JP3668789B2 - 車両のドアビームの取付構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バンパー部材、ドアビーム、ドアダメージャ等の車両用緩衝部材と取付部材の取付構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年バンパー部材、ドアビーム、ドアダメージャ等の車両用緩衝部材や補強部材として軽量化のためアルミ押出材が適用されるようになり、なかでも設計強度面から一般には閉断面形状(いわゆるホロー形状)のアルミ押出材が適用されている。しかし、閉断面形状のアルミ押出材は、(1)ダイス構造が複雑となる、(2)溶着部があるため押出速度が遅く生産性に劣る、(3)押出抵抗が大きいため高強度合金による製造が難しく、合金選択の幅が限定される等の問題があるため、ソリッド形状のアルミ押出材が一部で適用されるようになった。
例えば特開平5−311309号公報には自動車のドアビームをソリッド形状の押出材で形成する例が記載されている。また、図5は斜め後方から見たトラックのリアバンパーの一例であり、アルミ押出材からなるリアバンパー1がステイ2に溶接により取り付けられている(矢印Pは負荷の方向)。
【0003】
さらに、アルミ押出材ではないが鉄製の形材を使用したリアバンパーでは、図6に示すようにリアバンパー1の開口側を後方に向けてその上端をステイに溶接する取り付け方がかなり一般的であり、また、図7(a)に示すように、鉄板を折り曲げて製作した開断面のリアバンパー1の開口部を後方に向け、そのフランジ部1aをステイ2に溶接した例もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両用緩衝部材、例えば乗用車のドアビームはその役割として衝突時の負荷吸収性能が要求される。例えば、FMVSS(米国連邦安全規格)では最終的には実車の側面から負荷を与えたときにその負荷に対する曲げ荷重値と、荷重−変形量関係の面積で表されるエネルギー吸収量に一定の基準値を設けているが、それらは実験室レベルでは一般的に、車両にかかる衝突を想定し、図1(a)に示すように部材Aの両端を支持しその中央部を負荷治具Bで押圧する3点曲げの曲げ性能で評価される。
【0005】
上記3点曲げ試験による曲げモーメントMの分布は図1(b)に示すようになり、支持部には曲げモーメントが生じないことになる。しかし、実車に装着した場合部材は単なる3点曲げと異なり取付部材(3点曲げ試験の支持部に相当)に固定されているため、その取付部には曲げモーメントMが作用し、また軸力N(取付部に負荷される鉛直荷重)の作用により変形が生じている。従って、一般的に適用されている図1のような試験方法では、曲げモーメントMや軸力Nにより生ずるはずの取付部の変形挙動が考慮されていないことになる。
【0006】
発明者らは種々の研究を行った結果、ドアビームやバンパー、ドアダメージャ等の車両用緩衝部材においては、負荷される中央断面のみならず取付部の挙動が曲げ性能に影響を与えることを突き止めた。
例えばドアビームの場合、実際の法規に基づく評価においてはドア・車体全体の強度・剛性が負荷吸収性能に寄与するが、ビーム自体は側面衝突の比較的初期段階(剛体押し込み必要量18インチに対して6インチ程度)で主に寄与し、その初期剛性にはビーム中央部分の負荷部より取付部の剛性が大きく影響することが分かった。ここで、初期剛性とは、曲げ時の荷重(P)−変位(X)曲線の勾配であり、一般的には荷重負荷点(図1の場合は部材中央部)の部材形状と材料のヤング率の大きさで決定されるが、例えばドアビームのように両端部を固定した状態での試験においては、取付部の剛性が初期剛性に効いてくる。すなわち、取付部の剛性が小さいと、曲げたとき荷重(P)−変位(X)曲線の勾配が小さくなり、所定変位(X)までの衝突エネルギー吸収量が小さくなる。なお、FMVSSでは、ドアビームに関してはX=6インチ、12インチという所定の 変位内でのエネルギー吸収量が決められている。
また、トラックのリアバンパーに関しては、JASO規格に基づく曲げ評価試験に図2に示す自由端に負荷する荷重条件P1や取付部に負荷する荷重条件P2があり、これらの荷重に対しては取付部の剛性が大きく影響する。
【0007】
このように、ドアビームやバンパー等の車両用緩衝部材においては、取付部の挙動が曲げ性能に大きい影響を与えるが、開断面のソリッド材から形成されるこれらの部材は、閉断面のホロー材から形成される部材に比べ、曲げを受けた場合に支持点として反力を受ける取付部が変形しやすく、また、実車に装着された場合は単なる単純3点曲げではなく取付部で拘束される結果、取付部には曲げモーメントが生じて変形しやすく、いずれにしても取付部の剛性の低下につながる。
【0008】
