JP3668010B2 - ごみ焼却設備及びその制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般廃棄物および産業廃棄物を焼却処理するごみ焼却設備及びその制御方法に関し、特に、排気ガス中のダイオキシン類の量を抑制する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ごみ焼却炉のダイオキシン抑制を考慮したごみ焼却設備としては、従来、例えば、特開平4-288405号公報(以下、従来技術1とする)や、特開平9-273730号公報(以下、従来技術2とする)に記載されたものがある。
【0003】
従来技術1では、焼却炉出口または集塵装置出口のCO濃度を検出して、集塵装置入り口の排ガス温度を操作している。CO濃度はダイオキシン類の濃度と相関があることから、CO濃度をダイオキシン濃度の代替指標としている。また、CO濃度が高いときには集塵装置入り口の排ガス温度を低くして集塵効率を上げ、CO濃度が低いときには排ガス温度を高くしている。集塵装置の後流では、脱硝装置の制約から温度を昇温する必要がある。集塵装置入り口の排ガス温度を高くする理由は、集塵装置前後での熱ロスを少なくするためである。
【0004】
また、従来技術2では、従来技術1と同様に、CO濃度を代替指標としているが、操作量は二次空気量である。また、NOxも同時に低減するという特徴もある。具体的には、まず、焼却炉の運転データから二次空気量とCO濃度、NOx濃度、炉温度、それぞれの関係を抽出する。そして、これらの関係をファジールールで表現する。このファジールールに従い、CO、NOxの両方を低く押さえるように二次空気量を決定する。
【0005】
ところで、ごみ焼却設備から発生するダイオキシン類の発生メカニズムには、主として次の2つがあると推定される。
【0006】
1)焼却炉内のごみの燃焼過程で発生する。
【0007】
2)焼却炉から排ガスが出て、それが減温される過程で発生する。
【0008】
上記1)では、塩化ベンゼン、塩化フェノールといったダイオキシン類の前駆物質が反応することによって生成する生成量とダイオキシン類の燃焼による分解量とのバランスで正味の生成量が決定される。分解量は炉内の燃焼状態によって決まる。CO濃度がダイオキシンの代替物質として利用される理由は、CO濃度が燃焼状態の指標となるためである。しかし、CO濃度はダイオキシンの分解率の指標にはなっても、前駆物質からの生成量の指標とはなり得ない。したがって、CO濃度が同じ、すなわち燃焼状態が同じであっても前駆物質の濃度が異なる場合、ダイオキシン類の生成量が異なる。このような理由から、CO濃度とダイオキシン類の濃度の相関関係が崩れる場合がある。このような問題点を解決する従来技術として、特開平10-220727号公報(以下、従来技術3とする)に記載されているものがある。
【0009】
従来技術3では、ダイオキシン濃度の代替指標として、クロロベンゼン類及び/又はクロロフェノール類の濃度を用い、これらの濃度をレーザー多光子イオン化質量分析装置で計測している。また、炉内酸素濃度、炉内温度も計測し、それらの情報からごみ供給量及び/又は燃焼空気量の過不足を判定し、ごみ供給量及び/又は燃焼空気量を調整している。したがって、CO濃度を計測して、ごみ供給量及び/又は燃焼空気量を調整するよりも、ダイオキシン類の生成量を的確に把握でき、しかもその抑制効果は高い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術3のように、クロロベンゼン類等の濃度を計測してダイオキシン類の生成量を推定するためには、排ガス中に存在されるとされるごく微量な(1000ng/Nm3程度)クロロベンゼン類等を計測できる必要がある。すなわち、実質的にリアルタイムでかつ高精度な計測手段を具備することが不可欠となる。しかしながら、上記従来技術3に記載されている計測手段であるレーザー多光子イオン化質量分析装置は、塩素の1置換体であるモノクロロベンゼンはある程度イオン化できるものの、ベンゼン核に置換した塩素の数が1ケづつ増える毎に1/7から1/10の感度低下が起こるとされる。すなわち、塩素の3置換体であるトリクロロベンゼンは、モノクロロベンゼンの1/100の感度しかないといえる。一方、有毒なダイオキシン類は、塩素が4個以上置換した化合物であり、その前駆物質であるクロロベンゼン類等は、塩素が2ケまたは3ケ以上置換したものとなる。したがって、上記従来技術3に記載されたイオン化法では、イオン化の効率が低下してしまう。すなわち、排ガス中に含まれるごく微量な上記前駆物質(クロロベンゼン類および/またはクロロフェノール類)を測定することは極めて難しく、結局、ダイオキシン類の生成量をリアルタイムに的確に計測することができず、ダイオキシン類の抑制にあまり効果を上げることができないという問題点がある。
【0011】
また、上記従来技術3では、焼却炉内のごみの燃焼過程で発生するダイオキシン類に対して、燃焼炉内でのみ対応し、最終的に煙突から排気されるダイオキシン類を十分に抑制することができないという問題点もある。
【0012】
さらに、上記従来技術3では、ダイオキシン前駆物質の濃度や炉内酸素濃度や炉内温度等から、炉内の状態を想定して、ダイオキシン類の濃度が低下する操作対象を定めているが、炉内の火炎の状態が明確に判らないために、操作対象として適切なものを選定することができず、結果としてダイオキシン類を効果的に抑制することができないという問題点もある。
【0013】
そこで、本願の第一の目的は、ダイオキシン類の生成量をより的確に計測し、ダイオキシン類を効果的に抑制することができるごみ焼却設備及びその制御方法を提供することである。
【0014】
また、本願の第二の目的は、燃焼炉内のみならず、燃焼炉から排出された後の排気ガス中のダイオキシン類に対しても対処でき、最終的に煙突から排気されるダイオキシン類の量をより抑制することができるごみ焼却設備及びその制御方法を提供することである。
【0015】
また、本願の第三の目的は、ダイオキシン類の濃度に応じて、適切な操作対象を選定して、ダイオキシン類の量を効果的に抑制することができるごみ焼却設備及びその制御方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記第一の目的を達成するための第一のごみ焼却設備は、
ごみ燃焼炉と、該ごみ燃焼炉の状態を操作する操作端とを有するごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉内のガス、又は該ごみ焼却炉からの排気ガスを採取するガス採取手段と、
前記ガス採取手段で採取された試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量を計測する計測装置と、
前記計測装置で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量に応じて、前記操作端の操作量を定めて、該操作端に該操作量を出力する制御手段と、
を備え、
前記計測装置は、校正用の標準ガスを発生する標準ガス発生装置と、ガスを大気圧下でイオン化する大気圧イオン化手段と、前記ガス採取手段で採取された試料ガスと前記標準ガスとを選択的に該大気圧イオン化手段に送るための切替装置と、前記大気圧イオン化手段でイオン化された前記試料ガス中の、ダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の質量分析を行う質量分析手段と、を有する、
ことを特徴とするものである。
【0017】
前記第一の目的を達成するための第二のごみ焼却設備は、
前記第一のごみ焼却設備において、
前記ダイオキシン計測装置は、
予め定められた、前記ダイオキシン前駆物質の質量と前記ダイオキシン類の質量との相対関係を用いて、前記質量分析手段で質量分析された該ダイオキシン前駆物質の質量から該ダイオキシン類の質量を推定する推定手段を有する、
ことを特徴とするものである。
【0018】
前記第一の目的を達成するための第三のごみ焼却設備は、
前記第一及び第二のいずれかのごみ焼却設備において、
前記計測装置は、
前記試料ガスから固形不純物を取り除くフィルタと、前記フィルタ及び前記切替装置を通ってきた前記試料ガス、及び前記標準ガス発生装置から前記切替装置を通ってきた前記標準ガスを前記大気圧イオン化手段に送るための配管と、該フィルタと該切替装置と該配管とを加熱するヒータと、を有する、
ことを特徴とするものである。
【0019】
前記第一の目的を達成するための第四のごみ焼却設備は、
前記第一から第三のいずれかのごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉には、前記制御手段が制御する前記操作端として、該ごみ焼却炉内に供給されるごみの供給速度を調節するごみ供給速度調節手段、該ごみ焼却炉内に供給する一次空気の供給量を調節する一次空気量調節手段と、該一次空気の温度を調節する一次空気温度調節手段と、該一次空気が供給される位置よりも下流側に供給される二次空気の供給量を調節する二次空気量調節手段と、該二次空気を該焼却炉内に供給する向きを調節する二次空気供給方向調節手段とのうち、少なくとも該二次空気供給方向調節手段が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0020】
