分は変形しないように構成することができ、外力が取り除かれたときには完全に元のスリーブ状態に復帰することを可能とするものであり、圧接してもドラム表面を傷つける等の問題がない。中間転写媒体13は剛体でもまた弾性体で形成されていてもよい。
【0066】
また、本発明の画像形成装置は、正帯電用電子写真感光体における導電性発泡体層の仕事関数をφR 、導電性表皮層の仕事関数をφIs、導電性下引き層の仕事関数をφUCL 、有機感光層の仕事関数φOpc としたとき、下記の ▲1▼ 、▲2▼ 式
▲1▼ φUCL > φOpc
▲2▼ φUCL > φIs > φR
の関係を同時に充たすものとすることにより、高い帯電電位が得られると共に、光減衰残留電位が低く光感度の向上を可能とする画像形成装置とできるものである。
【0067】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0068】
(実施例1)
図3により本発明の正帯電用電子写真感光体を説明する。図3において、金属パイプ2はφ35mm(外径)、厚み1.5mmのアルミパイプ(6063系)であり、パイプの内側はフランジ4の挿入部に対しインロー加工がされ、また、フランジ4はアルミ製のダイキャスト品であり、金属パイプに圧入されており、また、フランジ4の中心には回転駆動軸を通す孔が開口されている。
【0069】
(導電性発泡体層の形成)
押し出し成型で、筒状に発泡成型した導電性NBR発泡体チューブ{イノアックコーポレーション(株)製、φ30mm(内径)、片膜厚10mm、体積抵抗5.8×105 Ω・cm、アスカーC硬度25度、平均発泡セル径300μmの単泡、セル数85/インチ}を、上記で得た金属パイプ2上に圧入した後、その表面を研磨加工し、片膜厚8.5mmの導電性発泡体層を形成した。この導電性発泡体層の仕事関数を表面分析装置(理研計器(株)製AC−1)を用い、照射光量500nWの条件下で測定したところ4.63eVであった。
【0070】
(導電性表皮層の形成)
次いで、導電性ポリイミド系樹脂チューブ{イノアックコーポレーション(株)製、φ49mm(内径)、厚み70μm、体積抵抗6.4×105 Ω・cm、JISK6253D(硬度)93度)}を、上記で得た導電性発泡体層上に市販の導電性ゴム系接着剤を薄く塗布乾燥させてから圧入し、片膜厚70μmの導電性表皮層を形成した。この導電性表皮層の表面粗さ(Ra)は0.135μm、表面粗度(Rmax)は2.481μmであり、また、この導電性表皮層の仕事関数を導電性発泡体層同様に測定したところ4.83eVであった。
【0071】
得られた導電性発泡体層、導電性表皮層とからなる導電性基体について、アスカーC硬度を測定したところ、35度であった。
【0072】
(導電性下引き層の形成)
次に、下記組成
からなる導電性下引き層形成用塗液を調製した。
【0073】
この塗液に、上記の導電性表皮層を表面に有する導電性基体をディップし、塗布した後、70℃で6時間で乾燥・硬化させ、膜厚10μmの導電性下引き層を形成した。導電性下引き層の仕事関数は、5.18eVであった。
【0074】
次いで、有機感光層用組成
をペイントコンデョショナー中で100分間分散混合し、塗布液を調製し、この塗布液を導電性下引き層上にワイヤーバーにて塗布し、70℃、2時間で乾燥させ、乾燥膜厚21μmの有機感光層を積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。有機感光層表面の仕事関数は、5.09eVであった。
【0075】
得られた感光体に対して、表面を粗面化したアルミ製の剛体である現像ローラ{φ18mm(外径)}を圧接した際の現像ローラ軸荷重と感光体半径方向の変形量(食い込み量)との関係を、図5に「2層スポンジA」として図示する。
【0076】
図からわかるように、この感光体は、現像ローラ軸荷重を1kgf/cm〜2.5kgf/cmとする際の変形量を0.1mm〜0.22mmの範囲とできることがわかる。
【0077】
また、圧縮永久歪についてASTM,D395(加圧してその厚みを25%まで圧縮した状態とし、その状態で70℃の温度条件下で22時間放置し、その後加圧を解除した際に残る歪量)は25%であった。
【0078】
(実施例2)
実施例1で使用した導電性NBRの代わりに、導電製EPDM発泡体チューブ{クラレプラスチック(株)製、φ30mm(内径)、片膜厚12mm、体積抵抗4.3×105 Ω・cm、アスカーC硬度20度、平均発泡セル径320μmの単泡、セル数79/インチ}を、実施例1で得た金属パイプ2上に圧入した後、その表面を研磨加工し、片膜厚9mmの導電性発泡体層を形成した。この導電性発泡体層の仕事関数を実施例1同様に測定したところ、4.68eVであった。
【0079】