本発明は、断面が開断面の形材を車両用緩衝部材に適用する際の上記問題点に鑑みてなされたもので、開断面の形材により構成された車両用緩衝部材を取付部材に固定する場合において、車両用緩衝部材の取付部の変形を抑制し剛性の低下を防止できる取付構造を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、断面が開断面の形材により構成された車両用緩衝部材と取付部材の取付構造であって、車両用緩衝部材が荷重方向に平行に向く2つ以上の構成部分を有するソリッド形状のアルミニウム合金押出材により構成され、取付部材が溝を有するソリッド形状のアルミニウム合金押出材により構成され、車両用緩衝部材の前記構成部分の開口側先端に形成されたフランジを取付部材の前記溝に嵌合させて包み込み、取付部材により車両用緩衝部材の取付部断面を閉断面となすとともに、その閉断面を拘束し、さらに、荷重により開口部が取付部材に押し付けられるように両部材を配置することを特徴とする車両用緩衝部材の取付構造である。なお、閉断面を拘束するとは、車両用緩衝部材の取付部断面の開口部を取付部材に固定し、閉断面の変形を抑制することを意味する。
本発明は車両用緩衝部材の取付構造として、特にトラックのリアバンパー、乗用車やトラックのインパクトビーム、同じくドアダメージャの取り付けに好適に利用できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の取付構造では、車両用緩衝部材の開口部の向きが想定される荷重方向に平行であり、かつ荷重が該開口部を取付部材に押し付ける方向に作用する形態で両部材を配置する。これは開口部の向きと荷重方向が平行からずれていると、その荷重により開口部(取付部材に固定した箇所)にせん断成分が生じ、また、平行であっても荷重の向きが逆であると、その荷重は開口部を取付部材から引き離す方向に作用するからである。
【0011】
以下、図3,4を参照して本発明をより具体的に説明する。
図3は、開断面(2本のウエブと上下のフランジからなるソリッド形状)のアルミ押出材からなるドアビーム8と同じくソリッドのアルミ押出材からなるブラケット9の取付構造を示すもので、ドアビーム8の開口側フランジ8aがブラケット9の溝に嵌合して完全に包み込まれ、ドアビーム8は取付部において開口側が閉鎖され閉断面とされている。また、ドアビーム8の開口部はブラケット9の溝に嵌合することでブラケット9に固定されているので、ドアビーム8は取付部においてホロー材を使用したとほぼ同様に変形が抑制される。
この例では、想定される荷重方向が図3に矢印Pで示す方向とすれば、荷重Pは開口部をブラケット9に押し付ける方向に作用し、せん断力も生じない。
【0012】
なお、本発明の車両用緩衝部材を構成する開断面の形材は、上記の例に限らず、例えば図4に示すような種々の形状のものが使用できる。ただし、バンパーやドアビーム等の車両用緩衝部材として使用する場合、曲げに対して剛性、強度が高い断面、すなわち荷重方向に平行に向く2つ以上の構成部分(図3の場合はウエブ部8b、図4の場合は矢印で示す部分)を備える断面が好ましい。
【0013】
ここで比較のため、図7(a)のリアバンパー1に図2のP1、P2の負荷がかけられた場合を想定すると、断面の開いた方向から荷重Pを受けることになり、その際断面が図7(b)のように開く方向に変形し剛性が低下しやすくなる。さらに、断面が開くと荷重点が外側に移動し、それに伴いステイ2に対しモーメントの足lが大きくなり、ステイ2の変形を誘発することにもなる。その変形を防止しようとするとステイの重量増につながる。
【0014】
【発明の効果】
本発明に関わる車両用緩衝部材の取付構造によれば、開断面の形材により構成した車両用緩衝部材の取付部を閉断面化することにより、取付部における変形を抑制して剛性の低下を防止することができる。
また、車両用緩衝部材をソリッド形状のアルミニウム合金押出材により構成する場合、ホローに比べたときのソリッドの利点すなわち、(1)ダイス構造が簡単で安価、(2)溶着部を有さないため押出生産性に優れる、(3)ホローで製造できない合金が適用でき合金選定の幅が広がる等の利点を維持したまま、取付部の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 曲げを受ける車両用緩衝部材を実験室で評価する一般的な単純支持での3点曲げ試験の模式図(a)及びその際の曲げモーメントの分布図(b)である。
【図2】 JASOに基づいたトラックリアバンパーの曲げ評価試験を示す模式図である

【図3】 本発明の取付構造の例を示す取付部断面図(a)及びその取付方法を説明する斜視図(b)である。
【図4】 本発明に使用する開断面の車両用緩衝部材の例(断面図)である。
【図5】 従来のトラックリアバンパーの取付構造を示す斜視図である。
【図6】 従来のトラックリアバンパーの他の取付構造を示す斜視図である。
【図7】 従来のトラックリアバンパーの他の取付構造を示す側面図(a)及び負荷時の変形状態を示す図(b)である。
【符号の説明】
8 ドアビーム
9 ブラケット

Claims (1)

  1. 断面が開断面の形材により構成されたドアビームブラケットの取付構造であって、ドアビームが荷重方向に平行に向く2つ以上のウエブを有するソリッド形状のアルミニウム合金押出材により構成され、ブラケットが溝を有するソリッド形状のアルミニウム合金押出材により構成され、ドアビームの前記ウエブの開口側先端に形成されたフランジをブラケットの前記溝に嵌合させて包み込み、ブラケットによりドアビームの取付部断面を閉断面となし、さらに、荷重によりドアビームの開口部がブラケットに押し付けられるようにドアビームとブラケットを配置することを特徴とする車両のドアビームの取付構造。
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