前記第二の目的を達成するための第一のごみ焼却設備は、
ごみ焼却炉と、該ごみ焼却炉からの排気ガスを処理する排気ガス処理系と、該排気ガス処理系と通過した該排気ガスを排気する煙突と、を有するごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉から前記煙突までの間におけるガスを互いに異なる箇所で採取する複数のガス採取手段と、
複数の前記ガス採取手段で採取された各試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量をそれぞれ計測する複数のダイオキシン計測装置と、
複数の前記ダイオキシン計測装置で計測された各ダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量から、ダイオキシン類の主要な発生要因が、複数の前記ガス採取手段のうちのいずれのガス採取手段(以下、特定ガス採取手段とする)よりも上流側の状態によるものであるかを判断し、該特定ガス採取手段よりも上流側の設備の操作端であって、該操作端の操作量に応じてダイオキシン類の生成量に影響を与える操作端に対して、該特定ガス採取手段で採取されたガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量に応じて求めた操作量を出力する制御手段と、
を備えていることを特徴とするものである。
【0021】
前記第二の目的を達成するための第二のごみ焼却設備は、
前記第二の目的を達成するための第一のごみ焼却設備において、
複数の前記ガス採取手段のうち、一つのガス採取手段が前記ごみ焼却炉内のガス、又は該ごみ焼却炉からの排気ガスであって前記排気ガス処理系に至る前の排気ガスを採取する焼却炉ガス採取手段であり、一つのガス採取手段が前記排気ガス処理系内の前記排気ガス、又は排気ガス処理系から排気された前記排気ガスを採取する処理系ガス採取手段であり、
複数の前記ダイオキシン計測装置のうち、一つのダイオキシン計測装置が前記焼却炉ガス採取手段で採取された試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量を計測する焼却炉ダイオキシン計測装置であり、一つのダイオキシン計測装置が前記処理系ガス採取手段で採取された試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量を計測する処理系ダイオキシン計測装置であり、
前記制御手段は、前記焼却炉ダイオキシン計測装置で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量と、前記処理系ダイオキシン計測装置で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量とから、ダイオキシン類の主要な発生要因が前記ごみ焼却炉の状態であるのか、前記排気ガス処理系の状態であるのかを判断し、該ごみ焼却炉と該排気ガス処理系とのうち、ダイオキシン類の主要な発生原因のある設備の前記操作端に対して、該設備の前記ダイオキシン計測装置で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量に応じて求めた操作量を出力する、
ことを特徴とするものである。
【0022】
前記第二の目的を達成するための第三のごみ焼却設備は、
前記第二の目的を達成するための第二のごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉には、前記制御手段が制御する前記操作端として、該ごみ焼却炉内に供給されるごみの供給速度を調節するごみ供給速度調節手段、該ごみ焼却炉内に供給する一次空気の供給量を調節する一次空気量調節手段と、該一次空気の温度を調節する一次空気温度調節手段と、該一次空気が供給される位置よりも下流側に供給される二次空気の供給量を調節する二次空気量調節手段と、該二次空気を該焼却炉内に供給する向きを調節する二次空気供給方向調節手段とのうち、少なくとも一つが設けられ、
前記排気ガス処理系は、前記排気ガス中の粉塵を除去する集塵装置を有すると共に、前記制御手段が制御する前記操作端として、該集塵装置に送られる該排気ガスの温度を調節する排気ガス温度調節手段と、該集塵装置に送られる該排気ガス中に活性炭を吹き込む活性炭供給量調節手段とのうち、少なくとも一つを有する、
ことを特徴とするものである。
【0023】
前記第二の目的を達成するための第四のごみ焼却設備は、
前記第二の目的を達成するための第三のごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉内の火炎を撮像する撮像手段を備え、
前記制御手段は、
ダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の各種量と前記ごみ焼却炉内の各種火炎パターンに対して、操作すべき操作端が定められているルールを用い、前記焼却炉ダイオキシン計測装置で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量と前記撮像手段で撮像された前記火炎のパターンとに応じた操作端を定めて、該操作端の動作を制御する、
ことを特徴とするものである。
【0024】
前記第三の目的を達成するための第一のごみ焼却設備は、
ストーカーが移動して、ごみ中の水分を蒸発させる乾燥ストーカー炉を有するごみ燃焼炉と、該ごみ燃焼炉の状態を操作する複数の操作端とを備えているごみ焼却設備において、
前記乾燥ストーカー炉の上部に設けられ、前記ごみ焼却炉内のガスを採取するガス採取手段と、
前記ガス採取手段で採取された試料ガス中のダイオキシン前駆物質の量を計測する計測装置と、
前記ごみ焼却炉内の火炎を撮像する撮像手段と、
ダイオキシン前駆物質の各種量と前記ごみ焼却炉内の各種火炎パターンに対して、複数の前記操作端のうち、操作すべき操作端が定められているルールを用い、前記計測装置で計測された前記ダイオキシン前駆物質の量と前記撮像手段で撮像された前記火炎のパターンに応じた操作端を定めて、該操作端の動作を制御する制御手段と、
を備えていることを特徴とするものである。
【0025】
ここで、前記第二の目的を達成するためのごみ焼却設備、及び前記第三の目的を達成するためのごみ焼却設備において、
前記ダイオキシン計測装置は、前記ガス採取手段で採取された試料ガスを大気圧下でイオン化する大気圧イオン化手段と、前記大気圧イオン化手段でイオン化された前記試料ガス中の、ダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の質量分析を行う質量分析手段と、を有することが好ましい。
【0026】
また、以上の各ごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉には、前記制御手段が制御する前記操作端として、前記ストーカーの移動速度を調節するストーカー速度調節手段が設けられていることが好ましい。
【0027】
前記第一の目的を達成するためのごみ焼却設備の制御方法は、
ごみ燃焼炉と、該ごみ燃焼炉の状態を操作する操作端とを有するごみ焼却設備の制御方法において、
前記ごみ焼却炉内のガス、又は該ごみ焼却炉からの排気ガスを採取するガス採取工程と、
前記ガス採取工程で採取された試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量を計測装置で計測する計測工程と、
前記計測工程で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量に応じて、前記操作端の操作量を定めて、該操作端に該操作量を出力する制御工程と、
前記計測装置を校正する校正工程と、
を有し、
前記計測工程は、前記ガス採取工程で採取された試料ガスを、大気圧下のモニタ部内でコロナ放電によりイオン化し、該モニタ部内でイオン化された前記試料ガス中の、ダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の質量分析し、
前記校正工程は、切替装置により、前記ガス採取工程で採取された試料ガスが前記モニタ部に導入されるのを絶ち、標準ガス発生装置からの校正用の標準ガスを前記モニタ部に導入して、前記計測装置を校正する、
ことを特徴とするものである。
【0028】
前記第二の目的を達成するためのごみ焼却設備の制御方法は、
ごみ焼却炉と、該ごみ焼却炉からの排気ガスを処理する排気ガス処理系と、該排気ガス処理系と通過した該排気ガスを排気する煙突と、を有するごみ焼却設備の制御方法において、
前記ごみ焼却炉から前記煙突までの間におけるガスを互いに異なる箇所で採取するガス採取工程と、
ガス採取工程で複数の箇所で採取された各試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量をそれぞれ計測するダイオキシン計測工程と、