次いで、実施例1で使用した導電性硬化樹脂チューブに代えて、同じメーカーの導電性ポリイミド樹脂チューブ{φ49mm(内径)、厚み80μm、体積抵抗6.5×105 Ω・cm、JISK6253D(硬度)93度)}を使用した以外は同様にして片膜厚80μmの導電性表皮層を形成した。この導電性表皮層の表面粗さ(Ra)は0.140μm、表面粗度(Rmax)は2.538μmであり、また、この導電性表皮層の仕事関数を導電性発泡体層同様に測定したところ4.83eVであった。
【0080】
得られた導電性発泡体層、導電性表皮層とからなる導電性基体について、アスカーC硬度を測定したところ、31度であった。
【0081】
得られた導電性基体上に、実施例1同様に導電性下引き層、有機感光層を積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。
【0082】
また、得られた感光体に対して、実施例1と同様に変形量を測定したところ、図5において、2層スポンジBとして図示するように、現像ローラ軸荷重を0.9kgf/cm〜2.0kgf/cmとする際の変形量を0.10mm〜0.20mmの範囲とできた。また、圧縮永久歪は、28%であった。
【0083】
(実施例3)
実施例1で使用した導電性NBR発泡体チューブで、平均発泡セル径を450μm、セル数を56/インチとしたチューブを、実施例1で得た金属パイプ2上に圧入した後、その表面を研磨加工し、片膜厚8.5mmの導電性発泡体層を形成した。この導電性発泡体層の仕事関数を実施例1同様に測定したところ、4.63eVであった。
【0084】
次いで、実施例1で使用した導電性硬化樹脂チューブに代えて、導電性エポキシ樹脂チューブ{イノアックコーポレーション(株)製、φ49mm(内径)、厚み75μm、体積抵抗6.3×106 Ω・cm、JISK6253D(硬度)98度)}を使用した以外は同様にして片膜厚75μmの導電性表皮層を形成した。この導電性表皮層の表面粗さ(Ra)は0.101μm、表面粗度(Rmax)は1.384μmであり、また、この導電性表皮層の仕事関数を導電性発泡体層同様に測定したところ4.81eVであった。
【0085】
得られた導電性発泡体層、導電性表皮層とからなる導電性基体について、アスカーC硬度を測定したところ、22度であった。
【0086】
得られた導電性基体上に、実施例1同様に導電性下引き層、有機感光層を積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。
【0087】
また、得られた感光体に対して、実施例1と同様に変形量を測定したところ、図5において、2層スポンジCとして図示するように、現像ローラ軸荷重を1.00kgf/cm〜2.50kgf/cmとする際の変形量を0.16mm〜0.38mmの範囲とできた。また、圧縮永久歪は、20%であった。
【0088】
(比較例1)
押し出し成型で筒状に成型した導電性EPDMゴムチューブ{東新ゴム化学工業(株)製、φ30mm(内径)、片膜厚10mm、体積抵抗2.5×105 Ω・cm、JISK6301A(硬度)60度)を実施例1で得た金属パイプ上に圧入した後、その表面を研磨加工し、片膜厚7mmの導電性表皮層を形成した。この導電性表皮層の表面粗さ(Ra)は0.464μm、表面粗度(Rmax)は5.893μmであった。
【0089】
得られた導電性基体上に、実施例1同様に導電性下引き層、有機感光層を積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。
【0090】
また、得られた感光体に対して、実施例1同様に変形量を測定した結果を、図5に「硬度60」として図示する。得られた感光体は、0.15mmの変形量を得るのに現像ローラ軸荷重は3.23kgf/cmの力を必要とした。また、圧縮永久歪は30%であった。
【0091】
(比較例2)
押し出し成型で筒状に成型した導電性EPDMゴムチューブ{東新ゴム化学工業(株)製、φ30mm(内径)、片膜厚10mm、体積抵抗6.7×105 Ω・cm、JISK6301A(硬度)50度)を実施例1で得た金属パイプ上に圧入した後、その表面を研磨加工し、片膜厚7mmの導電性表皮層を形成した。この導電性表皮層の表面粗さ(Ra)は0.523μm、表面粗度(Rmax)は6.031μmであった。
【0092】
得られた導電性基体上に、実施例1同様に導電性下引き層、有機感光層を積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。
【0093】
また、得られた感光体に対して、実施例1同様に変形量を測定した結果を、図5に「硬度50」として示す。得られた感光体は、0.15mmの変形量を得るのに現像ローラ軸荷重を2.79kgf/cmの力を必要とした。また、圧縮永久歪は、29%であった。
【0094】
(帯電特性、光感度、光減衰残留電位についての評価)
得られた各電子写真感光体について、光誘導放電曲線(PIDC)の測定を、QEA社製の帯電特性測定装置(PDT−2000LTM)を使用し、印加電圧+6.5kV、プロセス速度200mm/secの条件で、光源は単色光780nmで測定した。
【0095】