前記ダイオキシン計測工程で計測された各ダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量から、ダイオキシン類の主要な発生要因が、複数のガス採取箇所のうちのいずれのガス採取箇所(以下、特定ガス採取箇所とする)よりも上流側の状態によるものであるかを判断し、該特定ガス採取箇所よりも上流側の設備の操作端であって、該操作端の操作量に応じてダイオキシン類の生成量に影響を与える操作端に対して、該特定ガス採取箇所で採取されたガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量に応じて求めた操作量を出力する制御工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0029】
前記第三の目的を達成するためのごみ焼却設備の制御方法は、
ストーカーが移動して、ごみ中の水分を蒸発させる乾燥ストーカー炉を有するごみ燃焼炉と、該ごみ燃焼炉の状態を操作する複数の操作端とを備えているごみ焼却設備の制御方法において、
前記ごみ焼却炉内のガスを、前記乾燥ストーカー炉の上部から採取するガス採取工程と、
前記ガス採取工程で採取された試料ガス中のダイオキシン前駆物質の量を計測する計測工程と、
前記ごみ焼却炉内の火炎を撮像する撮像工程と、
ダイオキシン前駆物質の各種量と前記ごみ焼却炉内の各種火炎パターンに対して、複数の前記操作端のうち、操作すべき操作端が定められているルールを用い、前記計測工程で計測された前記ダイオキシン前駆物質の量と前記撮像工程で撮像された前記火炎のパターンに応じた操作端を定めて、該操作端の動作を制御する制御工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るごみ焼却設備の各種実施形態について、図面を用いて説明する。
【0031】
まず、本発明に係るごみ焼却設備の第一の実施形態について、図1〜図6を用いて説明する。
本実施形態のごみ焼却設備は、図1に示すように、ごみ焼却炉(ストーカー炉)10を有するごみ焼却系1と、排ガス処理系2と、ガス分析装置3と、制御装置4と、ガス採取系5と、煙突6とを有している。
【0032】
ごみ焼却系1のごみ焼却炉10では、投入したごみを乾燥、燃焼させる。その結果、ごみは焼却灰と排ガスとなる。焼却灰は随時焼却炉から搬出され、排ガスは排気ガス処理系2に送られる。また、ごみ焼却炉10には、燃焼ガス流量、炉内温度などを計測するための各種センサーが取付けられており、計測した値は燃焼制御装置4に送られる。
【0033】
排ガス処理系2は、減温塔21、集塵装置22、ガス加熱器23、脱硝装置24を有している。排ガス処理系2では、排ガス中に含まれる飛灰、NOxなどの有害な物質を除去する。有害物質の除去効率を上げるため、集塵装置22の手前で活性炭を吹き込む場合もある。有害物質が除去された排ガスは、煙突6から大気中に放出される。煙突6の手前の煙道には、ガス採取系5が設置されており、採取された排ガスはガス分析装置3に送られる。
【0034】
ガス分析装置3は、各種ガス分析装置31と、ダイオキシン計測装置32とを有している。各種ガス分析装置31では、HCL、SOx、CO、O2などのガス成分が測定される。また、ダイオキシン計測装置32では、ダイオキシン類の濃度および/またはダイオキシン前駆物質濃度がオンラインで測定される。これらの測定値は、制御装置4に送られる。
【0035】
制御装置4では、ごみ焼却系1で計測された温度、圧力等の各種状態量と、ガス分析装置3で計測された各種ガス濃度の測定値が入力される。さらに、ごみ焼却系1からは、ストーカー速度などの各種操作量の値が燃焼制御装置4に入力されている。制御装置4では、これらの入力情報に基づき、ごみ焼却系1の操作量であるストーカー速度等を決定し、ごみ焼却系1に制御信号を送る。
【0036】
次に、本実施形態の各部の構成について、より詳細に説明する。
まず、図2を用いて、ごみ焼却系1について詳細に説明する。
ごみ焼却炉10では、ごみホッパ11に入れられたごみが、給塵装置110によりストーカ上に運ばれる。ストーカは、乾燥ストーカ111、燃焼ストーカ112及び後燃焼ストーカー113の3つに分かれている。乾燥ストーカ111では、主に投入ごみの水分を蒸発させる。燃焼ストーカ112では、乾燥したごみを燃焼させる。後燃焼ストーカー113では、燃焼ストーカー112で燃やし切れなかったごみを完全に燃焼させる。燃焼後の灰は、灰ピット(図示せず)に一旦堆積した後、埋め立てまたは溶融処理される。
【0037】
乾燥ストーカ111、燃焼ストーカ112、および後燃焼ストーカー113には、下部から、それぞれ乾燥用空気、燃焼用空気、後燃焼用空気が吹き込まれるようになっている。各空気は、一次空気送風ファン131により、各ストーカ111,112,113に送り込まれるが、その途中で、エアヒーター133を介して燃焼排気ガスの一部あるいは蒸気(図示せず)と熱交換して昇温される。乾燥ストーカ111、燃焼ストーカ112及び後燃焼ストーカー113への空気量は、空気流量計152a,152b,152cにより計測される。これらの空気量は、制御装置4へ送られる。制御装置4では、これらの計測空気量と空気量設定値と比較し、これらの計測空気量が空気量設定値になるよう、一次空気送風ファン131の駆動量と、それぞれのストーカへの配分量を調節する空気ダンパ121a,121b,121cの開度とを制御する。なお、このマイナー制御系は図示していない。また、各ストーカ111,112,113に送り込まれる空気の温度は、空気温度センサー153a,153b,153cにより計測される。これらの空気温度も、制御装置4へ送られる。制御装置4では、これらの計測空気温度と空気温度設定値とを比較し、これらの計測空気温度が空気温度設定値になるよう、図示していないマイナー制御系により制御されている。このマイナー制御系の操作端は、エアヒーター133を介さずに、一次空気送風ファン131からの空気を直接各ストーカー111,112,113へ導く経路に設けら得ている温度調節用ダンパ124aa,124ba,124caと、エアヒーター133で加熱された空気を各ストーカー111,112,113へ導く経路に設けら得ている温度調節用ダンパ124ab,124bb,12cbとである。各ストーカー111,112,113に供給される空気は、温度調節用ダンパ124aa,124ba,124caを通過した空気と、温度調節用ダンパ124ab,124bb,12cbを通過した高温の空気と、の配分比を調節することで、温度調節される。
【0038】
また、ストーカー上部には、二次空気吹き込みノズル134a,134bが取り付けられている。二次空気吹き込みノズル134a,134bから供給される二次空気により、乾燥ストーカー111上で発生した未燃分を多く含むガスと、燃焼ストーカー112上で発生した高温のガスが混合される。さらに、これらのガス中に、二次空気中の酸素が補給される。その結果、ほとんどの可燃性物質が燃焼される。二次空気の吹込み量(吹込み速度)は、二次空気送風ファン132の駆動量と二次空気用ダンパ129の開度とにより調節される。これら二次空気送風ファン132の駆動量、及び二次空気用ダンパ129の開度は、いずれも、燃焼制御装置4により制御される。燃焼排気ガスは、炉出口路12中では、800〜900℃の高温となっている。燃焼排気ガス温度及び炉壁温度は、それぞれ、炉内温度センサ151a,151bにより計測されている。高温の燃焼ガスから炉壁を保護するため、燃焼排気ガス温度または炉壁温度が基準値以下となるよう、ガス冷却装置(図示せず)で水を噴霧しガス温度を低下させる場合もある。焼却炉出口にボイラがあるものは、このボイラーで熱交換され、燃焼排気ガスの温度が500℃程度まで下げられる。ごみ焼却炉10から排出された燃焼排気ガスは、排ガス処理系2に送られる。
【0039】
本実施形態では、以上で述べたように、燃焼制御装置4から、給塵装置110、各ストーカー111〜113の移動機構(ストーカ速度調節手段)、空気ダンパ121、温度調節用空気ダンパ124、二次空気用ダンパ129、ファン131および二次空気用ファン132に制御信号が送られて、これらの駆動量等が調節される。この制御信号により、図示していないマイナー制御系が働き、給塵速度、各ストーカー速度、各空気温度および各空気流量が制御される。
【0040】
次に、排ガス処理系2について詳細に説明する。
排ガス処理系2は、前述したように、減温塔21、集塵装置22、ガス加熱器23、脱硝触媒装置24を有している。ごみ焼却炉10より排出された約500℃程度の排気ガス(ボイラを経由した排気ガス)は、まず、減温塔21で、250℃〜200℃程度まで下げられた後、集塵装置22に導かれる。集塵装置22の手前で排ガスの温度を下げるのは、ダイオキシン類を低減するためである。排ガス温度を下げることによりダイオキシン類を低減できる理由は、後程説明する。集塵装置22では、排ガス中の飛灰が除去される。飛灰が除去された排ガスは、ガス加熱器23に導かれ、約300℃まで昇温される。これは、後段の脱硝装置24の脱硝効果を維持するのと、煙突6から排出される排ガスの白煙防止のためである。約300℃まで昇温された排ガスは、脱硝装置24に導かれ、排ガス中のNOxが除去され、煙突6を通して大気中に排出される。
【0041】
次に、ごみ焼却系1及び排ガス処理系2でのダイオキシン類の発生メカニズムについて説明する。
ダイオキシン類とは、(化1)及び(化2)に示す2種の化合物、ポリ塩化ジベンゾ-p-ダイオキシン(PCDDsと略す)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFsと略す)の、1から9の数字で示す位置の水素が塩素(Cl)で置換された化合物群の総称である。該当する化合物は、PCDDsで75種、PCDFsで135種存在する。
【0042】
【化1】
【0043】
【化2】
【0044】
PCDDsのうち、2,3,7,8の位置に4個のClが置換したダイオキシン(2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD))は毒性が最も高い。塩素置換数が4個以上のダイオキシン類のうち、PCDDsで7種、PCDFsで1O種の化合物が毒性を持つ。これらの化合物の毒性は、2,3,7,8-TCDDの毒性に対する相対値(毒性等価係数)として定められている。焼却場から採取された試料中の各化合物の濃度に、この係数を掛けて合計した値を、等価毒性量(TEQ)として定義し、試料の毒性の指標とする。
【0045】
廃棄物の焼却過程に於けるダイオキシン類の生成には、2つの経路が存在することが推測される。
【0046】
第1の経路は、ごみ焼却炉10内において、未燃の有機塩素化合物からダイオキシン類が生成する経路である。例えば、(化3)に示すように、二つのトリクロロフェノールが縮合して、2,3,7,8-TCDDを生成する経路である。本発明では、これを前駆物質からの生成経路と称する。第2の経路は、排ガス処理系2等の低温部において未燃の有機化合物の塩素化によりダイオキシン類が生成する経路である。例えば、(化4)に示すように、ジベンゾフランが塩素化されてポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)が生成する経路である。本発明では、これを塩素化再生成経路と称する。
【0047】
【化3】
【0048】
【化4】
【0049】
以下に、それぞれの生成経路について、より詳細に説明する。
第1の経路、すなわち(化3)の反応は、これまでの報告例(小野寺 祐夫、環境技術 18巻、3号、153頁、(1989))によれば、500℃付近の温度で進行する。ダイオキシン類の前駆物質であるクロロフェノール類の沸点は、一塩化物で174℃、五塩化物で309℃である。また、同じくダイオキシン類の前駆物質であるクロロベンゼン類の沸点は、一塩化物で132℃、六塩化物で309℃である。従って、廃棄物中に含まれるダイオキシン類の前駆物質は、例えば、ストーカ炉10の乾燥段で気化し、燃焼ゾーンに拡散して、500℃あるいはそれ以上の温度になると、(化3)に示すような反応を起こし、ダイオキシン類を生成する。この反応は、燃焼反応と並行するため、一部は分解されて排出されて、二酸化炭素、塩化水素及び水蒸気として排出され、残部は、そのままダイオキシン類として排出される。
【0050】
図3に示すように、燃焼炉10での燃焼率が向上すると、燃焼によるダイオキシン類の分解量が増え、正味のダイオキシン生成量は減少する。燃焼炉10から出た後でも、例えば、ボイラ内で、500℃近傍の温度条件が維持されていると、ダイオキシン類の生成及び分解反応は、引き続き進行する。この温度条件では燃焼速度が低下するため、ボイラ内で生成されたダイオキシン類の分解量が少なくなり、結果として、正味のダイオキシン類生成量が、燃焼炉10での正味のダイオキシン類生成量よりも増加する。
【0051】
一方、第2の経路、すなわち(化4)の塩素化反応は、飛灰中に含まれる塩化銅等の触媒成分の作用により進行する。この塩素化反応は、反応温度が低いために、排ガス処理系2の減温塔21よりも下流側で起こる。また、ダイオキシン類は、飛灰等の粒子に吸着した状態で生成する。従って、第2の経路で発生するダイオキシン類は、排ガス処理系2の減温塔21よりも下流側、つまり集塵装置22当たりで生成される。このように、第2の経路で発生したダイオキシン類は、図3に示すように、集塵装置22により飛灰等の煤塵の除去と共に、そのほとんどが除去される。また、第1の経路で発生したガス状のダイオキシン類の一部も、減温塔21で冷却される結果、飛灰等の粒子に吸着し、集塵装置22により飛灰等の煤塵の除去と共に除去され、他の一部は脱硝触媒により分解される。
【0052】
このように、ガス状のダイオキシン類は、その温度を下げるほど、具体的には、250℃〜200℃程度まで下げると、粒子に付着し、集塵装置22により除去することができる。
【0053】
次に、ガス分析装置3について説明する。
ガス分析装置3は、図1を用いて前述したように、各種ガス分析装置31と、ダイオキシン計測装置32とを有している。このガス分析装置3に取り込まれる試料ガスは、排ガス処理系2と煙突6の間に設置したガス採取系5から取り込まれる。このため、試料ガスは、集塵装置22によりダストの大半が除去されている。各種ガス分析装置33では、試料ガスから、ドレンポットにより水分を除去した後、ガラス製のフィルタにより微量なダストを取り除いている。そして、ダストや水分が除去された試料ガスから、HCL、SOx、CO、O2などのガス成分を測定する。本実施形態では、HCL、SOx、CO、O2などのガス成分の測定には、一般的に使用される連続分析計を利用している。。
【0054】
ダイオキシン計測装置32では、試料ガスを安定にかつ一定流量でモニタ部に送り込む必要がある。また、途中で分析対象物質が吸着したり凝縮して損失することがないようにしなければならない。したがって、その前処理は、各種ガス分析装置33とは違ったものになる。
【0055】
ダイオキシン計測装置32は、図4に示すように、試料ガスを搬送して前処理するガス前処理部321と、試料ガス中から測定対象物質を検出するモニタ部322、さらに検出して取得したデータを処理するデータ処理部323とを有している。
【0056】
ガス前処理部321は、試料ガス中の固形不純物や飛灰を取り除く石英又はガラス製のフィルタ321aと、流路切替バルブ321bと、モニタ部322に送る試料ガスを加熱する加熱配管321cと、調圧ニードルバルブ321dと、モニタ部322で検出された試料ガスを排気するための排気ポンプ321eと、排気ガス配管321fと、排気ガスプローブ321gと、標準ガス発生装置321hと、を有して構成されている。ガス前処理部321のフィルタ321a、流路切替バルブ321b、加熱配管321c、調圧ニードルバルブ321dは、ヒーターにより100℃〜200℃程度に加熱されている。切替バルブ321bは、試料ガスをモニタ部322に送る場合と、標準ガス発生装置321hからの標準ガスをモニタ部322へ送る場合とに切替える際に操作される。標準ガス発生装置321hからの標準ガスは、モニタ部322を校正する場合に用いられる。
【0057】
モニタ部322は、送り込まれた資料ガス中の分析対象物質を選択的にかつ高い効率でイオン化を行う大気圧化学イオン源322aと、大気圧化学イオン源322aから中間圧力室などを経て送られてきたイオン化したガスを質量分析する質量分析部322bと、質量分析部322b内のガスをガス前処理部321の排気ガス配管321fに送る真空ポンプ322cとを有している。
【0058】
データ処理部323は、質量分析部322bからの信号を増幅する増幅器322aと、増幅器322aで増幅された質量分析部322bからの信号に基づいて、前駆物質の総濃度又はダイオキシン類の濃度を推定する演算器323bとを有している。
【0059】
次に、ダイオキシン計測装置32内でのガスの流れについて説明する。
煙突6の手前の煙道及びガス採取系5を経たガスは、ガス前処理部321のフィルター321aを通る過程で、試料ガス中の固形不純物や飛灰が取り除かれる。フィルタ321aは、ガス採取場所の飛灰等の多少により、2段、3段のものを用いればよい。フィルター321aにより取り除かれた飛灰中には、ダイオキシン類や有機塩素化合物が吸着されている。そのため、これら吸着された成分を脱着させるために、フィルター321aを100℃〜500℃、好ましくは150℃〜200℃に加熱している。フィルタ321aを通過した試料ガスは、切替バルブ321bを経て、大気圧化学イオン源322aに送りこまれる。ここで、コロナ放電により、ダイオキシン類や有機塩素化合物のイオン化が行われる。大気圧化学イオン源322aを経過した試料ガスの一部は、排気ポンプ321eで引かれ、ニードルバルブ321d、排気ガス配管321f、排気ガスプローブ321gを経て煙道に排気される。ニードルバルブ321dは、ガスの流れを調整し、イオン源322a内の圧力を一定にする。なお、このニードルバルブ321dの代わりに、調圧器やマスフロー制御器等を使ってもよい。大気圧化学イオン源322aを経過してイオン化した試料ガスの残りは、質量分析部322bで質量分析された後、真空ポンプ322cで引かれ、排気ガス配管321f、排気ガスプローブ321gを経て煙道に排気される。各配管系やイオン源322aは、機密構造とし、外部への漏洩及び外部大気の侵入を防いでいる。
【0060】