なお、光半減露光量E1/2(μJ/cm2 )は、初期の表面電位V0 から1/2V0 にまで減衰させるのに必要な露光量である。また、光減衰残留電位(V)は露光エネルギー3μJ/cm2 での測定値である。なお、帯電測定基体は常温、常湿の暗中に24時間放置した後測定に供した。
【0096】
得られた各電子写真感光体における導電性発泡体層の仕事関数(φR )、導電性表皮層の仕事関数(φIs)、導電性下引き層の仕事関数(φUCL )、有機感光層の仕事関数(φOpc )との相互の関係を下記表1に示す。
【0097】
【表1】
各電子写真感光体における帯電特性、光感度、光減衰残留電位について、表2に示す。
【0098】
【表2】
なお、表から、φUCL > φOpc と φUCL > φIs > φR の関係を同時に充たすものとすることにより、高い帯電電位が得られると共に、光減衰残留電位が低く光感度の向上を可能とすることがわかる。
【0099】
【発明の効果】
本発明の正帯電用電子写真感光体は、一成分接触現像ローラとの均一な現像ニップ圧を確保できると共に転写に際しては安定したニップ圧により均一なトナー像の転写を可能とでき、また、高解像度でかつクリーニング特性に優れ、さらに、帯電特性、光感度に優れるものとである。
【0100】
また、本発明の正帯電用電子写真感光体の製造方法は、導電性基体を導電性発泡体チューブ、導電性表皮層チューブを使用して形成し、また、導電性下引き層を塗布形成により形成することにより、導電性基体を耐塗布液性とすることができ、経時変化のない安定した正帯電用電子写真感光体とできる。
【0101】
さらに、本発明の画像形成装置は、画質低下やドラム表面を傷つける等の問題がなく、帯電電位が高く、かつ光減衰残留電位が低く光感度に優れる画像形成装置とできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の正帯電用電子写真感光体の断面説明図である。
【図2】 本発明の他の正帯電用電子写真感光体の断面説明図である。
【図3】 本発明の他の正帯電用電子写真感光体の断面説明図である。
【図4】 本発明の画像形成装置を説明するための図である。
【図5】 本発明の正帯電用電子写真感光体における現像ローラ軸荷重と感光体半径方向の変形量(食い込み量)との関係を示す図である。
【符号の説明】
1はパイプ、2は金属パイプ、3はブッシュ、4はフランジ、5は導電性発泡体層、6は導電性表皮層、7は導電性下引き層、8は有機感光層、10は現像器、11は現像ローラ、36は中間転写媒体、T2は2次転写装置、50は給紙トレイ、60定着装置、70は排出経路、7は排紙トレイ、140は電子写真感光体である。
Claims (3)
- 回転軸上に、体積抵抗が107 Ω・cm以下でアスカーC硬度が10〜50度の導電性発泡体層、体積抵抗が107 Ω・cm以下でJISK6253Dによる硬度が80度〜100度の導電性硬化樹脂からなる導電性表皮層、体積抵抗が107 Ω・cm以下の導電性下引き層、有機感光層を順次それぞれ円筒状に積層した正帯電用電子写真感光体において、該導電性発泡体層の膜厚が3mm〜15mmで、かつ、該導電性表皮層の膜厚が40μm〜200μmであって、導電性発泡体層と導電性表皮層とからなる導電性基体の導電性表皮層側からのアスカーC硬度を20度〜50度としたことを特徴とする正帯電用電子写真感光体。
- 回転軸上に、体積抵抗が107 Ω・cm以下でアスカーC硬度が10〜50度の導電性発泡体チューブを被覆して膜厚が3mm〜15mmの導電性発泡体層を形成した後、該導電性発泡体層上に、さらに体積抵抗が107 Ω・cm以下でJISK6253Dによる硬度が80度〜100度の導電性硬化樹脂チューブを被覆して膜厚が40μm〜200μmの導電性表皮層を形成し、該導電性発泡体層と導電性表皮層とからなる導電性基体の導電性表皮層側からのアスカーC硬度を20度〜50度とし、次いで、該導電性表皮層上に体積抵抗が10 7 Ω・cm以下の導電性下引き層、有機感光層を順次塗布形成することを特徴とする正帯電用電子写真感光体の製造方法。
- 感光体上に形成したトナー像を中間転写体上に転写し、該中間転写体上のトナー像を被転写材上に転写、定着する画像形成装置において、前記感光体が、回転軸上に、体積抵抗が107 Ω・cm以下でアスカーC硬度が10〜50度の導電性発泡体層、体積抵抗が107 Ω・cm以下でJISK6253Dによる硬度が80度〜100度の導電性硬化樹脂からなる導電性表皮層、体積抵抗が107 Ω・cm以下の導電性下引き層、有機感光層を順次それぞれ円筒状に積層し、該導電性発泡体層の膜厚が3mm〜15mmで、かつ、該導電性表皮層の膜厚が40μm〜200μmであって、導電性発泡体層と導電性表皮層とからなる導電性基体の導電性表皮層側からのアスカーC硬度を20度〜50度とした正帯電用電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
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