モニタ部322では、測定対象物質をイオン化し、その質量を計測する。イオン化法には、正イオン化モードと負イオン化モードがある。本実施形態で用いた方法は、負イオン化モードである。負イオン化モードの大気圧イオン化は、多くの妨害物質が存在する中で、有機塩素化合物を選択的にイオン化できる高感度、高選択イオン化法である。殊に、この大気圧イオン化は、コロナ放電を利用するので、電子種の電子親和力によってイオン化確率が決まり、塩素数が多いほど、イオン化確率が上昇する傾向にある。したがって、塩素数が4個以上の有毒なダイオキシン類や、その前駆物質である塩素数が2個又は3個以上のクロロベンゼン類等に対する感度が高くなり、ダイオキシン類やその前駆物質の生成量を的確に計測することができる。また、この負イオン化によれば、ダイオキシンの他、その前駆物質など多くの有機化合物もあわせてイオン化される。また、大気圧イオン化は、生成した負イオンの質量を知れば、分析対象をさらに絞り込むことができる。生成したイオンの選別には、質量分析部322bを使う。
【0061】
質量分析部322bに導入されたイオンは、そこで、質量数(分子量/電荷(m/e))毎のイオン強度、つまりマススペクトルが測定される。このマススペクトルの測定は、通常1秒以下で完了する。
【0062】
ダイオキシン類の前駆物質であるクロロベンゼン類は、電子を一個捕獲して分子イオンM ̄となる(ここで中性分子をM、負イオンをM ̄とする)。また、クロロフェノール類は、フェノオキシ基(―OH基)のプロトン一個を失い擬分子イオン(M―H) ̄となる。ダイオキシン類は、分子イオンM ̄の他に(M―Cl) ̄、(M―Cl+O) ̄、または解離して1、2オルトキノン形のフラグメントイオンなどになる。質量分析部322bでは、これらのイオン強度の特徴ピークを選択的に検出すれば、選択性の高く且つ高感度で測定できる。具体的に、このダイオキシン計測装置32は、1000ng/Nm3レベルで、2塩素置換体以上のダイオキシン類やその前駆物質の濃度を、計測誤差±10%以内で、分析時間5秒以内で、計測することができる。
【0063】
データ処理部323では、質量分析部322からの分析結果を示す信号を増幅器323aにより増幅し、それを演算器(推定手段)323bで演算処理して、ダイオキシン類の濃度を推定する。演算器323bで、クロロベンゼン類やクロロフェノール類の濃度からダイオキシン濃度を推定するには、予め求められた、クロロベンゼン類やクロロフェノール類とダイオキシン類との相関関係を用いる。
【0064】
ここで、クロロフェノール類を例にダイオキシン類との相関関係について詳しく述べる。ただし、ここで述べるダイオキシン類は、第1の経路により発生したものである。
【0065】
乾燥ストーカー111における最高到達温度は、300℃ないし400℃である。この温度は、クロロフェノール類の沸点よりも高く、廃棄物中に含まれるクロロフェノール類は、ほぼすべて気化する。従って、クロロフェノール類のガス相での濃度は、廃棄物中に含まれるクロロフェノール類の量と、全ガス量によって定まる。ここで、廃棄物供給量を F(ton/h)、廃棄物中に含まれるクロロフェノール類の量を P(ppm)、燃焼ガス量を Q(Nm3/h)とすると、クロロフェノール類のガス相での濃度 CP(ppm)は、以下の(数1)のように表せる。なお、(数1)中の(197.5)は、クロロフェノール類の分子量である。
【0066】
CP = (F*P/197.5*0.0224*298/273)/Q (数1)
投入された廃棄物が乾燥段上を移動する過程での温度上昇に応じて、クロロフェノール類の濃度は上昇するとする。すなわち、温度 T(℃)において、蒸気圧 VP(mmHg)とすると、クロロフェノール類のガス相での濃度 CPT(ppm)は、(数2)のように表せる。
【0067】
CPT = CP*VP/760 (数2)
ガス相に放出されたクロロフェノール類は、併発的に(化1)に示すダイオキシン類生成反応を起すと共に、燃焼反応を起こす。しかし、両方の反応速度を比較すると、燃焼反応の方がきわめて速い。従って、ダイオキシン類の生成は、燃焼しなかった未燃のクロロフェノール類から逐次的に生成すると仮定することができる。すなわち、クロロフェノール類の燃焼率をηcp(%)とすると、未燃のクロロフェノール類の濃度([クロロフェノール]0)は、(数3)のように表せる。
【0068】
[クロロフェノール]0 = CP * (100 - ηcp)/100 (数3)
クロロフェノール類からダイオキシン類が生成する過程では、(化3)に示すようにクロロフェノール類2分子が互いに縮合してダイオキシン類を生成する。従って、ダイオキシン類の生成速度は、(数4)のように表される。なお、(数4)中、[クロロフェノール]は、測定されるクロロフェノール類の濃度である。
【0069】
-2*d[クロロフェノール]/dt=d[ダイオキシン類]/dt=k[クロロフェノール] (数4)
この(数4)を解けば、ダイオキシン類の濃度は、生成速度定数 k を用いて(数5)のように表される。
【0070】
[ダイオキシン類]=1/2{[クロロフェノール]0*(1−exp(−k*t))} (数5)
ここで、未燃のクロロフェノールの濃度[クロロフェノール]0と実測されるクロロフェノール類の濃度[クロロフェノール]とは、ほぼ等しい。従って、(数5)は、(数6)のように表せる。
【0071】
[ダイオキシン類]=1/2{[クロロフェノール]*(1−exp(−k*t))} (数6)
以上のように、(数6)によれば、クロロフェノール類の測定濃度から、ダイオキシン類の濃度を推定することができる。ところで、(数6)の生成速度定数kは、温度等の雰囲気によって異なってくる。このため、生成速度定数kは、クロロベンゼン、クロロフェノール類の濃度測定と同時に、公定法によってダイオキシン濃度を実測して、決定することが望ましい。また、ごみ焼却炉の形状によって相関関係が異なる可能性があるため、より高精度でダイオキシン濃度を推定するには、炉毎に相関関係のデータを求めておくことが望ましい。また、以上では、ダイオキシン類の濃度とクロロフェノール類の濃度との相関関係を式から求めたが、両濃度をそれぞれ実測し、その結果から、両者の相関関係を求めるようにしてもよい。
【0072】
また、以上と同様に、クロロベンゼン類の測定濃度からも、ダイオキシン類の濃度を推定することができる。このように、クロロベンゼン類及びクロロフェノール類、つまり前駆物質の濃度が高くなれば、一定の関係で、ダイオキシン類の濃度も高くなるので、本実施形態の演算器323bでは、クロロベンゼン類やクロロフェノール類の総濃度を制御装置4へ送っている。
【0073】
なお、前駆物質の濃度を送る換わりに、クロロフェノール類の測定濃度から推定したダイオキシン類の濃度と、クロロベンゼン類の測定濃度から推定したダイオキシン類の濃度とを加算して、これをダイオキシン類の濃度とし、この推定した値を制御装置4へ送ってもよい。この場合、実際に測定されたダイオキシン濃度を制御装置4へ送ってもよいが、ここでは、前駆物質の濃度から推定されたダイオキシン類の濃度を校正するために、測定されたダイオキシン類の濃度を用いるとよい。これは、試料ガス中のダイオキシン類の濃度が低いために、前駆物質の測定よりも遥かに測定時間がかかってしまい、実測されたダイオキシン類の濃度では、リアルタイムに制御するのに不向きであるからである。
【0074】
次に、図5を用いて燃焼制御装置4について説明する。
制御装置4は、データ収録装置41、推論エンジン42、ルールベース43を有している。
【0075】
データ収録装置41には、ごみ焼却系1で計測された以下の計測値または値が入力される。
【0076】
1)ごみ焼却系1で計測された温度、圧力、空気流量等の各種状態量
2)ダイオキシン計測装置32で計測されたダイオキシン類および/またはダイ
オキシン前駆物質の濃度
3)各種ガス分析装置31で計測されたHCL、SOx、CO、O2などの濃度
4)ごみ焼却系1における各ストーカー速度、空気ダンパー開度などの各種操作量
本実施形態では、上記1)から4)のデータが5秒間隔でデータ収録装置41に順次入力する。データ収録装置41に入力した値は、データ収録装置41内に蓄えられると同時に推論エンジン42に渡される。推論エンジン42では、入力されたデータとルールベース43内に蓄えられたルールとを用いて、ごみ焼却系1の操作量である各ストーカー速度、空気ダンパー開度等の変更指令を出力する。
【0077】
ここで、推定エンジン42が各種操作量を決定する際に使用するルールについて説明する。
このルールは、発明者らがダイオキシン前駆物質の濃度に影響を及ぼす因子について検討して得た知見に基づいている。発明者らが得た知見は以下の通りである。
【0078】
知見:ごみ焼却炉10の出口のダイオキシン前駆物質の濃度が大きくなるのは以下の場合である。
【0079】
1)乾燥ストーカ111から発生するダイオキシン前駆物質の量が多い
2)二次空気による、乾燥ストーカー111上で発生した未燃分を多く含むガスと、燃焼ストーカー112上で発生した高温のガスとの混合速度が小さい。
【0080】
3)燃焼ストーカ上部での燃焼状態が悪い(火炎温度が低い、燃焼空気が不足)。
【0081】
ところで、上記3)のストーカー上部での燃焼状態(火炎温度)と、上記2)の混合速度とが一定の状態に固定されているとすると、その状態で分解できるダイオキシン前駆物質の量が決まる。したがって、前駆物質の量がこの分解量以下であれば発生した前駆物質の量に関係なく、炉出口までにほとんどの前駆物質が分解される。しかし、分解量を超えると、炉出口から超えた分だけ前駆物質が排出される。
【0082】
以上の知見に基づいたルールについて、図6を用いて説明する。なお、同図に示したルールは、計測したダイオキシン前駆物質の量が低い場合は、操作量を変更する必要がないため、ダイオキシン前駆物質の濃度が高くなった場合に操作量を決定するためのルールの一部である。
【0083】
ルールは、IF THEN形式のルールになっている。このルールでは、炉内温度等の状態量の大きさ等を、例えば、(高、やや高、中、やや低、低)などの5段階で評価している。
【0084】
ルール1は、炉内温度が高く、O2濃度も中くらいであるが、ダイオキシンの前駆物質の濃度が高くなった場合のルールである。この場合は、炉内温度が高いことから燃焼状態は良いことが推定できる。したがって、ダイオキシン前駆物質の濃度が高くなった原因は、二次空気による燃焼ガスの混合速度が小さいためであると判断し、二次空気の流速を増加させる指令を二次空気送風ファン132及び二次空気用ダンパ129に出す。この場合、二次空気吹き込みノズル134aの向きを調節できる二次空気供給方向調節手段があれば、ガスの混合効率が高まるよう、方向調節手段に対して供給方向を変える指令を出してもよい。
【0085】
ルール2は、炉内温度がやや高く、O2濃度がやや低い場合のルールである。この場合は、燃焼用空気が若干不足している可能性が高いため燃焼用空気量を増加させる指令を、一次空気送風ファン131及び空気ダンパ121a,121b,121cに出す。
【0086】
ルール3は、炉内温度が中位で、O2濃度がやや低い場合のルールである。この場合も、ごみの量に対して燃焼用空気量が不足している可能性があるが、炉内温度に比べて低い燃焼用空気量を増加させることで炉内の温度が低下する恐れがある。したがって、この場合はごみの移送量を減少させるために乾燥ストーカーの速度および燃焼ストーカーの速度を減少させる指令を出す。
【0087】
以上、いずれのルールの場合も、制御装置4から各操作端へ指令される操作量は、いずれも前駆物質の濃度に応じて定められる。
【0088】
なお、本実施形態では、状態量の大きさを5段階で評価したルールを作成したが、これらのルールをファジールールに変換して制御アルゴリズムを構築してもよい。
【0089】
以上のように、本実施形態では、排気ガスを大気圧イオン化源322bで、大気圧下でコロナ放電でイオン化しているので、電子種の電子親和力によってイオン化確率が決まり、塩素数が多いほど感度が高くなり、言い換えると、塩素数が4個以上の有毒なダイオキシン類や、その前駆物質である塩素数が2個又は3個以上のクロロベンゼン類等に対する感度が高くなり、ダイオキシン類やその前駆物質の生成量を的確に計測することができる。従って、本実施形態では、的確に計測されたダイオキシン類やその前駆物質の量に基づいて、ダイオキシン抑制制御を実行しているので、効果的にダイオキシン類を抑制することができる。
【0090】
次に、本発明に係るごみ焼却設備の第二の実施形態について、図7〜図11を用いて説明する。
【0091】
本実施形態のごみ焼却設備は、図1に示すように、ごみ焼却炉(ストーカー炉)10を有するごみ焼却系1aと、排ガス処理系2aと、ガス分析装置3,3aと、燃焼制御装置4aと、ガス採取系5,5aと、煙突6とを有している。
【0092】
ごみ焼却系1aは、図8に示すように、ごみ焼却炉10に、炉内を撮像する二つの撮像カメラ16a,16bを設けた以外、第一の実施形態と同様である。二つの撮像カメラ16a,16bのうち、一台の撮像カメラ16aは、ごみ焼却炉10の後方(後燃焼ストーカー側)の炉壁に設置しており、ごみの移動方向に対して対向する向きで、燃焼状態を撮像する。また、他の一台の撮像カメラ16bは、ごみ焼却炉10の側壁に設置してあり、ごみの移送方向に対して垂直方向の燃焼状態を撮像する。これら撮像カメラ16a,16bは、乾燥ストーカー111、燃焼ストーカー112および後燃焼ストーカー113の広範囲の燃焼状態を撮像する必要があるため、広角レンズを使用している。広角レンズの使用で画質が低下する場合は、多数の撮像カメラを用いて撮像範囲を分担するとよい。
【0093】
排ガス処理系2aは、図7に示すように、第一の実施形態の排気ガス処理系2に、減温塔21を通る排気ガスの温度を調節するための温度調節設備と、排気ガスが集塵装置22に入る過程で、活性炭を吹き込む活性炭吹込み設備25とを、追加したものである。温度調節設備は、減温塔21に水を供給する給水源211と、給水源211から減温塔21に送られる給水量を調節する給水量調節弁212とを有している。また、活性炭吹込み設備25は、活性炭を排気ガス中に吹き込む活性炭吹込み源251と、活性炭吹込み源251から排気ガス中に吹き込まれる活性炭の量を調節する活性炭量調節弁252とを有している。給水量調節弁211と活性炭量調節弁252は、いずれも、その開度が制御装置4aからの指示で制御される。
【0094】
二つのガス採取系5,5aのうち、一方のガス採取系5は、第一の実施形態と同様に、排気ガス処理系2aと煙突6との間の煙道に設けられ、他方のガス採取系5aは、ごみ焼却炉10の乾燥ストーカー111の上部壁に設けられている。各ガス採取系5,5aには、それぞれ、ガス分析装置3,3aが接続されている。排気ガス処理系2aと煙突6との間で採取された排気ガスを計測する処理系ガス分析装置3は、第一の実施形態のガス分析装置3とまったく同一である。また、乾燥ストーカー111の上部から採取された排気ガスを計測する焼却炉ガス分析装置3aも、基本的には、第一の実施形態のガス分析装置3と同じであるが、高温で且つダストの多い排気ガスを計測するので、ガス前処理部のフィルタとして耐熱性があり且つ高性能のセラミックフィルタを用い、さらに配管系の加熱温度を第一の実施形態よりも高くしている。このセラミックフィルタにより、ダストが除去されると、塩化銅等の触媒成分も除去されるため、採取したガスが低温になっても、塩素化再生成によりダイオキシン類が生成することはない。したがって、この焼却炉ガス分析装置3aにより、乾燥ストーカー111の上部から採取されたガス中のダイオキシン類及び/またはダイオキシン前駆物質の濃度を正確に計測することができる。
【0095】
制御装置4aは、図9に示すように、撮像カメラ16,16aからの画像データを画像処理する画像処理器45aと、各種データが収録されるデータ収録装置41aと、いずれの操作端を制御するかのルールが記憶されているルールベース43aと、ルールベース43aに記憶されているルールに従って操作端を制御する推論エンジン42aと、を有している。
【0096】
画像処理器45aは、図10に示すように、撮像カメラ16,16aからの画像を複数の領域に分割し、各領域毎の平均輝度を求めて、平均輝度が特定の値よりも大きい領域には、火炎が存在するものとして、火炎パターンを把握する。この火炎パターンは、データ収録装置41aに収録される。このデータ収録装置41aには、その他、図9に示すように、第一の実施形態と同様、ごみ焼却系1aの状態量や操作量、ガス計測装置3,3aでの計測データが収録される。
【0097】
推論エンジン42aは、入力された各データとルールベース43a内に蓄えられたルールとを用いて、ごみ焼却系1aや排ガス処理系2aの各操作量の変更指令を出力する。この第二の実施形態においても、推論エンジン42aでは、IF THENルールをベースとした制御アルゴリズムとなっている。しかしながら、第一の実施形態よりも多くのデータを取得するので、推論エンジン42aでは、第一の実施形態におけるルール1〜3の他に、図11に示すように、ルール4〜7を用いて、各操作量の変更指令を出力する。
【0098】
ルール4は、乾燥ストーカー111の上部のダイオキシン前駆物質濃度が高く、炉内温度はやや高い場合のルールである。この場合、ごみ質等の変化によりダイオキシンの前駆物質の発生量が多くなったと考えられる。ここで炉内の燃焼状態は比較的良いことから、さらに燃焼状態を向上させることは難しい。そこで、温度調節用ダンパ124aa,124baに対して、乾燥空気温度を低くする指令を出力すると共に、一次空気送風ファン131及び空気ダンパ121aに対して、乾燥空気量を減らす指令を出力することで、乾燥ストーカー111上から発生するダイオキシン前駆物質の量を押さえることができる。
【0099】
ルール5は、炉出口のダイオキシン前駆物質の濃度は中位であるが、煙突入り口のダイオキシン前駆物質の濃度が高い場合のルールである。この場合は、図3を用いて前述したように、ごみ焼却系1aから排気ガスが出て、排ガス処理系2a内で新たに発生したダイオキシン類の量が増加したことが原因と考えられる。そこで、ダイオキシン類の粒子への吸着量を増加させるために、温度調節設備の給水量調節弁21に対して変更指令を出力し、減温塔21の出口ガス温度をより低くすると共に、活性炭吹込み設備25の活性炭量調節弁252に対して変更指令を出力し、活性炭の吹込み量を増加させることで対処する。
【0100】
ルール6は、図10(a)の理想火炎パターンよりも、同図(b)のように、乾燥ストーカー111の後部の輝度が高くなり、かつ乾燥ストーカー111の上部のダイオキシン前駆物質の濃度がやや高くなっている場合のルールである。これは、ごみ中の水分量が少なく、燃焼ストーカー112にごみが至る前に、乾燥ストーカー111の後部でごみが燃焼し、その輻射熱でごみの乾燥が進み、ダイオキシン前駆物質の発生量が増加したと考えられる。したがって、乾燥ストーカー移動機構に対して、速度を増加させるよう変更指令を出力すると共に、温度調節用ダンパ124aa,124baに対して、乾燥空気温度を低くする変更指令を出力する。
【0101】
ルール7は、図10(a)の理想火炎パターンよりも、同図(c)のように燃焼ストーカー112の後部の輝度が高くなり、かつ乾燥ストーカー111の上部のダイオキシン前駆物質の濃度がやや高くなっている場合のルールである。これは、ごみ中の水分量が多く、乾燥ストーカー111を通過しても、十分に乾燥せず、燃焼ストーカー112の中部当たりから後燃焼ストーカー113にかけてごみが燃焼している場合である。したがって、乾燥ストーカー移動機構及び燃焼ストーカ移動機構に対して、速度を減少させるよう変更指令を出力すると共に、温度調節用ダンパ124aa,124baに対して、乾燥空気温度を高くする変更指令を出力する。
【0102】
以上のように、この実施形態でも、第一の実施形態と同様に、ガス計測装置3a,3bにおいて、大気圧イオン化源でガスをイオン化して、それを質量分析しているので、ダイオキシン類やその前駆物質の生成量を的確に計測することができ、効果的にダイオキシン類を抑制することができる。
【0103】
また、本実施形態では、ごみ焼却炉10の出口のダイオキシン類又はその前駆物質の量を計測すると共に、排ガス処理系2aの出口のダイオキシン類又はその前駆物質の量も計測して、ダイオキシン類の主要な発生原因がごみ焼却炉10側にあるのか排気ガス処理系2a側にあるのかを判断して、その発生原因に対処しているので、最終的に煙突6から排気されるダイオキシン類の量を効果的に抑制することができる。
【0104】
さらに、本実施形態では、焼却炉10内の火炎を撮像し、撮像された火炎パターンとダイオキシン類の濃度に応じて、適切な操作対象を選定しているので、ダイオキシン類の量を効果的に抑制することができる。
【0105】
【発明の効果】
本願の一発明によれば、ガス計測装置において、排気ガスを大気圧イオン化源322bで、大気圧下でコロナ放電でイオン化しているので、大気圧イオン化源でガスをイオン化して、それを質量分析しているので、ダイオキシン類やその前駆物質の生成量を的確に計測することができる。このため、本発明では、的確に計測されたダイオキシン類やその前駆物質の量に基づいて、ダイオキシン抑制制御を実行しているので、効果的にダイオキシン類を抑制することができる。
【0106】
また、本願の他の発明では、複数箇所で採取したガス中のダイオキシン類又はその前駆物質の量を計測し、ダイオキシン類の主要な発生原因が何処にあるのかを判断して、その発生原因に対処しているので、最終的に煙突6から排気されるダイオキシン類の量を効果的に抑制することができる。
【0107】
本願のさらに他の発明では、焼却炉内の火炎を撮像し、撮像された火炎パターンとダイオキシン類の濃度に応じて、適切な操作対象を選定しているので、ダイオキシン類の量を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施形態としてのごみ焼却設備の系統図である。
【図2】本発明に係る第一の実施形態としてのごみ焼却系の概略構成を示す構成図である。
【図3】温度域別のダイオキシン類の生成収支を示す説明図である。
【図4】本発明に係る第一の実施形態としてのダイオキシン計測装置の概略構成を示す構成図である。
【図5】本発明に係る第一の実施形態としての制御装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図6】本発明に係る第一の実施形態としての、操作端の選定ルールを示す説明図である。
【図7】本発明に係る第二の実施形態としてのごみ焼却設備の系統図である。
【図8】本発明に係る第二の実施形態としてのごみ焼却系の概略構成を示す構成図である。
【図9】本発明に係る第二の実施形態としての制御装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図10】本発明に係る第二の実施形態としてのごみ焼却炉内の火炎パターンを示す説明図である。
【図11】本発明に係る第二の実施形態としての、操作端の選定ルールを示す説明図である。
【符号の説明】
1,1a…ごみ焼却系、2,2a…排ガス処理系、3,3a…ガス分析装置、4,4a…燃焼制御装置、5,5a…ガス採取系、6…煙突、10…ごみ焼却炉、16,16a…撮像カメラ、21…減温塔、22…集塵装置、23…ガス加熱器、24…脱硝装置、25…活性炭吹込み設備、31…各種ガス分析装置、32…ダイオキシン計測装置、41,41a…データ収録装置、42,42a…推論エンジン、43,43a…ルールベース、45…画像処理装置、111…乾燥ストーカー、112…燃焼ストーカー、113…後燃焼ストーカー、211…給水源、212…給水量調整弁、251…活性炭吹込み源、252…活性炭量調整弁、321…ガス前処理部、321a…フィルタ、321b…切り替えバルブ、321c…加熱配管、321d…ニードルバルブ、321e…排気ポンプ、321f…排気配管、321g…排気ガスプローブ、321h…標準ガス発生装置、322…モニタ部、322a…大気圧化学イオン源、322b…質量分析部、322c…真空ポンプ、323…データ処理部、323a…増幅器、323b…演算器。
Claims (14)
- ごみ燃焼炉と、該ごみ燃焼炉の状態を操作する操作端とを有するごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉内のガス、又は該ごみ焼却炉からの排気ガスを採取するガス採取手段と、
前記ガス採取手段で採取された試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量を計測する計測装置と、
前記計測装置で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量に応じて、前記操作端の操作量を定めて、該操作端に該操作量を出力する制御手段と、
を備え、
前記計測装置は、校正用の標準ガスを発生する標準ガス発生装置と、ガスを大気圧下でイオン化する大気圧イオン化手段と、前記ガス採取手段で採取された試料ガスと前記標準ガスとを選択的に該大気圧イオン化手段に送るための切替装置と、前記大気圧イオン化手段でイオン化された前記試料ガス中の、ダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の質量分析を行う質量分析手段と、を有する、
ことを特徴とするごみ焼却設備。 - 請求項1に記載のごみ焼却設備において、
前記計測装置は、
予め定められた、前記ダイオキシン前駆物質の質量と前記ダイオキシン類の質量との相対関係を用いて、前記質量分析手段で質量分析された該ダイオキシン前駆物質の質量から該ダイオキシン類の質量を推定する推定手段を有する、
ことを特徴とするごみ焼却設備。 - 請求項1及び2のいずれか一項に記載のごみ焼却設備において、
前記計測装置は、
前記試料ガスから固形不純物を取り除くフィルタと、前記フィルタ及び前記切替装置を通ってきた前記試料ガス、及び前記標準ガス発生装置から前記切替装置を通ってきた前記標準ガスを前記大気圧イオン化手段に送るための配管と、該フィルタと該切替装置と該配管とを加熱するヒータと、を有する、
ことを特徴とするごみ焼却設備。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載のごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉には、前記制御手段が制御する前記操作端として、該ごみ焼却炉内に供給されるごみの供給速度を調節するごみ供給速度調節手段、該ごみ焼却炉内に供給する一次空気の供給量を調節する一次空気量調節手段と、該一次空気の温度を調節する一次空気温度調節手段と、該一次空気が供給される位置よりも下流側に供給される二次空気の供給量を調節する二次空気量調節手段と、該二次空気を該焼却炉内に供給する向きを調節する二次空気供給方向調節手段とのうち、少なくとも該二次空気供給方向調節手段が設けられている、
ことを特徴とするごみ焼却設備。 - ごみ焼却炉と、該ごみ焼却炉からの排気ガスを処理する排気ガス処理系と、該排気ガス処理系と通過した該排気ガスを排気する煙突と、を有するごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉から前記煙突までの間におけるガスを互いに異なる箇所で採取する複数のガス採取手段と、
複数の前記ガス採取手段で採取された各試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量をそれぞれ計測する複数のダイオキシン計測装置と、
複数の前記ダイオキシン計測装置で計測された各ダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量から、ダイオキシン類の主要な発生要因が、複数の前記ガス採取手段のうちのいずれのガス採取手段(以下、特定ガス採取手段とする)よりも上流側の状態によるものであるかを判断し、該特定ガス採取手段よりも上流側の設備の操作端であって、該操作端の操作量に応じてダイオキシン類の生成量に影響を与える操作端に対して、該特定ガス採取手段で採取されたガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量に応じて求めた操作量を出力する制御手段と、
を備えていることを特徴とするごみ焼却設備。 - 請求項5に記載のごみ焼却設備において、
複数の前記ガス採取手段のうち、一つのガス採取手段が前記ごみ焼却炉内のガス、又は該ごみ焼却炉からの排気ガスであって前記排気ガス処理系に至る前の排気ガスを採取する焼却炉ガス採取手段であり、一つのガス採取手段が前記排気ガス処理系内の前記排気ガス、又は排気ガス処理系から排気された前記排気ガスを採取する処理系ガス採取手段であり、
複数の前記ダイオキシン計測装置のうち、一つのダイオキシン計測装置が前記焼却炉ガス採取手段で採取された試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量を計測する焼却炉ダイオキシン計測装置であり、一つのダイオキシン計測装置が前記処理系ガス採取手段で採取された試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量を計測する処理系ダイオキシン計測装置であり、
前記制御手段は、前記焼却炉ダイオキシン計測装置で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量と、前記処理系ダイオキシン計測装置で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量とから、ダイオキシン類の主要な発生要因が前記ごみ焼却炉の状態であるのか、前記排気ガス処理系の状態であるのかを判断し、該ごみ焼却炉と該排気ガス処理系とのうち、ダイオキシン類の主要な発生原因のある設備の前記操作端に対して、該設備の前記ダイオキシン計測装置で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量に応じて求めた操作量を出力する、
ことを特徴とするごみ焼却設備。 - 請求項6に記載のごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉には、前記制御手段が制御する前記操作端として、該ごみ焼却炉内に供給されるごみの供給速度を調節するごみ供給速度調節手段、該ごみ焼却炉内に供給する一次空気の供給量を調節する一次空気量調節手段と、該一次空気の温度を調節する一次空気温度調節手段と、該一次空気が供給される位置よりも下流側に供給される二次空気の供給量を調節する二次空気量調節手段と、該二次空気を該焼却炉内に供給する向きを調節する二次空気供給方向調節手段とのうち、少なくとも一つが設けられ、
前記排気ガス処理系は、前記排気ガス中の粉塵を除去する集塵装置を有すると共に、前記制御手段が制御する前記操作端として、該集塵装置に送られる該排気ガスの温度を調節する排気ガス温度調節手段と、該集塵装置に送られる該排気ガス中に活性炭を吹き込む活性炭供給量調節手段とのうち、少なくとも一つを有する、
ことを特徴とするごみ焼却設備。 - 請求項7記載のごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉内の火炎を撮像する撮像手段を備え、
前記制御手段は、
ダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の各種量と前記ごみ焼却炉内の各種火炎パターンに対して、操作すべき操作端が定められているルールを用い、前記焼却炉ダイオキシン計測装置で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量と前記撮像手段で撮像された前記火炎のパターンとに応じた操作端を定めて、該操作端の動作を制御する、
ことを特徴とするごみ焼却設備。 - ストーカーが移動して、ごみ中の水分を蒸発させる乾燥ストーカー炉を有するごみ燃焼炉と、該ごみ燃焼炉の状態を操作する複数の操作端とを備えているごみ焼却設備において、
前記乾燥ストーカー炉の上部に設けられ、前記ごみ焼却炉内のガスを採取するガス採取手段と、
前記ガス採取手段で採取された試料ガス中のダイオキシン前駆物質の量を計測する計測装置と、
前記ごみ焼却炉内の火炎を撮像する撮像手段と、
ダイオキシン前駆物質の各種量と前記ごみ焼却炉内の各種火炎パターンに対して、複数の前記操作端のうち、操作すべき操作端が定められているルールを用い、前記計測装置で計測された前記ダイオキシン前駆物質の量と前記撮像手段で撮像された前記火炎のパターンに応じた操作端を定めて、該操作端の動作を制御する制御手段と、
を備えていることを特徴とするごみ焼却設備。 - 請求項5から9のいずれか一項に記載のごみ焼却設備において、
前記計測装置は、前記ガス採取手段で採取された試料ガスを大気圧下でイオン化する大気圧イオン化手段と、前記大気圧イオン化手段でイオン化された前記試料ガス中のダイオキシン前駆物質の質量分析を行う質量分析手段と、を有する、
ことを特徴とするごみ焼却設備。 - 請求項1から10のいずれか一項に記載のごみ焼却設備において、
前記ごみ焼却炉には、前記制御手段が制御する前記操作端として、前記ストーカーの移動速度を調節するストーカー速度調節手段が設けられている、
ことを特徴とするごみ焼却設備。 - ごみ燃焼炉と、該ごみ燃焼炉の状態を操作する操作端とを有するごみ焼却設備の制御方法において、
前記ごみ焼却炉内のガス、又は該ごみ焼却炉からの排気ガスを採取するガス採取工程と、
前記ガス採取工程で採取された試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量を計測装置で計測する計測工程と、
前記計測工程で計測されたダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量に応じて、前記操作端の操作量を定めて、該操作端に該操作量を出力する制御工程と、
前記計測装置を校正する校正工程と、
を有し、
前記計測工程は、前記ガス採取工程で採取された試料ガスを、大気圧下のモニタ部内でコロナ放電によりイオン化し、該モニタ部内でイオン化された前記試料ガス中の、ダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の質量分析し、
前記校正工程は、切替装置により、前記ガス採取工程で採取された試料ガスが前記モニタ部に導入されるのを絶ち、標準ガス発生装置からの校正用の標準ガスを前記モニタ部に導入して、前記計測装置を校正する、
ことを特徴とするごみ焼却設備の制御方法。 - ごみ焼却炉と、該ごみ焼却炉からの排気ガスを処理する排気ガス処理系と、該排気ガス処理系と通過した該排気ガスを排気する煙突と、を有するごみ焼却設備の制御方法において、
前記ごみ焼却炉から前記煙突までの間におけるガスを互いに異なる箇所で採取するガス採取工程と、
ガス採取工程で複数の箇所で採取された各試料ガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量をそれぞれ計測するダイオキシン計測工程と、
前記ダイオキシン計測工程で計測された各ダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量から、ダイオキシン類の主要な発生要因が、複数のガス採取箇所のうちのいずれのガス採取箇所(以下、特定ガス採取箇所とする)よりも上流側の状態によるものであるかを判断し、該特定ガス採取箇所よりも上流側の設備の操作端であって、該操作端の操作量に応じてダイオキシン類の生成量に影響を与える操作端に対して、該特定ガス採取箇所で採取されたガス中のダイオキシン類及び/又はダイオキシン前駆物質の量に応じて求めた操作量を出力する制御工程と、
を有することを特徴とするごみ焼却設備の制御方法。 - ストーカーが移動して、ごみ中の水分を蒸発させる乾燥ストーカー炉を有するごみ燃焼炉と、該ごみ燃焼炉の状態を操作する複数の操作端とを備えているごみ焼却設備の制御方法において、
前記ごみ焼却炉内のガスを、前記乾燥ストーカー炉の上部から採取するガス採取工程と、
前記ガス採取工程で採取された試料ガス中のダイオキシン前駆物質の量を計測する計測工程と、
前記ごみ焼却炉内の火炎を撮像する撮像工程と、
ダイオキシン前駆物質の各種量と前記ごみ焼却炉内の各種火炎パターンに対して、複数の前記操作端のうち、操作すべき操作端が定められているルールを用い、前記計測工程で計測された前記ダイオキシン前駆物質の量と前記撮像工程で撮像された前記火炎のパターンに応じた操作端を定めて、該操作端の動作を制御する制御工程と、
を有することを特徴とするごみ焼却設備の制御方法。
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